(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】部品実装システムおよび学習装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20230406BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/08 D
(21)【出願番号】P 2021529658
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2019026655
(87)【国際公開番号】W WO2021001996
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 光孝
(72)【発明者】
【氏名】大山 茂人
(72)【発明者】
【氏名】成田 春菜
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025481(JP,A)
【文献】特開2011-145958(JP,A)
【文献】特開2017-033979(JP,A)
【文献】特開2018-097731(JP,A)
【文献】特開平10-041700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送方向に並ぶと共に基板を撮像する撮像装置をそれぞれ有する複数の部品実装機を備える部品実装システムであって、
部品を実装する実装動作を行なう前の部品実装前基板と前記実装動作を行なった後の部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、
検査対象の部品が無い部品無しを教師データとして前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に
検査対象の部品が写っているか否かの部品有無の教師データを取得すると共に該取得した
部品有無の教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを生成する学習装置と、
前記部品実装後基板を前記撮像装置で撮像し、前記部品検査用の学習データを用いて前記部品実装後基板の撮像画像において
検査対象の部品を認識する画像処理を行な
って当該部品の認識の成否を判定することで前記部品実装後基板の検査を行なう検査装置と、
を備える部品実装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の部品実装システムであって、
前記学習装置は、所定の再学習条件が成立した場合には、前記部品実装前基板と前記部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、
前記部品無しを教師データとして前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく
前記部品有無の教師データを再取得すると共に該再取得した
部品有無の教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを再生成し、前記部品実装後基板の識別情報または該部品実装後基板に実装された部品の識別情報と関連付けて前記再生成した部品検査用の学習データを記憶装置に記憶し、
前記検査装置は、前記部品実装後基板を前記撮像装置で撮像し、前記部品実装後基板の識別情報または該部品実装後基板に実装された部品の識別情報を取得すると共に該取得した識別情報に対応する部品検査用の学習データを前記記憶装置から読み出し、該読み出した部品検査用の学習データを用いて前記部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行な
って当該部品の認識の成否を判定することで前記部品実装後基板の検査を行なう、
部品実装システム。
【請求項3】
請求項2に記載の部品実装システムであって、
前記再学習条件は、オペレータにより指示された場合、基板のロットが切り替わった場合、実装する部品のロットが切り替わった場合、前回に学習を実行してから所定時間が経過した場合または生産ジョブが変更された場合に成立する条件である、
部品実装システム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の部品実装システムであって、
前記学習装置は、所定の追加学習条件が成立した場合には、前記部品実装前基板と前記部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、
前記部品無しを教師データとして前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて追加学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく
前記部品有無の教師データを再取得すると共に該再取得した
