(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電極用造粒粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20230406BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230406BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230406BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2019020668
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩
(72)【発明者】
【氏名】依田 和之
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 智裕
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 祐一郎
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230747(JP,A)
【文献】特開2015-026432(JP,A)
【文献】特開2005-056714(JP,A)
【文献】特開2013-017923(JP,A)
【文献】特開2000-195512(JP,A)
【文献】特開2017-117582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質
、電解液および導電助剤を含む電極用造粒粒子であり、前記造粒粒子に含まれる固形分の質量割合が造粒粒子全体の質量に基づいて70質量%以上であり、前記造粒粒子の体積平均粒子径D50が310μm以下であり、前記造粒粒子からなる粉体の安息角が
46.1~51°である、電極用造粒粒子。
【請求項2】
電極用造粒粒子の固形分の合計質量に対して、前記導電助剤を0.01~10質量%で含む、請求項1に記載の電極用造粒粒子。
【請求項3】
電極用造粒粒子の合計質量に対して、前記電解液の含有量が0.01~10質量%である、請求項
1または2に記載の電極用造粒粒子。
【請求項4】
粘着剤をさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の電極用造粒粒子。
【請求項5】
電極用造粒粒子の固形分の合計質量に対して、前記粘着剤を0.01~10質量%で含む、請求項
4に記載の電極用造粒粒子。
【請求項6】
原料を収容した状態で中心軸を中心に回転する回転容器と、
前記回転容器内に収容され、前記回転容器の中心軸と異なる位置に配置された中心軸を中心に回転する撹拌羽と、
を有する撹拌装置を用いて造粒粒子を作製することを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の電池用造粒粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の電極用造粒粒子を含む、電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用造粒粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。
【0003】
電池用電極の製造方法として、例えば、粉体状態の電極材料を用いて電極を製造する方法が知られている。例えば、下記特許文献1には、電極材料として電極活物質および導電助剤を含む造粒粒子を用い、造粒粒子を集電体の上に供給して堆積させる電池用電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者ら、上記特許文献1に開示されているような粉体状態の造粒粒子を用いて検討を進めたところ、当該造粒粒子の抵抗値について依然として改善の余地があることが判明した。電極活物質および導電助剤を含む造粒粒子または造粒粒子間の抵抗値を低減することができれば、当該造粒粒子を用いて作製される電極や電池の内部抵抗値を低減することも期待されることから、好ましい。
【0006】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極活物質および導電助剤を含む造粒粒子の抵抗値を低減させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電極用造粒粒子は、電極活物質および導電助剤を含む固形分を70質量%以上で含有するものである。そして、当該造粒粒子は、体積平均粒子径D50が310μm以下であり、安息角が35~51°である点に特徴がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電極用造粒粒子によれば、内部抵抗値が低い電極を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池の全体構造の概略を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る造粒粒子を製造するための撹拌装置の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、以下では、便宜上本発明に係る電池の説明をした後、本発明に係る電池用電極の製造方法について詳説する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
<電池>
