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  • 特許-透明基板、薄膜支持基板 図1
  • 特許-透明基板、薄膜支持基板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】透明基板、薄膜支持基板
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20230406BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230406BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017174141
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2019050144
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-08-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】苅部 林也
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】川口 聖司
【審判官】杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-231541(JP,A)
【文献】特開2015-217595(JP,A)
【文献】特開平4-310539(JP,A)
【文献】特開平4-219343(JP,A)
【文献】特開2004-311419(JP,A)
【文献】特開2010-66667(JP,A)
【文献】特開平4-153290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00 - 33/28
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の透過率が50%以下である透明基板を用意する工程、
前記透明基板に、前記透明基板を用意する工程と同時、または、後に、表面と裏面の一方又は両方に凹凸賦形を設ける工程を有し、前記凹凸賦形はその界面で前記紫外線を様々な方向に反射するものであり、次いで
前記紫外線を用いて、フォトリソグラフィーを行いパターン形成し、薄膜支持基板とする工程、
前記薄膜支持基板上に、電極層を含む薄膜を積層する工程、
を含むパターン形成された前記薄膜支持基板を有する薄膜積層基板の製造方法。
【請求項2】
前記透明基板は、紫外線吸収成分を含有する請求項1記載のパターン形成された前記薄膜支持基板を有する薄膜積層基板の製造方法。
【請求項3】
前記紫外線吸収成分が、酸化セリウムまたは酸化バナジウムである請求項2記載のパターン形成された前記薄膜支持基板を有する薄膜積層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板、透明基板に薄膜を積層した薄膜支持基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を透過する透明基板は、有機EL素子などの自発光素子の光取り出し側基板として用いられている。このような透明基板は、光の取り出し効率を向上させるなどの目的で、表面に凹凸賦形を設けたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-127746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した透明基板は、フォトリソグラフィー工程を用いて、表面に透明電極層や絶縁層などのパターン形成が行われる。その際には、透明基板上にパターン形成される薄膜を成膜した後、その上にフォトレジストを塗布して、紫外線によるマスク露光を行う。マスク露光では、フォトマスクの開口部を通過した紫外線がフォトレジスト層及び薄膜を通過して、透明基板の界面で反射して戻される現象が起こり、前述したように透明基板の表面又は裏面に凹凸賦形を施している場合には、凹凸賦形の界面で様々な方向に反射した紫外線がフォトマスクの遮光領域下におけるフォトレジスト層を露光することになる。
【0005】
このように、表面にフォトリソグラフィー工程によるパターン形成を行う透明基板は、その表面又は裏面に凹凸賦形が設けられている場合には、凹凸賦形の界面で反射する紫外線によって、意図しないフォトレジスト層の露光がなされることで、パターンのエッジぼけが生じてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、表面又は裏面に凹凸賦形が施された透明基板上に積層された薄膜をフォトリソグラフィー工程でパターニングするに際して、パターンにエッジぼけが生じるのを抑止すること、等が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
紫外線の透過率が50%以下である透明基板を用意する工程、前記透明基板に、前記透明基板を用意する工程と同時、または、後に、表面と裏面の一方又は両方に凹凸賦形を設ける工程を有し、前記凹凸賦形はその界面で前記紫外線を様々な方向に反射するものであり、次いで、前記紫外線を用いて、フォトリソグラフィーを行いパターン形成し、薄膜支持基板とする工程、前記薄膜支持基板上に、電極層を含む薄膜を積層する工程、を含むパターン形成された前記薄膜支持基板を有する薄膜積層基板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する本発明は、フォトマスクの開口を通過した紫外線は、フォトレジスト層を露光した後透明基板を透過しにくくなるので、凹凸賦形を有する透明基板の界面で反射して再びフォトレジスト層を露光する紫外線が抑制される。これによって、パターンのエッジぼけを抑止し、凹凸賦形を有する透明基板上に寸法精度の高いパターニング層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】フォトリソグラフィー工程におけるマスク露光の状態を示した説明図である((a)が比較例を示し、(b)が本発明の透明基板を示している。)。
図2】酸化セリウムを含有したケイ酸塩ガラスを透明基板とした例(基板厚さ1mm)の波長毎の光透過率を示したグラフである((a)が可視域を含む広帯域での透過率、(b)が紫外域での透過率)。
図3】酸化バナジウムを含有したソーダ石灰ガラスを透明基板とした例(基板厚さ1mm)の波長毎の透過率を示したグラフである((a)が可視域を含む広帯域での透過率、(b)が紫外域での透過率)。
