(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ビジョンシステムカメラのための定倍率レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230406BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230406BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20230406BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20230406BHJP
G02B 15/22 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B13/00
G03B15/00 U
G02B7/28 N
G02B7/04 Z
G02B15/22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021008580
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2018203196の分割
【原出願日】2013-12-25
【審査請求日】2021-02-20
(32)【優先日】2012-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504382671
【氏名又は名称】コグネックス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100119378
【氏名又は名称】栗原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】ヌニンク,ローレンス
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-505543(JP,A)
【文献】特開平05-027165(JP,A)
【文献】特開2004-029685(JP,A)
【文献】特開2011-218156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G03B 15/00
G02B 7/28
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野内の焦点距離の範囲にわたって対象物の画像を取得するためのビジョンシステムであって、
前記ビジョンシステムは、ビジョンプロセッサに作動的に結合されたイメージセンサを有し、
前記ビジョンシステムはさらに、シーンから光を受け取って前記イメージセンサに送る、光軸に沿って向けられている定倍率レンズアセンブリを有し、前記
定倍率レンズアセンブリは前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリとを有し、前記前部レンズアセンブリは焦点距離f
1の第1のレンズを有し、前記後部レンズアセンブリは焦点距離f
2の第2のレンズを有し、f
1>f
2であり、前記定倍率レンズアセンブリの焦点位置の変位は(f
1/f
2)
2*(前記定倍率レンズアセンブリの光軸に沿った移動による距離)に比例し、前記前部レンズアセンブリの前記第1のレンズの面積は視野の面積よりも小さく、
前記ビジョンシステムはさらに、前部レンズアセンブリの裏面と前部レンズアセンブリの後焦点との間に設けられている前記定倍率レンズアセンブリの開口絞りを有し、
前部レンズアセンブリの焦点と後部レンズアセンブリの焦点とが一致し、
前記定倍率レンズアセンブリの倍率が、一定であり、かつ、後部レンズアセンブリの焦点距離(f
2)/前部レンズアセンブリの焦点距離(f
1)、の比に等しい、
前記ビジョンシステム。
【請求項2】
前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリは、両者間の固定した空間的関係に配置されている請求項1記載のビジョンシステム。
【請求項3】
前記ビジョンシステムはさらに、前記イメージセンサを前記定倍率レンズアセンブリに向かう方向と離れる方向に動かすアクチュエータを有する、請求項1記載のビジョンシステム。
【請求項4】
視野内の焦点距離の範囲にわたって対象物の画像を取得するための方法であって:
前記方法は、視野内の前記対象物を定倍率レンズアセンブリの前部レンズアセンブリから少なくとも350mmの距離に配置するステップを有し、前記定倍率レンズアセンブリは後部レンズアセンブリを有し、前記前部レンズアセンブリは焦点距離f
1の第1のレンズを有し、前記後部レンズアセンブリは焦点距離f
2の第2のレンズを有し、f
1>f
2であり、前記定倍率レンズアセンブリの焦点位置の変位は(f
1/f
2)
2*(前記定倍率レンズアセンブリの光軸に沿った移動による距離)に比例し、前記前部レンズアセンブリの
前記第1のレンズの面積は視野
の面積よりも小さく、
前記定倍率レンズアセンブリはさらに、前部レンズアセンブリの裏面と前部レンズアセンブリの後焦点との間に設けられている前記定倍率レンズアセンブリの開口絞りを有し、
前記方法はさらに、前記対象物がイメージセンサで所望の焦点を達成するまで、0.2倍である定倍率レンズアセンブリを反復調整するステップを有し、前記イメージセンサはビジョンプロセッサと作動的に結合され、前記定倍率レンズアセンブリは光軸に沿って向けられていてシーンから光を受け取って前記イメージセンサに前記光を送るものであ
り、
