(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】路面検出システム、パーソナルモビリティ及び障害物検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230406BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230406BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230406BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G05D1/02 R
G08G1/00 J
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2019101829
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】中川 知基
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106897(JP,A)
【文献】特開2014-194729(JP,A)
【文献】特開2011-248870(JP,A)
【文献】特開2013-254474(JP,A)
【文献】江口 純司,三次元測域センサを用いた走行可能領域の抽出 -一般市街地における自律移動ロボットの開発-,計測自動制御学会論文集 第52巻 第3号,日本,公益社団法人計測自動制御学会,2016年03月31日,Vol.52, No.3, 152/159 (2016),P.152-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
G05D 1/02
G08G 1/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体周辺の障害物を検出する障害物検出システムであって、
前記移動体上の所定の位置から前記移動体周辺を三次元計測して点群を生成する三次元計測手段と、
前記三次元計測手段が生成した点群から、前記移動体が走行している平面を走行中平面として検出する走行中平面検出手段と、
前記三次元計測手段が生成した点群に基づいて、前記走行中平面よりも上方に位置する部分を凸障害物として検出する第1障害物検出手段と、
前記走行中平面が途切れている領域であって当該領域に上下方向に重なる点群が存在しない領域に上下方向に重なる、前記走行中平面が包含される平面上の区域を凹障害物候補として抽出し、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されているかどうかを算定し、遮蔽されてない場合には、凹障害物候補を走行中平面に対して下方に凹んだ凹障害物として検出し、遮蔽されている場合には、凹障害物候補を凹障害物として検出しない第2障害物検出手段とを有することを特徴とする障害物検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の障害物検出システムであって、
前記第1障害物検出手段は、前記三次元計測手段が生成した点群から前記走行中平面の点群を除去した平面除去後点群を生成し、当該平面除去後点群中の前記走行中平面よりも上方に位置する点群の部分を前記凸障害物として検出すると共に、前記平面除去後点群中の前記走行中平面よりも下方に位置する点群の部分を凹障害物として検出することを特徴とする障害物検出システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の障害物検出システムであって、
前記第2障害物検出手段は、前記点群中に、前記凹障害物候補と前記所定の位置との間にある点群が存在する場合に、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されていると算定することを特徴とする障害物検出システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の障害物検出システムであって、
前記第2障害物検出手段は、前記点群中に、前記凹障害物候補の区域中に設定した代表点と前記所定の位置とを結ぶ線分を中心軸とする当該中心軸と垂直な方向の断面が所定サイズの空間内の点群が存在する場合に、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されていると算定することを特徴とする障害物検出システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の路面検出システムを搭載した、前記移動体であるパーソナルモビリティであって、
