(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】苗移植方法及び苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A01C11/02 301E
(21)【出願番号】P 2020072878
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510243528
【氏名又は名称】サークル機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 亮介
(72)【発明者】
【氏名】玉尾 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】今村 城久
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-236506(JP,A)
【文献】特開2003-111504(JP,A)
【文献】特開2017-148768(JP,A)
【文献】特表2010-534600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00 - 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙筒苗群から紙筒苗列を分離させる苗分離部と、該苗分離部へ紙筒苗群を搬送する苗搬送部と、を備える苗移植機を用いた苗移植方法であって、
前記苗搬送部における紙筒苗群の搬送路を揺動させて該搬送路上の紙筒苗群を前記苗分離部へ供給することを特徴とする苗移植方法。
【請求項2】
紙筒苗群から紙筒苗列を分離させる苗分離部と、該苗分離部へ紙筒苗群を搬送する苗搬送部と、を備える苗移植機であって、
前記苗搬送部は、紙筒苗群の搬送路を揺動させる揺動機構を備えることを特徴とする苗移植機。
【請求項3】
前記揺動機構は、前記搬送路を水平方向へ揺動させることを特徴とする請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記搬送路は、
ベルトコンベア又はローラコンベアのいずれかを含む苗搬送装置に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記揺動機構は、前記苗搬送装置が設けられる回転テーブルを備えることを特徴とする請求項4に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植方法及び苗移植機に関するもので、紙筒苗群から紙筒苗列を分離させる苗分離部と、該苗分離部へ紙筒苗群を搬送する苗搬送部と、を備える苗移植機を用いた苗移植方法、及びその苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、紙筒苗群から紙筒苗を分離させて圃場に植え付ける全自動移植機が開示されている。この全自動移植機は、紙筒苗群を搬送する苗搬送部(例えば「特許文献1」、「特許文献2」参照)と、該苗搬送部の搬送路上の紙筒苗群から、最前列の紙筒苗列を順次分離させる苗分離部(例えば「特許文献3」参照)と、を備える。このような全自動移植機では、苗搬送部の搬送路上で、後続の紙筒苗群によって押し潰される等して、先頭の紙筒苗群が変形することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-149909号公報
【文献】特開平6-105604号公報
【文献】特開2012-231759号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】甜菜の紙筒移植栽培 増田昭芳 著 (平成8年6月1日) p. 130~ 132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
苗搬送部の搬送路上の紙筒苗群が変形した場合、苗分離部における分離不良、延いては圃場への植え付け不良、植え付け精度の低下等の不具合が発生することから、変形した紙筒苗群を当該搬送路上で修正(整形)する必要がある。しかし、紙筒苗群の修正は、移植機を停止させる必要があるため、移植作業の能率を低下させることになる。また、複数台の苗搬送部を備えた多畦用移植機の場合、紙筒苗群の修正の頻度が高くなるため、作業者への負担が増大する。さらに、紙筒苗群の修正は熟練を要する作業であり、作業者の確保が困難である。
