(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】プラスチックキャップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20230406BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B65D47/36 310
B65D47/08 130
(21)【出願番号】P 2019005369
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 諒
(72)【発明者】
【氏名】佐原 亨
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030619(JP,A)
【文献】特開2014-069809(JP,A)
【文献】特開2015-091724(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部及びスカート部から成り、該頂板部外面には開口予定部を取り囲むように注出用ノズルが形成されて成る、容器口部に嵌合固定されるキャップ本体と、天面と該天面外周縁から垂下する周状壁から成る上蓋とから成るプラスチックキャップにおいて、
前記上蓋には、天面内面から下方に突出し、係合部を有する突出部が形成されており、
前記キャップ本体には、前記注出用ノズル内面と密着可能な外径を有する環状側壁及び該環状側壁の下方に底部が形成されて成る中栓が形成されており、該中栓は、前記注出用ノズルの中栓と密着可能な内径を有するシール部分よりも下方で破断可能な弱化部を介してキャップ本体に一体に形成されており、前記環状側壁には、前記突出部の係合部と上下方向に係合可能な被係合部が形成されており、
前記注出用ノズル内面には、キャップ本体から離脱した中栓の環状側壁外面との間に通気路を形成可能な部分を有しており、該通気路形成部分は、前記シール部分よりも下方且つ破断可能な弱化部よりも上方に位置することを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記注出用ノズル内面には、内方に突出する複数個のリブが形成されており、隣接するリブの間が前記通気路となる請求項1記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記通気路形成部分が、前記突出部の係合部よりも下方に位置する請求項1記載のプラスチックキャップ。
【請求項4】
前記リブの各々の周方向長さは同一であり、該リブの各々の直径方向反対領域には該リブが存在しないリブ非存在領域が位置する請求項
2記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記中栓は、頂板部の開口予定部の端縁から、破断可能な弱化部を介して、形成されている請求項1~4の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【請求項6】
前記上蓋が、キャップ本体にヒンジ連結されている請求項1~5の何れかに記載のプラスチックキャップ。
【請求項7】
前記上蓋がキャップ本体にシールされた状態で、前記破断可能な弱化部が破断され、キャップ本体から離脱した中栓の被係合部が前記突出部の係合部を乗り越え互いに係合可能になると共に環状側壁外面と注出用ノズル内面が密着しており、且つ前記中栓が前記リブを乗り越える際に、環状側壁外面と注出用ノズル内面の間に前記通気路となる隙間を形成する請求項2
又は4記載のプラスチックキャップ。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のプラスチックキャップの製造方法であって、前記キャップ本体及び上蓋を成形した後、前記上蓋がキャップ本体にシールされた状態で、前記中栓の底部を下方から押圧することにより、前記破断可能な弱化部を破断し、且つ前記環状側壁外面と注出用ノズル内面の間に形成される通気路から、前記上蓋及びキャップ本体頂板部により形成される空間の内圧を開放すると共に、前記突出部の係合部と前記中栓の被係合部を係合可能とし且つ環状側壁外面と注出用ノズル内面とを密着させることを特徴とするプラスチックキャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に固定して使用される注出口を有するキャップ本体及び上蓋から成るプラスチックキャップに関するものであり、より詳細には、キャップ本体と一体に成形された後切り離されて上蓋に組み合わされる中栓を備え、密封性及び開封性に優れたプラスチックキャップ及びこのプラスチックキャップを生産性よく成形可能な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器口部に固定して使用されるキャップ本体及び上蓋から成るプラスチックキャップにおいては、密封性を確保するために、最初に内容物を取り出す時に、キャップ本体頂板部の開口予定部に形成されたプルリングを引き上げて弱化部を破断することにより、内容物注出のための開口を形成することが行われている。