前部レンズアセンブリの焦点と後部レンズアセンブリの焦点とが一致し、
前記定倍率レンズアセンブリの倍率が、一定であり、かつ、後部レンズアセンブリの焦点距離(f
2
)/前部レンズアセンブリの焦点距離(f
1
)、の比に等しい、
前記方法。
【請求項5】
前記定倍率レンズアセンブリの倍率は、一定であり、かつ、後部レンズアセンブリからセンサまでの距離d2と前部及び後部レンズアセンブリ間の距離d1との比に等しい、請求項
4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年12月26日に出願された「ビジョンシステムカメラのための定倍率レンズ」という名称の米国特許仮出願番号第61/745,927号の利益を主張するものであり、その全開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明はマシンビジョンシステム、より具体的には手持ち式のシンボロジーリーダで使用される光学系、およびそのような光学系を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
測定、検査、対象物の整列および/またはシンボロジー(例えばバーコード)のデコーディングを実行するビジョンシステムは、広範な用途と産業で使用されている。これらのシステムは、対象者や対象物の画像(典型的にはグレースケールまたはカラー、および一次元、二次元または三次元)を取得し、これらの取得した画像をオンボードまたはリモートの相互接続したビジョンシステムプロセッサを用いて処理するイメージセンサの使用に基づいている。プロセッサは一般に処理ハードウェアと、1以上のビジョンシステムプロセスを実行する非一時的コンピュータ可読プログラム命令を含み、処理された画像情報に基づいて所望の出力を生成する。この画像情報は典型的にはそれぞれ異なる色および/または明度を有する画像ピクセルの配列内で提供される。シンボロジー(バーコード)リーダの例において、自動化されたプロセスの使用者は、1以上のバーコードを含んでいると思われる対象物の画像を取得する。画像は処理されてバーコード特徴が特定され、次にバーコードがデコーディングプロセスによってデコーディングされ、および/またはプロセッサがコードによって表現された固有の英数字データを取得する。別のタイプのビジョンシステムでは、システムプロセッサによって種々のビジョンシステムツール(例えばエッジ検出器、キャリパ、ブロブ解析)を用いてエッジおよびその他の特徴を検出し、それによって対象物の特徴の認識が可能になり、さらにこれらの特徴に基づき所望の情報-例えば対象物に欠陥があるか、または対象物は適切に整列されているか判定することが可能になる。
【0004】
あるビジョンシステムにおいて、主要なコンポーネントはビジョンシステムカメラアセンブリである。カメラアセンブリはレンズ(光学系)と、画像ピクセル情報の配列を提供するイメージャ(または「センサ」)を含んでいる。上述したビジョンシステムプロセッサは、イメージャ/センサからピクセルデータを受け取って処理し、撮像されたシーンおよび/または対象物に関する有用なビジョンシステム情報を導き出す。ビジョンシステムプロセッサおよび関連するコンポーネント(例えばデータメモリ、デコーダ等)はカメラアセンブリのハウジングまたはエンクロージャ内で提供されていてもよいし、あるいはこれらのコンポーネントの一部または全部はリモートで(例えばPCまたはその他のリモートの自己完結型処理システム内に)組み付けて、有線または無線の相互接続とリンクさせてもよい。同様に、カメラアセンブリは典型的にはレンズを包囲するオンボード(内部)照明器および/または撮像されたシーンに光を提供するその他の照明構成を含んでいてもよい。
【0005】
幾つかのビジョンシステムカメラにおいて、自動焦点(「オートフォーカス」)能力を提供することが望ましい。多くのオートフォーカスアレンジメントは固定されたレンズを動かすために電気機械的作動に依拠するが、その他の構成はますます別の形態のバリオプティックレンズ設計、例えばいわゆる液体レンズに依拠している。
【0006】
センサに基づくビジョンシステムを用いるシンボロジーリーディングの特殊な分野では、通常のリーダ構成は、シンボル(例えば1Dまたは2Dバーコード)を含む対象物に向けられた手持ち式ユニットを採用している。そのような手持ち式システムは、通常は例えば倉庫または工場の現場に置かれた在庫を追跡するために用いられる。そのような環境ではシンボルとリーダとの距離は非常に可変であってもよい。なぜならある対象物は使用者に比較的近い位置に存在しているが、他の対象物は離れているからである(例えば高い棚の上に置かれた対象物)。リーダ(ready)は近い対象物でも遠い対象物でも鮮明な画像を生成することを可能にするために従来型のオートフォーカス機構を含んでよいが、遠い対象物中のシンボルはこの長い焦点距離を前提とすると光学系の開口角が大きすぎるために視野全体に対して小さく見えることがある。このように画像全体においてシンボルのサイズが小さいと、センサによって把捉される視野全体と比べて十分な分解能に欠けるため適切にデコーディングすることが困難になることがある(すなわち離れると着目した特徴/シンボルが小さすぎる)。
【0007】