本発明の実施形態に係る電池の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明する。ここで、双極型リチウムイオン二次電池とは、双極型電極を含み、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、以下の説明では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「電池」と称する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池10を模式的に表した断面図である。電池10は、外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、
図1に示すように、実際に充放電反応が進行する発電要素が外装体12の内部に封止された構造とするのが好ましい。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の電池10の発電要素は、複数の単セル20が積層されてなる積層体11である。以下、発電要素のことを「積層体11」とも称する。なお、単セル20の積層回数は、所望する電圧に応じて調節することが好ましい。
【0014】
図1に示すように、正極30aおよび負極30bは、集電体31の一方の面に電気的に結合した正極活物質層32aが形成され、集電体31の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層32bが形成された双極型電極35を構成する。
【0015】
なお、
図1では、集電体31は、正極集電体31aおよび負極集電体31bを組み合わせた積層構造(2層構造)として図示しているが、単独の材料からなる単層構造であってもよい。
【0016】
さらに、
図1に示す電池10では、正極側の正極集電体31aに隣接するように正極集電板(正極タブ)34aが配置され、これが延長されて外装体12から導出している。一方、負極側の負極集電体31bに隣接するように負極集電板(負極タブ)34bが配置され、同様にこれが延長されて外装体12から導出している。
【0017】
[集電体]
集電体31(隣接する正極集電体31aおよび負極集電体31b)は、正極活物質層32aと接する一方の面から、負極活物質層32bと接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体31を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、導電性を有する樹脂や、金属が用いられうる。
【0018】
集電体31の軽量化の観点からは、集電体31は、導電性を有する樹脂によって形成された樹脂集電体であることが好ましい。なお、単セル20間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0019】
具体的には、樹脂集電体の構成材料である導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0020】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0021】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0022】
導電性フィラーの添加量は、集電体31に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、好ましくは、5~35質量%程度であり、より好ましくは10~30質量%であり、さらに好ましくは15~20質量%である。
【0023】
また、集電体31が金属によって形成される場合は、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属のめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体31へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0024】
[電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)]
電極活物質層(正極活物質層32a、負極活物質層32b)32は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)および導電助剤を含む電極用造粒粒子を有する。前記電極用造粒粒子は、必要に応じて、電解液および/または粘着剤をさらに含んでもよい。また、電極活物質層32は、必要に応じて、イオン伝導性ポリマー等を含んでもよい。
【0025】
(電極用造粒粒子)
本発明に係る電極用造粒粒子(単に「造粒粒子」とも称する)は、電極活物質および導電助剤を含む固形分を70質量%以上で含有し、体積平均粒子径D50が310μm以下であり、安息角が35~51°である。造粒粒子は、電極活物質および導電助剤を必須に含む粉体状態の造粒粒子であり、液体成分(好ましくは電解液)および粘着剤をさらに含んでもよい。
【0026】
なお、本明細書において、「粉体状態」とは、系に存在する成分が実質的に固体の性質を示す造粒粒子の集合体であって、当該集合体は、造粒粒子単体および複数の造粒粒子が凝集した凝集体の少なくとも一方を含むものと定義する。例えば、液体成分が比較的多量に存在することで系が溶液状態やスラリー状態となっている場合は「粉体状態」ではない。この定義を満たす限り、造粒粒子は電解液等の液体成分を含有してもよい。特に、粒子径を調整し易いという観点から、造粒粒子は電解液等の液体成分(好ましくは、電解液)を含有することが好ましい。この際の液体成分の含有量については、「粉体状態」が保たれる限り特に制限はないが、造粒粒子100質量%に対して好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0.01~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%であり、特に好ましくは0.1~3質量%である。なお、これに対応して、電極用造粒粒子に含まれる固形分の量は、造粒粒子100質量%に対して好ましくは90~100質量%であり、より好ましくは92~99.99質量%であり、さらに好ましくは95~99.9質量%であり、特に好ましくは97~99.9質量%である。また、本明細書において、固形分とは、造粒粒子から電解液に含まれる溶媒等の常温又は必要により加熱することで揮発する成分を除いた成分をいい、粒子径を調節するため用いる後述する粘着剤(バインダ)を含む。
