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特許7257347インサート成形フィルター、および、インサート成形フィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】インサート成形フィルター、および、インサート成形フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230406BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20230406BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230406BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/12
B29C45/26
B01D39/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020029339
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133535
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徳雄
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-177639(JP,A)
【文献】特開2011-148312(JP,A)
【文献】特開2001-179770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の本体に、筒状部を有したメッシュがインサート成形されたインサート成形フィルターであって、
第1環状部、第2環状部、および、前記第1環状部と前記第2環状部とに接続される複数の柱状部を備え、前記第1環状部と前記第2環状部との間に、前記複数の柱状部によって区切られた複数の開口を有した本体と、
前記複数の柱状部によって区切られた前記複数の開口を覆うように前記本体と一体に成形されたメッシュと、を備え、
前記本体は、前記第1環状部の径方向において前記メッシュよりも外側に位置する樹脂の導入部を備え
前記導入部は、前記第1環状部と前記第2環状部とが並ぶ方向において、前記第1環状部に対して前記第2環状部とは反対側に位置する
インサート成形フィルター。
【請求項2】
樹脂製の本体に、筒状部を有したメッシュがインサート成形されたインサート成形フィルターであって、
第1環状部、第2環状部、および、前記第1環状部と前記第2環状部とに接続される複数の柱状部を備え、前記第1環状部と前記第2環状部との間に、前記複数の柱状部によって区切られた複数の開口を有した本体と、
前記複数の柱状部によって区切られた前記複数の開口を覆うように前記本体と一体に成形されたメッシュと、を備え、
前記本体は、前記第1環状部の径方向において前記メッシュよりも外側に位置する樹脂の導入部を備え、
前記メッシュは、前記第1環状部が区画する開口を覆う底部をさらに備え、
前記第1環状部は、前記第1環状部の開口と対向する視点から見て、他の部分よりも広い線幅を有した幅広部を備え、
前記幅広部は、前記第1環状部の外縁が区画する円状の領域内に位置する
インサート成形フィルター。
【請求項3】
前記導入部は、前記第1環状部と前記第2環状部とが並ぶ方向において、前記第1環状部に対して前記第2環状部とは反対側に位置する
請求項に記載のインサート成形フィルター。
【請求項4】
前記導入部は、前記柱状部に位置する
請求項1から3のいずれか一項に記載のインサート成形フィルター。
【請求項5】
前記導入部は、複数の導入部のうちの1つであり、
各導入部は、互いに異なる前記柱状部に1つずつ位置する
請求項1からのいずれか一項に記載のインサート成形フィルター。
【請求項6】
前記メッシュは、前記第1環状部が区画する開口を覆う底部をさらに備え、
前記第1環状部は、前記第1環状部の開口と対向する視点から見て、他の部分よりも広い線幅を有した幅広部を備え、
前記幅広部は、前記第1環状部の外が区画する円状の領域内に位置する
請求項1,3から5のいずれか一項に記載のインサート成形フィルター。
【請求項7】
筒状部を備えるインサート成形用メッシュを準備すること、
前記インサート成形用メッシュを金型に配置すること、および、
前記筒状部の径方向において前記筒状部よりも外側に位置するゲート口から、前記金型のうちで、前記インサート成形用メッシュと一体に成形される本体を成形するための成形部に樹脂を圧送すること、を含み、
前記成形部に前記樹脂を圧送することは、前記本体の第1環状部と第2環状部とが並ぶ方向において、前記第1環状部に対して前記第2環状部とは反対側に前記樹脂の導入部が位置するように、前記成形部に前記樹脂を圧送することを含む
インサート成形フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形フィルター、および、インサート成形フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を濾過するフィルターを製造する方法として、インサート成形が用いられている。インサート成形の一例では、円柱状のコアピンを備える下型と、コアピンが入り込む穴を備える上型とから構成される金型が用いられる。上型が有する穴の底部には、コアピンの周方向において等間隔で並ぶ複数の突条が位置している。突条は、コアピンの中心軸に対して傾斜した形状を有している。