それゆえ短い焦点距離と長い焦点距離のいずれでもシンボルまたはその他の着目した特徴をより効率的に解像できるビジョンシステムカメラアセンブリを提供することが望ましい。このカメラアセンブリは、手持ち式の装置および/または固定式の装置に適応可能であることが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は先行技術の短所を、手持ち式のシンボロジーリーダ等のビジョンシステムのために、長短両方の焦点距離における定倍率を可能ならしめるレンズアセンブリを提供することによって克服する。レンズアセンブリは(一般に光軸に対して垂直に設けられた)イメージセンサからの所定の距離で光軸に沿って可動および/または調整可能に存在している。例示的な実施形態において、レンズアセンブリは光軸に沿って互いに離隔した2個のレンズL1およびL2からなる。実施形態では、L1およびL2はレンズグループで表すことができる。2個のレンズL1およびL2はそれぞれ焦点距離f1およびf2を画定する。これらのレンズは次の関係を満たしている。すなわち、(a)L1とL2の焦点が一致し、(b)アセンブリの開口絞りがL1の裏面とL1の焦点との間にあり、(c)アセンブリの倍率は一定でf2/f1に等しく、(d)アセンブリの焦点位置の変位は(f1/f2)2*(アセンブリの光軸に沿った移動)である。一つの実施形態において、レンズはアクチュエータ(例えばギア付きステッピングモータまたはサーボモータ)により光軸に沿ってセンサに対して選択された位置に動かされる。アクチュエータは慣用または特注のオートフォーカスプロセスを用いるビジョンプロセッサからの命令に応答して動き、現在ある焦点距離で対象物上の着目した特徴(例えばシンボル)の鮮明な画像を解像する。着目した特徴は最大焦点距離と最小焦点距離の各々およびその間のすべての範囲でほぼ同じ分解能で現れよう。センサの固有のピクセル分解能は、作動距離の範囲でシンボルを特定およびデコーディングするのに十分なディテールを提供する。
【0009】
例示的な実施形態において、視野内の焦点距離の範囲にわたって対象物の画像を取得するためのビジョンシステムは、ビジョンプロセッサと作動的に結合されたイメージセンサを含んでいる。光軸に沿って向けられた、前部レンズアセンブリを含む定倍率レンズアセンブリは、シーンから光を受け取り、その光をイメージセンサに送る。前部レンズアセンブリは面積(または関連する寸法)が小さい視野の面積(または関連する寸法)より小さく、実用的で比較的コンパクトなパッケージにしている。定倍率レンズアセンブリは後部レンズアセンブリも含んでいる。前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリは、両者間の固定した空間的関係に配置されている。例として、前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリは、(a)前部レンズアセンブリの焦点と後部レンズアセンブリの焦点が一致し、(b)定倍率レンズアセンブリの開口絞りが前部レンズアセンブリの裏面と前部レンズアセンブリの焦点との間にあり、(c)アセンブリの倍率は一定で後部レンズアセンブリの焦点距離(f2)/前部レンズアセンブリの焦点距離(f1)に等しく、(d)アセンブリの焦点位置の変位は(f1/f2)2*(光軸に沿った定倍率レンズアセンブリの移動)であるように構成および配置されている。この構成(すなわち項目(b))により前部レンズアセンブリは撮像された視野の面積および/または寸法より小さい面積および/または寸法を画定することが可能になる。前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリは、焦点プロセスに反応するアクチュエータによりイメージセンサに向かう方向と離れる方向に動かされるバレル内に組み付けることができる。代替的には、定倍率レンズアセンブリとそのコンポーネントはカメラ本体/フレームに対して固定でき、センサアセンブリ(またはセンサを含むその部分)は焦点プロセスに反応する適当なアクチュエータにより(光軸に沿って)定倍率レンズアセンブリに向かう方向と離れる方向に動かすことができる。
【0010】
例示的な実施形態において、視野内の焦点距離の範囲にわたって対象物の画像を取得するためのビジョンシステムは、ビジョンプロセッサと作動的に結合されたイメージセンサを含んでいる。定倍率レンズアセンブリは光軸に沿って向けられ、シーンから光を受け取ってイメージセンサに送る。定倍率レンズアセンブリはイメージセンサと前部レンズアセンブリとの間に延びる液体レンズアセンブリを含んでいる。このレンズアセンブリは、エレクトロウェッティング理論に基づいて相互作用を変化させる少なくとも2種類の等密度液に基づいてもよいし、あるいはレンズは液体で満たされた膜の形状を変えるアクチュエータを含んでいてもよい。前部レンズアセンブリは、1以上の固定されたレンズを含んでおり、(後部)液体レンズアセンブリは、入力された電気的エネルギーを用いて液体レンズアセンブリの倍率m2を変化させる境界面を含んでいる。コントローラは液体レンズアセンブリの倍率m2を選択的に調整して、焦点距離の範囲にわたる各焦点距離で対象物上の焦点を一定のシステム倍率Mに維持する。例示的には、前部レンズアセンブリと後部レンズアセンブリは、(a)前部レンズアセンブリの焦点と液体レンズアセンブリの前部主要面が一致し、(b)倍率は一定で、液体レンズアセンブリからイメージセンサまでの距離(d2)と、前部レンズアセンブリと液体レンズアセンブリとの間の距離(d1)の比に等しくなるように構成および配置されている。コントローラはまた一定のシステム倍率Mで所望の焦点が提供されるまで液体レンズアセンブリの倍率m2を反復調整するように配置されている。
【0011】
