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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】光送信装置及び光送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04K 1/02 20060101AFI20230406BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20230406BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20230406BHJP
【FI】
H04K1/02
H04B10/50
H04B10/70
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018035102
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149779
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細井 健司
(72)【発明者】
【氏名】本田 真
(72)【発明者】
【氏名】原澤 克嘉
(72)【発明者】
【氏名】土井 吉文
(72)【発明者】
【氏名】圷 重人
(72)【発明者】
【氏名】荻野 義明
(72)【発明者】
【氏名】森谷 篤
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】須田 勝巳
【審判官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0005789(US,A1)
【文献】特開2007-336409(JP,A)
【文献】特開2010-114662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04K 1/02
H04B10/70
H04B10/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値強度変調による光通信量子暗号を施し、暗号光信号を送信する光送信装置であって、
光多値信号を入力し、前記光多値信号に対して、量子雑音を付加し、光Powerを調整する雑音Power調整回路を有し、
前記雑音Power調整回路は、
前記光多値信号を減衰させる減衰器と、
前記減衰器で減衰させた光多値信号に量子雑音を付加するためのASE(Amplified Spontaneous Emission)光を生成する第一の光増幅器と、
前記減衰器と前記第一の光増幅器に接続されて、前記量子雑音を付加された光多値信号を増幅させて、前記暗号光信号を生成する第二の光増幅器とからなることを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
前記第一の光増幅器を複数有することを特徴とする請求項1記載の光送信装置。
【請求項3】
前記第一の光増幅器は、前記減衰器と前記第の光増幅器をつなぐ伝送路に対して、並列に接続されたことを特徴とする請求項2記載の光送信装置。
【請求項4】
前記第一の光増幅器は、前記減衰器と前記第の光増幅器をつなぐ伝送路に対して、直列に接続されたことを特徴とする請求項2記載の光送信装置。
【請求項5】
多値強度変調による光通信量子暗号を施し、暗号光信号を送信する光送信方法であって、
光多値信号を減衰器により、減衰させるステップと、
第一の光増幅器が、前記減衰器で減衰させた光多値信号に量子雑音を付加するためのASE(Amplified Spontaneous Emission)光を生成するステップと、
前記減衰器と前記第一の光増幅器に接続された第二の光増幅器が、前記量子雑音を付加された光多値信号を増幅させて、前記暗号光信号を生成するステップとを有することを特徴とする光送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信装置及び光送信方法に係り、特に、多値強度変調によりデータを変調して光信号により送信する際に、暗号強度を向上させ、伝送距離を長くするのに好適な光送信装置及び光送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Yuen量子暗号は光通信量子暗号(Y-00)通信とも呼ばれ、光の量子ゆらぎ(量子ショット雑音)を変調によって拡散させ、盗聴者によって光信号を正確に受信できなくする通信技術であり、共通鍵量子暗号へ適用することが提唱されている。この共通鍵量子暗号は、2値の送信データを搬送する2値の光信号を一つのセット(基底という)とし、この基底を複数M個用意し、いずれの基底を使ってデータを送るかは暗号鍵に従う擬似乱数によって不規則に決める。現実的には光M値信号は量子ゆらぎによって識別ができないほど信号間距離が小さく設計されているため、結局、盗聴者は全く受信信号からデータ情報を読みとることができない。
