(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ノズルプレートおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20230406BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/14 501
B41J2/14 301
B41J2/14 607
(21)【出願番号】P 2022062944
(22)【出願日】2022-04-05
【審査請求日】2022-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593020913
【氏名又は名称】株式会社ナカリキッドコントロール
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136529(JP,A)
【文献】特開2014-003263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-5/04
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容される貯留室と、前記貯留室に液体を導入するための液体流路と、前記貯留室に収容された液体を吐出するための吐出流路と、を有するノズルプレートであって、
第1部材と、前記第1部材と分離自由に接合される第2部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材とは、前記液体流路の少なくとも一部に沿って分離され、
前記第1部材および前記第2部材のいずれか一方の面であって他方と接合される面にのみ溝を有し、前記溝は前記液体流路の少なくとも一部を形成する、ノズルプレート。
【請求項2】
液体が収容される貯留室と、前記貯留室に液体を導入するための液体流路と、前記貯留室に収容された液体を吐出するための吐出流路と、を有するノズルプレートであって、
第1部材と、前記第1部材と分離自由に接合される第2部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材とは、前記液体流路の少なくとも一部に沿って分離され、
前記第1部材および前記第2部材の互いに接合される面のそれぞれに溝を有し、前記第1部材の溝および前記第2部材の溝により前記液体流路の少なくとも一部が形成される、ノズルプレート。
【請求項3】
液体が収容される貯留室と、前記貯留室に液体を導入するための液体流路と、前記貯留室に収容された液体を吐出するための吐出流路と、を有するノズルプレートであって、
第1部材と、前記第1部材と分離自由に接合される第2部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材とは、前記液体流路の少なくとも一部に沿って分離され、
前記第1部材および前記第2部材は、互いに接合される面のそれぞれが前記吐出流路の液体が流れる方向に直交する、ノズルプレート。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材の互いに接合される面は、シート部材を介して接合される、請求項1
から3のいずれか1項に記載のノズルプレート。
【請求項5】
前記第1部材および前記第2部材は、耐熱性の素材から構成される請求項1
から3のいずれか1項に記載のノズルプレート。
【請求項6】
前記第2部材は前記吐出流路の吐出口が開口する面を備え、
前記第2部材の前記吐出口が開口する面には前記第1部材と接合するためのネジが挿入されるネジ用貫通孔が形成され、
前記吐出口を覆わずに前記ネジ用貫通孔を覆うように前記吐出口が開口する面に貼り付けられる保護シートをさらに備える、請求項1
から3のいずれか1項に記載のノズルプレート。
【請求項7】
液体を加圧することにより液体を吐出する液体吐出装置であって、
加圧部と、前記加圧部の下端に設けられる請求項1から
3のいずれか1項に記載のノズルプレートと、を備え、
前記加圧部は、
加圧部本体と、
前記加圧部本体に上下方向に移動自由に支持され、下端部が前記加圧部本体から突出し、前記液体流路から前記貯留室に導入された液体を加圧して前記吐出流路から吐出させる加圧部材と、
前記加圧部材を上下方向に移動させる駆動部と、を備える、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するノズルプレートおよびノズルプレートを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造分野等においては、液体を吐出するための液体吐出装置が用いられている。例えば、特許文献1に記載の液体吐出装置200は、