前記障害物検出システムが検出した凸障害物と凹障害物を障害物として、当該障害物を警告する処理と、当該障害物の回避動作を当該パーソナルモビリティに行わせる処理とのうちの少なくとも一方を行う障害物対応部を有することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項6】
移動体上の所定の位置から前記移動体周辺を三次元計測して生成した点群から障害物を検出する障害物検出方法であって、
前記点群から、前記移動体が走行している平面を走行中平面として検出する走行中平面検出ステップと、
前記点群から、前記走行中平面よりも上方に位置する部分を凸障害物として検出する第1障害物検出ステップと、
前記走行中平面が途切れている領域であって当該領域に上下方向に重なる点群が存在しない領域に上下方向に重なる、前記走行中平面が包含される平面上の区域を凹障害物候補として抽出し、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されているかどうかを算定し、遮蔽されてない場合には、凹障害物候補を走行中平面に対して下方に凹んだ凹障害物として検出し、遮蔽されている場合には、凹障害物候補を凹障害物として検出しない第2障害物検出ステップとを有することを特徴とする障害物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルモビリティ等の移動体において障害物を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体において障害物を検出する技術としては、3次元計測装置で3次元計測した移動体周辺の物体表面の点の三次元座標の群である点群から、移動体が走行している路面である平面をRANSAC(Random Sample Consensus)等の推定アルゴリズムを用いて算定すると共に、算定した平面より標高が高い箇所を路面より上方に出っ張った障害物である凸障害物、算定した平面より標高が低い箇所を路面より下方に凹んだ障害物である凹障害物として検出する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体が走行している路面である平面から下方に凹んだ溝や穴などの箇所は、路面によって3次元計測装置に対して遮られて当該箇所の点群を3次元計測によって検出できずに点群が存在しない箇所となることがある。
【0005】
そこで、算出した走行中の平面中にある点群の不在箇所を凹障害物として検出することが考えられるが、このようにすると、凸障害物によって3次元計測装置に対して遮られて点群の不在箇所となった箇所まで、誤って凹障害物として検出してしまうという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、移動体が走行している路面から凹んだ箇所を障害物として、より適正に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、移動体周辺の障害物を検出する障害物検出システムに、前記移動体上の所定の位置から前記移動体周辺を三次元計測して点群を生成する三次元計測手段と、前記三次元計測手段が生成した点群から、前記移動体が走行している平面を走行中平面として検出する走行中平面検出手段と、前記三次元計測手段が生成した点群に基づいて、前記走行中平面よりも上方に位置する部分を凸障害物として検出する第1障害物検出手段と、前記走行中平面が途切れている領域であって当該領域に上下方向に重なる点群が存在しない領域に上下方向に重なる、前記走行中平面が包含される平面上の区域を凹障害物候補として抽出し、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されているかどうかを算定し、遮蔽されてない場合には、凹障害物候補を走行中平面に対して下方に凹んだ凹障害物として検出し、遮蔽されている場合には、凹障害物として検出しない第2障害物検出手段とを備えたものである。
【0008】
ここで、このような障害物検出システムは、前記第1障害物検出手段において、前記三次元計測手段が生成した点群から前記走行中平面の点群を除去した平面除去後点群を生成し、当該平面除去後点群中の前記走行中平面よりも上方に位置する点群の部分を前記凸障害物として検出すると共に、前記平面除去後点群中の前記走行中平面よりも下方に位置する点群の部分を凹障害物として検出するようにしてもよい。
【0009】
また、このような障害物検出システムは、前記第2障害物検出手段において、前記点群中に、前記凹障害物候補と前記所定の位置との間にある点群が存在する場合に、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されていると算定するように構成してもよい。
【0010】
