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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】船舶および操船支援装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 49/00 20060101AFI20230406BHJP
   B60R 1/00 20220101ALI20230406BHJP
【FI】
B63B49/00 Z
B60R1/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019050974
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020152179
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 宏平
(72)【発明者】
【氏名】安間 寛文
(72)【発明者】
【氏名】木下 嘉理
(72)【発明者】
【氏名】福本 晋平
(72)【発明者】
【氏名】黒川 光章
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066978(JP,A)
【文献】特開2006-044596(JP,A)
【文献】特開2008-009654(JP,A)
【文献】特開2019-009598(JP,A)
【文献】国際公開第2018/178506(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 49/00
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船室を有する船体と、
前記船室内に配置された操船席に位置する操船者が水平方向に向かって船外の方向を視回した場合において、前記操船者の視野が遮られる領域である視野遮蔽領域を撮像する撮像部と、
前記操船席から目視可能な位置に配置され、前記撮像部により撮像された前記視野遮蔽領域の画像である視野補完画像を表示する表示部とを備え
前記船室は、前記船体の左右方向において、前記操船席の前方領域の一部である前記操船席に対応する幅の領域に設けられた前方窓部を含み、
前記表示部は、前記前方窓部の前記左方向側に連続して隣接するように位置する平面状の前記視野遮蔽領域の画像を含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、船舶。
【請求項2】
前記表示部は、前記操船席の近傍に配置されている、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記撮像部は、少なくとも前方の前記視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、
前記表示部は、前記前方の前記視野遮蔽領域の画像を含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記撮像部は、前記前方の前記視野遮蔽領域に加えて、後方の前記視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、
前記表示部は、前記前方の前記視野遮蔽領域の画像と、前記後方の前記視野遮蔽領域の画像とを含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
記視野遮蔽領域は、前記操船席の上方で、かつ、前記前方窓部の鉛直方向の中心点の高さ位置から水平方向に前記船外の方向を視た場合における前記操船者の視野が遮られる領域を含む、請求項3または4に記載の船舶。
【請求項6】
前記視野遮蔽領域は、前記船室の前方ピラー部と、前記船室の後方壁部とにより構成される遮蔽物により遮蔽される領域を含む、請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記視野遮蔽領域内において、平面視における前記操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、90度以上360度以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項8】
前記視野遮蔽領域内において、前記角度範囲の合計は、180度以上360度以下である、請求項7に記載の船舶。
【請求項9】
前記操船席から前方における前記視野遮蔽領域内において、平面視における前記操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項10】
前記操船席から後方における前記視野遮蔽領域内において、平面視における前記操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項11】
前記操船席から左方または右方における前記視野遮蔽領域内において、平面視における前記操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項12】
前記操船席から左方または右方における前記視野遮蔽領域内において、平面視における前記操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、120度以上180度以下である、請求項11に記載の船舶。
【請求項13】
前記表示部は、前記視野遮蔽領域を発生させる遮蔽物に配置されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項14】
前記表示部は、前記表示部が配置されている前記遮蔽物が発生させる前記視野遮蔽領域の画像を含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記表示部は、前記遮蔽物の前記操船席側の面に配置されている、請求項13または14に記載の船舶。
【請求項16】
前記表示部は、前記船室において、前記操船席に位置する前記操船者が少なくとも前方の水平方向に前記船外を視る際に視認可能な位置に配置されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項17】
前記表示部は、前記船室の内周の全周に亘って配置されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
船室内に配置された操船席に位置する操船者が水平方向に向かって船外の方向を視回した場合において、前記操船者の視野が遮られる領域である視野遮蔽領域を撮像する撮像部と、
前記操船席から目視可能な位置に配置され、前記撮像部により撮像された前記視野遮蔽領域の画像である視野補完画像を表示する表示部とを備え