【0027】
本発明に係る造粒粒子の体積平均粒子径D50(単に「D50」とも称する)は、310μm以下である。このD50の値としては、後述する実施例の欄に記載の手法によって測定された値を採用するものとする。D50は、300μm以下であることが好ましく、より好ましくは280μm以下であり、さらに好ましくは240μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下であり、特に好ましくは180μm以下である。造粒粒子の粒子径が大き過ぎると、粒子間の隙間が大きくなり、抵抗値が上がってしまう原因になると考えられる。また、D50の下限として特に制限されないが、造粒粒子の粒子径が小さ過ぎると流動性が悪くなり、電極作製の際に電極の成形が困難となる。上記の観点から、造粒粒子の粒子径は、好ましくは43μm以上であり、より好ましくは45μm以上であり、さらに好ましくは50μm以上である。
【0028】
造粒粒子の体積平均粒子径D50は、JISZ8815-1994 ふるい分け試験方法通則に記載の方法に準じて行う下記の実施例に記載した方法で測定される。
【0029】
本発明に係る造粒粒子の安息角は、35~51°である。安息角は、50°以下であることが好ましく、より好ましくは48°以下であり、さらに好ましくは46°以下である。造粒粒子の安息角が大き過ぎると、流動性が低下し、電極作製の際に電極の成形が困難となる。また、造粒粒子の安息角は、好ましくは36°以上であり、より好ましくは40°以上であり、さらに好ましくは44°以上である。造粒粒子の安息角が小さ過ぎると、抵抗値が上がってしまう原因になると考えられる。
【0030】
なお、本発明において、安息角とは造粒粒子を積み上げたときに自発的に、崩れることなく安定を保つ斜面の最大角度を指す。また、安息角の測定は、JIS R9301-2-2の方法を用いて行うものとする。
【0031】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0032】
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、(メタ)アクリレート系共重合体等の被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
【0033】
(導電助剤)
導電助剤は、電子伝導パスを形成し、電極活物質層32の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。
【0034】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0035】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。また、導電助剤が繊維状である場合のアスペクト比は、300以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、90以下であることがさらに好ましい。導電助剤が繊維状である場合の平均繊維径は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。導電助剤が繊維状である場合の平均繊維長は、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、導電助剤の「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。繊維状導電助剤の繊維径および繊維長は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて実測した数~数十個の繊維径の平均値とすることができる。
【0037】
電極用造粒粒子における導電助剤の含有量は特に制限されないが、電極用造粒粒子の固形分の全質量に対して、導電助剤を0.01~10質量%含むことが好ましく、0.1~8質量%含むことがより好ましく、1~6質量%含むことがさらに好ましい。このような範囲であれば、電極活物質層32中で導電助剤が電子伝導パスを良好に形成することができる。
【0038】
(電解液)
本発明に係る造粒粒子は、粒子径を調節するために電解液をさらに含んでもよい。電解液の含有量が多くなると、造粒粒子の粒子径が大きくなる傾向が見られる。電解液の含有量については、「粉体状態」が保たれる限り特に制限はないが、造粒粒子100質量%に対して好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%であり、特に好ましくは0.1~3質量%である。
【0039】
電解液は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。本発明の電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6LiClO4、Li[(FSO2)2N](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、およびLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。なお、電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1~3.0Mであることが好ましく、0.8~2.2Mであることがより好ましい。また、添加剤を使用する場合の使用量は、添加剤を添加する前の電解液100質量%に対して、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0040】
