(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】内視鏡アダプタ、ロボット手術システムおよび内視鏡アダプタの回転位置調整方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230406BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20230406BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61B1/00 655
A61B34/35
B25J17/00 Z
(21)【出願番号】P 2020061213
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 薫
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-31767(JP,A)
【文献】特開2020-163104(JP,A)
【文献】特開2009-160011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
A61B 34/00-90/98
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術システムのロボットアームに接続される内視鏡アダプタであって、
内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、
前記ロボットアームに取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられ、前記ロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と、前記被駆動部材の回転を減速して前記内視鏡保持部に伝達する伝達機構と、を含む基部と、を備え、
前記伝達機構は、
前記被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と、
前記駆動伝達軸と一体的に回転する第1連係部材と、
前記駆動伝達軸に対して回転可能に設けられ、前記第1連係部材と連係して回転する第2連係部材と、を含み、
前記基部は、前記第2連係部材に当接することによって前記駆動伝達軸の回転を停止させるストッパ部を含む、内視鏡アダプタ。
【請求項2】
前記被駆動部材は、360度よりも大きい角度範囲内において回転可能に構成されている、請求項1に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項3】
前記第2連係部材は、前記駆動伝達軸の径方向の外側または前記駆動伝達軸の軸方向の一方側に向かって突出するとともに、前記駆動伝達軸の回転を停止させるための第1ストッパ用凸部を含み、
前記ストッパ部は、前記駆動伝達軸に向かって突出するとともに、前記第2連係部材が回転することによって前記第2連係部材の前記第1ストッパ用凸部と当接する第2ストッパ用凸部を含む、請求項1または2に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項4】
前記第1連係部材は、前記駆動伝達軸の軸方向における一方側に配置されるとともに、前記第2連係部材を連係して回転させるように前記軸方向における他方側に突出する第1連係用凸部を含み、
前記第2連係部材は、前記軸方向における他方側に配置されるとともに、前記第1連係部材と連係して回転するように前記軸方向における一方側に突出する第2連係用凸部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記軸方向において前記第1連係部材と前記第2連係部材との間に設けられ、前記第1連係部材と連係して回転するように前記軸方向における一方側に突出する第3連係用凸部と、前記第2連係部材と連係して回転するように前記軸方向における他方側に突出する第4連係用凸部と、を有する第3連係部材をさらに含む、請求項4に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項6】
前記第3連係部材は、前記軸方向に沿って並ぶように複数設けられており、
前記複数の第3連係部材は、互いに連係して回転するように構成されている、請求項5に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項7】
前記複数の第3連係部材は、互いに形状が同じである、請求項6に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項8】
前記内視鏡保持部は、前記内視鏡の回転位置と前記被駆動部材の回転位置とが一定の関係になるように前記内視鏡を回転可能に保持するように構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項9】
前記取付部は、ドレープを保持するドレープアダプタを介して前記ロボットアームの前記駆動部に取り付けられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項10】
ロボットアームと、
前記ロボットアームに接続される内視鏡アダプタと、
前記ロボットアームの駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記内視鏡アダプタは、
内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、
前記ロボットアームに取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられ、前記ロボットアームの前記駆動部によって回転駆動される被駆動部材と、前記被駆動部材の回転を減速して前記内視鏡保持部に伝達する伝達機構と、を含む基部と、を備え、
前記伝達機構は、
前記被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と、
前記駆動伝達軸と一体的に回転する第1連係部材と、
前記駆動伝達軸に対して回転可能に設けられ、前記第1連係部材と連係して回転する第2連係部材と、を含み、
前記基部は、前記第2連係部材に当接することによって前記駆動伝達軸の回転を停止させるストッパ部を含み、
前記制御部は、前記駆動伝達軸の回転が停止した際の前記ロボットアームの前記駆動部の回転位置に基づいて、前記駆動部の回転位置を原点に配置させる制御を行うように構成されている、ロボット手術システム。
【請求項11】
ロボット手術システムのロボットアームに接続される内視鏡アダプタの回転位置調整方法であって、
内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、基部と、を備え、前記基部が、前記ロボットアームに取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられ、前記ロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と、前記被駆動部材の回転を減速して前記内視鏡保持部に伝達する伝達機構と、を含む前記内視鏡アダプタを準備する工程と、
前記ロボットアームに前記内視鏡アダプタを取り付けた後、前記被駆動部材を回転させることにより、第1連係部材を、前記被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と一体的に回転させる工程と、
前記駆動伝達軸に対して回転可能に設けられた第2連係部材を、前記第1連係部材と連係して回転させるとともに、前記基部に含まれるストッパ部に当接させることによって前記駆動伝達軸の回転を停止させる工程と、
前記駆動伝達軸の回転を停止させる工程の後、前記駆動伝達軸の回転が停止した際の前記ロボットアームの前記駆動部の回転位置に基づいて、前記駆動部の回転位置を原点に配置させる工程と、を備える、内視鏡アダプタの回転位置調整方法。
【請求項12】
前記駆動部を原点に配置させる工程は、前記駆動部を所定の角度だけ逆回転させることにより、前記駆動部を原点に配置させる工程である、請求項11に記載の内視鏡アダプタの回転位置調整方法。
【請求項13】
前記駆動伝達軸の回転を停止させる工程の後、かつ、前記駆動部を原点に配置させる工程の前に、前記被駆動部材を回転させる前記駆動部を停止させる工程をさらに備え、
前記駆動部は、モータを含み、
前記駆動部を停止させる工程は、前記モータの出力電流値に基づいて、前記駆動部を停止させる工程である、請求項11または12に記載の内視鏡アダプタの回転位置調整方法。
【請求項14】
前記駆動部を停止させる工程は、前記モータの出力電流値に加えて、前記モータの回転位置に基づいて、前記駆動部を停止させる工程である、請求項13に記載の内視鏡アダプタの回転位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡アダプタ、ロボット手術システムおよび内視鏡アダプタの回転位置調整方法に関し、特に、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡アダプタ、内視鏡アダプタを備えるロボット手術システムおよび内視鏡アダプタの回転位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡アダプタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡アダプタが開示されている。上記特許文献1に記載の内視鏡アダプタは、ドレープアダプタに取外し可能に接続される基部と、内視鏡を回転可能に保持する保持部(内視鏡保持部)と、ドレープアダプタを介してロボットアームの回転駆動部(駆動部)によって回転駆動される被駆動部材と、保持部に被駆動部材の回転を減速して伝達する伝達機構と、を備えている。すなわち、伝達機構は、被駆動部材の回転を減速して内視鏡保持部に伝達するように構成されている。