図8に示すように、ヘッド本体部201と、ヘッド本体部201に往復移動可能に装着され、下端部がヘッド本体部201から下方向に突出した加圧部材202と、ヘッド本体部201の下面に設けられたノズルプレート203と、加圧部材202を上下方向に駆動させるアクチュエータ204とを備えている。ノズルプレート203は、ヘッド本体部201から突出する加圧部材202の下端部が収容され液体の貯留室を形成する凹部205と、凹部205に液体を導入するための導入流路206と、凹部205の底に形成された吐出流路207とを備える。
【0003】
導入流路206はシリンジ等からなる液体供給部に連結されており、液体供給部から導入流路206を介して凹部205の貯留室に液体が供給される。次いでアクチュエータ204を動作させて加圧部材202を下方向に移動させる。これにより、液体に押圧が加わり、吐出流路207の下端の吐出口から液体が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような液体吐出装置においては、ノズルプレートの貯留室内に残存する液体を排出するとともに、貯留室や導入流路、吐出流路等の洗浄作業が定期的に行われる。また、使用目的に応じて吐出対象の液体が変更された場合にも洗浄作業が行われる。
【0006】
しかし、
図8の形態においては、凹部205の底に位置する貯留室に液体を供給するために、ノズルプレート203の導入流路206は直線状ではなく折れ曲がり部分206aを有する形状となっており、洗浄が容易ではない。特に、固化しやすい液体を吐出する場合には、折れ曲がり部分206aに溜まった液体が固化することがあり、これをクリーニングピン等の洗浄ツールを挿入して洗浄するのは極めて困難である。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、洗浄しやすいノズルプレートおよび液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1:液体が収容される貯留室と、前記貯留室に液体を導入するための液体流路と、前記貯留室に収容された液体を吐出するための吐出流路と、を有するものであって、第1部材と、前記第1部材と分離自由に接合される第2部材とを有し、前記第1部材および前記第2部材とは、前記液体流路の少なくとも一部に沿って分離される、ノズルプレート。
【0010】
上記の構成によれば、流体流路を構成する第1部材と第2部材とが分離自由であるため、洗浄がしやすい。
【0011】
項2:前記第1部材および前記第2部材のいずれか一方の面であって他方と接合される面にのみ溝を有し、前記溝は前記液体流路の少なくとも一部を形成する、項1に記載のノズルプレート。
【0012】
項3:前記第1部材および前記第2部材の互いに接合される面のそれぞれに溝を有し、前記第1部材の溝および前記第2部材の溝により前記液体流路の少なくとも一部が形成される、項1に記載のノズルプレート。
【0013】
項4:前記第1部材および前記第2部材は、前記互いに接合される面のそれぞれが前記吐出流路の液体が流れる方向に直交する、項1から3のいずれかに記載のノズルプレート。
【0014】
項5:前記第1部材および前記第2部材の互いに接合される面は、シート部材を介して接合される、項1から4のいずれかに記載のノズルプレート。
【0015】
項6:前記第1部材および前記第2部材は、耐熱性の素材から構成される、項1から5のいずれかに記載のノズルプレート。
【0016】
項7:前記第2部材は前記吐出流路の吐出口が開口する面を備え、
前記第2部材の前記吐出口が開口する面には前記第1部材と接合するためのネジが挿入されるネジ用貫通孔が形成され、
前記吐出口を覆わずに前記ネジ用貫通孔を覆うように前記吐出口が開口する面に貼り付けられる保護シートをさらに備える、項1から6のいずれかに記載のノズルプレート。
【0017】
項8:本発明の他の形態は、液体を加圧することにより液体を吐出する液体吐出装置であって、加圧部と、前記加圧部の下端に設けられる項1から項7のいずれかに記載のノズルプレートと、を備えるものである。前記加圧部は、加圧部本体と、前記加圧部本体に上下方向に移動自由に支持され、下端部が前記加圧部本体から突出し、前記液体流路から前記貯留室に導入された液体を加圧して前記吐出流路から吐出させる加圧部材と、前記加圧部材を上下方向に移動させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、洗浄しやすいノズルプレートおよび液体吐出装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の全体の概略構成を示す断面図である。
【
図2】(A)は液体吐出装置の要部を拡大して示す断面図、(B)は(A)の一部分を拡大して示す図である。
【