【0003】
正規の送受信者の光変復調装置は、2値のM個の基底を共通の擬似乱数にしたがって切り換えて通信するため、正規の受信者は信号間距離の大きな2値の信号判定によってデータを読みとることができる。したがって、量子ゆらぎによるエラーは無視でき、正規の送受信者間では正確な通信が可能となる。この光変調方式による暗号は、Yuen-2000暗号通信プロトコル(Y-00プロトコルと略称される)によるYuen量子暗号と呼ばれる。
【0004】
このようなY-00プロトコルにおいて、暗号強度を高める方法としては、多値数を増加させ、信号パターンの解析を難解にし、解読に必要な暗号鍵の推測を困難にさせる方法が一般的である。
【0005】
この多値信号の生成には一般的にDAC(DigitalAnalogConvertor)が用いられる。また、その他の多値信号の生成する仕組みとして、特許文献1には、光送信装置において、光源発生部から出力される光源の信号レベルを可変にし、2以上の光信号レベルを有する光信号を生成し、光変調部で、光源からの光信号レベルが可変な信号を合成することにより、多段階の光信号レベルの光信号を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-116119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術において、多値信号の生成にDACを用いる光送信装置で、多値数を増加させるにはDACの変更、すなわち、光送信装置の再設計が必要となり、装置の開発労力と開発コストの面で問題がある。また、必要な多値数と伝送速度とを両立するDACが存在しない場合もあり、容易に多値数増加が実現できない可能性がある。
また、特許文献1に記載された光送信装置では、光送信装置において、光源制御部と光源変調部の設計変更が必要となる。
【0008】
いずれの従来技術においても、暗号強度を高める方法としては、多値信号の数を増加させる方法では、光送信装置のみならず、光信号を受信する光受信装置の更改も必要になるため、光送受信システムとしては、大幅な変更が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、多値信号の数を増加させることなく、かつ光送信装置の簡易なハードウェアの変更により、暗号強度を向上させることにある。
また、光送受信において、暗号強度を担保したまま、伝送距離を延ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光送信装置は、好ましくは、多値強度変調による光通信量子暗号を用いて、データを光信号に変調して送信する光送信装置であって、光信号に対して、量子雑音を付加し、光Powerを調整する雑音Power調整回路を有し、雑音Power調整回路は、光信号を減衰させる減衰器と、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光により量子雑音を付加する第一の光増幅器と、減衰器と第一の光増幅器に接続されて、光信号を増幅させる第二の光増幅器とからなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多値信号の数を増加させることなく、かつ、光送信装置の簡易なハードウェアの変更により暗号強度を向上させることが可能となる。また、光送受信において、暗号強度を担保したまま、伝送距離を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一般的な光通信における量子雑音の様子と信号の関係を示す図である。
図2】Y-00プロトコルにおける量子雑音の様子と信号の関係を示す図である。
図3】量子雑音量の増加する際の量子雑音の様子と信号の関係を示す図である。
図4】量子雑音量の増加する際の量子雑音が重なる様子と信号の関係を示す図である。
図5】実施形態1に係る光送信装置の構成を示すブロック図である。
図6】実施形態1に係る光送信装置の構成を装置レベルまでブレークダウンした図である。
図7】シミュレーション設定値を示す図である。
図8】光Amp2の正規受信者(Legitimate User)のPowerPenaltyのグラフを表す図である。
図9】光Amp2の盗聴者(Eavesdropper)のPowerPenaltyのグラフを表す図である。
図10】光送信装置と光受信装置の計算条件を示した図である。
図11】多値数ごとに、盗聴者の受信感度が、従来技術を使用した際の正規受信者の受信感度と等しくなるために必要な消光比を示した図である。
図12】実施形態1の光送信装置を使用した際の正規受信者の受信感度の計算結果を示した図である。
図13】実施形態2に係る光送信装置の構成を示すブロック図である。
図14】実施形態3に係る光送信装置の構成を示すブロック図である。
図15】一般的なY-00プロトコルによる光通信システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図15を用いて説明する。
