(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】航空機用システム
(51)【国際特許分類】
B64D 15/12 20060101AFI20230406BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20230406BHJP
B64D 43/02 20060101ALI20230406BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20230406BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20230406BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230406BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20230406BHJP
【FI】
B64D15/12
B64D45/00 Z
B64D43/02
H05B3/00 320Z
H05B3/00 310C
G01R31/12 A
G01R31/00
G01R31/52
(21)【出願番号】P 2019213769
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506283927
【氏名又は名称】ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マグディ エー.エサウィ
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン オンケン
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0275185(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02561393(GB,A)
【文献】米国特許第06625550(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 15/00 - 15/22
B64D 43/00 - 45/08
G01R 31/00 - 31/74
H05B 3/00 - 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機構成要素を通って送られるヒータを含む前記航空機構成要素であって、前記ヒータは、抵抗加熱素子と、前記抵抗加熱素子を囲む絶縁体と、を備え、第1の電流が前記抵抗加熱素子に流れ前記航空機構成要素に加熱をもたらし、第2の電流が前記抵抗加熱素子から流れ出る、前記航空機構成要素と、
前記第1の電流を表す第1のセンサ信号を生成するように構成される第1のセンサと、
前記第2の電流を表す第2のセンサ信号を生成するように構成される第2のセンサと、
前記ヒータから電気接地に漏れている電流である漏れ電流を表す漏れセンサ信号を生成するように構成される漏れセンサと、
電気アークの存在を識別するために高周波サンプリングレートを使用して、前記第1の電流、前記第2の電流、及び前記漏れ電流をサンプリング及び測定するように構成される信号プロセッサ
であって、前記高周波サンプリングレートは、前記電気アークによって生成される電気的ノイズの最大周波数の2倍よりも少なくとも大きい、前記信号プロセッサと、
を備える、航空機用システム。
【請求項2】
前記電気アークに基づいて、今後のヒータ故障を判定するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項3】
前記航空機構成要素の残存耐用年数を判定するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項4】
前記第1の電流及び前記第2の電流の高周波ノイズに基づいて、前記ヒータ内の前記電気アークの存在を識別するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項5】
前記信号プロセッサは、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、前記漏れセンサ信号、及び差分電圧をデジタル化するように構成され、前記差分電圧は、前記第1のセンサ信号と前記第2のセンサ信号との差である、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項6】
前記信号プロセッサは、前記漏れセンサ信号を増幅するように構成される、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項7】
前記信号プロセッサは、約150KHz~約500KHzの周波数において、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号をサンプリングする、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項8】