図6】ノズルプレートの他の例を示す断面図である。
【
図7】ノズルプレートの他の例を示す
図6のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1~
図5は、本発明の一実施形態の液体吐出装置10を示す。液体吐出装置10は、液体を加圧することにより液体を吐出するものであり、加圧部11と、加圧部11の下端に設けられるノズルプレート20とを備えている。液体吐出装置10は、吐出する液体を供給するための液体供給部100に接続されている。以下の説明では、ノズルプレート20の吐出流路の軸方向、すなわち液体が吐出される方向を
図1における上下方向とし、上下方向に直交する方向を左右方向としているが、液体吐出装置は必ずしも現実の上下方向(鉛直方向)に沿って液体が吐出されてなくてもよい。
【0021】
(液体供給部100)
液体供給部100は、例えば、液体を貯留するシリンジ101とシリンジ101に空圧を供給するエアコンプレッサ等の空圧供給源103とが、電磁バルブ102を介して接続されたものである。電磁バルブ102が開かれると、空圧供給源103からシリンジ101内に所定の空圧が供給されて液体が押し出され、液体供給管105を介して液体吐出装置10に供給される。
【0022】
(液体吐出装置10)
(加圧部11)
図1~
図3に示すように、加圧部11は、加圧部本体12と、加圧部材13と、駆動部14と、回転規制機構15とを備えている。加圧部本体12は、有底で上端が開口した円筒形状を呈しており、開口はベース部材16で閉鎖されている。加圧部本体12の底部12aの平面視における中央部には、加圧部材13が挿通される貫通孔12bが形成されている。底部12aの外面12cはノズルプレート20が装着される装着面である。外面12cであって貫通孔12bの周囲にはOリング12eが収容される段部12dが形成されており、Oリング12eによりノズルプレート20内の液体が加圧部本体12に流れることを防いでいる。また、
図3に示すように、外面12cには、ノズルプレート20を装着するためのネジ孔12fが設けられている。
【0023】
加圧部材13は、ノズルプレート20の液体流路23から凹部22に導入された液体を加圧して吐出流路22cから吐出させるものである。加圧部材13は、円柱形状の小径部13aと、小径部13aの上端に取り付けられた四角形状の大径部13bとを有しており、断面T字形状を呈している。なお、大径部13bは円柱形状であってもよい。小径部13aの径は加圧部本体12の貫通孔12bに挿通可能に設定されており、本実施形態では貫通孔12bの径を約3.1mm、小径部13aの径を約3.0mmに設定しているが、これに限定されるものではない。小径部13aは、貫通孔12bに挿通されて、下端部が加圧部本体12の底部12aより外側に突出し、後述するノズルプレート20の凹部22に収容される。小径部13aの上下方向の長さは、凹部22の貯留室21に収容された液体を加圧できる十分な長さに設定される。一方、小径部13aは加圧時に貯留室21の液体からの反力を受けて僅かに上下方向に収縮し、この収縮によりエネルギー損失が発生するが小径部13aが短いほど収縮が小さく損失も小さくなる。この観点からは、小径部13aはできるだけ短く設定される。
【0024】
大径部13bは加圧部本体12の内部に位置しており、平面視における大径部13bの大きさは、加圧部本体12の貫通孔12bから大径部13bが抜け出ない大きさに設定されている。大径部13bの下面と加圧部本体12の底部12aの上面との間には環状の皿バネ17が設けられており、後述するアクチュエータ18による加圧部材13への加圧が解除された状態で、皿バネ17は加圧部材13を上方向に付勢して第1の位置に位置させる。皿バネ17及び加圧部本体12の貫通孔12bにより、加圧部材13は加圧部本体12に着脱可能に上下方向に移動自由に支持されている。
【0025】
加圧部11の小径部13aの下端部には、ノズルプレート20の液体流路23から導入された液体を凹部22の底部22aに効率的に導入するための第1流路19が形成されている。
【0026】
回転規制機構15は、加圧部材13の中心軸回りの相対回転を規制するものである。
図2、
図4に示すように、回転規制機構15は、加圧部材13の小径部13aの外周面13cから突出した突出部であるピン15aと、加圧部本体12の底部12aの上面12gに設けられ上側が開放された溝15bとを備える。ピン15aが溝15bに収容されることで、加圧部材13が貫通孔12bに対して、すなわち加圧部材13の小径部13aの下端部が収容されるノズルプレート20の凹部22に対して、回転することが規制される。
【0027】
