(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】シールド端子付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6591 20110101AFI20230406BHJP
H01R 12/73 20110101ALN20230406BHJP
【FI】
H01R13/6591
H01R12/73
(21)【出願番号】P 2021522988
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 US2019064260
(87)【国際公開番号】W WO2020117824
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】カーク ビー ペロザ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェク シャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー コラク
(72)【発明者】
【氏名】ダン ヴェンツェル
(72)【発明者】
【氏名】マット コックス
(72)【発明者】
【氏名】エイマン アイザック
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3199094(JP,U)
【文献】特開2013-073987(JP,A)
【文献】特開2018-010724(JP,A)
【文献】特開2013-038076(JP,A)
【文献】特開2019-003816(JP,A)
【文献】中国実用新案第206742586(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024257(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0104976(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0023336(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0008560(US,A1)
【文献】国際公開第2010/030622(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0091103(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/658-13/6477
H01R 13/64737-13/6599
H01R 12/72-12/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
1つ以上のウエハであって、各ウエハは少なくとも1つの可撓性シールドおよび少なくとも1つの剛性シールドを備え、各可撓性シールドの長さ方向部分は、伝送線路のインピーダンスに作用するために、前記伝送線路の差分信号導体の対応するペアの電気信号導体の片持ちビームセクションから公称距離にあるように構成されている、1つ以上のウエハと
を備え、
各可撓性シールドが、それぞれのウエハのそれぞれの接地導体と実質的に同じ方向に相応に屈曲しながらそれぞれの信号導体からの前記公称距離を維持するように構成されている、電気コネクタ。
【請求項2】
8レーンスモールフォームファクタプラガブルコネクタを備える、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
各伝送線路が、接地導体および信号導体の複数の電気端子端セクションを備え、該複数の電気端子端セクションの各々が、前記電気コネクタを電子モジュールに機械的および電気的に接続するように動作可能である、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
各可撓性シールドが、前記接地導体の各々の第1の部分を覆うように構成された自己整合可撓性シールドを備える、請求項3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
各可撓性シールドが金属合金を備える、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記可撓性シールドのうちの少なくとも1つが銅合金を備える、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記可撓性シールドのうちの少なくとも1つが非金属材料を備える、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
各可撓性シールドが、前記剛性シールドの電気的接地セクションをそれぞれの伝送線路の接地導体に電気的に接続するように構成されている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
各剛性シールドが、電気的接地として動作するように構成されており、電気的接地導体の各々の第2の部分を覆うように構成されている、請求項
4に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
各剛性シールドが、それぞれのウエハのそれぞれの電気的接地導体と実質的に同じ方向への屈曲に抵抗するように構成されている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項11】
各剛性シールドが金属材料を備える、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項12】
各剛性シールドが、接地導体に機械的支持を提供するために、それぞれのウエハの接地導体のそれぞれの片持ちビームに接続されている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項13】
各剛性シールドが上部および後部セクションを備え、該上部および後部セクションが、それぞれのウエハの接地導体と整合するように構成されている、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項14】
それぞれの上部および後部セクションをそれぞれのウエハの接地導体のそれぞれの片持ちビームセクションに接続するために、複数の溶接をさらに備える、請求項
13に記載の電気コネクタ。
【請求項15】
ウエハの伝送線路の電気的接地導体と実質的に同じ方向に相応に屈曲しながら、前記伝送線路の電気的差分信号導体からの公称距離を維持するように構成され、
剛性シールドの電気的接地セクションを前記伝送線路の電気的接地導体に電気的に接続するようにさらに構成された、高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項16】
前記電気的接地導体の一部を覆うように構成された長さ方向部分を備える、請求項
15に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項17】