前記信号プロセッサは、約50KHz~約200KHzの周波数範囲まで、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号をフィルタ処理する、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項9】
前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データのシグニチャ及び大きさに基づいて、前記ヒータの残存耐用年数を予測するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項10】
前記信号プロセッサは、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データを出力するように構成される、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項11】
前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号を表す前記フーリエ変換データに基づいて、今後発生する短絡回路または今後発生する開回路を識別するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項10に記載の航空機用システム。
【請求項12】
前記第1のセンサ信号及び前記第2のセンサ信号を表す前記フーリエ変換データが高周波ノイズを示し、かつ前記漏れセンサ信号が上昇しないとき、今後発生する開回路を識別するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項10に記載の航空機用システム。
【請求項13】
前記第1のセンサ信号及び前記第2のセンサ信号を表す前記フーリエ変換データが高周波ノイズを示し、前記漏れセンサ信号を表す前記フーリエ変換データがまた高周波ノイズを示し、かつ前記漏れセンサ信号が上昇するとき、今後発生する短絡回路を識別するように構成される予測プロセッサをさらに含む、請求項10に記載の航空機用システム。
【請求項14】
前記信号プロセッサは、前記漏れセンサ信号に等しい、前記第1のセンサ信号と前記第2のセンサ信号との差を表すフーリエ変換データを出力するように構成される、請求項10に記載の航空機用システム。
【請求項15】
前記ヒータは前記絶縁体を囲む金属シースをさらに備え、前記絶縁体は前記抵抗加熱素子と前記金属シースとの間にある、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項16】
前記第1の電流を前記抵抗加熱素子に供給する電源をさらに備える、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項17】
前記抵抗加熱素子に供給される前記第1の電流及び前記第2の電流は、AC電源またはDC電源であり得る、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項18】
前記第1のセンサは第1の感知抵抗器であり、前記第2のセンサは第2の感知抵抗器であり、前記漏れセンサは漏れ感知抵抗器である、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項19】
前記信号プロセッサは、電気アークによって生成される電気的ノイズの最大周波数の2倍よりも大きい周波数において、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、及び前記漏れセンサ信号をサンプリングする、請求項1に記載の航空機用システム。
【請求項20】
前記航空機構成要素は、空気データプローブである、請求項1に記載の航空機用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、プローブに関し、より具体的には、空気データプローブの予測に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブは環境の特徴を判定するために利用される。航空機システムでは、例えば、空気データプローブは、特に、対気速度、高度、及び迎え角等の条件の判定を補助するために、航空機の外部で実装され得る。高い高度における飛行機の厳しい条件に起因して、氷が、空気データプローブの一部に蓄積し得る。これに対抗するために、ヒータは、空気データプローブ内部に実装され、空気データプローブの適切な機能に影響を及ぼし得る氷の形成を防止する。
【0003】
空気データプローブが壊れると、多くの場合、後続の離陸の前に、その空気データプローブを交換する必要がある。空気データプローブのヒータは、多くの場合、最も耐用年限が求められる部品である。したがって、ヒータが故障してすぐに、空気データプローブを交換する必要がある。空気データプローブを交換する必要があるときを予測することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