また、上記特許文献1には、操作ハンドルを回動させることによりロボットアームの回転駆動部を回転駆動させて内視鏡を回転させることが可能なロボット手術システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているようなロボット手術システムによる手術を行う際に、たとえば、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際の初期において、内視鏡の視野を同じにするためや、内視鏡を回転させるときの操作ハンドルの左右の回転可能量を均等にするために、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させたいという要望がある。特に、上記特許文献1に記載されているような内視鏡保持部に対しロボットアームの駆動部による回転を減速して伝達する伝達機構を内視鏡アダプタが備えている場合、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させるのが難しいという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能な内視鏡アダプタ、ロボット手術システムおよび内視鏡アダプタの回転位置調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による内視鏡アダプタは、ロボット手術システムのロボットアームに接続される内視鏡アダプタであって、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、ロボットアームに取り付けられる取付部と取付部に設けられロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と被駆動部材の回転を減速して内視鏡保持部に伝達する伝達機構とを含む基部と、を備え、伝達機構は、被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と、駆動伝達軸と一体的に回転する第1連係部材と、駆動伝達軸に対して回転可能に設けられ、第1連係部材と連係して回転する第2連係部材と、を含み、基部は、第2連係部材に当接することによって駆動伝達軸の回転を停止させるストッパ部を含む。
【0008】
この発明の第1の局面による内視鏡アダプタでは、上記のように、伝達機構を、被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と、駆動伝達軸と一体的に回転する第1連係部材と、駆動伝達軸に対して回転可能に設けられ、第1連係部材と連係して回転する第2連係部材と、を含むように構成するとともに、基部を、第2連係部材に当接することによって駆動伝達軸の回転を停止させるストッパ部を含むように構成する。これにより、第1連係部材と連係して回転する第2連係部材がストッパ部に当接するまで被駆動部材を回転させることによって、被駆動部材を、メカエンド(機械的な動作限界)となるまで回転させて停止させることができる。したがって、被駆動部材に回転角度範囲(一方側のメカエンドと他方側のメカエンドとの間)における原点が予め設定されている場合、設定されている回転角度範囲と原点との関係に基づいて、メカエンドに配置された被駆動部材を原点に配置させることができる。すなわち、被駆動部材を回転駆動させた駆動部を備えるロボットアームにおいて、被駆動部材を原点に配置させた際の駆動部の回転位置を原点として設定することができる(駆動部の回転位置を原点に配置させることができる)。また、被駆動部材を原点に配置させることによって、被駆動部材の回転が伝達される内視鏡保持部に保持された内視鏡も原点に配置させることができる。その結果、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際等に、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能な内視鏡アダプタを提供することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面によるロボット手術システムは、ロボットアームと、ロボットアームに接続される内視鏡アダプタと、前記ロボットアームの駆動部を制御する制御部と、を備え、内視鏡アダプタは、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、ロボットアームに取り付けられる取付部と取付部に設けられ、ロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と被駆動部材の回転を減速して内視鏡保持部に伝達する伝達機構とを含む基部と、を備え、伝達機構は、被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と、駆動伝達軸と一体的に回転する第1連係部材と、駆動伝達軸に対して回転可能に設けられ、第1連係部材と連係して回転する第2連係部材と、を含み、基部は、第2連係部材に当接することによって駆動伝達軸の回転を停止させるストッパ部を含み、制御部は、駆動伝達軸の回転が停止した際のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させる制御を行うように構成されている。
【0010】
この発明の第2の局面によるロボット手術システムでは、上記のように、伝達機構を、上記第1の局面による内視鏡アダプタと同様に構成する。これにより、上記第1の局面による内視鏡アダプタと同様に、被駆動部材を、メカエンド(機械的な動作限界)となるまで回転させて停止させることができる。また、上記第2の局面によるロボット手術システムでは、上記のように、ロボットアームの駆動部を制御する制御部を、駆動伝達軸の回転が停止した際のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させる制御を行うように構成する。これにより、制御部の制御によって、被駆動部材がメカエンドに配置された場合のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させることができる。すなわち、被駆動部材に回転角度範囲(一方側のメカエンドと他方側のメカエンドとの間)における原点が予め設定されている場合、設定されている回転角度範囲と原点との関係に基づいて、メカエンドに配置された被駆動部材を原点に配置させるように駆動部を回転させることによって、駆動部の回転位置を原点に配置させることができる。また、被駆動部材を原点に配置させることによって、被駆動部材の回転が伝達される内視鏡保持部に保持された内視鏡も原点に配置させることができる。その結果、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際等に、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能なロボット手術システムを提供することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、この発明の第3の局面による内視鏡アダプタの回転位置調整方法は、ロボット手術システムのロボットアームに接続される内視鏡アダプタの回転位置調整方法であって、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、基部と、を備え、基部が、ロボットアームに取り付けられる取付部と、取付部に設けられ、ロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と、被駆動部材の回転を減速して内視鏡保持部に伝達する伝達機構と、を含む内視鏡アダプタを準備する工程と、ロボットアームに内視鏡アダプタを取り付けた後、被駆動部材を回転させることにより、第1連係部材を、被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸と一体的に回転させる工程と、駆動伝達軸に対して回転可能に設けられた第2連係部材を、第1連係部材と連係して回転させるとともに、基部に含まれるストッパ部に当接させることによって駆動伝達軸の回転を停止させる工程と、駆動伝達軸の回転を停止させる工程の後、駆動伝達軸の回転が停止した際のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させる工程と、を備える。
【0012】
この発明の第3の局面による内視鏡アダプタの回転位置調整方法では、上記のように、ロボットアームに内視鏡アダプタを取り付けた後、被駆動部材を回転させることにより、第1連係部材を、駆動伝達軸と一体的に回転させるとともに、第2連係部材を、第1連係部材と連係して回転させ、第2連係部材を、ストッパ部に当接させることによって駆動伝達軸の回転を停止させる。これにより、上記第1の局面による内視鏡アダプタおよび上記第2の局面によるロボット手術システムと同様に、被駆動部材の回転位置をメカエンド(機械的な動作限界)に配置させることができる。また、上記第3の局面による内視鏡アダプタの回転位置調整方法では、上記のように、駆動伝達軸の回転を停止させた後、駆動伝達軸の回転が停止した際のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させる。これにより、上記第2の局面によるロボット手術システムと同様に、被駆動部材がメカエンドに配置された場合のロボットアームの駆動部の回転位置に基づいて、駆動部の回転位置を原点に配置させることができる。すなわち、メカエンドに配置された被駆動部材を原点に配置させるように駆動部を回転させることによって、駆動部の回転位置を原点に配置させることができるとともに、被駆動部材の回転が伝達される内視鏡保持部に保持された内視鏡も原点に配置させることができる。その結果、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際等に、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記のように、内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるロボット手術システムの概略を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるロボットアームに内視鏡アダプタを介して内視鏡が取り付けられた状態を示した斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるロボットアームからドレープアダプタおよび内視鏡アダプタを取り外した状態を示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタおよびドレープアダプタを下方から見た分解斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの一部を示した斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの伝達機構を示した側面図である。
