(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】非加熱ソフトキャンディ及び非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20230406BHJP
A23G 3/44 20060101ALI20230406BHJP
A23G 3/50 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23G3/44
A23G3/50
(21)【出願番号】P 2018246506
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月12日に一覧表に記載の店舗にて販売 特30条記事欠損あり
(73)【特許権者】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】石田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和広
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-095530(JP,A)
【文献】特開昭64-079110(JP,A)
【文献】特開2013-074874(JP,A)
【文献】特開2015-100291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディであって、HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂が、該非加熱ソフトキャンディ全体重量中0.3重量%以上となるように該非加熱ソフトキャンディの表面に施与されていることを特徴とする非加熱ソフトキャンディ。
【請求項2】
前記HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂が、非加熱ソフトキャンディ全体重量中4.0重量%以下となるように該非加熱ソフトキャンディの表面に施与されている請求項1記載の非加熱ソフトキャンディ。
【請求項3】
ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片に表面施与する被覆剤であって、HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂を有効成分とし、該有効成分を非加熱ソフトキャンディ全体重量中0.3重量%以上表面施与することを特徴とする非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤。
【請求項4】
前記有効成分を非加熱ソフトキャンディ全体重量中4.0重量%以下表面施与する請求項3記載の非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着抑制効果があり、かつぬるぬる感のない非加熱ソフトキャンディ及び非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤に関し、さらに詳しくは、中性域のソフトキャンディであっても、経日による包装材やソフトキャンディ同士の付着抑制効果があり、かつ油様のぬるぬる感を生じないため、ソフトキャンディを個包装しない場合や手でつまんで連食する場合に適した非加熱ソフトキャンディ及び非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチン等のゲル化剤を含有するソフトキャンディは、ソフトキャンディ独特の歯ごたえやチューイング性といった食感とともに粘性を有することから、包装材に対してやソフトキャンディ同士が付着するという欠点を抱えている。
【0003】
この欠点を解決する方法として例えば、ソフトキャンディを非加熱下で製造することが挙げられる。すなわち、製造の全工程を100℃未満で行うことであり、この製法で得られる非加熱ソフトキャンディの内部は、原料投入時の結晶状態を維持する非溶解の糖質甘味料が分散した状態となっている。そのため糖質甘味料を煮詰めて製造する加熱ソフトキャンディに比べ、糖質甘味料由来の付着に対する抑制効果を示す。
【0004】
