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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】フィーダおよび部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
H05K13/02 B
H05K13/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021545086
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036189
(87)【国際公開番号】W WO2021049025
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 朗
(72)【発明者】
【氏名】島元 優一
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-053381(JP,A)
【文献】特開2018-014436(JP,A)
【文献】特開2013-254895(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170637(WO,A1)
【文献】特開2007-073632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を収容したテープを送るスプロケットと、該スプロケットを回転させるモータと、を備え、部品実装機に着脱可能に取り付けられるフィーダであって、
前記スプロケットの回転位置を検出するセンサと、
前記スプロケットへの係合を伴って前記テープが前記フィーダにセットされた際に前記センサにより検出された前記スプロケットの回転位置を初期回転位置として記憶し、前記スプロケットの回転により送られる前記テープの累積送り量を記憶する記憶部と、
前記部品実装機に前記部品を供給する際には該供給に必要な前記テープの送り量に基づいて前記スプロケットが正回転するように前記モータを制御し、前記テープを巻き戻す際には前記初期回転位置と前記累積送り量とに基づいて前記初期回転位置を超えて前記スプロケットが逆回転しないように前記モータを制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記部品実装機から前記フィーダが取り外される際には、前記フィーダ外に垂れ下がる前記テープを該フィーダ内に巻き戻すのに必要な所定量と前記累積送り量とを比較し、前記所定量が前記累積送り量を超えない場合に前記テープが該所定量巻き戻されるように前記モータを制御し、前記所定量が前記累積送り量を超える場合に前記テープが該累積送り量巻き戻されるように前記モータを制御する
ィーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィーダであって、
前記制御部は、作業者により前記テープの巻き戻しが指示された際には、該指示に基づく巻き戻しの指示量と前記累積送り量とを比較し、前記指示量が前記累積送り量を超えない場合に前記テープが該指示量巻き戻されるように前記モータを制御し、前記指示量が前記累積送り量を超える場合に前記テープを巻き戻すことなく所定の警告を報知する
フィーダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィーダが着脱可能に取り付けられ、該フィーダから供給される部品を対象物に実装する部品実装機であって、
前記部品を供給してから前記フィーダ外まで送られた前記テープを、該フィーダから所定量垂れ下がった位置で切断する切断装置と、
前記フィーダが取り外される際には、前記フィーダ外に前記テープの垂れ下がりがない状態となるように前記フィーダを制御する制御部と、
を備える部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、フィーダおよび部品実装機を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィーダとしては、部品切れに伴う交換や故障等により部品実装機からフィーダを取り外す場合、そのフィーダの送りモータを逆回転させてスプロケットを逆方向に回転させることで、前方から垂れ下がった空テープを巻き戻すものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。フィーダは、空テープを所定量巻き戻すことで空テープの垂れ下がりがない状態として、次にフィーダが取り付けられる際に垂れ下がり部分が引っ掛かったりするのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-254895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、新たなテープがスプロケットにセットされたフィーダが部品実装機に取り付けられてから、テープが十分に送り出される前に部品実装機から取り外される場合については考慮されていない。その場合に、上述したように空テープが一律に所定量巻き戻されると、フィーダがスプロケットから外れるおそれがある。フィーダがスプロケットから外れた状態で部品実装機に再度取り付けられると、テープを送ることができずにエラーとなるため、生産を停止して、作業者がテープをスプロケットにセットする必要が生じる。
