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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/30 20060101AFI20230406BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B65D85/30 500
H01L21/68 T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559615
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045728
(87)【国際公開番号】W WO2020121448
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年12月12日に Samsung Electronics Co.,Ltd に販売した基板収納容器の製品のサンプルのインボイス
(73)【特許権者】
【識別番号】000140890
【氏名又は名称】ミライアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭兵
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0102269(US,A1)
【文献】特開2016-091765(JP,A)
【文献】特開2007-019328(JP,A)
【文献】特開2002-370777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物を収容可能なポッド収容空間が内部に形成され、一端部に前記ポッド収容空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、
前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、前記蓋体及び前記開口周縁部に当接可能であり、前記開口周縁部と前記蓋体との間に介在して前記開口周縁部及び前記蓋体に密着して当接することにより、前記蓋体と共に前記容器本体開口部を閉塞するシール部材と、を備え、
前記容器本体は、奥壁、上壁、下壁、及び一対の側壁を有する壁部を有し、前記奥壁によって前記壁部の他端部が閉塞され、前記上壁の一端部、前記下壁の一端部、及び前記側壁の一端部によって前記容器本体開口部が形成され、
前記下壁には、前記容器本体に対する前記被収容物の位置決めをする位置決め部が設けられ、
前記上壁には、前記被収容物の上部を、前記下壁の方向へ移動して下方向へ押下げる力により前記下壁の方向へ押圧する下方押圧部が設けられ、
前記蓋体は、前記容器本体開口部を閉塞するときに、前記下方押圧部に前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧させ
前記下方押圧部は、
前記被収容物の上部に当接して前記被収容物を前記下壁の方向へ押圧する先端部押圧部と、
前記先端部押圧部に連結され前記蓋体の移動に伴い移動可能な押圧部駆動部と、を備え、
前記押圧部駆動部は、前記蓋体が前記奥壁の方向へ移動するときに、水平方向に対して所定の角度をなす斜め上方向へ移動可能である基板収納容器。
【請求項2】
前記蓋体は、前記下方押圧部が係合可能な押圧部被係合部を有し、前記容器本体開口部を閉塞するときに、前記押圧部被係合部が前記下方押圧部に係合して、前記下方押圧部に前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧させる請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記蓋体の前記押圧部被係合部と、前記押圧部被係合部に係合する前記下方押圧部の駆動部係合部とは、互いに係合し合うフック形状を有している請求項2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記下方押圧部は、
前記被収容物の上部に当接して前記被収容物を前記下壁の方向へ押圧する先端部押圧部と、
前記先端部押圧部に連結され前記蓋体の移動に伴い移動可能な押圧部駆動部と、
前記蓋体が前記容器本体開口部を閉塞していないときに、前記先端部押圧部を被収容物から離間した状態とするように前記押圧部駆動部を付勢する付勢部材と、を備える請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記先端部押圧部の上部が前記押圧部駆動部によって前記奥壁の方向へ押されることにより、前記先端部押圧部の下部は、前記奥壁側から容器本体開口部側へ移動し、前記被収容物の上部に当接し、前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧する請求項1~請求項4のいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記壁部を構成する材料は、シクロオレフィンポリマーにより構成されている請求項1~請求項のいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記ポッド収容空間と前記容器本体の外部の空間とを連通可能な通気路を有する請求項1~請求項のいずれかに記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レチクルPOD等を収納、保管、搬送、輸送等する際に使用される基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において使用されるレチクルを収納するためのレチクルポッドを収納して搬送等するための容器が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
