(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】蒸発原料用容器及び固体気化供給システム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20230406BHJP
H01L 21/31 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 F
(21)【出願番号】P 2022108635
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021111968
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143411
【氏名又は名称】株式会社高純度化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】塚田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】柴山 卓眞
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094561(JP,A)
【文献】特開2020-128566(JP,A)
【文献】特開平05-098445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留し、蒸発させるための蒸発原料用容器であって、
外側容器に収容され当該外側容器とともに二重壁構造を形成する内側容器と、
蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触する蒸気接触面を有し前記内側容器に対して密着かつ着脱可能に設けられた内蓋、及び当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触しないようにかつ前記外側容器に対して着脱可能に設けられた外蓋、を有する蓋体と、
前記蓋体に配設されたキャリアガス導入口に連接されたガス導入管と、
を備え、
前記内側容器、前記内蓋及び前記ガス導入管は、気体及び固体の状態の薄膜形成用金属ハロゲン化合物との接触部分が、当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6Nの金属材料、で構成され、
前記キャリアガス導入口を介して供給されたキャリアガスが、前記ガス導入管を通って前記内側容器内に流入し、加熱により当該内側容器内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物と当該内側容器内に流入したキャリアガスとを混合させた混合ガスを、前記蓋体に配設された混合ガス導出口から放出する、
ことを特徴とする蒸発原料用容器。
【請求項2】
前記ガス導入管の先端が、前記内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の直上の位置まで延伸する構造を有し、
前記キャリアガスを、前記ガス導入管の先端から、前記内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発原料用容器。
【請求項3】
前記ガス導入
管の先端が、前記内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の中に埋設された状態で、かつ当該内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有し、
前記キャリアガスを、前記ガス導入管の先端から、前記内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の中で放出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発原料用容器。
【請求項4】
更に、前記内側容器には、その内部を、前記内側容器の上壁を構成する内蓋側の蒸発原料貯留空間と前記内側容器の底部壁側のキャリアガス拡散空間との2つの空間に仕切るための仕切壁が設けられ、
前記仕切壁には1つ以上の貫通孔が形成され、
前記ガス導入管の先端が、前記仕切壁を貫通し、前記内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することとし、
前記キャリアガスを、前記ガス導入管の先端から前記キャリアガス拡散空間で放出し、前記キャリアガス拡散空間で拡散したキャリアガスを、前記貫通孔を介して、前記
薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留する蒸発原料貯留空間に放出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発原料用容器。
【請求項5】
更に、前記内側容器の内部には、前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留するためのトレーが挿脱可能に収容され、
前記トレーの底部壁には1つ以上の貫通孔が形成され、
前記内側容器の底部壁の周縁部には、収容されたトレーを係止するための係止部が設けられ、当該係止部により、収容されたトレーの下面と前記内側容器の底部壁との間にキャリアガス拡散空間が形成され、
前記ガス導入管の先端が、前記トレーの底部壁を貫通し、前記内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することとし、
また、前記トレーが、前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6Nの金属材料、で構成され、
前記キャリアガスを、前記ガス導入管の先端から前記キャリアガス拡散空間で放出し、前記キャリアガス拡散空間で拡散したキャリアガスを、前記貫通孔を介して、前記トレー内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発原料用容器。
【請求項6】
前記トレーは前記内側容器内に積み重ねて収容可能とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の蒸発原料用容器。
【請求項7】
蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留し、蒸発させるための蒸発原料用容器であって、
外側容器に収容され当該外側容器とともに二重壁構造を形成する内側容器と、
蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触する蒸気接触面を有し前記内側容器に対して密着かつ着脱可能に設けられた内蓋、及び当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触しないようにかつ前記外側容器に対して着脱可能に設けられた外蓋、を有する蓋体と、
を備え、
前記内側容器の内部には、前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留するための少なくとも1つのトレーが挿脱可能に収容される構成とし、
前記内側容器内に収容されるトレーには、底部壁の中心部に、円筒形状の側壁によって形成された第1の貫通孔であるガス導入管を設けることとし、
収容されるトレーが複数の場合には、前記内側容器内に複数のトレーを積み重ねて収容することによって各トレーに設けられたすべてのガス導入管を連設し、
前記トレーの底部壁に1つ以上の第2の貫通孔を形成し、
前記内側容器の底板部には、その表面中心部から周縁に向かって放射状に少なくとも一つの溝部を形成し、更に、前記トレーの収容時には、前記底板部の溝部以外の部分と当該トレーの下面とを当接させることによって当該トレーを保持するとともに、当該トレーの下面と前記溝部の底部との間にキャリアガス拡散空間を形成し、
前記内側容器、前記内蓋及び前記トレーは、気体及び固体の状態の薄膜形成用金属ハロゲン化合物との接触部分が、当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6Nの金属材料、で構成され、
前記蓋体を装着することによって当該蓋体に配設されたキャリアガス導入口に前記ガス導入管の上端開口部分を嵌挿した状態において、当該キャリアガス導入口を介して供給されたキャリアガスを、前記ガス導入管の先端から前記キャリアガス拡散空間に向けて放出し、更に、当該キャリアガス拡散空間で拡散されたキャリアガスを、前記第2の貫通孔を介して前記トレー内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出し、加熱によりトレー内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物と前記第2の貫通孔を介して流入したキャリアガスとを混合させた混合ガスを、前記蓋体に配設された混合ガス導出口から放出する、
ことを特徴とする蒸発原料用容器。
【請求項8】
前記内側容器を側壁部と底板部に分離可能とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の蒸発原料用容器。
【請求項9】
前記内側容器の内部に、最大長さが1~30mmであってかつ前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同材質の、部材を一以上配置する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項10】
金属部材の表面に電解研磨又は化学研磨を実施する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項11】
電解研磨又は化学研磨が実施された金属部材の表面に、更に、フッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施する、
ことを特徴とする請求項10に記載の蒸発原料用容器。
【請求項12】
金属部材の表面にフッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項13】
更に、
前記外側容器と前記外蓋とを固定するための締結部材、
を備え、
前記締結部材は、前記外側容器と前記外蓋に設けられたボルト挿入孔に挿入されたボルト部材、及び当該ボルト部材に螺合して締結可能なナット部材、により構成される、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項14】
前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物が一般式:MXnで表すことができる化合物であり、
Mが前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属の元素を示し、Xがハロゲン元素を示し、nがXの数を示す、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項15】
化学気相成長(CVD)法による成膜に用いられる蒸発原料を貯留する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項16】
原子層堆積(ALD)法による成膜に用いられる蒸発原料を貯留する、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項17】
前記混合ガス導出口よりも下流側のガス流路にバルブを設置することとし、
前記バルブを、CV値(水置換)が0.2以上の真空バルブとする、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1つに記載の蒸発原料用容器と、
蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物と、
を備える、
ことを特徴とする固体気化供給システム。
【請求項19】
更に、
キャリアガス導入口から前記蒸発原料用容器内にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給手段、
を備える、
ことを特徴とする請求項18に記載の固体気化供給システム。
【請求項20】
前記蒸発原料用容器の側壁、又は側壁及び底板を加熱し、前記蒸発原料用容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物を加熱するとともに、キャリアガス導入口から供給され更にガス導入管を流れて内側容器内に放出されるキャリアガスについても同時に加熱し、
加熱により蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物と前記ガス導入管内で加熱されたキャリアガスとを混合させ、混合ガスを生成する、