また、他の解決法として例えば、食用液体油脂100重量部にショ糖脂肪酸エステルを0.1~30重量部添加した製菓用離型油が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この製菓用離型油は、食用液体油脂のみでオイリングするのでは満足な離型効果が得られないことから改良された離型油であり、ショ糖脂肪酸エステルを食用油脂に添加し、加熱混合して溶解した液状物をソフトキャンディ表面に塗布するものである。しかしながら、この液状物を塗布したソフトキャンディは、離型効果は得られるものの、ソフトキャンディ表面は油様のぬるぬる感を有していた。すなわち、ソフトキャンディ表面が乳化剤の溶融する液体油脂によってぬめっており、その結果、手が汚れる、不快な舌触りがある、ソフトキャンディが接触した包装材にぬるぬる感が移る等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、付着抑制効果があり、かつぬるぬる感のない非加熱ソフトキャンディ及び非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤に関する。さらに詳しくは、中性域のソフトキャンディであっても、経日による包装材やソフトキャンディ同士の付着抑制効果があり、かつ油様のぬるぬる感を生じないため、ソフトキャンディを個包装しない場合や手でつまんで連食する場合に適した非加熱ソフトキャンディ及び非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディであって、HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂が、該非加熱ソフトキャンディ全体重量中0.3重
量%以上となるように該非加熱ソフトキャンディの表面に施与されていることを特徴とする非加熱ソフトキャンディにより上記目的を達成する。
【0008】
好ましくは、前記HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂が、非加熱ソフトキャンディ全体重量中4.0重量%以下となるように該非加熱ソフトキャンディの表面に施与されている。
【0009】
また、ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片に表面施与する被覆剤であって、HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂を有効成分とし、該有効成分を非加熱ソフトキャンディ全体重量中0.3重量%以上表面施与することを特徴とする非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤により上記目的を達成する。
【0010】
好ましくは、前記有効成分を、非加熱ソフトキャンディ全体重量中4.0重量%以下表面施与する。
【0011】
すなわち、本発明者らは、中性域のソフトキャンディであっても、ソフトキャンディ独特のチューイング性や歯ごたえのある食感を有するソフトキャンディについて検討を行った。
【0012】
まず、pH6~8の中性域のソフトキャンディとして、酸味料を含有しない非加熱ソフトキャンディを調製したところ、チューイング性が低下した。さらに経日により、該非加熱ソフトキャンディに離水が発生し、包装材に対してやソフトキャンディ同士に付着を生じた。
【0013】
これを考察するに、一般的に酸性域のソフトキャンディは非加熱ソフトキャンディにすることで糖質甘味料由来の付着を抑制できる。しかし、pH6~8の中性域に設計変更するとゼラチンによるネットワーク力が低下し、併せて保水力も低下することから、経日とともに離水が発生し、付着を生じるものと考えられる。そこでネットワーク力強化のためにゼラチン含有量を増やすと、チューイング性は改善するものの経日による離水は完全には防止できないことが判明した。
【0014】
そこで、この中性域の非加熱ソフトキャンディにおいて、経日による離水防止に関し更に鋭意検討したところ、非加熱ソフトキャンディの表面に特定の粉末成分を表面施与すると、離水による付着を強力に抑制でき、かつ油様のぬるぬる感を生じなくなることを見出し本発明に到達した。すなわち、通常であれば、ソフトキャンディ表面に苦味のある乳化剤などを施与することは敬遠するところ、あえて特定の粉末状乳化剤又は粉末状油脂をソフトキャンディ表面に施与することで、離水による付着を強力に抑制でき、かつ油様のぬるぬる感が生じなくなることを見出し本発明に到達した。
【0015】
この付着抑制及びぬるぬる感抑制できる要因は、表面施与した乳化剤や油脂のような特定の粉末成分が、離水による水分の表出を阻害する、又は離水した表出水分に溶解せず疎水性が作用することが推察される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非加熱ソフトキャンディは、経日による、包装材と非加熱ソフトキャンディ間や非加熱ソフトキャンディ同士の付着に対する抑制効果があり、かつ油様のぬるぬる感を生じない。その結果、該非加熱ソフトキャンディは、個包装しない場合や手でつまんで連食する場合に特に適している。
【0017】