【
図8】(A)は、本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの被駆動部材を原点に配置させた状態を示した平面図である。(B)は、本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの被駆動部材をメカエンドに配置させた状態を示した平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの回転位置調整機構を示した斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの回転位置調整機構を示した拡大斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの回転位置調整機構を分解した状態を示した斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの駆動伝達軸のキー溝を示した斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタのストッパ部を示した斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態による内視鏡アダプタの回転位置調整方法のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(ロボット手術システムの構成)
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態によるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置1と、患者側装置2と、画像処理装置3と、を備える。
【0018】
遠隔操作装置1は、患者側装置2に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置2によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者13により遠隔操作装置1に入力されると、遠隔操作装置1は、動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2に送信する。そして、患者側装置2は、遠隔操作装置1から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム2aに取り付けられた内視鏡2d、ロボットアーム2bに取り付けられた手術器具2c(surgical instrument)等の医療器具を操作する。画像処理装置3は、内視鏡2dにより撮影された術野の画像を遠隔操作装置1などに送信する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0019】
患者側装置2は、患者4に対して手術を行うインターフェースを構成する。患者側装置2は、患者4が横たわる手術台5の傍らに配置される。患者側装置2は、複数のロボットアーム2eを有し、このうち1つのロボットアーム2aに内視鏡2dが取り付けられ、その他のロボットアーム2bに手術器具2cが取り付けられる。患者側装置2は、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けるための内視鏡アダプタ6(
図3参照)と、ロボットアーム2aにドレープ12(
図3参照)を取り付けるためのドレープアダプタ7(
図3参照)と、を含む。なお、ドレープアダプタ7は、ロボットアーム2bに内視鏡アダプタ6または手術器具2cを取り付けるためのアダプタでもある。
【0020】
複数のロボットアーム2eは、プラットホーム8に共通に支持されている。複数のロボットアーム2eは、複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。複数のロボットアーム2eは、コントローラを介して与えられた駆動信号により、ロボットアーム2eに取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。
【0021】
プラットホーム8は、手術室の床の上に載置されたポジショナ9に支持されている。ポジショナ9では、鉛直方向に調整可能な昇降軸を有する柱部10が、車輪を備えるとともに床面を移動可能なベース11に連結されている。
【0022】
ロボットアーム2aには、先端部に医療器具としての内視鏡2dが着脱可能に取り付けられる。内視鏡2dは、患者4の体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、画像処理装置3を介して遠隔操作装置1に対して出力される。内視鏡2dとして、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡または2D内視鏡が用いられる。患者側装置2を用いた手術において、ロボットアーム2eは、患者4に体表に留置したトロッカを介して患者4の体内に内視鏡2dを導入する。そして、内視鏡2dが手術部位の近傍に配置される。
【0023】
遠隔操作装置1は、操作者13とのインターフェースを構成する。遠隔操作装置1は、ロボットアーム2eに取り付けられた医療器具を操作者13が操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置1は、操作者13によって入力された手術器具2cおよび内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置1は、たとえば、マスタの操作をしながら患者4の様子がよく見えるように手術台5の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置1は、たとえば、動作態様指令を無線で送信するようにし、手術台5が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0024】
手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、手術器具2cの動作(一連の位置および姿勢)および手術器具2c個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具2cが把持鉗子である場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、エンドエフェクタの手首のロール回転位置およびピッチ回転位置と、ジョーの開閉を行う動作である。また、手術器具2cが高周波ナイフである場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、高周波ナイフの振動動作、具体的には高周波ナイフに対する電流の供給であり得る。また、手術器具2cがスネアワイヤである場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、束縛動作および束縛状態の解放動作であり得る。また、バイポーラやモノポーラに電流を供給することによって手術対象部位を焼き切る動作であり得る。
【0025】
内視鏡2dによって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡2d先端の位置および姿勢、又はズーム倍率の設定である。
【0026】
遠隔操作装置1は、操作ハンドル1aと、操作ペダル部1bと、表示部1cと、制御装置1d(
図2参照)と、を備える。
【0027】
操作ハンドル1aは、ロボットアーム2eに取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル1aは、医療器具(手術器具2c、内視鏡2d)を操作するための操作者13による操作を受け付ける。操作ハンドル1aは、水平方向に沿って2つ設けられている。すなわち、2つの操作ハンドル1aのうち一方の操作ハンドル1aは、操作者13の右手により操作され、2つの操作ハンドル1aのうち他方の操作ハンドル1aは、操作者13の左手により操作される。
【0028】
また、操作ハンドル1aは、遠隔操作装置1の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル1aは、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル1aは、上下方向、左右方向、および前後方向に動かすことができるように構成されている。
【0029】
図2に示すように、遠隔操作装置1と患者側装置2とは、ロボットアーム2aおよびロボットアーム2bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル1aは、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム2aおよびロボットアーム2bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル1aを操作者13が操作すると、操作ハンドル1aの動きをロボットアーム2aの先端部(内視鏡2d)またはロボットアーム2bの先端部(手術器具2cのエンドエフェクタ)がトレースして移動するようにロボットアーム2aまたはロボットアーム2bの動作が制御される。
【0030】
