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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】タイヤ加硫装置及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230406BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20230406BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230406BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019106841
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199656
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新山 陽介
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02689920(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/108967(WO,A1)
【文献】特開2008-149597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 35/00 - 35/18
B29D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに接する成形面に開口されるベントホールを有するモールドを複数備え、
前記モールドは、前記ベントホールを開閉する開閉弁を備え、
前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備える、タイヤ加硫装置において、
前記ベントホールから前記モールドの内部に気体が噴出するように、前記ベントホールへ気体を供給する給気装置を備え
前記ベントホールの内部の圧力を検出する圧力検出部を備え、前記給気装置は、当該圧力が設定値以下となるまで、前記ベントホールへ気体を供給する、タイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記弁座及び前記弁体は、熱膨張性を有し、
前記給気装置は、前記弁座及び前記弁体の温度よりも低い温度の気体を、前記ベントホールへ供給する、請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記モールドは、タイヤを成形するための型閉め位置とタイヤを出し入れするための型開き位置との間を移動可能であって、
前記給気装置は、前記モールドが型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、前記ベントホールへ気体を供給する、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記給気装置は、前記モールドが型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、前記ベントホールへ気体を供給することを開始する、請求項3に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項5】
モールドを複数備えるタイヤ加硫装置を用いるタイヤ製造方法であって、
前記モールドは、ベントホールを開閉する開閉弁を備え、
前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備え、
前記タイヤ加硫装置は、前記ベントホールの内部の圧力を検出する圧力検出部を備え、
前記製造方法は、前記圧力検出部で検出される前記圧力が設定値以下となるまで、前記ベントホールへ気体を供給し、かつ前記ベントホールから前記モールドの内部に気体が噴出するように、前記ベントホールへ気体を供給することを、含む、タイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫装置及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、タイヤ加硫装置のモールドは、タイヤに接する成形面に開口されるベントホールと、ベントホールを開閉する開閉弁とを備えている(例えば、特許文献1)。開閉弁は、ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、弁座に対して移動可能な弁体とを備えている。
【0003】
そして、タイヤ加硫初期においては、弁体が弁座から離れる開放位置に位置することで、ベントホールが開放され、モールドの内部の気体がモールドの外部へ吸引される。その後、タイヤ加硫後期においては、ゴムがベントホールに近づくことによって、モールドの内部の圧力が低下したり、ゴムが弁体に接したりする。これにより、弁体が弁座に接する閉止位置に移動するため、ベントホールが閉止される。
【0004】
