(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】含水系貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20230406BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230406BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230406BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K9/70 405
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/02
(21)【出願番号】P 2020547997
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025673
(87)【国際公開番号】W WO2020066188
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018180413
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝久
(72)【発明者】
【氏名】金箱 眞
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156497(JP,A)
【文献】特開2011-182847(JP,A)
【文献】特開平03-205333(JP,A)
【文献】特開平09-279113(JP,A)
【文献】特開昭60-060854(JP,A)
【文献】特開昭58-069762(JP,A)
【文献】特公昭47-051808(JP,B1)
【文献】米国特許第05145749(US,A)
【文献】国際公開第2015/025935(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/090782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる含水系貼付剤であって、
前記粘着剤層が下記1)~6)成分を
該粘着剤層の全質量を基準として下記割合にて必須として含有してなる、含水系貼付剤。
1)アクリル系親水性粘着剤
を0.1質量%以上10質量%以下、
2)モノマーAとモノマーBからなるモノマー混合物の共重合体であるアクリル酸アルキルエステル系共重合体であり、
前記モノマーAは、該モノマーAをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーであ
って、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド及びスチレンからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーであり、
前記モノマーBは、該モノマーBをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が220K以下のポリマーとなるモノマーであ
って、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル及びアクリル酸イソノニルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーであり、
前記モノマー混合物の全質量に対して、前記モノマーAの割合が30質量%以上50質量%以下の割合である、アクリル酸アルキルエステル系共重合体
を0.1質量%以上30質量%以下、
3)有機溶媒
を0.1質量%以上20質量%以下、
4)架橋剤
を0.01質量%以上6.0質量%以下、
5)有機酸
を0.01質量%以上5質量%以下、
6)水
を10質量%以上90質量%以下。
【請求項2】
前記モノマーAが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル及びメタクリルn-ブチルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーであり、
前記モノマーBが、アクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルからなる群から
選択される少なくとも一種のモノマーである、
請求項
1に記載の含水系貼付剤。
【請求項3】
さらに、有効成分を含む、請求項1
又は請求項
2に記載の含水系貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含水系貼付剤に関するものであり、詳細には、粘着剤層中の水分が揮散された後においても高い粘着力が維持され、且つ、皮膚刺激性の低い、含水系貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に「パップ剤」とも称される水を含む粘着基剤を用いる貼付剤(本明細書において含水系貼付剤と称する)は、薬物等の有効成分を含有する膏体層(粘着剤層)を不織布等の支持体上に備える貼付剤の一種である。パップ剤は、膏体層に水を含む粘着基剤を用いているため、皮膚刺激性は低いものの粘着力が弱く、特に膏体層中の水分の揮散とともに粘着力が経時的に低下し、皮膚から剥離し易いことが問題であった。
こうした問題を解決するために、非水系(疎水性、親油性とも称する)の粘着剤を構成する一成分として知られるアクリル酸アルキルエステル共重合体を分散させたエマルション(エマルジョンとも)基剤を、含水系貼付剤の膏体層(粘着剤層)に配合する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パップ剤基剤(膏体)にアクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン(商品名 ニカゾールTS-620、日本カーバイド工業(株))を1%配合した貼付剤(比較品)が開示されている。
特許文献2には、長時間貼付時の粘着力及び再粘着力発現、水分喪失に伴う硬化及びしなやかさの低下の抑制及び剥離時における支持体の破断抑制を得られる含水系の貼付剤の提供を目的として、含水系外用貼付剤用組成物全体に対して水分散性界面活性剤を0.01質量%以上10.0質量%以下、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体を同5.0質量%以上10質量%以下の割合で含有する含水系外用貼付剤が開示されている。
特許文献3には、時間経過によるパップ剤の水含有量が減少した場合においても十分な付着力を有するパップ材の提供を課題として、ポリアクリル酸中和物と該中和物の2.5~10倍質量(膏体基準で5~25質量%)のアクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体とポリアクリル酸とを含有するパップ剤が開示されている。
特許文献4には、より小さな力で剥離ライナーを剥離可能なパップ材の提供を目的として、ポリ(アクリル酸メチル/アクリル酸2-エチルヘキシル)と、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の界面活性剤とを含むパップ剤が開示されている。