図4】透明基板上に薄膜を積層した薄膜支持基板の一例としての有機EL素子基板を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、凹凸賦形を有する透明基板Gに成膜された薄膜(ITO膜など)T上のフォトレジスト層Rに、フォトマスクMを介して紫外線UVを照射する場合、図1(a)に示すように、凹凸賦形の界面で反射して戻される紫外線UVが存在する場合には、その紫外線UVは凹凸賦形の界面にて様々な方向に反射することになるので、反射された紫外線UVがフォトレジスト層Rの遮光領域を露光することになり、これによってパターンのエッジぼけが生じることになる。
【0011】
これに対して、透明基板G1が、フォトリソグラフィー工程で使用する紫外線(例えば、365nm)の透過率の低い基板である場合には、図1(b)に示すように、フォトマスクMの開口を通過した紫外線UVは、フォトレジスト層Rを露光して、透明基板G1上の薄膜Tを通過した後、大半の紫外線UVが透明基板G1に吸収される。これによって、透明基板G1の凹凸賦形の界面で反射して再びフォトレジスト層Rを露光する紫外線が抑制され、フォトレジスト層Rは、フォトマスクMの開口パターンどおりに露光されることになる。これにより、その後のフォトレジスト層Rの現像工程、薄膜Tのエッチング工程において、マスクパターンに対応した精度の高いパターン形成が可能になる。
【0012】
図1(b)においては、透明基板G1は、一面側のみに凹凸賦形が形成されているが、両面に凹凸賦形面が形成されていて、その凹凸賦形面上に薄膜Tが成膜されているものであってもよい。また、透明基板G1の一面のみに形成された凹凸賦形面上に薄膜Tが成膜されているものであってもよい。また、図1(b)においては、透明基板G1上の薄膜Tは、一層のみであるが、多層の薄膜Tが積層され、そのうちの一層に対してパターンを形成するものであってもよい。ここでの薄膜Tの一例は、薄膜積層構造を有する自発光素子の透明電極層や絶縁層などである。
【0013】
透明基板G1における紫外線の透過率と界面で戻ってくる光の割合(戻り率)との関係は、界面で全て反射される場合を考えると、戻り率は、透過率の二乗になるので、表1に示すようになる。表1から明らかなように、透過率を50%以下にすることで、戻り率を大きく下げる(25%以下)ことが可能になり、透過率を30%以下にすることで、更に戻り率を低くする(一桁%以下)ことが可能になる。このように、透明基板G1の紫外線透過率を低く抑えることで、透明基板G1の凹凸賦形の界面で反射して再びフォトレジスト層Rを露光する紫外線を効果的に抑止することができる。
【0014】
【表1】
【0015】
透明基板G1がガラス基板の場合には、ガラス基板に紫外線吸収成分を含有させることで、紫外線の透過率を所望の率に下げることが可能になる。この際、透明基板G1が照明用発光装置の光取り出し側基板である場合には、紫外線吸収成分の含有によって、可視光域の光透過率が低下しないように、紫外線吸収成分の材料及び含有量を適宜選択することが望まれる。
【0016】
透明基板G1が、ガラス基板であって、照明用発光装置の光取り出し側基板である場合に、好適な紫外線吸収成分としては、酸化セリウム(CeO2)や酸化バナジウム(V25)を例示することができる。
【0017】
図2は、酸化セリウムを含有したケイ酸塩ガラスをガラス基板とした例(基板厚さ1mm)の波長毎の光透過率を示している。ここでは、酸化セリウム0%のケイ酸塩ガラス、酸化セリウム0.24重量%のケイ酸塩ガラス、酸化セリウム0.47重量%のケイ酸塩ガラスの光透過率を示している。酸化セリウム0.24重量%含有のケイ酸塩ガラスは、波長365nmの紫外線の透過率を約50%に抑え、可視光域(波長400nm以上)の透過率を約80%以上にしている。また、酸化セリウム0.47重量%含有のケイ酸塩ガラスは、波長365nmの紫外線の透過率を約30%に抑え、可視光域(波長400nm以上)の透過率を約70%以上にしている。
【0018】
図3は、酸化バナジウムを含有したソーダ石灰ガラスをガラス基板とした例(基板厚さ1mm)の波長毎の光透過率を示している。ここでは、酸化バナジウム0%のソーダ石灰ガラス、酸化バナジウム0.2重量%のソーダ石灰ガラス、酸化バナジウム0.5重量%のソーダ石灰ガラスの光透過率を示している。酸化バナジウム0.2重量%含有のソーダ石灰ガラスは、波長365nmの紫外線の透過率を約57%に抑え、可視光域(波長400nm以上)の透過率を約87%以上にしている。また、酸化バナジウム0.5重量%含有のソーダ石灰ガラスは、波長365nmの紫外線の透過率を約30%に抑え、可視光域(波長400nm以上)の透過率を約81%以上にしている。
【0019】
図2及び図3の例から明らかなように、酸化セリウム又は酸化バナジウムを含有させたガラス基板では、酸化セリウム又は酸化バナジウムの含有量を0.2~0.5重量%にすることで、効果的に紫外線を吸収し、且つ高い透過率で可視光を透過させることができる。
【0020】
図4は、ガラス基板上に薄膜を積層した薄膜支持基板の一例として、有機EL素子基板を示している。有機EL素子基板1は、照明用発光装置の光源の一部となるものであり、ガラス基板2を備え、ガラス基板2上に透明電極層(陽極層)3、絶縁層4、発光機能層5、金属電極層(陰極層)6などの薄膜を積層した構造を有している。ガラス基板2は、光取り出し側の基板であり、このガラス基板2を介して光が外部に取り出される。
【0021】
ガラス基板2は、紫外線吸収成分を含有することで、フォトリソグラフィー工程を用いて、パターン形成層である透明電極層3や絶縁層4のパターン形成を精度良く行うことができる。
【0022】
下記の表2は、ガラス基板2の酸化セリウム(CeO2)の含有量における波長365nmと可視光での透過率を示している。例1は、紫外線吸収成分である酸化セリウム(CeO2)が含有されていない比較例であり、例2~例5は、酸化セリウム(CeO2)の含有量を0.24重量%から2.31重量%まで変えた例である。
【0023】
【表2】
【0024】
例2~5におけるガラス成分のCeO2は、含有量を増やすことで、紫外線(波長365nm)の透過率を抑えることができるが、過剰に加え得ると、可視光域の透過率を低下させることになる。可視光域の透過率を確保するためには、前述したように、CeO2の含有量を0.2~0.5重量%とすることが好ましい。
【0025】
ガラス基板2が、紫外線吸収成分を含有していることで、透明電極層3や絶縁層4のパターン形成を高い精度で行うことができる。これによって、発光むらの少ない高品質の照明装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:有機EL素子基板,2:ガラス基板,3:透明電極層,
4:絶縁層,5:発光機能層,6:金属電極層
図1
図2
図3
図4