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  • 特許-絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法 図1
  • 特許-絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/04 20060101AFI20230406BHJP
   C25D 11/18 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
C25D11/04 101A
C25D11/04 302
C25D11/18 301F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019057605
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158812
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 新
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198420(WO,A1)
【文献】特開2014-025110(JP,A)
【文献】硫酸溶液に於けるアルミニウムの陽極処理(直流定電流電解),電気化学,1936年06月05日,第4巻,第6号,p.220-228
【文献】高電流密度におけるアルミニウムの陽極酸化について,電気化学および工業物理化学,1967年03月05日,第35巻,第3号,p.220-225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/04
C25D 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度150~250g/lの硫酸単独の水溶液を用いて、電流密度(C)A/dm,電解時間(T)minとすると、電流密度2A/dm ~6.5A/dm の範囲で、(C)×(T)の値が70~500の範囲になるようにアルミニウム又はその合金材に陽極酸化処理し、その後に封孔剤を用いて封孔処理を行うことで耐電圧特性が0.05kV/1μm以上である絶縁性陽極酸化皮膜を得ることを特徴とする絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項2】
膜厚全体の耐電圧特性が1.0~4.0kVであることを特徴とする請求項記載の絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はその合金材に対して、電気絶縁性に優れた陽極酸化皮膜を形成するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム又はその合金材に、電気絶縁性に優れた陽極酸化皮膜を形成するには、陽極酸化における電解処理の電流密度や、膜厚の影響が大きい。
特許文献1には、電流密度が3~15A/dmと高いものの、電解時間が短く、膜厚が薄いために絶縁性が不充分となるため、その後にエナメル塗装を施している。
特許文献2は、バリア型アルマイト層を形成しているが、皮膜形成速度が遅く、皮膜に欠陥も発生しやすい。
特許文献3は、エッジ部にエポキシ樹脂をコーティングする方法であり、製造コストが高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-99450号公報
【文献】特開2008-159953号公報
【文献】特開平10-219495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電気絶縁特性に優れ、生産性の高い陽極酸化皮膜の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る絶縁性陽極酸化皮膜の製造方法(形成方法)は、電流密度(C)A/dm,電解時間(T)minとすると、(C)×(T)の値が70~500の範囲になるようにアルミニウム又はその合金材に陽極酸化処理することで耐電圧特性が0.05kV/1μm以上であることを特徴とする。
【0006】
ここで、電流密度(C)A/dm,電解時間(T)minとした場合に、(C)×(T)の値を70~500の範囲になるように設定したのは、次の理由による。
電流密度が高い方が速く陽極酸化皮膜が形成されるが、皮膜中に欠陥が発生しやすく、結果として電気絶縁性が低下する。
電解時間が長いと厚い皮膜が得られるが、電解時間が長すぎると電解液にて溶解され、皮膜中に欠陥が生じやすい。
そこで本発明は、皮膜に電圧をかけると、その皮膜が破壊する耐電圧特性が0.05kV/1μm以上を確保するには、(C)×(T)の値を70~500の範囲にするのがよいことが実験で明らかになった。
【0007】
本発明においては、電流密度2A/dm以上で電解処理するのが好ましく、膜厚は10~50μmの範囲が好ましい。
このように皮膜を形成すると、膜厚全体の耐電圧特性が1.0~4.0kVとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、アルミニウム又はその合金材に電解処理にて陽極酸化皮膜を形成する際に、電流密度が高いと皮膜の生成速度が速くなるが、いわゆる電解ヤケと称される局部的な欠陥が生じやすく、絶縁性が低下する。
一方、電流密度が低いと電解による内部欠陥の発生を抑えることができるが、皮膜生成速度が遅いために、電解液による溶解の影響を受けやすい。
そこで、電解時の電流密度A/dmを(C),電解時間minを(T)とすると、(C)×(T)の値が70~500の範囲になるように設定することで、膜厚1μm当たりの破壊耐電圧(耐電圧特性)を0.05kV以上に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電気的絶縁性が破壊される破壊電圧の評価結果を示す。
図2図1の表の結果を表したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
アルミニウムの板材に次の条件にて陽極酸化皮膜を形成し、比較評価した。
電解液として濃度150~250g/lの硫酸水溶液を用い、液温20℃に設定した。
対極にカーボンを用い、図1の表に示した(C)電流密度A/dm,及び(T)電解時間minにて電解処理をした。
次に水洗をし、酢酸ニッケル系の封孔剤を用いて封孔処理を行った。
皮膜の膜厚は、うず電流式の膜厚計(ケット社製LZ-300)を用いて計測した。
電気的絶縁性は、絶縁性が破壊される電圧を耐圧試験機(HIOKI社製3158)を用いて計測した。
【0011】
計測結果を図1の表に示し、図2にその結果のグラフを示す。
比較例4は、(C)×(T)の値が42.5と本発明における設定値70よりも小さいので、破壊電圧が0.385kVと低い。
比較例1~3は、(C)×(T)の値が500を超え、得られる膜厚は(C)×(T)の値が大きくなるのに伴い、62μm,84.5μm,107μmと厚くなるが、図2のグラフに示すように、破壊電圧は上昇していないことが分かる。
その結果として、膜厚1μm当たりの破壊電圧kV/μmの値は、実施例1~4よりも低い。
これに対して実施例1~4は、(C)×(T)の値が70~500の範囲であり、膜厚が10~50μmの範囲と比較例1~3よりも膜厚が薄いが、1μm当たりの破壊電圧が高く、皮膜全体の破壊電圧が1.0kV以上有する。
また、実施例1~4は、1μm当たりの破壊電圧が0.05kVを超え、0.06kV以上有する。
実施例1~4は、全体として(C)×(T)の値が70~500の範囲にあり、膜厚が10~50μmの範囲にある。
個々の実施例をみると、実施例3は(C)×(T)の値が210,膜厚37.1,1μm当たりの破壊電圧0.071kVであり、実施例1は(C)×(T)の値が146で膜厚10.4μmと他の実施例より薄いが、1μm当たりの破壊電圧が0.108kVと相対的に高くなっている。
よって、破壊電圧が1.0kV以上の電気絶縁性皮膜を生産性高く形成するには、電流密度2A/dm以上で(C)×(T)の値を70~500に設定、好ましくは(C)×(T)の値を100~210の範囲に設定するのが良く、その際の膜厚は10~40μmの範囲である。
図1
図2