【0003】
こうした金型を用いたインサート成形では、筒状を有したメッシュが準備される。そして、筒状を有したメッシュが、コアピンの外周面に沿うようにコアピンに配置された状態で、メッシュが配置されたコアピンが上型の穴に入り込む。この際に、メッシュの先端における一部が突条に接触することによって、突条に接触しなかった部分に比べて、メッシュの中心軸寄りに位置する。これによって、金型に充填された樹脂によって形成された本体に、メッシュの先端における一部が埋め込まれる。そのため、メッシュの先端が本体の外表面に接している場合に比べて、本体に対するメッシュの剥離強度が高まる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-69114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したインサート成形では、本体に対するメッシュの剥離強度を高めるために、メッシュの先端における一部を突条に接触させる必要がある。そのため、突条の位置によって金型の構造が制約され、結果として、完成したフィルターにおけるメッシュの位置も制約されてしまう。それゆえに、本体に対するメッシュの剥離強度を確保しつつも、フィルターでのメッシュの位置における自由度を高めることが求められている。
【0006】
本発明は、本体に対するメッシュの剥離強度を確保し、かつ、フィルターでのメッシュの位置における自由度を向上可能としたインサート成形フィルター、および、インサート成形フィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのインサート成形フィルターは、樹脂製の本体に、底部と前記底部の一部が接続された筒状部とを有したメッシュがインサート成形されたインサート成形フィルターである。第1環状部、第2環状部、および、前記第1環状部と前記第2環状部とに接続される複数の柱状部を備え、前記第1環状部と前記第2環状部との間に、前記複数の柱状部によって区切られた複数の開口を有した本体と、前記第1環状部が区画する開口と、前記複数の柱状部によって区切られた前記複数の開口とを覆うように前記本体と一体に成形されたメッシュと、を備える。前記本体は、前記第1環状部の径方向において前記メッシュよりも外側に位置する樹脂の導入部を備える。
【0008】
上記課題を解決するためのインサート成形フィルターの製造方法は、底部と底部の一部が接続された筒状部とを備えるインサート成形用メッシュを準備すること、前記インサート成形用メッシュを金型に配置すること、および、前記筒状部の径方向において前記筒状部よりも外側に位置するゲート口から、前記金型のうちで、前記インサート成形用メッシュと一体に成形される本体を成形するための成形部に樹脂を圧送すること、を含む。
【0009】
上記各構成によれば、インサート成形フィルターの製造時には、完成したインサート成形フィルターが有する導入部に対応する部分に位置するゲート口から、溶融した樹脂が金型における本体の成形部に導入される。この際に、ゲート口が、第1環状部の径方向においてメッシュよりも外側に位置するため、ゲート口から圧送された樹脂によって、メッシュの筒端が、第1環状部の径方向における内側に向けて折り曲げられる。これにより、完成したインサート成形フィルターにおいて、メッシュの筒端における少なくとも一部が、第1環状部内に埋め込まれ、結果として、本体に対するメッシュの剥離強度が確保される。しかも、ゲート口の位置によってインサート成形フィルターに対するメッシュの位置は制約されないことから、インサート成形フィルターに対するメッシュの位置の自由度を高めることが可能である。
【0010】
上記インサート成形フィルターにおいて、前記導入部は、前記第1環状部と前記第2環状部とが並ぶ方向において、前記第1環状部に対して前記第2環状部とは反対側に位置してもよい。この構成によれば、ゲート口から圧送された樹脂が高いエネルギーを有した状態でメッシュの筒端に到達しやすいため、メッシュの筒端が、より確実に折り曲げられる。
【0011】
上記インサート成形フィルターにおいて、前記導入部は、前記柱状部に位置してもよい。この構成によれば、導入部が柱状部に位置することによって、導入部を第1環状部の径方向においてメッシュよりも外側に位置させることが容易である。
【0012】
上記インサート成形フィルターにおいて、前記導入部は、複数の導入部のうちの1つであり、各導入部は、互いに異なる前記柱状部に1つずつ位置してもよい。この構成によれば、第1環状部の周方向において、メッシュの筒端のうちで、第1環状部の径方向における内側に向けて折り曲げられる部分を広げることが可能である。
【0013】
上記インサート成形フィルターにおいて、前記第1環状部は、前記第1環状部の開口と対向する視点から見て、他の部分よりも広い線幅を有した幅広部を備え、前記幅広部は、前記第1環状部の外径が区画する円状の領域内に位置してもよい。この構成によれば、第1環状部が幅広部を有する分だけ、メッシュの底部が幅広部に埋没するため、第1環状部からメッシュが剥がれにくくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本体に対するメッシュの剥離強度を確保し、かつ、フィルターでのメッシュの位置における自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態におけるインサート成形フィルターの構造を示す斜視図。