【0005】
本開示は、テープを巻き戻す際にテープがスプロケットから外れるのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のフィーダは、
複数の部品を収容したテープを送るスプロケットと、該スプロケットを回転させるモータと、を備え、部品実装機に着脱可能に取り付けられるフィーダであって、
前記スプロケットの回転位置を検出するセンサと、
前記スプロケットへの係合を伴って前記テープが前記フィーダにセットされた際に前記センサにより検出された前記スプロケットの回転位置を初期回転位置として記憶し、前記スプロケットの回転により送られる前記テープの累積送り量を記憶する記憶部と、
前記部品実装機に前記部品を供給する際には該供給に必要な前記テープの送り量に基づいて前記スプロケットが正回転するように前記モータを制御し、前記テープを巻き戻す際には前記初期回転位置と前記累積送り量とに基づいて前記初期回転位置を超えて前記スプロケットが逆回転しないように前記モータを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示のフィーダは、スプロケットへの係合を伴ってテープがフィーダにセットされた際にセンサにより検出されたスプロケットの回転位置を初期回転位置として記憶し、スプロケットの回転により送られるテープの累積送り量を記憶する。また、テープを巻き戻す際には初期回転位置と累積送り量とに基づいて初期回転位置を超えてスプロケットが逆回転しないようにモータを制御する。これにより、累積送り量が少ない場合のテープの巻き戻し時に、スプロケットが初期回転位置を超えることがないから、テープがスプロケットから外れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】部品実装システム10の外観斜視図である。
図2】部品実装機20の概略構成図である。
図3】フィーダ30の外観斜視図である。
図4】フィーダ30およびフィーダ台40の概略構成図である。
図5】部品実装システム10の電気的な接続関係を示すブロック図である。
図6】初期回転位置の記憶処理の一例を示すフローチャートである。
図7】初期回転位置θ0の一例を示す説明図である。
図8】フィーダ動作制御処理の一例を示すフローチャートである。
図9】比較例において所定戻し量Fb1を戻した様子を示す説明図である。
図10】本実施形態において累積送り量Fを戻した様子を示す説明図である。
図11】手動操作対応処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の部品実装システム10の外観斜視図である。図2は、部品実装機20の概略構成図である。図3は、フィーダ30の外観斜視図である。図4は、フィーダ30およびフィーダ台40の概略構成図である。図5は、部品実装システム10の電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、図1,2中、左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
部品実装システム10は、図1に示すように、印刷装置12と、印刷検査装置14と、複数の部品実装機20と、実装検査装置(図示せず)と、フィーダ交換ロボット50と、フィーダ保管庫60と、システム全体を管理する管理装置80と、を備える。印刷装置12は、基板S上にはんだを印刷する装置である。印刷検査装置14は、印刷装置12で印刷されたはんだの状態を検査する装置である。部品実装機20は、基板Sの搬送方向(X軸方向)に沿って整列され、フィーダ30から供給された部品を基板Sに実装する装置である。実装検査装置は、部品実装機20で実装された部品の実装状態を検査する装置である。印刷装置12と印刷検査装置14と部品実装機20と実装検査装置は、この順番で基板Sの搬送方向に並べて設置されて生産ラインを構成する。フィーダ交換ロボット50は、生産ラインに沿って移動可能であり、複数の部品実装機20に対して必要なフィーダ30を補給したり部品実装機20から使用済みのフィーダ30や使用予定がなくなったフィーダ30を回収したりする。フィーダ保管庫60は、生産ライン内に組み込まれ、複数のフィーダ30を保管する。
【0013】