粘稠性を有する内容物が充填される容器に適用されるキャップにおいては、容器胴部を押圧することにより内容物が注出されるため、注出量を容易に調整するには注出口の径が小径であることが望ましい。しかしながら、注出口が小径のキャップでは、開口予定部にプルリングを形成すること自体が難しく、形成できたとしても、プルリングが小径となるため指で把持することが難しいので、上述したように、使用開始時に容易に開口を形成することはできない。
【0003】
開口予定部にプルリングのないキャップも知られており、例えば下記特許文献1には、頂壁に注出筒が設けられたキャップ本体と、該キャップ本体にヒンジ部を介して連結され、該ヒンジ部を支点として開閉可能に設けられた外蓋と、該外蓋内に保持され、該注出筒の開口を密閉する内蓋と、を備え該内蓋は、壁部と、該壁部よりも内方に形成されると共に該上蓋が閉蓋された際に該注出筒の開口内に嵌入されるインナーリングとを有し、該外蓋は、天壁と、該天壁と連続するスカート壁と、該スカート壁よりも内方の該天壁内面に設けられると共に該注出筒の開口よりも大径に形成された筒壁とを有し、該筒壁は、該内蓋をその内方に保持するための保持手段を有するヒンジキャップであって、該インナーリングは、少なくとも該ヒンジ部側が該壁部よりも長く形成され、該内蓋は、該筒壁の内方に、少なくとも高さ方向に摺動可能に保持されており、該外蓋の開閉動作によって該外蓋と共に移動するものであることを特徴とするキャップが提案されている。
【0004】
上記ヒンジキャップは、使用時にプルリングを引き上げて開口形成を行う必要がないことから、ワンアクションで開封して内容物を取り出すことができる。また上記内蓋が、キャップ本体及び外蓋とは別途形成された後、組み付けられた2ピースタイプのキャップであることから、内蓋が上蓋と別に動くことができ、密封性にも優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ヒンジキャップは、2ピースタイプのキャップであることから、内蓋の成形工程及び内蓋の外蓋への組み付け工程という、2工程が追加されると共に、内蓋成形のための金型も必要になるため、ワンピースタイプのキャップの成形に比して、生産性及び経済性の点で未だ十分満足するものではない。
このような問題を解決するものとして、本発明者等は、キャップ本体及び上蓋から成るプラスチックキャップにおいて、上蓋には、天面内面から下方に突出し、外面に係合部を有する突出部が形成されており、キャップ本体には、注出用ノズル内面と密着可能な外径を有する環状側壁及び該環状側壁の下方に底部が形成されて成る中栓が形成されており、該中栓が、前記注出用ノズルの中栓と密着可能な内径を有するシール部分よりも下方で破断可能な弱化部を介してキャップ本体に一体に形成されており、環状側壁の内面には、前記突出部の係合部と上下方向に係合可能な被係合部が形成されていることを特徴とするプラスチックキャップを提案した(特願2017-129504)。
【0007】
上記プラスチックキャップは、従来キャップ本体及び上蓋とは別部品として形成されていた中栓を、キャップ本体と一体成形可能であることから生産性に優れていると共に、優れた密封性及び開封性を発現することが可能である。
しかしながら、上記キャップは、キャップ本体に上蓋をセットしてシールした状態で、中栓部分を下方から押し上げ、中栓をキャップ本体から切り離すと同時に上蓋に組み付けることにより形成されるが、中栓部分を下方から押し上げる際に、シールされた状態にある上蓋内の内圧が上昇することにより、上蓋とキャップ本体とのシール部分に隙間が生じたり、或いは加熱処理に付されると上蓋が開いてしまうという問題があった。上蓋とキャップ本体のシール部分に僅かでも隙間が生じてしまうと、内容物充填後のシャワー洗浄等の際に、キャップ内に洗浄水が流入するおそれがあり、また上蓋が開いた状態では、キャップ内が汚染されるおそれもある。その一方、上蓋内の内圧が上昇した場合でも上蓋とキャップ本体とのシール状態が影響を受けないように過剰に両者の嵌合を強めると、開封性に劣るようになる。