前記船室は、船体の左右方向において、前記操船席の前方領域の一部である前記操船席に対応する幅の領域に設けられた前方窓部を含み、
前記表示部は、前記前方窓部の前記左方向側に連続して隣接するように位置する平面状の前記視野遮蔽領域の画像を含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、操船支援装置。
【請求項19】
前記表示部は、前記操船席の近傍に配置されている、請求項18に記載の操船支援装置。
【請求項20】
前記撮像部は、少なくとも前方の前記視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、
前記表示部は、前記前方の前記視野遮蔽領域の画像を含む前記視野補完画像を表示するように構成されている、請求項18または19に記載の操船支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶および操船支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操船席が設けられた船舶が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船体にキャビン(船室)が形成された小型船舶が開示されている。この小型船舶では、キャビンの上側に操縦席が配置されている。そして、操縦席の上部には、キャビンに対して複数の支柱により支持されたオーニング(日よけ)が設けられている。そして、この小型船舶は、小型船舶が航走することにより、操縦席とオーニングとの上下方向の間を風が通過するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-69271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の小型船舶では、操縦席とオーニングとの上下方向の間を風が通過するので、操縦席に位置する操船者に風(降雨時には雨)が当たる場合があると考えられる。また、上記特許文献1に記載の小型船舶を冬に使用する場合、外気の温度が比較的低くなるため、操縦席近傍で風が通過することにより、操縦席近傍の気温が比較的低くなると考えられる。
【0006】
そこで、操船者に風が当たるのを抑制するとともに、操縦席近傍の気温をより適切な温度に維持するために、キャビン(船室)内に、操縦席を配置することが考えられる。しかしながら、船室に操縦席を設ける場合、操縦席に位置する操船者が船外の方向を視た場合、船室を構成する構造部材により、操船者の視野の一部が遮られてしまうと考えられる。したがって、操縦席(操船席)を船室に配置した場合にも、操船者が頭や体を動かすことなく、船外に対する視認性を向上させることが可能な船舶および操船支援装置が望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、操船席を船室に配置した場合にも、操船者の船外に対する視認性を向上させることが可能な船舶および操船支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の第1の局面による船舶は、船室を有する船体と、船室内に配置された操船席に位置する操船者が水平方向に向かって船外の方向を視回した場合において、操船者の視野が遮られる領域である視野遮蔽領域を撮像する撮像部と、操船席から目視可能な位置に配置され、撮像部により撮像された視野遮蔽領域の画像である視野補完画像を表示する表示部とを備え、船室は、船体の左右方向において、操船席の前方領域の一部である操船席に対応する幅の領域に設けられた前方窓部を含み、表示部は、前方窓部の左方向側に連続して隣接するように位置する平面状の視野遮蔽領域の画像を含む視野補完画像を表示するように構成されている
【0009】
この発明の第1の局面による船舶では、上記のように、視野遮蔽領域を撮像する撮像部と、操船席から目視可能な位置に配置され、視野遮蔽領域の画像である視野補完画像を表示する表示部とを備える。これにより、船室内に配置された操船席に位置する操船者に対して、視野遮蔽領域の画像を視認させることができるので、操船者の視野を補完することができる。この結果、操船席を船室に配置した場合にも、船室および船室内の部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。また、本発明では、操船席が船室に配置されるので、操船者に風が当たるのを抑制することができるとともに、操縦席近傍の気温を容易に適切な温度に維持することができる。
【0010】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、表示部は、操船席の近傍に配置されている。このように構成すれば、操船席に位置する操船者は、操船席の近傍に配置された表示部を容易に視認することができる。なお、「操船席の近傍」とは、船室内で、かつ、操船席から目視可能な位置を意味するものとする。
【0011】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、撮像部は、少なくとも前方の視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、表示部は、前方の視野遮蔽領域の画像を含む視野補完画像を表示するように構成されている。このように構成すれば、船舶が前方に航走している際に、操船者の視野を補完することができる。この結果、船室内において操船者が船舶を前進させるように操船している場合(航走時)に、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0012】
この場合、好ましくは、撮像部は、前方の視野遮蔽領域に加えて、後方の視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、表示部は、前方の視野遮蔽領域の画像と、後方の視野遮蔽領域の画像とを含む視野補完画像を表示するように構成されている。このように構成すれば、船体よりも前方だけでなく、船体よりも後方についても、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0013】
上記視野補完画像を表示する表示部を備える船舶において、好ましくは、視野遮蔽領域は、操船席の上方で、かつ、前方窓部の鉛直方向の中心点の高さ位置から水平方向に船外の方向を視た場合における操船者の視野が遮られる領域を含む。このように構成すれば、操船席に位置し、かつ、前方窓部を視認している状態の操船者に対して、視野を補完させることができる。この結果、前方に航走時の操船者の操船を効果的に支援することができる。
【0014】