特許文献5には、アクリル樹脂エマルジョン(商品名 ニカゾールTS-620)1.5重量%、ポリアクリル酸ナトリウム6.2重量%を含む粘着剤組成物を用いて冷熱シートを得た点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-208462号公報
【文献】特許第5650684号明細書
【文献】特許第5921779号明細書
【文献】国際公開第2016/104227号
【文献】特開2002-104957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、含水系貼付剤の粘着持続性を高めるために、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等のアクリル酸アルキルエステル共重合体を粘着剤層に配合することが知られている。しかし、上記共重合体の配合量が少ない場合、例えば特許文献1に開示された貼付剤にあっては、配合量の少なさから初期タック及び持続的な粘着性ともに欠けるという結果が示され、所望の粘着力向上の効果が得られず、また配合量を増加させた場合においても、特に粘着剤層中の水分が揮散した後における粘着力は、テープ剤と比較すると十分に満足できるといえるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、含水系貼付剤の粘着剤層に、アクリル酸アルキルエステル系共重合体として、ホモ重合したときのガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーを30~50質量%、そしてホモ重合したときのTgが220K以下のポリマーとなるモノマーを両モノマーの合計量が100質量%となるように配合した共重合体を配合することにより、粘着剤層中の水分が揮散した後においても粘着力が低下せずにむしろ向上すること、かつ、皮膚刺激性も低いことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる含水系貼付剤であって、
前記粘着剤層が下記1)~6)成分を必須として含有してなる、含水系貼付剤に関する。
1)アクリル系親水性粘着剤
2)モノマーAとモノマーBからなるモノマー混合物の共重合体であるアクリル酸アルキルエステル系共重合体であり、
前記モノマーAは、該モノマーAをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーであり、
前記モノマーBは、該モノマーBをホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が220K以下のポリマーとなるモノマーであり、
前記モノマー混合物の全質量に対して、前記モノマーAの割合が30質量%以上50質量%以下の割合である、アクリル酸アルキルエステル共重合体
3)有機溶媒
4)架橋剤
5)有機酸
6)水
【0008】
そして本発明によれば、さらに以下の実施態様が提供される。
1.前記モノマーAが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド及びスチレンからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーであり、
前記モノマーBが、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル及びアクリル酸イソノニルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーである、
前記含水系貼付剤。
2.前記モノマーAが、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル及びメタクリルn-ブチルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーであり、
前記モノマーBが、アクリル酸2-エチルヘキシル及びアクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一種のモノマーである、前記含水系貼付剤。
3.さらに有効成分を含む、前記含水系貼付剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホモ重合したときのガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーAと、ホモ重合したときのTgが220K以下のポリマーとなるモノマーBとからなるモノマー混合物の共重合体であって、該モノマー混合物の全質量に対して前記モノマーAの割合が30質量%以上50質量%以下の割合である、アクリル酸アルキルエステル系共重合体を含水系貼付剤の粘着剤層に配合することにより、粘着剤層中の水分が揮散した後においても粘着力を維持でき、かつ、皮膚刺激性が低く、膏体間付着性がなく皮膚に対して再貼付可能な含水系貼付剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述したように、含水系貼付剤の粘着力の持続性を高めるべく、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン(商品名 ニカゾールTS-620、日本カーバイド工業(株))等のアクリル酸アルキルエステル共重合体を粘着剤層に配合する提案や、この配合量を増量する提案がなされている。しかしこれまでの提案では、共重合体の配合量を増加させた場合においても、特に粘着剤層中の水分が揮散した後(水揮散後)の粘着力はテープ剤と比べて十分なものとはいえるものではなかった。
本発明者らは、上記の課題に際し、これまで検討がなされていないアクリル酸アルキルエステル系共重合体を構成するモノマーの種類、そして特にその配合割合に着目し、含水時並びに乾燥後(水揮散後)の粘着力を評価した。そして、該モノマーから構成されるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)に着目し、ホモ重合させたときのTgが270K以上のポリマーとなるモノマーと、ホモ重合させたときのTgが220K以下のポリマーとなるモノマーとを組み合わせること、そして、ホモポリマーのTgが270K以上のモノマーの配合割合を全モノマーの30質量%以上50質量%以下としたアクリル酸アルキルエステル系共重合体を採用することにより、該共重合体の配合量が少ない場合においても、含水時のみならず乾燥時の粘着力に優れる貼付剤となること、且つ、皮膚刺激性の低い貼付剤となることを見出した。
以下、本発明の含水系貼付剤の構成について説明する。
【0011】
本発明の含水系貼付剤(以下、単に「貼付剤」とも称する)は、支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層及び剥離ライナーからなる。
上記貼付剤、特に支持体と、該支持体上に設けられた粘着剤層からなる製剤部分の形状は特に限定されず、方形(正方形、長方形等)、四角形(台形、菱形等)、多角形、円形、楕円形、半円形、三角形、三日月形、並びにこれらを組み合わせた形状等、貼付箇所に合わせて種々の形状を選択できる。