部品有無の教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて追加学習を行なって前記部品検査用の学習データを更新する、
部品実装システム。
【請求項5】
請求項4に記載の部品実装システムであって、
前記追加学習条件は、オペレータにより指示された場合、基板のロットが切り替わった場合、実装する部品のロットが切り替わった場合、前回に学習を実行してから所定時間が経過した場合または生産ジョブが変更された場合に成立する条件である、
部品実装システム。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載の部品実装システムであって、
前記検査装置は、前記部品実装後基板の検査として、前記部品実装後基板に検査対象の部品が実装されているか否かを判定する、
部品実装システム。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項に記載の部品実装システムであって、
前記部品実装機は、前記部品を採取可能なヘッドと、前記ヘッドを移動させるヘッド移動装置と、を備え、
前記撮像装置は、前記ヘッド移動装置によって前記ヘッドと共に移動可能に設けられている、
部品実装システム。
【請求項8】
部品を基板に実装する実装動作を行なう複数の部品実装機を備え、前記実装動作を行なった後の基板の撮像画像に対し部品検査用の学習データを用いて検査対象の部品を認識する画像処理を行なって当該部品の認識の成否を判定することで当該基板の検査を行なう部品実装システムに用いられ、前記部品検査用の学習データを生成する学習装置であって、
前記画像処理に先立って、前記実装動作を行なう前の部品実装前基板と前記実装動作を行なった後の部品実装後基板とを取得し、検査対象の部品が無い部品無しを教師データとして前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に検査対象の部品が写っているか否かの部品有無の教師データを取得すると共に該取得した部品有無の教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって前記部品検査用の学習データを生成する、
学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品実装システムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1台又は複数台の部品実装機を含む部品実装ラインと、部品実装ラインの基板搬出側に設置され回路基板に実装した各部品の実装状態の良否を判定する外観検査装置と、部品実装ラインのネットワークに接続され学習処理に用いる教師データの収集及び学習を行なう学習用コンピュータと、を備える部品実装システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。各部品実装機の制御装置は、生産中に撮像対象を撮像した低解像度画像から高解像度画像を推定する再構成型超解像処理部と、生産中に学習用コンピュータの学習処理の学習結果に基づいて部品を撮像した低解像度画像から高解像度画像を推定する学習型超解像処理部とを有する。各部品実装機の制御装置は、学習用コンピュータの学習処理が完了するまでは再構成型超解像処理により高解像度画像を推定すると共に推定した高解像度画像を処理して部品を認識する。一方、各部品実装機の制御装置は、学習用コンピュータの学習処理が完了した後は、学習型超解像処理に切り替えて高解像度画像を推定すると共に推定した高解像度画像を処理して部品を認識する。また、各部品実装機の制御装置は、学習型超解像処理の実行期間中に、教師データの学習結果を更新する必要があると判断したときに、再構成型超解像処理に切り替えて高解像度画像を推定すると共に、学習結果の更新要求を学習用コンピュータへ送信する。そして、各部品実装機の制御装置は、更新要求を受信した学習用コンピュータが教師データを再収集すると共に再学習して教師データの学習結果を更新してその学習処理を完了すると、再構成型超解像処理から学習型超解像処理に切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品実装システムにおいて、実装動作を行なった後の基板(部品実装後基板)を撮像し、その撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで当該部品実装後基板の検査を行なう場合、部品実装後基板の品質を確保するために、当該検査は適切に行なわれなければならない。
【0005】
本開示は、教師データに基づいて機械学習により生成される学習データを用いて部品実装後基板の撮像画像に画像処理を施して当該部品実装後基板の検査を行なう場合に、当該検査を適切に行なって部品実装後基板の品質を確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の部品実装システムは、
基板搬送方向に並ぶと共に基板を撮像する撮像装置をそれぞれ有する複数の部品実装機を備える部品実装システムであって、