その後、加硫が完了したタイヤを取り出すために、モールドがタイヤから離れるように移動することによって、弁体は、開放位置に戻る。ところで、例えば、弁体及び弁座に、ゴムの残滓が付着することによって、弁体が閉止位置から開放位置に戻らずに、ベントホールが閉止されたままになる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-65232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、課題は、加硫を開始する際に、ベントホールが閉止していることを抑制することができるタイヤ加硫装置及びタイヤ製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タイヤ加硫装置は、タイヤに接する成形面に開口されるベントホールを有するモールドを複数備え、前記モールドは、前記ベントホールを開閉する開閉弁を備え、前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備える、タイヤ加硫装置において、前記ベントホールから前記モールドの内部に気体が噴出するように、前記ベントホールへ気体を供給する給気装置を備える。
【0008】
また、タイヤ加硫装置においては、前記弁座及び前記弁体は、熱膨張性を有し、前記給気装置は、前記弁座及び前記弁体の温度よりも低い温度の気体を、前記ベントホールへ供給する、という構成でもよい。
【0009】
また、タイヤ加硫装置においては、前記モールドは、タイヤを成形するための型閉め位置とタイヤを出し入れするための型開き位置との間を移動可能であって、前記給気装置は、前記モールドが型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、前記ベントホールへ気体を供給する、という構成でもよい。
【0010】
また、タイヤ加硫装置においては、前記給気装置は、前記モールドが型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、前記ベントホールへ気体を供給することを開始する、という構成でもよい。
【0011】
また、タイヤ製造方法は、モールドを複数備えるタイヤ加硫装置を用いるタイヤ製造方法であって、前記モールドは、前記ベントホールを開閉する開閉弁を備え、前記開閉弁は、前記ベントホールの内部に固定される筒状の弁座と、前記ベントホールを閉止する閉止位置と前記ベントホールを開放する開放位置とに移動可能な弁体と、を備え、前記製造方法は、前記ベントホールから前記モールドの内部に気体が噴出するように、前記ベントホールへ気体を供給することを、含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るタイヤ加硫装置の模式図であって、モールドが型開き位置に位置する状態を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係るタイヤ加硫装置の要部断面図であって、モールドが型開き位置に位置する状態を示す図である。
図3図3は、同実施形態に係るタイヤ加硫装置の模式図であって、モールドが型閉め位置に位置する状態を示す図である。
図4図4は、同実施形態に係るタイヤ加硫装置の要部断面図であって、モールドが型閉め位置に位置する状態を示す図である。
図5図5は、図4のV領域拡大図であって、弁体が開放位置に位置する状態を示す図である。
図6図6は、図4のV領域拡大図であって、弁体が閉止位置に位置する状態を示す図である。
図7図7は、同実施形態に係るタイヤ加硫装置の概要図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、タイヤ加硫装置における一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1図4に示すように、本実施形態に係るタイヤ加硫装置1は、モールド2を複数備えている。複数のモールド2は、成形面2dがタイヤ20のサイドウォール部21に接する一対のサイドモールド2a,2aと、成形面2dがタイヤ20のトレッド部22に接する複数のトレッドモールド2bと、タイヤ20のビード部が嵌合される一対のビードモールド2c,2cとを備えている。
【0015】
各図において、第1の方向D1は、タイヤ10の回転中心であるタイヤ回転軸と平行なタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ10の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。なお、タイヤ加硫装置1における方向D1~D3は、タイヤ加硫装置1で成形されるタイヤ20に対する方向(タイヤ幅方向D1、タイヤ径方向D2、タイヤ周方向D3)を使用する。
【0016】
一対のサイドモールド2a,2aは、成形室1aの内部にセットされるタイヤ20に対して、タイヤ幅方向D1に離間して配置されている。また、複数のトレッドモールド2bは、一対のサイドモールド2a,2aの側方に配置され、且つ、成形室1aの内部にセットされるタイヤ20に対して、タイヤ周方向D3に沿って環状に並列されている。
【0017】
そして、一方のサイドモールド2aは、他方のサイドモールド2aに対して、タイヤ幅方向D1で接離可能であり、また、複数のトレッドモールド2bは、サイドモールド2aに対して、タイヤ径方向D2で接離可能である。これにより、複数のモールド2は、図1及び図2に示すように、タイヤ20を出し入れするための型開き位置と、図3及び図4に示すように、タイヤ20を成形するための型閉め位置との間を移動可能である。
【0018】
モールド2は、ベントホール3aを有するモールド本体3と、成形室1a内の気体を排出するために、ベントホール3aを開閉する開閉弁4とを備えている。なお、モールド本体3の材質は、特に限定されないが、例えば、モールド本体3は、アルミ、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属で形成されている、という構成でもよい。
