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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】光コンバイナ及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20230406BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20230406BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230406BHJP
   G02B 6/04 20060101ALI20230406BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20230406BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20230406BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/42
G02B6/02 411
G02B6/02 B
G02B6/04 B
H01S3/10 Z
H01S3/23
B23K26/064 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021550674
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2020035961
(87)【国際公開番号】W WO2021065657
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019178605
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019178523
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 究
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527184(JP,A)
【文献】特開2017-219628(JP,A)
【文献】国際公開第2018/217298(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211639(US,A1)
【文献】特表2012-524302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02 - 6/10
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/44
B23K 26/064
H01S 3/10
H01S 3/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれコアを含む複数の第1の入力光ファイバと、
前記複数の第1の入力光ファイバの前記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って前記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、前記光軸方向において前記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、
前記ブリッジファイバの前記ブリッジ出射面に接続されるコアと、該コアの周囲を覆うクラッドとを含む中間光ファイバと、
コアと、該コアの周囲を覆い、前記中間光ファイバの前記クラッドとは異なるクラッドとを含む少なくとも1つの第2の入力光ファイバと、
前記中間光ファイバの前記コアに接続される第1の光導波路と、前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの前記コアに接続される第2の光導波路とを含む出力光ファイバと
を備え、
前記出力光ファイバは、
内側クラッドと、
前記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、前記内側クラッドの周囲を覆うリングコアと
を有し、
前記リングコアは、前記第2の光導波路を構成し、
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバが接続される側の前記リングコアの端面は外部に露出する領域を有する、
光コンバイナ。
【請求項2】
前記出力光ファイバは、
前記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、前記内側クラッドにより周囲が覆われるセンタコアと、
前記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質と
を有し、
前記センタコアは、前記第1の光導波路を構成する、
請求項1に記載の光コンバイナ。
【請求項3】
前記中間光ファイバの外周縁は、前記出力光ファイバの前記内側クラッドの領域に位置している、請求項2に記載の光コンバイナ。
【請求項4】
前記中間光ファイバの前記コアは、前記出力光ファイバの前記センタコアの領域内に位置する、請求項2又は3に記載の光コンバイナ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの外周縁の少なくとも一部は、前記出力光ファイバの前記内側クラッドの領域に位置している、請求項2から4のいずれか一項に記載の光コンバイナ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの前記コアは、前記出力光ファイバの前記リングコアの領域内に位置する、請求項2から5のいずれか一項に記載の光コンバイナ。
【請求項7】
それぞれコアを含む複数の第1の入力光ファイバと、
