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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】紡機におけるドラフト装置
(51)【国際特許分類】
   D01H 1/22 20060101AFI20230406BHJP
   D01H 5/74 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
D01H1/22
D01H5/74
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017169090
(22)【出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2019044300
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2019-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】三塚 尚之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 彰俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 能理
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】中野 裕之
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-273832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
B21D3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインシャフトおよび前記ラインシャフトにねじ締結により連結されるエンドシャフトを有するドラフトローラと、
前記ラインシャフトを下方から支持し、前記ラインシャフトが間に延在する複数のローラスタンドと、
駆動モータの回転力を出力し、前記エンドシャフトに軸継手を介して連結される駆動シャフトと、を備えた紡機におけるドラフト装置であって、
前記エンドシャフトは、前記ラインシャフト側の端部が前記複数のローラスタンドのうち最も前記駆動シャフトに近いローラスタンドに支持され、
前記エンドシャフトの中間部に固定される軸受と、
前記軸受を少なくとも下方から支持するブラケットを備え
前記ラインシャフトと前記エンドシャフトとのねじ締結部は、前記最も前記駆動シャフトに近いローラスタンドよりも前記駆動シャフトとは反対側に位置するローラスタンドと前記ブラケットとの間にあることを特徴とする紡機におけるドラフト装置。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記軸受を少なくとも下方から支持する軸受受承部材と、
前記軸受受承部材に固定され、前記軸受を上方から固定する固定部材と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項3】
前記エンドシャフトは、駆動シャフト側シャフト部と、ラインシャフト側シャフト部に分割され、
前記駆動シャフト側シャフト部および前記ラインシャフト側シャフト部は、ねじ締結により連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項4】
前記ドラフトローラは、フロントボトムローラであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の紡機におけるドラフト装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記ローラスタンドと同一形状とすることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の紡機におけるドラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紡機におけるドラフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡機におけるドラフト装置の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された紡機におけるドラフト装置が知られている。この紡機におけるドラフト装置は、フロントボトムローラ、ミドルボトムローラ、バックボトムローラをそれぞれ2台のフロントローラ用駆動モータ、ミドルローラ用駆動モータ、バックローラ用駆動モータで駆動する。
【0003】
例えば、図6に示すドラフト装置70は、ドラフトローラとしてのフロントボトムローラ71、ミドルボトムローラ72、バックボトムローラ73を備えている。フロントボトムローラ71、ミドルボトムローラ72、バックボトムローラ73は、ローラスタンド74、75にそれぞれ支持されている。フロントボトムローラ71の軸方向において一方のローラスタンド74と対向するようにギヤ機構76が設置されている。ギヤ機構76は、フロントローラ用駆動モータ(図示せず)の駆動力を出力する駆動シャフト77を備えている。フロントボトムローラ71は、ラインシャフト78とエンドシャフト79を有する。ラインシャフト78とエンドシャフト79はねじ締結により同軸に連結されている。エンドシャフト79は、駆動シャフト77と同軸となるように、軸継手80を介して駆動シャフト77に接続されている。
【0004】