【0019】
ベントホール3aは、成形面2dに開口されている。そして、ベントホール3aは、モールド2の内部と外部とを連通している。具体的には、ベントホール3aは、成形室1aの内部と外部とを連通している。なお、図2及び図4においては、ベントホール3aは、それぞれのモールド2に一つ図示されているが、ベントホール3aの個数は、特に限定されない。
【0020】
図5及び図6に示すように、開閉弁4は、気体が通過可能な孔5aを有する弁座5と、孔5aを閉止する閉止位置と孔5aを開放する開放位置とに移動可能な弁体6とを備えている。また、開閉弁4は、弁体6が閉止位置から開放位置へ向かうように、弁体6に力を加える加力部7を備えている。なお、開閉弁4は、ベントホール3aの内端部に配置されている
【0021】
弁座5は、ベントホール3aの内部に固定されている。具体的には、弁座5は、ベントホール3a内に嵌め込められている。なお、弁座5は、モールド本体3と別体である、という構成に限られず、モールド本体3と一体である(即ち、モールド本体3の一部である)、という構成でもよい。
【0022】
弁座5は、筒状に形成されており、弁体6は、弁座5の内部に配置されている。具体的には、弁体6は、弁座5に対して可動となるように、弁座5の孔5aに挿入されている。そして、弁座5及び弁体6は、互いに接する座面5b,6aを備えている。また、加力部7の構成は、特に限定されないが、本実施形態においては、加力部7は、弾性力によって弁体6に力を加える弾性体(例えば、コイルばね)としている。
【0023】
図5に示す開閉弁4においては、加力部7が弁体6に力を加えることによって、弁体6は、弁座5の孔5aを開放する開放位置に位置している。このとき、弁体6の座面6aは、弁座5の座面5bから離れている。これにより、成形室1aの内部とベントホール3aとが連通しているため、ベントホール3aは、開状態である。
【0024】
一方、図6に示す開閉弁4においては、弁体6が加力部7からの力に反して、弁体6は、弁座5の孔5aを閉止する閉止位置に位置している。このとき、弁体6の座面6aは、弁座5の座面5bと接している。これにより、成形室1aの内部とベントホール3aとが連通していないため、ベントホール3aは、閉状態である。
【0025】
このように、弁体6が弁座5に対して移動することによって、開閉弁4は、ベントホール3aを開閉する。なお、弁座5及び弁体6の材質は、特に限定されないが、本実施形態においては、弁座5及び弁体6は、温度が上昇するにつれて膨張する熱膨張性を有して、形成されている、という構成である。例えば、弁座5及び弁体6は、ステンレス鋼、鋼鉄等の金属で形成されている、という構成でもよい。
【0026】
また、図7に示すように、タイヤ加硫装置1は、ベントホール3aから気体を吸引する吸気装置8と、ベントホール3aへ気体を供給する給気装置9と、ベントホール3aから気体を吸引する状態(以下、「吸気状態」ともいう)とベントホール3aへ気体を供給する状態(以下、「給気状態」ともいう)とを切り替える切替部10とを備えている。また、タイヤ加硫装置1は、装置全体を制御する制御部11を備えている。
【0027】
なお、タイヤ加硫装置1は、サイドモールド2aの外側を支持するサイドベース1bと、トレッドモールド2bの外側を支持するトレッドベース1cとを備えている。また、タイヤ加硫装置1は、トレッドモールド2b及びトレッドベース1cをタイヤ径方向D2に移動させる第1移動機構1dと、トレッドモールド2b及びトレッドベース1cと上側のサイドモールド2a及びサイドベース1bを上下方向に移動させる第2移動機構(図示していない)とを備えている。
【0028】
なお、吸気装置8は、特に限定されず、例えば、真空ポンプとすることができ、また、給気装置9は、特に限定されず、例えば、圧縮空気を供給する空気圧縮機とすることができる。また、吸気装置8と給気装置9とは、別の装置でもよく、一つの装置でもよい。例えば、当該一つの装置は、ファンの回転方向を切り替えることで、吸気と給気とが切り替え可能な装置であってもよい。
【0029】
また、切替部10の構成は、吸気状態と給気状態とを切り替え可能であれば、特に限定されないが、本実施形態に係る切替部10の構成について、以下に説明する。
【0030】
切替部10は、切替弁10aと、切替弁10a及びベントホール3a間の気体の経路である共通経路10bと、切替弁10aと吸気装置8間の気体の経路である吸気経路10cと、切替弁10aと給気装置9間の気体の経路である給気経路10dとを備えている。切替弁10aは、共通経路10bと吸気経路10cとを連通させる状態と、共通経路10bと給気経路10dとを連通される状態とを切り替える。
【0031】
そして、共通経路10bと吸気経路10cとを連通させる状態に切り替えられた場合には、吸気装置8がベントホール3aから気体を吸引するため、モールド2の内部の気体がベントホール3aから吸引される。一方、共通経路10bと給気経路10dとが連通される状態に切り替られた場合には、給気装置9がベントホール3aへ気体を供給するため、ベントホール3aからモールド2の内部に気体が噴出する。
【0032】
なお、吸気経路10c及び給気経路10dは、それぞれ経路を開閉可能な弁10e,10fを備えている。これにより、吸気経路10cの弁10eが開閉されることによって、吸気を行う期間(開始時期、終了時期等)が制御され、給気経路10dの弁10fが開閉されることによって、給気を行う期間(開始時期、終了時期等)が制御される。