【0006】
本発明は、苗分離部の搬送路上における紙筒苗群の修正が容易な苗移植方法及び苗移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の苗移植方法は、紙筒苗群から紙筒苗列を分離させる苗分離部と、該苗分離部へ紙筒苗群を搬送する苗搬送部と、を備える苗移植機を用いた苗移植方法であって、前記苗搬送部における紙筒苗群の搬送路を揺動させて該搬送路上の紙筒苗群を前記苗分離部へ供給することを特徴とする。
また、本発明の苗移植機は、紙筒苗群から紙筒苗列を分離させる苗分離部と、該苗分離部へ紙筒苗群を搬送する苗搬送部と、を備える苗移植機であって、前記苗搬送部は、紙筒苗群の搬送路を揺動させる揺動機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、苗搬送部の搬送路上での紙筒苗群の修正を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る苗移植機の左側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る苗移植機の平面図である。
【
図4】苗分離部における苗分離装置の説明図である。
【
図5】苗搬送部の左側面図である。搬送路上の紙筒苗群を示す図である。
【
図6】苗搬送部の平面図であって、搬送路上の紙筒苗群を示す図である。
【
図7】苗搬送部の説明図であって、揺動機構の平面図である。
【
図8】苗転送部の説明図であって、受入コンベアの
図1におけるE矢視図である。
【
図9】苗転送部の説明図であって、供給コンベアから植付ディスクへの受け渡しの状態を示す左側面図である。
【
図10】苗転送部の説明図であって、供給コンベアから植付ディスクへの受け渡しの状態を示す
図1におけるE矢視図である。
【
図12】鎮圧輪の説明図であって、鎮圧輪の
図1におけるE矢視図である。
【
図13】苗分離部の動作説明図であって、搬送路上の紙筒苗群が苗分離板に当接した状態を示す図である。
【
図14】苗分離部の動作説明図であって、苗押さえ針が第2列の紙筒苗列に挿入された状態を示す図である。
【
図15】苗分離部の動作説明図であって、苗分離針が第1列の紙筒苗列に係合された状態を示す図である。
【
図16】苗分離部の動作説明図であって、第1列の紙筒苗列が前方向へ倒された状態状態を示す図である。
【
図17】苗分離部の動作説明図であって、分離された紙筒苗列が受入コンベア上に載せられた状態を示す図である。
【
図18】苗分離部の動作説明図であって、受入コンベア上に載せられた紙筒苗列から苗分離針が抜かれた状態を示す図である。
【
図19】揺動機構の動作説明図であって、苗搬送装置(搬送路)上の紙筒苗群の右側が前方へ出た状態を示す図である。
【
図20】揺動機構の動作説明図であって、電動シリンダ装置を縮長させたときの揺動テーブルを示す図である。
【
図21】揺動機構の動作説明図であって、形状(姿勢)が矯正された苗搬送装置(搬送路)上の紙筒苗群を示す図である。
【
図22】揺動機構の動作説明図であって、苗搬送装置(搬送路)上の紙筒苗群の左側が前方へ出た状態を示す図である。
【
図23】揺動機構の動作説明図であって、電動シリンダ装置を伸長させたときの揺動テーブルを示す図である。
【
図24】揺動機構の動作説明図であって、形状(姿勢)が矯正された苗搬送装置(搬送路)上の紙筒苗群を示す図である。
【
図25】第2実施形態における揺動機構の説明図であって、揺動テーブルが初期位置に位置する状態を示す図である。
【
図26】第2実施形態における揺動機構の説明図であって、揺動テーブルを時計回り方向へ回動(揺動)させた状態を示す図である。
【
図27】第2実施形態における揺動機構の説明図であって、揺動テーブルを反時計回り方向へ回動(揺動)させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
まず、第1実施形態に係る苗移植機1を説明する。なお、以下の説明において、便宜上、