前記伝送線路のインピーダンスに影響を及ぼすために前記電気的差分信号導体の片持ちビームセクションからの前記公称距離を維持するようにさらに構成された、請求項
15に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項18】
前記高速コネクタが8レーンスモールフォームファクタプラガブルコネクタを備える、請求項
15に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項19】
シールドが金属合金を備える、請求項
15に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項20】
前記シールドが銅合金を備える、請求項
19に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【請求項21】
シールドが非金属材料を備える、請求項
15に記載の高速コネクタ用の自己整合可能な可撓性シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2018年12月3日に出願された米国特許仮出願第62/774,650号(「´650出願」)の優先権を主張し、本明細書に完全に明記されているかのように、´650出願の全開示を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、入出力(I/O)コネクタの分野に関し、より具体的には、高データレート(およそ112ギガビット(Gビット))でデータを送受信するように機能するI/Oコネクタに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションは、記載される発明のより良い理解を容易にするのに役立ち得る態様を紹介する。したがって、このセクションの記述は、この観点で読まれるべきであり、従来技術に含まれるもの、または含まれないものに関する承認として理解されるべきではない。
【0004】
多くのI/Oコネクタは、ウエハの重ねられたサンドイッチ状に構成され、わずかな寸法のばらつきの影響を非常に受けやすい。さらに、これらのウエハ内の金属要素はパドルカードまたはモジュールプリント回路基板(PCB)に対して直角に配向されているので、「ホスト」プリント回路基板(PCB)をパドルカードまたはモジュールPCBに接続する電気接点は、多くの場合、ヘミフォーム(hemi-form)と呼ばれるものを通じて90°回転しなければならない。このような構成は、構築および組み立てることが困難である。したがって、このようなI/Oコネクタの設計における改善が望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、高データレート伝送を可能にする、様々な例示的なI/Oコネクタおよび関連する方法を記載する。本発明のコネクタは、とりわけ、機械的強度およびシグナルインテグリティを向上させるための保護シールドを含む。
【0006】
電気コネクタの一実施形態は、ハウジングと、1つ以上のウエハであって、各ウエハは少なくとも1つの可撓性シールドおよび少なくとも1つの剛性シールドを備え、各可撓性シールドの長さ方向部分は、伝送線路のインピーダンスに作用するために、伝送線路の差分信号導体の対応するペアの電気信号導体の片持ちビームセクションから公称距離で構成されている、1つ以上のウエハと、を備え得る。このようなコネクタは、8レーンスモールフォームファクタプラガブル(OSFP)コネクタを備え得る。
【0007】
このようなコネクタの各伝送線路は、接地導体および信号導体の複数の電気端子端セクションを備えてもよく、複数の電気端子端セクションの各々は、コネクタを電子モジュール(たとえば、PCB)に機械的および電気的に接続するように動作可能である。
【0008】
さらなる実施形態では、コネクタの各可撓性シールドは、伝送線路の各接地導体の第1の部分を覆うように構成された自己整合可撓性シールドを備えてもよく、それぞれの接地導体と実質的に同じ方向に相応に屈曲しながらそれぞれの信号導体からの公称距離を維持するように構成されてもよい。
【0009】
本発明の実施形態では、各可撓性シールドは、銅合金などの金属合金を備えてもよく、あるいは非金属材料を備えてもよい。
【0010】
さらに、本発明のコネクタの各可撓性シールドは、剛性シールドの電気的接地セクションをそれぞれの伝送線路の接地導体に電気的に接続するように構成され得る。さらに、本発明のコネクタの各可撓性シールドは、接地導体の片持ちビームセクションから可撓性シールドの長さ方向部分を機械的に分離するように構成された、二次末端部分(たとえば、片持ちばね)を備えてもよい。
【0011】
本発明の実施形態では、上記および/または本明細書の他の場所に記載される本発明のコネクタは、電気的接地として動作し、伝送線路の各電気的接地導体の第2の部分を覆うように、構成され得る。
【0012】
このような例示的な剛性シールドは、それぞれのウエハのそれぞれの電気的接地導体と実質的に同じ方向への屈曲に抵抗するように、さらに構成され得る。
【0013】
例示的な剛性シールドは、たとえば、金属材料を備え得る。
【0014】
さらに、例示的なコネクタの各剛性シールドは、接地導体に機械的支持を提供するために、それぞれのウエハの接地導体のそれぞれの片持ちビームに接続され得る。
【0015】
本発明のコネクタの一部である本発明の剛性シールドは、上部および後部セクションを備えてもよく、このようなセクションは、それぞれのウエハの接地導体と整合するように構成されている。それぞれの上部および後部セクションをそれぞれのウエハの接地導体のそれぞれの片持ちビームセクションに接続するために、複数の溶接が使用されてもよい。
【0016】
上記および本明細書に記載されるコネクタに加えて、本発明は、高速コネクタ(たとえば、112Gビット)の一部として使用され得る自己整合可能な可撓性シールドも提供し、可撓性シールドは、ウエハの伝送線路の電気的接地導体と実質的に同じ方向に相応に屈曲しながら、伝送線路の電気的差分信号導体からの公称距離を維持するように構成されてもよい。
【0017】
可撓性シールドは、伝送線路のインピーダンスに影響を及ぼすために、伝送線路の差分信号導体の片持ちビームセクションからの公称距離を維持しながら、ウエハの接地導体の一部を覆うように構成された、長さ方向部分を備え得る。
【0018】
本発明によって提供される本発明の可撓性シールドは、8レーンスモールフォームファクタプラガブルコネクタを備えてもよく、金属合金(たとえば、銅合金)を備えるか、またはこれによって構成されてもよい。あるいは、本発明の可撓性シールドは、非金属材料を備えるか、またはこれによって構成されてもよい。
【0019】
本発明によって提供される可撓性シールドは、剛性シールドの電気的接地セクションを伝送線路の接地導体に電気的に接続するように構成されてもよく、可撓性シールドの長さ方向部分を接地導体の片持ちビームセクションから機械的に分離するように構成された二次末端部分(たとえば、片持ちばね)を備えてもよい。
【0020】