ことを特徴とする請求項19に記載の固体気化供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発原料用容器、及びその蒸発原料用容器を用いた固体気化供給システムに関する。更に詳しくは、耐腐食性に優れた蒸発原料用容器、及びその蒸発原料用容器を用いた固体気化供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、化学気相成長(CVD)法による成膜に用いられる蒸発原料を貯留するための容器として、蒸発原料用容器が知られている。そして、この蒸発原料用容器である蒸発器を構成する材料として、ステンレス鋼などが報告されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の蒸発器では、容器壁にステンレス鋼が採用されている。しかしながら、このステンレス鋼製の容器壁は、熱伝導性がよいものであるが、耐腐食性が十分ではないという問題があった。例えば、ステンレス鋼は、耐腐食性を有するものであるが、蒸発原料と触れることで僅かに腐食し、極微量の不純物が蒸発原料中に混ざることがあった。また、ハステロイなどのその他の材料であっても、ステンレス鋼と同様に極微量の不純物が蒸発原料中に混ざることがあった。
【0005】
また、近年、より反応性の高い蒸発原料として薄膜形成用金属ハロゲン化合物の使用が検討されている。このような薄膜形成用金属ハロゲン化合物は、水分と反応して塩化水素などの酸性ガスを発生するため、この塩酸ガスにより、蒸発原料用容器の腐食がより顕著になるという問題があった。
【0006】
一方で、最近では、半導体製品の更なる高性能化が求められるようになり、その結果、より高純度の蒸発原料(即ち、不純物の割合がより小さい蒸発原料)であることが要求されてきている。また、原子層堆積(ALD)法による成膜を行う場合、その膜には、原子レベルでの無欠陥や均一性が求められるため、蒸発原料に含まれる不純物の量を極限まで少なくする必要がある。このため、蒸発原料用容器の腐食に対する対策は更に重要になっている。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、耐腐食性に優れた蒸発原料用容器、及びその蒸発原料用容器を用いた固体気化供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる蒸発原料用容器は、蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留し、蒸発させるための蒸発原料用容器であって、外側容器に収容されこの外側容器とともに二重壁構造を形成する内側容器と、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触する蒸気接触面を有し内側容器に対して密着かつ着脱可能に設けられた内蓋、及び当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触しないようにかつ外側容器に対して着脱可能に設けられた外蓋、を有する蓋体と、蓋体に配設されたキャリアガス導入口に連接されたガス導入管と、を備え、上記内側容器、上記内蓋及び上記ガス導入管は、気体及び固体の状態の薄膜形成用金属ハロゲン化合物との接触部分が、上記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6N(純度99~99.9999%)の金属材料、で構成される、ことを特徴とする。そして、キャリアガス導入口を介して供給されたキャリアガスが、ガス導入管を通って内側容器内に流入し、加熱により内側容器内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物とその内側容器内に流入したキャリアガスとを混合させた混合ガスを、蓋体に配設された混合ガス導出口から放出する、こととした。
【0009】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、ガス導入管の先端が、内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の直上の位置まで延伸する構造を有することを特徴とする。そして、キャリアガスを、ガス導入管の先端から、内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出する、こととした。
【0010】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、ガス導入管の先端が、内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の中に埋設された状態で、かつ内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することを特徴とする。そして、キャリアガスを、ガス導入管の先端から、内側容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物の中で放出する、こととした。
【0011】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器において、上記内側容器には、その内部を、内側容器の上壁を構成する内蓋側の蒸発原料貯留空間と内側容器の底部壁側のキャリアガス拡散空間との2つの空間に仕切るための仕切壁が設けられ、この仕切壁には1つ以上の貫通孔が形成され、ガス導入管の先端が、仕切壁を貫通し、内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することを特徴とする。そして、キャリアガスを、ガス導入管の先端からキャリアガス拡散空間で放出し、キャリアガス拡散空間で拡散したキャリアガスを、貫通孔を介して、薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留する蒸発原料貯留空間に放出する、こととした。
【0012】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器おいて、上記内側容器の内部には、薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留するためのトレーが挿脱可能に収容され、トレーの底部壁には1つ以上の貫通孔が形成され、内側容器の底部壁の周縁部には、収容されたトレーを係止するための係止部が設けられ、この係止部により、収容されたトレーの下面と内側容器の底部壁との間にキャリアガス拡散空間が形成され、ガス導入管の先端が、トレーの底部壁を貫通し、内側容器の底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有し、更に、トレーが、薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6Nの金属材料、で構成される、ことを特徴とする。そして、キャリアガスを、ガス導入管の先端からキャリアガス拡散空間で放出し、キャリアガス拡散空間で拡散したキャリアガスを、貫通孔を介して、トレー内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出する、こととした。
【0013】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器おいて、上記トレーは、内側容器内に積み重ねて収容可能とする、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留し、蒸発させるための蒸発原料用容器であって、外側容器に収容され当該外側容器とともに二重壁構造を形成する内側容器と、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触する蒸気接触面を有し内側容器に対して密着かつ着脱可能に設けられた内蓋、及び当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物が接触しないようにかつ外側容器に対して着脱可能に設けられた外蓋、を有する蓋体と、を備え、内側容器の内部には、薄膜形成用金属ハロゲン化合物を貯留するための少なくとも1つのトレーが挿脱可能に収容される構成とした。
【0015】
また、内側容器内に収容されるトレーには、底部壁の中心部に、円筒形状の側壁によって形成された第1の貫通孔であるガス導入管を設けることとした。そして、収容されるトレーが複数の場合には、内側容器内に複数のトレーを積み重ねて収容することによって各トレーに設けられたすべてのガス導入管を連設することとした。
【0016】
また、各トレーの底部壁に1つ以上の第2の貫通孔を形成した。また、内側容器の底板部には、その表面中心部から周縁に向かって放射状に少なくとも一つの溝部を形成し、更に、トレーの収容時には、底板部の溝部以外の部分と当該トレーの下面とを当接させることによって当該トレーを保持するとともに、当該トレーの下面と前記溝部の底部との間にキャリアガス拡散空間を形成する。
【0017】
そして、内側容器、内蓋及びトレーは、気体及び固体の状態の薄膜形成用金属ハロゲン化合物との接触部分が、当該薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同じ金属材料であって、かつ純度が2N~6Nの金属材料、で構成される。
【0018】
このように構成された蒸発原料用容器は、蓋体を装着することによって当該蓋体に配設されたキャリアガス導入口に上記ガス導入管の上端開口部分を嵌挿した状態において、当該キャリアガス導入口を介して供給されたキャリアガスを、上記ガス導入管の先端からキャリアガス拡散空間に向けて放出し、更に、当該キャリアガス拡散空間で拡散されたキャリアガスを、第2の貫通孔を介してトレー内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物に向けて放出し、加熱によりトレー内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物と第2の貫通孔を介して流入したキャリアガスとを混合させた混合ガスを、蓋体に配設された混合ガス導出口から放出する、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、内側容器を側壁部と底板部に分離可能とすることが好ましく、更には、底板部の表面中心部から周縁に向かって少なくとも一つ以上の溝を形成することが好ましい。
【0020】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、上記内側容器の内部に、最大長さが1~30mmであってかつ薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属と同材質の、部材を一以上配置する、ことが好ましい。
【0021】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、金属部材の表面に電解研磨又は化学研磨を実施する、ことが好ましい。
【0022】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、電解研磨又は化学研磨が実施された金属部材の表面に、更に、フッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施する、ことが特に好ましい。
【0023】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、金属部材の表面にフッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施する、ことが好ましい。
【0024】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、外側容器と外蓋とを固定するための締結部材、を更に備え、この締結部材は、外側容器と外蓋に設けられたボルト挿入孔に挿入されたボルト部材、及びこのボルト部材に螺合して締結可能なナット部材、により構成される、ことが好ましい。
【0025】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、薄膜形成用金属ハロゲン化合物が一般式:MXnで表すことができる化合物である、ことが好ましい。ただし、Mが前記薄膜形成用金属ハロゲン化合物を構成する金属の元素を示し、Xがハロゲン元素を示し、nがXの数を示す。
【0026】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、化学気相成長(CVD)法による成膜に用いられる蒸発原料を貯留する、ことが好ましい。
【0027】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、原子層堆積(ALD)法による成膜に用いられる蒸発原料を貯留する、ことが更に好ましい。
【0028】
また、本発明にかかる蒸発原料用容器は、混合ガス導出口よりも下流側のガス流路にバルブを設置することとし、このバルブを、CV値(水置換)が0.2以上の真空バルブとする、ことが好ましい。
【0029】