【0008】
従って本発明の目的は、キャップ本体と一体に成形された後切り離されて上蓋に組み付けられる中栓を有するプラスチックキャップにおいて、中栓のキャップ本体からの切り離し及び上蓋への組み付けの際に上蓋内の圧力上昇が有効に防止された密封性及び開封性に優れたプラスチックキャップ及びこのプラスチックキャップを生産性よく成形可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、頂板部及びスカート部から成り、該頂板部外面には開口予定部を取り囲むように注出用ノズルが形成されて成る、容器口部に嵌合固定されるキャップ本体と、天面と該天面外周縁から垂下する周状壁から成る上蓋とから成るプラスチックキャップにおいて、前記上蓋には、天面内面から下方に突出し、係合部を有する突出部が形成されており、前記キャップ本体には、前記注出用ノズル内面と密着可能な外径を有する環状側壁及び該環状側壁の下方に底部が形成されて成る中栓が形成されており、該中栓は、前記注出用ノズルの中栓と密着可能な内径を有するシール部分よりも下方で破断可能な弱化部を介してキャップ本体に一体に形成されており、前記環状側壁には、前記突出部の係合部と上下方向に係合可能な被係合部が形成されており、前記注出用ノズル内面には、キャップ本体から離脱した中栓の環状側壁外面との間に通気路を形成可能な部分を有しており、該通気路形成部分は、前記シール部分よりも下方且つ破断可能な弱化部よりも上方に位置することを特徴とするプラスチックキャップが提供される。
【0010】
本発明のプラスチックキャップにおいては、
1.前記注出用ノズル内面には、内方に突出する複数個のリブが形成されており、隣接するリブの間が前記通気路となること、
2.前記通気路形成部分が、前記突出部の係合部よりも下方に位置すること、
3.前記リブの各々の周方向長さは同一であり、該リブの各々の直径方向反対領域には該リブが存在しないリブ非存在領域が位置すること、
4.前記中栓は、頂板部の開口予定部の端縁から、破断可能な弱化部を介して、形成されていること、
5.前記上蓋が、キャップ本体にヒンジ連結されていること、
6.前記上蓋がキャップ本体にシールされた状態で、前記破断可能な弱化部が破断され、キャップ本体から離脱した中栓の被係合部が前記突出部の係合部を乗り越え互いに係合可能になると共に環状側壁外面と注出用ノズル内面が密着しており、且つ前記中栓が前記リブを乗り越える際に、環状側壁外面と注出用ノズル内面の間に前記通気路となる隙間を形成すること、
が好適である。
【0011】
本発明によればまた、上記プラスチックキャップの製造方法であって、前記キャップ本体及び上蓋を成形した後、前記上蓋がキャップ本体にシールされた状態で、前記中栓の底部を下方から押圧することにより、前記破断可能な弱化部を破断し、且つ前記環状側壁外面と注出用ノズル内面の間に形成される通気路から、前記上蓋及びキャップ本体頂板部により形成される空間の内圧を開放すると共に、前記突出部の係合部と前記中栓の被係合部を係合可能とし且つ環状側壁外面と注出用ノズル内面とを密着させることを特徴とするプラスチックキャップの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプラスチックキャップにおいては、従来、キャップ本体及び上蓋とは別部品として形成されていた中栓を、キャップ本体と一体成形可能であるため、生産性に優れている。またキャップ本体に弱化部を介して一体に形成されている中栓は、その底部をキャップ本体下方から押圧することによって、中栓はキャップ本体から切り離されると同時に上蓋に形成された突出部の係合部と中栓の被係合部とが係合可能となることから、組み付けも容易であり、生産性及び経済性に優れている。
更に、上述した中栓のキャップ本体からの切り離しと上蓋への組み付けに際して、上蓋とキャップ本体頂板部で形成されるキャップ内空間の内圧の上昇が有効に防止されており、上蓋とキャップ本体のシール状態を損なうことがない。特に大径の注出用ノズルの場合には、中栓の上方への押し上げによりキャップ内空間に大きな圧縮力がかかるため、本発明のプラスチックキャップは有効である。
【0013】