本発明のコネクタおよび可撓性シールドに加えて、本発明者らは方法を記載するが、そのうちのいくつかは、上記および本明細書の他の場所に記載される本発明のコネクタおよびシールドに相当し、これらを包含する。
【0021】
これらおよび追加の実施形態のさらなる説明は、図、図に含まれる注記、および以下に含まれる請求項の言語によって提供される。以下に含まれる請求項の言語は、拡張された形式で、つまり、固有の独立した実施形態として記載される複数の従属請求項の参照によって示される各可能な組み合わせで、最も広いものから最も狭いものまで階層的に、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、例によって示されており、類似の参照番号が同様の要素を示す以下の添付図に限定されるものではない。
【0023】
【
図1】本発明の実施形態による、例示的なI/Oコネクタの図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による、例示的なI/Oコネクタの図を示す。
【
図3A】本発明の実施形態による、例示的なI/Oコネクタの図を示す。
【
図3B】本発明の実施形態による、例示的なI/Oコネクタの図を示す。
【
図4A】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの斜視図を示す。
【
図4B】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの斜視図を示す。
【
図5A】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの構成を示す。
【
図5B】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの構成を示す。
【
図5C】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの構成を示す。
【
図5D】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの構成を示す。
【
図5E】本発明の実施形態による、例示的な自己整合可撓性シールドの構成を示す。
【
図6A】本発明の実施形態による、ウエハの接地(G)端子端セクションと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成された例示的な自己整合可撓性シールドの部分を示す。
【
図6B】本発明の実施形態による、ウエハの接地(G)端子端セクションと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成された例示的な自己整合可撓性シールドの部分を示す。
【
図6C】本発明の実施形態による、ウエハの接地(G)端子端セクションと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成された例示的な自己整合可撓性シールドの部分を示す。
【
図6D】本発明の一実施形態による、自己整合可撓性シールドの例示的な寸法を示す。
【
図6E】本発明の実施形態による、例示的なウエハの導電体の端子端セクションに接続された例示的な自己整合可撓性シールドの部分の説明図を示す。
【
図6F】本発明の実施形態による、例示的なウエハの導電体の端子端セクションに接続された例示的な自己整合可撓性シールドの部分の説明図を示す。
【
図7】本発明の実施形態による、例示的なコネクタの導電体の端子端セクションに機械的に固定され、電気的に接続された、モジュールPCBの側面図を示す。
【
図8A】本発明の実施形態による、例示的な剛性シールドを示す。
【
図8B】本発明の実施形態による、例示的な剛性シールドを示す。
【
図8C】本発明の実施形態による、例示的な剛性シールドを示す。
【
図9A】本発明の実施形態による、例示的な剛性シールドの成形品への締結、および例示的なコネクタのウエハを示す。
【
図9B】本発明の実施形態による、例示的な剛性シールドの成形品への締結、および例示的なコネクタのウエハを示す。
【
図10A】本発明の一実施形態による、例示的な可撓性シールドおよび剛性シールドの、例示的なウエハの接地(G)導体との例示的な接続、および互いの例示的な接続の側面図を示す。
【
図10B】本発明の一実施形態による、剛性シールドの一部分の、ウエハの部分との接続の断面図を示す。
【
図10C】本発明の一実施形態による、剛性シールドの一部分の断面図を示す。
【
図11】本発明の一実施形態による、剛性シールドの一部分を例示的なウエハの接地(G)導体に接続するために使用され得る例示的な溶接の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特定の実施形態は、様々な図およびスケッチを参照して以下に開示される。説明および図の両方とも、理解を深めることを目的として作成されている。たとえば、図中の要素のいくつかの寸法は、他の要素に対して誇張されている場合があり、あまり妨害されずより明確な実施形態の提示が達成され得るように、有用な、または商業的に成功する実施に必要でさえある既知の要素が示されない場合もある。さらに、本明細書に記載される寸法およびその他のパラメータは、単なる例示であって非限定的である。
【0025】
当該技術分野において既知のものを考慮して、当業者が本発明を作成、使用、および最もよく実践することを効果的に可能にするために、図および説明の両方における簡潔さおよび明確さが求められている。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される特定の実施の形態に対して様々な修正および変更がなされ得ることを、理解するだろう。したがって、明細書および図面は、限定的または完全に包括的というよりも説明的かつ例示的であると見なされるべきであり、本明細書に記載される特定の実施の形態に対するこのような修正の全ては、本発明の範囲に含まれることが意図される。さらに、以下の詳細な説明は、例示的な実施形態を記載し、明確に開示された組み合わせに限定されるように意図されないことが、理解されるべきである。したがって、別途記載されない限り、本明細書に開示される特徴は、簡潔にするために別途記載または図示されなかった追加の組み合わせを形成するために、互いに組み合わせられてもよい。
【0026】
本明細書および添付請求項で使用される際に、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」という用語、またはその他いずれかの変化形は、要素のリストを備えるプロセス、方法、製造品、または装置がこれらのリスト内の要素のみを含むのではなく、明確に列挙されていない、またはこのようなプロセス、方法、製造品、または装置に固有の他の要素を含み得るように、非排他的な包含を指すように意図される。本明細書で使用される「a」または「an」という用語は、1つまたはそれ以上として定義される。本明細書で使用される「複数」という用語は、2つまたはそれ以上として定義される。本明細書で使用される「別の」という用語は、少なくとも2番目以降のものとして定義される。本明細書で別途示されない限り、もしあれば、「第1」および「第2」、「上」、「下」、「後」などのような関係用語の使用は、必ずしもこのような物または動作間のこのような関係性、優先順位、重要性、または順序を必要とすることまたは暗示することなく、ある物または動作を別の物または動作と区別するためにのみ使用される。