部品実装機20は、図2に示すように、実装機本体21と、実装機本体21に対して着脱可能なフィーダ30と、を備える。実装機本体21は、基板Sを左から右へと搬送する基板搬送装置23と、フィーダ30が供給した部品を吸着する吸着ノズルを有するヘッド24と、ヘッド24を前後方向および左右方向(XY方向)に移動させるヘッド移動機構25と、装置全体を制御する実装制御部29(図5参照)と、を備える。基板搬送装置23とヘッド24とヘッド移動機構25は、基台22b上に設けられた筐体22a内に配置されている。実装制御部29は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成され、基板搬送装置23やヘッド24、ヘッド移動機構25などに駆動信号を出力する。
【0014】
フィーダ30は、図3図5に示すように、矩形状のカセット式のテープフィーダであり、テープリール32と、テープ送り機構33と、コネクタ35と、空テープ通路36と、レール部材37と、メモリ38と、フィーダ制御部39と、を備える。テープリール32は、テープTが巻回されている。テープTは、その長手方向に沿って所定間隔で凹部が形成されており、各凹部には、部品が収容されている。これらの部品は、テープTの表面を覆うフィルムによって保護されている。テープ送り機構33は、テープリール32からテープTを引き出して送り出すものであり、テープTに等間隔で設けられた係合穴(図示せず)と係合する係合突起が外周に設けられたスプロケット33sと、スプロケット33sを正逆両回転方向に駆動可能な送りモータ33mと、を備える。また、テープ送り機構33は、スプロケット33sの回転位置(スプロケット位置)θを検出する例えば磁気センサなどのセンサ33eも備える。フィーダ30は、部品Pの収容ピッチに応じた回転量でスプロケット33sが回転するように送りモータ33mを駆動して、スプロケット33sに係合されたテープTを所定送り量ずつ送り出すことで、テープTに収容された部品を順次、部品供給位置へと供給する。テープTに収容された部品は、部品供給位置の手前でフィルムが剥がされることにより部品供給位置で露出した状態となり、吸着ノズルにより吸着可能となる。コネクタ35は、取付方向に突出する2本の位置決めピン34を有する。空テープ通路36は、部品供給位置で部品が取り出されたテープT(以下、空テープTともいう)を、コネクタ35とスプロケット33sとの間を通して下方へ排出する通路である。レール部材37は、フィーダ30の下端に設けられ、取付方向に延びている。メモリ38は、例えばEEPROMなどの不揮発性のメモリであり、後述するようにテープTの累積送り量Fや初期回転位置θ0などを記憶する。フィーダ制御部39は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成され、センサ33eにより検出されたスプロケット33sの回転位置θが入力され、テープ送り機構33の送りモータ33mに駆動信号を出力する。また、フィーダ制御部39は、コネクタ35を介してフィーダ30の取付先の制御部(実装制御部29や管理制御部82など)と通信可能となっている。
【0015】
また、フィーダ30は、図2に示すように、実装機本体21の筐体22aの前面に設けられたフィーダ台40に、X軸方向に複数並ぶように着脱可能に複数保持される。フィーダ台40は、側面視がL字状の台であり、複数のスロット42と、各スロット42に対応する2つの位置決め穴44と、各スロット42に対応するコネクタ45と、を備える。スロット42には、フィーダ30のレール部材37が挿入される。2つの位置決め穴44には、フィーダ30の2本の位置決めピン34が挿入され、フィーダ30がフィーダ台40に位置決めされる。コネクタ45は、2つの位置決め穴44の間に設けられ、フィーダ30のコネクタ35と接続される。
【0016】
また、部品実装機20には、フィーダ30の空テープ通路36の下方であってフィーダ台40の底部に、空テープ通路36の出口から垂れ下がった空テープTを切断するための切断装置46が設けられている。切断装置46は、固定刃47と、可動刃48と、可動刃48を駆動する駆動装置49と、を備える。切断装置46は、駆動装置49により可動刃48を固定刃47に向かって往復動させることで、固定刃47と可動刃48との間の空テープTをハサミによる剪断力によって切断する。本実施形態では、切断装置46は、フィーダ30の底面から所定量離れた切断位置で空テープTを切断するように構成されている。切断された空テープTは、筐体22aを支持する基台22bに配設されたダストボックス28に回収される。なお、切断された空テープTは、基台22bに生産ラインに沿って設けられたコンベア装置によって機外に搬送されてもよい。
【0017】