【0014】
〔光通信システムの構成〕
先ず、図15を用いて一般的なY-00プロトコルによる光通信システムの構成について説明する。
Y-00プロトコルによる光通信システムでは、電気信号を光信号に変換し、光送信装置100と光受信装置200の間の光ファイバーなどの伝送路を暗号化して送信するシステムである。なお、図15には示されていないが、実際のシステムには、電気信号として送信データを光送信装置100に入力するデータ送信装置と、光受信装置200が出力される送信データを入力するデータ受信装置が接続される。
【0015】
光送信装置100は、図15に示されるように、Running鍵生成部104、多値信号生成部106、光源発生部108、光変調部110からなる。
共有鍵102は、光送信装置100と光受信装置200(共有鍵202)の間で共有される暗号鍵であり、多値信号の遷移パターンを決めるための元になるデジタルデータである。
【0016】
Running鍵生成部104は、共有鍵102を元データとして、擬似乱数(ランダムパターン)の性質を有するRunning鍵を生成する。これは、暗号強度を強化するために生成されるワンタイム鍵である。
多値信号生成部106は、送信データ(デジタルデータ)をRunning鍵に従って多値信号に変換する。
【0017】
一方、光源発生部108は、例えば、フォトダイオードなどから構成され、一定レベルの強度を有する光を発生する。そして、光変調部110により、光源の出力光を多値信号に従って変調し、光多値信号を生成する。光多値信号は、例えば、強度変調の場合は、光の強度の違いより表現される。
この暗号化された光多値信号は、伝送路を介して、光受信装置200に送られる。
【0018】
次に、光受信装置200は、図15に示されるように、Running鍵生成部204、閾値生成部206、O/E(Optical/Electrical)変換部208、識別器210からなる。
【0019】
光受信装置200では、伝送路を介して、送られてきた光多値信号をO/E変換部208により、電気多値信号に変換する。
ここで、詳細は省くが、光送信装置100と光受信装置200の間の同期プロセスにより、共通のRunning鍵が使われて、閾値生成部206より、識別器210に入力される閾値が生成される。
【0020】
識別器210では、入力されてきた閾値を用いて、O/E変換部から出力される電気多値信号を識別して、送信データを復元する。
【0021】
〔量子雑音の原理〕
次に、図1ないし図4を用いてY-00プロトコルにおける暗号化と量子雑音の原理の関係について説明する。
一般的な光通信においては、図1に示されるように、強度の異なる信号0、信号1を、その間に設けた閾値thにより判定する。一般に、信号0と信号1とは雑音を含めた状態においても十分に光レベルが離れており、一定の閾値信号を用いることにより、両信号を正確に判別可能となる。ここで、図1のグラフにおいては、信号0、信号1を中心とした雑音の強度を横軸に取っている。
【0022】
一方、Y-00プロトコルおける各信号と量子雑音の影響を示すと図2のようになる。Y-00プロトコルにおいては、一般的な光通信とは異なり多値変調をおこなっているため、2値以上の信号レベルを有する(図2においては、5値であり、信号0~信号4を伝送する)。このとき各信号間の光レベル差を狭くしていくと、雑音同士が重なりあい(図2の信号0~信号4によるolp0~olp3の重なり部分)、閾値が分からない盗聴者にとっては、いずれのレベルの信号であるか判別できなくなる。この重なり量がY-00プロトコルおける暗号強度を担保している。
【0023】
重なり量を増加させるには信号間のレベル差をさらに小さくするか(これが多値数を増加させるという発想)、図3に示される様に量子雑音量を増加させることにより実現可能となる(雑音強度g1→雑音強度g2)。
【0024】
本発明では、後者の量子雑音量を増加させる方法を選択して、図4に示したように、量子雑音量を増やした事で信号同士の重なり量を増やし(図4の信号0~信号4によるolp0~olp3の重なり部分)、雑音増加前よりもさらに信号の判別を困難にするものである。
量子雑音の増加する具体的な手段については、次に詳述する。
【0025】
〔光送信装置の構成(実施形態1)〕
次に、図5及び図6を用いて実施形態1に係る光送信装置の構成について説明する。
本実施形態の光送信装置では、量子雑音の増加を光増幅器(以下、「光Amp(Amplifier)」という)を用いることにより、実現させる。
【0026】
光Ampは、入力光が無い状態で使用するとASE(Amplified Spontaneous Emission)光を出力する。ASE光とは、希土類元素などが励起光を吸収して発光される励起光と別の波長の光(自然放出光)である。このASE光は高帯域なスペクトルをもつ光ASEの主な雑音要因として知られており、光電気変換時に量子雑音が発生する。本実施形態の光送信装置は、このASE光を従来の多値光信号に付加することによって、暗号強度を高めるようとするものである。