また、本発明にかかる固体気化供給システムは、上記本発明にかかる蒸発原料用容器と、蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物と、を備える、ことを特徴とする。
【0030】
また、本発明にかかる固体気化供給システムは、更に、キャリアガス導入口から蒸発原料用容器内にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給手段、を備える、こととした。
【0031】
また、本発明にかかる固体気化供給システムは、蒸発原料用容器の側壁、又は側壁及び底板を加熱し、蒸発原料用容器内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物を加熱するとともに、キャリアガス導入口から供給され更にガス導入管を流れて内側容器内に放出されるキャリアガスについても同時に加熱し、加熱により蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物とガス導入管内で加熱されたキャリアガスとを混合させ、混合ガスを生成する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムは、耐腐食性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第1の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第2の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第3の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、仕切壁の構造の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第4の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第5の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第6の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、底板部の表面形状の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良などが加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。また、本願の明細書及び図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0035】
<第1の実施形態>
本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
<全体構成>
図1は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第1の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した蒸発原料G2(蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2)、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0037】
図1に示す蒸発原料用容器100は、蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留し、蒸発させるための容器であり、例えば、内側容器1と、外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、締結部材4とを備える。この蒸発原料用容器100は、
図1に示すように、内側容器1及び外側容器2によって構成された二重壁構造を有し、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留する内側容器1が実質的な容器本体を構成する。
【0038】
上記内側容器1は、例えば、円筒形状に形成された容器であり、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sや、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2及び混合ガスG3、と接触する容器壁が設けられている。
【0039】
上記外側容器2は、内側容器1と同様の円筒形状に形成されかつ内側容器1よりも一回り大きく形成された容器であり、内部に内側容器1を収容することにより上記二重壁構造の容器を形成する。また、外側容器2は、その上端部に、外蓋3bと密着可能に形成された鍔部が設けられている。なお、これら2つの容器(1,2)の形状については、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2及び混合ガスG3のガス拡散を容易にする形状であればよく、円筒形状に限定するものではない。
【0040】
上記内蓋3aは内側容器1の上端部周縁に密着かつ着脱可能に設けられ、また、上記外蓋3bは外側容器2に対して着脱可能に設けられ、これら2つの蓋により蓋体3を形成する。そして、この蓋体3には、内側容器1内にキャリアガスG1を供給するためのキャリアガス導入口5、及び蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2とキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3を外部に放出するための混合ガス導出口6、が配設される。本実施形態では、一例として、上記キャリアガス導入口5を、円盤状に形成された蓋体3(内蓋3a、外蓋3b)の中心部に貫通可能に設けることとし、更に、上記混合ガス導出口6を、蓋体3の中心部以外の場所に貫通可能に設けることとした。これにより、本実施形態では、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、キャリアガス導入口5に連設されたガス導入管7を通って内側容器1内に流入し、内側容器1内で拡散する。そして、内側容器1内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と内側容器1内で拡散したキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3が、混合ガス導出口6から放出される。
【0041】
また、本実施形態の蒸発原料用容器100においては、
図1に示すように、蓋体3の中心部に設けられたキャリアガス導入口5に連設されたガス導入管7の先端が、内側容器1内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sの直上の位置まで延伸する構造を有することとした。これにより、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、ガス導入管7内を流れ、その先端から薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに向けて放出される(吹き付け法)。また、ガス導入管7を上記のように構成することによって、内側容器1を外部から加熱した際に、ガス導入管7を流れて内側容器1内に放出されるキャリアガスG1についても同時に加熱することができる。このため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに対して、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができ、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0042】
上記締結部材4は、外側容器2と外蓋3bとを固定するための部材であり、例えば、外側容器2の鍔部と外蓋3bに設けられたボルト挿入孔に挿入されたボルト部材、及びこのボルト部材に螺合して締結可能なナット部材、により構成される。
【0043】
なお、本実施形態の蒸発原料用容器100は、蓋体3に設けられたキャリアガス導入口5とそのキャリアガス導入口5へ向けてキャリアガスG1を流すためのガス配管(図示せず)とを接続する継手部材(図示せず)、及び同じく蓋体3に設けられた混合ガス導出口6とその混合ガス導出口6から放出される混合ガスG3を流すためのガス配管(図示せず)とを接続する継手部材(図示せず)、を更に設けることとしてもよい。
【0044】
<各部材の材料>
また、本実施形態の蒸発原料用容器100においては、内側容器1の容器壁及びガス導入管7が、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%(2N~6N)の銅、純度99~99.9999%(2N~6N)のアルミニウム、又は純度99~99.9999%(2N~6N)のチタンなどの高純度の金属材料、で構成されている。これにより、熱伝導性に優れ、内側容器1の容器壁及びガス導入管7を良好に加熱することができる。なお、「純度」とは、定量分析により決定した主成分の試料中に占める割合(重量比)のことを意味する。例えば、内側容器1の容器壁及びガス導入管7を構成する銅、アルミニウム又はチタンの純度が99%未満であると、これらの部材の熱伝導性が低下する点において好ましくない。また、内側容器1の容器壁及びガス導入管7を構成する銅、アルミニウム又はチタンの純度が99.9999%を超えると、これらの部材の強度が低下する点において好ましくない。
【0045】
なお、内側容器1の容器壁には、側壁、底部壁、及び内側容器1の上壁を構成する蓋体3の蒸気接触面(内蓋3aの蒸気接触面に相当)を含む。即ち、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sが蒸発原料用容器100内に投入された際に、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2が接触する内側容器1内の壁部は、すべて容器壁である。
【0046】
例えば、蒸発原料が塩化アルミニウムの場合、内側容器1内においては、塩化アルミニウムが水分と反応して塩酸などの酸化ガスが発生する。しかしながら、内側容器1の容器壁及びガス導入管7に純度99.9%のアルミニウムを使用すると、例えば、この塩酸ガスにより内側容器1内で腐食が発生した場合であっても、アルミニウムが溶出することになり、キャリアガスG1と塩化アルミニウムの蒸発ガスG2とを混合させた混合ガスG3が、アルミニウム以外の元素によって汚染されることはない。
【0047】
なお、内側容器1の容器壁以外の部分及び外側容器2の材料は、特に制限はないが、製造上の観点から、上記同様の金属材料で構成されることが好ましい。
【0048】
また、蓋体3の蒸気接触面以外及び締結部材4の材料としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル合金、アルミニウム合金、スーパーステンレス、ステンレス鋼などを使用することができる。これらのうち、ニッケル合金としては、例えば、ハステロイやインコネルなどを使用することができ、このハステロイ及びインコネルは、Ni、Moを含む合金のことである。アルミニウム、銅、チタンは、その純度が99%以上であることが好ましく、純度99~99.9999%であることが更に好ましい。
【0049】
ハステロイは、その組成については適宜決定することができるが、具体的には、Niが40~60質量%、Moが30~50質量%である。
【0050】
また、インコネルについても、その組成については適宜決定することができるが、具体的には、Niが20~50質量%、Moが70~50質量%である。
【0051】
また、スーパーステンレスは、Niを17.00~19.50質量%、Crを19.00~21.00質量%、Moを5.50~6.50質量%、Nを0.16~0.24質量%、Cuを0.50~1.00質量%含み、更に、Cが0.020質量%以下、Siが0.80質量%以下、Mnが1.00質量%以下、Pが0.030質量%以下、Sが0.015質量%以下の、耐腐食性を高めたステンレス鋼である。
【0052】
<コーティング及び研磨>
また、本実施形態の蒸発原料用容器100において、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の金属部材(継手部材(図示せず)などを含む)には、それぞれフッ素樹脂コーティングを実施することとした。なお、本実施形態において各金属部材に実施するコーティングは、フッ素樹脂コーティングに限るものではなく、例えば、セラミックスコーティングであってもよい。
【0053】