フィーダ交換ロボット50は、図1に示すように、複数の部品実装機20の前面およびフィーダ保管庫60の前面に基板の搬送方向(X軸方向)に対して平行に設けられたX軸レール16に沿って移動可能である。フィーダ交換ロボット50は、図5に示すように、ロボット移動機構51と、フィーダ移載機構53と、エンコーダ57と、ロボット制御部59と、を備える。ロボット移動機構51は、X軸レール16に沿ってフィーダ交換ロボット50を移動させる。フィーダ移載機構53は、フィーダ30を部品実装機20やフィーダ保管庫60との間で移載する。エンコーダ57は、フィーダ交換ロボット50の左右方向(X軸方向)の移動位置を検出する。ロボット制御部59は、周知のCPUやROM、RAMなどで構成され、エンコーダ57から検出信号を入力し、ロボット移動機構51やフィーダ移載機構53に駆動信号を出力する。フィーダ交換ロボット50は、ロボット移動機構51やフィーダ移載機構53を制御することにより、部品実装機20と向かい合う位置まで移動して当該部品実装機20のフィーダ台40に対してフィーダ30を着脱する。フィーダ保管庫60は、部品実装機20に設けられるフィーダ台40と同様のフィーダ台を複数有している。フィーダ交換ロボット50は、ロボット移動機構51やフィーダ移載機構53を制御することにより、フィーダ保管庫60と向かい合う位置まで移動してフィーダ保管庫60のフィーダ台に対してフィーダ30を着脱する。
【0018】
管理装置80は、汎用のコンピュータであり、図5に示すように、管理制御部82と、キーボードやマウスなどの入力デバイス84と、ディスプレイ86と、記憶装置88と、を備える。管理制御部82は、CPUやROM,RAMなどで構成され、入力デバイス84とディスプレイ86と記憶装置88とが電気的に接続されている。記憶装置88は、HDDやSSDであり、生産に必要な各種情報が記憶されている。また、管理装置80は、実装制御部29と有線により通信可能に接続され、各部品実装機20と各種情報をやり取りする。管理装置80は、フィーダ30が部品実装機20に着脱されたときに、対応する部品実装機20から着脱状況を受信してフィーダ装着情報を最新の情報に更新する。さらに、管理装置80は、ロボット制御部59と無線により通信可能に接続され、各種情報をやり取りする。また、管理装置80は、印刷装置12や印刷検査装置14、実装検査装置の各制御装置とも通信可能に接続され、各種情報をやり取りする。管理装置80は、記憶装置88に記憶している各種情報や各部品実装機20の実装制御部29から受信した実装状況などに基づいて段取り替え発生の有無を判定し、段取り替えが発生したと判定すると、フィーダ30の着脱などを含む段取り替えの指示をロボット制御部59に送信する。
【0019】
ここで、作業者は、スロットや給電用のコネクタなどを備える図示しない作業台にフィーダ30を取り付けて、フィーダ30に新たなテープリール32をセットする外段取りを行う。その外段取りでは、作業者は、テープリール32からテープTを引き出して、スプロケット33sに係合させた状態で、作業台の操作部を操作して送りモータ33mを駆動させる。送りモータ33mの駆動により、テープTの1個目の部品の供給位置よりも手前で且つテープTがスプロケット33sから外れない程度の位置までスプロケット33sが回転すると、作業者はセットが完了したとして、作業台からフィーダ30を取り外す。作業者は、セットが完了したフィーダ30を、フィーダ保管庫60のフィーダ台に取り付けて保管させる。
【0020】
図6は、初期回転位置の記憶処理の一例を示すフローチャートである。この処理では、フィーダ30のフィーダ制御部39は、まず、作業台からフィーダ30が取り外されるのを待つ(S100)。作業台から取り外されたフィーダ30は、作業台からの電力の供給が停止して電圧が降下する。このため、フィーダ制御部39は、その電圧降下の検出により作業台から取り外されたと判定すると、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θを入力する(S105)。続いて、フィーダ制御部39は、テープTの累積送り量F=0の初期セット位置に対応付けて初期回転位置θ0としてメモリ38に記憶して(S110)、初期回転位置の記憶処理を終了する。図7は、初期回転位置θ0の一例を示す説明図である。図7では、テープTの1個目の部品の供給位置よりも手前で且つテープTがスプロケット33sから外れない程度の位置までスプロケット33sが回転した状態を示す。図示するように、この状態のテープTの先端位置を累積送り量F=0の位置とし、所定の回転基準からの回転位置を初期回転位置θ0とする。
【0021】
以下の説明は、フィーダ30の動作についての説明である。図8は、フィーダ動作制御処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、フィーダ台40に取り付けられたフィーダ30のフィーダ制御部39により実行される。この処理では、フィーダ制御部39は、まず、初期回転位置θ0とテープの累積送り量Fとをメモリ38から読み出す(S200)。次に、フィーダ制御部39は、実装制御部29との通信を介して、部品供給用の自動送り指示がされたか否か(S205)、作業者の手動操作指示がされたか否か(S210)、フィーダ台40から取り外されるか否か(S215)、をそれぞれ判定する。
【0022】