ラインシャフト78とエンドシャフト79は、ねじ締結により連結されているので、エンドシャフト79の軸心とラインシャフト78の軸心とが一致しない歪を有する場合がある。エンドシャフト79の軸心とラインシャフト78の軸心とが一致しない歪を有するままでドラフト装置70を作動させると、フロントボトムローラ71に芯振れが発生し、ドラフトされた糸の品質に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、従来では、互いに連結されたラインシャフト78とエンドシャフト79がローラスタンド74、75に支持され、駆動シャフト77と連結されない状態にて、エンドシャフト79の自由端にて振れを測定する。そして、測定された振れの大きさに応じたラインシャフト78とエンドシャフト79とのねじ締結部における歪取り作業が行われる。具体的には、図7に示すように、ラインシャフト78とエンドシャフト79とのねじ締結部における歪取り作業では、駆動シャフト77に連結されていないエンドシャフト79に径方向の荷重(白矢印F)を上方から付与する。つまり、エンドシャフト79において駆動シャフト77に連結されていない自由端とローラスタンド74に支持されている自由端の反対側の端部との間に荷重を付与する。エンドシャフト79に対する荷重の付与によりラインシャフト78とエンドシャフト79との歪を解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-2300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6に示す従来の紡機におけるドラフト装置70では、歪取り作業の際に、エンドシャフト79の自由端で振れを測定し、基準値より振れが大きければ、図7に示すように、エンドシャフト79において駆動シャフト77に連結されていない自由端とこの自由端の反対側のローラスタンド74に支持されている端部との間にて荷重を付与する。しかし、自由端の振れを無くす作業は非常に微細な力加減に左右されるため、歪に応じた適切な荷重をラインシャフト78とエンドシャフト79とのねじ締結部に付与することが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部の歪を解消し易い紡機におけるドラフト装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ラインシャフトおよび前記ラインシャフトにねじ締結により連結されるエンドシャフトを有するドラフトローラと、軸受を介して前記ラインシャフトを下方から支持し、前記ラインシャフトが間に延在する複数のローラスタンドと、駆動モータの回転力を出力し、前記エンドシャフトに軸継手を介して連結される駆動シャフトと、を備えた紡機におけるドラフト装置であって、前記エンドシャフトは、前記ラインシャフト側の端部に固定された軸受が前記複数のローラスタンドのうち最も前記駆動シャフトに近いローラスタンドに支持され、前記エンドシャフトの中間部に固定される軸受と、前記軸受を少なくとも下方から支持するブラケットを備え、前記ラインシャフトと前記エンドシャフトとのねじ締結部は、前記最も前記駆動シャフトに近いローラスタンドよりも前記駆動シャフトとは反対側に位置するローラスタンドと前記ブラケットとの間にあることを特徴とする。
【0010】
本発明では、ブラケットがエンドシャフトの中間部に固定される軸受を下方から支持する。このため、ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部が、エンドシャフトの中間部に固定される軸受を支持するブラケットとローラスタンドとの間に位置する。ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部の歪取り作業では、ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部における振れを計測し、ラインシャフトとエンドシャフトとの締結部に振れの大きさに応じた荷重を上方から付与することにより、歪に応じた適切な荷重をラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部に付与することができ、ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部の歪を簡単に解消することができる。
【0011】
また、上記の紡機におけるドラフト装置において、前記ブラケットは、前記軸受を少なくとも下方から支持する軸受受承部材と、前記軸受受承部材に固定され、前記軸受を上方から固定する固定部材と、を備えている構成としてもよい。
この場合、軸受受承部材が軸受を下方から支持するだけでなく、軸受を上方から固定する固定部材が軸受受承部材に固定されることから、軸受は軸受受承部材および固定部材により上下方向から固定される。このため、エンドシャフトの中間部に固定される軸受を単に下方からのみ支持する場合と比較すると、ドラフトローラの芯振れを低減することができる。
【0012】
また、上記の紡機におけるドラフト装置において、前記エンドシャフトは、駆動シャフト側シャフト部と、ラインシャフト側シャフト部に分割され、前記駆動シャフト側シャフト部および前記ラインシャフト側シャフト部は、ねじ締結により連結されている構成としてもよい。
この場合、エンドシャフトが駆動シャフト側シャフト部材とラインシャフト側シャフト部材とに分割されていることにより、エンドシャフトの中間部への軸受の固定は、エンドシャフトが分割されていない場合と比較して容易となる。
【0013】
また、上記の紡機におけるドラフト装置において、前記ドラフトローラは、フロントボトムローラである構成としてもよい。
この場合、フロントボトムローラは、紡機における他のドラフトローラと比較してドラフト倍率が最も大きく、すなわち回転数が最も高くなるドラフトローラであるので、フロントボトムローラにおける芯振れ抑制の効果は、他のドラフトローラよりも大きくなる。