部品を実装する実装動作を行なう前の部品実装前基板と前記実装動作を行なった後の部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを取得すると共に該取得した教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを生成する学習装置と、
前記部品実装後基板を前記撮像装置で撮像し、前記部品検査用の学習データを用いて前記部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで前記部品実装後基板の検査を行なう検査装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の部品実装システムは、学習装置と検査装置とを備える。学習装置は、部品実装前基板と部品実装後基板とを撮像し、部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを取得すると共に取得した教師データと部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを生成する。検査装置は、部品実装後基板を撮像し、部品検査用の学習データを用いて部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで部品実装後基板の検査を行なう。このように、部品実装前基板および部品実装後基板のそれぞれの撮像画像に基づいて部品検査用の学習データを生成することで、部品実装後基板の撮像画像から部品を認識する際の認識精度を高めることができる。この結果、部品実装後基板の検査を適切に行なってその品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の部品実装システム1の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】部品実装機10の制御装置60と管理装置80との電気的な接続関係を示す説明図である。
【
図4】部品実装処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】再学習実行条件成否判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】検査処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】変形例の学習処理を示すフローチャートである。
【
図9】追加学習実行条件成否判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の部品実装システム1の構成の概略を示す構成図である。
図2は、部品実装機10の外観斜視図である。
図3は、部品実装機10の制御装置60と管理装置80との電気的な接続関係を示す説明図である。なお、
図1,2中、左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
部品実装システム1は、
図1に示すように、印刷機2と、印刷検査機3と、複数台(例えば5台)の部品実装機10と、システム全体を管理する管理装置80と、を備える。印刷機2は、基板S上にはんだを印刷して回路パターンを形成する。印刷検査機3は、印刷機2で印刷されたはんだの状態を検査する。複数の部品実装機10は、部品を基板に実装する実装動作を行なうと共に基板に部品が実装されたか否かの実装検査を行なう。印刷機2と印刷検査機3と複数の部品実装機10とは、基板Sの搬送方向に並べて設置されて生産ラインを構成する。
【0013】
部品実装機10は、
図2に示すように、部品を供給する部品供給装置21と、基板を搬送する基板搬送装置22と、部品を吸着する吸着ノズルを有するヘッド40と、ヘッド40をX軸方向およびY軸方向に移動させるヘッド移動装置30と、実装機全体をコントロールする制御装置60(
図3参照)と、を備える。また、部品実装機10は、これらの他に、吸着ノズルに吸着させた部品の吸着姿勢を撮像するためのパーツカメラ23や、交換用の吸着ノズルを収容するノズルステーション24、基板Sを撮像するためのマークカメラ43なども備えている。
【0014】
部品供給装置21は、例えば、所定間隔で部品を収容したキャリアテープが巻回されたテープリールと、駆動モータの駆動によりテープリールからキャリアテープを引き出して部品供給位置まで送り出すテープ送り機構と、を備えるテープフィーダとして構成される。この部品供給装置21(テープフィーダ)は、部品実装機10が備える図示しないフィーダ台に着脱可能に取り付けられる。
【0015】
基板搬送装置22は、Y軸方向に間隔を空けて配置される一対のコンベアレールを備えており、一対のコンベアレールを駆動することにより基板を
図1の左から右(基板搬送方向)へと搬送する。
【0016】
ヘッド移動装置30は、
図2に示すように、一対のX軸ガイドレール31と、X軸スライダ32と、X軸アクチュエータ33(
