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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】皮膚支帯改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20230406BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 36/738 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 36/74 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20230406BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/48
A61K36/738
A61K36/74
A61K36/82
A61P43/00 111
A61P17/00
A61Q19/00
A61K8/9794
A61K8/9789
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021063182
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2016114751の分割
【原出願日】2016-06-08
(65)【公開番号】P2021100977
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂田 綾
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】原田 靖子
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-128121(JP,A)
【文献】特開2013-018715(JP,A)
【文献】特開2013-018716(JP,A)
【文献】特開2002-241299(JP,A)
【文献】Fragrance Journal,2014年,Vol.42 No.403,p.44-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱細胞において、ミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)から選ばれる少なくとも1種のタンパク質の発現量を増加させるために用いる、
以下の群から選択される植物の抽出物からなり
前記抽出物は、抽出溶媒として、極性溶媒を用いて得られる抽出物である、
前記タンパク質の発現亢進剤:
フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)ノイバラ(Rosa multiflora)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)チャノキ(Camellia sinensis)、アカネ科(Rubiaceae)カギカズラ属(Uncaria)ガンビールノキ(Uncaria gambir)。
【請求項2】
前記抽出物は、抽出溶媒として、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1,3-ブタンジオール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランから選ばれる1種乃至は2種以上を用いて得られる抽出物である、
請求項1に記載のタンパク質の発現亢進剤。
【請求項3】
前記抽出物は、抽出溶媒として、水、エタノール、1,3-ブタンジオールから選ばれる1種乃至は2種以上を用いて得られる抽出物である、
請求項2に記載のタンパク質の発現亢進剤。
【請求項4】
腱細胞において、ミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)の全タンパク質の発現量を増加させるために用いる、
請求項1~3の何れか一項に記載のタンパク質の発現亢進剤。
【請求項5】
外用剤又は経口剤である、請求項1~4の何れか一項に記載のタンパク質の発現亢進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚支帯成分の発現量を増加させる皮膚支帯改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢で顕著となる皮膚のタルミやシワは、皮膚の弾力性低化がその原因の一つと考えられている。従来、皮膚の弾力性を改善する方法として、例えば、皮膚の弾力性保持に重要な役割を果たすコラーゲンやヒアルロン酸等の細胞外マトリックスの産生を促進又は分解を抑制する技術や(特許文献1)、細胞外マトリックスを産生する真皮線維芽細胞の増殖を促進する技術(特許文献2)が知られている。しかしながら、皮膚直下に存在する皮下組織の構造を改善することでタルミやシワを改善する方法についてはこれまで報告がない。
【0003】
本発明者らは、皮下組織に存在する皮膚支帯(Retinacula cutis)と呼ばれる網目状の線維構造に着目し、顔のタルミとの関連性について検討した結果、皮膚支帯が疎になることにより皮膚深部の弾力性が低下し、タルミが引き起こされる可能性を見出している(非特許文献1)。また、額及び目尻において、深いシワ部位直下の皮下組織では皮膚支帯密度が減少していることが知られている(非特許文献2)。非特許文献1や2の記載から、皮膚支帯の密度を高めることができれば、タルミやシワの改善につながることが推定される。しかしながら、これまでは皮膚支帯の構成成分やその産生細胞、皮膚支帯の密度の変化のメカニズムについては知見がなく、皮膚支帯の密度の変化の原因を高める成分は知られていなかった。また、皮膚支帯の構成成分の発現量を増加させる皮膚支帯改善剤については、これまでに報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-257101号公報
【文献】特開2008-105983号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sakata A., et al. :”Breakthrough in improving the skin sagging with focusing on the subcutaneous tissue structure, retinacula cutis”, 23rd IFSCC, Zurich (2015)