また、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の金属部材には、上記コーティングに代えて、それぞれの表面に電解研磨を実施することとしてもよい。また、電解研磨が実施された各表面に、更に、フッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施することとしてもよい。これにより、本実施形態の蒸発原料用容器100は、優れた耐腐食性を実現できる。特に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sは、水分と反応して塩化水素などの酸性ガスを発生するため、従来の蒸発原料用容器では、容器の内部だけでなく、容器の外側や蓋の表面、及びこの容器を構成するその他の金属部材にも腐食を生じることがあった。しかしながら、本実施形態の蒸発原料用容器100は、薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と接触する内側容器1の容器壁及びガス導入管7だけではなく、内側装置1の容器壁以外の部分、外側容器2、蓋体3の蒸気接触面以外の部分及び締結部材4など、実質的に薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と接触しない箇所についても、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨が実施されているため、極めて優れた耐腐食性を有する。
【0054】
また、フッ素樹脂コーティングに使用する材料は、特に制限はなく、コーティング可能なフッ素樹脂であればよい。例えば、少なくとも一部の水素がフッ素に置換された樹脂などを挙げることができる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(商品名「テフロン(登録商標)」)などを使用することができる。このような材料を使用すると、不純物が蒸発原料中に混ざることを更に良好に抑制することができる。
【0055】
また、フッ素樹脂コーティングの厚さは、特に制限はないが、例えば、150(下限値)~500(上限値)μmとすることが好ましく、200~400μmとすることが更に好ましく、250~350μmとすることが特に好ましい。なお、300μm程度が最も好ましい。フッ素樹脂コーティングの厚さが上記下限値未満の場合には、十分な耐腐食性が得られないことがある。また、上記上限値超の場合には、層が厚くなりすぎてしまうことがある。
【0056】
また、フッ素樹脂コーティングは、例えば、蒸着により形成することができるが、その蒸着方法は公知の方法を採用することができ、特に制限はない。
【0057】
また、フッ素樹脂コーティングは、内側容器1の内面及び外面、外側容器2の内面及び外面、蓋体3の表面、締結部材4の表面、ガス導入管7の内面及び外面など、この容器を構成する全ての面に実施されていることが好ましい。即ち、フッ素樹脂コーティングは、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2及び混合ガスG3や、薄膜形成用金属ハロゲン化合物S、と接触する面だけでなく、これらと接触しないと考えられている各部材の表面を含めた全域に実施されていることが好ましい。
【0058】
上記電解研磨については、例えば、下記の実施条件によって実施された研磨処理であることが好ましい。なお、このような研磨処理を実施し、更にフッ素樹脂コーティングを実施する場合においては、フッ素樹脂コーティングの密着性が良くなる。
【0059】
実施条件:
直径250~350mmの電極を用い、電流密度を28.5mA/cm2以下、電解溶液の濃度を15~30質量%、液流量を1~8L/分、電解溶液のpHをアルカリ性とする。更に、研磨条件を、圧力20~60kPa、回転数350rpm以下とし、砥粒として、砥粒径0.020~0.10μmの無機粒子を用いる。
【0060】
なお、上記実施条件において、電流密度は15~20mA/cm2とすることが好ましい。また、電解溶液のpHは、11~11.5であることが好ましい。
【0061】
また、研磨条件の回転数は50~350rpmとする。砥粒は無機粒子を用いることとし、この無機粒子は、特に制限はないが、例えば、コロイダルシリカなどを使用することができる。
【0062】
例えば、上記実施条件で研磨処理を行った内側容器1の容器壁の表面は、その表面粗さをRa=0.8~1.1μmとすることができる。
【0063】
また、電解研磨が実施されているか否かの確認は、例えば、電子顕微鏡と原子間力顕微鏡(AFM)の両方を使用し、その表面を観察することによって行う。また、別の方法としては、二次電子質量分析によってその表面状態を検査することも可能である。
【0064】
上述したように、本実施形態の蒸発原料用容器100は、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の金属部材のそれぞれに、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨が実施されているものであるが、電解研磨に代えて、例えば、化学研磨を実施したものであってもよい。化学研磨によっても、優れた耐腐食性を得ることができる。また、化学研磨を実施した後に、更にフッ素樹脂コーティング又はセラミックスコーティングを実施する場合には、電解研磨を実施する場合と同様に、コーティングの密着性が更に良くなる。例えば、フッ素樹脂コーティングとの界面には、水分や酸素などのコンタミネーションが少なくなり、フッ素樹脂コーティングの密着性を向上させることができる。
【0065】
<キャリアガス及び蒸発原料>
また、本実施形態の蒸発原料用容器100においては、キャリアガスG1として、例えば、水素、ヘリウム、窒素、酸素、アルゴン、一酸化炭素、二酸化炭素などを使用する。具体的には、ヘリウム、アルゴンを使用することが好ましい。ただし、蒸発原料との反応の影響がない範囲であれば、水素、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素の使用が許容される。
【0066】
また、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sは、下記一般式で表すことができる化合物であることが好ましい。
【0067】
一般式 : MXn
但し、上記一般式において、Mは、Al、Cu、Ti、Hf、Zr、Ta、Wのいずれかの元素を示す。Xは、ハロゲン元素を示す。nは、Xの数である。
【0068】
上記一般式で表すことができる化合物としては、例えば、Xが塩素(Cl)である場合、塩化アルミニウム(AlCl3)、塩化銅(CuCl又はCuCl2)、塩化チタン(TiCl4)、塩化ハフニウム(HfCl4)、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、塩化タンタル(TaCl5)、五塩化タングステン(WCl5)、六塩化タングステン(WCl6)を挙げることができる。
【0069】
本実施形態の蒸発原料用容器100は、上記一般式で表すことができる化合物のように腐食性が強い蒸発原料であっても、良好に保存することができ、蒸発原料に存在する不純物の割合が非常に小さくなる。
【0070】
また、本実施形態の蒸発原料用容器100は、加熱又は冷却が可能な媒体と接触することによって、容器内の薄膜形成用金属ハロゲン化合物を気体(G2)又は固体(S)のいずれかの状態で保持することが可能である。
【0071】
また、本実施形態の蒸発原料用容器100は、化学気相成長(CVD)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法、原子層堆積(ALD)法による成膜に用いられる蒸発原料を溜めておくための容器として使用することができ、例えば、原子層堆積(ALD)法による成膜に用いられる容器として使用することが好ましい。具体的には、原子層堆積(ALD)法は、化学気相成長(CVD)法によって形成される膜よりも薄い膜を形成することが可能な方法であり、数nm程度の非常に薄い膜を成膜することができる。しかしながら、その反面、膜の精度が蒸発原料に含まれる不純物による影響を受けやすい。そこで、本実施形態では、蒸発原料用容器100を用いることによって、蒸発原料に含まれる不純物を極微量とする。
【0072】
<バルブ>
また、本実施形態の蒸発原料用容器100においては、キャリアガス導入口5よりも上流側のキャリアガス流路、及び混合ガス導出口6よりも下流側の混合ガス流路に、バルブ(図示せず)を設置することとしてもよい。例えば、これらのバルブを開閉することにより、蒸発原料用容器100(内側容器1内)へのキャリアガスG1の供給、及び内側容器1からの混合ガスG3の放出、を制御することができる。
【0073】
なお、上述した2つのバルブのうち、混合ガス導出口6よりも下流側の混合ガス流路に設置されたバルブは、CV値(水置換)が0.2以上のバルブであることが好ましい。特に、このバルブは、ベローズバルブに代表される真空バルブであることがより好ましい。このようなバルブを備えることによって、混合ガスG3の放出をより効率的に行うことができる。例えば、CV値(水置換)が0.2未満であると、大流量の混合ガスG3の流通が阻害され、混合ガスG3がバルブ内で滞留することがある。混合ガスG3がバルブ内で滞留すると、気化熱から温度減少が生じ、バルブ内で蒸発原料(薄膜形成用金属ハロゲン化合物)が固着して、バルブが閉塞してしまうことがある。CV値(水置換)が0.2以上のバルブを設置することにより、バルブの閉塞を抑制することができ、混合ガスG3を支障なく放出することができる。なお、バルブのCV値については、0.2以上が好ましく、0.6以上が更に好ましく、1.0以上が特に好ましい。CV値の上限値については特に制限はないが、例えば、3.0又は2.5とすることが好ましい。上述したようなCV値のバルブとしては、例えば、ダイヤフラム、ボールバルブ、ベローズバルブなどを使用することができる。これらのバルブは、バルブ機能、本体材質、シート材質、温度に因らないものであることが好ましい。
【0074】
なお、上記バルブのCV値は、このバルブを全開にし、水を流通させることによって測定された水置換の値である。具体的には、バルブの流入側及び流出側にて、バブルを流れる流体(水)の流量を測定する。例えば、流量計を用いて、バルブを流れる流体の流量Qを測定する。次に、圧力計をバルブの前後に配置し、バルブを通過する際の流体の圧力損失ΔPを測定する。なお、流体の流量Q及びバルブを通過する際の圧力損失ΔPについては、実際の使用条件に合わせて計測することとする。例えば、実際の使用条件に近い値となるように測定を行う。また、混合ガスG3の比重と水の比重とから、水の流量Qを定めることができる。例えば、水の比重を1とし、各蒸発原料の比重を1.40~1.68とし、キャリアガスG1の流量を500cc/分に設定した場合、水の流量Qは、300cc/分程度となる。CV値については15℃の条件で測定することとする。
【0075】
<蒸発原料用容器の製造方法>
本実施形態の蒸発原料用容器100は、例えば、以下のように製造する。まず、公知の方法で、素材をくりぬくこと、又はロール状の加工物を溶接することによって、鍔部を有する外側容器2を作製する。次に、容器本体を構成する内側容器1を作製する。この内側容器1は、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。そして、外側容器2の内部に内側容器1を収容することにより二重壁構造の容器を作製する。次に、蓋体3を作製する。具体的には、内側容器1に対して着脱可能とする内蓋3aと、外側容器2に対して着脱可能とする外蓋3bとを作製する。なお、少なくとも内側容器1の上壁を構成する内蓋3aの蒸気接触面は、内側容器1同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。また、外側容器2の鍔部及び外蓋3bには、締結部材4を螺合するためのボルト挿入孔を形成し、このボルト挿入孔に適合した締結部材4(ボルト部材及びナット部材)を用意する。そして、蓋体3に配設されたキャリアガス導入口5に連設するガス導入管7と、蓋体3に配設されたキャリアガス導入口5及び混合ガス導出口6に接続する各種の継手部材(図示せず)と、を用意する。また、ガス導入管7についても、内側容器1同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。このようにして、蒸発原料用容器100を構成するための未処理の各部材を得る(準備工程)。
【0076】
次に、上記準備工程で得た各部材を研磨処理する(研磨工程)。具体的には、各部材の表面を研磨する。研磨処理においては、上記実施条件による電解研磨を実施することが好ましい。
【0077】
次に、研磨工程により研磨された各部材に対して、フッ素樹脂コーティングを実施する(コーティング工程)。このとき、上述したように、フッ素樹脂コーティングは蒸着により形成する。なお、上記研磨工程において、上記実施条件による電解研磨を実施した場合は、必ずしもフッ素樹脂コーティングを実施する必要はない。
【0078】
次に、研磨及びコーティングが実施された各部材を組み立てて蒸発原料用容器100を作製する(組み立て工程)。なお、本実施形態の蒸発原料用容器100を製造する方法については、上記方法に限定されるものではない。