フィーダ制御部39は、S205で自動送り指示がされたと判定すると、部品の収容間隔に応じた所定送り量Ff1だけスプロケット33sがテープTを送るように駆動信号を出力して送りモータ33mを正回転駆動する(S220)。また、フィーダ制御部39は、所定送り量Ff1を加えることで累積送り量Fを更新して(S225)、S205に戻る。なお、フィーダ制御部39は、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θに基づいて所定送り量Ff1の送り出しの完了を確認してから、累積送り量Fを更新してもよい。このように、フィーダ制御部39は、所定送り量Ff1でテープTを送る度に、所定送り量Ff1を加えて累積送り量Fを更新する。なお、作業者の手動操作指示は、テープTの送り動作や戻し動作の良否の確認、テープTの部品供給位置での停止精度の確認などのために行われるが、通常の生産中に行われることは少ないため、先にフィーダ30が取り外される場合を説明する。
【0023】
また、フィーダ制御部39は、S215でフィーダ30がフィーダ台40から取り外されると判定すると、所定戻し量(所定量)Fb1が累積送り量Fを超えるか否かを判定する(S235)。ここで、部品実装機20の実装制御部29は、フィーダ交換ロボット50や作業者によりフィーダ台40からフィーダ30が取り外される場合には、取り外しの前に、そのフィーダ30から垂れ下がった空テープTを切断するように切断装置46を制御する。その切断が完了すると、フィーダ制御部39は、スプロケット33sを逆回転させて、余分な空テープTがフィーダ台40内に巻き戻されるように送りモータ33mを制御する巻き戻し動作を実行する。フィーダ30外に垂れ下がった空テープTをフィーダ30内に巻き戻すのに必要な巻き戻し量は、例えば、空テープ通路36の出口から切断装置46の切断位置までの距離に相当し、所定戻し量Fb1とする(図4参照)。S235では、フィーダ制御部39は、その所定戻し量Fb1と、累積送り量Fとを比較する。
【0024】
フィーダ制御部39は、S235で所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超えないと判定すると、スプロケット33sがテープTを所定戻し量Fb1戻すように駆動信号を出力して送りモータ33mを逆回転駆動する(S240)。即ち、フィーダ制御部39は、所定戻し量Fb1を超えてテープTが送り出されている場合には、所定戻し量Fb1だけテープTを巻き戻すことで、フィーダ30から空テープTが垂れ下がらない状態とする。これにより、フィーダ交換ロボット50などが取り外したフィーダ30をフィーダ台に取り付ける際に、空テープTがフィーダ30とフィーダ台との間に挟まれるのを防止することができる。なお、フィーダ制御部39は、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θに基づいて所定戻し量Fb1の巻き戻しの完了を確認してから、累積送り量Fを更新してもよい。そして、フィーダ制御部39は、所定戻し量Fb1を減じることで累積送り量Fを更新して(S245)、フィーダ動作制御処理を終了する。なお、更新された累積送り量Fは、取り外される際にメモリ38に記憶される。また、次にフィーダ動作制御処理が実行されると、S200で最新の累積送り量Fとして、前回のフィーダ動作制御処理でメモリ38に記憶された累積送り量Fが読み出される。
【0025】
一方、フィーダ制御部39は、S235で所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超えると判定すると、スプロケット33sがテープTを累積送り量F戻すように駆動信号を出力して送りモータ33mを逆回転駆動する(S250)。即ち、フィーダ制御部39は、部品の供給回数が少なくテープTの累積送り量Fが所定戻し量Fb1を超えていない場合には、累積送り量FだけテープTを巻き戻すのである。このため、フィーダ制御部39は、初期回転位置θ0を超えてスプロケット33sが逆回転しないように送りモータ33mを制御することになる。そして、フィーダ制御部39は、累積送り量Fを減じること即ち累積送り量Fを値0とすることで累積送り量Fを更新して(S255)、フィーダ動作制御処理を終了する。なお、フィーダ制御部39は、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θに基づいて初期回転位置θ0に到達したこと(累積送り量Fの巻き戻しの完了)を確認してから、累積送り量Fを更新してもよい。
【0026】