【0027】
本実施形態の光送信装置300は、図5に示されるように、Running鍵生成回路(図15のRunning鍵生成部104にあたる回路、図示は、省略)、多値信号生成回路301、CW(Continuous Wave:連続波)光源303、LN(Lithium Niobate:線形)変調器304、雑音Power調整回路400からなる。
【0028】
多値信号生成回路301は、図15の多値信号生成部106にあたる回路であり、Running鍵を入力して、そのRunning鍵に従う多値信号を生成する回路である。多値信号生成回路301は、DAC302を内包している。DAC302は、N本の伝送信号をデジタルアナログ変換し、2-1bitの電気多値信号を生成する。
CW光源303は、図15の光源発生部108に該当する回路であり、伝送光を生成する。
LN変調器304は、CW光源303からの伝送光を電気多値信号に従い、光多値信号に変調する。
【0029】
雑音Power調整回路400は、暗号強度を向上させるための本発明の特徴部分を成す回路であり、光信号の量子雑音を増加させ、かつ、その光Powerを調整する機能を有する。
雑音Power調整回路400は、ATT(ATtenuaTor:減衰器)401、光Amp1(402)、光Amp2(403)からなる。
【0030】
光Amp1(402)は、量子雑音を増加させるためのASE光を発生させる装置である。
ATT401は、LN変調器304で生成した光多値信号を減衰させる回路である。
これは、光Amp1(402)にて生成したASE光に対して、光多値信号の光Powerが大きすぎる場合、ASE光で付加する量子雑音が光多値信号に埋もれて、意味をなさない場合がある。このためASE光による雑音を無視できない光Powerまで光多値信号を減衰させる必要があるためである。
【0031】
光Amp2(403)は、ATT401において、減衰させた光多値信号を増幅させ、伝送距離を確保するための回路である。
【0032】
図5に示した光送信装置300を、より回路レベルにブレークダウンすると、図6に示されるようになる。
図5のATT401が、図6のVOA(Variable Optical Attenuator:可変光減衰器)501に、図5のAmp1(402)が、図6のSOA(Silicon Optical Amplifier:半導体光アンプ)502に、図5の光Amp2(403)が、図6のSOA503に該当する。また、図5のATT401、Amp1(402)と、光Amp2(403)の伝送路に、光導波(又は、OMUX(Optical MUltipleXer:光多重装置))510が介在する。
【0033】
この装置構成においては、LN変調器304からの出力光に対して、VOA501を用いて光Powerを減衰させ、SOA502を用いて発生させたASEノイズを付加する。このとき、両信号を付加するには光導波(又は、OMUX)510を用いる。最後に、通常の伝送光Powerまで増幅する用途として、別途SOA503を用いる。
【0034】
また、VOA501、SOA502、光導波(又は、OMUX)510、SOA503を、一つの導波デバイスとして、実装することも可能である。このときには、装置が小規模になる、低コストで実現できるというメリットがある。
【0035】
〔暗号強度の向上〕
次に、図7ないし図9を用いて実施形態1に係る光通信装置における暗号強度の向上の効果について説明する。
以下では、図7に示される設定で、光送信装置と光受信装置の設定をおこない、暗号強度の向上についてシミュレーションをおこなった。なお、図中EDFA(Erbium Doped optical Fiber Amplifier)とは、特に希土類元素Er:エルビウムをドープ(添加)した光ファイバを利用する増幅器である。またシミュレーションでは本発明の効果をわかりやすくするために多値数を4値に減らして行っている。
【0036】
ここで、従来技術で設計したY-00装置と本発明にて設計したY-00装置との受信感度差(Power Penalty)(dB単位)をシミュレーションした結果を比較して説明する。
図8は、Bit Error Rateが1E-12における正規受信者(Legitimate User)にとっての光Amp2の4dBのゲインのPowerPenaltyを示したものである。
ここで、横軸は光Amp1のゲイン(G1)、縦軸は従来技術との受信感度差を示している。このグラフによれば、光Amp1のゲイン(G1)を上げることにより、Power Penaltyが増加していることがわかる。ゲインを上げることは、ノイズが増えることにつながるため正規受信者の受信感度にも影響を及ぼす。
【0037】
次に、正規ではない受信者(盗聴者)にとってのPowerPenaltyについてシミュレーションした結果について説明する。
図9は、Bit Error Rateが1E-12における盗聴者(Eavesdropper)にとっての光Amp2の4dBのゲインのPower Penaltyを示したものである。