例として、本明細書中の任意の実施形態において、前部レンズアセンブリと液体(または後部)レンズアセンブリは、(a)前部レンズアセンブリの焦点と後部レンズアセンブリの前部主要面が一致し(d1=f1)、(b)定倍率レンズアセンブリの開口絞りが前部レンズアセンブリの裏面と前部レンズアセンブリの焦点との間にあり、(c)倍率は一定で、液体レンズアセンブリからイメージセンサまでの距離(d2)と、前部レンズアセンブリと液体レンズアセンブリとの間の距離(d1)の比に等しくなるように構成および配置されている。
【0012】
別の実施形態において、視野内の焦点距離の範囲にわたって対象物の画像を取得するための方法は、ビジョンプロセッサと作動的に結合されたイメージセンサを提供するステップと、光軸に沿って向けられシーンから光を受け取ってイメージセンサに送る定倍率レンズアセンブリを提供するステップを含んでいる。定倍率レンズアセンブリは前部レンズアセンブリ含んでいる。定倍率レンズアセンブリは、対象物がイメージセンサで所望の焦点に達するまで反復調整される。
【0013】
以下に本発明を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な実施形態に従い短い焦点距離と長い焦点距離で対象物の画像を取得するための定倍率レンズアセンブリを用い手持ち式のシンボロジーリーダと付随するデータ処理および記憶システムを示す図である。
【0015】
【
図2】
図1のリーダのイメージセンサによって取得されたシーンの画像であり、短い焦点距離における着目した特徴の分解能を示す。
【0016】
【
図3】
図1のリーダのイメージセンサによって取得されたシーンの画像であり、長い焦点距離における着目した特徴の分解能を示す。
【0017】
【
図4】
図1のリーダで使用するための例示的な実施形態に従うレンズアセンブリの断面図であり、比較的短い焦点距離に対してアセンブリの光軸に沿ったイメージセンサに対する相対的位置を示す。
【0018】
【
図5】アセンブリの光軸に沿ったイメージセンサに対する相対的位置が長い焦点距離に対して設定されている
図4に示すレンズアセンブリの断面図である。
【0019】
【
図6】
図1のリーダにおいて画像データを処理してレンズアセンブリの焦点を制御するレンズ焦点機構と付随するプロセッサを示す図である。
【0020】
【
図7】
図1のリーダにおいてレンズアセンブリを使用する範例的な焦点プロセスのフローチャートである。
【0021】
【
図8】例示的な実施形態に従う液体レンズアセンブリを含む定倍率ビジョンシステムのためのレンズアセンブリの図である。
【0022】
【
図9】範例的な対象物においてより近い位置とより遠い位置でそれぞれ液体レンズアセンブリの倍率を制御することによって一定の倍率を維持する際に示される、
図8の定倍率ビジョンシステムに対するレンズアセンブリの薄レンズ光線追跡図である。
【
図10】範例的な対象物においてより近い位置とより遠い位置でそれぞれ液体レンズアセンブリの倍率を制御することによって一定の倍率を維持する際に示される、
図8の定倍率ビジョンシステムに対するレンズアセンブリの薄レンズ光線追跡図である。
【0023】
【
図11】液体レンズアセンブリ、および液体レンズアセンブリと他の例示的な実施形態に従う前部レンズアセンブリとの間に設けられた開口絞りを含んでいる定倍率ビジョンシステムのためのレンズアセンブリの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.全般的な考察
【0025】
図1は、図示されているように手持ち式か、または撮像されるシーンに対して位置が固定された少なくとも1個のシンボロジーリーダ110を含むビジョンシステム100を示す。リーダは描画された本体112とグリップ114を含む任意の容認可能なハウジングを画定することができる。この実施形態において、リーダは、外部および/または内部照明システム(照明器)を含んでいてもよい前部窓116を有する。照明器は任意の容認可能な構成の照光要素の配置構成および/または組合せを含んでいてもよい。この実施形態では例として照光素子(例えば高出力LED)120、122が使用されて、種々異なる色/波長、角度および/または照明の強度を可能にする。照明器は、光線を視野に向けて放射して着目した特徴(例えばバーコードまたはその他のシンボル、「ID」とも呼ぶ)が適切かつ十分撮像されるようにする従来型の照準LED(図示せず)を含んでいてもよい。リーダ110は、この実施形態では本体112の後部に設けられたインディケータおよびインタフェースパネル130を含んでいてもよい。このパネルはオン/オフおよびその他のスイッチならびに「良好」または「不良」なシンボル読取り(すなわちシンボルリーディング/デコーディングにおける成功または失敗)を示すライトを含んでいてもよい。グリップ114は照準LEDのトグリング等の機能と並んで、照明および画像把捉をトリガする1以上のトリガボタン132を含んでいてもよい。リーダはまた1以上の処理回路、メモリおよびこれに類するものを含んでおり、これらはまとめてビジョンプロセッサ136として(仮想線で)示されている。このプロセッサは種々の画像処理および画像データ操作/記憶機能を実行する。例示すると、プロセッサ136はイメージセンサ(やはり仮想線で示す)から把捉された画像フレームレートをカラーまたはグレースケールピクセル(またはその他の形式)で受け取る。プロセッサは画像中にID特徴(またはその他の着目した特徴)を探し、次に適当なデータをデコーディングプロセスに送りID特徴からコードを生成する。これらのコードは保存され、および/または通信リンク140(有線または図示されているように無線であってよい)を介して受信機142に送られる。受信機142はネットワークまたはその他のリンクを介してデータ処理および記憶システム144と相互接続されている。このシステム144は、リーダ110から送られたコードデータを操作および保存するための適当なアプリケーションを実行する従来型のサーバまたはPCを含んでいてもよい。そのようなアプリケーションおよびシステム144のアーキテクチャは当業者には明白であろう。
