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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】プロセス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230406BHJP
   C03B 23/023 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C03C27/12 R
C03C27/12 C
C03B23/023
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019560495
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 GB2018050214
(87)【国際公開番号】W WO2018138503
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】1701272.5
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ペーター パウルス
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ピルツ
(72)【発明者】
【氏名】ネイル ジョン ダービン
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/107706(WO,A1)
【文献】特開2003-040656(JP,A)
【文献】特表2004-534404(JP,A)
【文献】特表2014-527011(JP,A)
【文献】特表2015-521575(JP,A)
【文献】特表2017-508693(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013012648(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00-29/00
C03B 23/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板ガラスを調製するためのプロセスであって、
i)第1の手順によって、1.4mm~2.5mmの範囲内の第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシートを提供するステップと、
ii)第2の手順によって、0.2mm~1.4mmの範囲内の第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシートを提供するステップであって、前記第1のガラスシートの厚さが、前記第2のガラスシートの厚さと異なっている、ステップと、
iii)前記第1のガラスシートと前記第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供するステップと、
iv)前記中間層材料を前記ガラスシートに接着させるのに十分な温度および圧力で、前記第1および第2のガラスシートならびに前記中間層をともに積層するステップと、
v)積層後に、前記第2のガラスシートの形状が前記第1のガラスシートの形状と実質的に同じになるように、前記中間層材料を前記2つのガラスシートに接着させるための積層中に、厚さが1.4mm~2.5mmの範囲内であり、前記第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形され、前記第1のガラスシートと同じ前記第1の手順によって作製され、且つ、一体化される第3のガラスシート前記第2のより薄いガラスシートに対して適用するステップと、を含み、
前記プロセスが、
vi)積層前に、前記第2のガラスシートと、前記第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された前記第3のガラスシートとの間に直接箔層を提供するステップであって、前記箔層が非粘着性ポリエステルフィルムを含む、ステップをさらに含む
ことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
ステップiv)において、積層が、90℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップiv)において、積層が、100℃~110℃の範囲内の温度で生じる、請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
ステップiv)において、積層が、オートクレーブ内で生じる、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)を含む、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のガラスシートを前記所望の形状に形成するための前記第1の手順が、プレス曲げを含む、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2のガラスシートを前記所望の形状に形成するための前記第2の手順が、重力たわみ曲げを含む、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記第3のガラスシートが、プレス曲げガラスシートを含む、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1および第3のガラスシートが、単一プレス曲げバッチプロセスで調製される、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記箔層が、0.05mm~0.2mmの範囲内の厚さを含む、請求項1~のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
vii)前記第3のガラスシートおよび前記箔層を、前記積層された第1および第2のガラスシートから取り除くステップをさらに含む、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板ガラスを調製するためのプロセス、および車両におけるその使用に関する。より具体的には、本発明は、軽量積層板ガラスを調製するためのプロセス、および特に車両のフロントガラスとしての車両におけるその使用に関する。
【0002】
車両のフロントガラス用の積層板ガラスは通常、ポリビニルブチラール(PVB)などの少なくとも1つの接着性層によって接合された、2つの成形されたガラスシートを含むことが既知である。当該技術分野において、各ガラスシートを「プライ」と呼ぶことが慣例的である。しばしば、接着性層自体もまた、「プライ」と呼ばれる(つまりPVBのプライ)。積層板ガラスが取り付けられる車両の内側に面するように構成されたガラスシートはしばしば、「内プライ」と呼ばれる一方で、積層板ガラスが取り付けられる車両の外側に面するように構成されたガラスシートはしばしば、「外プライ」と呼ばれる。2つのガラスシートはしばしば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスから構成される。
【0003】
車両用積層板ガラスにおいて使用されるガラスシートの各々は通常、積層板ガラスがカーブするように、1つまたは2つの相互に垂直な方向に成形されるか、または曲げられる。最初は平坦であるガラスシートを所望の曲率に曲げて、フロントガラスを形成するための多くの方法が既知である。
【0004】
例えば、1つの既知の方法は、一対の最初は平坦であるガラスシートを同時に曲げ、一方のガラスシートが他方のガラスシートの上になり、かつ炭酸カルシウムなどの好適な「離型粉末」によって分離されるようにすることである。この方法において、内プライおよび外ガラスプライシートを打ち延ばし可能になるまで加熱し、重力たわみ曲げプロセスによって同時に曲げ、故に成形する。
【0005】
フロントガラス用ガラスシートを曲げる代替的な方法は、内プライおよび外プライを異なる時間、通常順々に加熱し、曲げ、それにより内プライおよび外プライを個々に形成することである。例えば、平坦なガラスシートを個々に曲げる1つのそのような方法は、加熱された平坦なガラスシートを一対の補完的成形部材間に運搬し、各ガラスシートを別個にプレス曲げすることを伴う。その後、ガラスシートを冷却し、連結し、PVBなどの好適な接着性中間層を使用して積層することができる。
【0006】