図1及び
図2にも示してあるとおり、
図1における左方向を前方向(前側)又は進行方向、
図1における右方向を後方向(後側)、
図2における下方向を左方向(左側)、
図2における上方向を右方向(右側)と称する。
【0011】
図1、
図2に示されるように、苗移植機1は、紙筒苗群3(
図5、
図6参照)から紙筒苗列4(
図4参照)を分離させる苗分離部21と、苗分離部21へ紙筒苗群3を搬送する苗搬送部41と、を備える。また、苗移植機1は、紙筒苗5を圃場の植付溝(図示省略)に植え付ける苗植付部81と、苗分離部21から供給された紙筒苗列4の紙筒苗5を個別に苗植付部81へ転送する苗転送部91と、を備える。
【0012】
(苗分離部)
図1に示されるように、苗分離部21は、苗移植機1のサブフレーム8に設けられる。サブフレーム8は、苗移植機1の本体フレーム7の上部に設けられる。苗分離部21は、搬送路42上の紙筒苗群3から第1列(最前列)の紙筒苗列4A(
図4参照)を分離(剥離)させる苗分離装置22と、搬送路42上の紙筒苗群3の第2列の紙筒苗列4B(
図13参照)を押さえる苗押さえ装置23と、を備える。なお、苗分離装置22における紙筒苗群3から第1列の紙筒苗列4Aを分離させる機構は、従来の苗移植機における苗分離装置及び苗押さえ装置と同一であるので、苗分離装置22及び苗押さえ装置23については概略のみ説明する。
【0013】
図1、
図4を参照すると、苗分離装置22は、搬送路42上の紙筒苗群3の第1列の紙筒苗列4Aの前側面に当接させる苗分離板24と、苗分離板24に当接させた紙筒苗列4Aに係合させる複数本の苗分離針25と、を有する。苗分離板24は、ロボットアーム(図示省略)によって操作される操作フレーム26に設けられる。また、苗分離針25は、回動フレーム27に設けられる。回動フレーム27は、電動モータ(図示省略、油圧モータへの置き換えも可能)の駆動によって操作フレーム26に対して軸A1を中心に回動可能である。複数本の苗分離針25は、軸A1を中心とする円弧に沿うように湾曲して延びる。また、複数本の苗分離針25は、紙筒苗列4Aの隣接する紙筒苗5間の間隔と同一間隔をあけて左右方向に一列で配置される。
【0014】
図1に示されるように、苗押さえ装置23は、搬送路42上の紙筒苗群3の第2列の紙筒苗列4B(
図13参照)の各紙筒苗5の内側に挿入される複数本の苗押さえ針28を備える。苗押さえ装置23は、複数本の苗押さえ針28を昇降させる昇降機構29を有する。昇降機構29は、複数本の苗押さえ針28が紙筒苗列4Bの隣接する紙筒苗5間の間隔と同一間隔をあけて左右方向へ一列で配置される昇降部材30と、前端部に昇降部材30が設けられるリンク部材31と、を備える。また、苗押さえ装置23は、シリンダ側取付部33が苗移植機1のサブフレーム8に回動可能に接続されると共にロッド側取付部34がリンク部材31の後端部に回動可能に接続される苗押さえシリンダ装置32(第1実施形態では「油圧シリンダ装置」)を有する。なお、リンク部材31は、サブフレーム8によって軸A2を中心に回動可能に支持される。
【0015】
(苗搬送部)
図1、
図2、
図5を参照すると、苗搬送部41は、紙筒苗群3が搬送される搬送路42を有する苗搬送装置43を備える。苗搬送装置43は、搬送部フレーム44の後部に設けられる受入コンベア45と、搬送部フレーム44の前部に設けられる供給コンベア46と、受入コンベア45と供給コンベア46との間に設けられる転載コンベア47と、を備える。これらのコンベア45,46,47は搬送路42を構成する。受入コンベア45は駆動ローラコンベアからなり、供給コンベア46及び転載コンベア47は駆動ベルトコンベアからなる。搬送速度は、受入コンベア45が最も早く、転載コンベア47、供給コンベア46の順に遅くなる。これにより、搬送路42上の先行する紙筒苗群3と後続の紙筒苗群3との間にできた隙間48(
図5、
図6参照)を詰めることができる。
【0016】
なお、苗搬送装置43は、受入コンベア45、供給コンベア46、及び転載コンベア47を1つの駆動源(例えば「電動モータ58、
