(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】綿棒
(51)【国際特許分類】
A47K 7/00 20060101AFI20230406BHJP
A61M 35/00 20060101ALI20230406BHJP
A61F 13/38 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A47K7/00 105
A61M35/00 X
A61F13/38
(21)【出願番号】P 2022018862
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】392001014
【氏名又は名称】株式会社山洋
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 洋
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3199448(JP,U)
【文献】特開2020-195433(JP,A)
【文献】特開2012-152329(JP,A)
【文献】特開平10-85256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A61M 35/00
A61F 13/38
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の一端または両端に繊維を巻き付け接着した繊維塊状部とを備え、該繊維塊状部は、前記軸体に接着される基端部と、該基端部から前記軸体の軸方向に沿って前記軸体の外方に延びる本体部とを有し、
前記基端部の表面に第1の上糊が塗布され、前記本体部の表面に第2の上糊が塗布されており、前記第1の上糊および前記第2の上糊のうち、少なくとも前記第2の上糊は、前記本体部の表面への塗布量が前記第1の上糊よりも少なく、かつ保湿成分を含有している綿棒。
【請求項2】
前記第1の上糊は、前記保湿成分の含有量が前記第2の上糊よりも少ないか、または前記保湿成分を含有しない請求項1に記載の綿棒。
【請求項3】
前記保湿成分が、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、乳酸またはその塩および尿素から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の綿棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳掃除等に使用される綿棒に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、綿棒は、軸体の端部に下糊を塗布した後に繊維塊状部を接着し、この繊維塊状部の表面に上糊を塗布して作られている(特許文献1等参照)。このような綿棒は、繊維によるかき取り作用を利用して、耳掃除等に広く使用されている。また、高い吸液性を有するため、衛生医療分野、化粧分野等でも使用されている。
【0003】
しかし、従来の綿棒は、繊維塊状部の表面に上糊を塗布しているため、繊維塊状部が本来有する弾性のある柔らかい風合いが損なわれやすいという問題があった。上糊は、繊維塊状部から繊維が脱落したり、繊維が毛羽だったりするのを防止する目的で使用されている。そのため、上糊の塗布量を少なくすることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、たとえ上糊の塗布量を少なくしても、繊維塊状部からの繊維の脱落や毛羽立ちを抑制した綿棒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の綿棒は、軸体と、該軸体の一端または両端に繊維を巻き付け接着した繊維塊状部とを備え、繊維塊状部は、下糊によって前記軸体に接着される基端部と、該基端部から軸体の軸方向に沿って軸体の外方に延びる本体部とを有し、基端部の表面に第1の上糊が塗布され、本体部の表面に第2の上糊が塗布されており、第1の上糊および第2の上糊のうち、少なくとも第2の上糊は、本体部の表面への塗布量が第1の上糊よりも少なく、かつ保湿成分を含有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、少なくとも第2の上糊は保湿成分を含有しているので、繊維塊状部からの繊維の脱落や毛羽立ちを抑制することができる。これにより、少なくとも第2の上糊の塗布量を少なくすることができ、繊維塊状部本来の弾性のある柔らかい風合いを損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る綿棒を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す綿棒における繊維塊状部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の綿棒を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る綿棒1を示し、