加圧部材13とベース部材16との間には圧電素子を含むアクチュエータ18が取り付けられている。アクチュエータ18は、図示しないアクチュエータ制御部によって制御されて上下方向へ伸縮動作を行う。アクチュエータ18の上面は、皿バネ17の付勢力によりベース部材16に当接しており、ベース部材16によりアクチュエータ18の伸長時の上向きの反力が支持されている。
【0028】
アクチュエータ18は加圧部材13の大径部13bの上面に当接するが固定はされていない。アクチュエータ18の伸長時には、アクチュエータ18の下面が加圧部材13の大径部13bの上面に当接して、加圧部材13に下方向の圧力を加える。これにより加圧部材13は、皿バネ17により上方向に付勢された第1の位置から、皿バネ17の付勢力に反して下向きに第2の位置に移動する。第1の位置と第2の位置との間の移動距離は約20μmに設定されているが、これに限定されない。アクチュエータ18と皿バネ17により駆動部14が構成される。
【0029】
なお、加圧部11の構成は
図1の構成に限定されず、ノズルプレート20の貯留室21に収容された液体に圧力を加えることができればいずれの構成であってもよい。
【0030】
(ノズルプレート20)
ノズルプレート20は、液体が収容される貯留室21を有する凹部22と、貯留室21に液体を導入するための液体流路23と、貯留室21に収容された液体を吐出するための吐出流路22cと、を有する。ノズルプレート20は、第1部材31と、第1部材31と分離自由に接合される第2部材41と、シート部材50と、保護シート53とを含む。
【0031】
(第1部材31)
図1~
図3に示すように、第1部材31は、平面視において矩形状であって、
図2における右側部分32は、左側部分33よりも厚み(上下方向の長さ)が小さく形成されている。右側部分32の上面32aは、加圧部11の加圧部本体12の底部12aの外面に取付けられる。第1部材31の右側部分32の厚みは、加圧部材13の小径部13aの上下方向の長さを短くするためにできるだけ薄く形成されており、本実施形態では1500μmに設定されているが、これに限定されない。左側部分33は後述するネジ孔38bを形成するために右側部分32よりも厚く形成されており、本実施形態では3000μmに設定されているが、これに限定されない。
【0032】
左側部分33の上面33aには、液体供給部100と接続するためのジョイント部34が設けられている。ジョイント部34は内部に接続流路34aが形成されており、第1部材31内に上下方向に沿って設けられた導入流路35と連通している。第1部材31には、加圧部本体12の貫通孔12bに対応する位置に、凹部22を形成する凹部用貫通孔36が上下方向に沿って形成されている。凹部用貫通孔36は平面から見た形状が円形であり、凹部用貫通孔36の径は加圧部本体12の貫通孔12bの径と略同じに設定されている。
【0033】
図2、
図5に示すように、第1部材31の下面31aには、凹部用貫通孔36と導入流路35とに連通する溝37が形成されている。溝37は断面形状が半円形状であり、溝37の下側は開放されている。本実施形態では、導入流路35と溝37と凹部用貫通孔36とは平面視において直線上に位置している。溝37は第1部材31と第2部材41とが接合された状態で開放部分が第2部材41により塞がれて液体流路23の一部となる。溝37、導入流路35、接続流路34aは液体流路23を構成する。本実施形態では、溝37の
図2における左右方向の長さは約10000μm(10mm)、溝37の
図2における上下方向の長さ(厚み)は約700μm、下面31aにおける溝37の長さおよび厚みに直交する方向の長さ(幅)は約1400μmに設定されているが、これに限定されるものではない。第1部材31の下面31aは、第2部材41と接合される面であり接合面31aともいう。なお、
図5においては、第1部材31、第2部材41、シート部材50、保護シート53のみを図示し、他の構成の図示を省略している。
【0034】
図3に示すように、第1部材31の右側部分32にはノズルプレート20を加圧部11の底部12aに装着するためのネジ用貫通孔38aが形成されている。また、第1部材31の左側部分33には、第2部材41、シート部材50を第1部材31に装着するためのネジ孔38bが形成されている。本実施形態では、ネジ用貫通孔38aは右側部分32に4つ、ネジ孔38bは左側部分33に2つ形成されているが、ネジ用貫通孔38a、ネジ孔38bの個数や位置は本実施形態には限定されない。
【0035】
第1部材31は、少なくとも500度の熱に耐える耐熱性の素材からなる。第1部材31は金属から構成されることが好ましく、本実施形態ではステンレスから構成されているが、これに限定されず、アルミナ、ジルコニア等のセラミックから構成されていてもよい。
【0036】
(第2部材41)
図1~