前記複数の第1の入力光ファイバの前記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って前記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、前記光軸方向において前記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、
前記ブリッジファイバの前記ブリッジ出射面に接続されるコアと、該コアの周囲を覆うクラッドとを含む中間光ファイバと、
コアと、該コアの周囲を覆い、前記中間光ファイバの前記クラッドとは異なるクラッドとを含む少なくとも1つの第2の入力光ファイバと、
前記中間光ファイバの前記コアに接続される第1の光導波路と、前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの前記コアに接続される第2の光導波路とを含む出力光ファイバと
を備え、
前記出力光ファイバは、
コアと、
前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記コアの周囲を覆う内側クラッドと、
前記内側クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記内側クラッドの周囲を覆う低屈折率媒質と
を有し、
前記出力光ファイバの前記コアは、前記第1の光導波路を構成し、
前記出力光ファイバの前記コア及び前記内側クラッドは、前記第2の光導波路を構成し、
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの前記コアが接続される側の前記内側クラッドの端面は外部に露出する領域を有する、
光コンバイナ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバは、前記出力光ファイバの前記第2の光導波路に接続される部分で最も径が小さくなる縮径部を有しており、
前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの前記縮径部の縮径率は、前記出力光ファイバの前記第1の光導波路に接続される前記中間光ファイバの前記コアの径に対する前記ブリッジファイバの前記ブリッジ入射面におけるコアの径の比よりも小さい、
請求項1から7のいずれか一項に記載の光コンバイナ。
【請求項9】
第1のレーザ光を生成する少なくとも1つの第1のレーザ光源と、
第2のレーザ光を生成する少なくとも1つの第2のレーザ光源と、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光コンバイナと
を備え、
前記光コンバイナの前記複数の第1の入力光ファイバのうち少なくとも1つは、前記少なくとも1つの第1のレーザ光源に接続され、
前記光コンバイナの前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバは、前記少なくとも1つの第2のレーザ光源に接続される、
レーザ装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1のレーザ光源及び前記少なくとも1つの第2のレーザ光源を制御することにより、前記少なくとも1つの第1のレーザ光源により生成される第1のレーザ光の出力及び前記少なくとも1つの第2のレーザ光源により生成される第2のレーザ光の出力を調整する制御部をさらに備える、請求項9に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1のレーザ光源と前記少なくとも1つの第2のレーザ光源とは、同等の性能を有し、
前記少なくとも1つの第2のレーザ光源に接続された前記少なくとも1つの第2の入力光ファイバを通って前記出力光ファイバの前記第2の光導波路から出力される前記第2のレーザ光の出射角度は、前記少なくとも1つの第1のレーザ光源に接続された前記複数の第1の入力光ファイバのうち少なくとも1つを通って前記出力光ファイバの前記第1の光導波路から出力される第1のレーザ光の出射角度よりも小さい、
請求項9又は10に記載のレーザ装置。
【請求項12】
前記中間光ファイバの前記コアから漏洩するクラッドモード光を除去する第1のクラッドモード光除去部と、
前記出力光ファイバの前記第2の光導波路から漏洩するクラッドモード光を除去する第2のクラッドモード光除去部と
をさらに備える、請求項9から11のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項13】
前記中間光ファイバに印加する負荷を制御して前記中間光ファイバの前記コアを伝搬する前記第1のレーザ光の出射角度を制御する第1の光制御部と、
前記出力光ファイバに印加する負荷を制御して少なくとも前記出力光ファイバの前記第2の光導波路を伝搬する第2のレーザ光の出射角度を制御する第2の光制御部と
をさらに備える、請求項9から12のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コンバイナ及びレーザ装置に係り、特に複数の入力光ファイバからのレーザ光を結合して出力光ファイバから出力する光コンバイナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工の分野では、加工速度や加工品質などの加工性能を向上する上で、加工対象物に照射するレーザ光のビームプロファイルを加工対象物の材料や厚みに合わせて変更することが重要である。近年、このような観点から、出力側の光ファイバに複数の光導波路を形成し、これらの光導波路のそれぞれに導入するレーザ光を制御することによって、加工対象物に照射されるレーザ光のビームプロファイルを所望の形態に変化させる技術も開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光導波路として中心コアとその周囲に位置する外側コアとを有する出力光ファイバにレーザ光を導入するための光コンバイナとして、出力光ファイバの中心コアに対応して中心側に複数の光ファイバ(中心側光ファイバ)を配置し、出力光ファイバの外側コアに対応して中心側光ファイバの周囲に複数の光ファイバ(外側光ファイバ)を環状に配置したものが開示されている(図8a及び図8b参照)。