図3参照)と、一対のY軸ガイドレール35と、Y軸スライダ36と、Y軸アクチュエータ37(
図3参照)と、を備える。一対のY軸ガイドレール35は、Y軸方向に互いに平行に延在するように筐体11の上段に設置される。Y軸スライダ36は、一対のY軸ガイドレール35に架け渡され、Y軸アクチュエータ37の駆動によりY軸ガイドレール35に沿ってY軸方向に移動する。一対のX軸ガイドレール31は、X軸方向に互いに平行に延在するようにY軸スライダ36の下面に設置される。X軸スライダ32は、一対のX軸ガイドレール31に架け渡され、X軸アクチュエータ33の駆動によりX軸ガイドレール31に沿ってX軸方向に移動する。X軸スライダ32にはヘッド40が取り付けられており、ヘッド移動装置30は、X軸スライダ32とY軸スライダ36とを移動させることで、ヘッド40をX軸方向とY軸方向とに移動させる。
【0017】
ヘッド40は、吸着ノズルをZ軸(上下)方向に移動させるZ軸アクチュエータ41(
図3参照)と、吸着ノズルをZ軸周りに回転させるθ軸アクチュエータ42(
図3参照)とを備える。ヘッド40は、吸着ノズルの吸引口に負圧源を連通させることで、吸引口に負圧を作用させて部品を吸着することができる。また、ヘッド40は、吸着ノズルの吸引口に正圧源を連通させることで、吸引口に正圧を作用させて部品の吸着を解除することができる。
【0018】
制御装置60は、
図3に示すように、CPU61を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU61の他に、ROM62と、HDD63と、RAM64と、入出力インタフェース65とを備える。これらは、バス66を介して電気的に接続されている。制御装置60には、X軸スライダ32の位置を検知するX軸位置センサ34からの位置信号や、Y軸スライダ36の位置を検知するY軸位置センサ38からの位置信号、マークカメラ43からの画像信号、パーツカメラ23からの画像信号などが入出力インタフェース65を介して入力されている。一方、制御装置60からは、部品供給装置21への制御信号や、基板搬送装置22への制御信号、X軸アクチュエータ33への駆動信号、Y軸アクチュエータ37への駆動信号、Z軸アクチュエータ41への駆動信号、θ軸アクチュエータ42への駆動信号、パーツカメラ23への制御信号、マークカメラ43への制御信号などが入出力インタフェース65を介して出力されている。また、制御装置60は、管理装置80と双方向通信可能に接続されており、互いにデータや制御信号のやり取りを行っている。
【0019】
管理装置80は、例えば、汎用のコンピュータであり、
図3に示すように、CPU81とROM82とHDD83とRAM84と入出力インタフェース85などを備える。これらは、バス86を介して電気的に接続されている。この管理装置80には、マウスやキーボード等の入力デバイス87から入力信号が入出力インタフェース85を介して入力されている。また、管理装置80からは、ディスプレイ88への画像信号が入出力インタフェース85を介して出力されている。HDD83は、基板Sの生産ジョブを記憶している。ここで、基板Sの生産ジョブには、各部品実装機10においてどの部品をどの順番で基板Sへ実装するか、また、そのように部品を実装した基板Sを何枚作製するかなどの生産スケジュールが含まれる。管理装置80は、オペレータが入力デバイス87を介して入力したデータに基づいて生産ジョブを生成し、生成した生産ジョブを各部品実装機10へ送信することで、各部品実装機10に対して生産の開始を指示する。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の部品実装システム1における部品実装機10の動作について説明する。特に、部品を基板Sに実装すると共に実装した部品の実装状態を検査する際の動作について説明する。
図4は、制御装置60のCPU61により実行される部品実装処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、管理装置80から生産ジョブを伴って生産開始が指示されたときに実行される。制御装置60は、生産開始が指示されると、管理装置80から受信した生産ジョブに従って部品実装処理を行なう。
【0021】
部品実装処理が実行されると、制御装置60のCPU61は、まず、基板Sが搬入されるよう基板搬送装置22を制御する(ステップS100)。続いて、CPU61は、後述する学習処理が実行中であるか否かを判定し(ステップS110)、学習処理が実行中であると判定すると、搬入した基板Sの上方にマークカメラ43が来るようヘッド移動装置30を制御すると共に当該基板Sを撮像するようマークカメラ43を制御して(ステップS120)、ステップS130に進む。これにより、部品が実装される前の基板の画像(部品実装前基板画像)が取得される。一方、CPU61は、学習処理が実行中でない(学習済み)と判定すると、ステップS120をスキップして、ステップS130に進む。
【0022】