図1参照」)によって駆動するように構成することができる。搬送部フレーム44の上部の左右両側には、無端ベルトによって構成されて供給コンベア46上の紙筒苗群3を案内する搬送補助ベルト54L,54Rと、無端ベルトによって転載コンベア47上の紙筒苗群3を案内する無端状の搬送補助ベルト55L,55Rと、が設けられる。
【0017】
苗搬送部41は、苗搬送装置43の、前進端位置と後退端位置(引き出し位置)との間の移動を可能にする引き出し機構49を備える。引き出し機構49は、苗搬送装置43を支持する架台50を有する。
図2に示されるように、架台50の前側には、左右一対の引き出しローラ51L,51Rが設けられ、架台50の後側には、左右一対の引き出しローラ52L,52Rが設けられる。
図1、
図3を参照すると、引き出し機構49は、本体フレーム7上に左右一対で設けられて前後方向へ延びる引き出しレール53L,53Rを備える。架台50の左側の引き出しローラ51L,52Lは、左側の引き出しレール53L上を転動可能であり、架台50の右側の引き出しローラ51R,52Rは、右側の引き出しレール53R上を転動可能である。
【0018】
苗搬送部41は、苗搬送装置43と架台50との間に構成されて搬送路42を揺動させる揺動機構61を備える。
図3、
図5、
図7を参照すると、揺動機構61は、苗搬送装置43の搬送部フレーム44の下面に取り付けられる揺動テーブル62を備える。揺動テーブル62の下面は、架台50上に設けられた複数個(第1実施形態では「4個」)の支持ローラ63によって支持される。複数個の支持ローラ63は、揺動軸A3の軸線を中心とする1つの円(図示省略)に接するように配置される。揺動機構61は、揺動テーブル62と架台50との間に配置されるディスク状(円板形)のガイドプレート64を備える。ガイドプレート64には、同軸に配置された揺動軸A3が固定される。他方、揺動軸A3の上端部は、揺動テーブル62に固定される。揺動軸A3の外周には、スリーブ66が設けられる。スリーブ66は、上端面が揺動テーブル62に当接すると共に下端面がガイドプレート64に当接する。
【0019】
揺動機構61は、ガイドプレート64を支持する複数個(第1実施形態では「6個」)のガイドローラ67を備える。複数個のガイドローラ67は、揺動軸A3の軸線を中心とする1つの円(図示省略)上に配置され、ガイドプレート64を、揺動軸A3の軸線を中心に回転可能に支持する。複数個のガイドローラ67は、揺動軸A3の軸線に対して平行をなすように架台50上に配置された回転軸68を有する。複数個のガイドローラ67は、軸受65を介して回転軸68に設けられる円筒部69と、円筒部69の軸方向両端部に設けられてガイドプレート64の外周部分(周縁部)を挟み込むように配置されたフランジ70T,70Bと、を有する。この構成により、架台50上の揺動テーブル62は、揺動軸A3の軸線を中心に、揺動軸A3及びガイドプレート64と一体で回転することができる。
【0020】
揺動機構61は、揺動テーブル62を駆動する電動シリンダ装置71を備える。電動シリンダ装置71は、シリンダ側取付部72が架台50上に設けられた取付台73に接続されると共に、ロッド側取付部74が揺動テーブル62の後端部に設けられたヨーク75に接続される。この構成により、電動シリンダ装置71のロッド76を伸長させると(
図23参照)、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図7における反時計回り方向へ回動し、延いては苗搬送装置43及び搬送路42が揺動軸A3の軸線を中心に
図7における反時計回り方向へ回動する。他方、電動シリンダ装置71のロッド76を縮長させると(
図20参照)、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図7における時計回り方向へ回動し、延いては苗搬送装置43及び搬送路42が揺動軸A3の軸線を中心に
図7における時計回り方向へ回動する。
【0021】
なお、電動シリンダ装置71には、ロッド76の伸長側の指定位置(
図23参照)、縮長側の指定位置(
図20参照)、及び中立位置(初期位置、
図7参照)、延いては搬送路42の向きを検出するためのセンサが設けられる。また、苗移植機1は、当該センサの検出信号に基づき電動シリンダ71を制御するコントローラ(図示省略)を備える。