例えば、EP0398759は、単一積層ガラスシートになるようにともに合わせた第1および第2のガラスシートを、加熱炉の出口での第1のガラスシートおよび第2のガラスシートの温度が実質的に等しくなるように加熱炉内で加熱する方法を記載している。
【0007】
WO2004/085324A1は、積層ガラスの生産のために意図された非対称のガラスシート対のガラスシートを予熱炉内で予熱し、その後プレス曲げ工程でプレス曲げプロセスを受けさせる方法を記載している。プレス曲げ工程の出口に配置された温度測定点によって、ガラスシートが均一な曲げ挙動を呈することを確実にして、冷却中の同一の復元力を保証する。
【0008】
US4,260,408において、まず重力たわみによって、ガラスを曲げの縦成分に対して輪郭鋳型上に成形し、その後堅固な成形下鋳型に対してプレス曲げして、複雑な曲げの横成分を含む曲げを完成させる曲げ方法によって、ガラスシートを成形する方法が記載されている。成形周期の持続時間を最小化するため、かつ輪郭鋳型から成形下鋳型にガラスを移動させる間およびそれを輪郭鋳型に戻す間に輪郭鋳型に対するガラスの位置がずれる可能性を最小化するために、成形下鋳型を持ち上げたり下げたりするように、特定の速度周期が提供される。
【0009】
板ガラス内の損傷したガラスを交換することもまた可能である。例えば、GB2221424において、板ガラスを嵌めた開口部を通した貫通に対する抵抗力を増加させるための方法であって、板ガラスを嵌めた開口部からガラスを取り外し、取り外したガラス、または実質的に同一の幾何学的形状の窓ガラスからなる積層板ガラス(少なくとも1つの熱可塑性材料の中間層を用いたセメンティングによって、元の窓ガラスの寸法と実質的に等しい寸法を有するように切り出され、かつ化学的焼き戻し処理に供されているより薄いガラスシートが、それに固定されている)によって交換することを特徴とする、方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、特に自動車用途における積層板ガラスの光学的品質要件はより厳しくなっており、積層板ガラスをフロントガラスとして車両に取り付ける時に典型的な、(角度で傾斜したガラスを通して視覚方向を見た時の)透過の光学的歪みの増加をもたらすガラスの表面上のわずかな変形が、ますます受け入れられなくなってきている。
【0011】
例えば、WO2015/092385において、中間層材料の少なくとも1つのプライによって接合された、板ガラス材料の第1のプライおよび板ガラス材料の第2のプライを含む積層板ガラスが記載されている。板ガラス材料の第1のプライは、第1の組成を有するガラスシートを含み、板ガラス材料の第2のプライは、第1の組成とは異なる第2の組成を有するガラスシートを含む。積層板ガラスは、積層板ガラスの周辺の周りに延びる周辺領域、および周辺領域内の表面圧縮応力を有する。エッジ圧縮もまた存在し、エッジ圧縮の大きさは、周辺領域内の表面圧縮応力の大きさよりも大きい。この文章は、軽量フロントガラスを達成する方法を教示する一方で、軽量フロントガラスに必要とされる光学的パラメータは考慮されていない。
【0012】
WO2015/031594において、第1のガラス層、第2のガラス層、および第1のガラス層と第2のガラス層との間の少なくとも1つのポリマー中間層を有する、積層体構造が開示されている。いくつかの実施形態において、第1のガラス層は、第1および第2の表面を有する強化ガラスから構成されてもよく、第2の表面は、中間層に隣接し、化学的に研磨されており、第2のガラス層は、第3および第4の表面を有する強化ガラスから構成されてもよい。第4の表面は、中間層に対向し、化学的に研磨されており、第3の表面は、中間層に隣接し、実質的に透明なコーティングがその上に形成されている。別の実施形態において、第1のガラス層はカーブしており、第2のガラス層は実質的に平面であり、第1のガラス層上に冷間成形され、これにより第2のガラス層の表面上に表面圧縮応力の差が提供される。しかしながら、この文書に記載され、かつ標準的な積層手順を使用して調製される積層体構造の光学的特性は、軽量積層板ガラスにとって最適なものではない。
【0013】
2つのガラスシートおよび中間層を含む積層フロントガラスにおいて良好な透過光学、つまり低い光学的屈折力を達成するためには、各々が中間層に背を向ける2つのガラスシートの表面(しばしば表面1および4と呼ばれる)が可能な限り近い同一の曲率を有するべきであることが既知である。
【0014】
加えて、Glass Processing Days,2003,pages 502-504から、車両フロントガラスの取り付け角度が光学的特性に影響を有することが既知である。例えば、光学的屈折力の増幅は、取り付け角度とともに変動する。したがって、フロントガラスに存在するあらゆる欠陥がより高い程度まで増幅されるため、取り付け角度が増加するにつれて、より良好な光学的品質が必要とされる。そのような問題を克服する1つの方法は、積層フロントガラスを作製するために使用されるガラスの光学的品質を改善することであるが、受け入れられる商業的費用および収率で改善された光学的品質のガラスを生産することは、常に可能ではない。
【0015】
この問題、および車両に取り付けた時に低減した光学的歪みを有する積層板ガラスを作製する問題に対処する別の方法は、WO2016/030678に記載されている。この特許出願において、積層板ガラスは、各々が一対の成形部材間で別個に成形され、その後ともに積層された、板ガラス材料の第1および第2のシートを有する。板ガラス材料の第1のシートを曲げる位置は、板ガラス材料の第2のシートを曲げる位置から計画的にオフセットされ得る。積層ステップ中、板ガラス材料の第1のシートは、横および/または縦方向の位置変位によって板ガラス材料の第2のシートに対して変位してもよい。板ガラス材料の第1および/または第2のシートは、積層後にその周辺エッジの少なくとも一部分が整合するように切断してあってもよい。
【0016】
しかしながら、WO2016/030678において、発明者らは、車両に取り付けられたフロントガラスの光学的歪みを改善する位置から開始しており、ここで、ガラスシートの各々は、同じプロセスによって生産されているため、実質的に同一の形状および曲率のものである。
【0017】
自動車産業において、板ガラスユニットの全体的な重量の低減を有する積層板ガラスに対する増え続ける必要性が存在する。
【0018】
そのような軽量板ガラスユニットを達成する1つの方法は、非対称のガラスシートを使用することである。つまり、フロントガラスを構成する個々のガラスシートは、厚さ、色、または放射率などの1つ以上の特徴において異なる。例えば、WO2012/073030において、機械的強度を提供するための、1.9~2.4mmの範囲内の厚さを有するガラスの第1のプライと、ポリマー中間層と、0.8~1.4mmの範囲内の厚さを有するガラスの第2のよりもずっと薄いプライとを含み、それにより板ガラスの全体的な重量を低減する、積層板ガラスが記載されている。
【0019】
例えば、重力曲げプロセスを使用して、異なる厚さの軽量板ガラスユニットにおいて同時に使用するためのガラスシートを生産することが可能である。あるいは、異なるプロセスを使用し、それにより該プロセスの各々によって提供される利点を利用して、軽量板ガラスユニットにおいて別個に使用するための非対称のシートの各々を生産することが可能である。例えば、良好な形状制御および応力レベル制御を確実にするために、単一ガラスプレス曲げ操作を使用して、軽量板ガラスユニットの外ガラスプライを調製することが有利であることが示されている。しかしながら、現在、このプロセスによって、同じ品質レベルで軽量板ガラスユニットにおいて使用するための薄いガラスプライを成形することは不可能である。したがって、WO2015/098385に記載の内プライの重力曲げプロセスおよび化学的強化プロセスによって、軽量板ガラスユニットを調製することが提案されている。残念ながら、このアプローチはしばしば、今日の現代的な積層フロントガラスの板ガラスの厳格な光学的要件を必ずしも満たさない積層フロントガラスをもたらす。
【0020】
したがって、内外ガラスプライが異なる成形プロセスもしくは道具細工を使用して調製されるか、またはガラスプライが異なる時間に生産される、フロントガラスなどの非対称かつ軽量の積層板ガラスを生産することができるプロセスに対する必要性が存在する。
【0021】
つまり、非対称であるが、車両に取り付けた時に低減した光学的歪みを有するガラスプライを使用して、車両フロントガラスなどの積層板ガラスユニットを作製するプロセスに対する必要性が存在する。つまり、フロントガラスの内領域が、特に改善された透過光学を示すものである。