添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1-メチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-1-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
(粘着剤)
本発明に係る造粒粒子は、粒子径を調節するために固形分として粘着剤(バインダ)をさらに含んでもよい。粘着剤の含有量を多くすると、造粒粒子の粒子径が大きくなる傾向が見られる。
【0042】
粘着剤としては、例えば、ポリシック(登録商標)シリーズ等の(メタ)アクリル酸エステル系感圧接着剤が挙げられる。造粒粒子中の前記粘着剤の含有量は、造粒粒子の固形分の合計質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~8質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%であり、特に好ましくは0.1~3質量%である。
【0043】
(イオン伝導性ポリマー)
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系及びポリプロピレンオキシド(PPO)系の公知のポリオキシアルキレンオキサイドポリマーが挙げられる。
【0044】
上述した電極用造粒粒子の製造方法については、上述した特徴を有する造粒粒子を得る工程(造粒工程)を含む方法であれば特に制限はない。以下、造粒粒子の好ましい製造方法の一例について、簡単に説明する。
【0045】
[造粒工程]
造粒工程では、電極活物質および導電助剤を含む原料を撹拌装置を用いて混合して粉体状態の造粒粒子を製造する。
【0046】
図2は、撹拌装置の一例を示す概略断面図である。
図2に示す撹拌装置100は、造粒粒子を収容した状態で中心軸O1を中心に回転する回転容器110と、回転容器110内に収容され、中心軸O1と異なる位置に配置された中心軸O2を中心に回転する撹拌羽120と、を有する。撹拌羽120は、中心軸O2に沿って延在するシャフト121に取付けられる。撹拌装置100は、撹拌羽120の回転運動の中心軸O2を回転容器110の回転運動の中心軸O1から偏心させることによって、
図2中に矢印Fで示すように乱流を発生させることができる。これにより、撹拌装置100の撹拌効果を向上させることができる。すなわち、本発明の他の形態によれば、
図2に示すような攪拌装置を用いて行われる造粒工程を含む電池用造粒粒子の製造方法が提供される。具体的に、当該製造方法は、原料を収容した状態で中心軸を中心に回転する回転容器と、前記回転容器内に収容され、前記回転容器の中心軸と異なる位置に配置された中心軸を中心に回転する撹拌羽とを有する撹拌装置を用いて、電極活物質および導電助剤を含む固形分を造粒することを含む。
【0047】
なお、撹拌装置の構成は、電極活物質および導電助剤を含む粉体の混合処理を行うことができる限りにおいて、
図2に示す撹拌装置100に限定されず、公知の撹拌装置(ミキサー)を用いることができる。
【0048】
造粒工程は、電極活物質および導電助剤を撹拌装置の回転容器内に投入し、撹拌して粉体状態の造粒粒子(以下、「第1造粒粒子」とも称する)を製造する工程(以下、「第1造粒工程」とも称する)を有しうる。また、造粒工程は、電極活物質、導電助剤および液体成分(好ましくは電解液)を撹拌装置の回転容器内に投入し、撹拌して粉体状態の造粒粒子(以下、「第2造粒粒子」とも称する)を製造する工程(以下、「第2造粒工程」とも称する)を有してもよい。さらに、造粒工程は、電極活物質、導電助剤、液体成分(好ましくは電解液)および粘着剤を撹拌装置の回転容器内に投入し、撹拌して粉体状態の造粒粒子(以下、「第3造粒粒子」とも称する)を製造する造粒工程(以下、「第3造粒工程」とも称する)を有していてもよい。なお、第1造粒工程、第2造粒工程および第3造粒工程は、各々異なる造粒粒子(第1造粒粒子、第2造粒粒子、第3造粒粒子)を製造する単独の造粒工程としていずれかの工程のみを行うことができる。以下では、それぞれの造粒工程について、簡単に説明する。
【0049】
(第1造粒工程)
第1造粒工程では、電極活物質および導電助剤を撹拌装置100の回転容器110内に投入し、撹拌して粉体状態の第1造粒粒子を製造する。第1造粒工程では、乾式の混合処理を行う。混合処理の処理条件は、電極活物質および導電助剤を均一に混合し、電極に成形しやすい粒子径および流動性を有するように決定する。
【0050】
混合処理の処理条件としては、撹拌速度、撹拌時間、撹拌温度などが挙げられる。撹拌速度とは、撹拌装置100の撹拌羽120の周速である。ここで、「周速」とは、回転体である撹拌羽120の最外周位置(最大半径位置)における速度であり、単位時間あたりの回転数をn、最大半径をr、とすると撹拌羽120の周速=2πnrと表すことができる。周速は、回転容器110の大きさや形状、撹拌羽120の形状や数や配置などの装置条件によって、造粒粒子を破壊することなく造粒できる程度のせん断エネルギーを発生させることができる値に適宜設定されうる。周速は、特に限定されないが、好ましくは1~100m/sであり、より好ましくは10~50m/sであり、さらに好ましくは15~30m/sであり、特に好ましくは17~25m/sである。また、周速が速くなると、造粒粒子の粒子径が小さくなる傾向が見られる。周速を前記範囲内で含有すれば、粘着剤や電解液の含有量等の条件と組み合わせて、適切な粒子径を有する造粒粒子が得られる。