【0079】
<蒸発原料用容器の使用方法>
本実施形態においては、まず、蒸発原料用容器100のキャリアガス導入口5を、継手部材などを介してキャリアガスタンク(図示せず)と連結し、更に、混合ガス導出口6を、継手部材などを介して半導体処理設備(図示せず)に連結する。
【0080】
次に、蒸発原料用容器100の内側容器1に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを投入し、その後、蓋体3(内蓋3a、外蓋3b)で内側容器1を密閉し、外側容器2の鍔部と外蓋3bとを締結部材4により固定する。
【0081】
次に、内側容器1の容器壁を外部から加熱することによって薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを加熱するとともに、キャリアガスタンク(図示せず)からキャリアガスG1を蒸発原料用容器100の内側容器1内に供給する。これにより、外部からの加熱によって内側容器1内で蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2とガス導入管7内で加熱されたキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3が、混合ガス導出口6から放出される。なお、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sは、加熱によって蒸発(気化)して原料ガスとなる。その後、半導体処理設備(図示せず)において、化学気相成長(CVD)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法、又は原子層堆積(ALD)法による成膜が行われる。この半導体処理設備は、成膜対象である基板が配置される設備(例えば、CVD装置の反応室)であり、この半導体処理設備内に配置された基板上に所望の薄膜を形成する。
【0082】
これにより、本実施形態の蒸発原料用容器100は、耐腐食性に優れ、蒸発原料中における容器由来の不純物の割合が非常に小さくなり、高純度の混合ガスG3を半導体処理設備(図示せず)に供給することができる。本実施形態の蒸発原料用容器100は、CVD,ALD,MOCVDなどの気相としてガス化させる用途の容器であり、例えば、半導体処理設備に混合ガスG3を供給するための圧力容器として用いられる。
【0083】
<固体気化供給システム>
つづいて、本実施形態の蒸発原料用容器100を用いた固体気化供給システムについて説明する。本実施形態の固体気化供給システムは、上記蒸発原料用容器100と、内側容器1内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sと、を備えたものである。なお、この固体気化供給システムは、内側容器1内にキャリアガスG1を供給するためのキャリアガス供給手段(図示せず)を更に備えていてもよい。また、本実施形態の固体気化供給システムは、蒸発原料用容器100における混合ガス導出口6よりも下流側に、混合ガスG3を貯留するためのバッファタンク(図示せず)を更に備えていてもよい。ただし、上記バッファタンクは任意の構成要素である。バッファタンクを備えている場合には、例えば、蒸発原料用容器100で生成された混合ガスG3が、バッファタンクから半導体処理設備(図示せず)に供給される。
【0084】
本実施形態の固体気化供給システムにおいては、キャリアガス導入口5から供給されたキャリアガスG1が蒸発原料用容器100内に流入し、外部からの加熱により蒸発原料用容器100内で蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2とキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3を、混合ガス導出口6から放出する。これにより、本実施形態の固体気化供給システムにおいては、より高純度の蒸発原料を高流量で半導体処理設備(図示せず)に供給することができる。
【0085】
具体的には、本実施形態の固体気化供給システムは、以下のように構成されていることが好ましい。まず、蒸発原料用容器100の内側容器1内に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを投入する。次に、蒸発原料用容器100の側壁、又は側壁及び底板を外部から加熱することによって、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを加熱するとともに、ガス導入管7を流れて内側容器1内に放出されるキャリアガスG1についても同時に加熱する。そして、加熱により内側容器1内で蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2とガス導入管7で加熱されたキャリアガスG1とを混合させ、混合ガスG3を生成する。これにより、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができるため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0086】
<第2の実施形態>
つづいて、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0087】
<全体構成>
図2は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第2の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0088】
図2に示す蒸発原料用容器200は、前述した蒸発原料用容器100と同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留しかつ蒸発させるための容器であり、例えば、二重壁構造を形成する2つの容器である内側容器1及び外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、外側容器2と外蓋3bとを固定するための締結部材4と、を備える。一方で、本実施形態の蒸発原料用容器200は、ガス導入管7aの構造が、第1の実施形態の蒸発原料用容器100と異なる。
【0089】
具体的には、本実施形態の蒸発原料用容器200においては、
図2に示すように、蓋体3の中心部に設けられたキャリアガス導入口5に連設されたガス導入管7aの先端が、内側容器1内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sの中に埋設された状態で、かつ内側容器1底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することとした。これにより、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、ガス導入管7a内を流れ、その先端から、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sの中で放出される(吹き込み法)。また、ガス導入管7aを上記のように構成することによって、内側容器1を外部から加熱した際に、ガス導入管7aを流れて内側容器1内に放出されるキャリアガスG1についても同時に加熱することができる。これにより、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに対して、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができるため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0090】
<各部材の材料>
上記ガス導入管7aは、前述した第1の実施形態のガス導入管7と同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成されている。
【0091】
<コーティング及び研磨>
また、上記ガス導入管7aは、前述した第1の実施形態と同様に、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨を実施する。なお、フッ素樹脂コーティングに代えてセラミックスコーティングを実施することとしてもよい。また、電解研磨に代えて化学研磨を実施することとしてもよい。
【0092】
なお、その他の蒸発原料用容器200に関する説明については、前述した第1の実施形態の蒸発原料用容器100と同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。また、前述した第1の実施形態における蒸発原料用容器の製造方法、使用方法、及び固体気化供給システムの説明についても、蒸発原料用容器100及びガス導入管7を、蒸発原料用容器200及びガス導入管7aに代えることにより説明可能である。
【0093】
<第3の実施形態>
つづいて、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第3の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1、第2の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0094】
<全体構成>
図3は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第3の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0095】
図3に示す蒸発原料用容器300は、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留しかつ蒸発させるための容器であり、例えば、二重壁構造を形成する2つの容器である内側容器1a及び外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、外側容器2と外蓋3bとを固定するための締結部材4と、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1を内側容器1a内に放出するためのガス導入管7bと、を備える。本実施形態の蒸発原料用容器300は、内側容器1aとガス導入管7bの構造が、前述した実施形態1の蒸発原料用容器100と異なる。
【0096】
具体的には、本実施形態の蒸発原料用容器300において、内側容器1aには、内部を蒸発原料貯留空間11とキャリアガス拡散空間12との上下2つの空間に仕切るための円板状の仕切壁13が設けられている。この蒸発原料貯留空間11は、仕切壁13の上面と内側容器1aの上壁を構成する内蓋3aとの間に形成された空間であり、本実施形態では、この仕切壁13の上面側、即ち、内側容器1a内部の蒸発原料貯留空間11に薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留することとした。また、キャリアガス拡散空間12は、仕切板13の下面と内側容器1aの底部壁との間に形成された空間である。
【0097】
また、本実施形態の蒸発原料用容器300においては、
図3に示すように、蓋体3の中心部に設けられたキャリアガス導入口5に連設されたガス導入管7bの先端が、仕切壁13の中心部を貫通し、内側容器1a底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することとした。即ち、ガス導入管7bの先端は、内側容器1aの底部壁には当接していない。これにより、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、ガス導入管7b内を流れ、その先端からキャリアガス拡散空間12で放出、拡散される。
【0098】
また、上記仕切壁13には、キャリアガス拡散空間12において拡散されたキャリアガスG1を蒸発原料貯留空間11に供給するための1つ以上の貫通孔14が形成されている。
図4は、仕切壁13の構造の一例を示す平面図である。即ち、キャリアガス拡散空間12内で拡散したキャリアガスG1は、これらの貫通孔14を通り抜けて、蒸発原料貯留空間11に放出される(底吹き法)。そして、内側容器1aの蒸発原料貯留空間11内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と蒸発原料貯留空間11内で拡散したキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3が、混合ガス導出口6から放出される。
【0099】
また、上記仕切壁13は、例えば、
図4に示すように、複数の貫通孔14が形成されたシャワーヘッド構造を有することが好ましい。シャワーヘッド構造とは、複数の貫通孔14がキャリアガスG1の噴出孔となり、シャワー状のガス流動を実現する構造である。
【0100】
また、上記仕切壁13に形成される複数の貫通孔14の配置については、特に制限はなく、例えば、