航空機用システムは、航空機構成要素を通って送られるヒータを含む航空機構成要素を含み、ヒータは、抵抗加熱素子と、抵抗加熱素子を囲む絶縁体とを含む。第1の電流は抵抗加熱素子に流れ航空機構成要素に加熱をもたらし、第2の電流は抵抗加熱素子から流れ出る。本システムは、さらに、第1の電流を表す第1のセンサ信号を生成するように構成される第1のセンサと、第2の電流を表す第2のセンサ信号を生成するように構成される第2のセンサと、漏れ電流を表す漏れセンサ信号を生成するように構成される漏れセンサと、電気アークの存在を識別するために高周波サンプリングレートを使用して、第1の電流、第2の電流、及び漏れ電流をサンプリング及び測定するように構成される信号プロセッサとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】複数の空気データプローブを含む航空機を示す図である。
【
図2A】ヒータと、ヒータに電気的に接続される回路とを含む空気データプローブの図である。
【
図2B】
図2Aの線B-Bに沿って取られた空気データプローブのヒータの断面図である。
【
図2C】ヒータ内の開回路を示す部分的断面図である。
【
図2D】ヒータ内の短絡回路を示す部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
概して、本開示は、高周波サンプリングレート(150KHz~500KHz)を使用して、主ヒータ電流及び絶縁漏れ電流を測定及びサンプリングし、今後のヒータ故障を示しヒータの残存耐用年数を推定するために使用され得る電気アークを検出することを説明している。
【0007】
図1は、複数の空気データプローブ12a~12nを含む航空機10を示す図である。商用の航空機として示されているが、他の車両、例えば、無人機、ヘリコプター、地上車等は、また、環境の特徴を感知するように構成される空気データプローブ12a~12nを含み得る。空気データプローブ12a~12nは、航空機構成要素である。空気データプローブ12a~12nは、限定ではないが、ピトープローブ、ピトー静電プローブ、全大気温度計(TAT)プローブ、迎え角(AOA)センサ、及びヒータを含み得る任意の他のプローブ等の任意の種類のプローブであり得る。
【0008】
図2Aは、ヒータ14と、ヒータ14に電気的に接続される回路16とを含む空気データプローブ12aの図である。TATプローブ12aとして
図2Aに示されているが、空気データプローブ12aは、任意の種類の空気データプローブ12a~12nまたは感知要素であり得る。
図2Bは、
図2Aの線B-Bに沿って取られた空気データプローブ12aのヒータ14の断面図である。
図2Cは、ヒータ14内の開回路Oを示す部分的断面図である。
図2Dは、ヒータ14内の短絡回路Sを示す部分的断面図である。
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dを一緒に説明する。
【0009】
空気データプローブ12aは、航空機構成要素であり、ヒータ14を含む。空気データプローブ12aは回路16に電気的に接続され、回路16は、電源Vs、第1のセンサ17A、第2のセンサ17B、漏れセンサ17C、信号プロセッサ18、及び予測プロセッサ20を含む。ヒータ14は、抵抗加熱素子22、絶縁体24、及びシース26を含む。
【0010】
例えば、ヒータ線であり得るヒータ14は、空気データプローブ12aを通って送られ、航空機10内部で回路16に電気的に接続される。ヒータ14は、回路16に電気的に接続された電源Vsから電力を受信し、空気データプローブ12aに加熱をもたらす。電源Vsは、ヒータ14が位置付けられる空気データプローブ12aの形式に応じて、直流電流(DC)電力または交流電流(AC)電力をヒータ14に供給し得る。第1の電流I
1は、ヒータ14の第1の端に流れる主電流である。第2の電流I
2は、ヒータ14の第1の端の反対にあるヒータ14の第2の端に流れる主電流である。例えば、
図2Aに見られるように、第1の電流I
1(DC電流またはAC電流であり得る)はヒータ14に流れ、第2の電流I
2(DC電流またはAC電流であり得る)はヒータ14から流れ出る。第1の電流I
1は、感知電圧または第1のセンサ信号V
1を生成するように第1のセンサ17Aを通って流れる。この実施形態では、第1のセンサ17Aは、第1の感知抵抗器R
1である。第2の電流I
2は、感知電圧または第2のセンサ信号V
2を生成するように第2のセンサ17Bを通って流れる。この実施形態では、第2のセンサ17Bは、第2の感知抵抗器R
2である。漏れ電流I
Lは、ヒータ14から電気接地に漏れている電流である。漏れ電流I
Lは、感知電圧または漏れセンサ信号V
Lを生成するように漏れセンサ17Cを通って流れる。この実施形態では、漏れセンサ17Cは、漏れ感知抵抗器R
Lである。第1の感知抵抗器R
1、第2の感知抵抗器R
2、及び漏れ感知抵抗器R
Lが既知の抵抗器であるため、第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、及び漏れセンサ信号V
Lは、第1の電流I
1、第2の電流I
2、及び漏れ電流I
Lに対して既知の関係がある。各々、第1の電流I
1、第2の電流I
2、及び漏れ電流I
Lを表す第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、及び漏れセンサ信号V
Lは、時間関数として変動する。代替実施形態では、第1のセンサ17A、第2のセンサ17B、及び漏れセンサ17Cは、任意の適切なセンサであり得る。