または、このような障害物検出システムは、前記第2障害物検出手段において、前記三次元計測手段が生成した点群から、前記点群中に、前記凹障害物候補の区域中に設定した代表点と前記所定の位置とを結ぶ線分を中心軸とする当該中心軸と垂直な方向の断面が所定サイズの空間内の点群が存在する場合に、凹障害物候補が前記凸障害物によって前記所定の位置に対して遮蔽されていると算定するように構成してもよい。
【0011】
また、本発明は、併せて、路面検出システムを搭載した、前記移動体であるパーソナルモビリティを提供する。ここで、当該パーソナルモビリティには、前記障害物検出システムが検出した凸障害物と凹障害物を障害物として、当該障害物を警告する処理と、もしくは、当該障害物の回避動作を当該パーソナルモビリティに行わせる処理とのうちの少なくとも一方を行う障害物対応部を設ける。
【0012】
以上のような障害物検出システムによれば、凸障害物によって3次元計測手段に対して遮られ点群の不在箇所となった箇所については凹障害物として検出しないので、より適正に凹障害物を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、移動体が走行している路面から凹んだ箇所を障害物として、より適正に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るパーソナルモビリティを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る走行システムの構成を示すブロックである。
【
図3】本発明の実施形態に係る障害物検出部の構成を示すブロックである。
【
図4】本発明の実施形態に係る障害物検出処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る凸障害物の検出例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る他の無点群凹障害物検出処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係る凹障害物の検出例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る凹障害物の他の検出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1a、bに、本実施形態に係るパーソナルモビリティ100を示す。
図1aはパーソナルモビリティ100の右側面を、
図1bはパーソナルモビリティ100の上面を表している。
図示するように、本実施形態に係るパーソナルモビリティ100は、利用者が着座する椅子を備えた四輪の装置であり、人力によらずに走行するための走行システムを備えている。
【0016】
そして、走行システムは、
図2に示すように、パーソナルモビリティ100の自走動作を担う自走システム1と、パーソナルモビリティ100の前方の障害物を検出して、検出した障害物の位置を自走システム1に通知する障害物検出システム2とを備えている。
【0017】
自走システム1は、パーソナルモビリティ100の制動を行うブレーキ装置11、パーソナルモビリティ100の駆動輪を回転させる走行用モータ12、パーソナルモビリティ100の舵角を制御する操舵装置13、ブレーキレバーやアクセルレバーやハンドル等の運転装置14、ナビゲーションシステム15、自走制御部16を備えている。
【0018】
自走システム1は、ユーザが設定できる走行モードとして、マニュアルモードと自動運転モードとを備えており、自走制御部16は、マニュアルモードが設定されているときには、運転装置14の操作に従って走行用モータ12やブレーキ装置11や操舵装置13の動作を制御して、パーソナルモビリティ100を走行、停止させる。
【0019】
また、自走制御部16は、自動運転モードが設定されているときには、予めユーザによってナビゲーションシステム15に設定されているルートに従って当該ルートの目的地まで走行するように、走行用モータ12やブレーキ装置11や操舵装置13の動作を制御して、パーソナルモビリティ100を走行させる。
【0020】
また、自走制御部16は、障害物検出システム2から通知された障害物情報が示す障害物の位置に所定レベル以上接近したならば、所定の注意喚起音を出力して障害物の接近を警告し、障害物に衝突しないようにパーソナルモビリティ100を停止させる処理を行う。ここで、自走制御部16は、走行用モータ12やブレーキ装置11や操舵装置13の動作を制御して、障害物検出システム2から位置を通知された障害物を迂回してパーソナルモビリティ100を走行させる処理なども行うようにしてよい。
【0021】
次に、障害物検出システム2は、パーソナルモビリティ100の前方の三次元計測を行う三次元測位センサ21、三次元測位センサ21で計測したパーソナルモビリティ100の前方の物体表面の点の三次元座標の群である点群のデータを点群データとして格納する点群データメモリ22、点群データメモリ22の点群データからパーソナルモビリティ100の前方の障害物の存在と位置を検出し、検出した障害物の位置を自走制御部16に通知する障害物検出部23を備えている。