図2図1が示すインサート成形フィルターを第1環状部と対向する視点から見た平面図。
図3図1が示すインサート成形フィルターを1つの柱状部と対向する視点から見た側面図。
図4図1が示すインサート成形フィルターの製造に用いられるインサート成形用メッシュの構造を示す斜視図。
図5】インサート成形フィルターの作用を説明するための作用図。
図6図1が示すインサート成形フィルターの構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図6を参照して、インサート成形フィルターの一実施形態を説明する。
図1が示すように、インサート成形フィルター10は、本体11とメッシュ12とを備えている。インサート成形フィルター10では、樹脂製の本体11に、底部と底部の一部が接続された筒部とを有したメッシュ12がインサート成形されている。
【0017】
本体11は、第1環状部11A、第2環状部11B、および、複数の柱状部11Cを備えている。各柱状部11Cは、第1環状部11Aと第2環状部11Bとに接続されている。本体11は、第1環状部11Aと第2環状部11Bとの間に、複数の柱状部11Cによって区切られた複数の開口11E1を有している。メッシュ12は、第1環状部11Aが区画する開口11E2と、複数の柱状部11Cによって区切られた複数の開口11E1とを覆うように本体11と一体に成形されている。本体11は、第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置する樹脂の導入部11Dを備えている。
【0018】
インサート成形フィルター10の製造時には、完成したインサート成形フィルター10が有する導入部11Dに対応する部分に位置するゲート口から、溶融した樹脂が金型における本体11の成形部に導入される。この際に、ゲート口が、第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置するため、ゲート口から圧送された樹脂によって、メッシュ12の筒端が、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる。これにより、完成したインサート成形フィルター10において、メッシュ12の筒端における少なくとも一部が、第1環状部11A内に埋め込まれ、結果として、本体11に対するメッシュ12の剥離強度が確保される。しかも、ゲート口の位置によってインサート成形フィルター10に対するメッシュ12の位置は制約されないことから、インサート成形フィルター10に対するメッシュ12の位置の自由度を高めることが可能である。
【0019】
導入部11Dは、柱状部11Cに位置している。導入部11Dが柱状部11Cに位置することによって、導入部11Dを第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置させることが容易である。
【0020】
第1環状部11Aおよび第2環状部11Bは、それぞれ円環状を有している。第2環状部11Bの直径は、第1環状部11Aの直径よりも大きい。各柱状部11Cは、第1環状部11Aから第2環状部11Bに向かう方向に沿って延びる直線状を有している。
【0021】
各柱状部11Cにおいて、第2環状部11Bに接続する端部を基端とし、第1環状部11Aに接続する端部を先端とする。この場合に、各柱状部11Cの先端が、第1環状部11Aの外側面に接続されている。各柱状部11Cの基端は、第2環状部11Bのうちで、第1環状部11Aに対向する面に接続されている。また、第2環状部11Bの直径が第1環状部11Aの直径よりも大きいことによって、本体11の外形は、円錘台状を有している。そのため、導入部11Dが柱状部11Cに位置することによって、導入部11Dは、第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置することが可能である。
【0022】
導入部11Dは、例えば、インサート成形フィルター10の製造時においてゲート口が位置したことを示す痕跡である。この場合には、導入部11Dは、金型において、本体11を成形するための成形部に接続されたゲート中の樹脂が硬化することによって形成されたゲート痕である。
【0023】
図2は、第1環状部11Aが区画する開口11E2と対向する視点から見たインサート成形フィルター10の構造を示している。
図2が示すように、本体11は、複数の導入部11Dを備えている。各導入部11Dは、複数の導入部11Dのうちの1つである。各導入部11Dは、互いに異なる柱状部11Cに1つずつ位置している。そのため、第1環状部11Aの周方向において、メッシュ12の筒端のうちで、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる部分を広げることが可能である。
【0024】
図2が示す例では、本体11は、4つの柱状部11Cを備え、かつ、柱状部11Cと同数の導入部11Dを備えている。4つの柱状部11Cは、第1環状部11Aの周方向において等しい間隔を空けて配置されている。これにより、導入部11Dが、第1環状部11Aの周方向において等しい間隔を空けて配置されている。そのため、複数の導入部11Dが、第1環状部11Aの周方向における一部に偏って配置される場合に比べて、メッシュ12の筒端において、高いエネルギーを有した樹脂が供給される部位が、第1環状部11Aの周方向において偏ることが抑えられる。これにより、メッシュ12の筒端のうちで、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる部位が、第1環状部11Aの周方向において偏ることが抑えられる。