【0026】
リーダは、焦点距離の範囲にわたって一定の倍率を提供するレンズアセンブリ150(窓116の後ろに仮想線で示す)も含んでいる。例として、シンボルS1を有する対象物O1が、レンズ150を有するリーダ110によって撮像される。レンズ150は、シンボルS1が比較的目立つ場所/スケールを占める視野FOV1に焦点を合わされている。このスケールは、容認可能なID読取りに必要なディテールを与えるのに十分である。光軸OA1に沿った焦点距離D1は最小で約350mmの作動範囲内にあり、例示の目的のために約500mmの距離にある。同様に、リーダ110は(仮想線で示すように)光軸OA2に沿って著しく短い焦点距離D2、例示の目的のために、約50mmに設けられた他の対象物O2に焦点を合わせることができる。とりわけ例示的な実施形態に従い定倍率レンズアセンブリ150を使用すると、関連する視野FOV2内の第2のシンボルS2のスケールは、S1およびFOV1のスケールとほぼ同じである。したがって、所定の距離範囲内における距離に関わりなく、視野および視野内のシンボルのサイズは同じままであり、良好な読取りを得るのに十分なディテールを可能にする。
【0027】
図2および
図3を参照すると、定倍率の原理がさらにそれぞれ約50mmと500mmの焦点距離で取得された画像の外観を模擬するそれぞれの範例的な画像200および300によって例解されている。各画像200、300の視野は描画された画像の外縁によって画定されている。定倍率構成を使用することにより両画像は理想的にはシーンに対してほぼ同じ境界線を呈示すべきである。同様に、各々の範例的なシンボル領域210、310は視野を基準にしてサイズが比較的類似しているように見え、プロセッサがシンボルを発見してデコーディングするのに十分なディテールを与える。
【0028】
II.機械的に駆動されるレンズによる定倍率
【0029】
ここで例示的な実施形態に従い定倍率レンズアセンブリ150をさらに詳細に示す
図4および
図5を参照する。アセンブリ150は、センサ410を基準にして光軸OAに沿って整列された前部レンズL1(焦点距離f1)と後部レンズL2(焦点距離f2)からなる。センサ410は典型的には軸OAに対して垂直な画像面を画定する。この実施形態におけるレンズL1、L2は互いに対して固定された距離SLでバレル420、またはそれらの相対的な整列および間隔を維持するその他の支持構造に位置決めされている。2個のレンズL1、L2の各々は、特に焦点距離の範囲にわたって定倍率を保証する一連の関係を確立するように設計されている。より具体的に言うと、これらの関係は次の通りである。
(a)L1とL2の焦点が描画された面で一致している(d1=f1+f2)。
(b)アセンブリの開口絞り(AS)がL1の裏面とL1の焦点との間にある。
(c)アセンブリの倍率は一定でf2/f1に等しい。
(d)アセンブリの焦点位置の変位は(f1/f2)
2*(アセンブリの光軸に沿った移動)である。
【0030】
開口絞りを上記(b)に定義された位置に配置すると、前部レンズのサイズを直径、面積等に関して、撮像される対象物および付随する視野の面積、長さ、幅等より小さくできる点で有利であることに留意されたい。反対に絞りを他の場所(例えば焦点f1)に配置すると、所望の視野のサイズにほぼ等しい前部レンズを-例えばテレセントリックレンズの方式で使用することが必要となろう。そのような大きいレンズは典型的にはサイズと配置の制約が存在する場合は不利である。
【0031】
描画されたレンズL1および/またはL2は単独レンズ要素と類似または同じ屈折力を有するレンズグループによって定義され得ることが明確に想定されていることにも留意されたい。種々の実施形態において、そのようなレンズグループは単独の離散レンズ素子に比べて改善された光学収差の補正を提供し得る。したがって本明細書において「レンズ」という用語は、広く複数の離散レンズの配置構成を含むものと理解されるべきである。
【0032】
レンズ設計の当業者は、上記の関係(a)-(d)を満足するレンズアセンブリの構造を理解しよう。一つの実施形態において、値f2/f1は約0.1であるが、その他の比も明確に想定されている。例として、両レンズグループL1およびL2は正の屈折力を規定する。例えばレンズL1は焦点距離を約30~60ミリメートルで定義でき、レンズL2は焦点距離を約6~10ミリメートルで定義できる。図示されているように、アセンブリ150においてレンズL1、L2を比較的短い焦点距離FD1(図4)で配置すると、センサ410と後部レンズ410との間の与えられた距離DS1に対してより急角度で発散する光線パターン430が規定される。より大きく発散するこのパターンにより、着目した特徴(例えばシンボル/ID)を適当に撮像するために望ましいサイズである視野440に合わせた焦点が規定される。
【0033】
より長い焦点距離FD2で視野440と類似のサイズの視野540(
図5)を達成するために、後部レンズL2とセンサ410との間の距離DS2は上記の距離DS1に対して短くされている。したがって光線パターン530は発散がより小さい。両焦点距離において開口絞りASは同じであることに留意されたい。したがって後部レンズとセンサとの間の距離を適当に動かすことによって、光学系は広範な焦点距離で類似のサイズの視野に焦点を合わせることができる。