【0051】
撹拌時間は、電極活物質および導電助剤を造粒できる程度に十分な時間に適宜設定されうる。撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは1~20分であり、より好ましくは1~10分であり、さらに好ましくは3~8分であり、特に好ましくは5~7分である。撹拌時間は、連続して一回で撹拌してもよく、数回に分けて合計として前記撹拌時間で撹拌してもよい。また、撹拌温度についても特に限定されないが、例えば、10~25℃に設定することができる。
【0052】
(第2造粒工程)
第2造粒工程では、撹拌装置100の回転容器110内で、電極活物質、導電助剤および液体成分(好ましくは電解液)を撹拌して粉体状態の第2造粒粒子を製造する。第2造粒工程では、液体成分を用いるため、湿式の混合処理を行う。
【0053】
第2造粒工程では、第1造粒工程によって造粒された第1造粒粒子に液体成分を加えて混合処理を行ってもよいし、混合処理前の電極活物質、導電助剤および液体成分を同時に混合処理してもよい。
【0054】
混合処理の処理条件は、電極活物質、導電助剤および液体成分を均一に混合し、電極に成形しやすい粒子径および流動性を有するように決定する。撹拌速度(周速)は、特に限定されないが、好ましくは1~100m/sであり、より好ましくは5~50m/sであり、さらに好ましくは10~30m/sであり、特に好ましくは10~20m/sである。また、周速が速くなると、造粒粒子の粒子径が小さくなる傾向が見られる。周速を前記範囲内で含有すれば、粘着剤や電解液の含有量等の条件と組み合わせて、適切な粒子径を有する造粒粒子が得られる。
【0055】
撹拌時間は、電極活物質、導電助剤および液体成分を造粒できる程度に十分な時間に適宜設定されうる。撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは1~20分であり、より好ましくは1~10分であり、さらに好ましくは3~8分であり、特に好ましくは5~7分である。撹拌時間は、連続して一回で撹拌してもよく、数回に分けて合計として前記撹拌時間で撹拌してもよい。また、撹拌温度についても特に限定されないが、例えば、10~25℃に設定することができる。
【0056】
(第3造粒工程)
第3造粒工程では、撹拌装置100の回転容器110内で、電極活物質、導電助剤、液体成分(好ましくは電解液)および粘着剤を撹拌して粉体状態の第3造粒粒子を製造する。第3造粒工程では、液体成分を用いるため、湿式の混合処理を行う。第3造粒工程では、粘着剤を溶媒となる液体成分によって希釈した状態で混合処理し、混合処理後に液体成分を乾燥させてもよい。
【0057】
第3造粒工程では、第2造粒工程によって造粒された第2造粒粒子に粘着剤を加えて混合処理を行ってもよいし、第1造粒工程によって造粒された第1造粒粒子に液体成分および粘着剤を加えて混合処理を行ってもよい。あるいは、混合処理前の電極活物質、導電助剤、液体成分および粘着剤を同時に混合処理してもよい。
【0058】
混合処理の処理条件は、電極活物質、導電助剤および液体成分を均一に混合し、電極に成形しやすい粒子径および流動性を有するように決定する。撹拌速度(周速)は、特に限定されないが、好ましくは1~100m/sであり、より好ましくは5~50m/sであり、さらに好ましくは10~30m/sであり、特に好ましくは10~20m/sである。また、周速が速くなると、最終的に得られた造粒粒子の粒子径が小さくなる傾向が見られる。周速を前記範囲内で含有すれば、粘着剤や電解液の含有量等の条件と組み合わせて、適切な粒子径を有する造粒粒子が得られる。
【0059】
混合処理では、一度に継続して撹拌を行ってもよいし、撹拌を一旦停止する休止時間を設けて断続的に行ってもよい。撹拌時間は、電極活物質、導電助剤および液体成分を造粒できる程度に十分な時間に適宜設定されうる。撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは3~60分であり、より好ましくは5~30分であり、さらに好ましくは10~15分であり、特に好ましくは15分である。撹拌時間は、連続して一回で撹拌してもよく、数回に分けて合計として前記撹拌時間で撹拌してもよい。
【0060】
また、撹拌温度についても特に限定されないが、例えば、10~25℃に設定することができる。混合処理後に液体成分を乾燥させる場合は、乾燥温度は、例えば、40~70℃、乾燥時間は、例えば、90~140分とすることができる。
【0061】
上述した造粒粒子は、電極を製造するための原料として用いられうる。すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上述した一形態に係る電極用造粒粒子を含む電極が提供され得る。本形態に係る電極の製造方法は特に制限されず、上述した造粒粒子を含む電極活物質層を、集電体の少なくとも一方の面に形成することができる製造方法が適宜採用されうる。一例として、電極の製造方法は、上述した電極用造粒粒子を集電体の表面に供給する工程(供給工程)と、集電体の表面に供給された造粒粒子を厚み方向に加圧する工程(プレス工程)とを含む。
【0062】
[供給工程]
供給工程では、上記で得られた造粒粒子を集電体31の表面に供給する。具体的には、例えば、パーツフィーダーを用いて、パーツフィーダーに対して相対的に移動する集電体31の表面に造粒粒子を定量供給する。ここで、「定量供給」とは、単位時間あたりの供給量がほぼ同じであることを意味する。造粒粒子は集電体31に対して連続的に供給してもよいし、断続的に供給してもよい。集電体31は、コンベア等の搬送装置によって搬送される。パーツフィーダーの供給速度や集電体31の搬送速度は、粒粒子の流動性や要求される電極活物質層の厚み等を考慮して、造粒粒子を集電体31の表面に均一な密度(厚さおよび量)で堆積させることができるように調整する。供給工程を実施するためのパーツフィーダーについては特に制限はなく、従来公知のパーツフィーダーが適宜用いられうる。
