(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール製品及び毛髪洗浄方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20230406BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230406BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230406BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230406BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/02
A61K8/02
A61K8/44
A61K8/19
(21)【出願番号】P 2019014839
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507032(JP,A)
【文献】特開2015-098463(JP,A)
【文献】特開2006-282565(JP,A)
【文献】国際公開第2014/088039(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪洗浄に用いられる発泡性エアゾール製品であって、
[A]N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩
、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン
、及び水が配合された原液、及び
[B]二酸化炭素を含む噴射剤
が容器に充填され
、
前記原液における水の配合量が70質量%以上である発泡性エアゾール製品。
【請求項2】
毛髪洗浄に用いられる発泡性エアゾール製品であって、
[A]N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合された原液、及び
[B]二酸化炭素を含む噴射剤
が容器に充填され、
前記原液におけるアニオン界面活性剤と両性界面活性剤の配合量の合計が15質量%以下である発泡性エアゾール製品。
【請求項3】
前記原液におけるアニオン界面活性剤と両性界面活性剤の配合量の合計が15質量%以下である請求項
1に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項4】
前記原液に炭が配合された請求項1
~3のいずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の発泡性エアゾール製品を用いて毛髪の洗浄を行う毛髪洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール製品及び毛髪洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い勝手の良さから原液を噴射剤と共に容器に充填し、容器からの噴射後に形成した泡を毛髪に塗布して用いる発泡性エアゾール製品が普及している。
なかでも、二酸化炭素(炭酸ガス)による皮膚の血行促進効果が注目されており、上述のような発泡性エアゾール製品における噴射剤の一成分として二酸化炭素を容器に充填し、この容器からの噴射により発泡形成された泡を用いて毛髪処理を行う技術が提案されている(特開2014-111560号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、噴射剤に二酸化炭素が含まれている発泡性エアゾール製品では、容器からの噴射により発泡形成された泡が毛髪上において消泡しやすく、消泡の抑制について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、二酸化炭素を含む噴射剤により発泡形成される泡の消泡を抑制させることが可能な発泡性エアゾール製品及び毛髪洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が、二酸化炭素を含む噴射剤により発泡形成される泡を用いて毛髪洗浄する際の消泡を抑制させるべく鋭意検討を行った結果、N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが原液に配合されたものが有意であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る発泡性エアゾール製品は、毛髪洗浄に用いられる発泡性エアゾール製品であって、
[A]N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合された原液、及び
[B]二酸化炭素を含む噴射剤
が容器に充填されたものである。
【0008】
上記[A]原液は、炭が配合されたものであることが好ましい。これにより、消泡を抑制させつつ、頭皮をクレンジング(油分を除去)することに優れる。
【0009】
上記[A]原液におけるアニオン界面活性剤と両性界面活性剤の配合量の合計が15質量%以下であることが好ましい。ここで、原液としては、N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの3成分以外のアニオン界面活性剤と両性界面活性剤がいずれも配合されていないものであってもよいし、いずれか一方のみが配合されたものであってもよい。このように、原液におけるアニオン界面活性剤(N-アシルグルタミン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩を含む)と両性界面活性剤(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインを含む)の配合量の合計を15質量%以下とすることで、毛髪洗浄の際に頭皮に与える刺激を小さく抑えることが可能になる。