なお貼付剤(特に上記の製剤部分)の面積は適宜決定することができ、例えば粘着剤層に配合する有効成分の量などを考慮し、例えば2~300cm2の範囲とすることができる。
【0012】
[粘着剤層]
本発明の含水系貼付剤は、その含水系の粘着剤層に対して、後述する親水性のアクリル系粘着剤に加えて、一般に非水系のアクリル系粘着剤を構成するアクリル酸アルキルエステル系共重合体も配合することを特徴とする。
一般に含水系貼付剤の粘着剤層(膏体層)に使用される粘着剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合樹脂等の親水性のアクリル系粘着剤が広く用いられている。上記の親水性のアクリル系粘着剤と親和性が高く、均一に練合できる観点から、含水系貼付剤の含水系の粘着剤層に配合する非水系粘着剤としては、アクリル系及びメタクリル系のエマルション型の粘着剤が好ましく配合される。
なお、本明細書において「アクリル酸アルキルエステル系共重合体」とは、アクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルの双方を含むことを意図し、また「アクリル系粘着剤」もアクリル系粘着剤とメタクリル系粘着剤の双方を含むことを意図してなる。
【0013】
<アクリル酸アルキルエステル系共重合体>
非水系のアクリル系粘着剤を構成するアクリル酸アルキルエステル系共重合体(非水系粘着基剤)は、粘着力を発現する成分として、アルキルエステルの炭素原子数が2~9であり、ホモ重合させたときガラス転移温度(Tg)が-55℃(218K)以下のポリマーとなるモノマーと、凝集力を向上させる成分として、ホモ重合させたときTgが8~165℃(281~438K)のポリマーとなるモノマーと、さらに必要によってはカルボキシル基やヒドロキシ基といった架橋点となるなどの官能基を有するモノマーで構成される共重合体である(モノマーの一例を表1に挙げた)。
本発明において使用するアクリル酸アルキルエステル系共重合体は、ホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が270K以上のポリマーとなるモノマーAと、ホモ重合したときガラス転移温度(Tg)が220K以下のポリマーとなるモノマーBからなるモノマー混合物の共重合体である。上記モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度Tgの上限値はおよそ500Kであり、また、上記モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度Tgの下限値はおよそ200Kである。
【0014】
【0015】
なお、粘着力を発現するモノマーのみを重合したホモポリマーは、粘着力は高いものの機械的強度が弱いとされ、一般に凝集力を向上させるモノマーとの共重合により機械的強度を向上させた共重合体が粘着剤として用いられる。
上記の表1に示す粘着力を発現するモノマーとして挙げたように、本発明では、より粘着力の高いモノマーとして、該モノマーをホモ重合させたとき(ホモポリマー)のTgが220K以下であるアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソノニル等が用いられる。これらのうち、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、なかでも医薬品添加物として使用実績があり、粘着力の高い(ホモポリマーのTgが低い)アクリル酸2-エチルヘキシルを好ましく用いることができる。
また凝集力を向上させるモノマー(ホモポリマーのTgが270K以上)としては表1に挙げたモノマーが挙げられ、これらの中でもアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル及びメタクリル酸n-ブチルが好ましく、本発明では、機械的強度が高く、粘着性を著しく低下させない(ホモポリマーのTgが比較的低い)アクリル酸メチルが特に好ましい。
【0016】
なお、従来技術において挙げたように、貼付剤に使用される市販のアクリル酸アルキルエステル系共重合体として、日本カーバイド(株)製の、ニカゾール(登録商標)TS-620(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン)がある。アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョンは、医薬品添加物規約の収載品である。
本発明者らは、これまでの含水系貼付剤において使用されてきたニカゾールTS-620(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン)では、所望の粘着力が得られない点、特に粘着剤層からの水が揮散した後において粘着力が低下する点を鑑み、上記共重合体の共重合比率の変更を検討した。
そして上記共重合体において、そのホモポリマーのTgが270K以上となるモノマー、すなわちアクリル酸メチルの重合割合を種々変更したところ、後述の実施例の結果に示すように、ホモポリマーのTgが270K以上となるモノマー(アクリル酸メチル等)の配合量が30質量%以上となる共重合体を使用した系が、粘着剤層の水揮散時においても粘着力を維持できることが初めて確認された。また、ホモポリマーのTgが270K以上となるモノマー(アクリル酸メチル等)の配合量が50質量%を超えるとエマルションが凝集・沈殿して再分散し難くなることから、その上限値を50質量%以下とした。
【0017】
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層において、アクリル酸アルキルエステル系共重合体の配合量(エマルションの場合、固形分換算量)は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として例えば0.1質量%以上30質量%以下、1.0質量%以上15質量%以下、5.0質量%以上10質量%以下とすることができる。
また、後述するアクリル系親水性粘着剤との配合割合は、例えば、質量比で、アクリル酸アルキルエステル系共重合体:アクリル系親水性粘着剤=10:1~1:10、同=5:1~1:5、同=3:1~1:2、同=2:1~1:1などとすることができる。
【0018】
<有効成分>
本発明の含水系貼付剤における粘着剤層には、有効成分は任意で含有する。有効成分を含まない場合の本発明の含水系貼付剤の用途としては、ケロイド状の皮膚のカバー材や、胼胝腫や肉刺等を保護するクッション材などに利用することができる。
粘着剤層に有効成分を含む場合は、生理活性物質を含有する。生理活性物質とは、経皮吸収性を有し、体内に投与された場合に薬理活性を示すものであれば特に限定されず、水溶性物質であっても脂溶性物質であってもよい。