【0025】
第1環状部11Aは、第1環状部11Aの開口11E2と対向する視点から見て、第1環状部11Aにおける他の部分よりも広い線幅を有した幅広部11AWを備えている。幅広部11AWは、第1環状部11Aの外縁11AEが区画する円状の領域内に位置している。第1環状部11Aが幅広部11AWを有する分だけ、メッシュ12の底部が幅広部11AWに埋没するため、第1環状部11Aからメッシュ12が剥がれにくくなる。
【0026】
図3は、本体11が有する柱状部11Cの1つと対向する視点から見たインサート成形フィルター10の構造を示している。
図3が示すように、導入部11Dは、第1環状部11Aと第2環状部11Bとが並ぶ方向において、第1環状部11Aに対して第2環状部11Bとは反対側に位置する。これにより、ゲート口から圧送された樹脂が高いエネルギーを有した状態でメッシュ12の筒端に到達しやすいため、メッシュ12の筒端が、より確実に折り曲げられる。
【0027】
第1環状部11Aと第2環状部11Bとが並ぶ方向を上下方向に設定し、かつ、第1環状部11Aが第2環状部11Bよりも上方に位置する場合に、導入部11Dは、第1環状部11Aよりも上方に位置する。図3が示す例では、導入部11Dは、その導入部11Dが配置された柱状部11Cの先端に位置している。そのため、インサート成形フィルター10の製造時において、ゲート口は、メッシュ12の筒端に対して、メッシュ12の径方向における外側かつ上方に位置する。これにより、メッシュ12の筒端は、ゲート口から金型の成形部に圧送された樹脂の流路上に位置し、かつ、メッシュ12の筒端には、高いエネルギーを有した樹脂が供給される。結果として、メッシュ12の筒端が、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる。
【0028】
図4は、インサート成形フィルター10の製造に用いられるメッシュ12の構造における一例を示している。
図4が示すように、メッシュ12は、円錘台状を有している。メッシュ12は、筒状部12A、底部12B、および、連結部12Cを備えている。筒状部12Aは、帯状部の両端部に1つずつ位置する2つの接合代が互いに接合されることによって形成される。接合代上には、複数の溶接部12Dが、筒状部12Aが延びる方向に沿って並んでいる。
【0029】
連結部12Cは、底部12Bの一部、より詳しくは、底部12Bの縁における一部を筒状部12Aに連結している。筒状部12Aのうちで、底部12Bによって覆われる筒端の一部のみが底部12Bに接続されている。そのため、インサート成形フィルター10の製造時において、筒状部12Aの筒端に向けて樹脂が供給されることによって、筒状部12Aの筒端が、筒状部12Aの径方向における内側に向けて折れ曲がることが可能である。
【0030】
連結部12Cの両側には、筒状部12Aの筒端、底部12B、および、連結部12Cによって区画される隙間12Eが1つずつ位置している。第1環状部11Aが備える幅広部11AWは、2つの隙間12Eを覆っている。
【0031】
インサート成形フィルター10の製造方法は、上述したインサート成形用のメッシュ12を準備すること、および、インサート成形用のメッシュ12を金型に配置することを含む。インサート成形フィルター10の製造方法は、さらに、筒状部12Aの径方向において、筒状部12Aよりも外側に位置するゲート口から、金型のうちで、メッシュ12と一体に成形される本体11を成形するための成形部に樹脂を圧送することを含む。
【0032】
図5は、インサート成形フィルター10の製造時における樹脂の流れを模式的に示している。なお、図5では、図示および説明の便宜上、完成したインサート成形フィルター10の一部における断面構造に対して、製造時における樹脂の流れが示されている。また、図5は、柱状部11Cのうちの1つにおける柱状部11Cが延びる方向に沿う断面構の一部を、メッシュ12の断面構造における一部とともに示している。
【0033】
図5が示すように、導入部11Dに対応するゲート口から金型の成形部に圧送される樹脂は、メッシュ12の径方向における外側から成形部に圧送されるため、成形部に圧送された後に、メッシュ12の筒端に向けて流れることが可能である。さらに、樹脂は、柱状部11Cの先端に対応する部分からメッシュ12の筒端に向けて流れるため、ゲート口からメッシュ12の筒端までの距離がより長い場合に比べて、高いエネルギーを有した樹脂がメッシュ12の筒端に供給される。
【0034】
これにより、メッシュ12が金型に配置された時点では、図5における二点鎖線によって示されるように、筒状部12Aが延びる方向に沿う断面において直線状を有していた筒端が、成形部に対する樹脂の導入によって、メッシュ12の径方向における内側に折り曲げられる。
【0035】
図6は、第1環状部11Aが区画する開口11E2が広がる平面に直交し、かつ、柱状部11Cを含まない平面に沿うインサート成形フィルター10の断面構造を示している。
図6が示すように、第1環状部11Aの周方向において、導入部11Dから離れた位置においても、メッシュ12の筒端が、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられている。これにより、本体11に対するメッシュ12の剥離強度が高められる。
【0036】
