(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】燃料吸着装置及びそれを用いた蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20230406BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
F02M25/08 311C
F02M25/08 311J
B01D53/04 111
(21)【出願番号】P 2019173860
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】マーレジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博行
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0367933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な柱状の柱状吸着材と、
前記柱状吸着材を収容する筒状のハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記柱状吸着材の外周面に対して離間した状態において前記柱状吸着材を収容する筒状の収容部と、
前記収容部の一端から前記ハウジングの軸線に向かって傾斜して延びていて、前記軸線方向における前記柱状吸着材の一端面と前記外周面との間の縁部
全体において該柱状吸着材を支持する支持部と、
を有する
ことを特徴とする燃料吸着装置。
【請求項2】
前記ハウジングの支持部と前記柱状吸着材の縁部との間に介在する弾性部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料吸着装置。
【請求項3】
前記収容部は円筒状であり、
前記支持部は円錐台状であり、
前記支持部は、前記収容部に対して同心に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料吸着装置。
【請求項4】
前記柱状吸着材の外周面と、前記ハウジングの前記収容部の内周面との間の隙間を前記収容部の他端側で塞ぐシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の燃料吸着装置。
【請求項5】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な柱状の柱状吸着材と、
前記柱状吸着材を収容する筒状のハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記柱状吸着材の外周面に対して離間した状態において前記柱状吸着材を収容する筒状の収容部と、
前記収容部の一端から前記ハウジングの軸線に向かって傾斜して延びていて、前記軸線方向における前記柱状吸着材の一端面と前記外周面との間の縁部において該柱状吸着材を支持する支持部と、
を有し、
前記ハウジングの支持部と前記柱状吸着材の縁部との間に介在する弾性部材をさらに備える
ことを特徴とする燃料吸着装置。
【請求項6】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な柱状の柱状吸着材と、
前記柱状吸着材を収容する筒状のハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記柱状吸着材の外周面に対して離間した状態において前記柱状吸着材を収容する筒状の収容部と、
前記収容部の一端から前記ハウジングの軸線に向かって傾斜して延びていて、前記軸線方向における前記柱状吸着材の一端面と前記外周面との間の縁部において該柱状吸着材を支持する支持部と、
を有し、
前記収容部は円筒状であり、
前記支持部は円錐台状であり、
前記支持部は、前記収容部に対して同心に形成されていることを特徴とする燃料吸着装置。
【請求項7】
蒸発燃料を吸着及び脱離可能な柱状の柱状吸着材と、
前記柱状吸着材を収容する筒状のハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記柱状吸着材の外周面に対して離間した状態において前記柱状吸着材を収容する筒状の収容部と、
前記収容部の一端から前記ハウジングの軸線に向かって傾斜して延びていて、前記軸線方向における前記柱状吸着材の一端面と前記外周面との間の縁部において該柱状吸着材を支持する支持部と、
を有し、
前記柱状吸着材の外周面と、前記ハウジングの前記収容部の内周面との間の隙間を前記収容部の他端側で塞ぐシール部材をさらに備えることを特徴とする燃料吸着装置。
【請求項8】
前記シール部材は、前記柱状吸着材の他端面に対向するフィルタ支持部を有し、
前記柱状吸着材の他端面と前記シール部材の前記フィルタ支持部との間に介在するフィルタ部材をさらに備えることを特徴とする請求項4
又は7に記載の燃料吸着装置。
【請求項9】
車両の燃料タンクからの蒸発燃料の吸着及び脱着を行う第1燃料吸着部と、
前記第1燃料吸着部に接続されていて、前記第1燃料吸着部からの蒸発燃料の吸着及び脱着を行う第2燃料吸着部と、