また、患者側装置2は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム2bの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具2cのエンドエフェクタは、操作ハンドル1aの移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を正確に行うことができる。
【0031】
図1に示すように、操作ペダル部1bは、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含む。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含む。また、複数のペダルは、操作者13の足により操作される。
【0032】
凝固ペダルは、手術器具2cを用いて手術部位を凝固させる操作を行うことができる。具体的には、凝固ペダルは、操作されることにより、手術器具2cに凝固用の電圧が印加されて、手術部位の凝固が行われる。切断ペダルは、手術器具2cを用いて手術部位を切断させる操作を行うことができる。具体的には、切断ペダルは、操作されることにより、手術器具2cに切断用の電圧が印加されて、手術部位の切断が行われる。
【0033】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡2dの位置および姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡2dの操作ハンドル1aによる操作を有効にする。すなわち、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル1aにより内視鏡2dの位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡2dは、左右の操作ハンドル1aの両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル1aの中間点を中心に左右の操作ハンドル1aを回動させることにより、内視鏡2dが回動される。また、左右の操作ハンドル1aを共に押し込むことにより、内視鏡2dが奥に進む。また、左右の操作ハンドル1aを共に引っ張ることにより、内視鏡2dが手前に戻る。また、左右の操作ハンドル1aを共に上下左右に移動させることにより、内視鏡2dが上下左右に移動する。
【0034】
クラッチペダルは、ロボットアーム2eと、操作ハンドル1aとの操作接続を一時切断し手術器具2cの動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル1aを操作しても、患者側装置2のロボットアーム2eが動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル1aが移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル1aを中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム2eと操作ハンドル1aとが再び接続され、中央付近で操作ハンドル1aの操作を再開することができる。
【0035】
表示部1cは、内視鏡2dが撮像した画像を表示することができるものである。表示部1cは、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部である。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部を含む概念である。
【0036】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2のロボットアーム2eに取り付けられた内視鏡2dにより撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置2に設けられた内視鏡2dにより撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2に設けられた内視鏡2dにより撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0037】
図2に示すように、制御装置1dは、たとえば、CPU等の演算器を有する制御部101と、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部102と、画像制御部103と、を含む。制御装置1dは、集中制御する単独の制御装置により構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置により構成されてもよい。
【0038】
制御部101は、操作ハンドル1aにより入力された動作態様指令を、操作ペダル部1bの切替状態に応じて、ロボットアーム2bによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部101は、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が手術器具2cによって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、動作態様指令をロボットアーム2bに対して送信する。これによって、ロボットアーム2bが駆動され、この駆動によってロボットアーム2bに取り付けられた手術器具2cの動作が制御される。
【0039】
また、制御部101は、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、当該動作態様指令をロボットアーム2aに対して送信する。これによって、ロボットアーム2aが駆動され、この駆動によってロボットアーム2aに取り付けられた内視鏡2dの動作が制御される。
【0040】
記憶部102には、たとえば、手術器具2cの種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具2cの種類に応じて制御部101がこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置1の操作ハンドル1aおよび/または操作ペダル部1bの動作指令が個別の手術器具2cに適合した動作をさせることができる。
【0041】
画像制御部103は、内視鏡2dが取得した画像を表示部1cに伝送する。画像制御部103は、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0042】
画像処理装置3は、内視鏡2dから取得した画像を遠隔操作装置1(
図1参照)に伝送するとともに、内視鏡2dが取得した画像を表示するように構成されている。画像処理装置3は、必要に応じて内視鏡2dから取得した画像の加工修正処理を行う。具体的には、画像処理装置3は、外部モニタ部31を含む。外部モニタ部31は、内視鏡2dが撮像した画像を表示可能に構成されている。外部モニタ部31は、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような平坦な画面を有する開放型の表示部である。
【0043】
(ドレープアダプタ、内視鏡アダプタおよび内視鏡の構成)
図3~
図13を参照して、本発明の一実施形態によるドレープアダプタ7、内視鏡アダプタ6および内視鏡2dの構成について説明する。
【0044】
図3に示すように、ロボットアーム2eは、清潔区域において使用されるため、ドレープ12により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者13(
図1参照)を含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させるときは、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者13を含む手術チームのメンバーがその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ12により覆われる。
【0045】
ドレープ12は、ドレープアダプタ7と、ロボットアーム2a(2b(
図1参照))との間に配置される。ドレープアダプタ7は、ドレープ12を挟み込むようにして、ロボットアーム2e(
図1参照)に取り付けられる。すなわち、ドレープアダプタ7は、ロボットアーム2eとの間にドレープ12を挟み込むためのアダプタである。
【0046】
以下の説明では、内視鏡アダプタ6の取付部63(後述する)と内視鏡2dとが並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうち、内視鏡2d側および取付部63側を、それぞれ、Z1方向(Z1側)およびZ2方向(Z2側)とする。また、内視鏡アダプタ6の基部62(後述する)が延びる方向をY方向とし、Y方向のうち、内視鏡2dを内視鏡アダプタ6に挿入する方向をY1方向(Y1側)とし、Y1方向の逆方向をY2方向(Y2側)とする。また、Z方向およびY方向に直交する方向をX方向とし、X方向のうち一方側および他方側を、それぞれ、X1方向(Z1側)およびX2方向(X2側)とする。
【0047】
内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に回転可能に保持されている。また、内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に着脱可能に取り付けられている。内視鏡2dは、本体部21と、細長形状の挿入部22と、撮像部23と、を含む。また、内視鏡2dは、挿入部22が延びる方向(Y方向)の回転軸線C1(
図5参照)を中心に回転可能に内視鏡アダプタ6に保持されている。回転軸線C1は、挿入部22の中心線と略重なっている。
【0048】
本体部21は、Y方向に延びる細長形状を有している。本体部21は、一方端に挿入部22が接続され、他方端にケーブル24が接続されている。ケーブル24は、内視鏡2dにより撮影された画像を送るためのカメラケーブル24aと、内視鏡2dにより体腔内を撮影する際に光を照射するためのライトケーブル24bと、を含む。カメラケーブル24aの直径は、ライトケーブル24bの直径よりも小さい。カメラケーブル24aは、ライトケーブル24bよりもZ1側に配置されている。なお、内視鏡2dには、汎用の内視鏡を用いてもよいし、ロボットアーム2aに取り付けるための専用の内視鏡を用いてもよい。