次に、CPU61は、部品供給装置21の部品供給位置の上方に吸着ノズルが来るようにヘッド移動装置30を制御し、吸着ノズルに部品を吸着するようヘッド40を制御する吸着動作を行なう(ステップS130)。そして、CPU61は、吸着した部品が基板Sの目標実装位置の上方へ来るようにヘッド移動装置30を制御すると共に(ステップS140)、部品を基板Sの目標実装位置に実装するようヘッド40を制御する実装動作を行なう(ステップS150)。なお、ステップS140の処理は、吸着した部品がパーツカメラ23の上方を通過して目標実装位置の上方へ至るように行なわれる。CPU61は、吸着した部品がパーツカメラ23の上方を通過する際に当該部品を撮像し、得られた撮像画像に基づいて部品の吸着ずれ量を算出すると共に算出した吸着ずれ量に基づいて目標実装位置を補正する。CPU61は、こうして実装動作を行なうと、部品を実装した基板Sを撮像するようマークカメラ43を制御する(ステップS160)。これにより、部品が実装された後の基板の画像(部品実装後基板画像)が取得される。そして、CPU61は、当該基板Sが搬出されるよう基板搬送装置22を制御して(ステップS170)、本処理を終了する。
【0023】
次に、学習処理について説明する。学習処理は、部品の実装検査に用いられる学習データを作成する処理であり、本実施形態では、管理装置80によって所定時間毎に繰り返し実行される。
図5は、管理装置80のCPU81により実行される学習処理の一例を示すフローチャートである。学習処理は、上述した部品実装処理が実行されている間、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0024】
学習処理が実行されると、管理装置80のCPU81は、まず、学習が未完了であるか否かを判定する(ステップS200)。CPU81は、学習が未完了であると判定すると、部品実装前基板画像が取得されたか否かを判定する(ステップS210)。部品実装前基板画像は、上述したように、部品実装処理のステップS120において、基板Sに部品を実装する前に当該基板Sをマークカメラ43で撮像することにより取得される。CPU81は、部品実装前基板画像が取得されたと判定すると、部品無しを教師データとして部品実装前基板画像に基づいて機械学習(例えばサポートベクタマシン等)により部品検査用学習データを生成する(ステップS220)。ここで、部品検査用学習データの生成は、入力である部品実装前基板画像と出力である検査結果(部品無し)とをペアとして、基板画像と検査結果との関係を求めることにより行なわれる。
【0025】
次に、CPU81は、部品実装後基板画像が取得されたか否かを判定する(ステップS230)。部品実装後基板画像は、上述したように、部品実装処理のステップS160において、基板Sに部品を実装した後に当該基板Sをマークカメラ43で撮像することにより取得される。CPU81は、部品実装後基板画像が取得されたと判定すると、部品実装後基板画像をディスプレイ88に表示し、部品有無の教師データの入力を受け付け(ステップS240)、教師データが入力されるのを待つ(ステップS250)。オペレータは、ディスプレイ88に表示されている部品実装後基板画像中に検査対象となる部品が写っているか否かを判断し、部品が写っていると判断すれば、「部品有り」を入力し、部品が写っていないと判断すれば、「部品無し」を入力する。CPU81は、部品有無の教師データを入力すると、入力した教師データと部品実装後基板画像とに基づいて上述した機械学習により部品検査用学習データを生成(更新)すると共に(ステップS260)、教師データの取得数Nを値1だけインクリメントする(ステップS270)。部品検査用学習データの生成は、入力である部品実装後基板画像と出力である検査結果の教師データ(オペレータが入力した部品有無)とをペアとして、基板画像と検査結果との関係を求めることにより行なわれる。
【0026】
そして、CPU81は、教師データの取得数Nが所定数Nref以上であるか否かを判定する(ステップS280)。ここで、所定数Nrefは、学習データを用いた実装検査の精度を確保するために必要十分な数が定められる。CPU81は、教師データの取得数Nが所定数Nref未満であると判定すると、ステップS210に戻って、部品実装前基板画像や部品実装後基板画像に基づいて機械学習により部品検査用学習データを生成(更新)する処理を繰り返す。CPU81は、繰り返し処理においてステップS280で教師データの取得数Nが所定数Nref以上となったと判定すると、学習が完了したと判定して(ステップS290)、本処理を終了する。
【0027】