を備え、
前記第2燃料吸着部は、請求項1から
8までのいずれか一項に記載の燃料吸着装置を含む
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム吸着材等の柱状吸着材を収容し、キャニスタ本体に付加的に用いられる燃料吸着装置(付加キャニスタ)及びそれを用いた蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンを燃料とする自動車において、燃料タンク内の蒸発燃料が大気に放出されるのを抑制するための蒸発燃料処理装置としてのキャニスタが知られている。キャニスタは、燃料タンクから発生した蒸気燃料を一時的に吸着させ、その後、エンジン負圧を利用して大気を導入しつつ、吸着した蒸気燃料を離脱させ、エンジン内へ吸引することによりエンジンにおいて燃焼がなされるようになっている。
【0003】
キャニスタは、近年では、環境規制の強化に対応してハニカム吸着材を備えているものがある。ハニカム吸着材はキャニスタ本体に付加的に用いられるものであり、キャニスタ本体内を通過したガスをさらに吸着する。ハニカム吸着材は、円柱状に形成されており、ハウジングに収容されている。ハニカム吸着材がハウジングにおいて、保持部材により弾性的に保持されている構成が、公知になっている。保持部材は、ハニカム吸着材の外周面に接触する外周面保持部と、ハニカム吸着材の端面に接触する端面保持部と、を有する。ハニカム吸着材は、両端部において一対の保持部材を介してハウジングに取り付けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、外周面に不織布により形成されたスクリーン部材が巻き付けられた構成も公知になっている。スクリーン部材は、ハウジングの内周面に密着している。ハニカム吸着材は、スクリーン部材によりハウジング内での半径方向の動きが規制されている。ハニカム吸着材は、一方の端部にハニカム吸着材の外周面とハウジングの内周面との間をシールし、ハニカム吸着材を位置決め固定するシール部材を有する(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-220345号公報
【文献】特開2008-106610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のハニカム等の柱状吸着材を収容する燃料吸着装置(付加キャニスタ)においては、柱状吸着材をハウジングに対して取り付ける場合、柱状吸着材は、その両端部や、端部に加え外周面に別体の部材を設けることにより、ハウジングに対して固定されていた。このような従来の燃料吸着装置の場合、柱状吸着材をハウジングに対して固定するための部材が必要になり、燃料吸着装置における部品点数が嵩んでいた。また、柱状吸着材をハウジングに対して固定するための部材を収容するためのスペースを確保する必要があり、燃料吸着装置(柱状吸着材を収容する付加キャニスタ)の小型化を阻害していた。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ハニカム等の柱状吸着材を収容する燃料吸着装置(付加キャニスタ)においてハウジングに対する柱状吸着材の簡易な取り付け及び燃料吸着装置の小型化を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料吸着装置は、蒸発燃料を吸着及び脱離可能な柱状吸着材と、前記柱状吸着材を収容する筒状のハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記柱状吸着材の外周面に対して離間した状態において前記柱状吸着材を収容する筒状の収容部と、前記収容部の一端から前記ハウジングの軸線に向かって傾斜して延びていて、前記軸線方向における前記柱状吸着材の一端面と前記外周面との間の縁部において該柱状吸着材を支持する支持部と、を有することを特徴とする。この態様によれば、蒸発燃料の吸着及び脱着可能な柱状吸着材は、軸線方向の一端でハウジングの支持部において支持されている。そのためハウジングにおいて支持されている一端側では別体の保持部材を必要とせず、また、保持部材を収容する空間もハウジング内に必要とならないので、部品点数の削減により燃料吸着装置の製造コストの低減及びハウジングを小型化することができる。
【0009】
また、前記ハウジングの支持部と前記柱状吸着材の縁部との間に介在する弾性部材をさらに備えていてもよい。この態様によれば、柱状吸着材は直接的にハウジングに接触していないので、柱状吸着材の損傷を防ぐことができる。
【0010】
また、前記支持部は、前記収容部に対して同心に形成されていてもよい。この態様によれば、柱状吸着材の端部は調心され、常に周縁において均一にハウジングに接触することになる。これにより、ハウジングと柱状吸着材との間の接触圧は均一になり、双方の損傷を防ぐことができる。
【0011】
また、前記柱状吸着材の外周面と、前記ハウジングの前記収容部の内周面との間の隙間を前記収容部の他端側で塞ぐシール部材をさらに備えていてもよい。この態様によれば、ハウジングと接触しない柱状吸着材の他端は、シール部材により保持されているので、蒸発燃料が大気側へ流出することを防ぐと共に、柱状吸着材に伝わる径方向及び軸線方向の衝撃はシール部材により緩和され、柱状吸着材の損傷を防ぐことができる。