【0010】
本発明に係る毛髪洗浄方法は、上記発泡性エアゾール製品を用いて毛髪の洗浄を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素を含む噴射剤により発泡形成される泡を用いて毛髪洗浄を行う場合において、消泡を抑制させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の発泡性エアゾール製品及び毛髪洗浄方法を例に挙げて、本発明を説明する。
本実施形態の発泡性エアゾール製品は、毛髪洗浄に用いられる発泡性エアゾール製品であって、
[A]N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合された原液、及び
[B]二酸化炭素を含む噴射剤
が容器に充填されたものである。
【0013】
([A]原液)
[A]原液は、N-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合されたものである([A]原液における水の配合量は、例えば70質量%以上である。)。
原液に上記3成分が配合されることで、二酸化炭素を含む噴射剤により発泡形成される泡を用いて毛髪洗浄を行う際の泡立てにおいて、消泡が抑制される。これにより、毛髪洗浄中において毛髪同士の引っかかりが抑制され、毛髪洗浄の操作性が向上する。また、毛髪洗浄において頭皮マッサージも行う場合には、当該マッサージ中の毛髪同士の引っかかりが抑制されることで操作性が向上する。
また、原液に上記3成分が配合されることで、二酸化炭素を含む噴射剤により発泡形成される泡を用いて毛髪洗浄を行う際の泡立て後においても、泡質を良好にできるだけでなく、泡量を十分に確保することができる。
また、[A]原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、シャンプー等の毛髪洗浄剤の原料として公知のものを任意に配合しても良い。
【0014】
(N-アシルグルタミン酸塩)
N-アシルグルタミン酸塩は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化1】
[上記一般式(1)において、R
1は、直鎖の飽和又は不飽和の炭素数8以上22以下の炭化水素基を表す。また、X及びYは、水素、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミンを表す。なお、X及びYが両方とも水素となることはない。]
【0015】
N-アシルグルタミン酸塩としては、例えば、カプリロイルグルタミン酸塩(例えば、カプリロイルグルタミン酸2Na等)、N-ココイルグルタミン酸塩(例えば、ココイルグルタミン酸2Na、ココイルグルタミン酸Na、ココイルグルタミン酸K、ココイルグルタミン酸TEA等)、N-ラウロイルグルタミン酸塩(例えば、ラウロイルグルタミン酸Na、ラウロイルグルタミン酸2Na、ラウロイルグルタミン酸K、ラウロイルグルタミン酸TEA等)、N-ミリストイルグルタミン酸塩(例えば、ミリストイルグルタミン酸Na、ミリストイルグルタミン酸K等)、N-パルミトイルグルタミン酸塩、N-ステアロイルグルタミン酸塩(例えば、ステアロイルグルタミン酸2Na、ステアロイルグルタミン酸Na、ステアロイルグルタミン酸K等)、N-オレオイルグルタミン酸塩、N-パーム脂肪酸グルタミン酸塩(例えば、パーム脂肪酸グルタミン酸Na等)、N-オリーブ油脂肪酸グルタミン酸塩(例えば、オリーブ油脂肪酸グルタミン酸Na等)等が挙げられる。
【0016】
本実施形態の発泡性エアゾール製品の[A]原液に、N-アシルグルタミン酸塩が配合されることで、発泡性エアゾール製品から発泡形成された泡について、クリーミーな(細かい泡が多い)泡質が実現できる。
【0017】
[A]原液には、上記N-アシルグルタミン酸塩が一種又は二種以上配合される。
[A]原液におけるN-アシルグルタミン酸塩の配合量の下限は、よりクリーミーな(細かい泡が多い)泡質とする観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、[A]原液におけるN-アシルグルタミン酸塩の配合量の上限は、泡持ちがより優れたものとする観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0018】
(α-オレフィンスルホン酸塩)
α-オレフィンスルホン酸塩は、炭素数10~20のα-オレフィンがスルホン化されたアルキルスルホン酸の塩付加物である。
α-オレフィンスルホン酸塩としては、例えば、オレフィン(C12-14)スルホン酸Na、オレフィン(C14-16)スルホン酸Na、オレフィン(C14-18)スルホン酸Na、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の発泡性エアゾール製品の[A]原液に、α-オレフィンスルホン酸塩が配合されることで、発泡性エアゾール製品から発泡形成される際の速泡性が優れたものとなる。
【0020】
[A]原液には、上記α-オレフィンスルホン酸塩が一種又は二種以上配合される。