この特許文献1に開示されている従来の構成においては、出力光ファイバの径が大きくなることを避けるために、中心側光ファイバの径を外側光ファイバの径よりも小さくせざるを得ない。このように、中心側光ファイバの径が小さいと、中心側光ファイバの機械的強度が低くなり、中心側光ファイバが折れたり、切れたりするなどの問題が生じやすく、またその製造も難しくなる。このような問題があるため、中心側光ファイバの数を増やすことが難しく、これにより中心側光ファイバが接続される出力光ファイバの中心コアに導入されるレーザ光のパワーを高めることが難しくなる。このため、出力光中心コアを伝搬するレーザ光と外側コアを伝搬するレーザ光の出力バランスを調整することも難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-145888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、出力光ファイバの第1の光導波路と第2の光導波路とにそれぞれレーザ光を導入することができる製造容易な光コンバイナを提供することを第1の目的とする。
【0006】
また、本発明は、所望のビームプロファイルを有するレーザ光を出力することができるレーザ装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、出力光ファイバの第1の光導波路と第2の光導波路とにそれぞれレーザ光を導入することができる製造容易な光コンバイナが提供される。この光コンバイナは、それぞれコアを含む複数の第1の入力光ファイバと、上記複数の第1の入力光ファイバの上記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って上記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、上記光軸方向において上記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、上記ブリッジファイバの上記ブリッジ出射面に接続されるコアと、該コアの周囲を覆うクラッドとを含む中間光ファイバと、コアと、該コアの周囲を覆い、上記中間光ファイバの上記クラッドとは異なるクラッドとを含む少なくとも1つの第2の入力光ファイバと、上記中間光ファイバの上記コアに接続される第1の光導波路と、上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記コアに接続される第2の光導波路とを含む出力光ファイバとを備える。上記出力光ファイバは、内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆うリングコアとを有する。上記リングコアは、上記第2の光導波路を構成する。
本発明の第2の態様による光コンバイナは、それぞれコアを含む複数の第1の入力光ファイバと、上記複数の第1の入力光ファイバの上記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って上記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、上記光軸方向において上記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、上記ブリッジファイバの上記ブリッジ出射面に接続されるコアと、該コアの周囲を覆うクラッドとを含む中間光ファイバと、コアと、該コアの周囲を覆い、上記中間光ファイバの上記クラッドとは異なるクラッドとを含む少なくとも1つの第2の入力光ファイバと、上記中間光ファイバの上記コアに接続される第1の光導波路と、上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記コアに接続される第2の光導波路とを含む出力光ファイバとを備える。上記出力光ファイバは、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆う内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆う低屈折率媒質とを有する。上記出力光ファイバの上記コアは、上記第1の光導波路を構成し、上記出力光ファイバの上記コア及び上記内側クラッドは、上記第2の光導波路を構成する。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、所望のビームプロファイルを有するレーザ光を出力することができるレーザ装置が提供される。このレーザ装置は、第1のレーザ光を生成する少なくとも1つの第1のレーザ光源と、第2のレーザ光を生成する少なくとも1つの第2のレーザ光源と、上述した光コンバイナとを備える。上記光コンバイナの上記複数の第1の入力光ファイバのうち少なくとも1つは、上記少なくとも1つの第1のレーザ光源に接続される。上記光コンバイナの上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバは、上記少なくとも1つの第2のレーザ光源に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるレーザ装置の構成を示す模式的ブロック図である。
図2図2は、図1のレーザ装置における光コンバイナを示す斜視図である。
図3図3は、図2の光コンバイナの分解斜視図である。
図4図4は、図3の光コンバイナの出力光ファイバの断面を半径方向に沿った屈折率分布とともに示す図である。