【0027】
本明細書で使用される際に、「結合された(coupled)」という用語は、少なくともある導体の電流に関連付けられた電界のエネルギーが、ガルバニック接続されていない別の導体に印加されることを意味する。別の言い方をすると、「結合する(coupling)」という言葉は、機械的接続、ガルバニック電気接続、または電界媒介電磁相互作用のいずれかに限定されるものではないが、その意味が本明細書の特定の説明の文脈によって限定されない限り、1つ以上のこのような接続を含み得る。
【0028】
本明細書における「または」または「および/または」の使用は、包括的であり(A、B、またはCが3つの文字のいずれか1つ、いずれか2つ、または3つ全てを意味する)、排他的ではない(排他的であると明確に示されない限り)ように定義される。したがって、いくつかの事例における「および/または」の使用は、他のどこかでの「または」の使用が排他的であることを意味すると暗示するように解釈するべきではない。
【0029】
「示す」という言葉から派生する用語(たとえば、「示す(indicates)」および「表示(indication)」)は、示されているオブジェクト/情報を伝えるまたは参照するために利用可能な様々な技術を全て包含するように意図される。示されているオブジェクト/情報を伝えるまたは参照するために利用可能な技術の、全てではないがいくつかの例は、示されているオブジェクト/情報の伝達、示されているオブジェクト/情報の識別子の伝達、示されているオブジェクト/情報を生成するために使用される情報の伝達、示されているオブジェクト/情報の一部または部分の伝達、示されているオブジェクト/情報の派生物の伝達、および示されているオブジェクト/情報を表す何らかの記号の伝達を含む。
【0030】
本明細書で使用される際に、「含む(including)」および/または「有する(having)」という用語は、備える(すなわち、オープンな言語)として定義される。
【0031】
1つ以上の例示的な実施形態が方法として説明され得ることにも、留意すべきである。方法は例示的な順序で(すなわち、順次)説明され得るが、このような方法は、並行して、共起的に、または同時に実行されてもよいことが、理解されるべきである。加えて、方法内の各形成ステップの順序は、並べ替えられてもよい。記載される方法は、完了したときに終了することができ、たとえば、当業者によってそのようなステップが知られている場合、本明細書に記載されていない追加ステップを含むこともできる。
【0032】
本明細書で使用される際に、「実施形態」または「例示的」という用語は、本発明の範囲に含まれる例を意味する。
【0033】
ここで
図1を参照すると、本発明の一実施形態による例示的なI/Oコネクタ1が示されている。図示されるように、コネクタ1は、ホストプリント回路基板(PCB)2をモジュールPCB3に機械的および電気的に接続するように機能する、8レーンスモールフォームファクタプラガブル(OFSP)コネクタであり得る。実施形態では、コネクタ1およびPCB2、3の電気素子によって行われる伝送のデータレートは、たとえば、112Gビット毎秒(Gbps)であり得る。
【0034】
図2は、ハウジング10と、可撓性シールド4、6および剛性シールド5の両方が取り付けられたウエハ12と、可撓性シールドおよび剛性シールドの両方が取り付けられた別のウエハ11と、バンパ13とを備える、例示的なI/Oコネクタ1の分解図を示す。説明のみを目的として、ウエハ11は「第1」または「上部」ウエハと呼ばれることがあり、ウエハ12は「第2」または「下部」ウエハと呼ばれることがある。さらに、本発明のコネクタは、3つ以上のウエハを備えてもよく、ウエハの各タイプの2つ以上または各ウエハは、1つ以上の可撓性および/または剛性シールドに接続されてもよいことが、理解されるべきである。
【0035】
一実施形態では、バンパ13は、ウエハ11の移動を制限するように機能し得る。たとえば、バンパ13は、ウエハ11に取り付けられた剛性シールドのベースに力をかけることができる。一実施形態では、バンパは、たとえばプラスチックで構成されている。
【0036】
図3Aを参照すると、読者がコネクタ1の要素を見ることができるようにするために、ハウジング10が取り外された
図1のI/Oコネクタ1が示されている。図示されるように、上部ウエハ11の接地(G)および信号(S)導体の複数の電気端子端セクション11a~n(「n」は最後のセクションを示す)ならびに下部ウエハ12の接地(G)および信号(S)導体の電気端子端セクション12a~n(ただし後者は部分的にのみ示されている)がそれぞれ示されている。モジュールPCB3は、PCB3の上面の接地(G)および信号(S)導体の複数の端子端セクション11a~nとPCB3の底面の接地(G)および信号(S)導体の複数の端子端セクション12a~nとの間にモジュールPCB3を圧入または別途挿入することによって、コネクタ1に機械的および電気的に固定および接続され得る(
図7も参照)。一実施形態では、各端子端セクション11a~n、12a~nは、導電体の端子端を備えてもよく、4つの導体のセットは伝送線路と呼ばれ得る。一実施形態では、伝送線路を形成する4つの導体の各々が、接地(G)または信号(S)導体のいずれかとして機能するように動作可能である。一実施形態では、ウエハ11およびウエハ12は、複数の並列に配置された伝送線路を備えてもよく、各伝送線路は、2つの並列な信号導体および2つの並列な接地導体を備え、それぞれの電気端子端セクションは、モジュールPCB3と機械的および電気的に接続するために、G-S-S-G配置で構成されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、伝送線路は、インサート成形品で作られてもよい。さらに、図に示されるウエハ内の伝送線路の数および伝送線路のタイプは単なる例示であることが、理解されるべきである。したがって、ウエハは、必要なだけ多くのダブルエンドまたはシングルエンド伝送線路またはその他の線路を含むことができる。例示的なウエハの構造は、はんだ付け可能な要素の支持を提供するために、剛性であり得る。したがって、この目的のために別途使用され得るプラスチック支持体は必要とされない。さらに、このような剛性ウエハ構造は、端子端セクション12a~nがパドルカードまたはPCBに接触するときの支持を提供する。より詳細には、端子端セクション12a~n(すなわち、端子端)がパドルカードまたはPCBと接触する際に、良好な電気接続を保証するために、端子端セクション12a~nとパドルカードまたはPCBとの間の接触面のウエハの剛性によって、特定の最小の力が印加され得る。
【0038】