本発明の非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤は、表面施与することで、pH6~8の
非加熱ソフトキャンディの経日による包装材と非加熱ソフトキャンディ間や非加熱キャンディ同士の付着抑制に有効である。また、油様のぬるぬる感を生じない。したがって、個包装しない、或いは手でつまんで連食する中性域の非加熱ソフトキャンディ用の被覆剤として特に適している。
【0018】
なお、本発明おいて「付着に対する抑制効果がある」、「付着抑制に有効である」、「付着抑制効果がある」とは、包装材と非加熱ソフトキャンディ間や、非加熱キャンディ同士間がくっついていない状態、或いはくっついていても、触った途端、手に持った途端、又は力を込めずに引っ張るなどして容易に離れ得る状態を意味する。また、「油様のぬるぬる感」とは、油のようなぬめりやぬるぬるとした状態を意味し、水のように水溶性のさらっとしてべたついた状態とは異なることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を詳しく説明する。
本発明は、ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディであって、該非加熱ソフトキャンディは、HLB4以下の粉末状乳化剤又は粉末状油脂が表面施与されている。ここで、pH6~8の非加熱ソフトキャンディとは、製造の全工程を100℃未満で行い、かつpH6~8の中性域に調製されたソフトキャンディを意味する。
【0020】
上記粉末状乳化剤は、経日による離水に対する付着抑制の点で重要である。粉末状乳化剤とは、粉末状の乳化剤のことであり、粉末状とは、微粉状、粉状、細粒状、顆粒状等の粉体を指す。乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、これらより選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルが、より良好な付着抑制効果が得られる点で好適である。なお、液状の乳化剤では、表面がぬめり、油様のぬるぬる感を生じ、その結果、手が汚れる、不快な舌触りがある、非加熱ソフトキャンディが接触した包装材に油様のぬるぬる感が移る等するために、本発明には適さない。
【0021】
また、上記乳化剤はHLB4以下であることが、離水に溶解することなく経日による付着抑制の点で重要である。更に苦味の基となるモノエステル構造が少ない点で重要である。好ましくは、HLB1とすることが、より良好な経日による付着抑制効果が得られる点で好適である。
【0022】
次に、上記粉末状油脂は、経日による離水に対する付着抑制の点で重要である。粉末状油脂とは、粉末状の油脂のことであり、例えば、菜種油、とうもろこし油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、ごま油、カカオ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物油、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物脂、及びこれらの油脂の硬化油又はエステル交換油、或いはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等の食用油脂を用いて調製された粉末油脂が挙げられ、これらより選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。なお、粉末状とは、微粉状、粉状、細粒状、顆粒状等の粉体を指す。
【0023】
これらの中でも、好ましくは融点55℃以上の粉末油脂が、非加熱ソフトキャンディ表面になじみ難く、経日による付着抑制効果の点で望ましい。なお、液体油では、表面がぬめり、油様のぬるぬる感を生じ、その結果、手が汚れる、不快な舌触りがある、非加熱ソフトキャンディが接触した包装材に油様のぬるぬる感が移る等するために、本発明には適さない。
【0024】
上記粉末状乳化剤、上記粉末状油脂は、何れの場合も固形分換算で、非加熱ソフトキャンディ全体重量中0.3重量%以上表面施与されることが付着抑制効果の点で重要である
。0.3重量%より少ない場合、付着抑制効果は得られない。
【0025】
更に好ましくは、粉末状乳化剤、粉末状油脂の何れの場合も、固形分換算で非加熱ソフトキャンディ全体重量中5.0重量%以下表面施与されることが付着抑制効果の点で好適である。より好ましくは4.0重量%以下表面施与されることが付着抑制効果に加え、粉っぽさがない点で望ましい。4.0重量%を超えると、喫食時に口中で飛散したり、手指につく傾向がある。
【0026】