【0022】
(苗転送部)
図1、
図8乃至
図10を参照すると、苗転送部91は、搬送路42上の紙筒苗群3から分離(剥離)された第1列の紙筒苗列4が供給される受入コンベア92と、受入コンベア92によって搬送された紙筒苗列4の紙筒苗5を植付部81へ供給する供給コンベア93と、を備える。受入コンベア92は、左右方向へ延びてロボットアーム(図示省略)によって当該受入コンベア92上に載せられた紙筒苗列4を供給コンベア(左方向)へ搬送する。他方、供給コンベア93は、上下方向へ延びる左右一対の無端ベルト94L,94Rによって構成される。供給コンベア93は、受入コンベア92上の紙筒苗列4から、先頭(左端位置)の紙筒苗5を、順次挟み込んで下方向へ搬送する。なお、供給コンベア93の搬送速度と受入コンベア92の搬送速度とは所定の速度比に設定されている。
【0023】
(苗植付部)
図1、
図11を参照すると、苗植付部81は、本体フレーム7の下部に設けられて圃場2に植付溝(図示省略)を形成する溝切器82と、溝切器82によって形成された植付溝へ紙筒苗5を植え付ける植付ディスク83と、を備える。苗植付部81は、2枚のゴム板からなる植付ディスク83による従来の挟み植え付け方式が適用され、苗転送部91の供給コンベア93から供給された紙筒苗5の苗の上端部分を2枚のゴム板によって挟み込み、圃場2の植付溝へ投下する。植付溝へ投下された紙筒苗5は、本体フレーム7に設けられた左右一対の鎮圧輪85L,85Rによって圃場2に固定される。
【0024】
なお、
図1に示されるように、苗移植機1の本体フレーム7には、トラクタ(図示省略)から出力された動力によって回転駆動されるPTO軸10が設けられる。また、PTO軸10に伝達された動力は、苗押さえシリンダ32へ供給される油圧を発生させる油圧ポンプ12の駆動等に用いられる。さらに、PTO軸10に伝達された動力は、本体フレーム7に設けられたバッテリ(図示省略)を充電するための発電機(図示省略)の駆動に用いることができる。
【0025】
次に、第1実施形態に係る苗移植方法を説明する。
図5、
図6に示されるように、作業者(図示省略)は、紙筒苗群3を収容した苗運搬箱6を苗搬送部41の苗搬送装置43の受入コンベア45上に載せる。次に、PTO軸10を回転させた状態で、操作盤15(
図28参照)の運転スイッチ(例えば
図28における「SW-1」)をONにすると、苗搬送装置43の各コンベア45、46、47が作動する。これにより、苗運搬箱6内の紙筒苗群3は、搬送路42上を、受入コンベア45から転載コンベア47を乗り継いで供給コンベア46へ向かって移動する。作業者は、空になった苗運搬箱6を、紙筒苗群3を収容した苗運搬箱6に順次交換する。
【0026】
図13に示されるように、苗搬送装置43は、苗搬送路42上の紙筒苗群3が、初期位置に位置決めされた苗分離板24に当接するタイミングで、搬送路42上の紙筒苗群3の搬送を停止させる。この状態では、複数本の苗分離針25は開位置に位置し、複数本の苗押さえ針28は上昇端位置に位置している。次に、
図14に示されるように、複数本の苗押さえ針28を下降させて紙筒苗群3の第2列の紙筒苗列4Bの対応する紙筒苗5に挿入する(突き刺す)。なお。苗分離板24は、ロボットアーム(図示省略)による操作フレーム26(
図1参照)の操作(以下「ロボットアームの操作」と称する)により位置決めされ、ロボットアームの動作プログラムは、例えば、ティーチングによって作成される。
【0027】
次に、
図15に示されるように、複数本の苗分離針25を開位置(
図13参照)から閉位置へ回動させて紙筒苗群3の第1列(最前列)の紙筒苗列4Aに係合させる。この状態では、第1列の紙筒苗列4Aは、苗分離板24と苗分離針25とによって把持される。便宜上、苗分離板24と苗分離針25とによって把持された第1列の紙筒苗列4Aを「ロボットアームによって把持された紙筒苗列4A」と称する。次に、
図16に示されるように、ロボットアームによって把持された紙筒苗列4Aを、前方向へ倒すようにして第2列の紙筒苗列4Bから分離(剥離)させる。なお、紙筒苗群3から分離された紙筒苗列4Aを紙筒苗列4と称する。
【0028】
次に、
図17に示されるように、ロボットアームによって把持された紙筒苗列4を、苗転送部91の受入コンベア92上に載せる。次に、