図3Bは、例示的なI/Oコネクタ1の背面図を示す。図示されるように、ウエハ11は、ホストPCB2の点にはんだ付けされ得る複数のテールセクション110a~nを備え得る。図示されていないが、ウエハ12のテールセクションも同様に、ホストPCB2の点にはんだ付けされ得る。一実施形態では、テールセクションの例示的な幅は250ミクロンであってもよく、各セクション間の間隔は0.6mm(すなわち、0.6mmピッチ)であってもよい。
【0039】
ここで
図4Aおよび
図4Bを参照すると、本発明の一実施形態による、例示的な自己整合可能な可撓性シールド4の斜視図が示されている。図示されるように、例示のシールド4は、シールド本体45によって接続された、「n」が最後の末端部分を表す、複数の端子端部分42a~n(部分42a~42eのみが示されている)と、複数の二次末端部分44a~nとを備え得る。また、
図4Aには、実質的にシールド4の本体45に対応する領域を一緒に構成する、シールド4のそれぞれ可撓性の縦方向および横方向部分の2つのインジケータp
1aおよびp
1bも示されている。別の言い方をすると、複数の可撓性の縦方向および横方向部分p
1aおよびp
1bが、シールド4の本体45の構成を作成する。より詳細には、1つの縦方向部分p
1aが、部分42aの縦方向末端から部分44aの縦方向末端まで延在し、部分42a(たとえば、端子の末端)の幅と実質的に等しい幅を有し、その一方で、横方向部分p
1bは、部分42aの下部横方向末端から部分の上部横方向末端まで延在することができる。
図6Dは、本発明のシールド4のいくつかの例示的な寸法を提供する。これらの部分のより詳細な議論は、本明細書の他の場所に明記される。
【0040】
ここで
図5A~
図5Eを参照すると、例示的な自己整合可撓性シールド4、6の構成が示されており、各シールド4、6は、下部ウエハ12の導体内の接地導体の第1の部分を覆うように構成され得る。伝送線路を構成する導体およびその一体型端子端セクション12a~nは、たとえば、例示的な、片持ちビーム構造の導体として構成され得る。
【0041】
本明細書でより詳細に説明されるように、たとえばシールド4などの、本発明によって提供される可撓性シールドは、比較的薄くてもよく(
図6Dの例示的な寸法参照)、ウエハの接地導体の接地(G)端子端セクションが屈曲しながら信号導体のそれぞれの信号(S)端子端セクションからの公称距離を維持するのと実質的に同じ方向で実質的に同時に、相応に曲がり、偏向し、または屈曲(まとめて「屈曲」)するように構成され得る。たとえば、シールド4は、複数の端子端セクション12a~nに接続されてもよく、残りの接触端セクション12a~nに力を印加することなく接地(G)端子端セクション12a~nのうちの1つ以上が屈曲するときに、屈曲することができる。
【0042】
本発明の実施形態では、本発明の可撓性シールドは、銅合金(たとえば、C70250またはC70252)などの金属合金で構成され得る。
【0043】
実施形態では、本発明によって提供される可撓性シールドは、接地(G)導体の端子端セクションを互いに機械的および電気的に接続し(シールド4がセクション12a、dを接続している
図6A参照)、剛性シールド5の接地(G)セクションを接地導体に電気的に接続するように(剛性シールドの接地セクション51a、52aがウエハ11、12の二次末端セクション43a、44a(たとえば、ばね状の変形可能末端セクション)によって接地(G)導体の片持ちビームセクション120a、130aに電気的に接続されている
図7参照)、機能し得る。
【0044】
加えて、本発明の可撓性シールドのさらなる機能は、シールドが覆っているそれぞれのウエハの伝送線路の導体を、隣接ウエハの伝送線路からの電磁干渉(EMI)(たとえば、クロストーク)から遮蔽すること、および所与のウエハの電気的接地(G)の全体的なインピーダンスを調整するかまたは別途これに寄与することである。
【0045】
代替の実施形態では、金属合金で構成されるのではなく、本発明の可撓性シールドは、電気伝導のために非金属材料で構成されてもよい。このような実施形態では、シールドが、伝送線路の接地導体を互いに接続するように依然として機能できることが期待されるが、EMIから伝送線路の導体を遮蔽する能力は低下すると予想される。
【0046】
図5Dは、ウエハ12の接地(G)、端子端セクション12aと整合し、電気的および機械的に接触しているシールド4の端子端部分42aを示す、
図5Bの拡大バージョンを示す。図示されるように、部分42aは、開放された長方形として成形されている。しかしながら、部分42aの形状は、開放された長方形である必要はない。むしろ、部分42aは、特定のウエハの特定の接地(G)、端子端セクションの形状と機械的および電気的に接触するように形成されてもよい。
図5Bおよび
図5Dは、接地(G)、端子端セクション12aに整合されているが固定されていない部分42aを示しており、
図5Cおよび
図5Eは、接地(G)、端子端セクション12aに整合および固定された部分42aを示している。
【0047】
より詳細には、一実施形態では、シールド4がウエハ12上に整合された後(本明細書でさらに説明される)、整合部分42a~nの各々は、(i)ウエハ12上に整合された後にシールド4が移動するのを防止するため、(ii)端子端セクション12a~n間の所望の間隔を維持するのを支援するため、ならびに(iii)ウエハ12のそれぞれの接地(G)、端子端セクション12a~nとの確実な機械的および電気的接続を行うために圧着され得るが、圧着が、シールド4の移動を防止して可撓性シールドの部分をウエハの接地(G)、端子端セクションに機械的および電気的に固定するための唯一の手段または方法であることは、理解されるべきである。
【0048】
ウエハ11の接地(G)、端子端セクション11a~nはセクション12a~nのように下向きではなく上向きに曲げられて圧着されているが、例示的な可撓性シールドは、上部ウエハ11上に同様に構成され得ることが、理解されるべきである。
【0049】
本発明の実施形態では、本発明の可撓性シールドの部分は、ウエハの接地(G)要素と電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成されており、ウエハの信号(S)要素と接触するようには機能しない。たとえば、ここで
図6A~
図6Cを参照すると、ウエハ12の接地(G)、端子端セクション12a、d、gと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成され、ウエハ12の信号(S)、端子端セクション12b、c、e、fとはそのように接触しない、シールド4の部分42a、b、cが示されている。
【0050】
図6Aは、例示的な可撓性シールド4の拡大図を示す。図示されるように、シールド4の一端の部分42a、bは、ウエハ12の接地(G)、端子端セクション12a、dと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成されており、ウエハ12の信号(S)、端子端セクション12b、cとはそのように接触しない。シールド4の反対端は、剛性シールドの電気的接地(G)セクション(