また、上記粉末状乳化剤又は上記粉末状油脂は有効成分として含有する粉末成分であればよい。すなわち、それぞれを100重量%の粉末成分とする以外に、付着抑制に影響のない範囲で副原料を含有する粉末成分としてもよい。副原料としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、還元パラチノース、マルチトール、香料等が挙げられる。副原料を含有する場合には、事前に有効成分と副原料とを粉体混合して該粉末成分を調製すればよい。なお、上述の表面施与量は、有効成分量を意味する。
【0027】
さらに、本発明の非加熱ソフトキャンディとは、表面に上記粉末成分が施与された状態を意味する。また、本発明では、原料混練後であり、かつ成形前を「非加熱ソフトキャンディ生地」、成形後であり、かつ粉末成分表面施与前の非加熱ソフトキャンディを「非加熱ソフトキャンディ生地片」と定義する。また、本発明の非加熱ソフトキャンディ用表面被覆剤とは、上述の粉末成分を意味する。
【0028】
次に、上記粉末成分の表面施与方法は、例えば、pH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片と粉末成分とを共に、密封容器内に入れ攪拌する、レボリングパン等の表面被覆装置に投入し回転する、あるいは一定の領域内で移動する非加熱ソフトキャンディ生地片に粉末成分を吹き付ける等が挙げられる。また、上記粉末成分の表面施与状態は、非加熱ソフトキャンディ生地片の表面全体が満遍なく被覆された状態であることが、付着抑制効果の点で好適である。
【0029】
また、表面施与された粉末成分中の有効成分の判別は、本発明の非加熱ソフトキャンディの表面を刷毛等で強制的に払い落として得られた粉末成分を赤外分光光度計分析などで測定することができる。
【0030】
次いで、本発明の非加熱ソフトキャンディは、以下のように、ゼラチンを含有するpH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片を調製した後に、上記粉末成分を表面施与して調製される。
【0031】
まず、本発明に係るpH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片の調製方法は、公知の非加熱ソフトキャンディ調製方法において、酸味料を添加しない又は0.2重量%以下の添加に留める、あるいはpH調整剤(酸剤、アルカリ剤)を使用する等が挙げられる。
【0032】
例えば、まず非加熱ソフトキャンディ生地片の原料を準備する。原料としては、ゼラチン及び一般的にソフトキャンディに用いられる原料が挙げられ、適宜選択して使用すればよい。
【0033】
ゼラチンは、由来、原料処理方法は特に問わず、牛、豚、鳥、魚等から得られたもの、酸処理、アルカリ処理されたもの等いずれを用いてもよい。好ましくは、豚皮の酸処理ゼラチンが、pH6~8の非加熱ソフトキャンディの食感を良好にする点、安価に入手しやすい点で、望ましい。
【0034】
ゼラチン含有量は、固形分換算でpH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片全体重量
中、好ましくは2.0~11.0重量%であることが付着抑制効果の点で、更に好ましくは2.75~11.0重量%であることが付着抑制効果に加え、中性域であっても食感(適度なチューイング性と弾力)の点で好適である。すなわち、2.75重量%より少ないとチューイング性に対しやや物足りなく感じる傾向があり、11.0重量%より多いと、弾力が強く硬すぎる傾向がある。
【0035】
また、一般的にソフトキャンディに用いられる原料としては、例えば、糖質甘味料、油脂類、酸味料、高甘味度甘味料、乳化剤、安定剤、pH調整剤、着色料、香料、乾燥果実、種実類、各種風味原料(乳製品、茶類、コーヒー、ココア、ハーブ類、蜂蜜、果汁、調味料、エキス類など)、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、美肌成分(コラーゲン、ヒアルロン酸など)、グリセリン、増粘多糖類、でん粉などが挙げられる。なお、酸味料は、pH6~8になるよう、非加熱ソフトキャンディ生地片全体重量中0~0.2%に調整することが好ましい。他にもpHに影響する副原料(例えば、果汁など)は、pH6~8となるように含有量を調整する。
【0036】
次に、適宜選択した上記原料をニーダー等の混練機に投入後、混練してソフトキャンディ生地を調製する。なお、上記原料のうち、ゼラチンは予め溶解したものを投入する。
【0037】