図2はその繊維塊状部の拡大断面図である。
【0010】
図1に示すように、綿棒1は、軸体2と、該軸体2の両端にそれぞれ繊維を巻き付け接着した繊維塊状部3、4とを備える。一方の繊維塊状部3は、基端部31と、該基端部31から軸体2の軸方向に沿って軸体2の外方に延びる略球形の本体部32とを有する。
【0011】
他方の繊維塊状部4も、基端部41と、該基端部41から軸体2の軸方向に沿って軸体2の外方に延びる本体部42とを有する。本体部42は、かき取り効果を高めるために、複数段の段付き形状に形成されている。
ここで、基端部31、41とは、繊維塊状部3、4が軸体2から抜けるのを防止するために、後述する下糊によって軸体2の外周面に加圧接着された部位をいう。一方、本体部32、42は、肌等に接触する部位である。
【0012】
軸体2としては、例えば、紙軸、プラスチック軸、木軸などが挙げられる。紙軸の場合は、例えば、長方形の紙シートの片面に接着剤を塗布し、小さく巻き取ることによって製造することができる。軸体2の断面形状としては、例えば、円形、楕円形、扁平形、角形等などが挙げられ、円形の場合、径は1mm以上、好ましくは6mm以下であるのがよい。
【0013】
繊維塊状部3、4を形成する繊維としては、例えば、種々の天然繊維(綿、絹、羊毛等)、再生繊維(レーヨン、キュブラ等)、合成繊維(ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等)などが挙げられるが、特に吸湿性のよい脱脂綿等の綿繊維が好適に使用される。これら繊維は単独で使用しても、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
繊維塊状部3,4は軸体2に下糊で接着される。下糊としては、例えば、澱粉糊、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。下糊は、あらかじめ軸体2の基端部31から先端までの部位に塗布しておき、繊維塊状部3,4の繊維をそれぞれ軸体2に巻き付け、径方向に加圧して接着する。
【0015】
繊維塊状部3、4の表面には、繊維の脱落や毛羽立ちを抑制するために、上糊が塗布されている。本実施形態における繊維塊状部3は、
図2に示すように、基端部31の表面に第1の上糊5が塗布され、本体部32の表面に第2の上糊6が塗布されている。本実施形態では、第2の上糊6は、保湿成分を含有している。
【0016】
第1および第2の上糊5、6としては、例えば、ポリビニルアルコール等の糊材が使用可能である。第1および第2の上糊5、6は、同種類のものを使用すればよいが、互いに異なる糊材を使用してもよい。
上糊の形成方法としては、特に限定されず、上糊成分を水等の溶剤に溶解した溶液を、例えばロール塗布、スプレー、シャワー、刷毛等で塗布し乾燥させる方法が挙げられる。
【0017】
なお、
図2では、説明の便宜上、第1および第2の上糊5、6は、基端部31および本体部32の表面にそれぞれ存在しているように示されているが、それらの表面にある繊維表面および繊維間だけでなく、基端部31および本体部32の内部にも浸透していると考えられる。
【0018】
基端部31に使用する第1の上糊5は、基端部31にある繊維塊状部3から繊維が脱落したり、毛羽だったりしない十分な量が繊維塊状部3の基端部31に塗布されている。具体的には、例えば、第1の上糊5は、糊材を1質量%以上10質量%以下の濃度で含む塗布溶液を基端部31に5g/cm2以上100g/cm2以下の塗布量で塗布し、外周面から加圧し(必要なら加熱加圧して)、乾燥させることにより、下糊の接着と同時に、基端部31を形成することができる。上記塗布量を固形分(糊材)に換算すると、第1の上糊5は0.5g/cm2以上10g/cm2以下で基端部31に塗布されているのがよい。
【0019】
一方、本体部32の表面に塗布される第2の上糊6の塗布量は、固形分換算で、前記した第1の上糊5の塗布量よりも少ない量、例えば第1の上糊5の塗布量100質量%に対して10質量%以上80質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下であるのがよい。
本体部32の第2の上糊6の塗布量が、第1の上糊5の塗布量よりも少ないので、本体部32では、基端部31よりも、繊維塊状部3本来の弾性のある柔らかい風合いを維持することができ、肌触りの良い綿棒1を提供することができる。