【0063】
なお、パーツフィーダーと集電体31との間にふるい等を介して供給される造粒粒子の粒径を選別してもよい。造粒粒子の粒径を選別することによって、造粒粒子同士が凝集した凝集体や粒子径が過度に大きい造粒粒子を排除して、より均一な粒子径の造粒粒子を供給することができる。
【0064】
また、スキージーや回転するローラ等によって厚みが一定となるように集電体31に供給された造粒粒子の表面を均していてもよい。
【0065】
[プレス工程]
プレス工程では、集電体31の表面に供給された造粒粒子を厚み方向に加圧して電極を作製する。集電体31の表面に堆積した造粒粒子を加圧することによって、緻密化させて厚みをより均一にすることができる。プレス工程を実施するためのプレス装置については、特に制限はなく、従来公知のプレス装置が適宜用いられうる。例えば、加圧ローラーを備えるロールプレス装置や、加圧面を備える面プレス装置などが挙げられる。集電体31の搬送(移動)を妨げずに加圧する観点からは、ロールプレス装置を用いることが好ましい。プレスの際に造粒粒子にかかる単位面積あたりの圧力は、特に制限されないが、好ましくは0.01~40MPaであり、より好ましくは1~30MPaであり、さらに好ましくは10~20MPaである。圧力が上記範囲であると、上述した好ましい実施形態に係る電極活物質層の空隙率や密度を容易に実現することができる。
【0066】
<電極以外の構成要素>
以上、本発明の好ましい実施形態に係る双極型二次電池の構成要素のうち、集電体並びに電極活物質層について詳細に説明したが、その他の構成要素については、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0067】
[電解質層]
電解質層40は、セパレータに電解質が保持されてなる層であり、正極活物質層32aと負極活物質層32bとの間にあって両者が直接に接触することを防止する。本実施形態の電解質層40に使用される電解質は、特に制限はなく、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質などが挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。
【0068】
電解液は、前述した造粒粒子に含まれてもよい電解液と同様のものを使用してもよい。
【0069】
セパレータは、電解質を保持して正極30aと負極30bとの間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極30aと負極30bとの間の隔壁としての機能を有する。
【0070】
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0071】
[正極集電板および負極集電板]
集電板34a、34bを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板34a、34bの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板34aと負極集電板34bとでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0072】
[シール部]
シール部50は、集電体31同士の接触や単セル20の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部50を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐食性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
【0073】
[外装体]
図1に示す本実施形態では、外装体12は、ラミネートフィルムによって袋状に構成されているが、これに限定されず、例えば、公知の金属缶ケースなどを用いてもよい。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点からは、外装体12は、ラミネートフィルムによって構成することが好ましい。ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。また、外部から掛かる積層体11への群圧を容易に調整することができ、所望の電解質層40の厚みへと調整容易であることから、外装体12はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0074】
本発明の実施形態に係る電池の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明したが、本発明を適用する電池は双極型リチウムイオン二次電池に制限されない。例えば、本発明は、発電要素において電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。その中でも、本発明に係る電池は、非水電解質二次電池であることが好ましく、リチウムイオン二次電池であることがより好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、「部」は特に断りのない限り、「質量部」を意味する。
【0076】
実施例1
[正極用造粒粒子1の作製]