【文献】Tsukahara K. et al., Arch Dermatol. (2012), 148, 39-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、細胞における皮膚支帯成分であるタンパク質の発現量を増加させる作用を有する、新規な皮膚支帯改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、皮膚支帯の構成成分、及び当該構成成分を産生する細胞腫を特定した。さらに皮膚支帯を構成するタンパク質である、ミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)、アネキシン A2(Annexin A2)が加齢と共に減少することを見出した。さらにミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)の発現量を増加させる作用を持つ植物抽出物により皮膚支帯を改善できることを見出した。
本発明者らは、以上の知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0008】
前記課題を解決する本発明は、細胞における、ミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)から選ばれる少なくとも1種のタンパク質の発現量を増加させる作用を有する植物抽出物からなる、皮膚支帯改善剤である。
本発明によれば、前記タンパク質の発現量を増加させることにより皮膚支帯を改善することができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記タンパク質のうち、異なるタンパク質の発現量を増加させる作用を有する植物抽出物から選ばれる2以上の植物抽出物からなる。
異なるタンパク質の発現量を増加させる形態とすることにより、皮膚支帯の改善作用を向上させることができる。
【0010】
本発明者らは、皮膚支帯を構成する前記タンパク質が、主に腱細胞や線維芽細胞において生産されることを見出している。
したがって、本発明は、腱細胞及び/又は線維芽細胞における前記タンパク質の発現量を増加させるために用いることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、腱細胞における、前記全タンパク質の発現量を増加させる作用を有する植物抽出物からなる形態とすることが特に好ましい。
【0012】
本発明は、以下に属する植物の抽出物から選ばれる植物抽出物からなる形態とすることが好ましい。
フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)、アカネ科(Rubiaceae)カズキカズラ属(Uncaria)。
【0013】
さらに、本発明は、以下に属する植物から選ばれる植物の抽出物からなる形態とすることが好ましい。
フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)ゲンノショウコ(Geraniumthunbergii)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)ノイバラ(Rosa multiflora)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)チャノキ(Camellia sinensis)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)リネアリス(Aspalathus linearis)、アカネ科(Rubiaceae)カズキカズラ属(Uncaria)ガンビールノキ(Uncaria gambir)。
植物抽出物として、これらの植物の抽出物を用いることによって、前記全タンパク質の発現量を増加させることができ、より高い皮膚支帯改善効果を得ることができる。
【0014】
本発明は、外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚支帯改善剤は、細胞における皮膚支帯成分であるタンパク質の発現量を増加させる作用に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<1>皮膚支帯成分
皮膚直下にある皮下組織には皮膚支帯(Retinacula cutis)と呼ばれる網目状の線維構造が存在しており、その構成成分としてミメカン(Mimecan)、アネキシンA2(Annexin A2)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)、6型コラーゲン(Collagen type 6)、1型コラーゲン(Collagen type 1)、アネキシンA5(Annexin A5)、デコリン(Decorin)、ルミカン(Lumican)、プロラルギン(Prolargin)などが知られている。
【0017】
<2>植物抽出物(有効成分)
本発明の皮膚支帯改善剤は、これらタンパク質のうちミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)から選ばれる少なくとも1種のタンパク質の発現量を増加させる植物抽出物からなる。
本発明における植物抽出物は、前記タンパク質の発現量を増加させる作用を有するものであれば特に限定されない。本発明に用いる植物の属する属としては、フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)、バラ科(Rosaceae)サンザシ属(Crataegus)、マメ科(Fabaceae)クララ属(Sophora)、アサ科(Cannabaceae)カラハナソウ属(Humulus)、ツツジ科(Ericaceae)スノキ属(Vaccinium)、ユキノシタ科(Saxifragaceae)ユキノシタ属(Saxifraga)、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属(Oenothera)、カタバミ科(Oxalidaceae)ゴレンシ属(Averrhoa)、キク科(Asteraceae)ゴボウ属(Arctiumu)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)、イネ科(Poaceae)マダケ属(Phyllostachys)、オトギリソウ科(Guttiferae)オトギリソウ属(Hypericum)、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)、アカネ科(Rubiaceae)カギカズラ属(Uncaria)、シソ科(Lamiaceae)タツナミソウ属(Scutellaria)、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)、アカネ科(Rubiaceae)キナノキ属(Cinchona)が例示できる。好ましくは、フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)、アカネ科(Rubiaceae)カギカズラ属(Uncaria)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)オウレン属(Coptis)、マメ亜科(Faboideae)インドカリン属(Pterocarpus)、ブドウ科(Vitaceae)ブドウ属(Vitaceae)が例示できる。