上記窓部が設けられている船室を備える船舶において、好ましくは、視野遮蔽領域は、船室の前方ピラー部と、船室の後方壁部とにより構成される遮蔽物により遮蔽される領域を含む。このように構成すれば、船室を構成する遮蔽物により遮蔽される操船者の視野の領域を補完することができる。この結果、船室内に操船席を設けることにより、船室の構成物により視野遮蔽領域が生じる場合でも、操船者の視野を効果的に補完することができる。
【0015】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、90度以上360度以下である。このように構成すれば、操船席に位置する操船者が水平方向に見渡した場合に、視野遮蔽領域が比較的大きい場合(角度範囲の合計が90度以上の場合)にも、操船者の視野を補完することができる。この結果、視野遮蔽領域が比較的小さい場合(角度範囲の合計が90度未満の場合)に比べて、操船者の操船をより効果的に支援することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、視野遮蔽領域内において、角度範囲の合計は、180度以上360度以下である。このように構成すれば、視野遮蔽領域がより一層大きい場合(角度範囲の合計が180度以上の場合)に、操船者の視野を補完することができる。この結果、操船者の操船をより一層効果的に支援することができる。
【0017】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、操船席から前方における視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である。このように構成すれば、前方における視野遮蔽領域が比較的大きい場合(角度範囲が合計60度以上)でも、船室の前方部分における船室を構成する構造部材および船室内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体よりも前方に対する視認性を向上させることができる。
【0018】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、操船席から後方における視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である。このように構成すれば、後方における視野遮蔽領域が比較的大きい場合(角度範囲が合計60度以上)でも、船室の後方部分における船室を構成する構造部材および船室内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体よりも後方に対する視認性を向上させることができる。
【0019】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、操船席から左方または右方における視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、60度以上180度以下である。このように構成すれば、左方または右方における視野遮蔽領域が比較的大きい場合(角度範囲が合計60度以上)でも、船室の左方部分または右方部分における船室を構成する構造部材および船室内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体よりも左方または右方に対する視認性を向上させることができる。
【0020】
この場合、好ましくは、操船席から左方または右方における視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計は、120度以上180度以下である。このように構成すれば、左方または右方における視野遮蔽領域がさらに大きい場合(角度範囲が合計120度以上)でも、船室の左方部分または右方部分における船室を構成する構造部材および船室内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体よりも左方または右方に対する視認性を向上させることができる。
【0021】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、表示部は、視野遮蔽領域を発生させる遮蔽物に配置されている。このように構成すれば、遮蔽物が配置されている領域を有効に活用することができる。
【0022】
この場合、好ましくは、表示部は、表示部が配置されている遮蔽物が発生させる視野遮蔽領域の画像を含む視野補完画像を表示するように構成されている。このように構成すれば、操船者は、遮蔽物を透視するように視野補完画像を視認することができるので、操船者の船外に対する視認性をより効果的に向上させることができる。
【0023】
上記遮蔽物に表示部が配置されている船舶において、好ましくは、表示部は、遮蔽物の操船席側の面に配置されている。このように構成すれば、遮蔽物に表示部を配置することにより、遮蔽物が配置されている領域を有効に活用しながら、遮蔽物の操船席側の面に表示部を配置することによって、操船席に位置する操船者が表示部をより視認しやすくすることができる。
【0024】
上記第1の局面による船舶において、好ましくは、表示部は、船室において、操船席に位置する操船者が少なくとも前方の水平方向に船外を視る際に視認可能な位置に配置されている。このように構成すれば、前方を見ている状態の操船者に、表示部を視認させることができる。この結果、前方を見ながら操船している操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0025】
この場合、好ましくは、表示部は、船室の内周の全周に亘って配置されている。このように構成すれば、船室の内周の全周に亘って、操船者の視野を補完することができる。すなわち、操船者が船室の内周を、船室の内周の全周に亘って見渡した場合、視野遮蔽領域の全てを表示した画像を操船者に視認させることができる。
【0026】
この発明の第2の局面による操船支援装置は、船室内に配置された操船席に位置する操船者が水平方向に向かって船外の方向を視回した場合において、操船者の視野が遮られる領域である視野遮蔽領域を撮像する撮像部と、操船席から目視可能な位置に配置され、撮像部により撮像された視野遮蔽領域の画像である視野補完画像を表示する表示部とを備え、船室は、船体の左右方向において、操船席の前方領域の一部である操船席に対応する幅の領域に設けられた前方窓部を含み、表示部は、前方窓部の左方向側に連続して隣接するように位置する平面状の視野遮蔽領域の画像を含む視野補完画像を表示するように構成されている
【0027】
この発明の第2の局面による操船支援装置では、上記のように構成することにより、操船席を船室に配置した場合にも、操船者の船外に対する視認性を向上させることが可能な船舶および操船支援装置を提供することができる。
【0028】
