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  • 特許-医療用画像表示方法及びプログラム 図1
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  • 特許-医療用画像表示方法及びプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】医療用画像表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/01 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61M16/01 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018209775
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020074907
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 亮太
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0352693(US,A1)
【文献】特表2016-506269(JP,A)
【文献】国際公開第2018/157172(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168177(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0095634(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00-16/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、麻酔器により得られた患者の吸気データ及び呼気データの時間的推移を表すグラフを形成するステップと、
コンピュータが、前記グラフに対して、前記麻酔器が手動ガス制御モード期間である時間領域と、自動ガス制御モード期間である時間領域とを識別可能な識別画像を付加して表示部に表示するステップと、
を含む医療用画像表示方法。
【請求項2】
前記識別画像は、前記手動ガス制御モード期間と前記自動ガス制御モード期間とで異なる背景画像である、
請求項1に記載の医療用画像表示方法。
【請求項3】
前記識別画像は、目標吸気酸素濃度及び又は目標呼気麻酔薬濃度のグラフである、
請求項1に記載の医療用画像表示方法。
【請求項4】
前記グラフは、少なくとも、
前記自動ガス制御モード期間における、実測吸気酸素濃度グラフ、目標吸気酸素濃度グラフ、及び、前記実測吸気酸素濃度グラフの前記目標吸気酸素濃度グラフからの差分許容範囲を示す第1の差分許容グラフと、
前記自動ガス制御モード期間における、実測呼気麻酔薬濃度グラフ、目標呼気麻酔薬濃度グラフ、及び、前記実測呼気麻酔薬濃度グラフの前記目標呼気麻酔薬濃度グラフからの差分許容範囲を示す第2の差分許容グラフと、
を含む、請求項1又は2に記載の医療用画像表示方法。
【請求項5】
前記第1の差分許容グラフ及び又は前記第2の差分許容グラフが示す許容範囲は、前記自動ガス制御モード期間の開始直後とそれ以降で異なる、
請求項4に記載の医療用画像表示方法。
【請求項6】
前記実測吸気酸素濃度グラフ及び又は前記実測呼気麻酔薬濃度グラフが、前記第1の差分許容グラフ及び又は前記第2の差分許容グラフの範囲外になったときに、このことを示す画像を表示する、
請求項4又は5に記載の医療用画像表示方法。
【請求項7】
コンピュータに、
麻酔器により得られた患者の吸気データ及び呼気データの時間的推移を表すグラフを形成する処理と、
前記グラフに対して、前記麻酔器が手動ガス制御モード期間である時間領域と、自動ガス制御モード期間である時間領域とを識別可能な識別画像を付加して表示部に表示する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻酔器のデータに基づく医療用画像を形成して表示する医療用画像表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に手術には麻酔器が用いられる。麻酔器は、配管又はボンベから供給される酸素、亜酸化窒素、空気と、気化器で気化したセボフルラン、デスフルラン等の揮発性吸入麻酔薬を混合し、流量を調節して麻酔ガスとして呼吸回路に供給する。麻酔器は、麻酔ガスを呼吸回路を介して吸気として患者へ送り込む。麻酔器は、患者の呼気を二酸化炭素吸収装置(キャニスター)を通して再び吸気へ循環させ、余剰のガスを半閉鎖弁(APL弁)を介して排出する。このような麻酔器は、例えば特許文献1で開示されている。
【0003】
一方で、麻酔器では、患者の呼吸状態や麻酔深度をモニタリングし、ディスプレイに表示する。例えば、呼気中の二酸化炭素分圧、揮発性吸入麻酔薬濃度、吸気中の酸素濃度、換気量等が目標値(設定値)とともにディスプレイに表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-041247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、自動ガス制御(AGC(Automatic Gas Control))機能を有する麻酔器が実現されている。そのため、自動ガス制御モードと手動ガス制御(MGC(Manual Gas Control))モードの両方をもつ麻酔器も登場している。