【0011】
信号プロセッサ18はヒータ14に電気的に接続される。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、及び漏れセンサ信号VLを変動させる時間は、信号プロセッサ18に提供される。信号プロセッサ18は、第2のセンサ信号V2を第1のセンサ信号V1から引くことによって差分電圧VDを生じさせる。第1のセンサ信号V1及び第2のセンサ信号V2は、ヒータ14の反対端の電流を表す。したがって、VDは、第1の電流I1と第2の電流I2との差を表し、この差は、ヒータ14から漏れている電流を表し、ひいては、時間関数である漏れセンサ信号VLに等しい。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDは、時間領域から周波数領域までデジタル化、フィルタ処理、及び変換され、周波数関数として、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データを生成する。信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データを出力する。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データは、電気アークがヒータ14で発生しているかどうかを示す。時間領域の第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDは、また、信号プロセッサ18が時間関数として、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを出力するように、デジタル化及びフィルタ処理される。
【0012】
予測プロセッサ20は、信号プロセッサ18に電気的に接続され、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データを、信号プロセッサ18から受信する。予測プロセッサ20は、また、時間領域の第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを、信号プロセッサ18から受信する。予測プロセッサ20は、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDに加えて、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データを使用して、ヒータ14の状態21を出力する。ヒータ14は、「OK」、「開回路が予期される(ANTICIPATED OPEN)」、「短絡が予期される(ANTICIPATED SHORT)」、及び/または「今後の故障/残存耐用年数(FUTURE FAILURE/REMAINING USEFUL LIFE)」の状態21があり得る。
【0013】
図2Bに見られるように、ヒータ14は、第1の電流I
1を電源Vsから受信し、第2のI
2を電源Vsに出力する抵抗器である抵抗加熱素子22を有する。第1の電流I
1は抵抗加熱素子22に流れ、第2の電流I
2は抵抗加熱素子22から流れ出る。抵抗加熱素子22は、ニクロム等の耐酸化性材料または任意の他の適切な材料から作成され得る。絶縁体24は抵抗加熱素子22を囲む。絶縁体24は、シリカ、セラミック、または任意の他の適切な絶縁材から作成され得る。シース26は金属であり、絶縁体24が抵抗加熱素子22とシース26との間にあるように、絶縁体24を囲んでいる。シース26は、ニッケル合金、銅合金、または任意の他の適切な耐酸化性材料から作成され得る。
【0014】
高い高度での飛行時に、空気データプローブ12aが低温に露出されるとき、ヒータ14は氷が空気データプローブ12a上に蓄積することを防止する。電源Vsは電力を抵抗加熱素子22に供給し、それにより、第1の電流I1は、抵抗加熱素子22に供給され、抵抗加熱素子22を通って運ばれ、空気データプローブ12aに必要な熱を生成し、第2の電流I2は抵抗加熱素子22から流れ出る。
【0015】
絶縁体24は抵抗加熱素子22を保護し、抵抗加熱素子22を電気的に絶縁する。例えば、抵抗加熱素子22は、絶縁体24によって金属シース26から絶縁される。シース26は、湿気及び汚染物質が絶縁体24を損傷させることを避ける等によって、抵抗加熱素子22及び絶縁体24を保護する。
【0016】
シース26が割れた場合、酸素、湿気、ほこり、炭素、油、及び他の汚染物質は、シース26を通って絶縁体24に漏洩し、次に、抵抗加熱素子22に漏洩することがあり、絶縁体24及び抵抗加熱素子22の材料を酸化させ、それらの特性を変更させ、及び/またはそれ以外の場合、壊させる。絶縁体24の機能低下は、抵抗加熱素子22がシース26または短絡回路Sに短絡することをもたらす。抵抗加熱素子22の割れ及び劣化は、開回路Oの発生をもたらし得る。例えば、
図2Cに示されるように、絶縁体24の酸化または割れは、絶縁体24及び抵抗加熱素子22の間隙の発生、または開回路Oの発生、ならびにヒータ14の機能低下をもたらす可能性がある。加えて、