生理活性物質としては、例えば、フェルビナク、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール(サリチル酸エチレングリコール)、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェン等の非ステロイド系抗炎症剤またはこれらのエステル;ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム等の鎮痛剤;リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤;塩化スキサメトニウム等の筋弛緩剤;クロトリマゾール等の抗真菌剤;クロニジン等の降圧剤;ニトログリセリン、硝酸イソソルビド等の血管拡張剤;ビタミンA、ビタミンE(トコフェロール)、酢酸トコフェロール、ビタミンK、オクトチアシン、酪酸リボフラビン等のビタミン類、プロスタグランジン類;スコポラミン、フェンタニール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、l-メントール、dl-カンフル等が挙げられる。生理活性物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記有効成分は、その種類によって適宜配合量を決定できるが、例えば含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.1質量%以上30質量%以下、あるいは0.5質量%以上15質量%以下とすることができる。
【0020】
<アクリル系親水性粘着剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、アクリル系親水性粘着剤を含有する。
上記アクリル系親水性粘着剤としては、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。水溶性(メタ)アクリル系ポリマーは、水溶性を有する官能基(親水性基)を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーを重合して得られるポリマーであり、粘着剤層に水とともに配合することで、粘着性を発揮する。水溶性(メタ)アクリル系ポリマーは、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸の中和物等のホモポリマー;N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合樹脂等のコポリマーが挙げられる。
上記ポリアクリル酸中和物は、ポリアクリル酸完全中和物であっても、ポリアクリル酸部分中和物であっても、これらの混合物であってもよい。ポリアクリル酸中和物とは、ポリアクリル酸塩を意味し、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を用いることができる。
【0021】
アクリル系親水性粘着剤の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.1質量%以上10質量%以下、1質量%以上8質量%以下とすることができる。
【0022】
<有機溶媒>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層に配合される有機溶媒は、薬物等の有効成分の溶解を補助し、また粘着剤層から有効成分が析出することを防ぐ役割を有し得る。このような有機溶媒(溶解補助剤)として、クロタミトン;N-メチル-2-ピロリドン;マクロゴール400(ポリエチレングリコール)、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル等の脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等のソルビタンエステル類;1,3-ブタンジオール等の多価アルコール;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0023】
有機溶媒の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.1質量%以上20質量%以下とすることができる。
【0024】
<架橋剤>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層に配合される架橋剤としては、多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムを含む多価金属化合物が挙げられる。一例として、水酸化アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム等の水酸化物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムグリシネート(ジヒドロキシアルミニウムアミノアセタール)、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、カオリン、ステアリン酸アルミニウム等の無機又は有機酸の正塩又はそれらの塩基性塩;アルミニウムミョウバン等の復塩;アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩;無機性アルミニウム錯塩及び有機性アルミニウムキレート化合物;合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の多価金属化合物が挙げられ、これらを単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0025】
架橋剤の配合量は、粘着剤の皮膚への残留や貼着性の一因となり得る架橋度を考慮して適宜選択すればよい。含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上6.0質量%以下、0.01質量%以上4.0質量%以下、あるいは、0.01質量%以上2.0質量%以下の範囲を挙げることができる。
【0026】
<有機酸>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層に配合される有機酸としては、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、フマル酸、メタスルホン酸、マレイン酸、酢酸等が挙げられ、これらを単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
有機酸の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上5質量%以下の範囲とすることができる。
【0027】
<水>
上述した通り、本発明の含水系貼付剤は、粘着剤層中に水(水分)を含有するものである。本明細書において、粘着剤層に含まれる「水」とは、粘着剤層を形成時に、水として別に添加したものだけでなく、エマルジョンや水溶液などの形態として含まれる水も含む。水の配合量は特に限定されないが、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば10質量%以上90質量%以下、15質量%以上70質量%以下、20質量%以上50質量%以下の範囲とすることができる。なおこの水分配合量は、貼付剤調製時、あるいは、貼付剤の貼付前の値であり、貼付の経過とともに粘着剤層から水が揮散した場合にはこの限りでない。