図9によれば、例えばG1=4dBとした場合、正規受信者はPower Penaltyが1dB以下であるのに対して、盗聴者は約3dBの受信感度差が生まれている。G1をさらに増加させ6dBに設定すると、正規受信者は約1dBであるのに対して盗聴者のPower Penaltyは、発散し10dB以上の受信感度差が生まれる。このように本実施形態により付加された光Amp1及び光Amp2の効果により、多値数を変更することなく、また、正規受信者の受信感度を大きく劣化させること無く、暗号強度を高めることができる。
【0038】
〔伝送距離の向上〕
本実施形態の光送信装置によれば、伝送距離の向上を見込むことができる。
以下、図10ないし図12を用いて伝送距離の向上の効果について説明する。
伝送距離の比較対象は、従来技術により設計したY-00装置となる。以下では、従来技術のY-00装置と同程度の安全性を保持した状態で、本発明のY-00装置を使用した際、伝送距離がどの程度伸びるか計算した結果について説明する。
【0039】
計算手順は以下の通りである。
(1)本発明を使用した際の盗聴者の受信感度が、従来技術を使用した際の正規受信者と等しくなる消光比を計算
(2)(1)の消光比設定で、本発明を使用した際の正規受信者の受信感度を計算
(3)(2)の最小受信感度と従来技術を使用した際の正規受信者の受信感度の差分(PowerPenalty)を計算
(4)(3)のPowerPenaltyから伝送距離を計算
計算条件は、図10に示されるようになる。
【0040】
ここで、従来技術のY-00装置を使用した際の正規受信者と盗聴者の受信感度は、以下のようになる。
正規受信者:BER=ErrorFree(1E-12) @Pin=-13.4dBm(=最小受信感度)
盗聴者 :BER=0.954 @Pin=0dBm
【0041】
次に、本発明のY-00装置を使用した際の盗聴者の受信感度が、従来技術のY-00装置を使用した際の正規受信者の受信感度(-13.4@1E-12)と等しくなるために必要な消光比を求める。このときの多値数ごとの消光比は、図11に示されるようになる。図11によれば、多値数が増加するにつれて、暗号強度が増し、必要な消光比が増加していることがわかる。
【0042】
次に、図11のように、多値数及び消光比に設定して、本発明のY-00装置を使用した際の正規受信者の受信感度の計算結果を、図12を用いて説明する。
図12によれば、消光比が増加するにつれて、正規受信者の受信感度(Prmin)が向上しているのがわかる。
【0043】
このとき、従来技術のY-00装置を使用した正規受信者の受信感度(-13.4dB)との差分(PowerPenalty)も大きくなり、同様の受信感度を得るために必要な入力光Powerに余裕が生まれることとなり、その結果、伝送距離が長くなることにつながる。
【0044】
〔光送信装置の構成(実施形態2)〕
次に、図13を用いて実施形態2に係る光送信装置の構成について説明する。
実施形態2の光送信装置300では、実施形態1の光Amp1(402)にあたる部分を、光Ampを複数設けて、図13に示されるように、光Amp11(4021)、光Amp12(4022)、光Amp13(4023)として、ATT401と光Amp2(403)をつなぐ伝送路に対して並列に接続する。
【0045】
このようにする利点は、光Ampのゲインの調整が容易になり、自由度が増すこと、また、付加する量子雑音を増やせることにある。
【0046】
〔光送信装置の構成(実施形態3)〕
次に、図14を用いて実施形態3に係る光送信装置の構成について説明する。
実施形態3の光送信装置300では、実施形態1の光Amp1(402)にあたる部分を、光Ampを複数設けて、図14に示されるように、光Amp11(4021)、光Amp12(4022)、光Amp13(4023)として、ATT401と光Amp2(403)をつなぐ伝送路に対して直列に接続する。
【0047】
このようにする利点は、実施形態2の場合と同様に、光Ampのゲインの調整が容易になり、自由度が増すこと、また、付加する量子雑音を増やせることにある。
【符号の説明】
【0048】
100,300…光送信装置、200…光受信装置、102…共有鍵(送信装置側)、202…共有鍵(受信装置側)、104…Running鍵生成部(送信装置側)、204…Running鍵生成部(受信装置側)、106…多値信号生成部、108…光源発生部、110…光変調部、206…閾値生成部、208…O/E(Optical/Electrical)変換部、210…識別器、
301…多値信号生成回路、302…DAC(Digital Analog Convertor)、303…CW(Continuous Wave:連続波)光源、304…LN(Lithium Niobate:線形)変調器、400…雑音Power調整回路、401…ATT(ATtenuaTor:減衰器)、402…光Amp1、403…光Amp2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15