また中栓は、注出用ノズルの内面と密着可能な外径を有していることから、閉栓状態においては、注出用ノズルのシール部分にしっかりと密着して液密性を確保できる。その一方、上蓋の突出部の係合部と中栓の被係合部は上下方向に間隙を有するよう形成されている結果、中栓は上蓋に対して可動性を有している。このため、上蓋の動きに遅れてから追従するため、開封力が分散され、上蓋の初期開封力が上昇することもない。また上蓋が落下衝撃を受けた場合にも中栓は上蓋と一緒に動かないので、密封性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のプラスチックキャップの一例であるヒンジキャップにおいて、上蓋を開いた状態における上面図である。
【
図2】
図1に示したヒンジキャップの上蓋を開いた状態における側断面図である。
【
図3】
図1に示したヒンジキャップの上蓋をキャップ本体に嵌合させてシールした状態における側断面図である。
【
図4】
図3に示した状態から中栓を上蓋にセットする工程を説明するための側断面図である。
【
図5】
図4に示した状態から中栓が押し上げられ、中栓の環状側壁と注出用ノズルの内面に通気路となる隙間が形成された状態を示す側断面図である。
【
図6】中栓が上蓋の突出部と係合した後における上蓋が閉じられた状態を示す側断面図である。
【
図7】
図6に示した状態から上蓋を開封し始めた状態を示す側断面図である。
【
図8】
図7に示した状態から上蓋が開いた状態における側断面図である。
【
図9】本発明のキャップの他の態様における、ヒンジキャップの上蓋をキャップ本体に嵌合させてシールした状態における側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプラスチックキャップについて、添付図面に基づいて説明する。
図1~
図8に示す本発明のプラスチックキャップの一例は、キャップ本体1、及びこのキャップ本体1にヒンジ2により連結された上蓋20、並びにキャップ本体1から破断可能な弱化部3を介して切り離し可能に形成され、キャップ本体1から切り離し後は上蓋20と一体可能にされる中栓30から成り、これらが一体的に成形されて成るヒンジキャップである。
容器口部(図示せず)に嵌合固定されるキャップ本体1は、頂板部4及び頂板部4の周縁から垂下するスカート部5から成っている。スカート部5の内面には、後述する容器口部60の係合凹部と係合し、キャップ本体1を容器口部に固定するための内方に突出する環状凸部6,6・・・が形成されている。
また頂板部4の外面側の端部には、上蓋20と係合して上蓋20を固定するための環状突起7が形成され、該環状突起7よりも内側の注出方向(ヒンジ部の反対側)側に注出用ノズル8が形成されている。この注出用ノズル8は、注出方向(図面向かって左)側の軸方向高さが高く、ヒンジ2側が低く傾斜して形成されている。注出用ノズル8の内面には、内方に突出する複数個のリブ9,9・・・が下方に形成されている。この隣接するリブ9,9の間が、中栓のキャップ本体からの切り離しと上蓋への組み付けに際して、上蓋とキャップ本体頂板部で形成されるキャップ内空間の内圧を解放可能な通気路となる。このリブ9,9・・・の形成位置(通気路形成部分)は、後述するように、上蓋の突出部の係合部よりも下方であると共に、注出用ノズル8と中栓30の閉栓状態におけるシール部分よりも下方且つ破断可能な弱化部3よりも上方である。一方、頂板部4の内面には、容器口部60内面と密着するインナーリング10が形成されている。
【0016】
全体を30で示す中栓は、注出用ノズル8と頂板部4の内面との境界部分によって区画される開口予定部を塞ぐように、注出用ノズル8と頂板部4の内面との境界部分(開口予定部の端縁)に破断可能なスコア(弱化部)3を介してキャップ本体1と一体に形成されている。尚、
図3に示す具体例においては、注出用ノズル8と頂板部4の内面との境界部分の角部が、下方に行くに従って内径が広くなるようにテーパ面8aが形成されている。
この中栓30は、破断可能なスコア3から下方に延びる環状側壁31及び環状側壁31の軸方向下端を塞ぐように底部32が形成されている。また前述したとおり、環状側壁31の外径は、注出用ノズル8の内面と密着する大きさであり、中栓全体の軸方向長さは、図に示す具体例では、ヒンジ側高さとほぼ同等の長さとなるように形成されている。また図に示す具体例では、底部32は軸方向下方に行くにしたがって径が減少するように、傾斜部32aが形成されており、中栓30はキャップ本体から離脱し、上蓋と一体化した後、注出用ノズル8内への嵌合が容易になっている。
また中栓30の環状側壁31の内面上方には、後述する上蓋に形成された中栓係合部(係合部)と被係合するための環状の上蓋係合部(被係合部)33が形成されている。
更に、中栓30の底部32には軸方向上方に延びる環状のガイド部34が形成されている。
【0017】