【0028】
<その他の任意成分>
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、その他の任意成分として、水溶性高分子化合物、界面活性剤、湿潤剤、安定剤、酸化防止剤、無機粉体、着色剤、香料、防腐剤等の、従来の含水系貼付剤(パップ剤)やあるいは非水系貼付剤(テープ剤)における粘着剤層に一般に配合され得る成分を配合することができる。これらの任意成分は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
〈水溶性高分子化合物〉
水溶性高分子化合物としては、例えば、ゼラチン、カンテン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プロピレンカーボネート、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、無水マレイン酸共重合体、カラギーナンが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて、使用できる。
水溶性高分子化合物の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば1.0質量%以上30質量%以下、3.0質量%以上20質量%以下、あるいは5.0質量%以上20質量%以下の範囲とすることができる。
【0030】
〈界面活性剤〉
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリプロピレングリコールジオレート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル;モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、レシチン等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて、使用できる。
これら界面活性剤の配合量は、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.001質量%以上10質量%以下、0.01質量%以上5質量%以下の範囲とすることができる。
【0031】
〈湿潤剤〉
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、経時的な水分の蒸発を抑制するために湿潤剤(保湿剤とも)を配合することができる。湿潤剤としては、例えば、濃グリセリン、D-ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、流動パラフィン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、マルチトール、キシリトール等の多価アルコールが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種類以上を適宜組み合わせて、使用できる。
湿潤剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば1.0質量%以上70質量%以下、5.0質量%以上60質量%以下、あるいは10質量%以上60質量%以下の範囲とすることができる。
【0032】
〈安定剤〉
本発明の含水系貼付剤の粘着剤層には、光(特に、紫外線)、熱又は酸素に対して、前記有効成分等の保存安定性を向上させるために安定剤を配合することができる。
安定剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩);ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の抗酸化剤;ベンゾイルメタン誘導体等の紫外線吸収剤;等が挙げられる。
安定剤の配合量は、通常、含水系貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として、例えば0.01質量%以上1質量%以下の範囲とすることができる。
【0033】
〈無機粉体〉
無機粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸塩、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等を配合することができる。
【0034】
[支持体]
本発明の含水系貼付剤に用いる支持体としては、フィルム、不織布、和紙、綿布、編布、織布、不織布とフィルムのラミネート複合体等の柔軟性を有する支持体が挙げられる。これらの支持体は、皮膚に密着することができ、かつ、皮膚の動きに追随することができる程度の柔軟な材質、そして長時間貼付後において皮膚のかぶれ等の発生を抑制できる材質が好ましい。これらの支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ナイロン、コットン、アセテートレーヨン、レーヨン、レーヨン/ポリエチレンテレフタレート複合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、セロハン等を必須成分とするものが挙げられる。
【0035】
また、布類などの支持体は、着色剤により肌色などの色調に着色することにより、貼付時に肌の色との相違を少なくできる。また貼付下の皮膚の色調を透けて出しやすいという点では、透明性に優れたプラスチックフィルムの形態を採用することができる。
【0036】
支持体の厚みは、通常5μmから1mm程度である。支持体が布類である場合、その厚みは、好ましくは50μm~1mm、より好ましくは100~800μm、更に好ましくは200~700μmである。支持体がプラスチックフィルムである場合、その厚みは、好ましくは10~300μm、より好ましくは12~200μm、更に好ましくは15~150μmである。支持体の厚みが5μm~30μm程度とごく薄い場合は、支持体上に形成された粘着剤層とは反対の面上に、剥離可能なキャリアフィルム層を設けると、貼付剤としての取り扱い性が向上するので好ましい。但し5μmよりも支持体の厚みが小さいと、貼付剤の強度や取り扱い性が低下して、皮膚への貼付が困難になり、他の部材等との接触によって破れたり、入浴等の水との接触によって短時間で皮膚から剥離したりすることがある。また、支持体の厚みが大きすぎる(1mmより超える)と、貼付剤が、皮膚の動きに追随しにくくなり、貼付剤の辺縁部に剥がれるきっかけを形成しやすくなるため、短時間で皮膚から剥離したり、貼付中の違和感が増えたりする虞がある。
なお支持体がフィルムである場合は、粘着剤と支持体の投錨性を向上することを目的に、支持体の片面又は両面にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行なってもよい。
また、包材から取り出しやすくするために支持体の片面又は両面にサンドブラスト以外の方法で凹凸を設けてもよい。
【0037】
[剥離ライナー]