図4に示すように、均等に貫通孔14を配置することとしてもよい。また、図示は省略するが、複数の貫通孔14の配置については、例えば、仕切壁13を周回するように複数の貫通孔14を形成し、複数の貫通孔14の軌跡が渦巻きを描くようにしてもよい。
【0101】
また、上記仕切壁13は、例えば、多孔質体で構成することとしてもよい。この場合、仕切壁13には、
図4に示すような貫通孔14を形成する必要はない。多孔質体により、キャリアガス拡散空間12に流入したキャリアガスG1が蒸発原料貯留空間11に放出され、拡散される。そして、蒸発原料貯留空間11内において、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガス流動が行われる。また、多孔質体はフィルタの機能を有するため、キャリアガス拡散空間12内で発生したパーティクルをここで捕集除去することができる。本実施形態の仕切壁13で使用可能な多孔質体としては、例えば、セラミックが挙げられる。
【0102】
なお、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と構造は異なるが、ガス導入管7bを
図3に示すような構造とした場合であっても、内側容器1aを外部から加熱した際に、ガス導入管7bを流れるキャリアガスG1を同時に加熱することができる。このため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに対して、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができるため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0103】
また、上記仕切壁13については、内側容器1aの一部を構成するものであり、例えば、内側容器1aと一体化した構造であってもよいし、また、必要に応じて内側容器1aから取り外し可能な構造であってもよい。また、取り外し可能な構造とした場合における仕切壁13の取り付け位置については、特に限定するものではなく、例えば、内側容器1aの内部で係止され固定できる構造であれば、適宜調整可能とする。
【0104】
<各部材の材料>
上記内側容器1aの容器壁及びガス導入管7bは、前述した第1の実施形態の内側容器1の容器壁と同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成されている。なお、内側容器1aの容器壁には、側壁、底部壁、内側容器1の上壁を構成する蓋体3の蒸気接触面(内蓋3aの蒸気接触面に相当)及び仕切壁13を含む。即ち、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sが蒸発原料用容器300内に投入された際に、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2が接触する内側容器1a内の壁部は、すべて容器壁である。
【0105】
なお、内側容器1aの容器壁以外の部分の材料は、特に制限はないが、製造上の観点から、上記同様の金属材料で構成されることが好ましい。
【0106】
<コーティング及び研磨>
また、上記内側容器1a(仕切壁13を含む)及びガス導入管7bは、前述した第1の実施形態と同様に、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨を実施する。なお、フッ素樹脂コーティングに代えてセラミックスコーティングを実施することとしてもよい。また、電解研磨に代えて化学研磨を実施することとしてもよい。
【0107】
なお、その他の蒸発原料用容器300に関する説明については、前述した第1の実施形態の蒸発原料用容器100と同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。また、前述した第1の実施形態における蒸発原料用容器の製造方法、使用方法、及び固体気化供給システムの説明についても、蒸発原料用容器100、内側装置1及びガス導入管7を、蒸発原料用容器300、内側装置1a及びガス導入管7bに代えることにより説明可能である。
【0108】
<第4の実施形態>
つづいて、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第4の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1~第3の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0109】
<全体構成>
図5は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第4の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0110】
図5に示す蒸発原料用容器400は、例えば、二重壁構造を形成する2つの容器である内側容器1b及び外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、外側容器2と外蓋3bとを固定するための締結部材4と、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1を内側容器1b内に放出するためのガス導入管7cと、を備える。更に、本実施形態の蒸発原料用容器400の内側容器1bの内部には、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するためのトレー21が挿脱可能に収容されている。また、内側容器1b内には、複数個のトレー21を積み重ねて収容可能とする。
【0111】
また、上記トレー21の底部壁22の中心部には、円筒形状の側壁を有しかつその側壁内部が貫通する構造を有する側壁部23が設けられ、その側壁部23は、上記ガス導入管7cを挿通可能に設けられている。
【0112】
また、本実施形態の蒸発原料用容器400において、内側容器1bの底部壁の周縁部には、最下部に収容されたトレー21を係止するための係止部24が設けられ、この係止部24により、トレー21の下面と内側容器1bの底部壁との間にキャリアガス拡散空間12が形成される。
【0113】
また、本実施形態の蒸発原料用容器400においては、
図5に示すように、蓋体3の中心部に設けられたキャリアガス導入口5に連設されたガス導入管7cの先端が、積み重ねられた状態で収容された全てのトレー21の側壁部23内を貫通し、内側容器1b底部壁の直上の位置まで延伸する構造を有することとした。即ち、ガス導入管7cの先端は、内側容器1bの底部壁には当接していない。これにより、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、ガス導入管7c内を流れ、その先端からキャリアガス拡散空間12で放出、拡散される。
【0114】
また、上記トレー21の底部壁22には、キャリアガス拡散空間12において拡散されたキャリアガスG1をトレー21内に供給するための1つ以上の貫通孔14が形成されている(
図4参照)。なお、トレー21の底部壁22は、前述した第3の実施形態の仕切壁13の構造(形状、配置、材質など)と同様である。即ち、キャリアガス拡散空間12内で拡散したキャリアガスG1は、これらの貫通孔14を通り抜けて、順次、積み重ねられたトレー21内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに向けて放出される(底吹き法)。そして、各トレー21内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と各トレー21内で拡散したキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3が、混合ガス導出口6から放出される。
【0115】
なお、前述した第1~第3の実施形態と構造は異なるが、ガス導入管7cを
図5に示すような構造とした場合であっても、内側容器1bを外部から加熱した際に、ガス導入管7cを流れるキャリアガスG1を同時に加熱することができる。このため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに対して、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができるため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0116】
<各部材の材料>
上記内側容器1bの容器壁や、トレー21、ガス導入管7cは、前述した第1の実施形態の内側容器1の容器壁と同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成されている。なお、内側容器1bの容器壁には、側壁、底部壁、係止部24、及び内側容器1bの上壁を構成する蓋体3の蒸気接触面(内蓋3aの蒸気接触面に相当)を含む。即ち、内側容器1b内の壁部は、すべて容器壁である。
【0117】
なお、内側容器1bの容器壁以外の部分の材料は、特に制限はないが、製造上の観点から、上記同様の金属材料で構成されることが好ましい。
【0118】
<コーティング及び研磨>
また、上記内側容器1b及び係止部24や、トレー21、ガス導入管7cは、前述した第1の実施形態と同様に、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨を実施する。なお、フッ素樹脂コーティングに代えてセラミックスコーティングを実施することとしてもよい。また、電解研磨に代えて化学研磨を実施することとしてもよい。
【0119】
<蒸発原料用容器の製造方法>
本実施形態の蒸発原料用容器400は、例えば、以下のように製造する。まず、公知の方法で、素材をくりぬくこと、又はロール状の加工物を溶接することによって、鍔部を有する外側容器2を作製する。次に、容器本体を構成する内側容器1bを作製する。この内側容器1bは、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。そして、外側容器2の内側に内側容器1bを収容することにより二重壁構造の容器を作製する。次に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するためのトレー21を、その後、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3を、それぞれ作製する。トレー21、及び少なくとも内側容器1bの上壁を構成する内蓋3aの蒸気接触面は、内側容器1b同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。
【0120】
なお、本実施形態にかかる製造方法の以降の工程については、前述した第1の実施形態における蒸発原料用容器100及びガス導入管7を、蒸発原料用容器400及びガス導入管7cに代えることにより説明可能であるため、重複した説明を省略する。
【0121】
<蒸発原料用容器の使用方法>
本実施形態においては、まず、蒸発原料用容器400のキャリアガス導入口5を、継手部材などを介してキャリアガスタンク(図示せず)と連結し、更に、混合ガス導出口6を、継手部材などを介して半導体処理設備(図示せず)に連結する。
【0122】
次に、蒸発原料用容器400内のトレー21に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを投入し、その後、蓋体3(内蓋3a、外蓋3b)で内側容器1bを密閉し、外側容器2の鍔部と外蓋3bとを締結部材4により固定する。
【0123】
なお、本実施形態にかかる使用方法の以降の工程については、前述した第1の実施形態における蒸発原料用容器100、内側容器1及びガス導入管7を、蒸発原料用容器400、内側容器1b及びガス導入管7cに代えることにより説明可能であるため、重複した説明を省略する。
【0124】
また、その他の蒸発原料用容器400に関する説明については、前述した蒸発原料用容器100,200,300と同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。また、前述した第1の実施形態における固体気化供給システムの説明についても、蒸発原料用容器100、内側装置1及びガス導入管7を、蒸発原料用容器400、内側容器1b及びガス導入管7cに代えることにより説明可能である。
【0125】
<第5の実施形態>
つづいて、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第5の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第4の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0126】
<全体構成>
図6は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第5の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0127】