撹拌装置(日本アイリッヒ株式会社製、アイリッヒインテンシブミキサー、特開2013-017923号公報参照)の撹拌槽内に、正極活物質としてのリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(NCA複合酸化物)(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)98.0部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)(デンカ株式会社製 デンカブラック(登録商標)、平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)1.0部と、導電助剤としてのカーボンナノファイバー(CNF)(昭和電工株式会社製、VGCF(登録商標)、アスペクト比60、平均繊維径:約150nm、平均繊維長:約9μm、電気抵抗率40μΩm、嵩密度0.04g/cm3)1.0部と、を投入し、室温、撹拌速度20m/sで、7分間、撹拌を行った。この撹拌により、正極用造粒粒子1を作製した。
【0077】
[正極用造粒粒子1の評価:安息角の測定]
JIS R9301-2-2の方法を用いて、正極用造粒粒子1の安息角を測定した。具体的には、ドライルーム内において、正極用造粒粒子1の粉末5gを漏斗に入れて、振動を与えながら受け皿に落下させ、山になった斜面の角度をレーザー変位計で4方向について測定し、角度の平均値を安息角として算出した。その結果を表1に示す。
【0078】
[正極用造粒粒子1の評価:体積平均粒子径(D50)]
正極用造粒粒子1の粉末を3gをロボットシフター(株式会社セイシン企業製)にセットし、音波振動を篩に与え、粉体を分級した。この際、目開きの異なる3つの金属篩網を使用し、3つの金属篩網の目開きはそれぞれ、500μm/425μm/355μm/250μm/200μm/150μm/100μm/63μmである。分級する前後で篩の重量を測定し、投入した粉体の粒度分布を算出した。この粒度分布から算出される体積平均粒子径(D50)の値を表1に示す。
【0079】
[正極用造粒粒子1の評価:直流抵抗値]
内径が15mm、高さが30mmであるポリプロピレン製円筒の内部に、正極用造粒粒子1を30mg入れ、50回タップした。タップ後の正極用造粒粒子1をさらにSUS316製の円柱で両側から挟み、100kNの圧力をかけた。円柱を外し、電気化学測定装置(ソーラトロン社製1280C)を使用して、円柱塊状に成形した正極用造粒粒子1の上下の直流抵抗値[Ω・cm2]を測定し、造粒粒子間の抵抗値を確認した。その結果を表1に示す。
【0080】
[電極作製]
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマー(登録商標)PL500A」、サンアロマー(株)製](B-1)75質量%、アセチレンブラック(AB)(デンカブラック(登録商標)NH-100)20質量%、樹脂集電体用分散剤(A)として変性ポリオレフィン樹脂(三洋化成工業(株)製ユーメックス(登録商標)1001)5質量%を180℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練して樹脂集電体用材料を得た。得られた樹脂集電体用材料を、押し出し成形することで、厚み90μmの樹脂集電体(20%AB-PP)を得た。上記で得られた正極用造粒粒子1を樹脂集電体の表面にパーツフィーダーを用いて定量供給し、次いでプレス処理を施した。具体的には、ロールプレス装置を用いて、樹脂集電体の表面に供給された造粒粒子に対して、厚み方向に単位面積あたりの圧力が15MPaになるようにプレス処理を施した。これにより、正極1を得た。このように、正極用造粒粒子1を用いて電極作製が可能であることが確認された。
【0081】
実施例2
[正極用造粒粒子2の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を17m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子1の作製と同様にして、正極用造粒粒子2を作製した。
【0082】
その後、正極用造粒粒子2に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
実施例3
[正極用造粒粒子3の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を15m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子1の作製と同様にして、正極用造粒粒子3を作製した。
【0084】
その後、正極用造粒粒子3に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
実施例4
[正極用造粒粒子4の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を11m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子1の作製と同様にして、正極用造粒粒子4を作製した。
【0086】
その後、正極用造粒粒子4に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
実施例5
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合溶媒(体積比率1:1)に、Li[(FSO2)2N](LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。
【0088】
[正極用造粒粒子5の作製]