【0012】
また、前記シール部材は、前記柱状吸着材の他端面に対向するフィルタ支持部を有し、前記柱状吸着材の他端面と前記シール部材の前記フィルタ支持部との間に介在するフィルタ部材をさらに備えていてもよい。この態様によれば、柱状吸着材に伝わる軸線方向の衝撃をさらに吸収することができる。
【0013】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る蒸発燃料処理装置は、車両の燃料タンクからの蒸発燃料の吸着及び脱着を行う第1燃料吸着部と、前記第1燃料吸着部に接続されていて、前記第1燃料吸着部からの蒸発燃料の吸着及び脱着を行う第2燃料吸着部と、を備え、前記第2燃料吸着部は、上記燃料吸着装置を含むことを特徴とする。この態様によれば、部品点数の削減により蒸発燃料処理装置の製造コストの低減及び小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハニカム等の柱状吸着材を収容する燃料吸着装置(付加キャニスタ)においてハウジングに対する柱状吸着材の簡易な取り付け及び燃料吸着装置の小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る燃料吸着装置を備える蒸発燃料処理装置の概略図である。
【
図2】本発明に係る燃料吸着装置の一実施の形態を示す縦断面図である。
【
図3】本発明に係る燃料吸着装置の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明に係る燃料吸着装置は、ハニカム吸着材等の柱状吸着材を収容し、キャニスタ本体に付加的に用いられるもの(付加キャニスタ)であり、蒸発燃料処理装置に適用される。本発明に係る燃料吸着装置が適用される蒸発燃料処理装置は、特定の蒸発燃料処理装置に限定されない。例えば、本発明の一実施の形態に係る燃料吸着装置1は、
図1に示す蒸発燃料処理装置100に適用される。
【0018】
図1は、本発明に係る柱状吸着材を収容する燃料吸着装置1を備える蒸発燃料処理装置100の概略図である。蒸発燃料処理装置100は、車両の燃料タンクから蒸発した燃料を吸着し、その燃料をエンジンの駆動時に燃焼させる。蒸発燃料処理装置100は、ガソリンを燃料とする車両では、燃料タンク内の蒸発燃料が大気に放出されることを抑制する。蒸発燃料処理装置100は、車両の停止時に燃料タンク内から発生する蒸発燃料を吸着する。エンジンの駆動時に行われる吸気により蒸発燃料処理装置100内はパージされ、蒸発燃料処理装置100において吸着された蒸発燃料は、蒸発燃料処理装置100から脱離されてエンジン内で燃焼される。
【0019】
蒸発燃料処理装置100は、第1燃料吸着部(キャニスタ本体)110と、本発明に係る柱状吸着材を収容する燃料吸着装置1と、を備える。第1燃料吸着部110と、燃料吸着装置1とは、互いにホース120を介して接続されている。本実施形態においては、燃料吸着装置1は、蒸発燃料処理装置100の第2燃料吸着部として機能すると共に、第1燃料吸着部110のハウジング111と、燃料吸着装置1のハウジング10とが別体となっている。
【0020】
第1燃料吸着部110は、その内部に一本の流路(図示せず。)が形成されている。この流路に蒸発燃料の吸着及び脱離を行う複数の活性炭層(図示せず。)が配置されている。活性炭層は、活性炭等によって構成されている。
【0021】
第1燃料吸着部110は、上記流路の一端側となるハウジング111の位置に、燃料タンク(図示せず。)に接続されるチャージポート112と、エンジンの吸気系に接続されるパージポート113とを有する。第1燃料吸着部110は、上記流路の他端側となるハウジング111の位置に、第2燃料吸着部となる燃料吸着装置1にホース120を介して接続される中間ポート114を有している。また、上記流路は、ハウジング111内で折り返されている。第1燃料吸着部110のチャージポート112、パージポート113及び中間ポート114は、ハウジング111の一端側(
図1における上方側)に設けられている。
【0022】
上述の構成を有する第1燃料吸着部110のハウジング111に対して、燃料吸着装置1が外付けされている。
図2は、本発明に係る燃料吸着装置1の一実施の形態を示す図であり、燃料吸着装置1の軸線に沿った縦断面図である。
【0023】
本実施の形態に係る燃料吸着装置1は、
図2に示すように、ハウジング10と、ハニカム吸着材20と、フィルタ部材30と、シール部材40と、を備える。ハウジング10は、筒状に形成されていてハニカム吸着材20を収容している。ハニカム吸着材20は、円柱状に形成されていて、蒸発燃料を吸着及び脱離可能である。ハウジング10は、筒状の収容部11と、支持部12とを有する。収容部11は、ハニカム吸着材20の外周面22に対して離間した状態においてハニカム吸着材20を収容する。支持部12は、収容部11の一端からハウジング10の軸線xに向かって傾斜して延びていて、軸線x方向におけるハニカム吸着材20の一端面21と外周面22との間の縁部23においてハニカム吸着材20を支持する。以下、燃料吸着装置1の構成について具体的に説明する。