上記第2の局面による操船支援装置において、好ましくは、表示部は、操船席の近傍に配置されている。このように構成すれば、操船席に位置する操船者に対して、操船席の近傍に配置された表示部を容易に視認させることができる。
【0029】
上記第2の局面による操船支援装置において、好ましくは、撮像部は、少なくとも前方の視野遮蔽領域を撮像するように構成されており、表示部は、前方の視野遮蔽領域の画像を含む視野補完画像を表示するように構成されている。このように構成すれば、船舶が前方に航走している際に、操船者の視野を補完することができる。この結果、船室内において操船者が船舶を前進させるように操船している場合(航走時)に、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記のように、操船席を船室に配置した場合にも、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態による船舶の構成を示した側面図である。
図2】第1実施形態による船室の内部を前方に見た図である。
図3】第1実施形態による船室の内部を後方に見た図である。
図4】第1実施形態による視野遮蔽領域を説明するための模式図である。
図5】第1実施形態による操船者視点を説明するための模式図である。
図6】第1実施形態による視野遮蔽領域を説明するための平面図である。
図7】第1実施形態による操船支援装置の構成を示すブロック図である。
図8】第1実施形態による表示部の構成を示す図である。
図9】第2実施形態による操船支援装置の構成を示すブロック図である。
図10】第2実施形態による船室の内部を示す図である。
図11参考例による操船支援装置の構成を示すブロック図である。
図12参考例による表示部の配置位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1図8を参照して、第1実施形態による船舶100の構成について説明する。船舶100は、たとえば、小型船舶として構成されている。
【0034】
(船舶の構成)
図1に示すように、第1実施形態による船舶100は、船体1と、推進器2と、操船支援装置3とを含む。船体1には、上部に船室10が設けられている。また、船体1には、船室10の前方に前方デッキ10aが設けられており、船室10の後方に後方デッキ10bが設けられている。図2に示すように、船室10内には、操船席4と、操船席4の近傍に設けられた船舶操作部5とが設けられている。船舶操作部5は、ステアリング操作部5aと、リモートコントローラ5bとを含む。ステアリング操作部5aは、操船席4の前方に配置されたコンソール5cに配置されている。また、前方デッキ10aおよび後方デッキ10bは、特許請求の範囲の「遮蔽物」の一例である。
【0035】
ここで、本願明細書では、「前方」とは、図中の「FWD」により示す方向であり、かつ、船舶100の前進方向(船体1の船首1a側)である。「後方」とは、図中の「BWD」により示す方向であり、かつ、船舶100の後進方向(船体1の船尾1b側)である。また、「左方」とは、図中の「L」により示す方向であり、かつ、船体1の左舷1c(図6参照)側(ポートサイド)方向である。また、「右方」とは、図中の「R」により示す方向であり、かつ、船体1の右舷1d(図6参照)側(スターボード)方向である。また、「鉛直方向」とは、図1中の「Z」により示す方向である。また、「上方」とは、図1中の「Z1」に示す方向であり、「下方」とは、図1中の「Z2」に示す方向である。
【0036】
図2および図3に示すように、船室10は、箱状に形成されている。そして、船室10は、船室10の上面11を支持する一対の前方ピラー12aおよび12bおよび一対の後方ピラー13aおよび13bと、前方壁部14aと、後方壁部14bと、左方壁部14cと、右方壁部14dとを含む。なお、一対の前方ピラー12aおよび12bおよび一対の後方ピラー13aおよび13bと、前方壁部14aと、後方壁部14bと、左方壁部14cと、右方壁部14dとは、特許請求の範囲の「遮蔽物」の一例である。また、前方ピラー12aおよび12bおよび一対の後方ピラー13aおよび13bと、前方壁部14aと、後方壁部14bと、左方壁部14cと、右方壁部14dとを、特に区別しない場合、以下、遮蔽物20として記載する。
【0037】
図2に示すように、前方ピラー12aは、船室10の前方部分でかつ左方部分において、上下方向に延びるように形成されている。また、前方ピラー12bは、船室10の前方部分でかつ右方部分において、上下方向に延びるように形成されている。前方壁部14aは、一対の前方ピラー12aおよび12bの水平方向(左右方向)の間に設けられている。
【0038】
図3に示すように、後方ピラー13aは、船室10の後方部分でかつ左方部分において、上下方向に延びるように形成されている。また、後方ピラー13bは、船室10の後方部分でかつ右方部分において、上下方向に延びるように形成されている。また、後方壁部14bは、一対の後方ピラー13aおよび13bの水平方向(左右方向)の間に設けられている。
【0039】
図4に示すように、左方壁部14cは、前方ピラー12aおよび後方ピラー13aの水平方向(前後方向)の間に設けられている。また、右方壁部14dは、前方ピラー12bおよび後方ピラー13bの水平方向(前後方向)の間に設けられている。また、船室10には、前方窓部15aと、後方窓部15bと、左方窓部15cと、右方窓部15dとが設けられている。また、前方窓部15a、後方窓部15b、左方窓部15c、および、右方窓部15dには、それぞれ、窓ガラスが配置されている。これにより、前方窓部15a、後方窓部15b、左方窓部15c、および、右方窓部15dは、船室10内外の通風を抑制する機能を有するとともに、船体1の外方から船室10に向かって、光を透過させる(船室10内から船体1の外方を視認可能にさせる)機能を有する。なお、図4中のWは、水面である。
【0040】
図2に示すように、前方窓部15aは、一対の前方ピラー12aおよび12bの左右方向の間で、かつ、操船席4よりも前方で、かつ、コンソール5cの上方に設けられている。また、前方窓部15aは、前方壁部14aに左右方向に隣接する位置に設けられている。また、左方窓部15cは、前方ピラー12aおよび後方ピラー13aの水平方向の間で、かつ、操船席4よりも左方に設けられている。また、左方窓部15cは、左方壁部14c(図4参照)に前後方向に隣接する位置に設けられている。また、右方窓部15dは、前方ピラー12bおよび後方ピラー13bの前後方向の間で、かつ、操船席4よりも右方に設けられている。また、右方窓部15dは、右方壁部14d(図4参照)に前後方向に隣接する位置に設けられている。
【0041】
図3に示すように、後方窓部15bは、一対の後方ピラー13aおよび13bの左右方向の間で、かつ、操船席4(図4参照)よりも後方に設けられている。また、後方窓部15bは、後方壁部14bに左右方向に隣接する位置に設けられている。