【0022】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うと、積層板ガラスを調製するためのプロセスであって、
i)第1の手順によって第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシートを提供するステップと、
ii)第2の手順によって第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシートを提供するステップと、
iii)第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供するステップと、
iv)中間層材料をガラスシートに接着させるのに十分な温度および圧力で、第1および第2のガラスシートならびに中間層をともに積層するステップと、を含み、
該プロセスが、
v)積層後に、第2のガラスシートの形状が第1のガラスシートの形状と実質的に同じになるように、中間層材料を2つのガラスシートに接着させるための積層中に、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型を第2のガラスシートに対して適用するステップをさらに含むことを特徴とする、プロセスが提供される。
【0023】
本発明の第1の態様の代替的な実施形態において、積層板ガラスを調製するためのプロセスであって、
i)第1の手順によって第1の厚さを有する所望の形状に形成された第1のガラスシートを提供するステップと、
ii)第2の手順によって第2の厚さを有する所望の形状に形成された第2のガラスシートを提供するステップと、
iii)第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に位置する中間層を提供するステップと、を含み、
iv)第1および第2のガラスシートならびに中間層が、中間層材料を2つのガラスシートに接着させるように、90℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力でともに積層され、積層後、第2のガラスシートの形状が、第1のガラスシートの形状と実質的に同じであることを特徴とする、プロセスが提供される。
【0024】
本発明に従うと、第1のガラスシートの厚さは、第2のガラスシートの厚さと異なってもよい。あるいは、第1のガラスシートの厚さは、第2のガラスシートの厚さと同じであってもよい。しかしながら、本発明のプロセスは好ましくは、異なる厚さのガラスシートを積層する時、つまり好ましくは第1のガラスシートの厚さが第2のガラスシートの厚さとは異なる時に適用される。
【0025】
本発明に関して、本発明者らは、第1および第2のガラスシートの積層が好ましくは90℃~132℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じることを見出した。あるいは、第1および第2のガラスシートの積層は好ましくは、95℃~130℃の範囲内の温度および8~16バールの範囲内の圧力で生じる。より好ましくは、第1および第2のガラスシートの積層は、100℃~130℃の範囲内の温度で生じる。さらにより好ましくは、第1および第2のガラスシートの積層は、100℃~125℃または100℃~120℃または95℃~110℃の範囲内の温度で生じる。しかしながら、最も好ましくは、第1および第2のガラスシートの積層は、100℃~110℃の範囲内の温度で生じる。上記の温度範囲の全ては好ましくは、8~16バールの範囲内の圧力と組み合わせて使用される。
【0026】
積層ステップiv)は、オートクレーブ内の真空バッグおよび/またはリングを使用して実行され得る。その後、このステップは、80℃の範囲内の温度で実行され得る。
【0027】
様々な好適な中間層材料が使用され得るが、好ましくは中間層はポリビニルブチラールを含むことが理解されるだろう。
【0028】
本発明の第1の態様に関して、第1のガラスシートは好ましくは、所望の形状にプレス曲げされる。つまり、本発明の第1の態様に従うプロセスについて、第1のガラスシートを所望の形状に形成するために使用される第1の手順は、プレス曲げを含む。また本発明の第1の態様に従うプロセスに関して、第2のガラスシートを所望の形状に形成するために使用される第2の手順は、重力たわみ曲げを含む。
【0029】
第2のガラスシートの厚さは好ましくは、0.2mm~1.4mmの範囲内である。より好ましくは、第2のガラスシートの厚さは、0.5mm~1.0mmまたは0.5~0.95mmの範囲内である。第2のガラスシートの厚さはまた、0.5~1.2mmの範囲内であってもよい。
【0030】
第1のガラスシートの厚さは好ましくは、1.4mm~2.5mmの範囲内である。より好ましくは、第1のガラスシートの厚さは、1.6mm~2.3mmの範囲内である。第1のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.1mmの範囲内であってもよい。
【0031】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うと、本プロセスは好ましくは、
v)積層中に第2のガラスシートに対して鋳型を適用するステップであって、鋳型が、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形される、ステップをさらに含む。
【0032】
鋳型は、ガラス、セラミック、または金属から構成され得る。しかしながら、最も好ましくは、鋳型はガラスから構成される。つまり、本発明のプロセスの好ましい一実施形態において、鋳型は好ましくは、第1のガラスシートと実質的に同じ形状である第3のガラスシートを含む。
【0033】
好ましくは、第3のガラスシーは、第1および第2のガラスシートの積層における使用前にプレス曲げによって所望の形状に形成される。
【0034】
第3のガラスシートの厚さは好ましくは、1.4mm~2.5mmの範囲内である。より好ましくは、第3のガラスシートの厚さは、1.6mm~2.3mmの範囲内である。第3のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.1mmの範囲内であってもよい。
【0035】
加えて、第1および第3のガラスシートが好ましくは単一プレス曲げバッチプロセスで調製されることが好ましい。したがって、第1および第3のガラスシートは、実質的に同じ厚さである。
【0036】
本発明の第1の態様の第1の実施形態に従うプロセスは好ましくは、
vi)積層前に、第2のガラスシートと、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型との間に箔層を提供するステップをさらに含む。
【0037】
つまり、本発明の第1の態様の第1の実施形態は好ましくは、vi)第2のガラスシートと第3のガラスシートとの間に箔層を提供するステップであって、第3のガラスシートが、第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形される、ステップをさらに含む。
【0038】
箔層は好ましくは、0.05mm~0.2mmの厚さを含む。加えて、箔層は好ましくは、非粘着性フィルムを含む。好適な非粘着性フィルムは、箔層、第2のガラスシート、および第3のガラスシートが積層プロセス後に容易に分離することを確実にする。好ましい非粘着性箔層フィルム材料は、ポリエステルを含む。
【0039】
したがって、また本発明の第1の態様に関して、積層の完了後、第3のガラスシートおよび箔層は、積層された第1および第2のガラスシートから取り除かれる。さらにより好ましくは、積層後、箔層、および(好ましくは第3のガラスシートの形態で)第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型は、単一ステップで積層された第1および第2のガラスシートから取り外される。
【0040】
したがって、本発明の第1の態様に従うと、積層板ガラスであって、
第1のガラスシートが、第1のガラス外面および第1のガラスシート内面を含み、
第2のガラスシートが、第2のガラスシート外面および第2のガラスシート内面を含み、
第1のガラスシート内面および第2のガラスシート内面が、中間層の最も近くに位置し、
積層板ガラス上の所与の点について、本発明の第1の態様のプロセスによって生産された積層板ガラス上の所与の点の第1のガラスシートの曲率と第2のガラスシートの曲率との差が、有意に低い値のものであり、受け入れられるほどに低い値の透過の光学的屈折力が提供される、積層板ガラスが提供されることが好ましい。つまり、積層板ガラスが取り付けられる車両の運転者によって見られる歪みは、低レベルである。