図9は、比較例において所定戻し量Fb1を戻した様子を示す説明図であり、図10は、本実施形態において累積送り量Fを戻した様子を示す説明図である。図9A図10Aは、いずれも累積送り量F=0の初期回転位置θ0を示し、図7と同じ状態である。また、図9B図10Bは、いずれも所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超える場合の一例を示し、巻き戻す直前の状態である。図9に示すように、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超える場合に所定戻し量Fb1を戻すと、累積送り量F=0(初期回転位置θ0)の位置を超えてテープTが巻き戻される。このため、図9Cに示すように、テープTがスプロケット33sから外れてしまうが、フィーダ制御部39は、テープTがスプロケット33sから外れたことを検知することができない。このため、そのフィーダ30は、テープTが外れたままの状態で、次に使用される際に部品実装機20のフィーダ台40に取り付けられる。そうなると、そのフィーダ30は、部品を適切に供給することができず、供給エラーとなってしまう。作業者は、部品実装機20の生産を停止させ、フィーダ30を取り外してエラーの原因を調査する必要がある。また、作業者は、テープTを再度フィーダ30にセットし直す必要がある。このため、部品実装機20が生産を再開するまでに時間を要することになる。一方、本実施形態では、図10に示すように、フィーダ動作制御処理のS235で所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超えると判定されて累積送り量Fだけ戻すから、テープTは累積送り量F=0(初期回転位置θ0)の位置に戻ることになる(図10C)。このため、比較例のように、テープTがスプロケット33sから外れることがないから、部品の供給エラーが生じたり、作業者がテープTを再度セットしたりするのを防止することができる。
【0027】
また、フィーダ制御部39は、フィーダ動作制御処理のS210で、実装制御部29との通信を介して作業者の手動操作指示がされたと判定した場合、図11に示す手動操作対応処理を実行して(S230)、S205に戻る。なお、部品実装機20の操作パネルでは、作業者が、フィーダ台40に取り付けられているフィーダ30を選択したり、選択したフィーダ30のテープTの送り指示ボタンやテープTの戻し指示ボタンなどを操作することが可能となっている。図11の手動操作対応処理では、フィーダ制御部39は、まず、手動操作指示が送り指示であるか否かを判定し(S300)、送り指示でないと判定すると、S315に進む。フィーダ制御部39は、例えば操作パネルの送り指示ボタンが1回操作された場合などにS300で送り指示であると判定し、指示送り量Ff2でスプロケット33sがテープTを送るように駆動信号を出力して送りモータ33mを正回転駆動する(S305)。そして、フィーダ制御部39は、指示送り量Ff2を加えることで累積送り量Fを更新して(S310)、S315に進む。指示送り量Ff2は、例えば、送り指示ボタンが1回操作された場合の送り量として予め定められている。
【0028】
次に、フィーダ制御部39は、手動操作指示が戻し指示であるか否かを判定し(S315)、戻し指示でないと判定すると、手動操作対応処理を終了する。フィーダ制御部39は、例えば操作パネルの戻し指示ボタンが1回操作された場合などにS315で戻し指示であると判定して、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えるか否かを判定する(S320)。指示戻し量Fb2は、例えば、戻し指示ボタンが1回操作された場合の戻し量として予め定められている。S320で指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えないと判定すると、スプロケット33sがテープTを指示戻し量Fb2戻すように駆動信号を出力して送りモータ33mを逆回転駆動する(S325)。即ち、フィーダ制御部39は、指示戻し量Fb2を超えてテープTが送り出されていると判定した場合には、指示戻し量Fb2だけテープTを戻すのである。これにより、テープTがスプロケット33sから外れることなく、作業者の指示に従ってテープTを巻き戻すことができる。そして、フィーダ制御部39は、指示戻し量Fb2を減じることで累積送り量Fを更新して(S330)、手動操作対応処理を終了する。
【0029】
一方、フィーダ制御部39は、S320で指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えると判定すると、テープTを戻すとスプロケット33sからテープTが外れる旨の警告を報知して(S335)、手動操作対応処理を終了する。S335の処理は、例えば、フィーダ30や実装機本体21に表示部を設け、テープTが外れる旨の警告を表示するように表示部を制御することにより行われる。これにより、作業者の手動操作指示により、テープTがスプロケット33sから外れるのを防止することができる。
【0030】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のスプロケット33sがスプロケットに相当し、送りモータ33mがモータに相当し、フィーダ30がフィーダに相当し、センサ33eがセンサに相当し、メモリ38が記憶部に相当し、フィーダ制御部39が制御部に相当する。また、部品実装機20が部品実装機に相当し、切断装置46が切断装置に相当し、実装制御部29が制御部に相当する。
【0031】