図3に示すように、第2部材41は長方形状であって、上面41aは第1部材31の下面と接合する接合面41aである。第2部材41の接合面41aには、第1部材31の凹部用貫通孔36に対応する位置に、凹部22を形成する凹部用穴42が形成されている。凹部用穴42は、平面から見た形状が円形であり、凹部用穴42の径は凹部用貫通孔36の径と略同じに設定されている。第1部材31の凹部用貫通孔36および第2部材41の凹部用穴42から構成される凹部22には、加圧部本体12の貫通孔12bを貫通した加圧部材13の小径部13aの下端部が収容される。本実施形態では、加圧部材13の小径部13aの外周面13cと凹部22の内面22bとの間の最短の距離は約5μmに設定されているが、これに限定されない。加圧部材13の底面13dと凹部用穴42の底部22aとの間に、液体が収容される貯留室21が形成される。
【0037】
図2(B)に示すように、凹部用穴42の底部22aには、凹部22の貯留室21に収容された液体を吐出するための吐出流路22cが形成されている。吐出流路22cは平面視において円形であり、下に向かうほど内径が小さい先細り形状を呈している。第2部材41の下面41bにはわずかに下方に突出する突条部41cが形成されており、吐出流路22cは、底部22aおよび突条部41cを貫通している。突条部41cの下端には吐出流路22cの吐出口22dが開口している。吐出流路22cは、平面視において凹部22の重心位置Pからずれた位置であって、
図2(B)において加圧部材13の第1流路19や凹部22の内面22bに形成された液体流路23の開口とは重心位置Pを中心にして反対側の位置に形成されている。本実施形態においては、平面視において凹部22は円形状であるため、円形の中心点が重心位置Pになる。これにより加圧部材13の第1流路19から供給された液体は貯留室21全体に充填され、貯留室21内にエアだまりが発生しにくく、吐出不良が防がれる。なお、吐出流路22cの位置は本実施形態に限定されず、凹部22の底部22aのいずれの位置であってもよい。
【0038】
第2部材41の厚み、すなわち、上下方向の長さであって突条部41cの厚みを除いた長さは、液体吐出動作時に加圧部材13により貯留室21に収容された液体が加圧された際に、この加圧により第2部材41に撓みが生じない程度の厚みに設定される。一方、加圧部材13の小径部13aをできるだけ短くする観点から、第2部材41の厚みはできるだけ薄く設定される。
【0039】
図3に示すように、第2部材41にはノズルプレート20を加圧部11の底部12aに装着するためのネジ用貫通孔43が形成されている。本実施形態では、第1部材31のネジ用貫通孔38a、ネジ孔38bに対応する個数のネジ用貫通孔43が第1部材31のネジ用貫通孔38a、ネジ孔38bに対応する位置に形成されているが、ネジ用貫通孔43の個数や位置は本実施形態には限定されない。
【0040】
第2部材41は、少なくとも500度の熱に耐える耐熱性の素材からなる。第2部材41は金属から構成されることが好ましく、本実施形態ではステンレスから構成されているが、これに限定されず、アルミナ、ジルコニア等のセラミックから構成されていてもよい。
【0041】
(シート部材50)
図1~
図3に示すように、第1部材31および第2部材41は、その間にシート部材50を介して接合される。第1部材31と第2部材41とが分離自由に接合されるとは、シート部材50を介して接合されることを含む。シート部材50は、平面視において第1部材31および第2部材41に対応する形状および大きさであり、素材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられ、厚み50μmに設定されており、可撓性を有する。
図3に示すように、シート部材50には、第1部材31の凹部用貫通孔36および第2部材41の凹部用穴42に対応する位置に凹部用貫通孔51が形成され、第1部材31および第2部材41のネジ用貫通孔38a、43、ネジ孔38bに対応する位置にネジ用貫通孔52が形成されている。シート部材50は、少なくとも第1部材31の接合面31aに対向する上面50aが離型処理されている。離型処理とは、シート部材50が少なくとも第1部材31からはがれやすくなる処理を行うことであり、例えば、面に離型剤を塗布する処理である。
【0042】
シート部材50の素材として、本実施形態では、剛性のある樹脂シートとして、PET(ポリエチレンテレフタレート)を用いたが、低付着性の良好なものとしてPP(ポリプロピレン)も好ましく用いられる。また、例えばステンレス、アルミニウムなどの金属も使用でき、その場合、可撓性の観点より、厚み10μm~30μmが好ましく用いられる。第1部材31と第2部材41との間にシート部材50を備えることにより、第1部材31と第2部材41との間に液体が進入して固化し、第1部材31と第2部材41とが固着して分離できなくなるのを防いでいる。なお、本実施形態において、シート部材50を備えていない構成であってもよい。