図2Dに示されるように、絶縁体24の機能低下は、抵抗加熱素子22をシース26または短絡回路Sに接触させ、ヒータ14の機能低下を生じさせ得る。電流がヒータ14を通って流れることができないとき、開回路O及び短絡回路Sの両方がヒータ14の故障を表す。開回路O及び短絡回路Sの初期段階では、断続的な電気アークは、絶縁体24内の導電性のある小さい空隙を通る放電の結果として発生する。絶縁体24内の空隙の空気のイオン化は、電荷が空気を通るように通過することを可能にし、可視光をもたらし得るプラズマを生成する。抵抗加熱素子22が開回路O等内で劣化するとき、電気アークが、また、抵抗加熱素子22内部で発生し得る。短絡回路Sの場合、電気アークは、抵抗加熱素子22とシース26との間で発生し得る。電気アークは、開回路Oの場合に間隙を閉じること、または短絡回路Sの場合に間隙を開くことのどちらかに起因する、ヒータ14の機能の一時的修復をもたらし得る。電気アーク自体は、一般的に、動作周波数よりもかなり高い周波数範囲における第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、及び漏れセンサ信号V
Lで現れる。例えば、電気アークは、約50KHz~約200KHzの範囲において現れ得る。
【0017】
信号プロセッサ18は、高周波サンプリングレートを使用して、ヒータ14からの、第1の電流I1、第2の電流I2、及び漏れ電流ILをそれぞれ表す第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、及び漏れセンサ信号VLをサンプリング及び測定する。高周波サンプリングレートは、約150kHZ~約500kHZ等の電気アークによって生成される電気的ノイズ(アンチエイリアス処理フィルタによって制限され得る)の最大周波数の2倍よりも少なくとも大きい。
【0018】
電気アークがヒータ14の開回路Oまたは短絡回路Sの故障に先行するものであるため、予測プロセッサ20は電気アークの存在に基づいてヒータ14の状態21を判定する。電気アーク自体は、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDにおける高周波ノイズとして現れる。係る高周波ノイズは、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データにおいて識別される。予測プロセッサは、高周波ノイズの検出に基づいて、ヒータ14の電気アークの存在を識別し、ヒータ14の今後の故障を判定する。
【0019】
第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データに高周波ノイズがないとき、予測プロセッサ20は、OKの状態を出力し、ヒータ14が適切に機能することを示す。第1のセンサ信号V1及び第2のセンサ信号V2を表すフーリエ変換データに高周波ノイズがあり、漏れセンサ信号VL及び差分電圧VDの信号レベルの増加または上昇がないとき、予測プロセッサ20は、「開回路が予期される」の状態を出力し、今後すぐに開回路Oが発生することを示す。漏れセンサ信号VL及び差分電圧VDの信号レベルの顕著な増加または上昇に加えて、第1のセンサ信号V1及び第2のセンサ信号V2を表すフーリエ変換データに高周波ノイズがあり、漏れセンサ信号VL及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データに高周波ノイズがあるとき、予測プロセッサ20は、「短絡が予期される」の状態を出力し、今後すぐに短絡回路Sが発生することを示す。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを表すフーリエ変換データのシグニチャ(signature)(特定の形状)及び大きさに基づいて、予測プロセッサ20は、「今後の故障/残存耐用年数」の状態を出力し、ヒータ14の残存耐用年数を示す。漏れセンサ信号VL及び差分電圧VDを参照して説明されるが、予測プロセッサ20は、信号プロセッサ18が差分電圧VDを生じさせない場合、漏れセンサ信号VL(漏れ電流を表す)だけを使用して同じ予測を行い得る、または漏れセンサ信号VLが信号プロセッサ18に供給されない場合、差分電圧VD(漏れ電流を表す)だけを使用して同じ予測を行い得る。
【0020】
ヒータ14は、空気データプローブ12aが適切に機能することを確実にする。ヒータ14は、空気データプローブ12aの機能の突然の低下を生じさせる開回路Oまたは短絡回路Sの発生の結果として突然故障し得る。空気データプローブ12aの適切な機能が航空機10の安全運転に必要であるため、ヒータ14の予測は、空気データプローブ12aの信頼性を改善する。ヒータ14の今後の故障を予測することは、ユーザが、必要であるとき(フライトの間または別の都合の良いとき等)にヒータ14を交換することを可能にし、ヒータ14の予測不可能な故障を防止し、フライトの遅延を減らし、飛行安全性を改善し、航空機のメンテナンスコスト及び飛行機運転コストを少なくする。
【0021】
図3は信号プロセッサ18の機能を示す図であり、信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、漏れセンサ信号V
L、及び差分電圧V