以上説明した実施形態のフィーダ30は、テープTがセットされた際のスプロケット33sの回転位置を初期回転位置θ0としてメモリ38に記憶し、スプロケット33sの回転により送られるテープTの累積送り量Fをメモリ38に記憶する。また、テープTを巻き戻す際には、初期回転位置θ0と累積送り量Fとに基づいて、初期回転位置θ0を超えてスプロケット33sが逆回転しないように送りモータ33mを制御する。これにより、累積送り量Fが少ない場合のテープTの巻き戻し時に、テープTがスプロケット33sから外れるのを防止することができる。
【0032】
また、フィーダ制御部39は、部品実装機20からフィーダ30が取り外される際には、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超えない場合にテープTを所定戻し量Fb1巻き戻し、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超える場合にテープTを累積送り量F巻き戻す。このため、フィーダ制御部39は、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超えない場合に、フィーダ30外にテープTの垂れ下がりがない状態とすることができる。また、フィーダ制御部39は、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超える場合に、初期回転位置θ0までスプロケット33sを逆回転させる。初期回転位置θ0は、テープTがセットされた際の回転位置θであるから、テープTがスプロケット33sから外れるのを防止しつつフィーダ30外にテープTの垂れ下がりがない状態とすることができる。
【0033】
また、フィーダ制御部39は、作業者によりテープTの巻き戻しが指示された際には、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えない場合にテープTを指示戻し量Fb2巻き戻し、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超える場合にテープTを巻き戻すことなく警告を報知する。こうすれば、フィーダ制御部39は、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えない場合には作業者の指示に従ってテープを巻き戻すことができる。また、フィーダ制御部39は、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超える場合には、テープTが外れるために巻き戻しできない旨を作業者に報知して、テープTが外れるのを防止することができる。
【0034】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、作業者によりテープTの巻き戻しが指示された際、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超える場合にテープTを巻き戻すことなく警告を報知するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超える場合に、警告を報知することなく、累積送り量Fだけ戻すものとしてもよい。また、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超える場合には、単にテープTを巻き戻さず警告も行わないものとしてもよい。あるいは、作業者の手動操作指示に対しては、指示戻し量Fb2が累積送り量Fを超えるか否かに拘わらず、作業者の指示を優先してテープTを巻き戻すものとし、手動操作対応処理のS320,S335の処理を省略してもよい。
【0036】
上述した実施形態では、フィーダ制御部39は、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θに基づいてテープTの送り動作や戻し動作の完了を確認してもよいものとしたが、これに限られるものではない。例えば、フィーダ制御部39は、センサ33eにより検出されるスプロケット33sの回転位置θに基づいて送り動作や戻し動作の完了を検知してから、送りモータ33mを停止させてもよい。例えば、フィーダ制御部39は、所定戻し量Fb1が累積送り量Fを超える場合にテープTを戻す際には、送りモータ33mを逆回転駆動してから、スプロケット33sの回転位置θが初期回転位置θ0になると送りモータ33mを停止させるものとすればよい。即ち、初期回転位置θ0と累積送り量Fとに基づいて、初期回転位置θ0を超えてスプロケット33sが逆回転しないように送りモータ33mを制御するものであれば如何なる処理としてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、フィーダ動作制御処理では、フィーダ30が取り外される際には、所定戻し量Fb1と累積送り量Fとを毎回比較するが、これに限られるものではない。例えば、フィーダ制御部39は、所定条件が成立するまでは、実施形態と同様に処理を行い、所定条件が成立した以降は、所定戻し量Fb1と累積送り量Fとを比較することなくS235,S250,S255の処理を省略してテープTを巻き戻すものとしてもよい。所定条件は、フィーダ30外に空テープTが垂れ下がるほど十分にテープTが送られていると判定できる条件であればよい。例えば、所定条件は、累積送り量Fが所定送り閾値Frefに到達したことでもよいし、フィーダ30にテープTがセットされた以降にフィーダ台40から取り外される回数が所定回数に到達したことでもよい。