全体を20で示す上蓋は、キャップ本体1のスカート部5の上端の注出方向と反対側の位置にヒンジ2を介してキャップ本体1と一体に成形されている。
上蓋20は、天面21と天面21の外周縁から垂下する周状壁22から成っており、周状壁22の内面下方には、前述したキャップ本体1の環状突起7と係合し、閉栓状態において上蓋20をキャップ本体1に固定するための環状突条23が形成されている。また周状壁22の下端のヒンジ2と反対側の位置には、上蓋20を上方に持ち上げるための摘み24が形成されている。尚、本明細書において、上蓋20に関する軸方向の上方又は下方とは、天面21を上にした状態(
図3に示すような状態)での上方又は下方をいう。
また天面21には、閉栓状態において、中栓30の環状側壁31の先端とその先端が合致する下方に延びる周状突起25が形成されている。この周状突起25が中栓30の環状側壁31先端に位置することにより、中栓を上蓋にセットする際に中栓30が上方に行き過ぎてしまうことを防止することができる。
【0018】
上蓋の周状突起25よりも内側には、キャップ本体1から離脱された中栓30を固定するための、下方に突出する環状の突出部27が形成されている。この環状突出部27の先端外周面には、外方に突出する中栓係合部(係合部)28が、前述した中栓30の上蓋係合部(被係合部)33と上下方向に係合可能に形成されている。尚、環状突出部27の係合部28よりも下方に前述したリブ9,9・・・が位置することが望ましい。これにより中栓30がリブ9を乗り越える際の抵抗を低減することができる。
この環状突出部27内に、前述した中栓30の環状ガイド部34が挿入されることによって、キャップ本体1から離脱した中栓30の傾き防止と、上蓋開封時における突出部27が内倒れすることによる中栓30の上蓋20からの離脱が防止できる。また環状ガイド部34の先端34aは、中栓が上蓋と一体化された状態で、前記環状突出部27の係合部28よりも軸方向の上方に位置し且つ中栓30の上蓋係合部(被係合部)33の軸方向の下方に位置している(
図6参照)。これにより、中栓を上蓋にセットする際に、突出部27の係合部28が径方向内側に逃げることができ、中栓30の上蓋係合部(被係合部)33をスムーズに乗り越えることが可能になる。
尚、環状突出部27の内径は、環状ガイド部34の外径よりも大きい内径を有し、且つガイド部34の長さよりも深く形成されている。これにより中栓30は、上蓋20に対して可動領域を有することになり、前述したような上蓋の初期開封力を増加させることなく、また密封性能も向上できる。
【0019】
本発明のプラスチックキャップにおいては、
図1及び
図2に示した状態で成形された後、
図3に示すように、上蓋20をキャップ本体1に被せて、キャップ本体1の環状突起7と上蓋20の環状突条23を係合させて固定させた後、
図5に示したように、押圧治具50を用い、キャップ本体1の下方から中栓30の底部32を押し上げる。これにより、スコア3が破断されると同時に中栓30の注出用ノズル8内への上昇が開始される。中栓30が注出用ノズル8内を上昇し始め、中栓30のガイド部34が環状突出部27内に挿入されると共に、上蓋係合部(被係合部)33が上蓋20の環状突出部27の中栓係合部(係合部)28を乗り越え、互いに係合可能になる。また環状側壁31の外面が、注出用ノズル8内面下方に形成された内方に突出する複数個のリブ9,9・・・と接触する(
図5)。
リブ9,9・・・は、注出用ノズル8の内面の同一軸方向高さに間隔を置いて複数個形成されている。図に示す具体例では、リブ9,9・・・はそれぞれ周方向に40°の幅を有し、等間隔をおいて3個形成されている。環状側壁31の下部外面のリブ9,9・・・と接触していない部分、即ち、周方向に見て隣接するリブとリブの間の部分は、注出用ノズル8の内面との間に、リブ9の内方への突出量だけ通気路となる隙間40が形成される(
図5)。
このため、中栓30を上方に押し上げることにより、上蓋20及びキャップ本体頂板部4並びに中栓30の上面で区画されるキャップ内空間で圧縮された空気は、この隙間40を通って外部(キャップ本体の下方)に解放されることから、キャップ内空間の内圧は上昇することがなく、上蓋20とキャップ本体1のシール状態が維持される。その結果、シャワー洗浄に付された場合の洗浄水侵入のおそれや、加熱殺菌処理等に付された場合に上蓋がキャップ本体から外れてしまうようなことが有効に防止されている。
【0020】