【0041】
つまり、本発明の第1の態様のプロセスに従って調製された積層板ガラスは、2つの同一のガラスシートを積層することによって調製された積層板ガラスについて記録される値の130%以下の透過の光学的屈折力の値を実証することが好ましい。
【0042】
そのような場合、積層板ガラスの透過の光学的屈折力は、ECE R43基準の協定に従って記載されるデバイスによって、または企業ISRA Vision AGによってもしくは「The requirements to test facilities for inspection of the visual distortion at vehicle panes in transmission」に関するVDA 312推奨事項(2015年3月)などの適切なVDA推奨事項に従って調製されたデバイスによって測定される。
【0043】
本発明の第2の態様に従うと、車両における使用に好適であり、かつ本発明の態様の第1の実施形態または代替的な実施形態に関して上述される特徴のいずれかに従って調製される積層板ガラスが提供され、該特徴は、単独または組み合わせのいずれかで存在する。
【0044】
また、本発明の第2の態様に従うと、車両における使用に好適であり、かつ本発明の態様の第1の実施形態に関して上述される特徴のいずれかに従って調製される積層板ガラスが提供され、該板ガラスは、積層中に第1のガラスシートと実質的に同じ形状に成形された鋳型を第2のガラスシートに対して適用しない積層法によって調製された積層板ガラスと比較して、光学的屈折力の37%の改善を含む。
【0045】
本発明の第3の態様に従うと、本発明の第1および第2の態様の特徴の任意の組み合わせに従って調製され、車両に取り付けられる、積層板ガラスの使用が提供される。
【0046】
本発明の第1、第2、または第3の態様に従うと、積層板ガラスは、車両において使用される任意のガラス物品であり得る。しかしながら、本発明の第1、第2、または第3の態様に従う積層板ガラスが、車両のフロントガラスまたは車両のリヤウィンドウであることが好ましい。
【0047】
これより、以下の実施例および添付の図面を参照して、本発明の実施形態をほんの一例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明に従って調製される積層板ガラスの簡略化した断面図である。
図2】本発明の第1の態様に従って積層フロントガラスを調製する方法の第1の実施形態の概略図である。
図3】本発明の第1の態様に従って積層フロントガラスを調製する方法の代替的な実施形態の概略図である。
図4】積層フロントガラスの板ガラスについて記録される例示的な曲率測定のグラフ表示である。
図5】本発明に従って調製されるフロントガラスの板ガラスの内シートおよび外シートについて記録される曲率測定の例示的な比較を図示するグラフ表示である。
図6】従来の方法によって調製される内外ガラスシートで調製された、典型的な先行技術の軽量積層フロントガラスの影像である。
図7】本発明の方法に従って調製される積層軽量フロントガラスの影像である。
図8】本発明に従って積層フロントガラスの板ガラスを調製する方法の第1および第2の実施形態の要約的な流れ図である。
【0049】
本発明に関して、本発明者らは、ガラスシートのうちの一方の厚さが第2のガラスシートの厚さと比較して低減したものであり、かつガラスシートが異なる技術を使用してカーブした構造に形成されている、2つのカーブしたガラスシートまたはプライを有する車両のフロントガラスなどの積層板ガラスの調製時に、本明細書にさらに記載される改変されたガラス加工技術を使用して、より薄いガラスシートを、より厚く、より強剛なガラスシートの曲率および形状に対して鋳造することに成功し得ることを見出した。
【0050】
本発明者らはまた、本発明のプロセスに従って記載される手順を使用して、積層フロントガラスにおける2つのガラスシートのカーブした形状の調和が達成され得ることも見出した。それぞれ図2および図3に関し、かつそれらに図示されるように、本発明に従う方法を、例として以下にさらに記載する。
【0051】
後述の方法の各々によって調製される積層板ガラスは好ましくは、曲率の各方向が互いに直交している2つの方向にカーブしている。一方または両方の方向の曲率半径は好ましくは、300mm~8000mmであり得る。
【0052】
図1に図示されるように、本発明の方法に従って調製される積層板ガラス10において、好ましくは凹面14および対向する凸面16を有する第1のプライ(またはガラスシート)12が提供される。凸面24および対向する凹面22を有する第2のプライ(またはガラスシート)20もまた提供される。第1のプライ12の凹面14は、中間層25と接触しており、第2のプライ20の凸面24もまた、中間層25と接触している。
【0053】
従来の命名法を使用すると、第1のプライ12の凸面16は、積層板ガラス10の「表面1」(またはS1)と呼ばれる。第1のプライ12の凸面14は、積層板ガラス10の「表面2」(またはS2)と呼ばれる。第2のプライ20の凸面24は、積層板ガラス1の「表面3」(またはS3)と呼ばれ、第2のプライ20の凹面22は、積層板ガラス10の「表面4」(またはS4)と呼ばれる。
【0054】
本発明に関して、積層板ガラス10は、車両のフロントガラス(前部もしくは後部)、車両のサンルーフ、車両の側部窓、または車両の後部窓などの車両の板ガラスであってもよい。積層板ガラス10はまた、建築物の板ガラスであってもよい。
【0055】
方法1。
図2において、本発明の第1の態様に従って車両のフロントガラスなどの積層板ガラスを調製する第1の方法の一実施形態の概略図180が図示される。
【0056】
本方法の第1のステップにおいて、第1のガラスシート120は、例えば、フロントガラスの板ガラスの所望の形状に形成される。これは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなどの平坦なガラスシートを利用し、ガラスシートを必要とされるエッジプロファイルを有する形状に切断することによって達成することができる。その後、ガラスシートを打ち延ばし可能な状態まで加熱し、例えば、プレス曲げによって全体的に鋳造する。
【0057】
プレス曲げにおいて、本プロセスは、一対の補完的成形鋳型、つまり上成形鋳型および下補完的成形鋳型を使用する。プレス曲げは一般に、少なくとも1つの加熱された成形鋳型の使用を伴う。プレス曲げプロセスを使用して、例えば、1つ以上の方向に300mm~8000mmの曲率半径を有する、必要とされるフロントガラスの形状にガラスシートを形成する。
【0058】
次に、本発明に従って積層板ガラスを調製する第1の方法において、例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のより薄い平坦なシート160を、必要とされるエッジプロファイルを有する形状に切り出す。この第2のガラスシートはまた、例えば、重力またはたわみ曲げプロセスを使用して、等しくまたはより小さくカーブした形状の所望のフロントガラスの板ガラスにも鋳造される。つまり、フロントガラスの板ガラスの第1のガラスシートを成形するのに使用されるプロセスとは異なる成形プロセスによって、必要とされる形状の第2のガラスシートが達成される。
【0059】
重力たわみ曲げプロセスにおいて、正確にサイズ決めされた平坦なガラスシートまたはプライを曲げリングの上に置き、ガラスが打ち延ばし可能になり、かつ重力下で自由にたわむ温度まで加熱する。たわみは、温度を低下させることによってガラスの打ち延ばし可能性が低減するまで続く。薄いガラスプライを曲げようと努力する本発明の方法において、積層板ガラスに使用するために最終的に必要とされる形状の第2のガラスシートは、重力たわみ曲げプロセスによるこの段階では完全には達成されない。
【0060】
第1のガラスシートと同様に、1つ以上の方向に300mm~8000mmの曲率半径を有する第2のガラスシートを鋳造する。しかしながら、第2のガラスシートは、第1のガラスシートよりもずっと薄い。第2のガラスシートは、第1のガラスシートの厚さよりも65%ほど薄くあってもよい。例えば、第1のガラスシートの厚さは、1.4mm~2.5mmの範囲内または1.6mm~2.3mmの範囲内であってもよい。しかしながら、第2のガラスシートの厚さは、0.2mm~1.4mmの範囲内または0.5mm~1.0mmの範囲内であってもよい。第1のガラスシートの厚さはまた、1.6mm~2.1mmの範囲であってもよい。