【0042】
推進器2は、図1に示すように、船尾1bに設けられている。そして、推進器2は、船舶操作部5に対する操船者による操作に基づいて、推進力が変更されるように構成されている。また、船舶100は、船舶操作部5に対する操船者による操作に基づいて、転舵されるように構成されている。
【0043】
船舶操作部5は、推進器2が発生させる推進力の向きを変更させるように構成されている。船舶操作部5には、たとえば、ステアリング操作部と、リモートコントローラと、ジョイスティックとが設けられている。
【0044】
(視野遮蔽領域に関する構成)
図4に示すように、船体1の構造物(遮蔽物20)により、船室10内に配置された操船席4に位置する操船者(操船者視点Q)が水平方向に向かって船体1よりも外方を視回した場合において、操船者の視野が遮られる領域である視野遮蔽領域A(図4のハッチング表示の部分)が生じる。すなわち、視野遮蔽領域Aは、操船者視点Qから見て遮蔽物20よりも外方(遠方)の領域である。ここで、図5に示すように、操船者視点Qとは、船室10内でかつ操船席4の上方でかつ前方窓部15aの上下方向の中心位置C1の高さ位置から水平方向に船体1の外方を視る点である。なお、以下の記載では、視野遮蔽領域Aを単に「領域A」として記載する。
【0045】
具体的には、一対の前方ピラー12aおよび12bと、前方壁部14aとにより、前方視野遮蔽領域A1(以下「領域A1」とする)が生じる。また、一対の後方ピラー13aおよび13bと、後方壁部14bとにより、後方視野遮蔽領域A2(以下「領域A2」とする)が生じる。前方ピラー12aおよび後方ピラー13aと、左方壁部14cとにより、左方視野遮蔽領域A3(以下「領域A3」とする)が生じる。前方ピラー12bおよび後方ピラー13bと、右方壁部14dとにより、右方視野遮蔽領域A4(以下「領域A4」とする)が生じる。ここで、領域A1は、操船者視点Q(操船席4)の前後方向における位置C2よりも前方の領域Aの部分である。また、領域A2は、位置C2よりも後方の領域Aの部分である。また、領域A3は、操船者視点Q(操船席4)の左右方向における位置C3よりも左方の領域Aの部分である。また、領域A4は、位置C3よりも右方の領域Aの部分である。
【0046】
図4に示すように、第1実施形態では、領域A内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ1~θ8の合計は、90度以上360度以下である。すなわち、操船者視点Qを中心として、前方ピラー12aの角度範囲θ1と、前方ピラー12bの角度範囲θ2と、後方ピラー13aの角度範囲θ3と、後方ピラー13bの角度範囲θ4と、前方壁部14aの角度範囲θ5と、後方壁部14bの角度範囲θ6aおよびθ6bと、左方壁部14cの角度範囲θ7と、右方壁部14dの角度範囲θ8との合計は、90度以上360度以下である。好ましくは、角度範囲θ1~θ8の合計は、180度以上360度以下である。
【0047】
また、領域A1内において、角度範囲θ1、θ2、および、θ5の合計は、60度以上180度以下である。また、領域A2内において、角度範囲θ3、θ4、θ6a、θ6b、θ7、および、θ8の合計は、60度以上180度以下である。また、領域A3内において、角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7の合計は、60度以上180度以下である。好ましくは、角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7の合計は、120度以上180度以下である。また、領域A4内において、角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8の合計は、60度以上180度以下である。好ましくは、角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8の合計は、120度以上180度以下である。
【0048】
図5および図6に示すように、操船者視点Qから水平方向よりも下方を視認した場合に、船室10の遮蔽物20、前方デッキ10aおよび後方デッキ10bにより視野が遮蔽される領域を、下方視野遮蔽領域A5(以下、「領域A5」)とする。ここで、「水平方向」とは、水面Wに対して平行な面に沿った方向である。
【0049】
(操船支援装置の構成)
図7に示すように、操船支援装置3は、船室10内の操船席4に位置する操船者の操船を支援する装置として構成されている。具体的には、操船支援装置3は、撮像部6と、画像処理部30と、表示部40と、制御部50とを含む。すなわち、操船支援装置3は、操船者が操船席4に位置しながら船舶操作部5を操作(操船)する際に、撮像部6により撮像された画像を表示部40に表示させることにより、操船者の視野(死角)を補完するための装置である。
【0050】
〈撮像部の構成〉
撮像部6は、領域A(A1~A5)を撮像するように構成されている。また、撮像部6は、領域A1~A5の各々の少なくとも一部を撮像するように構成されている。具体的には、図1に示すように、撮像部6は、船体1に配置されているとともに、船体1から外方に向けて配置されている。そして、撮像部6は、船体1から外方に向かう全方向(角度範囲が360度)を撮像することにより、領域A1~A4を撮像するように構成されている。すなわち、撮像部6は、1つのカメラにより構成されるか、または、複数のカメラが組み合わされて構成された、全方位カメラとして構成されている。また、撮像部6は、船体1の上方から下方に向かって撮像することにより、領域A5を撮像するように構成されている。そして、撮像部6は、撮像した画像P1(領域A1~A5の画像)を画像処理部30に伝達するように構成されている。なお、図1では、撮像部6を船室10の上部に配置されているが、領域Aを撮像可能であれば、船体1のいずれの位置に配置されていてもよい。
【0051】
〈画像処理部の構成〉
画像処理部30は、撮像部6により撮像された領域Aの画像P1に基づいて、表示部40に表示するための視野補完画像P2を生成するように構成されている。なお、撮像された画像P1が表示部40に表示可能な画像である場合、画像P1と視野補完画像P2とは同一であってもよい。また、視野補完画像P2は、船体1の周辺を上方から下方に向かって俯瞰的に表示する鳥瞰画像を含んでいてもよい。
【0052】