容器本体の一端部は、容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する。容器本体の他端部は、閉塞された筒状の壁部を有する。容器本体内にはポッド収容空間が形成されている。ポッド収容空間は、壁部により取り囲まれて形成されており、レチクルポッドを収納可能である。蓋体は、開口周縁部に対して着脱可能であり、容器本体開口部を閉塞可能である。容器本体の内部には、レチクルポッドを容器本体に固定するための、ポッド固定部材が設けられており、ポッド固定部材によりレチクルポッドが容器本体に対して固定された状態で、容器は、レチクルポッドを収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-30632号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0102269号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の容器にレチクルポッドを収納する際には、蓋体を容器本体の開口周縁部から取り外した状態とし、レチクルポッドをポッド収容空間へ挿入し、固定部材によりレチクルポッドを容器本体に対して固定した後に、蓋体によって容器本体開口部を閉塞する。しかし、このようなレチクルポッドの容器への収納の手順を、よりスムーズに行えることが好ましい。
【0006】
本発明は、レチクルポッドの容器への収納の手順を、よりスムーズに行うことが可能な基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被収容物を収容可能なポッド収容空間が内部に形成され、一端部に前記ポッド収容空間に連通する容器本体開口部が形成された開口周縁部を有する容器本体と、前記開口周縁部に対して着脱可能であり、前記開口周縁部によって取り囲まれる位置関係で前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、前記蓋体に取り付けられ、前記蓋体及び前記開口周縁部に当接可能であり、前記開口周縁部と前記蓋体との間に介在して前記開口周縁部及び前記蓋体に密着して当接することにより、前記蓋体と共に前記容器本体開口部を閉塞するシール部材と、を備え、前記容器本体は、奥壁、上壁、下壁、及び一対の側壁を有する壁部を有し、前記奥壁によって前記壁部の他端部が閉塞され、前記上壁の一端部、前記下壁の一端部、及び前記側壁の一端部によって前記容器本体開口部が形成され、前記下壁には、前記容器本体に対する前記被収容物の位置決めをする位置決め部が設けられ、前記上壁には、前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧する下方押圧部が設けられ、前記蓋体は、前記容器本体開口部を閉塞するときに、前記下方押圧部に前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧させる基板収納容器に関する。
【0008】
また、前記蓋体は、前記下方押圧部が係合可能な押圧部被係合部を有し、前記容器本体開口部を閉塞するときに、前記押圧部被係合部が前記下方押圧部に係合して、前記下方押圧部に前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧させることが好ましい。
【0009】
また、前記蓋体の前記押圧部被係合部と、前記押圧部被係合部に係合する前記下方押圧部の駆動部係合部とは、互いに係合し合うフック形状を有していることが好ましい。
【0010】
また、前記下方押圧部は、前記被収容物の上部に当接して前記被収容物を前記下壁の方向へ押圧する先端部押圧部と、前記先端部押圧部に連結され前記蓋体の移動に伴い移動可能な押圧部駆動部と、前記蓋体が前記容器本体開口部を閉塞していないときに、前記先端部押圧部を被収容物から離間した状態とするように前記押圧部駆動部を付勢する付勢部材と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記下方押圧部は、前記被収容物の上部に当接して前記被収容物を前記下壁の方向へ押圧する先端部押圧部と、前記先端部押圧部に連結され前記蓋体の移動に伴い移動可能な押圧部駆動部と、を備え、前記押圧部駆動部は、前記蓋体が前記奥壁の方向へ移動するときに、水平方向に対して所定の角度をなす斜め上方向へ移動可能であることが好ましい。
【0012】
また、前記先端部押圧部の上部が前記押圧部駆動部によって前記奥壁の方向へ押されることにより、前記先端部押圧部の下部は、前記奥壁側から容器本体開口部側へ移動し、前記被収容物の上部に当接し、前記被収容物の上部を前記下壁の方向へ押圧することが好ましい。