Dを、時間関数として、デジタル化及びフィルタ処理することを生じさせることと、第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、漏れセンサ信号V
L、及び差分電圧V
Dを、周波数関数として、デジタル化及びフィルタ処理することを生じさせることとを含む。信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V
1、第2のセンサ信号V
2、漏れセンサ信号V
L、及び差分電圧V
Dで、A/D変換28A~28D、フィルタ処理30A~30D、及び高速フーリエ変換32A~32Dを実行する。さらに、信号プロセッサ18は、増幅器34C及び34Dと、コンパレータ36とを含む。
【0022】
信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V1を受ける。信号プロセッサ18は、A/D変換器28Aを使用して第1のセンサ信号V1をデジタル化し、フィルタ30Aを使用して、約50kHZ~約200kHZの周波数範囲等の着目周波数範囲まで、デジタル化された第1のセンサ信号V1をフィルタ処理する。信号プロセッサ18は、高速フーリエ変換32Aを利用して、第1のセンサ信号V1を表すフーリエ変換データを生成する。第1のセンサ信号V1を表すフーリエ変換データは、ヒータ14の第1の電流I1を表す第1のセンサ信号V1を周波数関数として表す。
【0023】
信号プロセッサ18は、第2のセンサ信号V2を受ける。信号プロセッサ18は、A/D変換器28Bを使用して第2のセンサ信号V2をデジタル化し、フィルタ30Bを使用して、約50kHZ~約200kHZの周波数範囲等の着目周波数範囲まで、デジタル化された第2のセンサ信号V2をフィルタ処理する。信号プロセッサ18は、高速フーリエ変換32Bを利用して、第2のセンサ信号V2を表すフーリエ変換データを生成する。第2のセンサ信号V2を表すフーリエ変換データは、ヒータ14の第2の電流I2を表す第2のセンサ信号V2を周波数関数として表す。
【0024】
信号プロセッサ18は、漏れセンサ信号VLを受ける。信号プロセッサ18は、増幅器34Cを使用して漏れセンサ信号VLを増幅し、A/D変換器28Cを使用して、増幅された漏れセンサ信号VLをデジタル化する。信号プロセッサ18は、フィルタ30Cを使用して、約50kHZ~約200kHZの周波数範囲等の着目周波数範囲まで、デジタル化された漏れセンサ信号VLをフィルタ処理する。信号プロセッサ18は、高速フーリエ変換32Cを利用して、漏れセンサ信号VLを表すフーリエ変換データを生成する。漏れセンサ信号VLを表すフーリエデータは、ヒータ14の漏れ電流ILを表す漏れセンサ信号VLを周波数関数として表す。
【0025】
信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V1及び第2のセンサ信号V2を受ける。信号プロセッサ18は、コンパレータ36を使用して、第2のセンサ信号V2を第1のセンサ信号V1から引き、差分電圧VDを生じさせる。信号プロセッサ18は、増幅器34Dを使用して差分電圧VDを増幅し、A/D変換器28Dを使用して、増幅された差分電圧VDをデジタル化する。信号プロセッサ18は、フィルタ30Dを使用して、約50kHZ~約200kHZ等の着目周波数範囲まで、デジタル化された差分電圧VDをフィルタ処理する。信号プロセッサ18は、高速フーリエ変換32Dを使用して、差分電圧VDを表すフーリエ変換データを生成する。差分電圧VDを表すフーリエデータは、ヒータ14の漏れ電流ILを表す差分電圧VDを周波数関数として表す。
【0026】
信号プロセッサ18は、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDを、約150kHZ~約500kHZ等の着目周波数範囲の周波数の少なくとも2倍の速度でサンプリングする。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDは、周波数領域にデジタル化、フィルタ処理、及び変換され、これにより、第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDのそれぞれの周波数スペクトルを分析することができる。第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDのそれぞれの周波数スペクトルの分析は、時間領域の第1のセンサ信号V1、第2のセンサ信号V2、漏れセンサ信号VL、及び差分電圧VDの信号レベルを監視することに加えて、電気アークを示す高周波ノイズの存在を判定することができる。周波数データが予測プロセッサ20に送達され、予測プロセッサ20は、ヒータ14の残存耐用年数を示す係るデータに基づいて、ヒータ14の状態21を判定する。
【0027】
高周波サンプリングに関して説明されているが、電気アークは、また、低周波サンプリングを使用して検出され得る。低周波サンプリングレートにおいて、電気アークは、漏れセンサ信号VL及び差分電圧VDに関する時間信号データのランダム高振幅パルス及びランダムノイズとして現れ得る。したがって、ヒータ14の今後の故障及びヒータ14の残存耐用年数は、また、低周波サンプリングレートにおいて識別され得る。
【0028】