【0061】
その後、第1および第2の事前鋳造されたガラスシートを、接着性中間層140によって組み合わせ、ともに接合する。接着性中間層は、0.3mm~1.8mmの厚さの厚さ範囲を有してもよく、または接着性中間層は、0.5mm~1.0mmの厚さ範囲を有してもよい。しかしながら、典型的には、接着性中間層材料は好ましくは、0.76mmの厚さを有する。本発明の方法において使用され得る好適な接着性中間層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(PEVA)としても知られるエチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル酸エチルメチル(EMA)、およびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明の方法において使用される好ましい中間層は、ポリビニルブチラール(PVB)である。
【0062】
その後、第1および第2の事前鋳型されたガラスシート120、160を、「事前ニップ」プロセスにおいて、接着性中間層140でともに接合する。「事前ニップ」プロセスは、ガラスシート120、160と接着性中間層140との間に閉じ込められた空気を取り除くことを伴う。ガラスシートと接着性中間層との組み合わせに真空を適用することによって、空気を取り除いてもよい。あるいは、圧縮によって閉じ込められた空気を取り除いてもよく、この場合、空気は、ガラスシートと接着性中間層との間から排出される。
【0063】
本方法の最終ステップにおいて、ガラスシート120、160および接着性中間層を、ガラスシートおよび中間層を必要とされる形状の所望の積層板ガラスへと積層するオートクレーブプロセスで、ともに接合する。つまり、ガラスシートおよび接着性中間層の積層は、オートクレーブを使用して完了される。オートクレーブ内で、本発明の第1の方法に従う積層プロセスの典型的な圧力範囲は、30~120分間の時間で10バール~16バールの範囲内である。
【0064】
本発明の第1の方法に従う積層プロセスの典型的な温度範囲は、30~120分間の時間で100℃~130℃の範囲内である。つまり、積層プロセスに用いられるオートクレーブ温度範囲は、板ガラスの積層に典型的に使用される温度範囲よりも低い。
【0065】
好適な温度および圧力パラメータの選択により、ポリビニルブチラール(PVB)などの中間層がガラスシート間に好適な接着性結合を形成することが可能となる。加えて、温度および圧力パラメータは好ましくは、積層体構造内の流動が最小となり、故により薄いガラスシートまたはプライをより厚いガラスシートまたはプライの形状に追従させるような方法で選択される。
【0066】
本発明の方法に従って調製される積層板ガラス10は、1つ以上の方向にカーブしていてもよい。1つ以上の方向の各々の曲率半径は、例えば、300mm~8000mmであり得る。積層板ガラスが2つの方向にカーブしている場合、曲率の各方向は、互いに好適に直交している。
【0067】
本プロセスの積層段階の完了後、車両のフロントガラスなどの積層板ガラス180をオートクレーブから取り出し、洗浄し、使用準備ができた状態にパッケージングする。
【0068】
本発明者らは、上述の方法を使用することによって、より薄い第2のプライ160の外面190(S4)(車両に配置した際の内面)の曲率、および第1のより厚いプライ120の外面195の曲率が異なる程度が、標準的なプロセスおよびパラメータを使用して調製した積層板ガラスにおけるプライの同じ表面よりも少ない、積層板ガラスを達成することが可能であることを見出した。
【0069】
より薄い第2のプライ160の表面190(S4)の曲率、および第1のより厚いプライ120の外面195の曲率の増加の影響は、積層フロントガラスを通して見た時に明らかになり、(上述のように)光学的屈折力として測定される光学的歪みが、有意に低減することである。
【0070】
表1において、本発明の第1の方法に従って積層板ガラスを調製するために、例えば、オートクレーブ内で使用されるプロセスパラメータの要約が提供される。
【表1】
【0071】
表1に明記されるパラメータにおいて上述の方法を使用することによって、本発明者らは、より薄い内ガラスシートがより厚い外ガラスシートよりも柔軟であるという事実を利用することによって、優れた積層板ガラスを達成することができる。好ましいパラメータ範囲を使用して、(好ましくはPVBの形態の)中間層をガラスシートに接着させ、PVBの強剛性を維持しながら良好な積層性能を提供するのを可能にする条件で、オートクレーブプロセスを実行することもまた可能である。これは、積層板ガラスの重要な特徴であり、車両において使用される積層板ガラスにとって特に重要な特徴である。
【0072】
より具体的には、本発明の方法を使用することによって、2つのガラスシートおよび中間層の積層が、10~13バールの典型的なオートクレーブ圧力で、オートクレーブ温度を135℃~140℃の典型的なオートクレーブ温度未満の温度まで、90℃~132℃またはさらには100℃~130℃まで低下させることによって達成され得ることが理解され得る。
【0073】
しかしながら、最も好ましくは、本発明の方法におけるオートクレーブプロセスに必要とされるパラメータの慎重な選択によって、軽量フロントガラスを形成するための2つのガラスシートおよび中間層の積層が、そのような積層板ガラスについて記録される透過の光学的屈折力(または目に見える歪み)が、標準的なオートクレーブ条件を使用して調製された積層板ガラスについて記録される同じ値と比較して、有意に低減するような方法で達成され得ることが見出されている。
【0074】
好ましくは、本発明の方法を使用して調製される積層フロントガラスの記録される光学的屈折力は、2.1mmの厚さのガラスプライを有する標準的なフロントガラスについて記録される同じ値の50%を超えない。
【0075】
本発明の方法によって調製される軽量積層板ガラスについて記録される光学的屈折力の値はまた、従来の手段によって調製された軽量積層板ガラスについて得られる光学的屈折力の値と比較して、有意に改善され、これは典型的には、標準的なフロントガラスについて記録される光学的屈折力の値の80%~110%を超える。
【0076】
方法2。
図3において、本発明の第1の態様に従って車両のフロントガラスなどの積層板ガラスを調整する第2の方法の模式図200が図示される。
【0077】
方法2において、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなどの(平坦であり得る)第1のガラスシート220を、例えば、プレス曲げによって、上記の方法1に関して記載されるようにフロントガラスの所望の形状に形成する。
【0078】
次に、第2のより薄い平坦なガラスシート260(ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスなど)を、必要とされるエッジプロファイルを有する形状へと切断する。その後、第2のガラスシートは、例えば、これもまた方法1に関して上述される重力またはたわみ曲げプロセスによって、等しくまたはより小さくカーブした形状の所望のフロントガラスの板ガラスにも鋳造される。つまり、フロントガラスの板ガラスの第1のガラスシートを成形するのに使用されるプロセスとは異なる成形プロセスによって、必要とされる形状の第2のガラスシートが再び達成される。
【0079】
方法1と同様に、1つ以上の方向に、例えば、300mm~8000mmの曲率半径を有するガラスシートを鋳造することができる。第2のガラスシートは、第1のガラスシートよりもずっと薄く、2つのガラスシートは、異なる技術を使用して形成される。例えば、第1のガラスシートの厚さは、1.4mm~2.5mmの範囲内または1.6mm~2.3mmの範囲内であってもよい。しかしながら、第2のガラスシートの厚さは、0.2mm~1.4mmの範囲内または0.5mm~1.0mmの範囲内であってもよい。
【0080】
その後、第1および第2の鋳造されたガラスシートを、接着性中間層240によって組み合わせ、ともに接合する。接着性中間層は、これもまた上記の方法1に関して記載のとおりであってもよく、好ましくは0.76mmの厚さを有する、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)である。本発明の方法において使用され得る好適な追加の接着性中間層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(PEVA)としても知られるエチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル酸エチルメチル(EMA)、およびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