【0049】
挿入部22は、患者4の体内に挿入される部分である。挿入部22は、たとえば、変形しずらい硬さを有している。すなわち、内視鏡2dは硬性内視鏡である。挿入部22は、患者4の体表に配置されたトロッカを介して患者4の体内に挿入される。挿入部22の先端(本体部21とは反対側の端部)には、撮像部23が設けられている。これにより、撮像部23が患者4の体内に配置されて、手術部分を撮像することが可能である。
【0050】
撮像部23は、単眼または複眼により、撮像することが可能である。すなわち、撮像部23は、複数の位置または1つの位置から対象を撮像する。また、撮像部23には照明が設けられている。照明は、撮像時に点灯して、撮像対象に光を照射する。
【0051】
図4および
図5に示すように、内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に取り付けられた状態で、ロボット手術システム100のロボットアーム2aにドレープアダプタ7を介して接続される。ロボットアーム2aは、内視鏡2dを回転させるために、ドレープアダプタ7を介して内視鏡アダプタ6に動力を伝達する。具体的には、ロボットアーム2aは、駆動部201を備える。
【0052】
図7に示すように、駆動部201は、係合凸部201aと、モータ201bと、エンコーダ201cと、を含む。係合凸部201aは、駆動源としてのモータ201bにより、Z方向に延びる回転軸線C2を中心に回動するように構成されている。エンコーダ201cは、モータ201bおよび係合凸部201aの回転位置を検出する。エンコーダ201cは、モータ201bの回転位置を検出するために、アブソリュート形ロータリエンコーダが好適に用いられる。
【0053】
図4および
図5に示すように、ドレープアダプタ7は、基体71と、複数の駆動伝達部材72と、を含む。駆動伝達部材72は、Y2側に配置された複数の第1駆動伝達部材73と、Y1側に配置された複数の第2駆動伝達部材74と、を含む。駆動伝達部材72は、基体71に回転可能に設けられている。具体的には、駆動伝達部材72は、Z方向に延びる回転軸線C3を中心に回転可能に設けられている。駆動伝達部材72は、ロボットアーム2aの駆動部201の駆動力を、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64に伝達する。
【0054】
図4および
図5に示すように、内視鏡アダプタ6は、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部61と、内視鏡保持部61が取り付けられる基部62と、を備える。
【0055】
図6に示すように、内視鏡保持部61は、内視鏡2dを保持するように構成されている。すなわち、内視鏡保持部61は、内視鏡2dを基部62に取り付けている。具体的には、内視鏡保持部61は、保持部本体67と、ロック部68と、を有する。
【0056】
保持部本体67は、円筒形状を有している。保持部本体67は、内視鏡2dが挿入される挿入孔(図示しない)を有している。挿入孔は、保持部本体67をY方向に貫通している。保持部本体67は、ロック部68を取り付けるための一対の係合部(図示しない)を有している。一対の係合部は、Y方向に直交する方向に突出している。保持部本体67は、ロック部68のY2側に配置されている。
【0057】
内視鏡保持部61は、内視鏡2dを取り付ける際に、内視鏡2dの被係合部210と係合する係合部67cを有している。係合部67cは、内視鏡2dの外表面21aから突出した凸形状の被係合部210としての操作部211に係合するとともに、内視鏡保持部61に内視鏡2dを挿入する際のY1方向(挿入方向)に、内視鏡保持部61を窪ませた切り欠き67dである。切り欠き67dは、係合部67cと被係合部210とを係合させた状態で、内視鏡2dを位置決めするように構成されている。したがって、内視鏡2dは、内視鏡保持部61と一体となって回転する。
【0058】
ロック部68は、内視鏡2dの本体部21の先端部分が挿入される挿入孔(図示しない)を有している。ロック部68は、保持部本体67の係合部(図示しない)が係合するように構成されている。
【0059】
基部62は、
図4、5に示すように、ドレープアダプタ7を介してロボットアーム2aに取り付けられる取付部63と、取付部63に設けられ、ロボットアーム2aの駆動部201によって回転駆動される被駆動部材64と、被駆動部材の回転を内視鏡保持部61に伝達する伝達機構65と、を含む。
【0060】
図4に示すように、取付部63は、内視鏡アダプタ6とドレープアダプタ7とを取り外し可能に接続するために設けられている。取付部63は、基部62においてY2側に配置されている。基部62には、取付部63からY1方向に延びる延長部69が設けられている。被駆動部材64は、取付部63に設けられている。
【0061】
内視鏡アダプタ6の被駆動部材64は、回転駆動されることにより、内視鏡2dを回転させる。被駆動部材64は、1つ設けられている。ロボットアーム2aには、駆動部201が4つ設けられている。また、ドレープアダプタ7には、駆動部201に係合する駆動伝達部材72が4つ設けられている。ロボットアーム2aの駆動部201の係合凸部201a(
図7参照)は、ドレープアダプタ7の駆動伝達部材72と係合している。ドレープアダプタ7の駆動伝達部材72は、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64の係合凸部64a(
図8参照)と係合している。これにより、被駆動部材64は、ドレープアダプタ7を介してロボットアーム2aの駆動部201により回転駆動される。
【0062】
図7に示すように、伝達機構65は、被駆動部材64の回転を内視鏡保持部61に伝達することにより、内視鏡2dを回転軸線C1(
図5参照)回りに回転させるように構成されている。伝達機構65は、シャフト65aと、はす歯歯車65bと、円筒ウォーム65cと、シャフト65dと、歯車65eと、歯車65fと、を有している。シャフト65aは、Z方向に直線的に延びるよう配置されている。被駆動部材64は、シャフト65aのZ2側の端部に接続されている。はす歯歯車65bは、シャフト65aのZ1側の端部に、接続されている。はす歯歯車65bは、円筒ウォーム65cと接続(噛合)されている。シャフト65dは、Y方向に直線的に延びるよう配置されている。円筒ウォーム65cは、シャフト65dのY2側の端部に接続されている。歯車65eは、シャフト65dのY1側の端部に接続されている。すなわち、歯車65eと円筒ウォーム65cとは、同軸に設けられている。歯車65eは、歯車65fと接続(噛合)されている。歯車65fは、内視鏡保持部61に設けられている。これにより、ロボットアーム2aの駆動部201が回転することに伴って内視鏡保持部61が回転するので、内視鏡2dが回転する。なお、シャフト65dは、特許請求の範囲の「駆動伝達軸」の一例である。
【0063】
伝達機構65では、被駆動部材64の回転を減速して内視鏡保持部61に伝達するように構成されている。すなわち、内視鏡保持部61(内視鏡2d)の回転量は、被駆動部材64の回転量と比較して小さくなる。詳細には、駆動部201の回転は、はす歯歯車65bおよび円筒ウォーム65cによって、略1.6倍に増速してシャフト65dに伝達されるように構成されている。すなわち、シャフト65dの回転量は、被駆動部材64の回転量と比較して大きくなる。一方、シャフト65dの回転は、歯車65eと歯車65fとによって、略6/11倍に減速して内視鏡保持部61に伝達されるように構成されている。すなわち、内視鏡保持部61(内視鏡2d)の回転量は、シャフト65dの回転量と比較して小さくなる。伝達機構65全体として見ると、被駆動部材64の回転を減速して内視鏡保持部61に伝達するように構成されている。したがって、内視鏡保持部61(内視鏡2d)の回転量は、被駆動部材64の回転量と比較して小さくなる。
【0064】
図5に示すように、内視鏡アダプタ6は、Y1側に垂れ下がるケーブル24(
図1参照)を保持することにより、まとめるように構成されている。ケーブル保持部66は、内部にケーブル24を保持するクランプ機構により構成されている。すなわち、ケーブル保持部66は、ケーブル24を保持することにより、ケーブル24を所望の配置位置に配置している。
【0065】
ここで、
図3に示すように、内視鏡アダプタ6は、ロボット手術システム100のロボットアーム2aに、(ドレープ12を保持するドレープアダプタ7を介して)接続されている。内視鏡アダプタ6は、内視鏡保持部61と、基部62と、を備える。内視鏡保持部61は、内視鏡2dを回転可能に保持する。
図3に示すように、基部62は、取付部63と、被駆動部材64と、伝達機構65(
図7参照)と、を含む。取付部63は、(ドレープアダプタ7を介して)ロボットアーム2a(の駆動部201(
図4参照))に取り付けられている。
図7に示すように、被駆動部材64は、取付部63に設けられ、(ドレープアダプタ7を介して)ロボットアーム2aの駆動部201によって回転駆動される。伝達機構65は、被駆動部材64の回転を減速して内視鏡保持部61に伝達する。
図9に示すように、伝達機構65は、被駆動部材64の回転により回転するシャフト65dと、シャフト65dと一体的に回転する第1連係部材651と、シャフト65dに対して回転可能に設けられ、第1連係部材651と連係して回転する第2連係部材652と、を含む。基部62(の延長部69)は、第2連係部材652に当接することによってシャフト65dの回転を停止させるストッパ部62aを含む。
【0066】