【0006】
ここで、手動ガス制御モードでは、目的の酸素濃度になるように、人が手動にて酸素、空気の流量を調整する。一方、自動ガス制御モードでは、人が設定した酸素濃度になるように、麻酔器が自動で酸素、空気の流量等を調節する。
【0007】
医師や看護師等の医療従事者は、ディスプレイに表示される患者の呼気及び吸気データと設定値とを見比べながら、患者の状況に適した麻酔の管理を行う。
【0008】
ところで、手動ガス制御モードと自動ガス制御モードとでは、同じ種類のデータであってもモード間で異なる意味を持つようになる。例えば酸素濃度に関して言えば、手動ガス制御モードにおける酸素濃度は医療従事者が手動により流量を調節した結果の実測値であり、自動ガス制御モードにおける酸素濃度は麻酔器が自動で調整した結果の実測値である。よって、手動ガス制御モードにおいて酸素濃度が目標値からずれていればそれは医療従事者の流量調節に起因するのに対して、自動ガス制御モードにおいて酸素濃度が目標値からずれていればそれは麻酔器の故障等に起因するおそれがある。
【0009】
しかしながら、従来の麻酔チャートにおいては、例えば麻酔管理に問題があった場合、それが人為的なものに起因するのか、或いは、機械的なもの(麻酔器)に起因するのかを、医療従事者等のユーザーが把握することが困難である。
【0010】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、手動ガス制御モードと自動ガス制御モードの両方をもつ麻酔器が使用された場合において、ユーザーが的確な麻酔管理を行うことができるような医療用画像を表示し得る医療用画像表示方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の医療用画像表示方法の一つの態様は、
麻酔器により得られた患者の吸気データ及び呼気データの時間的推移を表すグラフを形成するステップと、
前記麻酔器が手動ガス制御モード期間であったのか或いは自動ガス制御モード期間であったのかを識別可能な識別画像を前記グラフに付加して表示するステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自分が見ているグラフが手動ガス制御による挙動を示すものなのか或いは自動ガス制御による挙動を示すものなのかを明確に認識できるようになるので、手動ガス制御モードと自動ガス制御モードの両方をもつ麻酔器が使用された場合において、的確な麻酔管理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る医療用画像表示方法が適用される病院情報システムの概要を示す図
図2】実施の形態の医療用画像の例を示す図
図3】他の実施の形態の医療用画像の例を示す図
図4】他の実施の形態の医療用画像の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る医療用画像表示方法が適用される病院情報システム(hospital information system; HIS)の概要を示す図である。図1の病院情報システムは、電子カルテシステムを上位システムとして、医事会計システム、放射線システム、中央検査システム、オーダリングシステム、物流管理システム及び急性期部門システム1がオンライン接続されている。
【0016】
急性期部門システム1はデータベースサーバー100を有する。データベースサーバー100は、データ交換器としてのゲートウェイサーバー101を介して上述の電子カルテシステムやオーダリングシステム等の病院情報システムに含まれる他のシステムと通信可能に接続されている。
【0017】
データベースサーバー100は、手術室や、集中治療室(ICU (Intensive Care Unit))、救命救急室(ER (emergency room))のデータを一元管理する。なお、以下では集中治療室及び救命救急室を、集中治療室又はICU-ERと略記する。
【0018】
手術室には、麻酔器200や生体情報モニター210が設けられており、これらが変換モジュール220を介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。ICU-ERには、図示しない人工呼吸器、大動脈バルーンポンプ及び生体情報モニター等が設けられており、これらが図示しない変換モジュールを介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。
【0019】
データベースサーバー100は、手術室やICU-ERに設けられた麻酔器200、生体情報モニター210、人工呼吸器(図示せず)、血液ガス分析装置(図示せず)等のデータをオンラインで収集して一元管理する。また、データベースサーバー100は、ゲートウェイサーバー101を介して電子カルテシステムやオーダリングシステム、中央検査システム等から患者属性や各種検査データ、薬剤オーダー、手術オーダー等のデータを取得可能となっている。さらには、急性期部門システム1からのデータを病院情報システムに含まれる他のシステムに送信することも可能となっている。
【0020】
データベースサーバー100は、術前の手術予約から、スケジューリング、術後の麻酔記録サマリまで、周術期を一元管理できる。
【0021】