図6に示す蒸発原料用容器500は、前述した蒸発原料用容器400同様、例えば、二重壁構造を形成する2つの容器である内側容器1b及び外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、外側容器2と外蓋3bとを固定するための締結部材4と、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1を内側容器1b内に放出するためのガス導入管7cと、内側容器1b内に挿脱可能に収容されたトレー21と、を備える。更に、上記トレー21内の所定の位置、例えば、薄膜形成用金属ハロゲン化合物S内及び/又はその付近に、最大長さが1~30mmであってかつアルミニウム製、銅製又はチタン製の一以上の球状部材31を配置することとした。
【0128】
なお、トレー21内に配置する球状部材31の形状に制限はなく、球状の他、例えば、長球状、葉状、螺旋状、又はその他不定形状の部材であってもよい。葉状の部材の場合には、その横幅が1~2cm程度であることが好ましい。長球状や螺旋状の部材の場合には、長手方向の長さが1.5~3cm程度であることが好ましい。その他不定形状の部材についても、長手方向の長さが1.5~3cm程度であることが好ましい。このような部材は、アルミニウム製、銅製、又はチタン製であり、例えば、容器壁と同材質のものを使用する。例えば、容器壁が純度99~99.9999%の銅の場合には、球状部材31が銅製であることが好ましい。
【0129】
トレー21内に、例えば、
図6に示すような球状部材31を適宜配置することにより、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sの熱伝導を上昇させることができる。また、1つのトレー21内に配置する球状部材31の個数については、特に制限はないが、例えば、10~20個であることが好ましい。
【0130】
なお、その他の蒸発原料用容器500に関する説明については、前述した第4の実施形態の蒸発原料用容器400と同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。
【0131】
また、本実施の形態においては、一例として、前述した第4の実施形態の蒸発原料用容器400の内側容器1bに収容されたトレー21内に、容器壁と同材質の各種形状の金属部材を適宜配置することとしたが、これに限るものではない。例えば、第1~第3の実施形態に記載の蒸発原料用容器(100,200,300)の内側容器(1,1a)内の所定位置に、上記各種形状の金属部材を適宜配置することとしてもよい。
【0132】
<第6の実施形態>
つづいて、本発明にかかる蒸発原料用容器及び固体気化供給システムの第6の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1~第5の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0133】
<全体構成>
図7は、本発明にかかる蒸発原料用容器の第6の実施形態を模式的に示す断面図であり、詳細には、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2、及び混合ガスG3のガスの流れを説明するための図である。
【0134】
図7に示す蒸発原料用容器600は、蒸発原料である薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留し、蒸発させるための容器であって、例えば、内側容器1cと、外側容器2と、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3と、外側容器2と外蓋3bとを固定するための締結部材4と、を備え、外側容器2の内部に内側容器1cを収容することにより二重壁構造の容器を形成する。そして、この蒸発原料用容器600においては、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するトレー43と内側容器1cが実質的な容器本体を構成する。
【0135】
また、内側容器1cは、円筒形状に形成された容器であり、その内部には、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するトレー43や、キャリアガスG1、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2及び混合ガスG3、と接触する容器壁が形成されている。更に、内側容器1cは、円筒部分である側壁部41と、底板部42と、の2つの部品に分離可能に構成されている。
【0136】
また、本実施形態の蒸発原料用容器600を構成する内側容器1cの内部には、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するための円筒形状のトレー43(43-1,43-2)が挿脱可能に収容されている。本実施形態においては、一例として、内側容器1c内の最下層にトレー43-1を収容し、更に、トレー43-1の上にトレー43-2を積み重ねて収容する。
【0137】
また、内側容器1c内に収容されるトレー43には、底部壁45の中心部に、円筒形状の側壁によって形成された貫通孔であるガス導入管7dを設けることとした。具体的には、例えば、
図7に示すように、トレー43-1の底部壁45の中心部にガス導入管7d-1を、トレー43-2の底部壁45の中心部にガス導入管7d-2を、それぞれ設けることとした。これにより、ガス導入管7dの上端開口部から供給されたキャリアガスG1が、そのガス導入管7d内を通り、その下端に形成された放出口(トレー43-1及びトレー43-2の下面中心部)から放出される。
【0138】
また、底板部42には、例えば、キャリアガスG1の拡散を促す目的で、その表面中心部から周縁に向かって放射状に少なくとも一つの溝部46を形成することとした。
図8は、底板部42の表面形状の一例を示す上面図である。本実施形態においては、一例として、底板部42の表面中心部から周縁に向かって等角度に8つの溝部46を形成する。そのため、最下層のトレー43-1が内側容器1c内に収容された場合においては、底板部42の溝部46以外の部分とトレー43-1の下面が当接した状態となる。これにより、内側容器1c内に収容された最下層のトレー43-1が安定的に保持される。また、底板部42の表面に形成された溝部46により、トレー43-1の下面と溝部46の底部との間にキャリアガス拡散空間12が形成される。なお、溝部46の個数(本数)については、これに限るものではなく、例えば、トレー43-1を保持可能で、かつキャリアガスG1の拡散を促すことが可能な個数であればよく、任意とする。
【0139】
そして、本実施形態においては、内側容器1cの底板部42上に最下層のトレー43-1を載置した状態において、トレー43-2に設けられたガス導入管7d-2の放出口(雌側)に対しトレー43-1に設けられたガス導入管7d-1の上端部分(雄側)を嵌挿することにより、トレー43-1の上段にトレー43-2を積み重ねる。更に、内側容器1c及び外側容器2に対し蓋体3を装着する(密着させる)ことによって、トレー43-2に設けられたガス導入管7d-2の上端部分を蓋体3の中心部に設けられたキャリアガス導入口5に嵌挿する。これにより、キャリアガス導入口5、ガス導入管7d-2及びガス導入管7d-1が連設された状態となるため(
図7参照)、外部からキャリアガス導入口5を介して供給されたキャリアガスG1が、ガス導入管7d-2内及びガス導入管7d-1内を通り、ガス導入管7d-1の下端に形成された放出口から溝部46に向けて放出され、そして、放射状に形成された溝部46内を通ってキャリアガス拡散空間12で拡散される。
【0140】
なお、
図7においては、ガス導入管7dの上端部分を雄形状とし、ガス導入管7dの下端部分及びキャリアガス導入口5におけるガス導入管7dとの嵌合部分を雌形状として記載しているが、これに限るものではなく、嵌合する部分の雄雌関係については逆であってもよい。
【0141】
また、上記各トレー43(トレー43-1及びトレー43-2に相当)の底部壁45には、自層の直下の空間において拡散されたキャリアガスG1をトレー43内部に取り込むための1つ以上の貫通孔14が形成されている(
図4参照)。なお、トレー43の底部壁45の構造は、前述した第3の実施形態の仕切壁13の構造(形状、配置、材質など)と同様である。即ち、キャリアガス拡散空間12内で拡散したキャリアガスG1は、これらの貫通孔14を通り抜けて、順次、積み重ねられたトレー43内に貯留する薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに向けて放出される(底吹き法)。そして、各トレー43内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2と各トレー43内で拡散したキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3が、混合ガス導出口6から放出される。この際、内側容器1cは蓋体3(内蓋3a)で密閉されているため、上記混合ガスG3(各トレー43内で蒸発して気体となった薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2を含む)が外側容器2と接触することはない。
【0142】
なお、前述した第1~第5の実施形態と構造は異なるが、ガス導入管7dを
図7に示すような構造とした場合であっても、内側容器1cを外部から加熱した際に、ガス導入管7dを流れるキャリアガスG1を同時に加熱することができる。そのため、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sに対して、加熱されたキャリアガスG1を接触させることができ、その結果として、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを安定的かつ高流量で気化させることができる。
【0143】
また、本実施の形態においては、内側容器1cの内部にトレー43-1とトレー43-2とを収容することについて記載したが、これに限るものではない。例えば、容器(内側容器1c及び外側容器2)やトレーのサイズに応じて、1つのトレー43のみを収容することとしてもよく、また、最下層のトレー43-1の上に複数のトレー43(トレー43-2,トレー43-3(図示せず)…)を積み重ねて、内側容器1cの内部に収容することとしてもよい。複数のトレー43(トレー43-1,トレー43-2…)を収容する場合、内側容器1cの内部においては、すべてのガス導入管が連設するように、各トレーが積み重ねられる。
【0144】
また、本実施形態においては、蒸発原料用容器600の内側容器1cに収容されたトレー43内の所定位置に、前述した第5の実施形態に記載の球状部材31、即ち、容器壁と同材質の各種形状の金属部材を、適宜配置することとしてもよい。
【0145】
また、本実施形態においては、キャリアガス拡散空間12を形成することを目的として、底板部42の表面に溝部46を設けることとしたが、キャリアガス拡散空間12は、これ以外の手段で形成することとしてもよい。例えば、トレー43-1の下面に複数の突起を設けることにより、キャリアガス拡散空間12を形成することとしてもよいし、又は、前述した第4の実施形態に示すように、最下層のトレーを係止するための係止部(係止部24に相当)を設けることにより、キャリアガス拡散空間12を形成することとしてもよい。
【0146】
また、本実施形態においては、底板部42の表面形状として、例えば、表面中心部から周縁に向かって放射状に少なくとも一つの溝部46を形成することとした(
図8では底板部42の表面中心部から周縁に向かって等角度に8つの溝部46を形成)が、これに限定されるものではなく、底板部42の表面形状は、キャリアガスG1の拡散を促すことが可能な形状であればどのような形状であってもよい。
【0147】
また、本実施形態においては、トレー43-1の収容時に、底板部42の溝部46以外の部分とトレー43-1の下面とを当接させることによってトレー43-1を保持することとしたが、これに限るものではない。例えば、ガス導入管7d-1を溝部46の底部に当接するまで延伸し、延伸されたガス導入管7d-1を用いて更に強い強度でトレー43-1を支えることとしてもよい。この際、延伸した部分については、キャリアガスG1を溝部46に通すための複数の切り欠き部を設けることとし、キャリアガスG1をキャリアガス拡散空間12で拡散できるように構成する。
【0148】
<各部材の材料>
内側容器1cの容器壁(底板部42の溝部46及び溝部46以外の部分を含む)や、トレー43(ガス導入管7dを含む)は、前述した第1の実施形態の内側容器1の容器壁と同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成されている。なお、内側容器1cの容器壁には、側壁、底部壁、及び内側容器1cの上壁を構成する蓋体3の蒸気接触面(内蓋3aの蒸気接触面に相当)を含む。即ち、内側容器1c内の壁部は、すべて容器壁である。