【0043】
(第1部材31および第2部材41の接合)
図3に示すように、ノズルプレート20は、ノズルプレート20の第2部材41の下面41bからネジ60がネジ用貫通孔43、52、38aを通ってネジ孔38b、12fに挿入されることにより加圧部11に装着される。ネジ60はネジ頭の下端が第2部材41のネジ用貫通孔43内に位置し、ネジ60が第2部材41の下面41bから飛び出さない長さに設定される。第1部材31と第2部材41とがシート部材50を介して接合された状態において、第1部材31の溝37の下側の開放部分はシート部材50および第2部材41によって覆われ、溝37は液体流路23の一部となる。すなわち、第1部材31および第2部材41は液体流路23の一部に沿って分離自由となっている。
【0044】
(保護シート53)
第2部材41の下面41bには、吐出流路22cの吐出口22dを覆わないが、第2部材41のネジ用貫通孔43を覆うように保護シート53が貼り付けられている。本実施形態では、保護シート53は一枚のシート状であり、平面視において第2部材41に対応する大きさに形成されており、吐出口22dに対応する位置に孔53aが設けられて吐出口22dが開放されている。保護シート53の厚みは50μmに設定されている。保護シート53は、シート状基材の一方の面に粘着剤が塗布されたものであり、いわゆるマスキングテープが用いられる。シート状基材の素材として例えばポリエステル、和紙が好ましく用いられ、粘着剤には、アクリル系、シリコーン系が好ましく用いられる。保護シート53は少なくとも第2部材41のネジ用貫通孔43を覆うものであればよく、例えば複数枚の保護シート53により各ネジ用貫通孔43が覆われていてもよい。保護シート53を用いることで、吐出口22dから吐出された液体が第2部材41の下面を通ってネジ孔に進入してネジが外れなくなることを防ぐことができる。なお、本実施形態において、保護シート53は設けられていなくてもよい。
【0045】
(液体吐出装置10の動作)
本実施形態の液体吐出装置10の動作について説明する。前提として、すでに貯留室21には液体供給部100から液体が充填されているものとする。初期状態において貯留室21に液体が充填されていない場合には、液体供給部100から貯留室21に液体を充填しておく。初期状態での液体を充填する動作は後述の液体充填動作と同様である。
【0046】
液体吐出動作時には、アクチュエータ18により加圧部材13を第1の位置から下方向に第2の位置まで移動させる。加圧部材13により貯留室21に収容された液体が押圧され、吐出流路22cから液体が吐出される。所定の時間経過後にアクチュエータ18が縮小すると液体の吐出が停止され、加圧部材13は皿バネ17の付勢力により押し上げられて第1の位置に戻る。
【0047】
液体吐出動作の後に貯留室21への液体充填動作が行われる。液体供給部100の電磁バルブ102が開かれ、空圧供給源103からシリンジ101内に所定の空圧が供給されてシリンジ101から液体が押し出され、液体供給管105を介して液体吐出装置10のノズルプレート20の導入流路35に液体が導入され、溝37を通って凹部22の貯留室21に液体が流れる。液体吐出装置10は1回の液体吐出動作が完了した後で、液体充填動作を行う。液体供給動作と液体吐出動作とは交互に繰り返される。
【0048】
このような液体供給動作と液体吐出動作との繰り返しにより、ノズルプレート20の導入流路35や溝37には液体が残留したり、残留した液体が固化するため、導入流路35および溝37である液体流路23や貯留室21、吐出流路22c等を洗浄する必要がある。また、吐出対象の液体が変更される場合にも洗浄が必要になる。作業者は、洗浄の際に保護シート53を剥がしてネジ60を外す。これにより、加圧部11からノズルプレート20が取りはずされ、かつ第1部材31と第2部材41とが分離するため、液体流路23である第1部材31の溝37が開放され、溝37の洗浄がしやすくなる。また、第1部材31の導入流路35を溝37側から洗浄が可能となる。さらに、第2部材41の凹部22を形成する凹部用穴42および吐出流路22cを上側から洗浄しやすくなる。特にノズルプレート20が吐出する液体が主剤と硬化剤とからなる2液硬化性接着剤である場合や、UV硬化樹脂である場合には、液体がノズルプレート20内の液体流路23や貯留室21、吐出流路22cに残留して固化しやすいため、頻繁に洗浄する必要があり、洗浄のしやすさは重要である。
【0049】