【0014】
また、上記の紡機におけるドラフト装置において、前記ブラケットは、前記ローラスタンドと同一形状とする構成としてもよい。
この場合、ブラケットをローラスタンドと同一形状とするので、ローラスタンドと異なる形状のブラケットを用いる場合と比較すると、部品点数の削減が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ラインシャフトとエンドシャフトとのねじ締結部の歪を解消し易い紡機におけるドラフト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の概略平面図ある。
図2】本発明の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置の要部斜視図である。
図3】フロントボトムローラ、エンドシャフトおよび駆動シャフト連結を示す要部平面図である。
図4図1におけるA-A線の矢視図である。
図5】ドラフト装置におけるドラフトローラの歪取り作業の説明図である。
図6】従来の紡機におけるドラフト装置の概略平面図である。
図7】従来のドラフト装置におけるドラフトローラの歪取り作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、第1の実施形態に係る紡機におけるドラフト装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、紡機としてのリング精紡機におけるドラフト装置について説明する。本発明に係るドラフト装置は、リング精紡機の機台の長手方向に沿って左右一対設けられており、3本のドラフトローラを有する3線式の構成となっている。
【0018】
図1に示すように、ドラフト装置10は、フロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13を備えている。フロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13はドラフトローラに相当する。ドラフト装置10は、ドラフトローラを支持するローラスタンド14、15を備えている。
【0019】
ローラスタンド14、15は、フロントボトムローラ11を下方から支持する。ローラスタンド14は、フロントボトムローラ11の一方の端部に近い部位を支持し、ローラスタンド15は他方の端部を支持する。ローラスタンド14、15には、支持ブラケット(図示せず)がそれぞれ固定されており、支持ブラケットは、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13を支持する。支持ブラケットは、前後方向(ドラフトローラの軸方向と直交する方向)に位置調整可能である。
【0020】
ローラスタンド14、15は、図2に示すように、基台16に支持された一対のドラフトロッド17により支持されている。ドラフトロッド17は機台の全長にわたって延在する。図2では、基台16は1台のみ示すが、ドラフト装置10には複数の基台16が備えられている。また、図2では、ローラスタンド14のみを図示し、ローラスタンド15を図示しないほか、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13を図示せず省略している。
【0021】
ミドルボトムローラ12にはエプロン(図示せず)が備えられている。また、フロントボトムローラ11に対応するフロントトップローラ(図示せず)が設けられている。ミドルボトムローラ12に対応するミドルトップローラ(図示せず)が設けられ、ミドルトップローラにはエプロン(図示せず)が備えられている。バックボトムローラ13に対応するバックトップローラ(図示せず)が設けられている。
【0022】
フロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13の一方の端部側(図1の左側)には、ギヤ機構18が設けられている。ギヤ機構18には、複数の歯車列(図示せず)と、フロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13とそれぞれ連結される駆動シャフト19、20、21を備えている。
【0023】
ギヤ機構18の近傍に、フロントボトムローラ11の駆動源であるフロントローラ駆動モータ22と、ミドルボトムローラ12の駆動源であるミドルローラ駆動モータ24と、バックボトムローラ13の駆動源であるバックローラ駆動モータ23が配設されている。フロントローラ駆動モータ22の回転力は、ギヤ機構18におけるフロントローラ用の歯車列を介して駆動シャフト19に出力される。また、ミドルローラ駆動モータ24の回転力はミドルローラ用の歯車列を介して駆動シャフト20に出力され、バックローラ駆動モータ23の回転力はバックローラ用の歯車列を介して駆動シャフト21に出力される。
【0024】
フロントボトムローラ11は、ラインシャフト25とラインシャフト25にねじ締結により同軸に連結されるエンドシャフト30とを有している。ラインシャフト25は、ローラスタンド14、15の間にて延在する。図3に示すように、ラインシャフト25のエンドシャフト30側の端部には、雌ねじを有する雌ねじ孔26が形成されている。
【0025】
本実施形態のエンドシャフト30は、第1シャフト部材31および第2シャフト部材32により構成されている。第1シャフト部材31は、軸継手27を介して駆動シャフト19と連結され、第2シャフト部材32はラインシャフト25に連結されている。第1シャフト部材31は、第1シャフト本体部33と、第1シャフト本体部33の第2シャフト部材32側の端部に設けられ、第1シャフト本体部33より小径の小径シャフト部34とを有する。小径シャフト部34の先端部は雄ねじが形成された雄ねじ部35を有する。
【0026】