【0013】
また、前記壁部を構成する材料は、シクロオレフィンポリマーにより構成されていることが好ましい。また、前記ポッド収容空間と前記容器本体の外部の空間とを連通可能な通気路を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レチクルポッドの容器への収納の手順を、よりスムーズに行うことが可能な基板収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されている様子を示す側方断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されている様子を示す断面斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されていない様子を示す側方断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されていない様子を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態による基板収納容器1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、基板収納容器1を示す正面図である。図2は、基板収納容器1を示す平面図である。図3は、基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されている様子を示す側方断面図(図2のA-A線に沿った側方断面図)である。図4は、基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されている様子を示す断面斜視図(図2のA-A線に沿った断面斜視図)である。
【0017】
ここで、説明の便宜上、後述の容器本体2から蓋体3へ向かう方向(図2における上から下へ向かう方向)を前方向D11と定義し、その反対の方向を後方向D12と定義し、これらをあわせて前後方向D1と定義する。また、後述の下壁24から上壁23へと向かう方向(図1における上方向)を上方向D21と定義し、その反対の方向を下方向D22と定義し、これらをあわせて上下方向D2と定義する。また、後述する第2側壁26から第1側壁25へと向かう方向(図1における右から左へ向かう方向)を左方向D31と定義し、その反対の方向を右方向D32と定義し、これらをあわせて左右方向D3と定義する。主要な図面には、これらの方向を示す矢印を図示している。
【0018】
また、基板収納容器1に収納されるレチクルポッドRPは、半導体製造において露光処理を行うために使用されるレチクルを1枚又は複数毎収納するためのものであり、図3に示すように、全体の外形形状が略直方体形状であり、中央部が周囲の部分よりも厚みを有する形状に構成されている。
また、基板収納容器1の容器本体2は、蓋体3と共に基板を収納するために用いられることが可能であり、基板は、円盤状のシリコンウェーハ、ガラスウェーハ、サファイアウェーハ等であり、産業に用いられる薄いものである。本実施形態における容器本体2及び蓋体3に収納可能な基板は、直径300mmのシリコンウェーハである。
【0019】
即ち、図1に示すように、基板収納容器1の容器本体2及び蓋体3は、SEMI規格に基づく構成を有しており、上述のようなシリコンウェーハからなる基板を収納して、工場内の工程において搬送する工程内容器として用いられたり、陸運手段・空運手段・海運手段等の輸送手段により基板を輸送するための出荷容器として用いられたりするものである。
【0020】
容器本体2は、一端部に容器本体開口部21が形成され、他端部が閉塞された筒状の壁部20を有する。容器本体2内にはポッド収容空間27が形成されている。ポッド収容空間27は、壁部20により取り囲まれて形成されている。壁部20の部分であってポッド収容空間27を形成している部分には、位置決め部としてのポッド載置部50と下方押圧部60とが配置されている。ポッド収容空間27には、図3等に示すように、1つの被収納物としてのレチクルポッドRPを収納可能である。ポッド載置部50には、レチクルポッドRPが載置されてポッド収容空間27において容器本体2に対して位置決めされる。下方押圧部60は、レチクルポッドRPの上部をポッド載置部50の方向へ押圧する。
【0021】
蓋体3は、容器本体開口部21を形成する開口周縁部28(図1等)に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能である。
【0022】
基板収納容器1は、プラスチック材等の樹脂で構成されており、その材料の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等が上げられる。これらの成形材料の樹脂には、導電性を付与する場合には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性物質が選択的に添加される。また、剛性を上げるためにガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。本実施形態においては、容器本体2は、低吸水材料であるCOP(シクロオレフィンポリマー)が用いられる。また、容器本体2には、帯電防止材料が施されている。