[A]原液におけるα-オレフィンスルホン酸塩の配合量の下限は、発泡性エアゾール製品から発泡形成される際の速泡性をより優れたものとする観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、[A]原液におけるα-オレフィンスルホン酸塩の配合量の上限は、毛髪洗浄中における毛髪の手触りをより柔らかいものとする観点から、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。
【0021】
(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン)
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、下記一般式(2)で表されるものである。
【化2】
[上記一般式(2)において、R
2は、アルキル基を表し、例えば、炭素数10以上18以下の直鎖状アルキル基である。]
【0022】
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの具体例としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0023】
本実施形態の発泡性エアゾール製品の[A]原液に、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合されることで、毛髪洗浄における泡持ちが優れたものとなる。
【0024】
[A]原液には、上記アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが一種又は二種以上配合される。
[A]原液におけるアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの配合量の下限は、毛髪洗浄における泡持ちをより優れたものとする観点から、0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、[A]原液におけるアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの配合量の上限は、毛髪洗浄中における毛髪の手触りをより柔らかいものとする観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
なお、[A]原液におけるアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの配合量は、N-アシルグルタミン酸塩の配合量よりも多く、α-オレフィンスルホン酸塩の配合量よりも多いものとすることができる。
【0025】
(原液における任意原料)
[A]原液には、上記の通り、公知のシャンプー等の毛髪洗浄剤に用いられる原料が任意に配合される。この任意原料は、上記3成分以外の成分であり、例えば、炭、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン性高分子、多価アルコール、清涼剤、酸、低級アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤等の成分を含んでいてもよい。なお、各任意成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
炭とは、木材又は竹などから加熱等によって得られる乾燥した炭化物をいう。炭を配合すれば、頭皮や毛穴における皮脂汚れを吸着でき、頭皮のクレンジング効果が得られる。
炭としては、発泡性エアゾール製品に配合可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、活性炭、薬用炭、桐炭、杉炭、竹炭、備長炭、ヒノキ木炭等が挙げられる。頭皮のクレンジングを向上させる観点から、粉末状のものを用いると良い。炭の体積平均粒子径の上限は、特に限定されないが、例えば、50μmである。当該炭の体積平均粒子径の値は、レーザー回折・散乱法により測定できる(測定装置としては、例えば、日機装社製「Microtrac MT3000」を用いることができる)。炭の体積平均粒子径の上限を50μmとすることで、毛髪洗浄中の操作性を良好とし、発泡性エアゾール製品における噴射口の詰まりを抑制させることができる。なお、炭の体積平均粒子径の下限は、例えば、0.5μmである。
なお、[A]原液における炭の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.010質量%以上とすることができる。ここで、毛髪洗浄中に泡立てた後の泡量の低下を十分に抑制し泡持ちを良好にする観点からは、[A]原液における炭の含有量が0.4質量%以下であることが好ましい。なお、毛髪洗浄中に泡立てた後の泡質を良好にする観点からは、[A]原液における炭の含有量は、0.025質量%以上とすることが好ましい。
【0027】
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン以外の両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン、リノレイン酸アミドプロピル、パーム核脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアミドプロピルベタイン型両性界面活性剤を含むアミドアルキルベタイン型両性界面活性剤;N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシル-N-ヒドロキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリン型両性界面活性剤;N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸ナトリウム、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、N-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウムなどのスルホベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドなどのアミドアミンオキシド型両性界面活性剤;などが挙げられる。