しかしながら、上述の方法1とは対照的に、方法2は、2つの鋳造されたガラスシートと接着性中間層との間から空気が排除される「事前ニップ」段階の前に、接着性中間層と接触していない第2のガラスシートの外面(S4)290と成形された鋳型285との間に、薄い箔層280が適用されるような改変を用いる。
【0082】
薄い箔層280は好ましくは、非粘着性フィルムであり、これを第2のガラスシート260と鋳型285との間に置いて、傷付きを防止する。好適な薄い箔としては、例えば、Hostophan FilmsまたはMitsubishi Polyester Film GmbHからHostaphan(登録商標)およびDiafoil(登録商標)の商品名で入手可能なポリエステルフィルムを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0083】
整形された鋳型285は好ましくは、第1のガラスプライ220のプロファイルに適合するようにサイズ決めされ、成形される。鋳型は、例えば、プラスチック、ガラス、またはセラミック材料などの好適な材料から構成され得る。
【0084】
しかしながら、より好ましくは、鋳型は、外ガラスシート220の調製に使用されるものと同じバッチプロセスによって調製され、それにより第1のガラスシートと実質的に同じ形状になるように形成されたガラスシートである。この鋳型は、本明細書において従属鋳型または従属ガラスと呼ばれる。
【0085】
その後、第1および第2の事前鋳造されたガラスシート220、260を、図3に示される配置300で、薄い箔280および従属鋳型またはガラス285と組み合わせて、「事前ニップ」プロセスで接着性中間層240とともに組み合わせる。つまり、第1のガラスシート220の面295および従属鋳型またはガラス285の面298が、「事前ニップ」構造の2つの外面を形成し、かつ第2のより薄いガラスシート260が、第1のガラスシート220および外ガラスシート285から、第1のガラスシート側の中間層材料240によっておよび従属ガラス285側の薄い箔層280によって分離されている。
【0086】
その後、ガラスシート220、260と接着性中間層240との間に閉じ込められた空気を、例えば、真空抽出技術またはニップローラープロセスを使用して、方法1にあるように取り除く。
【0087】
その後、ガラスシートおよび接着性中間層の積層は、オートクレーブを使用して完了される。本発明の第2の方法においてオートクレーブ積層に使用される圧力範囲は、典型的には30~60分間の時間で10バール~13バールの範囲内である。第2の方法に従う積層に使用される温度範囲は、典型的には30~60分間の時間で90℃~132℃またはさらには100℃~110℃の範囲内である。本発明に従う第2の方法の好ましい一実施形態において、およそ45分間の時間で、積層プロセスの温度は105℃辺りであってもよく、圧力はおよそ10バールであってもよい。
【0088】
方法2における好適な温度および圧力パラメータの選択により、ポリビニルブチラール(PVB)などの中間層がガラスシート間に好適な接着性結合を形成することが可能となる。つまり、温度および圧力パラメータは好ましくは、積層体構造内の流動が最小となり、故により薄いガラスシートまたはプライを、より厚いガラスシートまたはプライの形状およびまた従属ガラスの形状にも追従させるような方法で選択される。加えて、「事前ニップ」プロセスにおいて真空リングまたは真空バッグを用いて、従属ガラスを定位置に保持する場合、これがオートクレーブプロセス中にも使用され得ることが好ましい。
【0089】
オートクレーブは好ましくは、本発明に従う積層プロセスにおいて用いられる一方で、当業者であれば、必要に応じて、オートクレーブプロセスについて上記に概要を述べた好適なパラメータを使用して、真空リングまたは真空バッグから真空に引くために、オートクレーブの代わりに真空ポートを備えた炉を利用することもまた可能であることを理解するだろう。
【0090】
結果として調製される積層板ガラスは、1つ以上の方向にカーブしていてもよい。1つ以上の方向の各々の曲率半径は、300mm~8000mmであり得る。積層板ガラスが2つの方向にカーブしている場合、曲率の各方向は、互いに好適に直交している。
【0091】
積層プロセスの完了後、フロントガラスなどの積層板ガラス構造は、オートクレーブから取り出すことができる。その後、従属鋳型またはガラス285および薄いフィルム280を積層された第1および第2のガラスシートから取り除いて、積層板ガラス400を得ることができ、これは、洗浄後に使用準備ができた状態となる。
【0092】
加えて、薄い箔層280の使用により、従属ガラス鋳型285から内ガラス層260を容易に分離することが可能となり、内ガラス層の表面290および従属ガラス鋳型286の内面284もまた、傷付きから保護される。従属ガラス鋳型を積層されたガラスプライから分離した後、方法2の第2の反復において従属ガラス鋳型を再使用することが可能である。従属ガラス鋳型は、再び従属鋳型として使用してもよく、またはあるいは、従属ガラス鋳型は、第1のガラスシート220として使用してもよい。この方法において、方法2は、従属ガラス鋳型が再使用され得るために、それが過剰量の廃棄ガラスの生成を回避すること、および加えて、本方法によって調製される積層板ガラスが改善された光学的特性を有することなどの利点を提供する。
【0093】
本発明者らは、上述の方法2を使用することによって、第2のシート260の内面290(S4)の曲率および第1のシート220の外面295の曲率が実質的にまたはほとんど同一である、積層板ガラスを達成することが可能であることを見出した。
【0094】
つまり、本発明の方法を使用することによって、本発明者らは、第2のより薄いガラスシート(または内ガラス)が第1のより厚いガラスシート(または外ガラス)の形状を取るように適応させることが可能であることを見出した。
【0095】
本発明者らはまた、本発明の方法における使用に好ましい従属ガラスまたは鋳型285が、第1のガラスシートと同じプロファイルに追従し、かつ例えば、第1のガラスシートと同じプレス曲げバッチプロセスで形成され得る、別の成形された第1のガラスシートであることも見出した。
【0096】
上述の本発明の実施形態において調製される積層板ガラスは好ましくは、透明フロートガラスなどの組成物を有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスシートを含む。例えば、ガラスシートはまた、積層板ガラスに日射制御の手段を提供するための染色剤としての、酸化鉄も含み得る。
【0097】
典型的なソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、例えば、69~74重量%のSiO2、Al、10~16重量%のNaO、0~5重量%のKO、0~6重量%のMgO、5~14重量%のCaO、0~2重量%のSO、および0.005~2重量%のFeを含み得る。
【0098】
ガラスシートはまた、通常最大2%の量で存在する他の添加剤、例えば、清澄助剤も含有し得る。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物はまた、透過光で見た時にガラス組成物に所望の色を与えるために、CO、NiO、およびSeなどの他の着色剤も含有してもよい。
【0099】
また、本発明の方法において使用されるガラスシートの各々のソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、同じであっても異なってもよい。
【0100】
加えて、本発明の方法において使用されるガラスシートのうちの1つ以上は、化学的に強化されていてもよい。化学的強化(toughening)または強化(strengthening)は、例えば、カリウム塩溶液(硝酸カリウムなど)でガラスシートを処理することを伴い、この溶液に、300℃~460℃の範囲内の温度、より好ましくは400℃~460℃の範囲内の温度、最も好ましくは420℃~460℃の範囲内の温度(およそ450℃など)でガラスシートを浸す。ガラスをカリウム塩に浸すと、ガラス表面のナトリウムイオンが溶液からのカリウムイオンによって置換され、積層時にガラスシートに追加の衝撃抵抗力が与えられる。
【0101】
また、本発明の方法に従うと、外面S1は好ましくは、例えば、フロントガラスの周辺の周りに延びる300mmのバンドにおいて、10MPa~20MPaの範囲の表面残留圧縮応力を有し得る。