【0023】
以下、各部について、詳細に説明する。
図1図4に示すように、容器本体2の壁部20は、奥壁22と上壁23と下壁24と第1側壁25と第2側壁26とを有する。奥壁22、上壁23、下壁24、第1側壁25、及び第2側壁26は、上述した材料により構成されており、一体成形されて構成されている。
【0024】
第1側壁25と第2側壁26とは対向しており、上壁23と下壁24とは対向している。上壁23の後端、下壁24の後端、第1側壁25の後端、及び第2側壁26の後端は、全て奥壁22に接続されている。上壁23の前端、下壁24の前端、第1側壁25の前端、及び第2側壁26の前端は、略長方形状をした容器本体開口部21を形成する開口周縁部28を構成する。
【0025】
開口周縁部28は、容器本体2の一端部に設けられており、奥壁22は、容器本体2の他端部に位置している。壁部20の外面により形成される容器本体2の外形は箱状である。壁部20の内面、即ち、奥壁22の内面、上壁23の内面、下壁24の内面、第1側壁25の内面、及び第2側壁26の内面は、これらによって取り囲まれたポッド収容空間27を形成している。開口周縁部28に形成された容器本体開口部21は、壁部20により取り囲まれて容器本体2の内部に形成されたポッド収容空間27に連通している。
【0026】
上壁23及び下壁24の部分であって、開口周縁部28の近傍の部分には、ポッド収容空間27の外方へ向かって窪んだ図示しないラッチ係合凹部が形成されている。ラッチ係合凹部は、上壁23及び下壁24の左右両端部近傍に1つずつ、計4つ形成されている。
【0027】
図1に示すように、上壁23の外面においては、リブ235が、上壁23と一体成形されて設けられている。リブ235は、容器本体2の剛性を高める。また、上壁23の中央部には、トップフランジ236が固定される。トップフランジ236は、AMHS(自動ウェーハ搬送システム)、PGV(ウェーハ基板搬送台車)等において基板収納容器1を吊り下げる際に、基板収納容器1において掛けられて吊り下げられる部分となる部材である。
【0028】
下壁24には、図3に示すように、ボトムプレート244が固定されている。ボトムプレート244は、下壁24の外面を構成する下面の略全面に対向して配置される略長方形状の板状を有しており、下壁24に固定されている。
【0029】
下壁24の四隅には、2種類の貫通孔である図示しない給気孔と排気孔が形成されている。本実施形態においては、下壁24の前部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部の気体を排出するための排気孔であり、後部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部に気体を給気するための給気孔である。
【0030】
給気孔としての貫通孔には、付加部品としての図示しない給気用フィルタ部が配置されており、排気孔としての貫通孔には、図示しない排気用フィルタ部が配置されている。即ち、給気用フィルタ部及び排気用フィルタ部の内部の気体の流路は、ポッド収容空間27と容器本体2の外部の空間とを連通可能な通気路の一部を構成する。また、給気用フィルタ部と排気用フィルタ部とは、壁部20に配置されており、給気用フィルタ部と排気用フィルタ部とにおいては、容器本体2の外部の空間とポッド収容空間27との間で気体が通過可能である。給気用フィルタ部は、気体噴出ノズル部8の内部空間に連通しており、気体噴出ノズル部8の内部空間を通して、給気用フィルタ部に供給されたパージガスは、ポッド収容空間27へ供給されるように構成されている。
【0031】
ポッド載置部50は、中央部分に貫通孔が形成された板形状を有しており、下壁24に固定されている。ポッド載置部50は、上方向に突出する凸部52を有しており、ポッド載置部50の凸部52の部分を貫通するように、ピン部材基部53が計3本設けられている。なお、図3図4においては、それぞれピン部材基部53は1つのみ現れている。
【0032】
ピン部材基部53の上部には、ピン部材基部53の上部を覆うように、キネマピン55が設けられている。キネマピン55は、凸部52から上方向へ突出しており、計3本設けられている。なお、図3図4においては、それぞれキネマピン55は1つのみ現れている。ポッド載置部50には、レチクルポッドRPが載置され、図3等に示すように、レチクルポッドRPの底面に形成されたキネマピン係合溝にキネマピン55が係合することにより、レチクルポッドRPは、容器本体2に対して位置決めされる。キネマピン55には、帯電防止材料が施されており、前述のように容器本体2に帯電防止材料が施されていることと相まって、レチクルポッドRPの内部のレチクルから静電気をパスするように構成されている。
【0033】
上壁23には、押圧部支持部61が固定されて設けられている。押圧部支持部61には、板ばね611が固定されている。板ばね611の上部は押圧部支持部61に固定されており、板ばね611は下方向に延び、途中で後方向に直角に折れ曲がり、板ばね611の先端部は、下方向D22へ突出する先端凸部6111を有している。押圧部支持部61には、下方押圧部60が支持されており、下方押圧部60は、先端部押圧部63と、押圧部駆動部64と、付勢部材としての図示しないばねと、を備えている。
【0034】