【0028】
上記N-アシルグルタミン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩以外のアニオン界面活性剤としては、例えば、N-アシルグルタミン酸塩以外のアシルアミノ酸又はその塩(例えば、アシルアスパラギン酸又はその塩、アシルアラニン又はその塩、アシルメチルアラニン又はその塩、アシルグリシン又はその塩等);ヤシ油脂肪酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、ココイルイセチオン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);アルキルスルホコハク酸二ナトリウム;ポリオキシエチレンスルホコハク酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ラウロイル加水分解シルクナトリウム;イソステアリン酸加水分解シルクAMP(イソステアリン酸と加水分解シルクとの縮合物の2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール塩);ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム;ココイル加水分解コラーゲンの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。
【0029】
なお、[A]原液におけるアニオン界面活性剤(N-アシルグルタミン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩を含む)と両性界面活性剤(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインを含む)の配合量の合計は、15質量%以下であることが好ましい。これにより、毛髪洗浄の際に頭皮に与える刺激を小さく抑えることが可能になる。また、当該配合量の合計を15質量%以下に抑えて頭皮への刺激を抑えた場合であっても、[A]原液においてN-アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、及びアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが配合されていることで、毛髪洗浄の際の消泡を抑制することができる。
また、頭皮に与える刺激を小さく抑える観点から、[A]原液におけるアニオン界面活性剤(N-アシルグルタミン酸塩及びα-オレフィンスルホン酸塩を含む)と、両性界面活性剤(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインを含む)と、ノニオン界面活性剤と、の配合量の合計が15質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。[A]原液に1種又は2種以上のノニオン界面活性剤を配合しても良く、[A]原液におけるノニオン界面活性剤の配合量は、例えば、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0031】
カチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体などが挙げられる。[A]原液にカチオン性高分子を配合させることで、発泡性エアゾール製品から発泡形成された泡を髪から洗い流すときの指通り性を向上させることができる。[A]原液に1種又は2種以上のカチオン性高分子を配合しても良く、[A]原液におけるカチオン性高分子の配合量は、例えば0.1質量%以上1質量%以下である。
【0032】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。[A]原液に1種又は2種以上の多価アルコールを配合しても良く、[A]原液における多価アルコールの配合量は、例えば0.01質量%以上5質量%以下である。
【0033】
清涼剤としては、例えば、メントールなどが挙げられる。[A]原液に1種又は2種以上の清涼剤を配合しても良く、[A]原液における清涼剤の配合量は、例えば0.05質量%以上1質量%以下である。
【0034】
酸としては、例えば、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、グリコール酸等の有機酸;リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸;などが挙げられる。[A]原液に1種又は2種以上の酸を配合しても良く、[A]原液における酸の配合量は、例えば0.1質量%以上1.5質量%以下である。
【0035】
(剤型)