本実施形態の内視鏡アダプタ6では、伝達機構65は、被駆動部材64の回転により回転するシャフト65dと、シャフト65dと一体的に回転する第1連係部材651と、シャフト65dに対して回転可能に設けられ、第1連係部材651と連係して回転する第2連係部材652と、を含む。また、基部62(の延長部69)は、第2連係部材652に当接することによってシャフト65dの回転を停止させるストッパ部62aを含む。これにより、第1連係部材651と連係して回転する第2連係部材652がストッパ部62aに当接するまで被駆動部材64を回転させることによって、被駆動部材64を、メカエンド(機械的な動作限界)となるまで回転させて停止させることができる。したがって、被駆動部材64に回転角度範囲(一方側のメカエンドと他方側のメカエンドとの間)における原点が予め設定されている場合、設定されている回転角度範囲と原点との関係に基づいて、メカエンドに配置された被駆動部材64を原点に配置させることができる。すなわち、被駆動部材64を回転駆動させた駆動部201を備えるロボットアーム2aにおいて、被駆動部材64を原点に配置させた際の駆動部201の回転位置を原点として設定することができる(駆動部201の回転位置を原点に配置させることができる)。具体的には、本実施形態では、後述するように、被駆動部材64および駆動部201(の係合凸部201a)の回転角度範囲は、左回りを+、右回りを-であるとすると、略+412度から略-412度の略824度である。したがって、被駆動部材64および駆動部201(の係合凸部201a)がメカエンドに配置された状態からロボットアーム2aの駆動部201(の係合凸部201a)を、略412度回転させることで、被駆動部材64および駆動部201(の係合凸部201a)を0度の位置(原点)に配置させることができる。また、被駆動部材64を原点に配置させることによって、被駆動部材64の回転が伝達される内視鏡保持部61に保持された内視鏡2dも原点に配置させることができる。その結果、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けた際に、内視鏡2dおよびロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能な内視鏡アダプタ6を提供することができる。
【0067】
詳細には、
図11に示すように、第1連係部材651および第2連係部材652は、各々、Y方向から見て、シャフト65dが貫通する貫通孔が形成された円環形状を有する。すなわち、第1連係部材651および第2連係部材652は、リング状に形成されている。
【0068】
また、
図12に示すように、シャフト65dには、キー溝65gが形成されている。また、
図11に示すように、第1連係部材651には、キー溝65gと係合するキー651aが形成されている。これにより、第1連係部材651は、シャフト65dと固定され、シャフト65dと一体的に回転する。なお、
図12に示すように、キー溝65gのY1側には、シャフト65dからシャフト65dの周方向の外側に突出する規制部655が形成されている。規制部655は、Y方向から見て、円環状に形成されている。
図10に示すように、第1連係部材651は、規制部655により、Y1方向への移動が規制される。これにより、第1連係部材651は、より確実に、シャフト65dと一体的に回転する。
【0069】
また、
図10および
図11に示すように、第1連係部材651は、シャフト65dの軸方向(Y方向)における一方側(Y1側)に配置されるとともに、第2連係部材652を連係して回転させるように軸方向(Y方向)における他方側(Y2側)に突出する第1連係用凸部651bを含む。第2連係部材652は、軸方向(Y方向)における他方側(Y2側)に配置されるとともに、第1連係部材651と連係して回転するように軸方向(Y方向)における一方側(Y1側)に突出する第2連係用凸部652aを含む。
【0070】
これにより、第1連係部材651の第1連係用凸部651bと第2連係部材652の第2連係用凸部652aとによって、第2連係部材652を第1連係部材651と容易に連係して回転させることができる。
【0071】
また、
図11に示すように、第1連係部材651において、第1連係用凸部651bと、キー651aとは、Y方向から見て、円環形状を有する第1連係部材651の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている。
【0072】
また、
図10に示すように、第2連係部材652は、シャフト65dの径方向の外側に向かって突出するとともに、シャフト65dの回転を停止させるための第1ストッパ用凸部652bを含む。
図13に示すように、ストッパ部62aは、シャフト65dに向かって突出するとともに、第2連係部材652が回転することによって第2連係部材652の第1ストッパ用凸部652bと当接する第2ストッパ用凸部62bを含む。
【0073】
これにより、第2連係部材652の第1ストッパ用凸部652bがストッパ部62aの第2ストッパ用凸部62bに当接することよって、第2連係部材652の回転を停止させることができる。その結果、被駆動部材64を、メカエンドにおいて停止させることができる。
【0074】
また、
図11に示すように、第2連係部材652において、第2連係用凸部652aと、第1ストッパ用凸部652bとは、Y方向から見て、円環形状を有する第2連係部材652の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている。
【0075】
また、
図10に示すように、第2連係部材652のY2側には、第2連係部材652のY方向の位置を規制するための規制部材654が設けられている。規制部材654は、Y方向から見て、シャフト65dが貫通する貫通孔が形成された円環形状を有する。すなわち、第2連係部材652と、第3連係部材653(後述する)とは、Y方向において、第1連係部材651と規制部材654とに挟まれることによって、Y方向における位置が規制されている。
【0076】
また、伝達機構65は、軸方向(Y方向)において第1連係部材651と第2連係部材652との間に設けられる第3連係部材653を含む。
図11に示すように、第3連係部材653は、第1連係部材651と連係して回転するように軸方向(Y方向)における一方側(Y1側)に突出する第3連係用凸部653aと、第2連係部材652と連係して回転するように軸方向(Y方向)における他方側(Y2側)に突出する第4連係用凸部653bと、を有する。
【0077】
これにより、第3連係部材653の第3連係用凸部653aによって、第3連係部材653を、第1連係部材651と連係して回転させることができる。また、第4連係用凸部653bによって、第3連係部材653を、第2連係部材652と連係して回転させることができる。また、第3連係部材653が第1連係部材651と第2連係部材652との間に第1連係部材651および第2連係部材652と連係して回転するように設けられることによって、第1連係部材651と連係して回転する第2連係部材652がストッパ部62aに当接するまでの被駆動部材64の回転量を、第3連係部材653を設けた分だけ大きくすることができる。その結果、被駆動部材64の回転角度範囲を大きくすることができる。
【0078】
また、第3連係部材653は、Y方向から見て、シャフト65dが貫通する貫通孔が形成された円環形状を有する。すなわち、第3連係部材653は、第1連係部材651および第2連係部材652と同様に、リング状に形成されている。
【0079】
また、第3連係部材653において、第3連係用凸部653aと第4連係用凸部653bとは、Y方向から見て、円環形状を有する第3連係部材653の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている。
【0080】
また、第3連係部材653は、軸方向(Y方向)に沿って並ぶように複数(2つ)設けられている。複数(2つ)の第3連係部材653は、互いに連係して回転するように構成されている。
【0081】
これにより、第1連係部材651と連係して回転する第2連係部材652がストッパ部62aに当接するまでの被駆動部材64の回転量を、第3連係部材653の個数に応じて大きくすることができる。その結果、被駆動部材64の回転角度範囲を容易に大きくすることができる。また、本実施形態では、2つの第3連係部材653の形状を互いに同じにすることで、製造コストを低減している。
【0082】
また、被駆動部材64は、360度よりも大きい角度範囲内において回転可能に構成されている。換言すれば、駆動部201(の係合凸部201a)は、360度よりも大きい角度範囲内において回転可能に構成されている。
【0083】
ここで、被駆動部材64の回転角度範囲が360度よりも大きい場合には、位置Aおよび位置Aから360度回転した位置B等のように、被駆動部材64が同じ方向を向く場合が複数の回転位置において存在するため、エンコーダ201cによって駆動部201の係合凸部201aの回転位置が認識できない場合がある。したがって、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けた際に、内視鏡2dおよびロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能な内視鏡アダプタ6を効果的に用いることができる。
【0084】
具体的には、
図8に示すように、被駆動部材64は、原点(
図8(A)の状態)から、Z2側から見て、右回りおよび左回りに、各々略412度回転させた位置(メカエンド)まで回転可能に構成されている。すなわち、被駆動部材64は、824度の回転角度範囲を有する。すなわち、駆動部201(の係合凸部201a)が右回りおよび左回りに360度以上(1回転以上)回転するので、駆動部201(の係合凸部201a)が、原点に配置されている場合と、原点から右回りに360度回転させた位置に配置されている場合と、原点から左回りに360度回転させた位置に配置されている場合とは、エンコーダ201cによって判別することができない。
図8(B)では、被駆動部材64を、Z2側から見て、左回りに略412度回転させた位置(メカエンド)を示している。
【0085】
また、内視鏡保持部61は、内視鏡2dの回転位置と被駆動部材64の回転位置とが一定の関係になるように内視鏡2dを回転可能に保持するように構成されている。
【0086】
これにより、被駆動部材64を原点に配置させた際に、内視鏡2dの回転位置も原点等の特定の位置に配置させることができるので、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けた際に、内視鏡2dおよびロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に確実に配置させることができる。