本発明の含水系貼付剤に用いる剥離ライナー(剥離層・剥離紙ともいう)としては、粘着剤層中の薬物等が吸収・吸着しにくい材質であることが好ましく、貼付剤の技術分野において慣用のものを使用することができる。
例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリプロピレン(無延伸、延伸等)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、クラフト紙等の紙や合成紙;前記プラスチックフィルム、紙又は合成紙、合成繊維等にシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の剥離性能を有する剥離剤をコーティングした剥離加工紙;アルミ箔;これらフィルム・シートを種々積層したラミネート加工紙、及び該ラミネート加工紙に剥離剤をコーティングしたラミネート剥離加工紙などの、無色又は着色したシートを挙げることができる。なお剥離ライナーは、包材から取り出しやすいように凹凸を設けることも可能である。
これら剥離ライナーの厚さは特に限定されないが、通常10μm~1mm、例えば20μm~500μm、好ましくは40μm~200μmの範囲である。
剥離ライナーの形状は方形、矩形、円形等とすることができ、所望により角を丸くした形状とすることができる。その大きさは、前記貼付材における支持体の大きさと同形状か、やや大きめとすることができる。剥離ライナーは1枚または分割されて複数枚から構成されてもよく、その切れ目は直線、波線、ミシン線状で構成されてもよく、剥離ライナー同士の一部が重なる状態としてもよい。
【0038】
[含水系貼付剤の製造方法]
本発明の含水系貼付剤は、従来公知の方法を用いて製造され得る。例えば一例として、以下のi)又はii)の工程を経て製造可能である。
i)支持体上に、粘着剤層形成組成物を塗工し、粘着剤層を形成する工程、及び、支持体上に形成された粘着剤層と、剥離ライナーとを貼り合わせる工程。
ii)剥離ライナー上に、粘着剤層形成組成物を塗工し、粘着剤層を形成する工程、及び、剥離ライナー上に形成された粘着剤層と、支持体とを貼り合わせる工程。
なお、上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常10μm乃至1000μm、例えば20μm乃至800μm程度とすることができる。
【0039】
前記粘着剤層形成組成物とは、前述した粘着剤層に含まれる各種成分:有効成分、アクリル系親水性粘着剤、アクリル酸アルキルエステル系共重合体、有機溶媒、架橋剤、有機酸及び水を含有し、さらに、その他の任意の成分を含有し得る半固形状の組成物である。
【0040】
なお本発明の含水系貼付剤は、含水時並びに乾燥時(水揮散後)における粘着力が維持されることを特徴とし、また皮膚刺激性も低い貼付剤である。
ここで皮膚刺激性は、例えば、ドレイズ法による皮膚一次刺激性指数(P.I.I.)の個体平均値(平均P.I.I.)で評価でき、本発明の貼付剤は例えば1.40以下とすることができる。
上記ドレイズ法による皮膚一次刺激性指数(P.I.I.)(Primary Irritation Index)とは、ウサギの病変を用いた評価方法である。具体的には、検体(被験物質)をウサギの背部に貼付し、所定時間後に検体を取り除いた後、所定時間経過後の貼付部位の反応(紅斑の状態と浮腫の大きさを)を0~4の5段階で評価し、2つの評価値の合計値(判定時間が複数である場合はその平均値)として示される値であり、評価した個体差を考慮し、個体平均値(平均P.I.I.)を算出して評価される。
本発明では、検体(含水系貼付剤)を24時間貼付した後、検体除去後、所定時間経過後に貼付箇所の観察を行い、刺激反応の採点を実施し、除去後30分後及び24時間後における刺激反応の採点に基づき、平均P.I.I.を算出して皮膚刺激性を評価する。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
<貼付剤の作製>
以下の手順にて、実施例及び比較例の貼付剤を製造した。
【0043】
実施例1:
ポリビニルアルコール1.5質量部を、精製水20質量部に溶解させた(水相)。
次に、サリチル酸エチレングリコール1.25質量部、L-メントール1質量部を、マクロゴール(登録商標)400(三洋化成工業(株)製)1質量部を加えて溶解させた(油相)。
更に、ポリアクリル酸部分中和物4質量部、カルメロースナトリウム4質量部、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.25質量部を、濃グリセリン25質量部中で均一に分散させた(グリセリン相)。
撹拌機中に、水相、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(共重合体におけるアクリル酸メチル配合量31.1質量%、エマルジョン中にポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(30EO)微量含有)7質量部、エデト酸ナトリウム水和物0.20質量部、D-ソルビトール70%水溶液 30質量部の順に投入し、均一に分散又は溶解させた。ここに、油相、グリセリン相の順に投入し、均一に練合した。更に、乳酸1質量部を加え、精製水で全質量が100質量部となるように質量補正した後、脱気条件下、均一に練合し実施例1の粘着剤層形成組成物を得た。
得られた粘着剤層形成組成物をスリット幅0.5mmに調整した展延機でライナー(片面シリコーン処理したPET(75μm))のシリコーン面上に展延し、ニット支持体(ポリエステル製)をラミネートした後、50℃で1週間熟成させた。熟成後、任意の形状に打抜き、実施例1の製剤を得た。
【0044】
実施例2:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が40.8質量%であるエマルジョンに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の製剤を得た。
【0045】
実施例3:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の製剤を得た。
【0046】
実施例4:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンを、メタクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(共重合体におけるメタクリル酸メチル配合量30.0質量%)10質量部(共重合体の固形分換算値は4.34質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の製剤を得た。
【0047】
実施例5:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンを、メタクリル酸エチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(共重合体におけるメタクリル酸エチル配合量30.0質量%)10質量部(共重合体の固形分換算値は4.14質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の製剤を得た。