【0149】
なお、内側容器1cの容器壁以外の部分の材料は、特に制限はないが、製造上の観点から、上記同様の金属材料で構成されることが好ましい。
【0150】
<コーティング及び研磨>
また、内側容器1c(側壁部41,底板部42)、トレー43(ガス導入管7dを含む)は、前述した第1の実施形態と同様に、フッ素樹脂コーティング及び/又は電解研磨を実施する。なお、フッ素樹脂コーティングに代えてセラミックスコーティングを実施することとしてもよい。また、電解研磨に代えて化学研磨を実施することとしてもよい。
【0151】
<蒸発原料用容器の製造方法>
本実施形態の蒸発原料用容器600は、例えば、以下のように製造する。まず、公知の方法で、素材をくりぬくこと、又はロール状の加工物を溶接することによって、鍔部を有する外側容器2を作製する。次に、容器本体を構成する内側容器1c(側壁部41、底板部42に相当)を作製する。この内側容器1cは、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。そして、外側容器2の内側に内側容器1cを収容することにより二重壁構造の容器を作製する。次に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留するためのトレー43(ガス導入管7dを含む)を、その後、内蓋3a及び外蓋3bを有する蓋体3を、それぞれ作製する。トレー43(ガス導入管7dを含む)及び少なくとも内側容器1cの上壁を構成する内蓋3aの蒸気接触面は、内側容器1c同様、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、例えば、純度99~99.9999%の銅、純度99~99.9999%のアルミニウム、又は純度99~99.9999%のチタンなどの高純度の金属材料で構成する。また、外側容器2の鍔部及び外蓋3bには、締結部材4を螺合するためのボルト挿入孔を形成し、このボルト挿入孔に適合した締結部材4(ボルト部材及びナット部材)を用意する。そして、蓋体3に配設されたキャリアガス導入口5及び混合ガス導出口6に接続する各種の継手部材(図示せず)を用意する。このようにして、蒸発原料用容器600を構成するための未処理の各部材を得る(準備工程)。
【0152】
次に、上記準備工程で得た各部材を研磨処理する(研磨工程)。具体的には、各部材の表面を研磨する。研磨処理においては、上述した実施条件による電解研磨を実施することが好ましい。
【0153】
次に、研磨工程により研磨された各部材に対して、フッ素樹脂コーティングを実施する(コーティング工程)。このとき、上述したように、フッ素樹脂コーティングは蒸着により形成する。なお、上記研磨工程において、上記実施条件による電解研磨を実施した場合は、必ずしもフッ素樹脂コーティングを実施する必要はない。
【0154】
次に、研磨及びコーティングが実施された各部材を組み立てて蒸発原料用容器600を作製する(組み立て工程)。なお、本実施形態の蒸発原料用容器600を製造する方法については、上記方法に限定されるものではない。
【0155】
<蒸発原料用容器の使用方法>
本実施形態においては、まず、蒸発原料用容器600のキャリアガス導入口5を、継手部材などを介してキャリアガスタンク(図示せず)と連結し、更に、混合ガス導出口6を、継手部材などを介して半導体処理設備(図示せず)に連結する。
【0156】
次に、蒸発原料用容器600内のトレー43に、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを投入し、その後、蓋体3(内蓋3a、外蓋3b)で内側容器1cを密閉し、外側容器2の鍔部と外蓋3bとを締結部材4により固定する。
【0157】
なお、本実施形態にかかる使用方法の以降の工程については、前述した第1の実施形態における蒸発原料用容器100、内側容器1及びガス導入管7を、蒸発原料用容器600、内側容器1c及びガス導入管7d(7d-1,7d-2)に代えることにより説明可能であるため、重複した説明を省略する。
【0158】
また、その他の蒸発原料用容器600に関する説明については、前述した蒸発原料用容器100,200,300,400,500と同様に説明することが可能であるため、重複した説明を省略する。また、前述した第1の実施形態における固体気化供給システムの説明についても、蒸発原料用容器100、内側装置1及びガス導入管7を、蒸発原料用容器600、内側装置1c及びガス導入管7d(7d-1,7d-2)に代えることにより説明可能である。
【0159】
<第1~第6の実施形態>
なお、上述した第1~第6の実施形態の蒸発原料用容器(100~600)においては、気体及び固体の状態の薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sとの接触部分を、上記各実施形態において記載のとおり、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、純度99~99.9999%(2N~6N)の金属材料で構成することとしたが、熱伝導性と強度の観点から、上記接触部分を、薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを構成する金属と同じ金属材料であって、かつ、純度99.99~99.999%(4N~5N)の金属材料で構成することがより好ましい。
【実施例】
【0160】
以下、本発明にかかる蒸発原料用容器を実施例及び比較例によって、更に具体的に説明する。なお。本発明はこれに限定されるものではない。
【0161】
<実施例1~19>
実施例1~19においては、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の部材(継手部材(図示せず)を含む)を備えた蒸発原料用容器100を作製した。具体的には、「内側容器壁(容器壁に相当)」を、前述した第1の実施形態に基づいて、表1に示す「材質」及び「純度(%)」の材料によって作製した。また、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の金属部材の表面に対し、下記の実施条件で研磨処理(電解研磨)を実施した。その後、研磨処理が実施された各部材の表面上に、フッ素樹脂コーティングを実施した。フッ素樹脂コーティングは、電子照射真空蒸着法による蒸着を行う装置を用いてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を蒸着させることによって行った。
【0162】
実施条件:
直径300mmの電極を用い、電流密度を20mA/cm2以下、電解溶液の濃度を20質量%、液流量を3L/分、電解溶液のpHを10とした。更に、研磨条件は、圧力31.35kPa、回転数300rpmとし、砥粒として、砥粒径0.07μmのコロイダルシリカを用いた。
【0163】
<比較例1~11>
一方、比較例1~11においては、表2に示す条件で蒸発原料用容器を作製した。具体的には、「内側容器壁」を、表2に示す「材質」及び「純度(%)」の材料によって作製し、内側容器、外側容器、蓋体、締結部材及びこの容器を構成するその他の部材の表面に対して、上記実施条件で研磨処理(電解研磨)を実施した。
【0164】
そして、各実施例の蒸発原料用容器100及び各比較例の蒸発原料用容器においては、それぞれ、混合ガス導出口の下流側に、CV値(水置換)が1.5のバルブを設置し、このバルブを介して混合ガスG3の供給を行った。
【0165】
<実施例20~38>
実施例20~38においては、フッ素樹脂コーティングを実施していないこと以外は、実施例1~19と同様の方法で蒸発原料用容器100を作製した。即ち、実施例20~38の蒸発原料用容器100は、内側容器1、外側容器2、蓋体3、締結部材4、ガス導入管7及びこの容器を構成するその他の金属部材の表面に対して、上記実施条件による研磨処理のみが実施されたものである。なお、各実施例20~38においては、蒸発原料用容器100の「内側容器壁」を、表3の「材質」及び「純度(%)」の材料によって作製した。
【0166】
<実施例39~76>
実施例39~76においては、内側容器1c(側壁部41、底板部42)、外側容器2、蓋体3、締結部材4、トレー43(ガス導入管7dを含む)及びこの容器を構成するその他の部材(継手部材(図示せず)を含む)を備えた蒸発原料用容器600を作製した。具体的には、「内側容器壁」を、前述した第6の実施形態に基づいて、表7に示す「材質」及び「純度(%)」の材料によって作製した。また、内側容器1c(側壁部41、底板部42)、外側容器2、蓋体3、締結部材4、トレー43(ガス導入管7dを含む)及びこの容器を構成するその他の金属部材の表面に対し、下記の実施条件で研磨処理(電解研磨)を実施した。その後、実施例39~57においては、研磨処理が実施された各部材の表面上に、フッ素樹脂コーティングを実施した。フッ素樹脂コーティングは、電子照射真空蒸着法による蒸着を行う装置を用いてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を蒸着させることによって行った。
【0167】
<実施例の方法>
実施例1~38の蒸発原料用容器100、実施例39~76の蒸発原料用器600及び比較例1~11の蒸発原料用容器に、表1~表3及び表7の「原料(金属ハロゲン化合物)」の欄に示す薄膜形成用金属ハロゲン化合物Sを貯留し、内側容器内にキャリアガスG1を供給して、蒸発した薄膜形成用金属ハロゲン化合物G2とキャリアガスG1とを混合させた混合ガスG3を生成した。生成した混合ガスG3を用いて、原子層堆積(ALD)法による成膜を行った。原子層堆積(ALD)法によって成膜されたALD膜の組成を表4~表6及び表8に示す。また、成膜後の蒸発原料中の不純物(表4~表6及び表8に示す12成種の元素)の量をICPMS(誘導結合プラズマ質量分析計)によって測定した。なお、表4及び表8の「成膜前」の欄において、成膜前の蒸発原料中の不純物(表4~表6及び表8に示す12成種の元素)の量を記載している。
【0168】
不純物の量の測定は、以下の方法によって行った。まず、成膜後に、内側容器内の残った蒸発原料Sの残留物を回収した。次に、回収物を、ICPMS(誘導結合高周波プラズマ質量分析法)の装置にて、王水を用いて所定量を溶解させた。その後、これをホットプレートで120℃に加熱して蒸発乾固させた。そして、蒸発乾固されたものを希釈し、測定試料を得た。その後、上記分析装置にて、測定試料中の金属不純物を測定した。
【0169】
また、上記成膜前後において内側容器の内表面の表面粗さを、AFM(原子間力顕微鏡)アナライザー(HORIBA社製)によって測定した。この表面粗さは、複数回測定してその平均値を算出した。成膜前の表面粗さをBとし、成膜後の表面粗さをAとして、AをBで除算した値(A/B)を算出した。算出した「A/B」の値を、表4~表6及び表8の「内部表面粗さ」の欄に示す。
【0170】
また、原子層堆積(ALD)法による成膜において、成長速度(GPC;Growth Per Cycle)の測定を行った。具体的には、上述した成膜時において、0.2秒当たりに1回の割合でバルブを開閉して、蒸発原料を含む混合ガスG3を成膜室に導入する。1回のバルブの開閉が行われる0.2秒を1サイクルとし、8インチのシリコンウエハに成膜した膜厚を測定し、単位時間(1サイクル)当たりの膜の成長速度を算出する。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
<結果>
表4~表6及び表8の結果から分かるように、実施例1~38の蒸発原料用容器100及び実施例39~76の蒸発原料用容器600は、比較例1~11の蒸発原料用容器に比べて、不純物の量が少ないことが分かる。また、実施例1~38の蒸発原料用容器100及び実施例39~76の蒸発原料用容器600は、「内部表面粗さ」の「A/B」の値が1に近い値となり、成膜前後における表面粗さの差が小さいことが分かる。ここで、この表面粗さの差が小さいということは、蒸発原料による腐食の程度が少なかったことを表しており、耐腐食性が高いことが分かる。このような結果から、実施例1~38の蒸発原料用容器100及び実施例39~76の蒸発原料用容器600は、耐腐食性に優れたものであることが分かる。また、実施例1~38の蒸発原料用容器100及び実施例39~76の蒸発原料用容器600は、成長速度が速いという結果も得られた。
【符号の説明】
【0180】
100,200,300,400,500,600 蒸発原料用容器
1,1a、1b,1c 内側容器
2 外側容器
3 蓋体
3a 内蓋
3b 外蓋
4 締結部材
5 キャリアガス導入口
6 混合ガス導出口
7,7a,7b,7c,7d(7d-1,7d-2) ガス導入管
11 蒸発原料貯留空間
12 キャリアガス拡散空間
13 仕切壁
14 貫通孔
21 トレー
22 底部壁
23 側壁部
24 係止部
31 球状部材
41 側壁部
42 底板部
43(43-1,43-2…) トレー
45 底部壁
46 溝部