【0087】
具体的には、上述したように、内視鏡保持部61は、内視鏡保持部61の切り欠き67dが内視鏡2dの操作部211と係合するように、内視鏡2dを保持している。そして、内視鏡保持部61は、切り欠き67dが下側(Z2側)を向いている場合が原点となるように構成されている。内視鏡保持部61は、原点から、Y1側から見て、右回りおよび左回りに、各々360度回転させた位置まで回転可能に構成されている。すなわち、被駆動部材64の略412度の回転角度範囲と内視鏡2dの360度の回転角度範囲とが対応する。換言すれば、駆動部201(の係合凸部201a)の略412度の回転角度範囲と内視鏡2dの360度の回転角度範囲とが対応する。
【0088】
また、
図2に示すように、本実施形態のロボット手術システム100では、ロボットアーム2aと、内視鏡アダプタ6と、制御部202と、を備える。制御部202は、ロボットアーム2aの駆動部201を制御する。制御部202は、シャフト65dの回転が停止した際のロボットアームの2aの駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置に基づいて、駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置を原点に配置させる制御を行うように構成されている。
【0089】
これにより、制御部202による制御によって、被駆動部材64がメカエンドに配置された場合のロボットアーム2aの駆動部201の回転位置に基づいて、駆動部201の回転位置を原点に配置させることができる。すなわち、駆動部201(の係合凸部201a)に回転角度範囲(一方側のメカエンドと他方側のメカエンドとの間)における原点が予め設定されている場合、設定されている回転角度範囲と原点との関係に基づいて、メカエンドに配置された駆動部201(の係合凸部201a)を原点に配置させるように駆動部201を回転させることによって、駆動部201の回転位置を原点に配置させることができる。具体的には、本実施形態では、上述したように、駆動部201(の係合凸部201a)の回転角度範囲は、右回りを+、左回りを-であるとすると、略+412度から略-412度の略824度となる。したがって、被駆動部材64および駆動部201(の係合凸部201a)がメカエンドに配置された状態からロボットアーム2aの駆動部201(の係合凸部201a)を、略412度回転させることで、被駆動部材64および駆動部201(の係合凸部201a)を0度の位置(原点)に配置させることができる。また、被駆動部材64を原点に配置させることによって、被駆動部材64の回転が伝達される内視鏡保持部61に保持された内視鏡2dも原点に配置させることができる。その結果、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けた際に、内視鏡2dおよびロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に配置させることが可能なロボット手術システム100を提供することができる。
【0090】
(内視鏡アダプタの回転位置調整方法)
図14を参照して、本発明の一実施形態による内視鏡アダプタ6の回転位置調整方法について説明する。
【0091】
図14に示すように、内視鏡アダプタ6の回転位置調整方法は、内視鏡アダプタ6を準備する工程(S1)と、第1連係部材651をシャフト65dと一体的に回転させる工程(S3)と、シャフト65dの回転を停止させる工程(S4)と、駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置を原点に配置させる工程(S6)と、を備える。内視鏡アダプタ6を準備する工程(S1)は、内視鏡2dを回転可能に保持する内視鏡保持部61と、基部62と、を備え、基部62が、(ドレープアダプタ7を介して)ロボットアーム2a(の駆動部201)に取り付けられる取付部63と、取付部63に設けられ、(ドレープアダプタ7を介して)ロボットアーム2aの駆動部201によって回転駆動される被駆動部材64と、被駆動部材64の回転を減速して内視鏡保持部61に伝達する伝達機構65と、を含む内視鏡アダプタ6を準備する工程である。第1連係部材651をシャフト65dと一体的に回転させる工程(S3)は、ロボットアーム2aに内視鏡アダプタ6を取り付けた後、被駆動部材64を回転させることにより、第1連係部材651を、被駆動部材64の回転により回転するシャフト65dと一体的に回転させる工程である。シャフト65dの回転を停止させる工程(S4)は、シャフトして回転させるとともに、基部62に含まれるストッパ部62aに当接させることによってシャフト65dの回転を停止させる工程である。駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置を原点に配置させる工程(S6)は、シャフト65dの回転を停止させる工程(S4)の後、シャフト65dの回転が停止した際のロボットアーム2aの駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置に基づいて、駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置を原点に配置させる工程である。
【0092】
本実施形態の内視鏡アダプタ6の回転位置調整方法では、ロボットアーム2aに内視鏡アダプタ6を取り付けた後、(駆動部201により)被駆動部材64を回転させることにより、第1連係部材651を、シャフト65dと一体的に回転させるとともに、第2連係部材652を、第1連係部材651と連係して回転させ、第2連係部材652を、ストッパ部62aに当接させることによってシャフト65dの回転を停止させる。これにより、被駆動部材64の回転位置をメカエンド(機械的な動作限界)に配置させることができる。また、本実施形態の内視鏡アダプタ6の回転位置調整方法では、シャフト65dの回転を停止させた後、シャフト65dの回転が停止した際のロボットアーム2aの駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置に基づいて、駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置を原点に配置させる。これにより、被駆動部材64がメカエンドに配置された場合のロボットアーム2aの駆動部201(の係合凸部201a)の回転位置に基づいて、駆動部201の回転位置を原点に配置させることができる。すなわち、メカエンドに配置された被駆動部材64を原点に配置させるように駆動部201を回転させることによって、駆動部201の回転位置を原点に配置させることができるとともに、被駆動部材64の回転が伝達される内視鏡保持部61に保持された内視鏡2dも原点に配置させることができる。その結果、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けた際に、内視鏡2dとロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に配置させることができる。
【0093】
詳細には、まず、ステップS1において、内視鏡保持部61と、取付部63と被駆動部材64と伝達機構65とを含む基部62と、を備える内視鏡アダプタ6を準備する工程が行われる。
【0094】
次に、ステップS2において、内視鏡アダプタ6をドレープアダプタ7を介してロボットアーム2aに取り付ける工程が行われる。ここで、内視鏡アダプタ6をドレープアダプタ7を介して、ロボットアーム2aの駆動部201に接続した際、被駆動部材64の回転角度範囲における位置(回転位置)は不明(ランダム)である。したがって、ロボットアーム2aの駆動部201の係合凸部201aの回転位置もランダムになるため、内視鏡2dとロボットアーム2aの駆動部201を、各々の回転角度範囲の原点に配置させる必要がある。
【0095】
次に、ステップS3において、被駆動部材64を回転させることにより、第1連係部材651をシャフト65dと一体的に回転させる工程が行われる。具体的には、ロボットアーム2aの駆動部201によって被駆動部材64を回転駆動させることによって、被駆動部材64の回転を増速してシャフト65dを回転させる。これにより、シャフト65dに固定された第1連係部材651が、シャフト65dと一体的に回転する。
【0096】
次に、ステップS4において、第2連係部材652を第1連係部材651と連係して回転させるとともに、ストッパ部62aに当接させることによってシャフト65dの回転を停止させる工程が行われる。
【0097】
具体的には、第1連係部材651が、シャフト65dと一体的に回転することにより、第1連係部材651の第1連係用凸部651bがY1側の第3連係部材653の第3連係用凸部653aに当接すると、Y1側の第3連係部材653が第1連係部材651と供回りを開始する。そして、Y1側の第3連係部材653の第4連係用凸部653bが、Y2側の第3連係部材653の第3連係用凸部653aに当接すると、Y2側の第3連係部材653が、第1連係部材651およびY1側の第3連係部材653と供回りを開始する。そして、Y2側の第3連係部材653の第4連係用凸部653bが、第2連係部材652の第2連係用凸部652aと当接すると、第2連係部材652が、第1連係部材651、Y1側の第3連係部材653およびY2側の第3連係部材653と供回りを開始する。そして、第2連係部材652の第1ストッパ用凸部652bが、ストッパ部62aの第2ストッパ用凸部62bと当接すると、供回りしていた第1連係部材651、Y1側の第3連係部材653、Y2側の第3連係部材653および第2連係部材652の回転が阻害されることによって、回転が停止する。
【0098】
なお、ステップS4では、駆動部201(の係合凸部201a)は所定の回転速度で回転させる。すなわち、被駆動部材64は所定の回転速度で回転させる。そして、被駆動部材64の回転位置がメカエンドと同じ位置(左回りに回転させる場合は略+52度の位置、右回りに回転させる場合は略-52度の位置)付近に近づくと、被駆動部材64の回転速度を一端下降させる。そして、被駆動部材64の回転が止まらない場合(被駆動部材64の回転位置がメカエンドでない場合)には、被駆動部材64の回転速度を再度所定の回転速度まで上昇させて、回転を継続させる。被駆動部材64の回転位置は、たとえば、駆動部201のエンコーダ201cによって駆動部201のモータ201bの回転位置を検出することによって間接的に検出される。