先端部押圧部63は、摺動性及び耐摩耗性が高い超高分子量PE(ポリエチレン)樹脂により構成されており、略四角柱形状を有している。先端部押圧部63の上端部には貫通孔が形成され、貫通孔にはピン部材612が貫通している。貫通孔よりも下端部寄りの先端部押圧部63の部分には、先端部押圧部63の長手方向に延びる長孔632が形成されており、押圧部支持部61を構成するピン部材613が長孔632を貫通している。ピン部材613は、長孔632を相対的に移動可能であり、これにより、先端部押圧部63は、ピン部材613を回転軸として回動可能、且つ、ピン部材613に対して摺動可能である。先端部押圧部63の下端部は、レチクルポッドRP上部に当接可能な板状当接部615を有している。板状当接部615がレチクルポッドRP上部に当接して先端部押圧部63は、レチクルポッドRPを下壁24の方向へ押圧する。
【0035】
押圧部駆動部64は、摺動性及び耐摩耗性が高い超高分子量PE(ポリエチレン)樹脂により構成されており、略四角柱形状を有している。押圧部駆動部64の後端部には貫通孔が形成され、貫通孔には、先端部押圧部63の上端部を貫通するピン部材612が貫通している。これにより、押圧部駆動部64は、先端部押圧部63に対して回動可能に連結されている。貫通孔よりも前方向寄りの押圧部駆動部64には、押圧部駆動部64の長手方向に延びる長孔642が形成されており、押圧部支持部61を構成する2つのピン部材616が長孔642を貫通している。ピン部材616は、長孔642を相対的に移動可能であり、これにより、押圧部駆動部64は、ピン部材616に対して、水平方向に平行な前後方向D1に対して所定の角度をなす斜め上方向へ摺動可能である。
【0036】
押圧部駆動部64の上部には、前側凹部644と後側凹部645とが形成されている。前側凹部644に板ばね611の先端凸部6111が係合することにより、押圧部駆動部64は、図3に示すように、先端部押圧部63の板状当接部615がレチクルポッドRP上部に当接してレチクルポッドRPを下壁24の方向へ押圧している位置において、略前後方向D1へ移動できないように、一時的に仮固定されるように構成されている。また、後側凹部645に板ばね611の先端凸部6111が係合することにより、押圧部駆動部64は、図5に示すように、先端部押圧部63の板状当接部615がレチクルポッドRP上部から後斜め上側に離間してレチクルポッドRPをポッド載置部50に対して載置又は取り外し可能な位置において、略前後方向D1へ移動できないように、一時的に仮固定されるように構成されている。
なお、図5図6等の断面図においては、レチクルポッドRPの断面の図示を省略している。
【0037】
より具体的には、後述のように、押圧部駆動部64は、蓋体3が奥壁22の方向へ移動するときに、この移動に伴い、水平方向に対して所定の角度をなす斜め上方向へ移動可能である。押圧部駆動部64の前端部は、駆動部係合部を構成するフック形状部647を有している。
【0038】
図示しないばねは、先端部押圧部63をレチクルポッドRPから離間した状態とするように、より具体的には、押圧部駆動部64を略前方向D11へ移動させるように、押圧部駆動部64に係合して設けられており、押圧部駆動部64を付勢する。
【0039】
蓋体3は、図1等に示すように、容器本体2の開口周縁部28の形状と略一致する略長方形状を有している。蓋体3は容器本体2の開口周縁部28に対して着脱可能であり、開口周縁部28に蓋体3が装着されることにより、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞可能である。蓋体3の内面(図1に示す蓋体3の裏側の面)であって、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞しているときの開口周縁部28のすぐ後方向D12の位置に形成された段差の部分の面(シール面281)に対向する面には、環状のシール部材4が取り付けられている。シール部材4は、弾性変形可能なポリエステル系、ポリオレフィン系など各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム製、シリコンゴム製等により構成されている。シール部材4は、蓋体3の外周縁部を一周するように配置されている。
【0040】
蓋体3が開口周縁部28に装着されたときに、シール部材4は、シール面281と蓋体3の内面とにより挟まれて弾性変形し、蓋体3は、容器本体開口部21を密閉した状態で閉塞する。開口周縁部28から蓋体3が取り外されることにより、容器本体2内のポッド収容空間27に対して、レチクルポッドRPを出し入れ可能となる。
【0041】
蓋体3においては、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋体3の左右両端部近傍に設けられており、図5に示すように、蓋体3の上辺から上方向D21へ突出可能な2つの上側ラッチ部32Aと、蓋体3の下辺から下方向D22へ突出可能な2つの下側ラッチ部32Bと、を備えている。2つの上側ラッチ部32A、32Aは、蓋体3の上辺の左右両端近傍に配置されており、2つの下側ラッチ部32B、32Bは、蓋体3の下辺の左右両端近傍に配置されている。
【0042】