図18に示されるように、複数本の苗分離針25を閉位置(
図17参照)から開位置へ回動させてロボットアームによる把持から紙筒苗列4を解放する。次に、受入コンベア92を作動させて紙筒苗列4を供給コンベア93へ向かって搬送する。並行して、苗押さえ針28を上昇させて上昇端位置(
図13参照)に位置決めすると共に、ロボットアームの操作によって苗分離板24及び苗分離針25を初期位置に復帰させる。以降、
図13から
図18を参照して説明した動作を繰り返す。
走行中は、受入コンベア92が常に作動しているので、作動している受入コンベア92上に紙筒苗列4が解放される。
【0029】
受入コンベア92によって搬送された紙筒苗列4は、
図9、
図10に示されるように、供給コンベア93によって個々の紙筒苗5に分離されて苗植付部81の植付ディスク83へ供給される。
図11に示されるように、植付ディスク83は、供給コンベア93から供給された紙筒苗5を、溝切器82によって圃場2に形成された植付溝(図示省略)へ順次植え付ける。圃場2の植付溝へ植え付けられた紙筒苗5は、
図12に示されるように、左右一対の鎮圧輪85L,85Rによって圃場2に固定される。
【0030】
ところで、前述した苗移植方法では、葉絡み、根絡み等に起因して、苗分離装置22が、紙筒苗群3から複数列の紙筒苗列4を分離(剥離)させることがある。また、後続の紙筒苗群3によって紙筒苗5が押し潰されることにより、紙筒苗群3が全体的に変形することがある。これらの不具合が発生した場合、最終的に、紙筒苗5の植付溝への植付不良及び植付精度の低下に繋がるので、搬送路42上の紙筒苗群3の形状(姿勢)を修正する必要がある。
【0031】
そこで、第1実施形態では、苗搬送装置43と架台50との間に、搬送路42を揺動させる揺動機構61を設けて苗移植機1を構成した。そして、
図19に示されるように、搬送路42上の紙筒苗群3の右側が左側よりも前方へ出ているとき、作業者は、操作盤15の揺動スイッチ16(
図28参照)を右行側へ操作する。これにより、
図20に示されるように、電動シリンダ装置71のロッド76が縮長し、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図20における時計回り方向へ回動する。その結果、揺動テーブル62上の苗搬送装置43の搬送路42が同一方向(時計回り方向)へ回動(揺動)し、
図21に示されるように、搬送路42上の紙筒苗群3の形状(姿勢)が矯正される。
【0032】
一方、
図22に示されるように、搬送路42上の紙筒苗群3の左側が右側よりも前方へ出ているとき、作業者は、操作盤15の揺動スイッチ16(
図28参照)を左行側へ操作する。これにより、
図23に示されるように、電動シリンダ装置71のロッド76が伸長し、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図23における反時計回り方向へ回動する。その結果、揺動テーブル62上の苗搬送装置43の搬送路42が同一方向(反時計回り方向)へ回動(揺動)し、
図24に示されるように、搬送路42上の紙筒苗群3の形状(姿勢)が矯正される。なお、矯正された紙筒苗群3の第1列の紙筒苗列4Aは、初期位置に位置決めされた苗分離板24に対して平行をなす。ここで、
図28は、操作盤15の一例を示す。第1実施形態では揺動スイッチ16にセレクタスイッチを用いたが、これに限定されるものではない。操作盤15は苗移植機1の任意の位置に設置可能であり、苗移植機1上での図示は省略する。また、他のボタン型のスイッチには本苗移植機1のその他の各操作が割り当てられる。
【0033】
第1実施形態では以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、苗分離部21へ紙筒苗群3を搬送する苗搬送装置43の、搬送路42上の紙筒苗群3が変形した場合(紙筒苗群3の姿勢が乱れた場合)、作業者が操作盤15の揺動スイッチ16を操作することで、揺動機構61が作動して苗搬送装置43を載せた揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に指定方向へ回動する。これにより、苗搬送装置43上の搬送路42が揺動軸A3の軸線を中心に指定方向へ回動(揺動)し、当該搬送路42上の紙筒苗群3の形状(姿勢)が矯正される。