[A]原液は、液状であるとよい。液状の[A]原液の粘度は、B型粘度計を使用して測定(温度:25℃、ロータ:粘度に応じて適宜設定、ロータの回転速度:60rpm)した場合、粘度計測開始から60秒経過後の値が10mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以上15,000mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以上12,000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0036】
(pH)
[A]原液のpHは、弱酸性であるとよい。pHを弱酸性に保つことで、二酸化炭素が炭酸塩になるのを抑制して血行促進効果を高めることができると共に、pHの低下に伴う粘度の上昇により発泡性及び吐出性が悪くなることを抑制できる。[A]原液のpHとしては、4.0以上6.8以下が好ましく、4.5以上6.5以下がより好ましい。
【0037】
(塩化物イオン濃度)
[A]原液の塩化物イオン濃度は、後述の容器の腐食を抑制させる観点から、500質量ppm以下であることが好ましい。
なお、塩化物イオン濃度は、イオンクロマトグラフによる分析値をいう(例えば、Dionex社製陰イオン交換カラム「IonPacAS18」を装備したDionex社製「ICS-2000」を用いることにより、塩化物イオン濃度の分析値が得られる。)。
【0038】
([B]噴射剤)
本実施形態の発泡性エアゾール製品における容器には、[B]噴射剤が充填される。[B]噴射剤は、容器から噴出された[A]原液を発泡させるものである。
【0039】
[B]噴射剤には、二酸化炭素が含まれる。これにより、発泡形成された泡に二酸化炭素を含ませることができるため、頭皮の血行を促進させることが可能になると共に、頭皮のクレンジング(油分の除去)を行うことが可能となる。
本実施形態の発泡性エアゾール製品において、容器内に充填されている二酸化炭素の濃度は、0.8質量%以上であり、1.0質量%以上が良く、1.1質量%以上が好ましい。また、容器内に充填されている二酸化炭素の濃度は、例えば、3.0質量%以下とすることができる。ここで、容器内に充填された二酸化炭素の濃度は、「(二酸化炭素)/(容器に充填された[A]原液及び[B]噴射剤)×100」により算出される。
【0040】
[B]噴射剤には、二酸化炭素以外の成分として、さらに一種又は二種以上が含まれていてもよい。そのような成分としては、例えば、液化石油ガス(LPG)、イソペンタン、ジメチルエーテル、窒素およびこれらの混合物が挙げられる。
液化石油ガスは、特に限定されないが、例えば、プロパンとn-ブタン(ノルマルブタン)、プロパンとi-ブタン(イソブタン)、又は、プロパンとn-ブタンとi-ブタンであるとよい。液化石油ガスは、その高い揮発性から初期発泡性に寄与すると推察されている。
イソペンタンは、容器から取り出された際の泡の持続性に寄与すると推察されている。また、液化ガスと共にイソペンタンを充填する場合には、発泡性を良好にするために、液化ガスの量がイソペンタンよりも多くすることが好ましい。
【0041】
[B]噴射剤には、二酸化炭素のみから構成されていてもよいが、血行促進効果を得つつ、内容物をできるだけ使い切るという観点から、二酸化炭素及び液化石油ガスの両方を用いることが好ましい。
なお、二酸化炭素以外の噴射剤により発泡形成される泡と比較して、二酸化炭素が含まれた泡は、毛髪洗浄操作により消泡が進んでしまう場合があるが、上記のように[A]原液に3成分を配合させたことで、当該消泡を抑制させることが可能となっている。
【0042】
[B]噴射剤は、原液100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、2質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。噴射剤の充填量を上記範囲とすることで、原液を効率良く噴射することができる。
【0043】
(容器)
本実施形態の発泡性エアゾール製品における容器は、公知の耐圧性容器であると良く、その材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼などの金属製のものである。さらに、この金属製の容器は表面がメッキ加工されていてもよい。また、この容器は、内面に樹脂層が積層されているもの、内部に内袋を有するものであってもよい。さらに、この容器は、内部に[A]原液及び[B]噴射剤が充填される内袋を有するものであってもよいし、有しないものであってもよい。
【0044】
(ゲージ圧力)
本実施形態の発泡性エアゾール製品における容器のゲージ圧力は、安全性の観点から、25℃の温度条件で0.80MPa以下であり、0.65MPa以下が良い。
【0045】
(用途及び毛髪洗浄方法)
本実施形態の発泡性エアゾール製品は、シャンプーだけでなく、頭皮マッサージ、頭皮スパなどのシャンプーに比べて比較的施術時間の長い毛髪洗浄の用途に用いることができ、発泡性エアゾール製品を用いたこれらの毛髪洗浄方法が提供される。なお、上記毛髪洗浄には、毛髪及び頭皮の洗浄が含まれる。ここで、頭皮マッサージや頭皮スパなどの施術時間は、例えば、5分以上20分以下である。
本実施形態の発泡性エアゾール製品により発泡形成された泡を用いて毛髪洗浄、頭皮マッサージ、頭皮スパ等を行う場合には、施術中から施術後に至るまで泡が消えにくいことから、洗浄中における毛髪の指通りが向上し、洗浄中の毛髪のきしみを低減できるため、施術のしやすさに優れる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(原液の調製)
表1、表3、表5に示す成分と水とを混合して原液(A-1~A~4、B-1~B-4)をそれぞれ調製した。