図1等に示すように、蓋体3の外面においては操作部33が設けられている。操作部33を蓋体3の前側から操作することにより、上側ラッチ部32A、下側ラッチ部32Bを蓋体3の上辺、下辺から突出させることができ、また、上辺、下辺から突出させない状態とすることができる。上側ラッチ部32Aが蓋体3の上辺から上方向D21へ突出して、容器本体2の図示しないラッチ係合凹部に係合し、且つ、下側ラッチ部32Bが蓋体3の下辺から下方向D22へ突出して、容器本体2の図示しないラッチ係合凹部に係合することにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部28に固定される。
【0043】
蓋体3の内側においては、ポッド収容空間27の外方へ窪んだ凹部301が形成されている。凹部301には、押圧部被係合部303が固定されて設けられている。
【0044】
押圧部被係合部303は、蓋体3の上部における凹部301の部分に固定されている。図5に示すように、押圧部被係合部303は、前後方向シ1に厚みを有する部材により構成されており、押圧部被係合部303の下端部は、押圧部被係合部303を構成するフック形状部304を有している。押圧部被係合部303のフック形状部304は、押圧部駆動部64のフック形状部647に係合可能である。
【0045】
以上の構成の基板収納容器1へのレチクルポッドRPの収納について説明する。
図5は、基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されていない様子を示す側方断面図である。図6は、基板収納容器1において、レチクルポッドRPが容器本体2に固定されていない様子を示す断面斜視図である。
【0046】
先ず、蓋体3を、容器本体開口部21を形成する開口周縁部28から取り外した状態とする。次に、レチクルポッドRPをポッド収容空間27へ挿入し、レチクルポッドRPの底面に形成されたキネマピン係合溝にキネマピン55の先端部を係合させることにより、レチクルポッドRPは、容器本体2に対して位置決めされる。
【0047】
次に、蓋体3を容器本体2に接近させてゆく。すると、図5図6に示すように、押圧部被係合部303のフック形状部304が、押圧部駆動部64のフック形状部647に係合する。そして、更に蓋体3を容器本体2に接近させてゆくと、押圧部駆動部64が蓋体3に押されて、図示しないばねの付勢力に抗して押圧部駆動部64が略後方向D12へ移動し、これに伴い、先端部押圧部63の上部が押圧部駆動部64によって奥壁22の方向へ押されることにより、先端部押圧部63の下部は、奥壁22側から容器本体開口部21側へ移動し、レチクルポッドRPの上部に当接し、レチクルポッドRPの上部を下壁24の方向へ押圧する。これにより、レチクルポッドRPは、容器本体2に固定された状態となると同時に、蓋体3により容器本体開口部21が閉塞される。そして、蓋体3の操作部33を操作することにより、上側ラッチ部32A、下側ラッチ部32Bを、容器本体2の図示しないラッチ係合凹部に係合させることにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部28に固定される。
【0048】
基板収納容器1からレチクルポッドRPを取り出すときには、先ず、蓋体3の操作部33を操作することにより、上側ラッチ部32A、下側ラッチ部32Bを、容器本体2の図示しないラッチ係合凹部に係合していない状態とする。次に、蓋体3を容器本体開口部21から離間させてゆく。これに伴い、押圧部被係合部303のフック形状部304が、押圧部駆動部64のフック形状部647に係合しているため、押圧部駆動部64が蓋体3に引かれて、前方向D11に対して所定の角度をなす下方向へ斜めに移動してゆく。そして、蓋体3が所定の距離以上に容器本体2の開口周縁部28から離間したときに、蓋体3は水平に前方向D11へ移動してゆくため、押圧部駆動部64のフック形状部647が押圧部被係合部303のフック形状部304よりも下側に位置して、押圧部駆動部64のフック形状部647と押圧部被係合部303のフック形状部304との係合が解除され、蓋体3は、押圧部駆動部64から切り離された状態となり、蓋体3は、容器本体2から取り外される。
【0049】
上記構成の本実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
前述のように、下壁24には、容器本体2に対する被収容物としてのレチクルポッドRPの位置決めをする位置決め部としてのポッド載置部50が設けられ、上壁23には、レチクルポッドRPの上部を下壁24の方向へ押圧する下方押圧部60が設けられ、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞するときに、下方押圧部60にレチクルポッドRPの上部を下壁24の方向へ押圧させる。
【0050】
上記構成により、蓋体3によって容器本体開口部21を閉塞することにより、レチクルポッドRPを容器本体2に容易に固定することが可能となり、レチクルポッドRPの基板収納容器1への収納の手順を、よりスムーズに行えることが可能となる。また、レチクルポッドRPを基板収納容器1で収容するため、レチクルポッドRPの外面にパーティクルが付着することを抑えることが可能となる。この結果、レチクルをレチクルポッドRPから取り出す際に、レチクルにパーティクルが付着して汚染され、ウェーハの回路不良の発生を抑えることが可能となる。特に近年では、デザインルールが微細化されており、パーティクル管理をより厳重に行う必要があるが、これについても十分に対応可能となる。