【0022】
ここで、三次元測位センサ21としては、たとえば、ステレオカメラを用いて三次元計測を行うセンサや、レーザを用いて三次元計測を行う3D-LiDARやToF等を用いることができる。そして、三次元測位センサ21は、
図1a、bに示すように、パーソナルモビリティ100の前部に配置されて、当該位置からパーソナルモビリティ100の前方の三次元計測を行う。
【0023】
次に、障害物検出システム2の障害物検出部23は、
図3に示すように、走行中の路面に相当する平面を走行中平面として検出する走行中平面検出部231と、走行中平面検出部231が検出した走行中平面のデータを格納する走行中平面データメモリ232、凸凹障害物検出部233、無点群凹障害物検出部234、障害物検出部23における障害物の検出動作を制御する検出制御部235を備えている。
【0024】
以下、このような構成において、障害物検出部23の検出制御部235が行う障害物検出処理について説明する、
図4に、この障害物検出処理の手順を示す。
【0025】
図示するように、検出制御部235は、障害物検出処理において、まず、走行中平面検出部231に走行中平面を検出させる(ステップ402)。
走行中平面検出部231は、点群データメモリ22の点群データから、一つの平面を、RANSAC(Random Sample Consensus)や、LMedS(Least Median of Squares)や、M推定(M-estimation)等のロバスト推定アルゴリズムを用いて検出する。
【0026】
すなわち、平面検出部は、RANSACによって平面を検出する場合には、点群中の点(3次元座標)をランダムに所定数抽出し、抽出した点が表す平面の方程式を推定し、推定した平面の方程式と、点群中の他の点の整合性を評価する処理を、充分によい評価が得られるまで、もしくは、所定回数回繰り返し、評価が最も良かった平面の方程式を平面の方程式として決定する。
【0027】
また、走行中平面検出部231は、決定した面の方程式に整合する3次元座標の点群の点が存在する領域を平面の領域として抽出する。
そして、走行中平面検出部231は、検出された平面の領域がパーソナルモビリティ100の直ぐ前の領域であり、かつ、当該平面のパーソナルモビリティ100に最寄りの位置の高さがパーソナルモビリティ下端の高さとほぼ等しく、当該平面の勾配がパーソナルモビリティ100が安全に走行可能な勾配の最大値以下である場合に、検出された平面を走行中平面として検出し、走行中平面のデータを走行中平面データメモリ232に格納する。
【0028】
図4に戻り、検出制御部235は、走行中平面検出部231が走行中平面を検出したならば(ステップ402)、凸凹障害物検出部233に、凸障害物と凹障害物を検出させる(ステップ404)。
【0029】
凸凹障害物検出部233は、点群データメモリ22の三次元測位センサ21の三次元計測によって得られた点群データの点群から、走行中平面データメモリ232に格納されたデータが表す走行中平面の点群を除去した平面除去後点群を生成し、平面除去後点群中の走行中平面より上方にある点群の部分を凸障害物として検出し、平面除去後点群中の走行中平面より下方にある点群の部分を凹障害物として検出する。なお、ここでは、鉛直方向またはパーソナルモビリティ100の上下の方向を上下方向とする。
【0030】
すなわち、たとえば、
図5aに示すように、三次元測位センサ21で3次元計測が行われる空間に、ほぼ平面である走行中の路面501、路面501の左方にある路面501よりも高い地面502、走行中の路面501から上方に起立した構造物503、走行中の路面501中にある下方に凹んだ穴504が存在する場合において、
図5bに上下方向から見た点群を示すように、三次元測位センサ21によって、路面501の点群511、地面502の点群512、構造物503の点群513が得られ、かつ、路面501によって三次元測位センサ21に対して遮蔽されたために穴504の領域514に上下方向に重なる空間内に点群が得られず、構造物503によって三次元測位センサ21に対して遮蔽されたために三次元測位センサ21から見て構造物503の後方の領域515に上下方向に重なる空間内に点群が得られなかったものとする。
【0031】
この場合、
図5cのように、上下方向に見て、走行中平面検出部231によって検出される走行中平面(灰色の領域)は、途切れた領域(黒色の領域)を有するものとなる。