第2シャフト部材32は、第2シャフト本体部36を有する。第2シャフト本体部36の第1シャフト部材31側の端部には、雌ねじを有する雌ねじ孔37が形成されている。第1シャフト部材31の雄ねじ部35が雌ねじ孔37に螺入されることにより、第1シャフト部材31と第2シャフト部材32は同軸に連結される。第2シャフト本体部36のラインシャフト25側の端部には、第2シャフト本体部36より小径の小径シャフト部38が形成されている。小径シャフト部38は雄ねじが形成された雄ねじ部39を有する。雄ねじ部39がラインシャフト25に形成された雌ねじ孔26に螺入されることにより、エンドシャフト30とラインシャフト25が同軸に連結される。
【0027】
第1シャフト部材31と第2シャフト部材32が連結された状態では、第1シャフト部材31の小径シャフト部34がエンドシャフト30の中間部に相当する。小径シャフト部34には軸受40が固定されている。軸受40は針状ころ軸受である。同様に、第2シャフト部材32の小径シャフト部38にも軸受40と同じ構成の軸受41が固定されている。さらに、ラインシャフト25のローラスタンド15に支持される他側の端部に、軸受40、41と同じ構成の軸受42が固定されている(図1を参照)。
【0028】
ミドルボトムローラ12は、ラインシャフト43とラインシャフト43にねじ締結により同軸に連結されるエンドシャフト44とを有している(図1を参照)。ラインシャフト43は、ローラスタンド14、15の間にて延在する。エンドシャフト44は分割されておらず、軸継手45を介して駆動シャフト20と連結されている。バックボトムローラ13は、ラインシャフト46とラインシャフト46にねじ締結により同軸に連結されるエンドシャフト47とを有している(図1を参照)。ラインシャフト46は、ローラスタンド14、15の間にて延在する。エンドシャフト47は分割されておらず、軸継手48を介して駆動シャフト21と連結されている。ギヤ機構18とローラスタンド14との間には、仕切り板49が設置されている。
【0029】
本実施形態のドラフト装置10は、エンドシャフト30の中間部に固定される軸受40を上下方向から支持するブラケット50を備えている。図2図4に示すように、ブラケット50は、一対のブラケット本体部材51と、軸受受承部材52と、固定部材53と、を備える。なお、図4では一方のブラケット本体部材51のみ図示される。
【0030】
ブラケット本体部材51は一対のフロントボトムローラ11の間に延在する長尺状の板材である。ブラケット本体部材51の下縁にはドラフトロッド17に嵌合する円弧溝54が形成されている。ブラケット本体部材51は円弧溝54付近からフロントボトムローラ11へ向けて斜め下方へ傾斜して延びている。ブラケット本体部材51のフロントボトムローラ11に接近している先端部55は、ボルト56の締結により軸受受承部材52が固定される部位である。一対のドラフトロッド17には、円筒部材57がそれぞれ装着されている。一対のブラケット本体部材51は、円筒部材57を挟むようにしてボルト58の締結より円筒部材57に固定されている(図2を参照)。円筒部材57は径方向に二分割可能である。
【0031】
軸受受承部材52は、略L字状に屈曲された部材であり、軸受受承部材52の一方の端部は、一対のブラケット本体部材51の先端部55に挟持され、ボルト56の締結により一対のブラケット本体部材51に固定されている。軸受受承部材52の他方の端部は、断面円弧状の軸受面59を有している。軸受面59は軸受40を下方から支持する。
【0032】
軸受受承部材52には、軸受40を上方から固定する固定部材53がボルト60の締結により固定されている。固定部材53は軸受受承部材52に固定される一対の座部61と、一対の座部61の間を接続する湾曲部62を有している。湾曲部62は円弧状に湾曲されている。固定部材53が軸受受承部材52に固定されることにより、ブラケット50は軸受40を上下方向から固定する。
【0033】
次に、本実施形態のラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部における歪取り作業について説明する。ラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部における歪取り作業は、ドラフト装置10の組み立て時やドラフト装置10の保守点検時に行われる作業である。図5(a)に示すように、まず、作業者は、ドラフト装置10のローラスタンド14、15にフロントボトムローラ11を支持させる。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、作業者は軸継手27を介してフロントボトムローラ11と駆動シャフト19を連結する。フロントボトムローラ11と駆動シャフト19が軸継手27を介して連結されることにより、エンドシャフト30の端部と駆動シャフト19の端部の位置が合わされる。
【0035】
次に、図5(c)に示すように、作業者はブラケット50を取り付け、ブラケット50の軸受受承部材52にフロントボトムローラ11の軸受40を支持させる。本実施形態では、固定部材53が軸受受承部材52にボルト締結により固定され、軸受4は軸受受承部材52および固定部材53により上下方向から固定される。
【0036】