図6Aには図示せず)と電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成された二次末端部分44a~nを備える。
【0051】
図6Bおよび
図6Cは、ウエハ12の信号(S)、端子端セクション12e、f、と接触することなく圧着を介してウエハ12の接地(G)、端子端セクション12d、gと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成されたシールド4の一端の部分42b、cの図を示す。
【0052】
図6Dは、本発明の一実施形態による可撓性シールド4の例示的な寸法を示し、
図6Dに示される寸法の各々は、シールドが接続される伝送線路の接地導体の構成に対応するように修正され得ることが理解される。
【0053】
ここで
図6Eおよび
図6Fを参照すると、各々がシールド4の部分42a、bを受容するためのくぼみ420a、dを含むように形成された接地(G)、端子端セクション12a、dをそれぞれ示す、上面図および底面図が示されている。くぼみは、シールド4の対応する部分42a、b(およびシールド4自体)が移動するのを防止するのを助けるように、さらに機能する。
【0054】
ここで
図7を参照すると、モジュールPCB3をセクション11a、12aの間に圧入または別途挿入することによって、PCB3の上面の端子端セクション11aおよびPCB3の底面の端子端セクション12aに機械的に固定され、電気的に接続された、モジュールPCB3の側面図が示されている。各端子端セクション11a~n、12a~nのうちの1つのみが示されているが、各端子端セクション11a~nおよび12a~nが同様にモジュールPCB3との機械的および電気的接続を行えることは、理解されるべきである。
【0055】
図7はまた、上部ウエハ11の接地(G)、端子端セクション11aと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成されたシールド6の一端の部分41aと、下部ウエハ12の接地(G)、端子端セクション12aと電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成されたシールド4の一端の部分42aとを示している。さらに、図示されるように、シールド4、6の反対端は、各々が剛性シールドの接地セクションの末端51a、52aと、それぞれ接地導体の片持ちビームセクション120a、130a(
図7には図示せず)と、電気的および機械的に接触するような機能を有するように構成された、二次末端部分44a、43aをそれぞれ備える。
【0056】
図7は接地導体との可撓性シールド4、6の接続を示しているが、本発明によって提供される本発明の可撓性シールドの追加の機能および特徴を説明するために、
図7を利用する。本発明の実施形態によれば、シールド4、6は、ウエハ12の伝送線路の接地(G)導体12a~nのそれぞれの部分(すなわち、第1の部分)を覆う。差分信号(S)導体を含む伝送線路の所望のインピーダンスおよび結果的な反射損失を提供するために(やはり
図7には図示されないが、たとえば
図6Bのセクション12b、cを参照されたい)、各シールド4、6の長さ方向の縦方向部分p
1Aは、たとえば、伝送線路のインピーダンスに影響を及ぼすために、伝送線路の差分信号(S)導体の対応するペアの電気信号(S)導体の片持ちビームセクションから公称距離d
1 (たとえば、公称値で0.15ミリメートル)で構成され得る。
【0057】
一実施形態では、可撓性シールド4、6の二次末端部分43a、44a(たとえば、対向する片持ちばね)は、伝送線路に所望の反射損失を提供するために、差分信号(S)導体の対応するペアの各信号(S)導体の片持ちビームセクションからの、それぞれのシールド4、6の各長さ方向部分p1Aの機械的分離を支援するように機能し得る。したがって、シールド4、6は、所望のコモンモード基準として機能し得る。
【0058】
より一般的には、本発明の実施形態では、特定の可撓性シールドの各長さ方向の縦方向部分p1Aは、伝送線路に所望のインピーダンスおよび結果的な反射損失を提供するために、差分信号(S)導体の対応するペアの信号(S)導体の対応する片持ちビームセクションから公称距離d1 で構成され得る。別の言い方をすると、コネクタの所与の伝送線路の所望のインピーダンスまたはその関連する反射損失に基づいて、シールドは、差分信号(S)導体の対応するペアの各信号(S)導体の対応する片持ちビームセクションから指定された距離d1 だけ離れて構成されることが可能であり、距離d1 は、このようなインピーダンス/反射損失を達成する。
【0059】
図7では円形または楕円形として示されているが、伝送線路に所望のインピーダンス/反射損失を提供するために、代替形状が差分信号(S)導体の対応するペアの信号(S)導体の片持ちビームセクションからそれぞれのシールドの長さ方向の縦方向部分p
1aを機械的に分離するように機能するならば、二次末端部分43a、44a(たとえば、対向する片持ちばね)がこのような代替形状で構成および形成されてもよいことは、理解されるべきである。
【0060】
図7は側面図を示すことに留意すべきである。したがって、実際の長さ方向部分p
1Aは、可撓性シールド4の領域の1つの可撓性の縦方向部分を表す。
図4Aの議論において先に記載されたように、p
1aは、可撓性シールド4の可撓性の本体45に実質的に対応する領域を構成する、多くの可撓性の縦方向部分のうちの1つである。
【0061】
インピーダンスの影響に加えて、本発明の可撓性シールドは、本発明によって提供されるコネクタの共振周波数およびクロストーク性能に影響を及ぼすと考えられている。
【0062】
より詳細には、可撓性の縦方向部分p1Aは、ウエハの導体を通って伝導される信号の経路の縦方向に、応答性の電磁空洞を作り出すと言うことができる。特に、本発明の実施形態では、シールド4の縦方向部分p1Aの長さが漸進的に短くなるので、対応する結果的な空洞によって生成され得る共振周波数モードは、漸進的に周波数を増加させると考えられている。
【0063】
以下により詳細に記載されるように、機械的溶接の近接性の増加(
図10Aの溶接600a~600d参照)もまた、このような空洞内で共振周波数をより高い周波数にシフトさせることになると考えられている。
【0064】
さらに、本発明者らは、図に示され、本明細書に記載される、可撓性シールド4、6が、たとえばウエハ11、12の信号(S)導体間のクロストークを改善することを見出した。より詳細には、横方向可撓性部分p1bは、シールド4によって覆われた差分信号(S)導体との近接場境界を有する近接ファラデーケージを作り出す。
【0065】
前述のように、本発明の可撓性シールドおよび対応する横方向可撓性部分p1bは、これらが取り付けられた伝送線路の対応する接地(G)導体が屈曲する際に、屈曲する。したがって、この屈曲能力により、それぞれの可撓性シールドは、伝送線路の信号(S)導体によって生成された電界のエネルギーを低減する電磁境界を作り出してこれを維持することができ、これにより、このような電界の成分と隣接ウエハ内の伝送線路の差分信号導体との有害な結合を制限する。
【0066】
ここで
図8A~