【0033】
そして、制御部11は、切替弁10aの切り替えを制御することによって、給気状態と吸気状態との切り替えを制御する。また、制御部11は、、吸気経路10cの弁10eの開閉を制御することによって、吸気を行う期間を制御すると共に、給気経路10dの弁10fの開閉を制御することによって、給気を行う期間を制御する。
【0034】
なお、図7においては、切替部10は、トレッドベース1cを経由して、一つのベントホール3aにのみ接続されているように図示されているが、他のベントホール3aにも接続されている。また、特に限定されないが、共通経路10bは、複数に分岐され、各ベース1b,1cを経由して、各モールド2の各ベントホール3aと接続されている、という構成でもよい。
【0035】
本実施形態に係るタイヤ加硫装置1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るタイヤ製造方法について説明する。
【0036】
モールド2が型閉め位置に位置し(図3及び図4参照)、タイヤ20の加硫が開始される。このとき、ベントホール3aから気体が吸引されるため、モールド2の内部の気体がベントホール3aから吸引される。このとき、開閉弁4の弁体6が、開放位置に位置するため(図5参照)、ベントホール3aは、開状態である。
【0037】
そして、タイヤ20の加硫が進むにつれて、ゴムが開閉弁4に近づく。これにより、成形室1aの内部の圧力が低下したり、ゴムが弁体6に接したりするため、弁体6は、加力部7からの力に反して、弁座5に対して移動する。そして、タイヤ20の加硫が完了する際には、開閉弁4の弁体6が、閉止位置に位置するため(図6参照)、ベントホール3aは、閉状態である。
【0038】
ところで、モールド2が型閉め位置に位置している際に、ベントホール3aへ気体が供給された場合には、例えば、弁体6がタイヤ20を押すことによってタイヤ20に不具合が発生する場合がある。また、例えば、ベントホール3aへ気体を供給するために、モールド2が型閉め位置に位置している場合には、タイヤ20を加硫するサイクルタイムが延びる場合がある。
【0039】
そこで、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、ベントホール3aへ気体が供給されている。具体的には、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、ベントホール3aへの気体の供給が開始される。これにより、タイヤ20がモールド2の成形面2dから離れるときに、ベントホール3aへ気体が供給される。したがって、タイヤ20がモールド2の成形面2dから離れることを促進することができる。
【0040】
なお、給気装置9は、弁座5及び弁体6の温度よりも低い温度の気体を、ベントホール3aへ供給している。これにより、熱膨張している弁座5及び弁体6は、冷却されて、収縮する。その結果、熱膨張による弁座5及び弁体6間の加圧接触力が低下するため、弁体6が弁座5に対して移動し易い状態となる。なお、例えば、給気装置9が供給する気体の温度は、大気(例えば、モールド2の周辺の空気)の温度よりも低いことが好ましい。
【0041】
このように、ベントホール3aへ気体が供給されることによって、ベントホール3aからモールド2の内部に気体が噴出する。このとき、弁体6が気体から力を受けるため、弁体6が閉止位置から開放位置に移動することを促進することができる。これにより、次に加硫を開始する際に、ベントホール3aが閉止していることを抑制することができる。
【0042】
以上より、本実施形態に係るタイヤ製造方法は、モールド2を複数備えるタイヤ加硫装置1を用いるタイヤ製造方法であって、前記モールド2は、前記ベントホール3aを開閉する開閉弁4を備え、前記開閉弁4は、前記ベントホール3aの内部に固定される筒状の弁座5と、前記ベントホール3aを閉止する閉止位置と前記ベントホール3aを開放する開放位置とに移動可能な弁体6と、を備え、前記製造方法は、前記ベントホール3aから前記モールド2の内部に気体が噴出するように、前記ベントホール3aへ気体を供給することを、含む。
【0043】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫装置1は、タイヤ20に接する成形面2dに開口されるベントホール3aを有するモールド2を複数備え、前記モールド2は、前記ベントホール3aを開閉する開閉弁4を備え、前記開閉弁4は、前記ベントホール3aの内部に固定される筒状の弁座5と、前記ベントホール3aを閉止する閉止位置と前記ベントホール3aを開放する開放位置とに移動可能な弁体6と、を備える、タイヤ加硫装置1において、前記ベントホール3aから前記モールド2の内部に気体が噴出するように、前記ベントホール3aへ気体を供給する給気装置9を備える。
【0044】
斯かる構成によれば、ベントホール3aからモールド2の内部に気体が噴出するように、給気装置9は、ベントホール3aへ気体を供給する。これにより、弁体6が気体から力を受けるため、弁体6が閉止位置から開放位置に移動することを促進することができる。したがって、次に、加硫を開始する際に、ベントホール3aが閉止していることを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫装置1においては、前記弁座5及び前記弁体6は、熱膨張性を有し、前記給気装置9は、前記弁座5及び前記弁体6の温度よりも低い温度の気体を、前記ベントホール3aへ供給する、という構成である。
【0046】