次に、作業者は、軸継手27を取り外す。作業者は、軸継手27を取り外した状態にてフロントボトムローラ11を回転させ、軸受41を支持するローラスタンド14におけるラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部の振れを計測する。さらに、図5(d)に示すように、作業者は、ブラケット50とローラスタンド15により、両端の軸受40、42が支持されるフロントボトムローラ11に対して、軸受41の上方から計測した振れの大きさに対応する下向きの荷重(白矢印F)を付加する。下向きの荷重を付加することにより、ラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部における歪が解消され、フロントボトムローラ11を回転させたときの芯振れが防止される。次に、図5(e)に示すように、作業者は、軸継手27を介してフロントボトムローラ11と駆動シャフト19を連結する。フロントボトムローラ11と駆動シャフト19が連結されることによりフロントボトムローラ11における歪取り作業は終了する。
【0037】
本実施形態に係るドラフト装置10は以下の作用効果を奏する。
(1)ブラケット50がエンドシャフト30の中間部に固定される軸受40を下方から支持する。このため、フロントボトムローラ11におけるラインシャフト25とエンドシャフト30との締結部が、エンドシャフト30の中間部に固定される軸受40を支持するブラケット50とローラスタンド15との間に位置する。ラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部の歪取り作業では、ラインシャフト25とエンドシャフト30との締結部における振れを計測し、ラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部に振れの大きさに応じた荷重を上方から付与することにより、歪に応じた適切な荷重をラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部に付与することができ、ラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部の歪を簡単に解消することができる。
【0038】
(2)軸受受承部材52が軸受4を下方から支持するだけでなく、固定部材53が軸受受承部材52に固定されることから、軸受4は軸受受承部材52および固定部材53により上下方向から固定される。このため、エンドシャフト30の中間部に固定される軸受4を単に下方からのみ支持する場合と比較すると、駆動シャフト19とフロントボトムローラ11との芯ずれに起因するフロントボトムローラ11の芯振れを低減することができる。
【0039】
(4)エンドシャフト30は、駆動シャフト側シャフト部としての第1シャフト部材31と、ラインシャフト側シャフト部としての第2シャフト部材32に分割されている。このため、エンドシャフト30への軸受40の取り付けは、エンドシャフトが分割されていない場合と比較して容易となる。
【0040】
(5)ドラフトローラとしてのフロントボトムローラ11は、ドラフト装置10における他のドラフトローラであるミドルボトムローラ12およびバックボトムローラ13と比較すると回転数が最も高くなる。よって、フロントボトムローラ11における芯振れ抑制の効果は、他のドラフトローラよりも大きくなる。
【0041】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0042】
○ 上記の実施形態では、ブラケットによりエンドシャフトの中間部に固定した軸受を支持したが、この限りではない。例えば、ローラスタンドと同一形状のブラケットを用いてもよい。この場合、実施形態のブラケットと比較すると部品点数を削減できる。このため、ドラフト装置の製作コストを低減することができる。
○ 上記の実施形態では、ブラケットはエンドシャフトの中間部に固定された軸受を上下方向から固定したが、この限りではない。少なくとも、エンドシャフトの中間部に固定された軸受は下方からのみ支持されてもよい。例えば、ローラスタンドをエンドシャフトの中間部に固定された軸受を少なくとも下方から支持するブラケットとして用いる場合、エンドシャフトの中間部に固定された軸受はローラスタンドにより下方からのみ支持される。この場合であっても、歪に応じた適切な荷重をラインシャフト25とエンドシャフト30とのねじ締結部に付与することができる。
○ 上記の実施形態では、エンドシャフトは、駆動シャフト側シャフト部と、ラインシャフト側シャフト部に分割される構成としたが、これに限らない。分割されない1本のエンドシャフトとし、エンドシャフトの中間部に軸受を固定すればよい。
○ 上記の実施形態では、ドラフトローラとしてのフロントボトムローラを発明の適用対象としたが、フロントボトムローラに限らず、ミドルボトムローラおよびバックボトムローラをドラフトローラとして発明の適用対象とすることを妨げない。
○ 上記の実施形態では、フロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12、バックボトムローラ13のそれぞれにフロントローラ駆動モータ22、ミドルローラ駆動モータ24、バックローラ駆動モータ23を設けているが、単一のモータの駆動力を伝動機構を介してフロントボトムローラ11、ミドルボトムローラ12、バックボトムローラ13へ伝達する駆動形式のドラフト装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10、70 ドラフト装置
11、71 フロントボトムローラ
12、72 ミドルボトムローラ
13、73 バックボトムローラ
14、15、74、75 ローラスタンド
19、20、21、77 駆動シャフト
22 フロントローラ駆動モータ
23 ミドルローラ駆動モータ
24 バックローラ駆動モータ
25、43、46、78 ラインシャフト
27、45、48、80 軸継手
30、44、47、79 エンドシャフト
31 第1シャフト部材
32 第2シャフト部材
40、41、42 軸受
50 ブラケット
51 ブラケット本体部材
52 軸受受承部材
53 固定部材
F 荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7