たとえば、図8に示すように、画像処理部30は、画像P1に基づいて、前方画像P21(領域A1の画像)、後方画像P22(領域A2の画像)、左方画像P23(領域A3の画像)、右方画像P24(領域A4の画像)、左方と前方との間の左方前方画像P25(領域A1およびA3の画像)、左方と後方との間の左方後方画像P26(領域A2およびA3の画像)、右方と前方との間の右方前方画像P27(領域A1およびA4の画像)、および、右方と後方との間の右方後方画像P28(領域A2およびA4の画像)を生成する。すなわち、視野補完画像P2は、前方画像P21、後方画像P22、左方画像P23、右方画像P24、左方前方画像P25、左方後方画像P26、右方前方画像P27、および、右方後方画像P28を含む。そして、画像処理部30は、制御部50の指令に基づいて、生成した視野補完画像P2を、表示部40に出力するように構成されている。
【0053】
〈表示部の構成〉
表示部40は、操船席4の近傍に配置されている。詳細には、表示部40は、船室10内で、かつ、操船席4から目視可能な位置に配置されている。そして、表示部40は、船室10において、操船席4に位置する操船者が少なくとも前方の水平方向に船体1の外方を視る際に視認可能な位置に配置されている。たとえば、表示部40は、コンソール5cの操船席4側に設けられている。また、表示部40は、第1部分41、第2部分42、第3部分43、第4部分44、第5部分45、第6部分46、第7部分47、および、第8部分48を含む。また、第1部分41、第2部分42、第3部分43、第4部分44、第5部分45、第6部分46、第7部分47、および、第8部分48は、互いに別個のディスプレイとして構成されていてもよいし、第1部分41、第2部分42、第3部分43、第4部分44、第5部分45、第6部分46、第7部分47、および、第8部分48は、単一のディスプレイにおいて、互いに異なる表示領域として構成されていてもよい。
【0054】
たとえば、第1部分41、第2部分42、第3部分43、第4部分44、第5部分45、第6部分46、第7部分47、および、第8部分48は、環状に配置されている。具体的には、表示部40において、上方部分に第1部分41が配置され、下方部分に第2部分42が配置され、左方部分に第3部分43が配置され、右方部分に第4部分44が配置され、上方と左方との間の部分に第5部分45が配置され、下方と左方との間の部分に第6部分46が配置され、上方と右方との間の部分に第7部分47が配置され、下方と右方との間の部分に第8部分48が配置されている。
【0055】
そして、表示部40は、視野補完画像P2を表示するように構成されている。たとえば、表示部40は、前方画像P21、後方画像P22、左方画像P23、右方画像P24、左方前方画像P25、左方後方画像P26、右方前方画像P27、および、右方後方画像P28を同時に表示するように構成されている。具体的には、表示部40は、第1部分41に前方画像P21を表示し、第2部分42に後方画像P22を表示し、第3部分43に左方画像P23を表示し、および、第4部分44に右方画像P24を表示し、第5部分45に左方前方画像P25を表示し、第6部分46に左方後方画像P26を表示し、第7部分47に右方前方画像P27を表示し、第8部分48に右方後方画像P28を表示する。
【0056】
〈制御部の構成〉
制御部50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含む制御処理回路である。そして、制御部50は、操船支援装置3の各部の制御処理を行うように構成されている。また、制御部50は、画像処理部30および表示部40に制御信号を伝達することにより、表示部40に視野補完画像P2を表示させる制御を行うように構成されている。
【0057】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
第1実施形態では、上記のように、船舶100に、領域Aを撮像する撮像部6と、操船席4から目視可能な位置に配置され、領域Aの画像である視野補完画像P2を表示する表示部40とを設ける。これにより、船室10内に配置された操船席4に位置する操船者に対して、領域Aの画像を視認させることができるので、操船者の視野を補完することができる。この結果、操船席4を船室10に配置した場合にも、船室10を構成する構造部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。また、操船席4が船室10に配置されるので、操船者に風が当たるのを抑制することができるとともに、操船席4近傍の気温を容易に適切な温度に維持することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、表示部40を、操船席4の近傍に配置する。これにより、操船席4に位置する操船者は、操船席4の近傍に配置された表示部40を容易に視認することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、撮像部6を、少なくとも領域A1を撮像するように構成する。そして、表示部40を、領域A1の前方画像P21を含む視野補完画像P2を表示するように構成する。これにより、船舶100が前方に航走している際に、操船者の視野を補完することができる。この結果、船室10内において操船者が船舶100を前進させるように操船している場合(航走時)に、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、撮像部6を、領域A1に加えて、領域A2を撮像するように構成する。そして、表示部40を、領域A1の前方画像P21と、領域A2の後方画像P22とを含む視野補完画像P2を表示するように構成する。これにより、船体1よりも前方だけでなく、船体1よりも後方についても、操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、船室10に、操船席4の前方に前方窓部15aを設ける。そして、領域Aは、操船席4の上方で、かつ、前方窓部15aの鉛直方向の中心位置C1の高さ位置から水平方向に船外の方向を視た場合における操船者の視野が遮られる領域(領域A1~A4)を含む。これにより、操船席4に位置し、かつ、前方窓部15aを視認している状態の操船者に対して、視野を補完させることができる。この結果、前方に航走時の操船者の操船を効果的に支援することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、領域Aは、船室10の前方ピラー部12aおよび12bと、船室10の後方壁部14bとにより構成される遮蔽物20により遮蔽される領域(領域A1~A4)を含む。これにより、船室10を構成する遮蔽物20により遮蔽される操船者の視野の領域を補完することができる。この結果、船室10内に操船席4を設けることにより、船室10の構成物により領域Aが生じる場合でも、操船者の視野を効果的に補完することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、領域A内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ1~θ8の合計を、90度以上360度以下とする。