【0048】
実施例6:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンを、メタクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(共重合体におけるメタクリル酸n-ブチル配合量30.0質量%)10質量部(共重合体の固形分換算値は4.34質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の製剤を得た。
【0049】
実施例7:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョンを、アクリル酸メチル・アクリル酸n-ブチル共重合エマルジョン(共重合体におけるアクリル酸メチル配合量30.0質量%)10質量部(共重合体の固形分換算値は4.54質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の製剤を得た。
【0050】
実施例8:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変え、その配合量を5質量部(共重合体の固形分換算値は2.95質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の製剤を得た。
【0051】
実施例9:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変え、その配合量を10質量部(共重合体の固形分換算値は5.9質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の製剤を得た。
【0052】
実施例10:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変え、その配合量を12質量部(共重合体の固形分換算値は7.08質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の製剤を得た。
【0053】
実施例11:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変え、その配合量を15質量部(共重合体の固形分換算値は8.85質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の製剤を得た。
【0054】
実施例12:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が46.7質量%であるエマルジョンに変え、その配合量を20質量部(共重合体の固形分換算値は11.8質量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例12の製剤を得た。
【0055】
比較例1:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が14.7質量%であるエマルジョンに変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の製剤を得た。
【0056】
比較例2:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量31.1質量%)を、アクリル酸メチルの配合量が27.0質量%であるエマルジョンに変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の製剤を得た。
【0057】
比較例3:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量14.7質量%)の配合量を10質量部(10質量%)に変えた以外は、比較例1と同様にして、比較例3の製剤を得た。
【0058】
比較例4:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量14.7質量%)の配合量を15質量部(15質量%)に変えた以外は、比較例1と同様にして、比較例4の製剤を得た。
【0059】
比較例5:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量14.7質量%)の配合量を20質量部(20質量%)に変えた以外は、比較例1と同様にして、比較例5の製剤を得た。
【0060】
比較例6:
アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合エマルジョン(アクリル酸メチル配合量14.7質量%)の配合量を25質量部(25質量%)に変えた以外は、比較例1と同様にして、比較例6の製剤を得た。
【0061】
なお、上記実施例1乃至実施例3、比較例1及び比較例2における共重合エマルジョンの配合量において、共重合体の固形分換算値は、粘着剤層を構成する全成分の質量を基準として4.13質量%、実施例4及び実施例6は同4.34質量%、実施例5及び実施例7は同4.14質量%、実施例8は同2.95質量%、実施例9は同5.90質量%、実施例10は同7.08質量%、実施例11は同8.85質量%、実施例12は同11.80質量%、比較例3は同5.90質量%、比較例4は同8.85質量%、比較例5は同11.80質量%、比較例6は同14.75質量%である。
【0062】
参考例1、参考例2:
参考例1の製剤として市販のテープ剤(フェイタス(登録商標)5.0、久光製薬(株)、ロット番号:SC08T)を、参考例2の製剤として市販のパップ剤(バンテリンコーワ新ミニパッド、興和(株)、ロット番号:NA640)を用い、後述する各種試験に供した。
【0063】
試験例1(粘着力試験)
実施例1乃至実施例12、比較例1乃至比較例6、並びに参考例1及び参考例2の各製剤について、初期(以降“含水時”と称する、実施例及び比較例の製剤は製造直後、参考例の製剤は製品の包装を開封した直後)、及び50℃で一夜乾燥時(以降“乾燥時”と称する、いずれの製剤もライナーを剥離した状態(粘着剤層が露出した状態)にて、50℃で一晩保持)の傾斜式ボールタック粘着力を、日局一般試験法 6.12粘着力試験法 3.2傾斜式ボールタック試験法に従い実施した。
得られた結果を表2及び表3に示す。
【0064】
試験例2(膏体間剥離性及び再付着性試験)
実施例1乃至実施例12、比較例1乃至比較例6、並びに参考例1及び参考例2の各製剤について、膏体間剥離性及び再付着性の評価を行った。
得られた結果を表2及び表3にあわせて示す。
1)膏体間剥離性
5cm×5cmの大きさに裁断した各製剤のライナーを剥離し、各製剤を二つ折りにして粘着剤層同士をしっかりと貼り合わせ、30秒間静止した。その後、貼り合わせた部分を剥離し、下記基準で評価した(N=3)。
○:容易に剥離する
△:剥離するが変形する
×:剥離しない
2)再付着性
各製剤(10cm×7cm)のライナーを剥離し、ヒト上腕内部に貼付した。30秒経過後、剥離し、再度前腕部の別の部分に貼付し、下記基準で評価した(N=3)。
○:再付着性有り
△:弱い再付着性
×:再付着性なし
【0065】
【0066】