なお、図6が示す例では、メッシュ12が有する2つの筒端のうち、第2環状部11Bに接する筒端は、第2環状部11Bの内周面に接している。これに対して、第1環状部11Aに接する筒端は、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられない場合には、第1環状部11Aの外周面に接している。
【0037】
インサート成形フィルター10が用いられた場合には、インサート成形フィルター10には、第2環状部11Bが区画する開口から流体が供給されるため、第2環状部11Bが区画する開口から、複数の柱状部11Cが区切る開口11E1に向けて流体が流れる。これにより、第2環状部11Bに接する筒端には、第2環状部11Bの内周面に向けて筒端を押し付ける方向の力が作用するため、第2環状部11Bから剥がれにくい。これに対して、第1環状部11Aに接する筒端には、第1環状部11Aの外周面から筒端を剥がす方向の力が作用するため、第1環状部11Aから剥がれやすい。この点で、インサート成形フィルター10によれば、メッシュ12の筒端のうち、第1環状部11Aに接する筒端が、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられ、これによって、第1環状部11A内に埋め込まれる。したがって、第1環状部11Aに対するメッシュ12の剥離強度が高められる。
【0038】
以上説明したように、インサート成形フィルターの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ゲート口から圧送された樹脂によって、メッシュ12の筒端が、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられるため、メッシュ12の筒端における少なくとも一部が、第1環状部11A内に埋め込まれる。結果として、本体11に対するメッシュ12の剥離強度が確保される。
【0039】
(2)ゲート口の位置によってインサート成形フィルター10に対するメッシュ12の位置は制約されないことから、インサート成形フィルター10に対するメッシュ12の位置の自由度を高めることが可能である。
【0040】
(3)ゲート口から圧送された樹脂が高いエネルギーを有した状態でメッシュ12の筒端に到達しやすいため、メッシュ12の筒端が、より確実に折り曲げられる。
【0041】
(4)導入部11Dが柱状部11Cに位置することによって、導入部11Dを第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置させることが容易である。
【0042】
(5)第1環状部11Aの周方向において、メッシュ12の筒端のうちで、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる部分を広げることが可能である。
【0043】
(6)第1環状部11Aが幅広部11AWを有する分だけ、メッシュ12の底部が幅広部11AWに埋没するため、第1環状部11Aからメッシュ12が剥がれにくくなる。
【0044】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[第1環状部]
・第1環状部11Aの全体が、上述した隙間12Eを覆うことが可能な線幅を有してもよい。これにより、メッシュ12の底部において第1環状部11Aに埋没する面積が拡大されるため、本体11に対するメッシュ12の剥離強度が高められる。
【0045】
[導入部]
・導入部11Dの数は、柱状部11Cの数よりも少なくてもよい。この場合には、複数の柱状部11Cにおける一部に導入部11Dが位置すればよい。なお、上述したように、メッシュ12の筒端のうちで、第1環状部11Aの径方向における内側に向けて折り曲げられる領域を広げる観点では、各柱状部11Cが1つの導入部11Dを有することが好ましい。
【0046】
・本体11は、導入部11Dを1つのみを有してもよい。この場合であっても、導入部11Dが、第1環状部11Aの径方向においてメッシュ12よりも外側に位置することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0047】
・導入部11Dは、柱状部11Cに位置しなくてもよい。例えば、本体11が、第1環状部11Aに接続され、かつ、第1環状部11Aよりも外側に位置する部分を有し、当該部分に導入部11Dが位置してもよい。この場合であっても、第1環状部11Aの径方向において、導入部11Dがメッシュ12よりも外側に位置するため、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0048】
・導入部11Dは、第1環状部11Aと第2環状部11Bとが並ぶ方向において、第1環状部11Aに対して第2環状部11B側に位置してもよい。この場合であっても、第1環状部11Aの径方向において、導入部11Dがメッシュ12よりも外側に位置することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…インサート成形フィルター
11…本体
11A…第1環状部
11AE…外縁
11AW…幅広部
11B…第2環状部
11C…柱状部
11D…導入部
11E1…開口
11E2…開口
12…メッシュ
12A…筒状部
12B…底部
12C…連結部
12D…溶接部
12E…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6