また、このような走行中平面の点群を、三次元測位センサ21の三次元計測によって得られた点群から除去した平面除去後点群は、走行中平面が途切れた領域521と領域522に上下方向に重なる点群のみを含むものとなるので、凸凹障害物検出部233は、平面除去後点群から、この領域521と領域522に上下方向に重なる点群を抽出する。そして、凸凹障害物検出部233は、領域521と領域522に上下方向に重なる点群は、走行中平面より上方にある点群であるので、
図5dに示すように、上下方向と垂直な方向である水平方向の位置が領域521の位置である凸障害物531と、水平方向の位置が領域522の位置である凸障害物532を検出する。
【0032】
図4に戻り、検出制御部235は、凸凹障害物検出部233に、凸障害物と凹障害物を検出させたならば(ステップ404)、次に、無点群凹障害物検出部234に凹障害物の検出を指示する(ステップ406)。
【0033】
凹障害物の検出を指示された無点群凹障害物検出部234は、無点群凹障害物検出処理を行って凹障害物を検出する。
図6に、無点群凹障害物検出部234が行う無点群凹障害物検出処理の手順を示す。
図示するように、無点群凹障害物検出処理では、まず、凹障害物候補を抽出する(ステップ602)。
凹障害物候補としては、走行中平面データメモリ232のデータが示す走行中平面が途切れている領域であって、当該領域に上下方向に重なる空間中に点群が存在しない領域に上下方向に重なる、走行中平面を延長した走行中平面が包含される平面上の区域を凹障害物候補として抽出する。すなわち、上下方向に重なる空間中に点群が存在しない走行中平面が途切れている領域で、走行中平面が途切れてなかった場合に、当該途切れてなかった走行中平面の部分となる区域を凹障害物候補として抽出する
たとえば、上述の
図5bのように点群が存在し、
図5cのように走行中平面が検出された場合には、走行中平面が途切れている領域521-524のうちの、上下方向に重なる空間中に点群が存在しない領域523と領域524に上下方向に重なる、
図7aの走行中平面が包含される平面上の区域が凹障害物候補701、凹障害物候補702として抽出される。
【0034】
図6に戻り、次に、抽出した凹障害物候補の各々について(ステップ604、610、612)、凹障害物候補が、三次元測位センサ21に対して凸凹障害物検出部233が検出した凸障害物で遮蔽される位置にあるかどうか、すなわち、凹障害物候補と三次元測位センサ21との間に凸凹障害物検出部233が検出した凸障害物が存在するかどうかを調べ(ステップ606)凸障害物で遮蔽される位置にない場合には、凹障害物候補を凹障害物として検出し(ステップ608)、凸障害物で遮蔽される位置にある場合には、凹障害物候補を凹障害物として検出しない処理を行う。
【0035】
すなわち、
図7aに示した凹障害物候補701の場合は、
図7b1、b2に示すように三次元測位センサ21と凹障害物候補701の間に、凸障害物が存在せず凸障害物によって凹障害物候補701が遮蔽されていないので、凹障害物として検出する。
【0036】
一方、
図7aに示した凹障害物候補702の場合は、
図7c1、c2に示すように三次元測位センサ21と凹障害物候補702の間に凸障害物532が存在し、凸障害物532によって凹障害物候補702が遮蔽されているので凹障害物として検出しない。
【0037】
そして、抽出した凹障害物候補の各々について、ステップ606、608の処理を行ったならば、無点群凹障害物検出処理を終了する。
ここで、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されているかどうかは、各凸障害物の高さと、三次元測位センサ21と凹障害物候補と各凸障害物とのの位置関係とより計算によって算出する。
【0038】
ただし、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されているかどうかの判定は、三次元測位センサ21と凹障害物候補を結ぶ空間内に、点群データが示す点群が存在する場合に、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されていると判定するようにしてもよい。
【0039】
すなわち、
図7b1、b2に示した凹障害物候補701の場合は、三次元測位センサ21と凹障害物候補701を結ぶ空間710内に、点群データが示す点群中の任意の点群が存在した場合に、凹障害物候補701が凸障害物によって遮蔽されているものとして、凹障害物候補701を凹障害物として検出せず、存在しなかった場合に、凹障害物候補701が凸障害物によって遮蔽されていないものとして、凹障害物候補701を凹障害物として検出するようにする。また、同様に、
図7c1、c2に示した凹障害物候補702の場合は、三次元測位センサ21と凹障害物候補702を結ぶ空間720内に、点群データが示す点群中の任意の点群が存在した場合に、凹障害物候補702が凸障害物によって遮蔽されているものとして、凹障害物候補702を凹障害物として検出せず、存在しなかった場合に、凹障害物候補702が凸障害物によって遮蔽されていないものとして、凹障害物候補702を凹障害物として検出するようにする。