【0067】
<試験結果>
表2に示すように、アクリル酸アルキルエステル系共重合体を構成するモノマーのうち、当該モノマーのホモポリマーのTgが270K以上であるモノマーAの配合量、すなわち、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂におけるアクリル酸メチルの配合量、メタクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂におけるメタクリル酸メチルの配合量、メタクリル酸エチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂におけるメタクリル酸エチルの配合量、メタクリル酸n-ブチル・アクリル酸2-
エチルヘキシル共重合樹脂におけるメタクリル酸n-ブチルの配合量、アクリル酸メチル・アクリル酸n-ブチル共重合樹脂におけるアクリル酸メチルの配合量が30質量%以上である、樹脂エマルションを使用した実施例1乃至実施例9の製剤は、製造直後(含水時)におけるボールタック粘着力が市販のテープ剤(参考例1)と市販のパップ剤(参考例2)(表3参照)をやや下回る結果となったが、乾燥時(50℃一夜乾燥)におけるボールタック粘着力は市販のテープ剤とほぼ同等の粘着力を示した。また、実施例3及び実施例8乃至実施例12の結果に示すように、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂(アクリル酸メチル配合量:46.7質量%)の配合量を増加に従い、製造直後(含水時)及び乾燥時の何れにおいても粘着力は増加し、特に実施例10乃至実施例12では、含水時においても上記参考例1及び参考例2に示す市販品と比べて同等以上の粘着力を示した。また何れの実施例においても、粘着剤層同士を付着させた際にも容易に剥離でき、再付着性も認められ、アクリル酸アルキルエステル系共重合体の配合量を増加させてもこれらの性能は保たれた。
【0068】
一方、上記モノマーAの配合量、すなわち、アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂のアクリル酸メチルの配合量が30質量%未満の製剤(比較例1及び2)は、乾燥時のボールタック粘着力が実施例1~12より低い結果となった。なお前述したように、アクリル酸メチルの配合量が50質量%を超えるとエマルションが凝集・沈殿して再分散が困難となり、配合量の上限は50質量%であった。
また、比較例1で採用したアクリル酸メチルの配合量が14.7質量%のアクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂について、該共重合樹脂の配合量を7質量%から25質量%(固形分として、4.13質量%~14.75質量%)の範囲で増加させた製剤(比較例1、比較例3乃至比較例6)は、含水時並びに乾燥時ともに実施例1乃至実施例3の製剤よりボールタック粘着力が低い結果となった。
なお、比較例1乃至比較例4の製剤は、実施例の製剤と同様の膏体間剥離性・再付着性の評価となったが、比較例5及び比較例6の製剤は、膏体間剥離性・再付着性ともに実施例の製剤には至らない評価となり、アクリル酸アルキルエステル系共重合体の配合量の増加によりこれらの性能がかえって悪化する傾向がみられた。
【0069】
そして市販の製剤である参考例1の製剤は、粘着剤層同士を付着させた際に剥がれず、再貼付性を有しないものとする評価となった。
また参考例2の製剤にあっては、粘着剤層同士を付着させた後、剥離するものの変形が生じる結果となり、また再貼付はするものの弱い付着性となった。
【0070】
以上の結果から、アクリル酸アルキルエステル系共重合体を構成するモノマーのうち、当該モノマーのホモポリマーのTgが270K以上であるモノマーA(アクリル酸メチル等)の配合量が30~50質量%であるアクリル酸アルキルエステル系共重合体(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂等)を採用することにより、含水時のみならず、乾燥時の粘着力にも優れている製剤となることが確認され、また、膏体間剥離性が容易で再付着性がある製剤となることが確認された。
【0071】
試験例3(皮膚一次刺激性指数試験)
ドレイズ法に基づく皮膚一次刺激性指数(P.I.I.)試験は以下の方法によって行った。なおドレイズ法の詳細は、Draize J.H., Woodard, G. and Calvery, H.O.(1944):Methods for the study of irritation and Toxicity of substances applied topically to the skin and mocous membranes, J. Pharmacol Exp. Ther., 82:377-390)に示される。
【0072】
実施例3、比較例1の製剤を15mmφに打ち抜き、剥離ライナーを剥離後、刈毛及び剃毛処理した白色ウサギ(17週齢、雄、JW)(N=3)の背部に貼付し、貼付した製剤全体を覆うように透湿性を有するカテリープ(透明粘着フィルム、ニチバン(株))を該製剤の上から貼付した。
24時間貼付後、カテリープ及び製剤を剥離し、該製剤の貼付部位を精製水で清拭し、剥離30分後及び24時間経過時の貼付部位の皮膚の状態を観察し、表4に示すドレイズの基準にて刺激反応の採点を実施した。
また製剤剥離30分後及び24時間後の採点値に基づき、30分後又は24時間後の採点平均値、及び、各個体の皮膚一次刺激性指数(P.I.I)から個体平均値である平均皮膚一次刺激性指数(平均P.I.I.)を得た。
なお陽性対照としてDNBC(2,4-dinitrochloro-benzene)、参考例3の製剤として市販のパップ剤(のびのびサロンシップ(登録商標)FH温感、久光製薬(株))を、参考例4の製剤として市販のパップ剤(ハリックス(登録商標)55EX温感、ライオン(株))を用い、同様に皮膚一次刺激性指数試験を実施し、30分後又は24時間後の採点平均値、各個体の皮膚一次刺激性指数(P.I.I)及び皮膚一次刺激性指数(平均P.I.I.)を得た。
得られた結果を表5に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
表5に示すように、実施例3、比較例1、参考例3及び参考例4の製剤における平均一次刺激性指数(平均P.I.I.)は0.7~1.0となり、軽度の刺激であったとする結果であった。
一方、陽性対照における平均一次刺激性指数(平均P.I.I.)は2.8となり、中程度の刺激であった。
【0076】
以上の実施例の結果より、本発明によれば、アクリル酸アルキルエステル系共重合体を構成するモノマーのうち、当該モノマーのホモポリマーのTgが270K以上であるモノマーA(アクリル酸メチル等)含量が30~50質量%のアクリル酸アルキルエステル系共重合体(アクリル酸メチル・アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂等)を含水系貼付剤の粘着剤層に配合することで、含水時及び乾燥時の高い粘着性を維持しつつ、皮膚刺激性の低い貼付剤を提供できることが確認された。