【0018】
また、具体的な植物種としては、フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)ノイバラ(Rosa multiflora)、バラ科(Rosaceae)サンザシ属(Crataegus)サンザシ(Crataegus cuneata)、マメ科(Fabaceae)クララ属(Sophora)クララ(Sophora flavesens)、アサ科(Cannabaceae)カラハナソウ属(Humulus)ホップ(Humulus lupulus)、ツツジ科(Ericaceae)スノキ属(Vaccinium)セイヨウスノキ(Vacciniumu myrtillus)、ユキノシタ科(Saxifragaceae)ユキノシタ属(Saxifraga)ユキノシタ(Saxifraga stolonifera)、アカバナ科(Onagraceae)マツヨイグサ属(Oenothera)メマツヨイグサ(Oenothera biennis)、カタバミ科(Oxalidaceae)ゴレンシ属(Averrhoa)スターフルーツ(Averrhoa carambola)、キク科(Asteraceae)ゴボウ属(Arctiumu)ゴボウ(Arctium lappa)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)チャノキ(Camellia sinensis)、イネ科(Poaceae)マダケ属(Phyllostachys)モウソウチク(Phyllostachys edulis)、オトギリソウ科(Guttiferae)オトギリソウ属(Hypericum)オトギリソウ(Hypericum erectum)、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)マンダリンオレンジ(Citrus reticulata)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)リネアリス(Aspalathus linearis)、アカネ科(Rubiaceae)カギカズラ属(Uncaria)ガンビールノキ(Uncaria gambir)、シソ科(Lamiaceae)タツナミソウ属(Scutellaria)コガネバナ(Scutellaria baicalensis)、バラ科(Rosaceae)キイチゴ属(Rubus)ヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)、アカネ科(Rubiaceae)キナノキ属(Cinchona)アカキナノキ(Cinchona pubescens)、キンポウゲ科(Ranunculaceae)オウレン属(Coptis)オウレン(Coptis japonica)、マメ亜科(Faboideae)インドカリン属(Pterocarpus)インドキノキ(Pterocarpus marsupium)、ブドウ科(Vitaceae)ブドウ属(Vitaceae)ブドウ(Vitis spp)等が例示できる。
【0019】
以上の植物の抽出物は、ミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)の少なくとも1つの発現を向上させる作用を有する。各植物抽出物が、線維芽細胞又は腱細胞において、何れのタンパク質の発現を向上させるのかについて表1及び2に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
表1及び2に示すように、前記4種類のタンパク質のうちの一部に対してのみ発現向上作用を示すものが存在する。本発明においては、このような前記4種類のタンパク質のうちの一部に対してのみ発現向上作用を示す植物抽出物を2以上組み合わせる形態とすることが好ましい。すなわち、本発明は、前記タンパク質のうち、異なるタンパク質の発現量を増加させる作用を有する2以上の植物抽出物の組み合わせからなる実施の形態とすることが好ましい。
より具体的には、表1及び2に示した植物の抽出物のうち、異なるタンパク質の発現量を増加させる作用を有する2以上の植物抽出物の組み合わせからなる実施の形態とすることが好ましい。
このような実施の形態とすることにより、より高い皮膚支帯改善作用を実現することができる。
【0023】
より高い皮膚支帯改善作用を実現するため、前記全タンパク質の発現量を増加させる作用を有する植物抽出物を用いる形態とすることが好ましい。
表2に示すように、フウロソウ科(Geraniaceae)フウロソウ属(Geranium)ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)、バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)ノイバラ(Rosa multiflora)、ツバキ科(Theaceae)ツバキ属(Camellia)チャノキ(Camellia sinensis)、マメ科(Fabaceae)アスパラサス属(Aspalathus)リネアリス(Aspalathus linearis)、アカネ科(Rubiaceae)カギカズラ属(Uncaria)ガンビールノキ(Uncaria gambir)の植物抽出物は、ミメカン、バイグリカン、ビンキュリン及びミクロフィブリル結合タンパク質4の全ての発現を向上させる作用がある。
したがって、これらの植物抽出物の少なくとも1つを用いる実施の形態とすることが特に好ましい。
【0024】
線維芽細胞または腱細胞は皮膚支帯を構成する細胞であり、かつ、これらの細胞は皮膚支帯の構成成分である上述のタンパク質を生産することを本発明者らは見出している。
したがって、本発明は、好ましくは腱細胞及び/又は線維芽細胞、特に好ましくは腱細胞における、前記タンパク質の発現量を増加させるために用いる形態とすることが好ましい。
【0025】
本発明における前記植物の抽出物は、日本において自生又は生育された植物、漢方生薬原料などとして販売される日本産のものを用い抽出物を作製することもできるし、丸善株式会社などの植物抽出物を扱う会社より販売されている市販の抽出物を購入し、使用することもできる。
【0026】
植物抽出物は、植物抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0027】
<3>皮膚支帯改善剤
本発明の皮膚支帯改善剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて、外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