【0034】
第1実施形態では、搬送路42上の紙筒苗群3が変形した場合(紙筒苗群3の姿勢が乱れた場合)であっても、紙筒苗群3を作業者の手で直接操作して矯正する必要がないので、当該作業者の負担を削減することができる。
また、紙筒苗群3の矯正作業に熟練が要求されないので、作業者を選ぶことがなく、経験が浅い作業者であっても紙筒苗群3を容易に矯正することができる。
さらに、簡単なスイッチ操作により、搬送路42上の紙筒苗群3を即座に矯正することができるので、紙筒苗群3の矯正のために苗移植機1を停止させる必要がなく、移植作業の能率を向上させることができる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を説明する。便宜上、第1実施形態の構成と同一又は相当する第2実施形態の構成については、同一の名称及び符号を付与すると共に重複する説明を省略する。
【0036】
第1実施形態では、
図7に示されるように、架台50上に設けられた1つの電動シリンダ装置71によって揺動テーブル62を駆動するように揺動機構61を構成した。これに対し、第2実施形態では、
図25に示されるように、2つの電動シリンダ装置111,121によって揺動テーブル62を駆動するように揺動機構101を構成した。
【0037】
揺動機構101は、左右方向へ延びる一対のアーム103,104を有する円板形のガイドプレート64を備える。一対のアーム103,104を含むガイドプレート64上には、揺動テーブル62が取り付けられる。ガイドプレート64は、架台50上に立設された揺動軸A3に軸受106を介して設けられる。これにより、ガイドプレート64、延いては揺動テーブル62は、揺動軸A3の軸線を中心に回動(揺動)することができる。
【0038】
電動シリンダ装置111は、シリンダ側取付部112が架台50上に設けられた取付台113に接続されると共に、ロッド側取付部114がピン115を介してアーム103の先端部に設けられた長孔116に接続される。他方、電動シリンダ装置121は、シリンダ側取付部122が架台50上に設けられた取付台123に接続されると共に、ロッド側取付部124がピン125を介してアーム104の先端部に設けられた長孔126に接続される。
【0039】
この構成により、
図26に示されるように、電動シリンダ装置111のロッド117を伸長させると共に電動シリンダ装置121のロッド127を縮長させると、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図26における時計回り方向へ回動し、延いては苗搬送装置43及び搬送路42(
図6参照)が揺動軸A3の軸線を中心に
図26における時計回り方向へ回動する。他方、
図27に示されるように、電動シリンダ装置111のロッド117を縮長させると共に電動シリンダ装置121のロッド127を伸長させると、揺動テーブル62が揺動軸A3の軸線を中心に
図27における反時計回り方向へ回動し、延いては苗搬送装置43及び搬送路42(
図6参照)が揺動軸A3の軸線を中心に
図27における反時計回り方向へ回動する。
【0040】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態における電動シリンダ装置71と比較して、個々の電動シリンダ装置111,121に作用する負荷を軽減することができる。これにより、電動シリンダ装置71よりも小さい能力の電動シリンダ装置111,121を用いることが可能であり、個々の電動シリンダ装置111,121を小型化することができる。その結果、揺動機構101の応答性及び安定性を向上させることができる。
【0041】
本発明は上記の実施形態には限定されない。本技術思想を具現化するあらゆる形態が可能である。例えば、従来使用されている移植機を改造して、紙筒苗群の搬送経路が揺動するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 苗移植機、3 紙筒苗群、21 苗分離部、41 苗搬送部、42 搬送路、61 揺動機構