次に、このソフトキャンディ生地を公知の成形方法を用いて目的の形状に成形し、pH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片を得る。成形方法は、例えば、エクストルーダーを用いてソフトキャンディ生地を押出した直後、又はロープ状に押出した後にカッティングする、球断機による球断成形する、エクストルーダーを用いてソフトキャンディ生地を押出した後シート状に圧延しカッティングする、更にスタンピングする等が挙げられる。なお、上記調製工程は全て100℃未満で実施する。
【0038】
次に、上記成形した非加熱ソフトキャンディ生地片に上記粉末成分を表面施与することで、本発明の非加熱ソフトキャンディとすることができる。表面施与量、施与方法は上述の通りである。
【0039】
このようにして調製された非加熱ソフトキャンディは、pH6~8の中性域に設定されているにもかかわらず、経日による離水の発生を抑制し、付着抑制され、かつ油様のぬるぬる感を生じない。その結果、該非加熱ソフトキャンディは、個包装しない場合や手でつまんで連食する場合に特に適している。更に、酸味料によって生じる酸味や、酸性付与成分(例えば、グルコン酸等のような実質的に酸味を感じさせない酸味料など)によって生じる雑味がなく、酸味以外の、ミルク、プリン、カスタード、ホイップクリーム、チーズ、チョコ、きな粉、あんこ、抹茶、ほうじ茶、さつまいもなどの様々な風味を、良質な風味で設計でき、風味バリエーションの幅が広がる点でも優れている。
【0040】
なお、本発明において、非加熱ソフトキャンディのpH測定方法は以下の通りである。すなわち、非加熱ソフトキャンディ生地片の場合はそのまま1gを、又は、非加熱ソフトキャンディの場合は刷毛等で表面の粉末成分を強制的に払い落とした後の非加熱ソフトキャンディ1gに対し、水44gを加えた後5~20分程度攪拌して溶解し、該水溶液をpHメーター(例えば、HORIBA製、卓上型pH・水質分析計F-74BW等)で、水温25±3℃のpHを測定する。
【0041】
また、本発明の非加熱ソフトキャンディを製品化する場合は、適宜包装体で包装すればよい。好ましくは、包装体の材質がアルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着の防湿性で密封可能な材質であることが、包装後の吸湿や乾燥を抑制できる点で好適である。なお、本発明の非加熱ソフトキャンディは、経日による包装材に対してやソフトキャンディ同士の付着が抑制されているので、1粒ずつ個包装せずにそのまま複数粒収容密封した包装形態とする
と、特に本発明の効果が発揮される点で好適である。したがって、簡易包装による、環境に配慮した製品とすることができる、つまみ食べするという連食性に優れている。
【実施例】
【0042】
本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。
まず、次のように、pH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片に様々な種類の成分を表面施与することで、経日による付着抑制効果がありかつ油様のぬるぬる感のない成分のスクリーニングを行った。
【0043】
<pH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片の調製>
以下のようにして、表1(A)の組成で、非加熱ソフトキャンディ生地片(A)を調製した。
(1)ゼラチンに95℃の熱水を投入して溶解後80℃で保温した。
(2)ゼラチン以外の原料及び上記ゼラチン溶解物をニーダーに投入後、混練してソフトキャンディ生地を調製した。
(3)エクストルーダーを用いて上記ソフトキャンディ生地を押出し成形した直後にカッティングし、直径約17mmの略球状の非加熱ソフトキャンディ生地片(3.0g/個)を得た。
なお、上記工程(1)~(3)は全て100℃未満で行った。また、該非加熱ソフトキャンディ生地片のpHは上述の方法で測定した。
【0044】
【0045】
<pH6~8の非加熱ソフトキャンディの調製>
(4)上記のようにして調製した非加熱ソフトキャンディ生地片(A)の表面に、表2のNo.1~27の成分が非加熱ソフトキャンディ全体重量中1重量%となるように表面施与し、該成分により表面全体が満遍なく被覆されたpH6~8の非加熱ソフトキャンディを調製した。なお、表面施与は、該非加熱ソフトキャンディ生地片と該成分とを共に密封容器に入れ攪拌する方法を用いた。
【0046】
<評価>
上記のようにして調製したpH6~8の非加熱ソフトキャンディ5個を、個包装せずにアルミ蒸着包装材に入れ密封後、40℃で4週間の加速試験(常温(25℃±3℃)約1年相当)による保存後開封した。その後、付着性とぬるぬる感を専門パネラー2名で評価した。その評価結果の平均値を表2にあわせて示す。
【0047】