【0034】
次に
図6を参照すると、レンズアセンブリ150を光軸OAに沿ってセンサ138(センサアセンブリ630のベースを画定する付属のイメージャ回路基板に組み付けた状態で図示されている)に向かう方向と離れる方向に動かすための典型的な焦点機構610が描画されている。描画された機構610は種々異なる可能な焦点調整機構の範例であり、これ以外の実施形態も当業者には明白であることに留意されたい。この範例的な実施形態において、機構610はモータ(例えばサーボモータまたはステッピングモータ)620の形をしたアクチュエータを含んでいる。モータは適当なトルクと、望ましい場合はピニオンギアをいずれの回転方向(両矢印624)にも回転させる減速装置622を有する。モータは、比較的浅いピッチを有してよいねじ山628によってレンズアセンブリの外面と噛み合う内周を備えた大きい歯車626を回転させる。歯車626はモータの駆動に基づいて回転するので、レンズアセンブリをセンサアセンブリ630および付随するセンサ画像面に向かう方向または離れる方向(両矢印631)に動かす。この実施形態ではハウジング本体112に固定された回転防止ピン632が、レンズアセンブリ150内で軸方向に整列されたスロット634と係合してレンズの回転を防止する。このようにして歯車の回転は軸OAに沿ったレンズアセンブリの直線運動に十分変換される。この実施形態ではこれに代わる多様な回転防止構成も採用できる。代替的には、レンズを回転させて、固定したねじ山付きベース(回転する歯車626の代替)を使用してレンズアセンブリ150内でセンサに対して線形変換を生成させてもよい。別の実施形態において、レンズを固定して、センサを軸方向に動くベース上に設けることができる。一般に、このシステムはレンズアセンブリ150とセンサ/画像面(138)との間の相対運動を規定する。
【0035】
レンズアセンブリ150の軸方向位置はセンサ138に投影された画像の適切な焦点によって判定される。一つの実施形態において、オンボードビジョンプロセッサ136は、従来型の技術を用いて画像の焦点が合った時を判定できる焦点プロセス640を含んでいる。例えば、取得した画像のエッジにおけるコントラスト減少を用いることができる。焦点プロセス640において、定倍率レンズアセンブリ150(固定された前部レンズL1、後部レンズL2および開口絞りASからなる全体)はモータ620により多数の位置ステップで動かされ、プロセス640は取得した画像においてあるメトリクスに基づいて最良の焦点位置を判定する。レンズの焦点を合わせるその他の技術も明確に想定され-例えば、レンズ位置をスイーピングし、または距離センサおよび/または距離計を使用することによって対象物/撮像されたシーンとの距離を判定して、レンズを所定の設定に動かすことができる。レンズの位置設定は、例えばこれらの検出された距離を用いてレンズの位置設定を判定する公式テーブルまたは参照テーブルに基づいてもよい。
【0036】
図6をさらに参照すると、定倍率レンズアセンブリ150はカメラの本体/フレームに対して固定できることが明確に想定されている。そのような実施形態においてセンサアセンブリ630(またはその一部(例えばセンサ138))は、光軸OAに沿って位置が固定された定倍率レンズアセンブリ150に向かう方向と離れる方向に動かすことができる。適当なセンサアクチュエータ(SA)(ボックス648として仮想線で示す)を使用してセンサアセンブリ630を関連する両矢印で示されているように動かすために用いることができる。電動ウォームドライブ、ギアドライブおよび/またはリニアモータを含む(がこれらに限らない)、許容し得る任意の作動機構を使用することができる。一般的に上述したように焦点プロセス(例えばステッピング、スイーピング、距離検出等)を使用して、固定された定倍率レンズアセンブリに対して適当なセンサ位置を設定できる。
【0037】
III.定倍率焦点プロセス
【0038】
図7を簡単に参照して、定倍率レンズアセンブリの焦点を調整するための例示的な手順700を示す。この手順700は、セットアップおよび/または実行時間中に焦点を調整するための任意の容認可能な手順を単純化した例である。ステップ710でセンサはシーンの1以上の画像フレームを取得して、これらの画像フレームをビジョンプロセッサに送る。プロセッサは幾つかあるプロセスの中で特に焦点プロセス(
図6の640)を実行して、画像が十分に解像されているか否か判定する(ステップ720)。画像が十分に解像されていれば(例えばシンボルがデコーディングできれば)、決定ステップ730により焦点を現在の設定(ステップ740)に決めることができる。焦点が容認できないか、またはレンズアセンブリの先行の調整で達成された焦点より悪ければ、焦点プロセスはレンズの焦点を所定の方向で調整増分により再調整する(ステップ750)。レンズアセンブリの所定の移動方向の選択は、どの方向で焦点が改善されるかの予測に基づくことができ、またはどの方向でより良好な焦点が達成されるかを示す画像の分析に基づいてもよい。焦点が先行の調整より悪ければ、次のサイクルで調整の方向は相応に反転される。調整は反復プロセスを用いて増分的に行うことができるが、最初は画像がどの程度「ピンぼけ」しているかに関する判定に基づいておおまかな調整を行い、次いで最終的な焦点が達成されるまでより微細な調整を行うことができるよう想定されている。重ねて言うと、この手順(700)は当業者には明白である広範な焦点調整手順および/または技術の範例である。