外用剤としては、例えば、化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態が挙げられる。また、それらの剤形は特に制限されない。中でも、皮膚支帯成分の発現を促進させるという用途との関係から、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましく、中でも、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態が好ましい。
【0028】
また、経口剤とする場合には、本発明の皮膚支帯改善剤を有効成分として含む食品用組成物の形態とすることが好ましい。より具体的には、一般食品、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメントの形態とすることが好ましい。
【0029】
外用剤における植物抽出物の含有量(抽出物の場合は乾燥質量)は、通常、0.00001質量%以上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、好適にシワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止効果を奏する。
また、皮膚支帯成分の発現促進剤の種類は、1種類のみでなく2種類以上であってもよい。
【0030】
また、経口剤の場合には、剤形に応じて、1回あたりの摂取量が抽出物の乾燥質量として、通常、0.1mg以上、好ましくは1mg以上、より好ましくは10mg以上であり、通常2000mg以下、好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
【0031】
皮膚支帯は、皮膚の形状維持において重要な役割を果たしている。したがって、本発明の皮膚支帯改善剤は、皮下組織構造の改善剤として使用することができる。
【0032】
また、皮膚支帯の疎密は年齢および皮膚のタルミ程度と相関関係を有すること、さらに、皮膚支帯を構成するタンパク質のうちミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)及びミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)は加齢に伴い減少する成分であり、これらタンパク質の減少がしわやたるみの原因となっていることを本発明者らは見出している。
したがって、本発明の皮膚支帯改善剤は抗老化剤として有用であり、特にシワ改善、タルミ改善、ハリの低下防止、肌の弾力性の低下防止剤としての使用が好ましい。
【0033】
皮膚支帯改善剤を化粧料の形態とする場合、通常化粧料に使用される成分を広く配合することが可能であり、また、その剤形や用途についても、何ら限定されない。以下、化粧料に適用される場合、化粧料中に含有させることができる他の成分について説明する。
【0034】
化粧料においては、前述した植物抽出物に加え、美白成分、他のシワ改善成分、抗炎症成分等を配合することができる。
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4-n-ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3-О-エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸等が挙げられる。更にその他の美白成分として、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン メチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリン エチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリン メチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等があげられる。
【0035】
これらの美白成分は、既に市販されているものもあれば、合成により入手することもできる。例えば、3-О-エチルアスコルビン酸は、特開平8-134055号公報に記載の公知の方法で合成することが出来る。市販品(日本精化製「VCエチル」)もあるので、これらを入手して使用することが可能である。1-トリフェニルメチルピペリジン、1-トリフェニルメチルピロリジン、2-(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2-(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2-(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン、アミノジフェニルメタンは特許文献WO2010―074052号パンフレットに、N-(o-トルオイル)システイン酸、N-(m-トルオイル)システイン酸、N-(p-トルイル)システイン酸、N-(p-メトキシベンゾイル)システイン酸、N-(4-フェニルベンゾイル)システイン酸、N-(p-トルオイル)ホモシステイン酸、はWO2011-058730号パンフレットに、N-ベンゾイル-セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン、N-(p-エチルベンゾイル)セリン、N-(p-メトキシベンゾイル)セリン、N-(p-フルオロベンゾイル)セリン、N-(p-トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N-(2-ナフトイル)セリン、N-(4-フェニルベンゾイル)セリン、N-(p-メチルベンゾイル)セリン メチルエステル、N-(p-メチルベンゾイル)セリン エチルエステル、N-(2-ナフトイル)セリン メチルエステル、N-ベンゾイル-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-メチルセリン、N-(p-メチルベンゾイル)-O-アセチルセリン、N-(2-ナフトイル)-O-メチルセリン等はWO2011/074643号パンフレットに、それぞれその合成方法が公開されているので、該開示に従い合成することができる。
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0036】
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、皮膚支帯の発現促進とは異なるメカニズムでシワ改善効果を有する成分を用いることが、各成分の作用効果を存分に生かす観点から好ましい。例えば、ビタミンA又はその誘導体としてレチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールが挙げられる。また、ウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。化粧料における皮膚支帯の発現促進剤の他のシワ改善成分の含有量は、通常0.0001~30質量%であり、0.001~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0037】