撹拌装置(日本アイリッヒ株式会社製、アイリッヒインテンシブミキサー、特開2013-017923号公報参照)の撹拌槽内に、正極活物質としてのリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(NCA複合酸化物)(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)98.0部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)(デンカ株式会社製 デンカブラック(登録商標)、平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)1.0部と、導電助剤としてのカーボンナノファイバー(CNF)(昭和電工株式会社製、VGCF(登録商標)、アスペクト比60、平均繊維径:約150nm、平均繊維長:約9μm、電気抵抗率40μΩm、嵩密度0.04g/cm3)1.0部と、上記で得た電解液1.01部と、を投入し、室温、撹拌速度17m/sで、7分間、撹拌を行った。この撹拌により、正極用造粒粒子5を作製した。
【0089】
その後、正極用造粒粒子5に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0090】
実施例6
[正極用造粒粒子6の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を15m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子5の製造方法と同様にして、正極用造粒粒子6を作製した。
【0091】
その後、正極用造粒粒子6に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
実施例7
[正極用造粒粒子7の作製]
撹拌装置(日本アイリッヒ株式会社製、アイリッヒインテンシブミキサー、特開2013-017923号公報参照)の撹拌槽内に、正極活物質としてのリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(NCA複合酸化物)(BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社製)92.0部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)(デンカ株式会社製 デンカブラック(登録商標)、平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)3.0部と、導電助剤としてのカーボンナノファイバー(CNF)(昭和電工株式会社製、VGCF(登録商標)、アスペクト比60、平均繊維径:約150nm、平均繊維長:約9μm、電気抵抗率40μΩm、嵩密度0.04g/cm3)3.0部と、粘着剤としてのポリシック(三洋化成工業株式会社製 ポリシック311)2.0部と、上記で得た電解液1.01部と、を投入し、室温、撹拌速度17m/sで、5分間×3回(計15分間)、撹拌を行った。その後、60℃で120分間乾燥させて、正極用造粒粒子7を作製した。
【0093】
その後、正極用造粒粒子7に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0094】
比較例1
[正極用造粒粒子C1の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を15m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子7の作製と同様にして、正極用造粒粒子C1を作製した。
【0095】
その後、正極用造粒粒子C1に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。なお、正極用造粒粒子C1を用いて電極を作製することはできなかった。
【0096】
比較例2
[正極用造粒粒子C2の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を13m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子7の作製と同様にして、正極用造粒粒子C2を作製した。
【0097】
その後、正極用造粒粒子C2に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0098】
比較例3
[正極用造粒粒子C3の作製]
造粒粒子を作製する際の撹拌速度を11m/sに変更したこと以外は、正極用造粒粒子7の作製と同様にして、正極用造粒粒子C3を作製した。
【0099】
その後、正極用造粒粒子C3に対して、実施例1において実施された各測定・評価を行った。その結果を表1に示す。
【0100】
【0101】
実施例1~7の正極用造粒粒子1~7は、極めて小さい直流抵抗値を示し、しかもこれらの造粒粒子を用いた場合には電極の作製が可能であった。これは、各実施例で作製された正極用造粒粒子の安息角および体積平均粒子径(D50)が所定の範囲内の値であることによるものと考えられる。一方、比較例1で作製された正極用造粒粒子C1を用いた場合には、電極を作製することができず、直流抵抗値を測定することもできなかった。これは、粒子径が小さ過ぎて安息角が大き過ぎることに起因して電極が所定の形状に定まらないことによるものと考えられる。また、比較例2~3で作製された正極用造粒粒子C2~C3を用いた場合には、電極の作製は可能であったものの、粒子径が大き過ぎて安息角が小さ過ぎることで、造粒粒子の直流抵抗値が高い値となったことが分かる。
【符号の説明】
【0102】
10 電池、
11 積層体、
12 外装体、
20 単セル、
30 電極、
30a 正極、
30b 負極、
31 集電体、
31a 正極集電体、
31b 負極集電体、
32 電極活物質層、
32a 正極活物質層、
32b 負極活物質層、
40 電解質層、
50 シール部。