【0102】
つまり、例えば、積層板ガラスの第1のガラスシート120、220の凸面S1の表面圧縮応力は、11MPa未満の純応力および25MPa超のエッジ圧縮を有する残留エッジ応力を有するエッジ領域を有し得る。
【0103】
図8において、本発明に従ってフロントガラスなどの積層板ガラスを調製する例示的な方法の要約的な流れ図が提供される。
【0104】
最初に、ステップ321において、例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第1のシートが提供される。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、透明であっても染色してあってもよい。透明フロートガラスとは、参照により本明細書に組み込まれる、BS EN572-1およびBS EN572-2(2004)に定義される組成を有するガラスシートを意味する。
【0105】
ステップ323で、第1のガラスシートを切断し、例えば、プレス曲げなどの従来の技術を使用して、全体的に所望の形状に成形する。透明フロートガラスのガラスシートは、例えば、1.4~2.5mmの範囲内の厚さを有し得る。ステップ325で、ガラスシートのエッジ(外ブランクとしても知られる)を平滑化または「エッジ加工」し、その後ガラスシートを洗浄する。
【0106】
洗浄後、最終製品の必要に応じて、ガラスシートの一方または両方の主要表面に印刷を施してもよい。例えば、最終製品が車両のフロントガラスである場合、ガラスシートの周辺の周りに、光学的に不透明かつ/または導電性であり得るインクの層を印刷して、当該技術分野において慣習的であるような遮蔽バンドを形成してもよい。
【0107】
ステップ327において、ガラスシートを、好適な炉内でガラス軟化温度まで加熱する。その後、熱軟化したガラスを一対の補完的成形部材間でプレス曲げして、外シートに所望の曲率を与えてもよい。プレス曲げにより、ガラスシートの形状の正確な制御が可能となる。プレス曲げ工程および操作の例は、WO2005/033026A1およびEP0677486A2に記載されている。曲げられた後、例えば、透明フロートガラスの切断されたシートは、フロントガラスなどの積層板ガラスの第1のシートとして進行する。
【0108】
第1のガラスシートの応力を制御するために、上および/または下プレス曲げ成形部材を加熱して、外シートの残留エッジ応力および/またはエッジ圧縮を制御してもよい。上および/または下プレス曲げ成形部材に必要とされる温度の選択によって、例えば、11MPa未満の純応力および25MPa超のエッジ圧縮を有する残留エッジ応力を有するエッジ領域を有する外シートを生産することが可能である。
【0109】
残留表面応力はまた、プレス曲げ操作の完了直後、曲がったシートを室温まで冷却する前に、曲がったガラスシートの周辺の周りに冷気を向けることによっても制御することができる。
【0110】
好適な長さの時間にわたってガラスシートのエッジに冷気を向けて、冷却され、曲がったガラスシートに必要とされる残留応力を生成した後、ステップ329で、曲がったガラスシートを、好適な焼き鈍し炉内で室温まで制御可能に冷却する。
【0111】
一連のガラスシートを曲げることは、いくつかの第1のガラスシートを次々に曲げるバッチプロセスの一部を形成し得る。この方法において、あるバッチのガラスシートのうちの1つを、積層板ガラスにおける第1のガラスシートとして使用してもよく、同じバッチのガラスシートの別のものを、後述のオートクレーブ手順中の従属ガラス鋳型として使用してもよい。
【0112】
第1のガラスシートは、1つ以上の方向に曲がっていてもよい。1つ以上の方向の曲率は、300mm~8000mmの曲率半径を有してもよい。
【0113】
積層板ガラスの第2のガラスシートは、以下のように生産される。
【0114】
ステップ331で、例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートが提供される。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、透明であっても染色してあってもよく、またはソーダ石灰ケイ酸塩ガラスは、改変されていてもよい。この実施例において、ステップ331で、透明フロートガラスシートが提供される。
【0115】
ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートは好ましくは、例えば、0.7mm以下辺りの厚さを有してもよく、ステップ333で曲がっていない第1のガラスシート(または外ブランク)と同じ周辺を有するように切断される。曲げられる前に、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの切断された第2のシートを、内ブランクと呼ぶこともできる。ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートは、例えば、0.2mm~1.4mmの厚さを有し得る。あるいは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの第2のシートは、例えば、0.5mm~1mmの厚さを有し得る。
【0116】
ステップ335で、第2のガラスシートは好ましくは、好適にエッジ加工され、曲げられる前に洗浄される。
【0117】
ステップ337で、第2のガラスシートを好ましくは好適なリング鋳型上に置いて、第2のガラスシートをその周辺近くに支持する。その後、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスを軟化させ、重力の影響下でたわませるのに十分な温度まで、第2のガラスシートを加熱する。この手順は従来、重力またはたわみ曲げと呼ばれる。ガラスは、曲がった第1のガラスシートの形状に近い形状にたわむか、または曲がる。しかしながら、この時点では、第2のガラスシートの曲率は、第1のガラスシートと同じではない可能性がある。
【0118】
ステップ339で、温度を室温まで低減させるための制御された冷却を使用して、曲がった第2のガラスシートを焼き鈍しする。
【0119】
ステップ340で、例えば、典型的には第2のガラスシートのナトリウムイオンがカリウムイオンで化学的に交換されるイオン交換プロセスを使用して、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの曲がった第2のガラスシートを化学的に強化してもよい。
【0120】
1mm以下の厚さを有するガラスシートを熱強化することは困難である可能性があるが、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの曲がった第2のガラスシートが熱強化されてもよいこともまた予想される。
【0121】
ステップ341で、(ステップ321~329後に)曲がった第1のガラスシートおよび(ステップ331~340後に)曲がった第2のガラスシートが提供される。
【0122】
ステップ342で、一対の曲がった第1および第2のガラスシートを洗浄し、ステップ344で、0.3mm~1.5mmの厚さを有する、例えば、ポリビニルブチラールなどの中間層材料のシートを、第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に配置してもよい。
【0123】
この特定の実施例において、中間層材料は好ましくは、0.76mmの厚さのポリビニルブチラール(PVB)のシートであり得るが、他の好適な接着性中間層材料が使用されてもよい。
【0124】
あるいは、ステップ345で、曲がった第1のガラスシートと第2のガラスシートとの間に好適な中間層を配置することに加えて、曲がった第2のガラス層の、中間層と反対側に薄い箔層を置いてもよい。加えて、別の曲がった第1のガラスシート(または外ブランク)の形態の鋳型を、薄い箔層の、曲がった第2のガラスシートと反対側に置いてもよい。
【0125】
その後、ステップ346で、追加の箔層を有するか、または有しない、かつ従属鋳型(追加の曲がった第1のガラスシートなど)を有する、PVBシートがそれらの間に入った第1のガラスシートおよび第2のガラスシートの組み立て体を、方法1または方法2に関して上記に定義される好適な条件を使用してオートクレーブして、2つのガラスシートをともに接着させる役割を果たすPVBを介して、第1のガラスシートを第2のガラスシートに接合する。
【0126】