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好ましく挙げられる。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい(抽出物の場合は乾燥質量)。
【0038】
また、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられている動植物由来の抽出物を用いることが好ましい。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウバクエキス、オタネニンジンエキス、オドリコソウエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クルミエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、チョウジエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、マツエキス、ミズバショウエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
【0039】
化粧料中における前記任意の動植物由来抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~30質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。
食品中における前記任意の動植物抽出物の含有量(乾燥質量)は、通常0.01~80質量%であり、0.1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0040】
また、化粧料には、前述した有効成分以外に通常化粧料で使用される任意成分としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等のポリオール、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類が挙げられる。
【実施例
【0041】
<試験例1>植物抽出物による真皮由来線維芽細胞における遺伝子発現量への影響
ヒト正常真皮線維芽細胞を、10% FBS/DEME培地で24穴プレートに2.0×10個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%、CO環境下で24時間培養した。
播種24時間後、表3~5に示す抽出溶媒を用いて調製した植物抽出物を添加した(最終濃度0.5質量%)。
【0042】
24時間後、培地を除きPBSで洗浄し、FastLane Cell RT-PCR Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)でcDNAを合成した。
QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社製)を用いて定量的RT-PCRを行い、加齢で減少する皮膚支帯構成タンパク質であるバイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)をコードする遺伝子のmRNA量を測定した。
前述のmRNA発現量は、β-actinを内在性コントロールとして比較CT法により算出し、被験物質非添加のヒト正常真皮線維芽細胞における目的のmRNA発現量を「1」とした場合の相対値として結果を表3~5に示した。
【0043】
【表3】

【表4】
【表5】
【0044】
表3~5に示す通り、ゲンノショウコエキスを添加することによって、Biglycan遺伝子の発現量比が2.34、MFAP4遺伝子の発現量比が2.20に増大した。また、オウレンエキスを添加することによって、Biglycan遺伝子の発現量比が1.28に増大した。さらに、アスパラサスリネアリスエキスを添加することによって、MFAP4遺伝子の発現量比が1.41、ガンビールノキエキスを添加することによって、Vinculin遺伝子の発現量比が1.93、MFAP4遺伝子の発現量比が2.75、プテロスチルベンを添加することによって、Biglycan遺伝子の発現量比が2.25、MFAP4遺伝子の発現量比が2.28に増大した。
これらの結果より、以上の植物抽出物は、真皮由来線維芽細胞において、Biglycan、Vinculin、MFAP4のうち何れか少なくとも一つの遺伝子の発現量を向上させることができることがわかった。
【0045】
<試験例2>植物抽出物による腱細胞における遺伝子発現量への影響
ヒト腱由来腱細胞を、専用培地でコラーゲンIコート24穴プレートに2.0×10個/ウェルとなるように播種し、37℃、5%、CO環境下で24時間培養した。
播種24時間後、表6~9に示す抽出溶媒を用いて抽出した種々の植物抽出物を添加した(最終濃度0.5質量%)。
24時間後、培地を除きPBSで洗浄し、FastLane Cell RT-PCR Kit(QIAGEN社製)を用いてmRNAを回収し、QuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN社製)でcDNAを合成した。
QuantiTect Primer Assay(QIAGEN社製)を用いて定量的RT-PCRを行い、加齢で減少する皮膚支帯構成タンパク質であるミメカン(Mimecan)、バイグリカン(Biglycan)、ビンキュリン(Vinculin)、ミクロフィブリル結合タンパク質4(Microfibrillar-associated protein 4、MFAP4)をコードする遺伝子のmRNA量を測定した。
前述のmRNA発現量は、β-actinを内在性コントロールとして比較CT法により算出し、被験物質非添加のヒト腱由来細胞における目的のmRNA発現量を「1」とした場合の相対値として、結果を表6~9に示した。
【0046】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0047】
表6~9より、ゲンノショウコエキス、エイジツエキス、チャ葉エキス、アスパラサスリネアリスエキス、ガンビールノキエキスを添加した場合には、Mimecan、Biglycan、Vinculin、MFAP4遺伝子のうち全ての発現量比を増大させることができることがわかった。
他の植物抽出物を添加した場合においても、Mimecan、Biglycan、Vinculin、MFAP4の何れか少なくとも一つの遺伝子の発現量比を増大させることができることがわかった。
以上の抽出物は、腱細胞において、Mimecan、Biglycan、Vinculin、MFAP4のうち何れか少なくとも一つの遺伝子の発現量比を増大することが明らかとなり、皮膚支帯改善剤の有効成分として好適であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、外用剤や経口剤に応用できる。