CPU81は、ステップS200において学習が完了していると判定すると、再学習実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS300)。CPU81は、再学習実行条件が成立していないと判定すると、本処理を終了し、再学習実行条件が成立していると判定すると、ステップS220,S260の学習履歴をクリアすると共に(ステップS310)、教師データの取得数Nを値0に初期化して(ステップS320)、ステップS210に進む。これにより、教師データの取得数Nが所定数Nref以上となるまで、再度、部品実装前基板画像と部品無しの教師データとに基づく学習(再学習)と、部品実装後基板画像と当該部品実装後基板画像を見たオペレータが入力した部品有無の教師データとに基づく学習(再学習)が実行されて部品検査用学習データが再生成されることになる。
【0028】
ここで、再学習条件が成立しているか否かの判定は、
図6の再学習実行条件成否判定処理を実行することにより行なわれる。再学習実行条件成否判定処理では、管理装置80のCPU81は、オペレータから再学習指示があるか否か(ステップS400)、基板Sのロットが切り替わったか否か(ステップS410)、基板Sに実装する部品のロットが切り替わったか否か(ステップS420)、前回学習してから所定時間が経過したか否か(ステップS430)、生産ジョブが編集されたか否か(ステップS440)、をそれぞれ判定する。CPU81は、ステップS400~S440のうちいずれもが否定的な判定であれば、再学習実行条件が成立していないと判定して(ステップS450)、本処理を終了し、いずれかが肯定的な判定であれば、再学習実行条件が成立していると判定して(ステップS460)、本処理を終了する。基板Sや部品のロットの切り替わりが発生した場合に再学習するのは、その切り替わり前後で基板Sや部品の写りが変化するおそれがあるからである。また、前回学習してから所定時間が経過した場合に再学習するのは、照明等の生産環境の経年変化に伴って、基板Sや部品の写りが変化するおそれがあるからである。さらに、生産ジョブが編集された場合に再学習するのは、部品の寸法や形状、実装位置等が編集されると、その前後で部品の写りが変化するおそれがあるからである。
【0029】
CPU81は、基板Sを識別する基板IDと関連付けて当該基板Sのロット情報をHDD83に予め記憶しておき、部品実装機10に基板Sが搬入されると、当該基板Sの基板IDに対応するロット情報を読み出して基板Sのロットに切り替わりが発生したか否かを判定する。そして、CPU81は、基板Sのロットの切り替わりが発生したと判定すると、再学習を実行し、再学習により生成した部品検査用学習データをその学習データを識別する識別情報(学習ID)および基板IDと関連付けてHDD83に記憶する。また、CPU81は、部品を識別する部品IDと関連付けて当該部品のロット情報をHDD83に予め記憶しておき、部品実装機10に搬入された基板Sに部品が実装されると、当該部品の部品IDに対応するロット情報を読み出して部品のロットに切り替わりが発生したか否かを判定する。そして、CPU81は、部品のロットの切り替わりが発生したと判定すると、再学習を実行し、再学習により生成した部品検査用学習データをその学習IDおよび基板IDと関連付けてHDD83に記憶する。こうして記憶された部品検査用学習データは、次の検査処理に用いられる。
【0030】
次に、部品検査用学習データを用いた部品の実装検査について説明する。
図7は、管理装置80のCPU81により実行される検査処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、上述した部品実装処理が実行されている間、所定時間毎に繰り返し実行される。ここで、CPU81は、上述した学習処理による学習が完了するのを待ってから検査処理を実行してもよいし、部品検査用学習データが生成されていれば、部品の学習が完了するのを待たず(教師データが揃う前)に検査処理を実行してもよい。
【0031】
検査処理が実行されると、管理装置80のCPU81は、まず、部品実装後基板画像が取得されたか否か(ステップS500)、部品検査用学習データが存在するか否か(ステップS510)、をそれぞれ判定する。CPU81は、部品実装後基板画像が取得されてないと判定したり、部品検査用学習データが存在しないと判定すると、部品検査を行なうことができないと判断し、本処理を終了する。一方、CPU81は、部品実装後基板画像が取得され、且つ、部品検査用学習データが存在すると判定すると、その部品検査用学習データを用いて部品実装後基板画像において部品を認識する認識処理(画像処理)を行なうことで検査対象となった部品が基板Sに実装されているか否かを判定する実装検査を行なう(ステップS520)。ここで、実装検査は、検査対象となった基板Sおよび部品の識別情報(基板IDおよび部品ID)に基づいて対応する部品検査用学習データをHDD83から読み出し、読み出した学習データ(認識モデル)を用いて部品実装後基板画像から部品が認識できるかどうかによって行なわれる。CPU81は、認識処理により部品の認識が成功したか否かを判定し(ステップS530)、部品の認識が成功したと判定すると、部品の実装が正常に行なわれたと判定して(ステップS540)、本処理を終了し、部品の認識が失敗したと判定すると、実装エラーが発生したと判定して(ステップS550)、本処理を終了する。
【0032】