図6に示すように、中栓30の注出用ノズル8内を更に上昇し、中栓30の環状側壁31がリブ9,9・・・を乗り越え、下方に行くに従って縮径された傾斜部32aの外径とリブ9,9・・・の内方先端により形成される径が同じになると、リブ9,9・・・の有無にかかわらず、注出用ノズル8の内面と環状側壁31の外面は密着し、キャップの液密性を確保可能なシール状態を形成する。すなわち、リブ9,9・・・よりも上方位置で注出用ノズル8内面と環状側壁31外面によるシール部35が形成され、液密性が確保される。このシール部35は、破断後のスコア3のバリの影響を受けることもなく、注出用ノズル8の内容物の注出性を維持可能である。
また中栓30のガイド部34は環状突出部27内に挿入されることにより、中栓30が注出用ノズル8から取り外された状態(
図8参照)においても、中栓30の環状側壁31が傾いてしまうことが有効に防止され、中栓が脱落することもない。
【0021】
また
図6から明らかなように、環状突出部27の中栓係合部(係合部)28と中栓30の上蓋係合部(被係合部)33は、開栓時において軸方向に互いに係合するものであるが、これらの係合関係は、軸方向の距離Lだけ間隙を有するように形成されている。すなわち、上蓋20が完全に閉じた状態では、環状突出部27の中栓係合部(係合部)28と中栓30の上蓋係合部(被係合部)33は
図6に示すように軸方向距離Lだけ離れた位置にあり、また前述したように、ガイド部34の外径が環状突出部27の内径寸法に対して小径且つ軸方向長さが短いことから、上蓋20が開封するためにわずかに引き上げられ環状突出部27が多少斜めになっても、中栓30の位置は変化せず、環状突出部27だけが上蓋20と同時に上昇して中栓30は注出用ノズル8から移動しない(
図7参照)。このため、上蓋20の開封初期(具体的には、キャップ本体1の環状突起7と上蓋20の環状突条23との係合を外そうとする時)においては、中栓30はほとんど動くことなく注出用ノズル8に密着しているため、上蓋20の初期開封力を増加させることないので、開封性を損なうことがない。しかも開封初期の状態ではキャップの密封性も解除されていない。
上蓋20を更に引き上げ、環状突出部27が距離Lだけ上昇し、環状突出部27の中栓係合部(係合部)28が中栓30の上蓋係合部(被係合部)33と係合することによって、中栓30も上蓋20と共に引き上げられ、
図8に示すように、中栓30が上蓋20と一体化し注出用ノズル8から取り除かれる。この際、中栓30のガイド部34は環状突出部27内に挿入されているため、突出部27が内方に倒れてしまうことが有効に防止される。即ち、中栓30の環状側壁31の外面と注出用ノズル8の内面とを比較的強く密着させシール性を向上させても、上蓋20から中栓30が外れてしまうことを防止できる。
【0022】
上述した本発明のプラスチックキャップは、中栓のキャップ本体からの切り取り及び上蓋への組み付けのための押し上げに際してキャップ内空間の内圧を上昇しやすい、キャップ本体頂板部の径に対して比較的大径の注出用開口が形成されたヒンジキャップについて説明したが、内容物の使用開始に際して、プルリングにより注出用開口を形成する必要がないことから、小径の注出用開口とすることもできる。このような小径の注出用開口を有するキャップにおいては、容器を押圧した分だけ注出することができると共に、容易にスクイズバック可能であり、液だれなどを有効に防止することできる。尚、本明細書において、小径の注出用開口とは、開口予定部にプルリングを形成できない程度の口径の注出用開口(開口予定部)を意味しており、これに限定されないが、3~18mm程度の口径を有する注出用開口(開口予定部)をいう。かかる小径の注出用開口を有するキャップは、スクイズボトルなどのように内容物を絞り出すタイプの容器に好適に使用できる。
【0023】
本発明のプラスチックキャップは、上述した図に示した具体例に限定されず、種々の変更が可能である。
すなわち、図に示したプラスチックキャップは、キャップ本体及び上蓋がヒンジで連結され、キャップ本体及び上蓋並びに中栓が一体的に成形されるものであったが、上蓋がキャップ本体と別体として成形され、キャップ本体に螺子係合等によって固定されるものであってもよい。この場合でも、中栓はキャップ本体と一体に成形できるため、従来のキャップに比して成形は容易であり、生産性及び経済性に優れている。
また図に示したキャップ本体は、容器口部に係合部同士で嵌合固定されるスカート部が一重構造の打栓キャップであったが、分別廃棄を容易にするために、スカート部の外側にスコアが形成された外側筒壁を有する二重構造とすることもできる。また容器口部と螺子係合によって固定されるスカート部に螺子部が形成されたキャップ本体であっても勿論よい。
【0024】