図8Cを参照すると、それぞれ上部および後部セクション53a、53bを備える第2のシールド5が示されている。一実施形態では、シールド5全体が電気的接地(G)と見なされ得る。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、シールド5は剛性シールドを備え得る。本発明の可撓性シールドと比較して、たとえばシールド5など、本発明によって提供される本発明の剛性シールドは、可撓性シールドよりも寸法的に厚く、これらが取り付けられたウエハの接地(G)導体(すなわち、片持ちビームセクション120a、130a)と実質的に同じ方向で実質的に同時に屈曲に抵抗するように、構成され得る。本発明の実施形態では、剛性シールドは、銅合金(たとえば、C70250またはC70252)などの金属材料で構成され得る。あるいは、剛性シールドはプラスチックで構成されてもよい。剛性シールドが金属合金で構成されているとき、これらは金属スタンピングプロセスを用いて作成され得る。
【0068】
各実施形態では、本発明の剛性シールドは、電気的接地導体の各々の第2の部分を覆うように構成されてもよく(すなわち、可撓性シールドが第1の部分を覆う)、ウエハの接地(G)導体の片持ちビームに接続されてもよく、これにより、接地導体に機械的支持を提供し、反りおよびその他の外力に耐える複合構造を提供するように機能する。
【0069】
図示されるように、上部セクション53aは、複数の開口部56a~nを備えてもよく、開口部56a~nの各々は、たとえばプラスチック(たとえば、液晶ポリマーまたは「LCP」などの高温熱可塑性物質)で構成された変形可能なペグまたはポストなどの、第1の成形品54aの締結構造55a~nを整合可能に受容するように機能する。構造55a~nと開口部56a~nとの組み合わせは、シールド50の上部セクション53aを第1の成形品54aの上部と整合させるように機能することができ、これにより、以下により詳細に記載されるように、上部セクション53aをウエハ12の接地導体と整合させる。一実施形態では、構造55a~nは、第1の成形品54aの一部であり得る。
【0070】
引き続き
図8Aおよび
図8Bを参照すると、一実施形態では、シールド5の後部セクション53bは、後部セクション53bが移動してウエハ12の接地導体と整合する前にシールド5の上部セクション53aが第1の成形品54aおよびウエハ12の接地導体と整合できるようにするために、上部セクション53aに対してx度の初期反時計回り鈍角(たとえば、115度、または上部セクション53aに対して直角の幾何学的平面から25度の反時計回り)で構成される可動セクションであってもよく、こうしてシールド5の上部および後部セクション53a、53bの両方を同時に整合させる必要性を排除する。一実施形態では、後部セクション53bがウエハ12の接地導体との整合位置に移動すると、以下に記載されるように接続されるまでそこに留まる。
【0071】
上部セクション53aを整合すると、後部セクション53bは整合され得る。
図8Cを参照すると、一実施形態では、後部セクション53bは、複数の開口部58a~nを備えてもよく(開口部58a~nは構造57a~nの下に示されている)、開口部58a~nの各々は、たとえば、プラスチック(たとえば、液晶ポリマーまたは「LCP」などの高温熱可塑性物質)で構成された変形可能なペグまたはポストなどの、第2の成形品54bの第2の締結構造57a~nを受容するように機能する。構造57a~nと開口部58a~nとの組み合わせは、シールド5の後部セクション53bを第2の成形品54bと整合させるように機能することができ、これにより、以下により詳細に記載されるように、後部セクション53bをウエハ12の接地導体と整合させる。一実施形態では、構造57a~nは、第2の成形品54bの一部であり得る。
【0072】
上記の議論は後部セクション53bを整合する前に締結するためにシールド5の上部セクション53aを整合することに焦点を当てているが、これは例示に過ぎないことが理解されるべきである。あるいは、後部セクション53bは、上部セクション53aより先に締結するために整合されてもよい。いずれの場合も、変形可能な構造と開口部との組み合わせは、成形品54a、b上のシールド4、5の上部および後部セクション53a、bの両方を自己整合させるように機能し、これにより、上部および後部セクションをウエハ12の接地導体と整合させる。このため、シールド4、5は「自己整合可能」または「自己整合型」であると言うことができる。
【0073】
続いて、シールド5のセクション53a、53bが上記のように整合および位置決めされた後、これはそれぞれの成形品54a、bに締結され得る。
図9Aおよび
図9Bを参照すると、ウエハ12に接続された成形品54a、bとのシールド5の上部および後部セクション53a、bの締結が示されている。
【0074】
図9Aでは、たとえば、シールド5の開口部56a~nによって受容された第1の成形品54aの変形可能な締結構造55a~nの各々は、以下により詳細に記載されるように、たとえば、やはりウエハ12の接地導体に接続された第1の成形品54aにシールド5の上部セクション53aをしっかりと締結するためにそれぞれの開口部56a~nの直径の値よりも大きい値にこのような構造55a~nの末端の直径を増加させるために、それぞれの開口部56a~nを通過した後、熱かしめプロセスによって変形(すなわち平坦化または「キノコ状にする」)され得る(すなわち、変形末端が開口部よりも広くなる)。一実施形態では、成形品54aは、たとえば溶接を可能にするために、周囲の構造および中央の開口部を有するボックスとして構成され得る(
図10A参照)。
【0075】
1つの例示的な熱かしめプロセスは、このような構造55a~nの末端の直径をそれぞれの開口部56a~nの直径の値よりも大きい値に増加させるように各末端を変形(すなわち、溶融)させるために、構造55a~nの各末端を加熱するパルスレーザーを利用し得る。
【0076】
後部セクション53bも同様に、しっかりと形作られる。たとえば、
図9Bを参照すると、シールド5の開口部58a~n(開口部58a~nは構造57a~nの下に示されている)によって受容された第2の成形品54bの変形可能な締結構造57a~nの各々は、たとえば、やはりウエハ12の接地導体に接続された第2の成形品54bにシールド5の後部セクション53bをしっかりと締結するためにそれぞれの開口部58a~nの直径の値よりも大きい値にこのような構造57a~nの末端の直径を増加させるために、それぞれの開口部58a~nを通過した後、熱かしめプロセスによって変形(すなわち平坦化または「キノコ状にする」)され得る(すなわち、変形末端が開口部よりも広くなる)。先に説明されたように、1つの例示的な熱かしめプロセスは、このような構造57a~nの末端の直径をそれぞれの開口部58a~nの直径の値よりも大きい値に増加させるように各末端を変形(すなわち、溶融)させるために、構造57a~nの各末端を加熱するパルスレーザーを利用し得る。
【0077】
本発明の一実施形態では、本発明の剛性シールドは可撓性シールドとは幾何学的に異なるように構成され得るが、剛性シールドは同様にウエハ11に接続され得る。