その後、ステップ347において、箔層および従属鋳型を取り外し、ステップ349で、従属鋳型が別の第1のガラスシートの形態である場合、これを洗浄し、ステップ341に戻して、積層用の曲がった第1のガラスシートとして、または再び従属鋳型として再利用してもよい。
【0127】
ステップ348で、このように生産された積層板ガラスを、顧客に配達される前に洗浄および点検する。
【0128】
結果
本発明の第1の態様に従う方法の提案された有利な効果の証拠を提供するために、曲率試験の偏向測定を使用して、積層板ガラスおよび個々のガラスシートを試験した。
【0129】
透明体の両表面の曲率、特に曲率の差が、透明体の光学的屈折力を提供することは、光学の当該技術分野において一般に既知である。
【0130】
偏向測定法は、光沢のある表面の曲率の測定に使用される信頼できる手順である。積層板ガラスにおいて、内外(または第1および第2の)ガラスシートの形状が異なる場合、板ガラスの分析時に、「裏」表面、つまり分析が意図されない表面からのシグナルを抑制するためのステップが採られる。これは、黒色の接着性テープを使用することによって達成することができる。
【0131】
偏向測定試験法は、相偏向を測定する原理に基づくセンサー技術を使用する。
【0132】
偏向測定法において、表面の局所勾配を計算するために、正弦プロファイルを有するフリンジパターンを白色板の上に投射する。ビデオカメラが、試験中の表面を介したこのパターンの反射を観察する。表面の局所勾配は、観察されたフリンジパターンの歪みから直接計算することができる。この技術は、曲率を算出するのにデータを一度しか区別しなくてよいため、範囲測定法と比較して利点を提供する。したがって、二度区別しなくてはならない範囲データの場合と比較して、高周波数ノイズの増幅が低減される。
【0133】
したがって、企業3D-Shape GmbHから入手可能な測定システムを使用して、本発明の方法に従って調製された積層板ガラスの測定に使用される偏向測定法の計算を実行した。そのようなシステムはまた、例えば、企業ISRA Vision AGからも入手可能である。
【0134】
図4において、フロントガラスなどの積層板ガラスにおける単一のガラスシートまたはプライの両方の曲率の測定を描写する、例示的なグラフ表示が図示される。図4のグラフ表示において、縦軸は、示される挿入写真において示されるフロントガラスの垂直線に沿って測定される曲率値を(m-1で)示す。縦軸は、フロントガラスのシートの上から下までの距離をmmで測定する。グラフ(A)のより濃い線は、はっきりと異なる構造を図示する第1のガラスまたは外ガラスの測定に関連する。グラフのより薄い線(B)は、中央が平滑であるが、ガラスプライの上部分に明らか曲率の変化を有する、第2のガラスまたは内ガラスの表面の測定に関連する。これらの構造の背景を考察することは、本発明の目的ではない。本発明に関する技術の使用のためには、ガラスシートが、それらの形成に関与する成形プロセスに応じて、異なる特徴を有することが十分である。
【0135】
本発明に従って、2つのサンプルの積層フロントガラスを、上述の方法2に従って調製した。フロントガラスを目視によって分析し、(図4の挿入写真に示される)各試料上の同一の線に沿って曲率値を測定した。内面S4が抑制された状態で、積層フロントガラスの外側(または外)面(つまり装着時に車両の外側に曝露される表面)、つまり表面S1を測定した。外面S1が抑制された状態で、積層フロントガラスの内面、つまり表面S4もまた測定した。
【0136】
図5は、2つのガラスプライの曲率の測定の一例を提供する。光学的方法を使用することによって、(ともに1/mで測定される)外ガラスの外面S1の曲率および内ガラスの内面S4の曲率を、ガラス上の垂直線に沿った垂直位置の関数として図示する。
【0137】
曲率測定の結果を図5に提供する。図5において、より濃い色のカーブ(C)は、外(S1)面の曲率値を描写し、より薄い色のカーブ(D)は、対応する内面S4の曲率値を描写する。図5から、測定の不確実性を除いて、両方の表面がともに「フィットする」こと、つまり各表面S1およびS4の曲率が一般的なプロファイルに追従することが明らかである。つまり、図5に示されるデータを分析することによって、S1およびS4の両方の表面の曲率データが平均で0.0101m-1だけ異なり、最大の差がわずか0.026m-1であることが見出される。したがって、このデータは、両方の表面が曲率に関してほぼ同一であることを確認する。
【0138】
したがって、図5から両方の表面がほぼ同一の構造を呈することが理解され得る一方で、対照的に、図4は単一のガラスプライの相当する測定を図示し、ここにはガラスプライ間に曲率の明らかな差が存在する。
【0139】
フロントガラスの内S4面および外S1面の曲率の整合の結果として、本発明に従って調製された積層フロントガラスの透過光学は、有意に改善されている。つまり、外ガラスシートS1の曲率値は、本発明の方法を使用して生産された内シートS4について記録される曲率値に実質的に適合し、積層フロントガラス上に現れるレンズ効果、透過光学的歪み、または曇りは、最小である。
【0140】
本発明の方法によって生産される積層フロントガラスにおける透過光学的歪みまたは曇りの改善はまた、図6および図7に描写されるように、積層フロントガラスの目視による比較からも明らかである。
【0141】
図7は、本発明に従って調製された積層軽量フロントガラスの画像であり、ここで、積層体(220)の外ガラスシートは、プレス曲げプロセスを使用して形成される一方で、内ガラスシート(260)は、代替的な手順、すなわち重力たわみ曲げプロセスを使用して形成され、2つのシートは、本発明の方法に従って積層されている。
【0142】
図6は、プレス曲げされた外ガラスシートが、鋳型との直接的で完全な表面接触によって所望の形状へと完全に成形され、内ガラスシートが、重力曲げによって調製される、既知の方法によって調製された軽量積層フロントガラスの絵画表示である。
【0143】
図6から、フロントガラスが斑状の外観を有し、フロントガラスにわたって明らかな灰色の陰影の非均一な斑点があることが理解され得る。この灰色の陰影は、フロントガラスの内領域で特に明らかである。フロントガラスの灰色の色彩のそのような急速な変化は、フロントガラス内の急速に変化する光学的屈折力、ならびに故に所望されない光学的効果の性質および数の増加を示す。
【0144】
対照的に、図7の積層フロントガラスの目視から、積層フロントガラスがより均一な色彩を呈し、斑状の陰影の斑点を有しないことが理解され得る。結果として、このフロントガラスの透過光学は、改善されている。
【0145】
本発明の方法によって生産された積層フロントガラスの歪み効果を評価するために、積層フロントガラスを通した光の透過もまた、フロントガラス全体の光学をミリジオプトリ(mdpt)で測定することができる機器システムによって測定した。
【0146】
使用される機器システムは、光学的屈折力を測定することができる。市場には、この機能を実行することができるいくつかの機器が存在する。これらのシステムは、単一の光源からの光を、フロントガラスを通して白色のスクリーン上に投射することによって機能する。その後、カメラが(「影絵」と呼ばれる)フロントガラスの画像を撮影し、フロントガラスの光学的屈折力をミリジオプトリで計算する。
【0147】
以下の評価において、垂直方向に偏向および歪みを引き起こす屈折力(つまり、垂直成分)のみを測定した。以前に言及したとおり、機器システムは、ECE R43基準の協定に従って、または企業ISRA Vision AGによってもしくは「The requirements to test facilities for inspection of the visual distortion at vehicle panes in transmission」に関するVDA 312推奨事項(2015年3月)などの適切なVDA推奨事項に従って調製されたデバイスによって機能する。
【0148】
したがって、本発明に従って調製された積層フロントガラスの光学的屈折力は、垂直方向から61°の典型的な取り付け角度を使用して測定した。(ECE R43またはVDA312に記載される)いわゆる視覚帯域Aに従って測定される光学的屈折力の範囲値を報告する。
【0149】
様々な積層フロントガラスの光学的屈折力を記録し、上述のように影像を撮影した。評価の結果を表4に提供する。
【表2】
【0150】
したがって、本発明の方法に従うと、改善された視覚的外観および光学的パラメータを有する軽量フロントガラスを生産することが可能であることが理解され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8