また、データベースサーバー100には、手術室の端末103やICU-ERの端末104が接続されている。端末103、104はデータベースサーバー100からのデータを受け取って、麻酔チャートや後述する麻酔器状態遷移画像等の医療用画像を作成する機能を有する。具体的には、端末103、104は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)等を有し、CPUがROMに保持されたプログラムを実行することにより、麻酔チャート及び麻酔器状態遷移画像等の医療用画像を形成しこれを表示する。
【0022】
具体的には、端末103、104は、各種オンラインデータ、入室からのプロセスイベント、麻酔器情報、バイタル情報、薬剤情報、輸液情報等の情報をデータベースサーバー100から受け取り、この情報に基づいて麻酔チャート及び麻酔器状態遷移画像等の医療用画像を形成する。さらに、端末103、104は、麻酔チャートに麻酔開始/終了等の情報を登録可能となっている。
【0023】
そして、端末103、104は、麻酔チャート及び麻酔器状態遷移画像等の医療用画像を表示部に表示する。
【0024】
また、端末103、104によって形成された麻酔チャート及び麻酔器状態遷移画像等の医療用画像は、データベースサーバー100によって記録される。また、この麻酔チャート及び麻酔器状態遷移画像等の医療用画像は、Webサーバー102を介して院内又は外部の端末で参照することもできる。
【0025】
<実施の形態による医療用画像の表示>
次に、図2を用いて、本実施の形態により形成され表示される医療用画像について説明する。
【0026】
図2の医療用画像10は麻酔器200から出力されたデータに基づいて端末103によって形成され表示される。上述したように、麻酔器200の出力データはデータベースサーバー100を介して端末103で受け取ることができる。図2の医療用画像10は、例えば麻酔器状態遷移画像と呼ぶことができる。よって、以下では、医療用画像10を麻酔器状態遷移画像10と呼ぶこともある。
【0027】
因みに、端末103は、図2に示した麻酔器状態遷移画像10以外にも、生体情報モニター210により得られたバイタルグラフと麻酔器200により得られた麻酔情報とを含む麻酔チャート等も作成し表示することが可能となっている。どの画像を作成し表示するかは、端末103のユーザーである医療従事者が端末103を操作することで選択可能である。
【0028】
図2に示した麻酔器状態遷移画像10は、麻酔器200により得られた患者の吸気データ及び呼気データの時間的推移を表現したものである。麻酔器状態遷移画像10には、麻酔器200により測定された吸気酸素濃度(InspO2)と、麻酔器200により測定された呼気Sevo濃度等の呼気麻酔薬濃度(EtAA)とが含まれる。また、麻酔器状態遷移画像10には、予め麻酔器200に設定された目標吸気酸素濃度(目標InspO2)と、目標呼気麻酔薬濃度(目標EtAA)とが含まれる。
【0029】
本実施の形態で提示する医療用画像表示方法では、これに加えて、麻酔器200が手動ガス制御モード期間であったのか或いは自動ガス制御モード期間(AGC期間)であったのかに応じて、吸気データ及び呼気データの時間的推移を表した前記グラフの背景色を変更するようになっている。つまり、手動ガス制御モード期間の背景色と自動ガス制御モード期間(AGC期間)の背景色とを異なる色にする。なお、背景色を異なる色にするとは、一方の背景に色をつけ、他方の背景に色をつけない処理も含むものとする。
【0030】
図2の例では便宜上、自動ガス制御モード期間(AGC期間)の背景色に網掛け模様が付されている。この麻酔器状態遷移画像10により医療従事者は、9:05~10:10の期間は自動ガス制御モード期間(AGC期間)であり、それ以外の期間は手動ガス制御モード期間であったことを認識できる。
【0031】
これにより、本実施の形態の麻酔器状態遷移画像10によれば、医療従事者は、自分が見ている期間の麻酔器200の挙動が手動ガス制御による挙動なのか或いは自動ガス制御による挙動なのかを明確に認識できる。その結果、例えば麻酔器の挙動に問題があった場合、医療従事者は、それが人為的なものに起因するのか(つまり手動ガス制御に起因するのか)、或いは、機械的なもの(麻酔器)に起因するのか(つまり麻酔器の自動ガス制御に起因するのか)を把握することができるようになる。
【0032】
<効果>
以上説明したように、本実施の形態によれば、麻酔器200により得られた患者の吸気データ(InspO2)及び呼気データ(EtAA)の時間的推移を表すグラフを形成するとともに、このグラフに手動ガス制御モード期間と自動ガス制御モード期間とで異なる色の背景画像を付加するようにしたことにより、医療従事者は、自分が見ているグラフが手動ガス制御による挙動を示すものなのか或いは自動ガス制御による挙動を示すものなのかを明確に認識できる。その結果、手動ガス制御モードと自動ガス制御モードの両方をもつ麻酔器が使用された場合において、的確な麻酔管理を行うことができるようになる。
【0033】
<他の実施の形態>
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0034】
(i)上述の実施の形態では、グラフの背景色を、手動ガス制御モード期間と自動ガス制御モード期間とで異なる色とすることにより、麻酔器が手動ガス制御モード期間であったのか或いは自動ガス制御モード期間であったのかを識別可能に表示した場合について述べたが、これに限らず、例えば図3に示すように、手動ガス制御モード(MGCモード)期間であったのか或いは自動ガス制御モード(AGCモード)期間であったのかを矢印や文字等によって識別可能に表示してもよい。