【0078】
例示的な可撓性および剛性シールドを説明してきたが、ここで2つのシールドをウエハの接地(G)導体に接続するように機能する例示的な接続の議論に移る。
【0079】
ここで
図10Aを参照すると、可撓性シールド4および剛性シールド5の、ウエハの接地(G)導体との、および互いの、例示的な接続の側面図が示されている。
図10Aは、ウエハ12の接地導体の1つの片持ちビームセクション120a~nおよび端子端セクション12aとのシールド4、5の接続のみを示しているが、シールド4、5はウエハ12の接地(G)導体の実質的に全てに同様に接続され得ることが理解されるべきである。
【0080】
特に、剛性シールド5の上部および後部セクション53a、bは、成形品54a、b、変形可能な構造55a、57a、開口部54a、56a(
図10Aではラベル付けされず)、および複数の溶接600a~dの組み合わせを使用して、ウエハ12の接地(G)導体の片持ちビームセクション120a~nにしっかりと接続され得る。一実施形態では、成形品54aは、たとえば溶接を可能にするために中央に開口部を有するボックス状の構造を備える。
【0081】
さらに、
図10Aは4つの溶接600a~dを示しているが、接地導体との剛性シールドの接続の完全性が達成されていれば、より多いかまたは少ない溶接が利用され得ることは、理解されるべきである。
図10Aはまた、接地(G)導体の片持ちビームセクション120aと電気的および機械的に接触し、剛性シールド5の末端52aと接触するような機能を有するように構成された、可撓性シールド4の二次末端部分44aも示している。
【0082】
剛性シールドを接地導体の片持ちビームセクションに接続することにより、溶接は、対応するウエハと剛性シールドとの結果的な組み合わせに機械的強度を加えるように機能する。さらに、溶接は、接地導体の複数の片持ちビームセクションを剛性シールドに接続する溶接が共通接地構造を作り出すという事実により、電気共振を低減する。このような共通接地構造は、導体内の信号を電磁干渉から遮蔽し、シグナルインテグリティを向上させる、コネクタを横切る電気ブリッジとして機能する(たとえば、共振は、本明細書に記載されるように、ウエハおよびシールドを接続することによって改善および制御され得る)。
【0083】
本発明の実施形態では、各溶接600a~dは、溶接を溶融してそれぞれの片持ちビームセクション120a~nおよび剛性シールド5の対応する部分にするために溶接に対してレーザー光の収束ビームを印加することによって、形成され得る。
図11は、例示的な溶接600aが剛性シールドの一部分と片持ちビームセクションとの間に作り出され得る例示的な溶接位置の拡大図の図を示す。例示的な実施形態では、溶接の直径は0.16mmであり得る。しかしながら、溶接の直径が異なってもよい(たとえば、0.2mm径)ことは、理解されるべきである。
【0084】
ここで
図10Bを参照すると、たとえば、ウエハの片持ちビーム部分120bおよび123bとの剛性シールド5の部分500a、bの接続の断面図が示されている。特に、剛性シールド5の部分は、たとえば、溶接600b、600cを使用してウエハ12の接地(G)導体の片持ちビーム部分120bおよび123bにしっかりと接続されている。差分信号(S)導体の片持ちビームセクション121b、122bを含む伝送線路に所望の静電容量を提供するために、剛性シールド5の部分500a、bは、信号(S)導体のそれぞれの片持ちビームセクション121b、122bから公称距離d
2 であるべきであり、剛性シールド5の長さ方向部分p
2 は、差分信号(S)導体の対応するペアの信号(S)導体の片持ちビームセクション121b、122bから公称距離d
3 で配置され得る。たとえば、一実施形態では、許容可能な静電容量を提供するために、距離d
2 、d
3 はそれぞれ0.16mmおよび0.29mm(公称)であり得る。
【0085】
より一般的には、本発明の実施形態では、伝送線路に所望の静電容量および結果的な電圧を提供するために、剛性シールドの部分は、差分信号(S)導体の対応するペアの信号(S)導体のそれぞれの片持ちビームセクションから公称距離d2 であるべきであり、特定の剛性シールドの長さ方向部分p2 は、差分信号(S)導体の対応するペアの信号(S)のそれぞれの片持ちビームセクションから公称距離d3 であるべきである。
【0086】
シールド5が複数の部分p2 で構成されることは、理解されるべきである。
【0087】
本発明によって提供される本発明の可撓性シールドと同様に、本発明の剛性シールドもまた、本発明のコネクタ1の共振およびクロストーク性能に影響を及ぼし得る。
【0088】
より詳細には、部分p2 は、ウエハの導体を通って伝導される信号の経路の縦方向に、応答性の電磁空洞を作り出すと言うことができる。特に、本発明の実施形態では、シールド5の縦方向部分p2 の長さが漸進的に短くなるので、対応する結果的な空洞によって生成され得る共振周波数モードは、漸進的に周波数を増加させると考えられている。
【0089】
以下により詳細に記載されるように、機械的溶接の近接性の増加(
図10Aの溶接600a~600d参照)もまた、このような空洞内で共振周波数をより高い周波数にシフトさせることになると考えられている。
【0090】
さらに、本発明者らは、図に示され、本明細書に記載される、剛性シールド5が、たとえばウエハ11、12の信号(S)導体間のクロストークを改善することを見出した。より詳細には、シールド5の横方向可撓性部分(
図10Bには図示されないが、
図8Cを参照されたい)は、シールド5によって覆われたウエハ12の所与の伝送線路の差分信号(S)導体との近接場境界を有する近接ファラデーケージを作り出し、これにより、このような電界の成分とウエハ11などの隣接ウエハ内の伝送線路の差分信号導体との有害な結合を制限する。
【0091】
図10Cは、本発明の一実施形態による、剛性シールド5の一部分601の断面図を示す。部分601はプラスチックを備えてもよく、シールド5およびコネクタ1の要素を機械的に支持し、このような要素を一緒に保持するように機能し得る。さらに、部分601は、コネクタ1の要素を互いに電気的に絶縁するように機能し得る。より具体的には、部分601は、以下の間の電界、ひいては以下の間の電圧および静電容量に影響を及ぼすようにさらに機能する誘電定数を有する誘電材料で作成され得る;(i)信号導体121b、122b、(ii)信号および接地導体120b、121bと122b、123b、(iii)剛性シールド5とその下の信号および接地導体120bから123b。
【0092】
本発明の特定の実施形態に関して利益、利点、および問題の解決策が上記で説明されてきたが、このような利益、利点、および解決策、ならびにこのような利益、利点、または解決策を生じるまたは引き起こす可能性のある、もしくはこのような利益、利点、または解決策をより顕著にする任意の要素は、本開示に添付される請求項のいずれかまたは全ての、もしくは本開示から生じる、重大な、必要な、または欠くことのできない特徴または要素として解釈されるべきではないことが、理解されるべきである。