また、吐出する液体が2液硬化性接着剤やUV硬化樹脂等の固化しやすい液体である場合、液体流路23、貯留室21、吐出流路22c内に液体が固化して付着し、洗浄ツールを用いても付着物が除去できないことがある。本実施形態では、第1部材31、第2部材41は耐熱性を有する素材から構成されているため、加圧部11からノズルプレート20を取り外し、第1部材31と第2部材41を分離して、第1部材31と第2部材41とを500度以上に加熱することができる。これにより、加熱により付着物が除去可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、吐出流路22cが設けられた第1部材31よりも下側に位置する第2部材41ではなく、加圧部11に近い第1部材31の上面33aに液体供給部100と接続するためのジョイント部34が設けられている。ノズルプレート20の下に位置するワーク(吐出対象物)と第2部材41との間の距離は数100μmから数mmであるため、ジョイント部34を第2部材41の側面に設けるとジョイント部34に接続される液体供給部100の液体供給管105などがワークと接触することがある。しかし、本実施形態においては、ジョイント部34を加圧部11に近い第1部材31の上面に設けることで、液体供給部100がワークと接触することがない。また、ノズルプレート20のジョイント部34に上側から液体供給部100を接続することができ、側面にジョイント部34が設けられる場合に比べて液体供給部100とノズルプレート20との接続が容易である。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。上記に示す実施形態では、第1部材31にのみ溝37が形成されているが、第2部材41にのみ溝37が形成されてもよい。
【0052】
また、
図6、
図7に示すように、溝37は、第1部材31に形成された溝37Aと第2部材41に形成された溝37Bとから構成されていてもよい。第2部材41の溝37Bは断面形状が溝37Aとは上下に反転した半円形状であり、第1部材31の溝37Aと対応する位置であって、同じ大きさに形成されている。第1部材31および第2部材41が接合された状態で、第1部材31の溝37Aおよび第2部材41の溝37Bにより断面が略円形状の液体流路23の一部が形成される。シート部材50は第1部材31の溝37Aおよび第2部材41の溝37Bに対応する位置に長孔50bを有しており、溝37A、37Bによる液体流路23内にシート部材50が位置しない。その他の構成については、
図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。なお、
図7においては、第1部材31、第2部材41、シート部材50、保護シート53のみを図示し、他の構成の図示を省略している。
【0053】
また、
図1の実施形態では、第1部材31および第2部材41の接合面は吐出流路22cの液体が流れる方向に直交する面であるが、これに限定されない。例えば、第1部材31の接合面と第2部材41の接合面31a、41aは例えば左右方向に対して傾いた斜めの面であってもよい。また、他の実施形態として、第1部材31の側面および下面に溝37が形成され、第2部材41は断面形状がL字形状となっており、第2部材41のL字状の一方の片の接合面が第1部材31の側面と接合し、第2部材41の他方の片の接合面が第1部材31の下面と接合することで、溝37の開放部分が覆われて液体流路23が形成されていてもよい。すなわち、第1部材31と第2部材41とは液体流路23(溝37)に沿って分離される。
【0054】
なお、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。「同じ」、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。四角形状、円形の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。「平行」「直交」とは、実質的に「平行」「直交」であることを意味し、厳密に「平行」「直交」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。
【符号の説明】
【0055】
10 液体吐出装置
11 加圧部
12 加圧部本体
13 加圧部材
14 駆動部
20 ノズルプレート
21 貯留室
22c 吐出流路
22d 吐出口
23 液体流路
31 第1部材
31a 接合面
41 第2部材
41a 接合面
50 シート部材
53 保護シート
【要約】
【課題】洗浄がしやすいノズルプレートおよび液体吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズルプレート20は、液体が収容される貯留室21と、前記貯留室21に液体を導入するための液体流路23と、貯留室21に収容された液体を吐出するための吐出流路22cとを有するものであり、第1部材31と、第1部材31と分離自由に接合される第2部材41とを有し、第1部材31および第2部材41とは、液体流路23の少なくとも一部に沿って分離される。
【選択図】
図2