【0024】
ハウジング10は、樹脂により円筒状に形成されている。燃料吸着装置1のハウジング10は、肉厚が略一定で略段付き円筒形状に形成されている。ハウジング10は、収容部11と、支持部12と、接続部13と、開放部14と、を有する。
【0025】
収容部11は、軸線xに交差する断面形状が円形となっている円筒部分である。収容部11は、ハニカム吸着材20を収容する。収容部11の内径は、ハニカム吸着材20の外径よりも大きい。ハニカム吸着材20は、ハウジング10に収容された状態において収容部11に対して離間されている。ハウジング10の収容部11の内面と、ハニカム吸着材20の外周面との間には空間が形成されている。
【0026】
支持部12は、軸線xに沿った断面形状が円錐台形状となっている環状のテーパ部分である。支持部12は、軸線xを中心に収容部11に対して同心に形成されている。支持部12は、収容部11から離れるに連れて軸線xに向かって傾斜している。支持部12における最小の内径は、ハニカム吸着材20の外径よりも小さい。支持部12は、斜面において軸線x方向におけるハニカム吸着材20の一端を支持している。
【0027】
接続部13は、支持部12の最小の内径を有する部分から収容部11とは反対の側に設けられている。接続部13は、軸線xに交差する断面形状が円形となっている2つの第1円筒部13aと第2円筒部13bとを有する。第1円筒部13a及び第2円筒部13bは、軸線xを中心に互いに同心に形成されている。接続部13の支持部12側に設けられている第1円筒部13aの内径は、支持部12とは反対側に設けられている第2円筒部13bの内径よりも大きい。第1円筒部13aとは反対側の第2円筒部13bの端部に、ホース120が接続されている(
図1参照。)。
【0028】
開放部14は、支持部12とは反対側の収容部11の端部の側に設けられている。開放部14は、軸線xに交差する断面形状が円形となっている円筒部分である。開放部14は、軸線xを中心に収容部11に対して同心に形成されている。燃料吸着装置1は、開放部14において大気に通じている。開放部14の内径は、収容部11の内径よりも大きい。
【0029】
収容部11と開放部14との間の移行領域には環状部15が設けられている。環状部15は、収容部11の端部から径方向外側に向かって延びている。後述するシール部材40は、環状部15で軸線x方向において支持されている。
【0030】
ハニカム吸着材20は、粉状活性炭等の多孔質材料を中空の円柱状に形成したもので、例えば、軸線xに交差する断面において内部に格子状の薄壁が形成されたハニカム構造を有する円柱状の吸着材である。ハニカム吸着材20は、第1燃料吸着部110からホース120を介して燃料吸着装置1に達した蒸発燃料の吸着及び脱着を行う。ハニカム吸着材20は、軸線xに沿った一端が支持部12に接触しており、他端が収容部11から開放部14に向かって突出している。
【0031】
軸線xに沿ったハニカム吸着材20の一端は、支持部12によって支持されている。ハニカム吸着材20は、支持部12に面する端面21と、ハニカム吸着材20の外周面22との移行部となる縁部23において支持部12に線接触している。
【0032】
フィルタ部材30は、軸線xに交差する断面形状が円形の円板部材である。フィルタ部材30は、ウレタンや不織布等により形成されている。フィルタ部材30は、ハニカム吸着材20の端面21とは反対側のハニカム吸着材20の端部の端面24に設けられている。ハニカム吸着材20とは反対側に面するフィルタ部材30の面31は、大気に対して露出している。フィルタ部材30は、大気側から塵芥が燃料吸着装置1内へ侵入することを防ぐ。フィルタ部材30の外径は、ハニカム吸着材20の外径と同じである。
【0033】
シール部材40は、収容部11から開放部14の側に突出しているハニカム吸着材20の端部の外周面22と、収容部11の内周面との間の隙間を全周にわたって塞ぐ。シール部材は、NBRやFKM等の耐ガソリン透過性の高い弾性材料により形成されている。シール部材40は、ハウジング10においてハニカム吸着材20の位置を径方向に固定する。
【0034】
シール部材40は、ハウジング10の開放部14に収容されている。シール部材40は、固定部41と、当接部42と、密着部43とを有する。固定部41は、軸線xに沿ってハニカム吸着材20の外周面22及びフィルタ部材30の外周面に接触している。シール部材40は、固定部41の大気側でハニカム吸着材20の端面24に対向するフィルタ支持部41aを有する。フィルタ支持部41aは、軸線xに向かって略垂直に折り曲げられている。フィルタ支持部41aは、フィルタ部材30の面31に接触して、軸線xに沿ったハニカム吸着材20及びフィルタ部材30の移動を規制する。フィルタ部材30は、ハニカム吸着材20の端面24とシール部材40のフィルタ支持部41aとの間に介在する。
【0035】
当接部42は、端部41aとは反対側の固定部41の端部から径方向外側に延びている。当接部42は、収容部11と開放部14との間の環状部15に当接している。密着部43は、当接部42の径方向外側の端部から大気側に向かって延びている。