【0038】
上述した実施形態では、部品実装機20は、フィーダ30の取り外しに先立ってテープTを切断する切断動作を実行してから、テープTを巻き戻すものとしたが、これに限られず、切断動作を実行することなくテープTを巻き戻してもよい。その場合のテープTの巻き戻し量は、切断装置46が前回切断動作を実行してからのテープTの送り量に基づいて定めるものとすればよい。即ち、フィーダ30を取り外す際のテープTの戻し量として、予め定められた所定戻し量Fb1を用いたが、取り外す際に、フィーダ30外に垂れ下がるテープTをフィーダ30内に戻すのに必要な戻し量を定めてもよい。
【0039】
ここで、本開示のフィーダは、以下のように構成してもよい。例えば、本開示のフィーダにおいて、前記制御部は、前記部品実装機から前記フィーダが取り外される際には、前記フィーダ外に垂れ下がる前記テープを該フィーダ内に巻き戻すのに必要な所定量と前記累積送り量とを比較し、前記所定量が前記累積送り量を超えない場合に前記テープが該所定量巻き戻されるように前記モータを制御し、前記所定量が前記累積送り量を超える場合に前記テープが該累積送り量巻き戻されるように前記モータを制御するものとしてもよい。こうすれば、所定量が累積送り量を超えない場合にテープを所定量巻き戻して、フィーダ外にテープの垂れ下がりがない状態とすることができる。また、所定量が累積送り量を超える場合にテープを累積送り量巻き戻すと、初期回転位置までスプロケットを逆回転させることになる。初期回転位置は、スプロケットへの係合を伴ってテープがセットされた際の回転位置であるから、テープがスプロケットから外れるのを防止しつつ、フィーダ外にテープの垂れ下がりがない状態とすることができる。
【0040】
本開示のフィーダにおいて、前記制御部は、作業者により前記テープの巻き戻しが指示された際には、該指示に基づく巻き戻しの指示量と前記累積送り量とを比較し、前記指示量が前記累積送り量を超えない場合に前記テープが該指示量巻き戻されるように前記モータを制御し、前記指示量が前記累積送り量を超える場合に前記テープを巻き戻すことなく所定の警告を報知するものとしてもよい。こうすれば、指示量が累積送り量を超えない場合には作業者の指示に従ってテープを巻き戻すことができる。また、指示量が累積送り量を超える場合には所定の警告を報知することで、テープがスプロケットから外れるために巻き戻しできない旨を作業者に報知することができる。
【0041】
本開示の部品実装機は、上述したいずれかのフィーダが着脱可能に取り付けられ、該フィーダから供給される部品を対象物に実装する部品実装機であって、前記部品を供給してから前記フィーダ外まで送られた前記テープを、該フィーダから所定量垂れ下がった位置で切断する切断装置と、前記フィーダが取り外される際には、前記フィーダ外に前記テープの垂れ下がりがない状態となるように前記フィーダを制御する制御部と、を備えることを要旨とする。
【0042】
本開示の部品実装機は、上述したいずれかのフィーダが着脱可能に取り付けられるから、フィーダが取り外される際にフィーダ外にテープの垂れ下がりがない状態とする場合でも、テープがスプロケットから外れるのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、フィーダや部品実装機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 部品実装システム、12 印刷装置、14 印刷検査装置、16 X軸レール、20 部品実装機、22a 筐体、23 基板搬送装置、24 ヘッド、25 ヘッド移動機構、28 ダストボックス、29 実装制御部、30 フィーダ、32 テープリール、33 テープ送り機構、33s スプロケット、33m 送りモータ、33e センサ、34 位置決めピン、35 コネクタ、36 空テープ通路、37 レール部材、38 メモリ、39 フィーダ制御部、40 フィーダ台、42 スロット、44 位置決め穴、45 コネクタ、46 切断装置、47 固定刃、48 可動刃、49 駆動装置、50 フィーダ交換ロボット、51 ロボット移動機構、53 フィーダ移載機構、57 エンコーダ、59 ロボット制御部、60 フィーダ保管庫、80 管理装置、82 管理制御部、84 入力デバイス、86 ディスプレイ、88 記憶装置、S 基板、T テープ。
図1
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図11