これにより、操船席4に位置する操船者が水平方向に見渡した場合に、領域Aが比較的大きい場合(角度範囲θ1~θ8の合計が90度以上の場合)にも、操船者の視野を補完することができる。この結果、領域Aが比較的小さい場合(角度範囲θ1~θ8の合計が90度未満となる場合)に比べて、操船者の操船をより効果的に支援することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、領域A内において、角度範囲θ1~θ8の合計を、180度以上360度以下とする。これにより、領域Aがより一層大きい場合(角度範囲θ1~θ8の合計が180度以上の場合)にも、操船者の視野を補完することができる。この結果、操船者の操船をより一層効果的に支援することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、操船席4から領域A1内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ1、θ2、および、θ5の合計を、60度以上180度以下とする。これにより、領域A1が比較的大きい場合(角度範囲θ1、θ2、および、θ5が合計60度以上の場合)でも、船室10の前方部分における船室10を構成する構造部材(前方ピラー12aおよび12b、前方壁部14aなど)および船室10内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体1よりも前方に対する視認性を向上させることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、操船席4から領域A2内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ3、θ4、θ6a、θ6b、θ7、および、θ8の合計を、60度以上180度以下とする。これにより、領域A2が比較的大きい場合(角度範囲θ3、θ4、θ6a、θ6b、θ7、および、θ8が合計60度以上)でも、船室10の後方部分における船室10を構成する構造部材(後方ピラー13aおよび13b、および、後方壁部14b)および船室10内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体1よりも後方に対する視認性を向上させることができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、操船席4から領域A3(領域A4)内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7(角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8)の合計を、60度以上180度以下とする。これにより、領域A3(領域A4)が比較的大きい場合(角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7(角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8)が合計60度以上)でも、船室10の左方部分または右方部分における船室10を構成する構造部材(左方壁部14c:右方壁部14d)および船室10内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体1よりも左方または右方に対する視認性を向上させることができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、操船席4から領域A3(領域A4)内において、平面視における操船席4を中心とした水平方向の角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7(角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8)の合計を、120度以上180度以下とする。これにより、領域A3(領域A4)がさらに大きい場合(角度範囲θ1、θ3、θ5、θ6a、および、θ7(角度範囲θ2、θ4、θ6b、および、θ8)が合計120度以上)でも、船室10の左方部分または右方部分における船室10を構成する構造部材および船室10内に配置された部材のデザインや形状を大きく変更することなく、操船者の船体1よりも左方または右方に対する視認性を向上させることができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、図9および図10を参照して、本発明の第2実施形態による船舶200の構成について説明する。第2実施形態では、表示部241および242が、領域Aを発生させる遮蔽物20に配置されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0071】
第2実施形態による船舶200は、図9に示すように、操船支援装置203を備える。操船支援装置203は、画像処理部230と、表示部241および242と、制御部250とを含む。
【0072】
図10に示すように、表示部241および242は、領域Aを発生させる遮蔽物20に配置されている。そして、表示部241および242は、自身が発生させる領域Aの画像を含む視野補完画像P102を表示するように構成されている。
【0073】
具体的には、表示部241は、前方ピラー12aおよび前方壁部14aの操船席4側(船室10内側)の面に配置されている。そして、表示部241は、表示部241が配置されている前方ピラー12aおよび前方壁部14aが発生させる領域A1およびA3の前方画像P21および左方前方画像P25を含む視野補完画像P102を表示するように構成されている。
【0074】
また、表示部242は、前方ピラー12bの操船席4側(船室10内側)の面に配置されている。そして、表示部242は、表示部242が配置されている前方ピラー12bが発生させる領域A1およびA4の右方前方画像P27を含む視野補完画像P102を表示するように構成されている。
【0075】
画像処理部230は、視野補完画像P102を生成するように構成されている。そして、制御部250は、画像処理部230に視野補完画像P102を表示部241および242に対して出力させる制御を行うように構成されている。なお、第2実施形態におけるその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0076】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0077】