第2の上糊6の塗布は、第1の上糊5の塗布と同時に行ってもよく、あるいは第1の上糊5の塗布の前後に行ってもよい。
【0020】
前記したように、第2の上糊6は保湿成分を含有している。これにより、繊維塊状部3から繊維が脱落したり、毛羽だったりするのを抑制することができる。そのため、第2の上糊6の塗布量を第1の上糊5の塗布量よりも少なくしても、繊維塊状部3の有する風合いや柔らかさを損なうのを抑制することができる。
【0021】
保湿成分としては、例えばグリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、乳酸またはその塩(乳酸ナトリウム等)、尿素などが挙げられ、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
第2の上糊6が含有する保湿成分の含有量は、第2の上糊6を100質量部としたとき、20質量部以上100質量部以下であるのがよい。保湿成分は、第2の上糊6の塗布液調製時に、該塗布液に加えて、第2の上糊6と共に本体部32の表面に塗布し乾燥すればよい。あるいは、第2の上糊6を本体部32の表面に塗布した後、乾燥の前もしくは後に保湿成分を塗布してもよい。
【0023】
繊維塊状部3における本体部32の長さ(軸体2の軸方向に沿った長さ)は、繊維塊状部3の全長に対して30%以上85%以下であるのがよい。この範囲であると、基端部31において繊維塊状部3を軸体2に強固に接着する領域の長さを十分に確保することができる。
【0024】
本体部32の形状は、特に限定されず、例えば、水滴形、たまご形、筆先形、円柱形、たわら形、球形などが挙げられる。本実施形態では、前記したように、本体部32は風合いや柔らかさに優れているため、通常の綿棒よりも本体部32を大きく形成することにより、肌触りの良い綿棒1を提供することができる。
【0025】
具体的には、軸体2の軸方向に垂直な方向の本体部32の最大長さ(断面形状が球形の場合は径であり、径が軸体2の軸方向に一定でない場合は最大径をいう)は、軸体2の径に対して2.5倍以上、好ましくは3倍以上で、5倍以下であるのがよく、柔らかく肌触りの良い綿棒1を得ることができる。
【0026】
基端部31に塗布した第1の上糊5が、基端部31からの繊維の脱落や毛羽立ちを抑制するのに十分な量である場合には、第1の上糊5に保湿成分を含有させる必要はないといえる。しかし、第1の上糊5が保湿成分を含有していてもよく、むしろ第1の上糊5の使用量低減に寄与することができる。すなわち、第1の上糊5は、保湿成分の含有量が第2の上糊6と同量か、それよりも少なくてもよく、保湿成分を含有しない態様であってもよい。
【0027】
本実施形態における他方の繊維塊状部4についても、上記の繊維塊状部3と同様に、本体部42の表面に塗布された第2の上糊は、保湿成分を含有していてもよく、基端部41の表面に塗布された第1の上糊も保湿成分を含有していてもよい。さらに、基端部41の第1の上糊および本体部42の第2の上糊が、保湿成分を含有しない、従来の綿棒と同様に、上糊だけが塗布された態様であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、他方の繊維塊状部4として段付き形状のものを示したが、本発明の綿棒1は、このような形態に限定されるものではなく、上記の繊維塊状部3と同じものであってもよく、異なる形状のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の綿棒は、耳掃除等に使用する他、衛生医療用途、化粧用途、精密機器の清掃などの工業用途等にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 綿棒
2 軸体
3 繊維塊状部
31 基端部
32 本体部
4 繊維塊状部
41 基端部
42 本体部
5 第1の上糊
6 第2の上糊
【要約】
【課題】たとえ上糊の塗布量を少なくしても、繊維塊状部からの繊維の脱落や毛羽立ちを抑制した綿棒を提供する。
【解決手段】本発明の綿棒は、軸体2と、該軸体2の一端または両端に繊維を巻き付け接着した繊維塊状部3とを備え、繊維塊状部3は、下糊によって前記軸体に接着される基端部31と、該基端部31から軸体2の軸方向に沿って軸体2の外方に延びる本体部32とを有し、基端部31の表面に第1の上糊5が塗布され、本体部32の表面に第2の上糊6が塗布されており、第2の上糊6は第1の上糊および第2の上糊のうち、少なくとも第2の上糊は、本体部の表面への塗布量が第1の上糊よりも少なく、かつ保湿成分を含有している。
【選択図】
図2