また、レチクルポッドRPを収容する容器として基板収納容器1を用いたため、レチクルポッドRPを収納する容器としての寸法も適しており、基板収納容器1を搬送するための自動搬送装置も標準的に存在するため、スムーズにレチクルポッドRPを搬送する工程へ投入できる。
【0051】
また、蓋体3は、下方押圧部60が係合可能な押圧部被係合部303を有し、容器本体開口部21を閉塞するときに、押圧部被係合部303が下方押圧部60を構成する押圧部駆動部64のフック形状部647に係合して、下方押圧部60に被収容物としてのレチクルポッドRPの上部を下壁24の方向へ押圧させる。そして、蓋体3の押圧部被係合部303と、押圧部被係合部303に係合する下方押圧部60の駆動部係合部とは、互いに係合し合うフック形状部304、647を有している。この構成により、蓋体3の移動に伴い、下方押圧部60の先端部押圧部63によるレチクルポッドRPの押圧を行うことが可能となる。
【0052】
また、下方押圧部60は、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞していないときに、先端部押圧部63をレチクルポッドRPから離間した状態とするように押圧部駆動部64を付勢する付勢部材としての図示しないばねを備える。この構成により、レチクルポッドRPが容器本体2に収容されておらず、蓋体3により容器本体開口部21が閉塞されていないときに、先端部押圧部63をレチクルポッドRPから離間した状態の位置、換言すれば、レチクルポッドRPをポッド載置台に対して載置可能な状態の位置とすることが可能となる。
【0053】
また、押圧部駆動部64は、蓋体3が奥壁22の方向へ移動するときに、水平方向に対して所定の角度をなす斜め上方向へ移動可能である。この構成により、蓋体3を奥壁22の方向へ移動させるときに、押圧部被係合部303のフック形状部304が、押圧部駆動部64のフック形状部647に係合させることが可能となる。また、蓋体3を容器本体開口部21の方向へ移動させるときに、押圧部被係合部303のフック形状部304と、押圧部駆動部64のフック形状部647との係合を自動的に解除させることが可能となる。
【0054】
そして、先端部押圧部63の上部が押圧部駆動部64によって奥壁22の方向へ押されることにより、先端部押圧部63の下部は、奥壁22側から容器本体開口部21側へ移動し、レチクルポッドRPの上部に当接し、レチクルポッドRPの上部を下壁24の方向へ押圧する。この構成により、蓋体3が開口周縁部28から取り外されているときに、レチクルポッドRPをポッド載置部50に容易に載置可能な状態とすることができる。
【0055】
また、壁部20を構成する材料は、シクロオレフィンポリマーにより構成されている。この構成より、低吸水材料であるCOPからポッド収容空間の内部に水分が放出されることを抑えることが可能となり、ポッド収容空間内の湿度の上昇を抑えることが可能となる。
【0056】
また、ポッド収容空間27と容器本体2の外部の空間とを連通可能な通気路を有する。この構成により、パージガスにより、ポッド収容空間27の気体をパージすることが可能となる。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
例えば、本実施形態においては、容器本体、蓋体は、直径が300mmのシリコンウェーハを収納可能な基板収納容器の容器本体2、蓋体3により構成されたが、これに限定されない。レチクルポッドRPを収容可能であればどのような容器でもよく、例えば、基板収納容器を模した構造の容器、即ち、一端部にポッド収容空間に連通する容器本体開口部が形成され、他端部が閉塞されているような構造の容器により構成されても良い。
また、本実施形態においては、被収容物は、レチクルポッドRPであったが、これに限定されない。
また、基板収納容器の各部の構成は、本実施形態における基板収納容器1の各部の構成に限定されない。
【0058】
また、本実施形態では、下壁24の前部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部の気体を排出するための排気孔であり、後部の2箇所の貫通孔は、容器本体2の内部に気体を給気するための給気孔であったが、この構成に限定されない。例えば、下壁の前部の2箇所の貫通孔の少なくとも1つについても、容器本体の内部に気体を給気するための給気孔としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 基板収納容器
2 容器本体
3 蓋体
4 シール部材
20 壁部
21 容器本体開口部
22 奥壁
23 上壁
24 下壁
25 第1側壁
26 第2側壁
27 ポッド収容空間
28 開口周縁部
50 ポッド載置部(位置決め部)
60 下方押圧部
61 押圧部支持部
63 先端部押圧部
64 押圧部駆動部
304 フック形状部
615 板状当接部
647 フック形状部
RP レチクルポッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6