【0040】
または、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されているかどうかの判定は、より簡易的に、凹障害物候補の区域中に代表点を設定すると共に、代表点と三次元測位センサ21の中心を結ぶ線を中心軸とする、中心軸と垂直方向の断面のサイズが所定サイズの空間内に点群データが示す点群中の任意の点群が存在する場合に、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されていると判定することにより行うようにしてもよい。
より、具体的には、当該判定を、凹障害物候補の区域中に代表点を設定し、断面の上下左右方向の長さが数cmの直方体形状の空間を、直方体の断面と垂直な方向の一端側の面の中心が代表点となり、他端側の面の中心が三次元測位センサ21の中心となるように設定し、当該直方体形状の空間内に、点群データが示す点群中の任意の点群が存在する場合に、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間に凸障害物が存在し、凸障害物によって凹障害物候補が三次元測位センサ21に対して遮蔽されていると判定することにより行うようにしてもよい。
【0041】
すなわち、たとえば、
図7b1、b2に示した凹障害物候補701の場合は、
図8a1、a2に示すように、三次元測位センサ21と凹障害物候補701の区域中に設定した代表点801と三次元測位センサ21の中心との間を伸びる断面の上下左右方向の長さが数cmの直方体形状の空間810を設定し、空間810内に、点群データが示す点群中の任意の点群が存在しなかった場合に、凹障害物候補701が凸障害物によって遮蔽されていないものとして、凹障害物候補701を凹障害物として検出し、存在した場合に、凹障害物候補701が凸障害物によって遮蔽されているものとして、凹障害物候補701を凹障害物として検出しないようにする。また、同様に、
図7c1、c2に示した凹障害物候補702の場合は、
図8b1、b2に示すように、三次元測位センサ21と凹障害物候補702の区域中に設定した代表点802と三次元測位センサ21の中心との間を伸びる断面の上下左右方向の長さが数cmの直方体形状の空間820を設定し、空間820内に、点群データが示す点群中の任意の点群が存在しなかった場合に、凹障害物候補702が凸障害物によって遮蔽されていないものとして、凹障害物候補702を凹障害物として検出し、存在した場合に、凹障害物候補702が凸障害物によって遮蔽されているものとして、凹障害物候補702を凹障害物として検出しないようにする。
【0042】
また、このように、直方体形状の空間を設定して、空間内の点群の有無より、三次元測位センサ21と凹障害物候補の間の凸障害物の有無を判定する場合には、
図8cに凹障害物候補702の場合について示したように、代表点802が三次元センサの真正面となるように、点群データを座標変換したうえで、直方体の空間820を設定して、空間内の点群を探索することにより、当該判定に要する処理の負荷を低減するようにしてもよい。
【0043】
さて、
図4に戻り、検出制御部235は、無点群凹障害物検出部234に凹障害物を検出させたならば(ステップ406)、凸凹障害物検出部233で検出された凸障害物と凹障害物と無点群凹障害物検出部234で検出された凹障害物の位置や凸凹の形状を表す情報を障害物情報として、自走システム1に通知し(ステップ408)、ステップ402からの処理に戻る。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態で示した障害物を検出する技術は、電動車いすやシニアカー等のパーソナルモビリティ100以外の、自走式の台車や、自走もしくは歩行するロボット等の任意の移動体について同様に適用することができる。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、凸障害物によって三次元測位センサ21に対して遮られ点群の不在箇所となった箇所を、誤って凹障害物として検出してしまうことを排除しつつ凹障害物を検出することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…自走システム、2…障害物検出システム、11…ブレーキ装置、12…走行用モータ、13…操舵装置、14…運転装置、15…ナビゲーションシステム、16…自走制御部、21…三次元測位センサ、22…点群データメモリ、23…障害物検出部、100…パーソナルモビリティ、231…走行中平面検出部、232…走行中平面データメモリ、233…凸凹障害物検出部、234…無点群凹障害物検出部、235…検出制御部。