さらに、空気データプローブ12a等の空気データプローブに関して説明されるが、ヒータ14は、風、氷保護用ヒータ等の任意の適切な航空機構成要素の任意のヒータであり得る。
【0029】
可能な実施形態の検討
以下は、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明である。
【0030】
航空機用システムは、航空機構成要素を通って送られるヒータを含む、航空機構成要素であって、ヒータは、抵抗加熱素子と、抵抗加熱素子を囲む絶縁体と、を備え、第1の電流は抵抗加熱素子に流れ航空機構成要素に加熱をもたらし、第2の電流は抵抗加熱素子から流れ出る、当該航空機構成要素と、第1の電流を表す第1のセンサ信号を生成するように構成される第1のセンサと、第2の電流を表す第2のセンサ信号を生成するように構成される第2のセンサと、漏れ電流を表す漏れセンサ信号を生成するように構成される漏れセンサと、電気アークの存在を識別するために高周波サンプリングレートを使用して、第1の電流、第2の電流、及び漏れ電流をサンプリング及び測定するように構成される信号プロセッサと、を含む。
【0031】
前述の段落のシステムは、随意に、追加的及び/または代替的に、以下の特徴、構成、及び/または追加の構成要素のうちの任意の1つまたは複数を含み得る。
【0032】
電気アークに基づいて、今後のヒータ故障を判定するように構成される予測プロセッサ。
【0033】
航空機構成要素の残存耐用年数を判定するように構成される予測プロセッサ。
【0034】
第1の電流及び第2の電流の高周波ノイズに基づいて、ヒータ内の電気アークの存在を識別するように構成される予測プロセッサ。
【0035】
信号プロセッサは、第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、漏れセンサ信号、及び差分電圧をデジタル化するように構成され、差分電圧は、第1のセンサ信号と第2のセンサ信号との差である。
【0036】
信号プロセッサは、漏れセンサ信号を増幅するように構成される。
【0037】
信号プロセッサは、約150kHZ~約500kHZの周波数において、第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号をサンプリングする。
【0038】
信号プロセッサは、約50kHZ~約200kHZの周波数範囲まで、第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号をフィルタ処理する。
【0039】
第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データのシグニチャ及び大きさに基づいて、ヒータの残存耐用年数を予測するように構成される予測プロセッサ。
【0040】
信号プロセッサは、第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データを出力するように構成される。
【0041】
第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データに基づいて、今後発生する短絡回路または今後発生する開回路を識別するように構成される予測プロセッサ。
【0042】
第1のセンサ信号及び第2のセンサ信号を表すフーリエ変換データが高周波ノイズを示し、かつ漏れセンサ信号が上昇しないとき、今後発生する開回路を識別するように構成される予測プロセッサ。
【0043】
第1のセンサ信号及び第2のセンサ信号を表すフーリエ変換データが高周波ノイズを示し、漏れセンサ信号を表すフーリエ変換データがまた高周波ノイズを示し、かつ漏れセンサ信号が上昇するとき、今後発生する短絡回路を識別するように構成される予測プロセッサ。
【0044】
信号プロセッサは、漏れセンサ信号に等しい、第1のセンサ信号と第2のセンサ信号との差を表すフーリエ変換データを出力するように構成される。
【0045】
ヒータはさらに絶縁体を囲む金属シースを備え、絶縁体は抵抗加熱素子と金属シースとの間にある。
【0046】
第1の電流を抵抗加熱素子に供給する電源。
【0047】
抵抗加熱素子に供給される第1の電流及び第2の電流は、AC電源またはDC電源であり得る。
【0048】
第1のセンサは第1の感知抵抗器であり、第2のセンサは第2の感知抵抗器であり、漏れセンサは漏れ感知抵抗器である。
【0049】
信号プロセッサは、電気アークによって生成される電気的ノイズの最大周波数の2倍よりも大きい周波数において、第1のセンサ信号、第2のセンサ信号、及び漏れセンサ信号をサンプリングする。
【0050】
航空機構成要素は、空気データプローブである。
【0051】
本発明が例示的実施形態に関して説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ得るものであり、均等物をその要素に置き換えられ得ることを当業者は理解するであろう。加えて、本発明の必須の範囲から逸脱することなく、多くの修正を行って特定の状況または材料を本発明の教示に適合させてもよい。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まる全ての実施形態を含むことが意図されている。