なお、N-アシルグルタミン酸塩としてはN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウムを用い、α-オレフィンスルホン酸塩としてはテトラデセンスルホン酸ナトリウムを用い、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインとしてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを用いた。
【0048】
(実施例1~4、比較例1、参考例A~Cの調製)
上記で調製した各原液と噴射剤とを、原液92.9質量部に対して噴射剤が7.1質量部となるように混合し、アルミニウム製の耐圧容器内に充填することで、表2、表4、表6に示す通りに実施例1~4、比較例1、参考例A~Cの発泡性エアゾール製品を得た。なお、噴射剤の構成は、イソペンタン1.1質量部、LPG4.8質量部、及び二酸化炭素1.2質量部とした。
【0049】
(吐出後の泡の状態(泡立て前)の評価)
吐出後の泡の状態(泡立て前)の評価は、以下の評価方法及び評価基準で行った。
【0050】
(評価方法)
実施例1~4、比較例1、参考例A~Cの各発泡性エアゾール製品から内容物を3g吐出させて、吐出された泡状の吐出物を基準と比較することにより吐出後の泡の状態(泡の量の多さ(泡全体の大きさ))を目視評価した。各評価結果は、日常的に評価を行うパネラー3名による合議で得た。
【0051】
(評価基準)
○ :基準と比較して、泡の量が多い。
- :基準と比較して、泡の量が同等。
× :基準と比較して、泡の量が少ない。
【0052】
(泡立て後の泡量、泡立て後の泡質の評価)
泡立て後の泡量、泡立て後の泡質の各評価は、以下の評価方法及び評価基準で行った。
【0053】
無作為に選定した肩よりも長い毛髪を有する日本人女性に対して、頭髪を温水ですすいだ後、女性の頭部の左半分と右半分の頭髪に異なる発泡性エアゾール製品の吐出物を塗布した。具体的には、一方の濡れた頭髪に基準とした発泡性エアゾール製品(実施例1又は比較例1)から吐出された泡状の吐出物3gを塗布し、もう一方の濡れた頭髪に評価を行った実施例1~4、比較例1、参考例A~Cの発泡性エアゾール製品から吐出された泡状の吐出物3gを塗布し、基準と評価対象の泡状の吐出物が混ざり合わないようにして、約2分間指により泡立てを行った。泡立て終了後に、左右の頭髪に存在する泡の量と泡質をそれぞれ目視評価した(「泡立て後の泡量」及び「泡立て後の泡質」の評価)。各評価結果は、日常的に評価を行うパネラー3名による合議で得た。
【0054】
(評価基準)
泡立て後の泡量、泡立て後の泡質の評価基準を下記に示す。
【0055】
泡立て後の泡量
○ :基準と比較して、泡の量が多い。
- :基準と比較して、泡の量が同等。
× :基準と比較して、泡の量が少ない。
【0056】
泡立て後の泡質
○ :基準と比較して、泡のクリーミーさ(細かい泡の多さ)に優れる。
- :基準と比較して、泡のクリーミーさ(細かい泡の多さ)が同等。
× :基準と比較して、泡のクリーミーさ(細かい泡の多さ)に劣る。
【0057】
(泡持ちの評価)
泡持ちの評価は、以下の評価方法及び評価基準で行った。
【0058】
(評価方法)
染毛処理が施され、毛先にダメージを受けている同一人物の日本人毛髪から、長さ45cm重さ7.5gの毛束を複数作成した。上記毛束を温水で約5秒すすいだ後、濡れた各毛束に対して、実施例1~4、比較例1、参考例A~Cの発泡性エアゾール製品から吐出された泡状の吐出物0.5gを毛束に塗布し、毛束に30秒間指により泡立てた。泡立て後、2分間放置したのち、毛束に残存する泡をこそぎとって50mLまたは200mLのメスシリンダーに全量移し、メスシリンダーに移した泡を下記の評価基準に従って評価した。なお、評価は日常的に評価を行うパネラー1名で行った。
【0059】
(評価基準)
○ :基準と比較して、メスシリンダーに移した泡の量が多い。
同等:基準と比較して、メスシリンダーに移した泡の量が同等。
× :基準と比較して、メスシリンダーに移した泡の量が少ない。
【0060】
【0061】
【0062】
上記実施例1は、比較例1を基準とした場合に、泡立て後の泡量、泡質、及び泡持ちにおいて優れていることが確認された。特に、実施例1では、原液に配合された両性界面活性剤とアニオン界面活性剤の合計量が比較例1よりも少なく、頭皮への刺激が小さく抑えられているにもかかわらず、泡立て後の泡量、泡質、及び泡持ちにおいて比較例1よりも優れていた。
なお、施術中において、比較例1では毛髪上の泡の量が減っていく様子が確認されたが、実施例1では毛髪上の泡の量が維持乃至増える様子が確認された。
【0063】
【0064】
【0065】
上記実施例2-3によれば、原液に炭(体積平均粒子径50μm以下の備長炭)を配合させた場合においても、実施例1と同等に、泡立て後の泡量、泡質、及び泡持ちにおいて優れていることが確認された。
なお、実施例4によれば、原液における炭の配合量が多い場合には、泡立て後の泡質において優れるが、泡立て後の泡量及び泡持ちは劣る結果となった。ただし、実施例4は、比較例1と比べて、泡立て後の泡質だけでなく、泡立て後の泡量及び泡持ちにおいても優れていることが確認された(表には不掲載)。
【0066】
【0067】
【0068】
上記参考例A~Cでは、比較例1に対して、両性界面活性剤とアニオン界面活性剤の合計配合量を同一としつつ(両性界面活性剤はいずれも無配合であるため、アニオン界面活性剤の合計配合量を同一としつつ)、アニオン界面活性剤の種類を変えたものを検証したが、いずれも、泡立て後の泡質及び泡量において比較例1よりも劣ることが確認された。