【0036】
密着部43は、当接部42とは反対側の外周面の側で開放部14の内周面に密着している。密着部43は、固定部41に対して離間している。密着部43は、当接部42から離れるに連れて固定部41から離れる方向に延びている。密着部43は、固定部41から離れる方向に付勢されている。シール部材40が開放部14に収容されている状態において密着部43は、開放部14の内周面によって固定部41に向かって押し付けられている。密着部43は、元の状態に戻ろうとして開放部14の内周面に密着する。
【0037】
蒸発燃料処理装置100においては、エンジン停時等に、燃料タンクから発生する蒸発燃料がチャージポート112を介して第1燃料吸着部110へ導入される。蒸発燃料は、主に炭化水素化合物(HC)ガスと、空気の混合気からなり、HCは、第1燃料吸着部110内の複数の活性炭層及び燃料吸着装置1のハニカム吸着材20に吸着される。第1燃料吸着部110内の複数の活性炭層及び燃料吸着装置1のハニカム吸着材20を通過して浄化された空気が大気中に放出される。
【0038】
一方、エンジン稼働時には、パージポート113にエンジンの吸入負圧が作用することになり、大気が開放部14から燃料吸着装置1内に流入し、ハニカム吸着材20、第1燃料吸着部110内の複数の活性炭層を順次通過してエンジン内に吸入される。ハニカム吸着材20及び第1燃料吸着部110内の複数の活性炭層に吸着されているHCはパージされて、ハニカム吸着材20及び活性炭層から脱離する。脱離したHCは、ハニカム吸着材20から第1燃料吸着部110内の活性炭層へと移動する。HCは、パージポート113を通過してエンジンの吸気系に導入され、エンジン内において燃焼される。第1燃料吸着部110内の複数の活性炭層及び第2燃料吸着部1内のハニカム吸着材20の吸着能力は、このようなパージによって再生される。
【0039】
以上のような燃料吸着装置1によれば、蒸発燃料の吸着及び脱着可能なハニカム吸着材20は、従来のキャニスタとは異なり別体の保持部材を必要とせず、ハウジング10の支持部12において軸線x方向の一端で支持されている。これにより、燃料吸着装置1のハウジング10内においてハニカム吸着材20を保持する保持部材を省略することができ、かつ、ハウジング10を小型化することができる。また、部品点数の削減により製造コストの低減を図ることができる。
【0040】
また、収容部11と支持部12とは互いに同心になっているので、ハウジング10内にハニカム吸着材20を挿入して、ハニカム吸着材20の一端が支持部12に接触した場合、ハニカム吸着材20は、ハウジング10内においてセンタリングされる。これにより、支持部12に対してハニカム吸着材20は、一端側の縁部23全体において均一に接触するので、支持部12に対する面圧の均一化を図ることができる。
【0041】
また、弾性を有するフィルタ部材30がハニカム吸着材20の端面24にシール部材40を介してハウジング10に設けられているので、シール部材40により、端面24側の端部においてハニカム吸着材20と燃料吸着装置1のハウジング10との間で気密を保持することができると共に、シール部材40とフィルタ部材30の弾性を利用して、軸方向および径方向の衝撃を吸収することができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、支持部12に弾性部材50が設けられていてもよい。
図3は、本発明に係る燃料吸着装置1の他の実施の形態を示す図であり、燃料吸着装置1の軸線に沿った縦断面図である。
【0043】
弾性部材50は、支持部12の斜面に設けられている。弾性部材50は、ゴム、ウレタン等の弾性を有する材料により形成された環状の板部材である。軸線xに沿った弾性部材50の断面形状は、円錐台形である。弾性部材50は、ハウジング10の支持部12とハニカム吸着材20の縁部23との間に介在している。
【0044】
弾性部材50は、その外周面において支持部12の斜面に面接触している。弾性部材50の縮径部51は、支持部12の斜面から突出している。仮に、ハニカム吸着材20の径が支持部12の最小の内径よりも小さくても、縮径部51によりハニカム吸着材20を支持することもできる。
【0045】
ハニカム吸着材20が弾性部材50を介して支持部12において支持されることにより、外部からハウジング10を通じてハニカム吸着材20へ伝達される衝撃を緩衝することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては第1燃料吸着部110と第2燃料吸着部(燃料吸着装置1)は、ホース120を介して接続され第1燃料吸着部110のハウジング111と第2燃料吸着部(燃料吸着装置)1のハウジング10が別体となっているが、両ハウジング111,10は一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 燃料吸着装置(第2燃料吸着部)
10 ハウジング
11 収容部
12 支持部
20 ハニカム吸着材
30 フィルタ部材
40 シール部材
50 弾性部材
100 蒸発燃料処理装置
110 第1燃料吸着部
x 軸線