付着性は、包装材に対する、又はソフトキャンディ同士の付着抑制効果を、以下の評価基準(評点-3.0~0)で評価し、開封時に付着していても、触った途端、手に持った途端、又は力を込めずに引っ張るなどした際に、その付着したものが容易に離れる場合は付着抑制効果があると判断した。
0 ; 付着なし
-0.5 ; 一部が僅かに付着しているが、容易に離れる
-1.5 ; 一部が付着しているが、容易に離れる
-2.5 ; 全てが付着しているが、容易に離れる
-3.0 ; 一部又は全てが強く付着しており、強く引っ張っても離れない
【0048】
ぬるぬる感は、触ったときの状態を、以下の評価基準(無、あり)で評価した。
無 ; 触感による油様のぬるぬる感なし
あり ; 触感による油様のぬるぬる感あり
【0049】
【0050】
スクリーニングの結果、経日後(40℃4週間の加速試験に因る)でも付着抑制効果を示す(評点が-2.5~0)成分は、No.1のショ糖脂肪酸エステル(HLB1)、No.2のショ糖脂肪酸エステル(HLB3)、No.5のグリセリン脂肪酸エステル(HLB3)、No.6のグリセリン脂肪酸エステル(HLB2)、No.7の菜種硬化油、No.8のパーム硬化油、No.27の菜種油・乳化剤混合品であった。これらのうちNo.6とNo.27は、非加熱ソフトキャンディ表面に油様のぬるぬる感があり、手指が汚れる点で不良であった。また、No.26の粉糖・コーンスターチ混合品は、表面施与直後は付着抑制されていたが、経日後の付着抑制効果は認められなかった。
【0051】
<pH6~8の非加熱ソフトキャンディ生地片の調製>
表1の組成で、非加熱ソフトキャンディ生地片(B)~(E)を、上記(A)と同様にして調製した。
【0052】
<実施例1~18、比較例1~2>
<pH6~8の非加熱ソフトキャンディの調製>
上記のようにして調製した非加熱ソフトキャンディ生地片(A)~(D)の表面に、表3~表5の組成となるように粉末成分を表面施与した。表面施与方法は、スクリーニング時と同様に行った。
【0053】
<比較例3>
表1の非加熱ソフトキャンディ生地片(A)に、粉末成分を表面施与しないものを比較例3とした。
【0054】
<比較例4>
表1の非加熱ソフトキャンディ生地片(E)に、粉末成分を表面施与しないものを比較例4とした。
【0055】
<評価>
上記のようにして調製したpH6~8の非加熱ソフトキャンディ5個を、個包装せずにアルミ蒸着包装材に入れ密封後、40℃で4週間の加速試験(常温(25℃±3℃)約1年相当)による保存後開封して評価した。評価は、スクリーニング時に行った付着性とぬるぬる感に加え、食感と粉っぽさについて、専門パネラー5名にて行った。その評価結果を表3~5にあわせて示す。
【0056】
食感は、チューイング性と弾力を基に、以下の評価基準(評点1~5)で評価した。
5 ; チューイング性、弾力ともに良好
4 ; チューイング性、弾力のどちらか一方がやや弱い(又は強い)が、総じて良好
3 ; チューイング性、弾力ともに多少弱い(又は強い)が、総じて良好
2 ; チューイング性、弾力ともに弱い(又は強い)
1 ; チューイング性、弾力ともに非常に弱い(又は強い)
【0057】
粉っぽさは、表面施与した粉末成分の口中での粉感及び手指につくか否かを、以下の評価基準(評点1~5)で評価した。
5 ; 粉っぽさがなく大変良好である
4 ; 極僅かに粉っぽさはあるが良好である
3 ; 僅かに粉っぽさはあるが問題ない程度である
2 ; 多少粉っぽさがあり不良である
1 ; 粉っぽさがあり大変不良である
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
評価の結果、実施例の付着性に対する評価はおおむね良好であり、これに対し、比較例はいずれも付着性評価が不良で付着抑制効果は得られなかった。また、油様のぬるぬる感は全ての実施例において認められなかった。他に、粉末成分組成が5重量%(実施例4及び実施例11)になると、付着性及びぬるぬる感は良好であったが、粉末成分の粉っぽさ
を感じるものであった。
【0062】
<実施例19>
表1の組成で、酸味料を含有しない非加熱ソフトキャンディ生地片(F)を上記(A)と同様にして調製した。該非加熱ソフトキャンディ生地片(F)に、実施例2と同様に粉末成分を表面施与したものを実施例19とし、実施例2と同様に評価したところ、実施例2と同様の結果が得られ、付着性、ぬるぬる感、食感、粉っぽさのいずれの評価も良好な結果が得られた。
【0063】
<比較例5>
上記非加熱ソフトキャンディ生地片(A)を、水100部にソルビタンモノラウリン酸エステル10部の割合で分散溶解させた溶液に浸漬したところ、該非加熱ソフトキャンディ生地片(A)が上記溶液に溶解した。すなわち、浸漬にて乳化剤含有水溶液を施与する方法では、本発明効果は得られなかった。