【0039】
IV.液体レンズを使用する定倍率
【0040】
あるビジョンシステムの応用で望ましいことがある範例的なレンズ構成は、いわゆる液体レンズアセンブリである。例えばフランスのバリオプティックから市販されている液体レンズの1形態は、2種類の等密度液-油は絶縁体であり水は伝導体である-と、エレクトロウェッティングの原理(現象)を用いてレンズ構成の屈折力を変化させる。1例は、18ジオプタ(1/焦点距離)の屈折力の可変範囲を提供する。包囲している電気回路によってレンズを通過する電圧を変化させると、液体と液体の境界面の曲率が変化し、それが今度はレンズの焦点距離を変化させる。液体レンズを使用する幾つかの顕著な利点はレンズの耐久性(機械的可動部分がないこと)、反応時間が速いこと、光学的品質が比較的良好なこと、消費電力が低いこと、および小型であることである。液体レンズを使用すると、手でレンズに触れる必要がなくなるので、ビジョンシステムの取付け、セットアップおよび保守が簡単になる点が望ましい。他の自動焦点機構に比べて液体レンズは反応時間が極めて速い。液体レンズは読取り距離が対象物(表面)ごとに、またはある対象物の読取りから別の対象物に移行する間に変化する応用に理想的である。
【0041】
最近の液体レンズ技術の開発は、スイスのオプトチューンAG社から出ている。このレンズは液体容器を覆う可動膜を利用して焦点距離を変化させる。このレンズは競合設計より大きい絞りを提供し、より速く作動する点が有利である。液体レンズ技術を採用した光学系の焦点距離/距離は、液体レンズ素子の設定に基づき所定の範囲(例えば20ジオプタ)内で変化させることができる。この設定を変化させるには、公知技術に従う電磁操作を用いて膜の外周に力を加える。
【0042】
図8は、ビジョンシステム(
図1参照)のための一般化したレンズシステム構成800を表わしており、光軸OALに沿って向けられた液体レンズ素子L2Lを含んでいる。この例示的な構成において全体のレンズシステム800は、少なくとも2個のレンズまたは2グループのレンズからなる。第1の(前部)グループL1Lは固定屈折力を有し、第2の(後部)グループL2Lは可変屈折力を有する液体レンズ素子からなり、またはこれを含んでいる。この実施形態では前部レンズアセンブリと(後部)液体レンズアセンブリは、光軸OALに沿って固定した空間的関係に配置されていることに留意されたい。この液体レンズL2Lはレンズに電流を供給するドライバまたは類似のプロセッサ810によって駆動され、レンズ焦点プロセス820に基づいて焦点を調整する。システムに対する範例的なパラメータの完全な範囲を以下に提供する。範例的な対象物830が屈折力A1を有する第1のレンズ(グループ)L1Lの光学面から距離Sobj(この例では約20.710mm)に置かれたら、このレンズは次の距離における画像を投影するだろう。
S_2=Sobj/(A1*Sobj-1) (式1)
【0043】
非限定的な例によれば、レンズL1LとレンズL2Lのそれぞれの光学面の間の距離d1、および液体レンズL2Lの光学面とイメージセンサ840の間の距離d2は固定できる。それにより液体レンズの屈折力A_LLが次に等しい(設定されている)場合は、液体レンズL2Lはこの中間画像をセンサ840に投影する。:
A_LL=1/(S_2-d1)+1/d2 (式2)
【0044】
第1のレンズ(グループ)の幾何倍率m1は、次に等しく、
m1=1/(A1*S_obj-1) (式3)
第2の レンズ (グループ)の倍率 m2 は次に等しい。
m2=1/(A_LL*(S_2-d1)-1) (式4)
ここで液体レンズ L2Lがレンズ L1Lの後焦点に置かれたら、この 表現もd1=1/A1と書くことができる。
【0045】
これを式(2)および式(4)に代入すると、このシステムの総倍率Mは次に減少する。
M=m1*m2=d2/d1 (式5)
ここに、Mはシステム倍率、m1は固定されたレンズグループ/アセンブリの倍率、m2は液体レンズグループ/アセンブリの倍率、d1はレンズL1LとレンズL2Lのそれぞれの光学面の間の距離、およびd2は液体レンズL2Lの光学面とイメージセンサ840の間の距離である。
【0046】
したがって、この構成は対象物距離に依存しない(独立の)一定の倍率を生み出す。
図9と
図10はそれぞれ2種類の対象物距離S3(L1Lの光学面に近い)およびS4(L1lの光学面から遠い)について、システムのレンズ構成800を通る範例的な薄レンズ光線追跡を示す。液体レンズL2Lの焦点距離F2LおよびF2L’はドライバ810とプロセス820によって適当に調整されて、対象物距離Sobjの予想される範囲にわたり一定の倍率Mで焦点の合った画像を投影する。
【0047】
したがって、L2Lの屈折力(m2)を変化させることにより、対象物のシステムからの変化する距離(Sobj)にわたってMの値を所定のレベルに維持できるm2の値は多様な技術を用いて設定できる。上述した焦点プロセス700を用いてm2を設定できる。すなわち、レンズL2Lの屈折力は、与えられた距離で対象物830についてMの選択された一定の値に対して適当な焦点が達成されるまで増分的に(反復的に)調整できる。
【0048】
ここで、別の実施形態に従う液体レンズアセンブリL2Lを有する定倍率レンズシステム1100を示す
図11を参照する。
図8~