ここで、実施形態の主要な要素と発明の開示の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、マークカメラ43が撮像装置に相当し、部品実装機10が部品実装機に相当し、部品実装システム1が部品実装システムに相当し、学習処理を実行する管理装置80のCPU81が学習装置に相当し、検査処理を実行する管理装置80のCPU81が検査装置に相当する。また、管理装置80のHDD83が記憶装置に相当する。また、ヘッド40がヘッドに相当し、ヘッド移動装置30がヘッド移動装置に相当する。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、管理装置80のCPU81は、学習処理において、再学習条件が成立したときには、学習履歴をクリアすると共に教師データの取得数Nを値0に初期化して、教師データの取得数Nが所定数Nref以上となるまで教師データに基づく機械学習によって再学習を行なうものとした。しかし、CPU81は、学習履歴をクリアすることなく、教師データを追加で取得して学習データを更新する追加学習を行なうものとしてもよい。
図8は、管理装置80のCPU81により実行される変形例の学習処理を示すフローチャートである。なお、変形例の学習処理の各ステップのうち実施形態の学習処理と同一のステップについては同一のステップ番号を付し、その説明は重複するから省略する。変形例の学習処理では、CPU81は、ステップS200において学習が完了したと判定すると、追加学習条件が成立しているか否かを判定する(ステップS300B)。CPU81は、追加学習条件が成立していないと判定すると、本処理を終了し、追加学習条件が成立していると判定すると、教師データの取得数Nを所定数Nrefよりも少ない所定値αだけデクリメントして(ステップS320B)、ステップS210に進み、追加学習を行なう。追加学習は、学習履歴をクリアすることなく、教師データの取得数Nが所定数Nref以上となるまで、すなわち教師データが新たに所定値α取得されるまで、教師データを追加取得して部品検査用学習データを更新することによって行なわれる。
【0035】
ここで、追加学習条件が成立しているか否かの判定は、
図9の追加学習実行条件成否判定処理を実行することにより行なわれる。追加学習実行条件成否判定処理では、管理装置80のCPU81は、再学習実行条件成否判定処理と同様に、オペレータから追加学習指示があるか否か(ステップS400B)、基板Sのロットが切り替わったか否か(ステップS410)、基板Sに実装する部品のロットが切り替わったか否か(ステップS420)、前回学習してから所定時間が経過したか否か(ステップS430)、生産ジョブが編集されたか否か(ステップS440)、をそれぞれ判定する。CPU81は、ステップS400B,S410~S440のうちいずれもが否定的な判定であれば、追加学習実行条件が成立していないと判定して(ステップS450B)、本処理を終了し、いずれかが肯定的な判定であれば、追加学習実行条件が成立していると判定して(ステップS460B)、本処理を終了する。
【0036】
上述した実施形態では、CPU81は、検査処理において、部品検査用学習データを用いた実装検査として、実装動作を行なった後の基板Sに実際に部品が実装されたか否かの検査を行なうものとした。しかし、CPU81は、学習データを用いた実装検査として、基板Sに対して部品に実装ずれ(XY方向のずれや回転方向のずれ)が生じているか否かの検査を行なうものとしてもよい。
【0037】
なお、部品実装機10は、複数のブロック(子基板)を含み、ブロック毎に部品を実装するか否かを示す情報(スキップ情報)が設定された基板を実装する場合、「スキップ無し」が設定されたブロックに対しては部品を実装し、「スキップ有り」が設定されたブロックについては部品を実装しない。こうした複数のブロックを含む基板への部品実装前の学習は、スキップ有り無しに拘わらず全てのブロックについて行なわれる。一方、部品実装後の学習は、スキップ無しが設定されたブロックに対してのみ行なわれ、スキップ有りが設定されたブロックに対しては行なわれない。これにより、より確実に実装された部品のみを学習することができる。
【0038】
以上説明したように、本開示の部品実装システムは、基板搬送方向に並ぶと共に基板を撮像する撮像装置をそれぞれ有する複数の部品実装機を備える部品実装システムであって、部品を実装する実装動作を行なう前の部品実装前基板と前記実装動作を行なった後の部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを取得すると共に該取得した教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを生成する学習装置と、前記部品実装後基板を前記撮像装置で撮像し、前記部品検査用の学習データを用いて前記部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで前記部品実装後基板の検査を行なう検査装置と、を備えることを要旨とする。