斯かる構成によれば、弁座5及び弁体6の温度よりも低い温度の気体がベントホール3aへ供給されるため、熱膨張した弁座5及び弁体6は、冷却されて収縮する。これにより、熱膨張による弁座5及び弁体6間の加圧接触力が低下するため、弁体6が閉止位置から開放位置にさらに移動し易くなる。これにより、次に、加硫を開始する際に、ベントホール3aが閉止していることをさらに抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫装置1においては、前記モールド2は、タイヤ20を成形するための型閉め位置とタイヤ20を出し入れするための型開き位置との間を移動可能であって、前記給気装置9は、前記モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、前記ベントホール3aへ気体を供給する、という構成である。
【0048】
斯かる構成によれば、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、ベントホール3aへ気体が供給される。これにより、モールド2が型閉め位置に位置する際に、ベントホール3aへ気体を供給することを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫装置1においては、前記給気装置9は、前記モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、前記ベントホール3aへ気体を供給することを開始する、という構成である。
【0050】
斯かる構成によれば、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、ベントホール3aへ気体が供給されるため、タイヤ20がモールド2の成形面2dから離れるときに、ベントホール3aへ気体が供給される。これにより、タイヤ20がモールド2の成形面2dから離れることを促進することができる。
【0051】
なお、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0052】
(1)上記実施形態に係るタイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法においては、給気装置9は、弁座5及び弁体6の温度よりも低い温度の気体を、ベントホール3aへ供給する、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、給気装置9は、弁座5及び弁体6の温度よりも高い温度の気体を、ベントホール3aへ供給する、という構成でもよい。例えば、蒸気が供給されてもよい。
【0053】
(2)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法においては、弁座5及び弁体6は、熱膨張性を有する、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、弁座5及び弁体6は、熱膨張性を有していない、という構成でもよい。
【0054】
(3)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法においては、給気装置9は、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始する以降に、ベントホール3aへ気体を供給する、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、給気装置9は、モールド2が型閉め位置に位置する際に、ベントホール3aへ気体を供給する、という構成でもよい。
【0055】
(4)また、上記実施形態に係るタイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法においては、給気装置9は、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始するときに、ベントホール3aへ気体を供給することを開始する、という構成である。しかしながら、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、給気装置9は、モールド2が型閉め位置から型開き位置へ移動を開始してから所定時間経過後に、ベントホール3aへ気体を供給することを開始する、という構成でもよい。
【0056】
(5)また、タイヤ加硫装置1及びタイヤ製造方法は、ベントホール3aの内部の圧力を検出する圧力検出部を備え、給気装置9は、当該圧力が設定値以下となるまで、ベントホール3aへ気体を供給する、という構成でもよい。斯かる構成によれば、ベントホール3aが確実に開放されるまで、ベントホール3aへ気体を供給することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…タイヤ加硫装置、1a…成形室、1b…サイドベース、1c…トレッドベース、1d…第1移動機構、2…モールド、2a…サイドモールド、2b…トレッドモールド、2c…ビードモールド、2d…成形面、3…モールド本体、3a…ベントホール、4…開閉弁、5…弁座、5a…孔、5b…座面、6…弁体、6a…座面、7…加力部、8…吸気装置、9…給気装置、10…切替部、10a…切替弁、10b…共通経路、10c…吸気経路、10d…給気経路、10e…弁、10f…弁、11…制御部、20…タイヤ、21…サイドウォール部、22…トレッド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7