図10を参照すると、上述した構造および/または機能と類似した素子には同様の参照番号が付されている。例として、開口絞りASL(上記の機械的に動かされるレンズに関する説明も参照)は、前部レンズアセンブリL1Lと後部液体レンズアセンブリL2Lとの間に置くことができる。この開口絞りASLの光軸OALに沿った位置により、レンズ(グループ/アセンブリ)L1LおよびL2Lのサイズが決まる。開口絞りASLが前部レンズアセンブリL1Lに近い位置に置かれたら、液体レンズアセンブリL2Lのサイズ(直径)は増加されなければならない。反対に開口絞りASLが液体レンズアセンブリL2Lに近い位置に置かれたら、前部レンズアセンブリL1Lのサイズ(直径)が増加されなければならない。現在、市販の液体レンズは一般に直径が比較的小さいため、開口絞りは通常は液体レンズに近い位置に置かれ、または液体レンズアセンブリ(それ自体)がシステムにおいて開口絞りとして働く。
以下の表に、膜型液体レンズを採用した定倍率レンズアセンブリの作動例に対する幾つかの一般化されたパラメータを示して説明する。
レンズ1の焦点距離 f1=100mm
最も近い対象物距離 S_near=-200mm
最も遠い対象物距離 S_far=-400mm
中間の近い画像S2 S2_near=200mm
中間の遠い*画像S2 S2_far=133.333mm
レンズ間の距離 d1=f1mm
L2Lとセンサの距離 d2=20mm
近い対象物に対するL2Lの焦点距離 f_ll_near=16.667mm
近い場合のL2Lの屈折力(ジオプタ) A_ll_near=60ジオプタ
遠い対象物に対するL2Lの焦点距離 f_ll_far=12.5mm
遠い場合のL2Lの屈折力(ジオプタ) A_ll_far=80ジオプタ
L2Lに要求される屈折力範囲(ジオプタ) R=20ジオプタ
近い距離における倍率 m1_near=-1
m2_near=0.2
M_near=m1*m2=-0.2
遠い距離における倍率 m1_far=-0.333
m2_far=0.6
M_far=m1*m2=-0.2
【0049】
本明細書に記された定倍率レンズを有するビジョンシステムは、有利なことに、十分なディテールとレンズアセンブリの比較的単純な調整で広範な焦点距離において着目した領域の画像の取得を可能にすることが明らかであろう。これにより対象物間の距離の変化する際の取得速度が増して、システムはサイズと形状が異なる(それに伴い焦点距離が異なる)対象物と出会うことがある手持ち式ビジョンシステムおよび固定式ビジョンシステム(例えば動いているコンベアラインで使用)に非常に適合できる。
【0050】
以上は、本発明の例示的な実施形態に関する詳細な説明である。本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変容および追加を行うことが可能である。上述した種々の実施形態の各々の特徴は、関連する新しい実施形態において多数の特徴の組合せを提供するために、該当する場合はそれぞれ記述した他の実施形態の特徴と組み合わされてよい。さらに上記にて本発明の装置と方法の幾つかの実施形態について説明したが、本明細書で述べられたことは本発明の原理の応用を例示したものに過ぎない。本明細書で使用される様々な方向および/または向きを表わす用語、例えば、「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「底部」、「頂部」、「側部」、「前部」、「後部」、「左」、「右」およびこれに類するものは、相対的な表現法として用いられているに過ぎず、重力等の固定した座標系を基準とした絶対的な向きを表わすものではない。さらに、本明細書で使用されている「プロセス」および/または「プロセッサ」の用語は、広く電子的ハードウェアおよび/またはソフトウェアに基づく多様な機能やコンポーネントを含むものとして理解されるべきである。さらに表記されたプロセスまたはプロセッサは他のプロセスおよび/またはプロセッサと組み合わせ、または種々のサブプロセスもしくはサブプロセッサに分割できる。そのようなサブプロセスおよび/またはサブプロセッサは、本明細書に記載された実施形態に従い多様に組み合わせることができる。同様に、本明細書に記載された機能、プロセスおよび/またはプロセッサは、電子的ハードウェア、プログラム命令の非一時的なコンピュータ可読媒体からなるソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組合せを用いて実現できることが明確に想定されている。さらに、レンズアセンブリは少なくとも2個の空間的に固定されたレンズと外部アクチュエータを有するユニットとして示されているが、代替的な実施形態において、追加のレンズおよび/またはその他の光学素子(例えばフィルタ)も提供され得ることが明確に想定されている。また、レンズアセンブリのレンズは別個の作動装置(または共通のモータと連結された歯車セット)によって個々に作動できる。加えて、作動はリニアモータ等の代替的機構によって達成できる。さらに、レンズアセンブリは取り外すことができ、および/または適当なリンクによってカメラと連結された自己完結型アクチュエータを含んでいてもよい。例えば液体レンズ素子を使用する実施形態において、固定されたレンズアセンブリを前部に置き、液体レンズアセンブリを後部に置くのは例示に過ぎない。適当なサイズの液体レンズアセンブリが利用できる場合は、これをアセンブリの前部に配置し、固定された(またはその他の)レンズアセンブリを後部(すなわちイメージセンサにより近く、撮像される対象物からより遠い位置)に設けることができる。これに応じて、この説明は例として受け取られることを意図したものであり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。