また、
図1~
図8に示した中栓は、注出用ノズルの注出方向側の軸方向長さに対して約75%の軸方向長さを有するものであるが、注出用ノズルの大きさ(口径及び長さ)や中栓の底部形状等によって適宜変更することができる。
更に中栓の底部の形状も、図に示す具体例に限定されず種々の変更が可能であるが、中栓の注出用ノズルへの嵌合のしやすさの観点から、底部の形状は、環状側壁よりも小径となるように環状側壁と底部の境界部分に、傾斜が形成された円錐台形状、半球状や、段差状等であることが好適である。
【0025】
また注出用ノズル内面に形成されるリブの各々の周方向長さは同一であり、またリブが形成された位置の注出用ノズルの径中心に対して対称の位置にはリブが形成されていない非存在領域が形成されていることが好適である。これにより、リブを乗り越える際の抵抗を更に低減できる。
図に示したリブは、注出用ノズルの同一軸方向高さに3個等間隔で形成されていたが、これに限定されず、注出用ノズルの内径やリブの周方向幅に応じて適宜複数個設ければよい。また注出用ノズルの軸方向長さやリブの軸方向長さにもよるが、複数個のリブは必ずしもの同一軸方向高さになくてもよい。
【0026】
また中栓とキャップ本体との連結部である破断可能な弱化部は、注出用ノズル内面において、中栓の環状側壁の外面が密着可能な内径を有するシール部よりも下方に形成されたリブよりも更に下方に位置することが必要であり、図に示した具体例では、注出用ノズルの下端が頂板部と一致し、キャップ本体の開口予定部の端縁に破断可能な弱化部を介して中栓が一体的に形成されていたが、この態様には限定されない。例えば、注出用ノズルの下端が頂板部よりも下方に位置するような場合には、注出用ノズルの下端で破断可能な弱化部を介して中栓が一体的に形成されていてもよいし、或いは注出用ノズルの内面が部分的に縮径されて、その縮径された部分がシール部となっているような場合においては、このシール部及びリブよりも下方の注出用ノズル内面で破断可能な弱化部を介して中栓が一体的に形成されていてもよい。
更に、図に示した具体例では、注出用ノズル8と頂板部内面との境界部分にテーパ面8aが形成され、破断可能な弱化部はテーパ面の上端に形成されていたが、
図9に示すように、このようなテーパ面を形成することなく、境界部分の下端に破断可能な弱化部3を形成することもできる。これにより、リブ9と弱化部3の軸方向距離が長くなり、中栓を注出用ノズル内にセットする際の弱化部の破断とリブの乗り越えのタイミングが重なることがなく、中栓をセットする際の抵抗を低減することが可能になる。
【0027】
本発明のプラスチックキャップは、ヒンジキャップにおいては、上蓋を開いた状態で、射出成形等によって一体的に成形することが可能である。次いで上蓋を折り曲げキャップ本体に固定した後、下方から押圧治具などで中栓部分を上方に押し上げることによって、キャップ本体と中栓上端の境界に形成された破断可能な弱化部を引裂きと共に、中栓を上蓋に固定することが可能になる。
本発明のキャップは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂などの従来プラスチックキャップの成形に用いられていた樹脂により、射出成形等、従来公知の方法によって成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のプラスチックキャップは、キャップ本体と中栓をワンピースで形成することができ、生産性及び密封性に優れていると共に、プルリングの引き上げにより注出用開口を形成するが必要なく、液状物を内容物とする容器のキャップとして好適に使用することができる。本発明のプラスチックキャップは、プルリングを形成することが困難な小径の注出用開口を有し内容物の注出量の調整が容易なプラスチックキャップとしては勿論、中栓のキャップ本体からの離脱及び上蓋への組み付けに際してキャップ内空間の内圧上昇が大きい、大径の注出用開口を有するプラスチックキャップとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 キャップ本体、2 ヒンジ、3 弱化部、4 頂板部、5 スカート部、6 環状凸部、7 環状突起、8 注出用ノズル、9 リブ、10 インナーリング、20 上蓋、21 天面、22 周状壁、23 環状突条、24 摘み、25 周状突起、26 円弧状突起、27 環状突出部、28 中栓係合部(係合部)、30 中栓、31 環状側壁、32 底部、33 上蓋係合部(被係合部)、34 ガイド部、40 隙間(通気路)、50 押圧治具、60 容器口部。