【0099】
次に、ステップS5において、被駆動部材64を回転させる駆動部201を停止させる工程が行われる。
【0100】
すなわち、本実施形態の内視鏡アダプタ6の回転位置調整方法では、シャフト65dの回転を停止させる工程(S4)の後、かつ、駆動部201を原点に配置させる工程(S6)の前に、被駆動部材64を回転させる駆動部201を停止させる工程(S5)を備える。駆動部201は、モータ201bを含む。そして、駆動部201を停止させる工程(S5)は、モータ201bの出力電流値に基づいて、駆動部201を停止させる工程である。
【0101】
ここで、第2連係部材652をストッパ部62aに当接させてシャフト65dの回転を停止させた後、モータ201bの駆動が継続されている場合、モータ201bの出力電流値が急激に上昇する。したがって、モータ201bの出力電流値に基づいて、第2連係部材652がストッパ部62aに当接してシャフト65dの回転が停止していることを容易に判別することができる。
【0102】
また、駆動部201を停止させる工程(S5)は、モータ201bの出力電流値に加えて、モータ201bの回転位置に基づいて、駆動部201を停止させる工程である。
【0103】
これにより、モータ201bの出力電流値のみに基づく場合と比較して、第2連係部材652がストッパ部62aに当接してシャフト65dの回転が停止していることを精度良く判別することができる。
【0104】
なお、モータ201bの回転位置は、駆動部201のエンコーダ201cによって検出され、第2連係部材652がストッパ部62aに当接してシャフト65dの回転が停止していることは、モータ201bの回転位置が変化しないことに基づいて、容易に判別することができる。
【0105】
次に、ステップS6において、シャフト65dの回転が停止した際の駆動部201の回転位置に基づいて、駆動部201の回転位置を原点に配置させる工程が行われる。
【0106】
駆動部201を原点に配置させる工程(S6)は、駆動部201を所定の角度だけ逆回転させることにより、駆動部201を原点に配置させる工程である。
【0107】
これにより、シャフト65dの回転を停止させる工程(S6)において、メカエンドに配置された駆動部201を、シャフト65dの回転を停止させる工程(S6)における駆動部201の回転方向とは逆方向に回転させることにより、駆動部201を、回転角度範囲のいずれかの位置にある原点に容易に配置させることができる。
【0108】
具体的には、被駆動部材64の回転位置がメカエンドに配置されている状態において、駆動部201により被駆動部材64を、シャフト65dの回転を停止させる工程における回転方向とは逆方向に向かって、メカエンドから原点までの角度(略412度)だけ回転させる。これによって、被駆動部材64の回転位置が原点に配置される。そして、制御部202は、被駆動部材64の回転位置が原点に配置された状態における、ロボットアーム2aの駆動部201の回転位置を原点として設定する。これにより、内視鏡2dおよびロボットアーム2aの駆動部201を各々の回転角度範囲の原点に配置する(イニシャライズする)ことができる。
【0109】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0110】
たとえば、上記実施形態では、駆動部201を停止させる工程(S6)を、モータ201bの出力電流値に加えて、モータ201bの回転位置に基づいて、駆動部201を停止させるするように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、駆動部を停止させる工程を、モータの出力電流値のみに基づいて、駆動部を停止させるように構成してもよい。また、駆動部を停止させる工程を、モータの回転位置のみに基づいて、駆動部を停止させるするように構成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、被駆動部材64が、360度よりも大きい角度範囲内において回転可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被駆動部材が、360度未満の角度範囲内において回転可能に構成されていてもよい。その場合、ロボットアームに内視鏡アダプタを取り付けた際に、被駆動部材を原点に配置させることができるので、被駆動部材の形状等に基づいて被駆動部材が向いている方向を特定できる構成を省略することができる。
【0112】
また、上記実施形態では、軸方向(Y方向)において第1連係部材651と第2連係部材652との間に設けられ、第1連係部材651と連係して回転する第3連係用凸部653aと、第2連係部材652と連係して回転する第4連係用凸部653bと、を有する第3連係部材653が、軸方向(Y方向)に沿って並ぶように複数(2つ)設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、軸方向において第1連係部材と第2連係部材との間に設けられ、第1連係部材と連係して回転する第3連係用凸部と、第2連係部材と連係して回転する第4連係用凸部と、を有する第3連係部材が、軸方向に沿って並ぶように3つ以上設けられていてもよいし、1つのみが設けられていてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、伝達機構65が、軸方向(Y方向)において第1連係部材651と第2連係部材652との間に設けられ、第1連係部材651と連係して回転する第3連係用凸部653aと、第2連係部材652と連係して回転する第4連係用凸部653bと、を有する第3連係部材653を含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では伝達機構が、軸方向において第1連係部材と第2連係部材との間に設けられ、第1連係部材と連係して回転する第3連係用凸部と、第2連係部材と連係して回転する第4連係用凸部と、を有する第3連係部材を含まないように構成してもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、第2連係部材652を、シャフト65dの径方向の外側に向かって突出するとともに、シャフト65dの回転を停止させるための第1ストッパ用凸部652bを含むとともに、ストッパ部62aが、シャフト65dに向かって突出するとともに、第2連係部材652が回転することによって第2連係部材652の第1ストッパ用凸部652bと当接する第2ストッパ用凸部62bを含むように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2連係部材を、駆動伝達軸の軸方向の一方側に向かって突出するとともに、駆動伝達軸の回転を停止させるための第1ストッパ用凸部を含むように構成してもよい。その場合、ストッパ部の第2ストッパ用凸部が第2連係部材の第1ストッパ用凸部と当接するように、第1ストッパ用凸部が駆動伝達軸の径方向の外側に向かって突出する場合と比較して、駆動伝達軸に向かって突出する突出量を大きくする必要がある。
【0115】
また、上記実施形態では、第1連係部材651において、第1連係用凸部651bと、キー651aとが、Y方向から見て、円環形状を有する第1連係部材651の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1連係部材において、第1連係用凸部と、キーとが、Y方向から見て、円環形状を有する第1連係部材の周方向における互いに反対側の位置に設けられていなくともよい。同様に、上記実施形態では、第2連係部材652において、第2連係用凸部652aと、第1ストッパ用凸部652bとが、Y方向から見て、円環形状を有する第2連係部材652の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2連係部材において、第2連係用凸部と、第1ストッパ用凸部とが、Y方向から見て、円環形状を有する第2連係部材の周方向における互いに反対側の位置に設けられていなくともよい。また、同様に、上記実施形態では、第3連係部材653において、第3連係用凸部653aと第4連係用凸部653bとが、Y方向から見て、円環形状を有する第3連係部材653の周方向における互いに反対側の位置(略180度異なる位置)に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3連係部材において、第3連係用凸部と第4連係用凸部とが、Y方向から見て、円環形状を有する第3連係部材の周方向における互いに反対側の位置に設けられていなくともよい。
【0116】
また、上記実施形態では、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際に内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロボットアームに内視鏡を取り付けた際以外(たとえば、ロボットアームに内視鏡を取り付けた後等に内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に再度配置させたい場合(再度イニシャライズさせたい場合))に内視鏡およびロボットアームの駆動部を各々の回転角度範囲の原点に配置させてもよい。
【符号の説明】
【0117】
2a:ロボットアーム、2d:内視鏡、6:内視鏡アダプタ、7:ドレープアダプタ、12:ドレープ、61:内視鏡保持部、62:基部、62a:ストッパ部、62b:第2ストッパ用凸部、63:取付部、64:被駆動部材、65:伝達機構、65d:シャフト(駆動伝達軸)、100:ロボット手術システム、201:駆動部、201b:モータ、202:制御部、651:第1連係部材、651b:第1連係用凸部、652:第2連係部材、652a:第2連係用凸部、652b:第1ストッパ用凸部、653:第3連係部材、653a:第3連係用凸部、653b:第4連係用凸部