【0039】
この本開示の部品実装システムは、学習装置と検査装置とを備える。学習装置は、部品実装前基板と部品実装後基板とを撮像し、部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを取得すると共に取得した教師データと部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを生成する。検査装置は、部品実装後基板を撮像し、部品検査用の学習データを用いて部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで部品実装後基板の検査を行なう。このように、部品実装前基板および部品実装後基板のそれぞれの撮像画像に基づいて学習データを生成することで、部品実装後基板の撮像画像から部品を認識する際の認識精度を高めることができる。この結果、部品実装後基板の検査を適切に行なってその品質を確保することができる。
【0040】
こうした本開示の部品実装システムにおいて、前記学習装置は、所定の再学習条件が成立した場合には、前記部品実装前基板と前記部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて機械学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを再取得すると共に該再取得した教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて機械学習を行なって部品検査用の学習データを再生成し、前記部品実装後基板の識別情報または該部品実装後基板に実装された部品の識別情報と関連付けて前記再生成した部品検査用の学習データを記憶装置に記憶し、前記検査装置は、前記部品実装後基板を前記撮像装置で撮像し、前記部品実装後基板の識別情報または該部品実装後基板に実装された部品の識別情報を取得すると共に該取得した識別情報に対応する部品検査用の学習データを前記記憶装置から読み出し、該読み出した部品検査用の学習データを用いて前記部品実装後基板の撮像画像において部品を認識する画像処理を行なうことで前記部品実装後基板の検査を行なうものとしてもよい。こうすれば、部品の認識精度を良好に維持することができる。ここで、前記再学習条件は、オペレータにより指示された場合、基板のロットが切り替わった場合、実装する部品のロットが切り替わった場合、前回に学習を実行してから所定時間が経過した場合または生産ジョブが変更された場合に成立する条件であるものとしてもよい。
【0041】
また、本開示の部品実装システムにおいて、前記学習装置は、所定の追加学習条件が成立した場合には、前記部品実装前基板と前記部品実装後基板とを前記撮像装置で撮像し、前記部品実装前基板の撮像画像に基づいて追加学習を行ない、前記部品実装後基板の撮像画像に基づく教師データを再取得すると共に該再取得した教師データと前記部品実装後基板の撮像画像とに基づいて追加学習を行なって前記部品検査用の学習データを更新するものとしてもよい。こうすれば、部品の認識精度を良好に維持することができる。ここで、前記追加学習条件は、オペレータにより指示された場合、基板のロットが切り替わった場合、実装する部品のロットが切り替わった場合、前回に学習を実行してから所定時間が経過した場合または生産ジョブが変更された場合に成立する条件であるものとしてもよい。
【0042】
さらに、本開示の部品実装システムにおいて、前記検査装置は、前記部品実装後基板の検査として、前記部品実装後基板に検査対象の部品が実装されているか否かを判定するものとしてもよい。
【0043】
また、本開示の部品実装システムにおいて、前記部品実装機は、前記部品を採取可能なヘッドと、前記ヘッドを移動させるヘッド移動装置と、を備え、前記撮像装置は、前記ヘッド移動装置によって前記ヘッドと共に移動可能に設けられているものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、部品実装機や部品実装システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 部品実装システム、2 印刷機、3 印刷検査機、10 部品実装機、11 筐体、21 部品供給装置、22 基板搬送装置、23 パーツカメラ、24 ノズルステーション、30 ヘッド移動装置、31 X軸ガイドレール、32 X軸スライダ、33 X軸アクチュエータ、34 X軸位置センサ、35 Y軸ガイドレール、36 Y軸スライダ、37 Y軸アクチュエータ、38 Y軸位置センサ、40 ヘッド、41 Z軸アクチュエータ、42 θ軸アクチュエータ、43 マークカメラ、60 制御装置、61 CPU、62 ROM、63 HDD、64 RAM、65 入出力インタフェース、66 バス、80 管理装置、81 CPU、82 ROM、83 HDD、84 RAM、85 入出力インタフェース、86 バス、87 入力デバイス、88 ディスプレイ、S 基板。