第2実施形態では、上記のように、表示部241および242を、領域Aを発生させる遮蔽物20に配置する。これにより、遮蔽物20が配置されている領域を有効に活用することができる。
【0078】
また、第2実施形態では、上記のように、表示部241および242を、表示部241および242が配置されている遮蔽物20が発生させる領域Aの画像を含む視野補完画像P102を表示するように構成する。これにより、遮蔽物20に配置された表示部241および242を操船者に視認させることにより、遮蔽物20が発生させる領域Aに対応する画像を操船者に視認させることができる。このため、操船者は、遮蔽物20を透視するように視野補完画像P102を視認することができるので、操船者の船外に対する視認性をより効果的に向上させることができる。
【0079】
また、第2実施形態では、上記のように、表示部241および242を、遮蔽物20の操船席4側の面に配置する。これにより、遮蔽物20に表示部241および242を配置することにより、遮蔽物20が配置されている領域を有効に活用しながら、遮蔽物20の操船席4側の面に表示部241および242を配置することによって、操船席4に位置する操船者が表示部241および242をより視認しやすくすることができる。なお、第2実施形態におけるその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0080】
参考例
次に、図11および図12を参照して、参考例による船舶300の構成について説明する。参考例では、表示部340が、船室10の内周の全周に亘って配置されている。なお、上記第1および第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0081】
参考例による船舶300は、図11に示すように、船室310を有する船体301と、操船支援装置303を備える。図12に示すように、船室310には、窓が設けられておらず、全周が壁部311により覆われている。すなわち、参考例では、船室310よりも外方の全ての領域が視野遮蔽領域A10(以下、「領域A10」)となる。なお、壁部311は、特許請求の範囲の「遮蔽物」の一例である。
【0082】
図11に示すように、操船支援装置303は、撮像部306と、画像処理部330と、表示部340と、制御部350とを含む。撮像部306は、船室310よりも外方の船体1の部分に配置されているとともに、領域A10の全体を撮像するように構成されている。
【0083】
図12に示すように、表示部340は、船室10の内周の全周に亘って配置されている。すなわち、表示部340は、船室10において、操船席4に位置する操船者が少なくとも前方の水平方向に船体1の外方を視る際に視認可能な位置に配置されている。また、表示部340は、領域A10を発生させる壁部311の操船席4側に配置されている。
【0084】
そして、表示部340は、領域A10の画像を含む視野補完画像P202を表示するように構成されている。たとえば、操船席4から操船者が表示部340を視て、操船者が視た方向に対応する領域A10の部分の画像が、操船者が視た方向に対応する表示部340の部分に表示される。すなわち、表示部340は、仮想的な窓としての機能を有するように構成されている。そして、画像処理部330は、視野補完画像P202を生成するように構成されている。また、制御部350は、画像処理部330に視野補完画像P202を表示部340に対して出力させる制御を行うように構成されている。なお、参考例におけるその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0085】
参考例の効果]
参考例では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
参考例では、上記のように、表示部340を、船室10において、操船席4に位置する操船者が少なくとも前方の水平方向に船外を視る際に視認可能な位置に配置する。これにより、前方を見ている状態の操船者に、表示部340を視認させることができる。この結果、前方を見ながら操船している操船者の船外に対する視認性を向上させることができる。
【0087】
また、参考例では、上記のように、表示部340を、船室10の内周の全周に亘って配置する。これにより、船室10の内周(壁部311)の全周に亘って、操船者の視野を補完することができる。すなわち、操船者が船室10の内周を、船室10の内周の全周に亘って見渡した場合、領域A10の全てを表示した視野補完画像P202を操船者に視認させることができる。なお、参考例におけるその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0088】
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0089】
たとえば、上記第1および実施形態では、船舶に、船外機を設ける構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、船舶に、船内機または船内外機を設けてもよいし、船舶に、ジェット推進器を設けてもよい。
【0090】
また、上記第1および実施形態では、表示部を、船室内に配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、前方窓部の外方で、かつ、操船席に位置する操船者から目視可能な位置に表示部を配置してもよい。
【0091】
また、上記第1実施形態では、領域A1~A5の各々の少なくとも一部を撮像部により撮像する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、領域A1~A5のうちのいずれかの領域(たとえば、領域A1のみ)を撮像部により撮像してもよい。
【0092】
また、上記第1および実施形態では、視野遮蔽領域内において、平面視における操船席を中心とした水平方向の角度範囲の合計を、90度以上360度以下とする例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、角度範囲の合計が90度未満となる船舶に本発明を適用してもよい。

【符号の説明】
【0093】
1 301 船体、3 203 303 操船支援装置、4 操船席、6 306 撮像部、10 310 船室、12a 12b 前方ピラー部、13a 13b 後方ピラー、14b 後方壁部、15a 前方窓部(窓部)、20 遮蔽物、40 241 242 340 表示部、100 200 300 船舶、311 壁部(船室の内周、遮蔽物)、A A10視野遮蔽領域、P1 画像(撮像部により撮像された画像)、P2 P102 P202 視野補完画像、θ1θ2 θ3 θ4 θ5 θ6a θ6b θ7 θ8 角度範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12