【0035】
また、図2及び図3から分かるように、上述の実施の形態の麻酔器状態遷移画像10においては、自動ガス制御モード(AGCモード)期間では目標吸気酸素濃度(目標InspO2)と目標呼気麻酔薬濃度(目標EtAA)とが表示され、手動ガス制御モード(MGCモード)期間ではこれらが表示されないので、医療従事者は目標吸気酸素濃度(目標InspO2)及び目標呼気麻酔薬濃度(目標EtAA)の有無によって、麻酔器状態遷移画像10のうちどの期間が自動ガス制御モード(AGCモード)期間であり、どの期間が手動ガス制御モード(MGCモード)期間であるのかを認識できる。つまり、表示される目標吸気酸素濃度(目標InspO2)のグラフ、及び、表示される目標呼気麻酔薬濃度(目標EtAA)のグラフは、麻酔器200が手動ガス制御モード期間であったのか或いは自動ガス制御モード期間であったのかを識別させるための識別画像であると言うこともできる。図2の例及び図3の例では、目標吸気酸素濃度(目標InspO2)のグラフ、及び、目標呼気麻酔薬濃度(目標EtAA)のグラフだけでは、モードを識別し難いので、背景色や矢印等によりモードをより判別し易くしている。
【0036】
(ii)図4に示すように、図2の表示に加えて、実測吸気酸素濃度グラフ(InspO2)の目標吸気酸素濃度グラフ(目標InspO2)からの差分許容範囲を示す第1の差分許容グラフ11と、実測呼気麻酔薬濃度グラフ(EtAA)の目標呼気麻酔薬濃度グラフ(目標EtAA)からの差分許容範囲を示す第2の差分許容グラフ12とを表示するようにしてもよい。第1の差分許容グラフ11及び第2の差分許容グラフ12は、それぞれ、下限値と上限値と有するものである。
【0037】
この第1及び第2の差分許容グラフ11、12は、医療従事者等のユーザーによって予め設定される。第1及び第2の差分許容グラフ11、12は、患者毎に設定されることが好ましい。
【0038】
医療従事者は、実測吸気酸素濃度グラフ(InspO2)が第1の差分許容グラフ11の下限値と上限値との間で示される許容範囲内に収まっていれば、自動ガス制御が正常に動作していると推測できる。同様に、医療従事者は、実測呼気麻酔薬濃度グラフ(EtAA)が第2の差分許容グラフ12の下限値と上限値との間で示される許容範囲内に収まっていれば、自動ガス制御が正常に動作していると推測できる。
【0039】
加えて、図4の例では、実測吸気酸素濃度グラフ(InspO2)及び又は実測呼気麻酔薬濃度グラフ(EtAA)が、第1の差分許容グラフ11及び又は第2の差分許容グラフ12の範囲外になったときに、このことを示す画像(図の例では「!」)を表示する。これにより、医療従事者は、自動ガス制御に異常が生じていることを確実かつ迅速に認識できるようになる。
【0040】
ここで、第1の差分許容グラフ11及び第2の差分許容グラフ12が示す許容範囲は、自動ガス制御モード期間の開始直後とそれ以降で異なるようにすることが好ましい。具体的には、図4からも分かるように、自動ガス制御モード期間の開始直後では許容範囲を大きくし、それ以降では許容範囲を狭めるとよい。このようにすることで、自動ガス制御による効果が十分に現れない自動ガス制御モード開始直後では許容の程度を緩くし、自動ガス制御による効果が十分に現れるはずである所定時間以降は許容の程度を厳しくすることができ、理にかなった比較を実現できるようになる。
【0041】
(iii)図2のグラフに呼気酸素濃度のグラフを追加してもよい。このようにすれば、患者の吸気酸素濃度と呼気酸素濃度との差から患者の代謝状況を推測できるようになる。また、図2のグラフに呼気二酸化炭素濃度のグラフを追加してもよい。このようにすれば、患者の換気能力の状況を推測できるようになる。
【0042】
(iv)上述の実施の形態では、本発明による医療用画像(麻酔器状態遷移画像)10の作成及び表示処理を、端末103、104によって行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば医療用画像(麻酔器状態遷移画像)10の作成処理をデータベースサーバー100によって行い、作成された医療用画像(麻酔器状態遷移画像)10の表示処理を端末103、104で行うようにしてもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、グラフ表示する吸気データが実測吸気酸素濃度グラフ(InspO2)であり、グラフ表示する呼気データが実測呼気麻酔薬濃度グラフ(EtAA)である場合について述べたが、グラフ表示する吸気データ及び呼気データはこれに限らず、要は、麻酔器200によって制御される吸気データ及び呼気データであれば他のデータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、麻酔器のデータに基づく医療用画像を形成して表示する医療用画像表示方法及びプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 急性期部門システム
10 医療用画像(麻酔器状態遷移画像)
11 第1の差分許容グラフ
12 第2の差分許容グラフ
100 データベースサーバー
101 ゲートウェイサーバー
102 Webサーバー
103、104 端末
200 麻酔器
210 生体情報モニター
220 変換モジュール
図1
図2
図3
図4