図5図5は、図3の光コンバイナの中間光ファイバ及び第2の入力光ファイバと出力光ファイバとの接続関係を示す模式図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態における光コンバイナを示す斜視図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態におけるレーザ装置の構成を示す模式的ブロック図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態における出力光ファイバの断面を半径方向に沿った屈折率分布とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る光コンバイナ及びこれを備えたレーザ装置の実施形態について図1から図8を参照して詳細に説明する。図1から図8において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図8においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態におけるレーザ装置1の構成を示す模式的ブロック図である。図1に示すように、本実施形態におけるレーザ装置1は、レーザ光を生成する第1のレーザ光源2A及び第2のレーザ光源2Bと、それぞれのレーザ光源2A,2Bからのレーザ光が入力される光コンバイナ3と、光コンバイナ3の下流側の端部に設けられたレーザ出射部4と、レーザ光源2A,2Bを制御する制御部5とを備えている。それぞれのレーザ光源2A,2Bと光コンバイナ3とは光ファイバ6により互いに接続されており、光コンバイナ3とレーザ出射部4とは光ファイバ7により互いに接続されている。レーザ光源2A,2Bとしては例えばファイバレーザや半導体レーザを用いることができる。本実施形態におけるレーザ装置1は、3つのレーザ光源2Aと6つのレーザ光源2Bを含んでいるが、レーザ光源2A,2Bの数はこれに限られるものではない。なお、本明細書では、特に言及がない場合には、レーザ光源2A,2Bからレーザ出射部4に向かってレーザ光が伝搬する方向を「下流側」といい、それとは逆の方向を「上流側」ということとする。
【0012】
このようなレーザ装置1においては、第1のレーザ光源2Aにおいて生成された第1のレーザ光と第2のレーザ光源2Bにおいて生成された第2のレーザ光がそれぞれ光ファイバ6を伝搬して光コンバイナ3に導入される。この光コンバイナ3では、複数のレーザ光源2A,2Bからのレーザ光が結合されて光ファイバ7に出力される。光ファイバ7に出力された高出力のレーザ光Lはレーザ出射部4から例えば被加工物に向けて出射される。
【0013】
図2は光コンバイナ3を示す斜視図、図3は分解斜視図である。図2及び図3に示すように、本実施形態における光コンバイナ3は、第1のレーザ光源2Aから延びる光ファイバ6の少なくとも一部によりそれぞれ構成される複数の第1の入力光ファイバ10と、これらの第1の入力光ファイバ10に接続されるブリッジファイバ20と、ブリッジファイバ20に接続される中間光ファイバ30と、第2のレーザ光源2Bから延びる光ファイバ6の少なくとも一部によりそれぞれ構成される複数の第2の入力光ファイバ40と、上述した光ファイバ7の少なくとも一部により構成される出力光ファイバ50とを含んでいる。
【0014】
図2及び図3に示すように、本実施形態においては、3本の第1の入力光ファイバ10が互いに接した状態でブリッジファイバ20に接続されている。それぞれの第1の入力光ファイバ10は、コア11と、コア11の周囲を覆うクラッド12とを有している。クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低くなっており、コア11の内部には、第1のレーザ光源2Aからの第1のレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。このように、第1の入力光ファイバ10は、第1のレーザ光源2Aからの第1のレーザ光をそのコア11の内部に伝搬させて出射端部10A(図3参照)から出射するように構成されている。なお、第1の入力光ファイバ10は、ブリッジファイバ20から離れた位置でクラッド12の外周面を覆う被覆層(図示せず)を有している。
【0015】
ブリッジファイバ20は、コア21と、コア21の周囲を覆うクラッド22とを有している。クラッド22の屈折率はコア21の屈折率よりも低くなっており、コア21の内部には第1のレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。このようなコア-クラッド構造を内部に有するブリッジファイバ20は、光軸に沿って一定の外径で延びる第1の円筒部23と、第1の円筒部23から光軸に沿って次第に外径が小さくなる縮径部24と、縮径部24から光軸方向に沿って一定の外径で延びる第2の円筒部25とを含んでいる。第1の円筒部23の端面は、それぞれの第1の入力光ファイバ10の出射端部10Aが融着接続されるブリッジ入射面26となっている。光軸方向においてブリッジ入射面26とは反対側に位置する第2の円筒部25の端面は、中間光ファイバ30の入射端部30A(図3参照)が融着接続されるブリッジ出射面27となっている。ブリッジファイバ20のブリッジ入射面26におけるコア21の大きさは、すべての第1の入力光ファイバ10のコア11を内部に包含できるような大きさとなっており、第1の入力光ファイバ10とブリッジファイバ20とは、すべての第1の入力光ファイバ10のコア11がブリッジファイバ20のブリッジ入射面26におけるコア21の領域内に位置するように融着接続される。このように、ブリッジファイバ20は、第1の入力光ファイバ10の出射端部10Aから出射された第1のレーザ光をそのコア21の内部に伝搬させ、縮径部24によってそのビーム径を小さくするように構成されている。なお、第1の入力光ファイバ10のコア11からブリッジファイバ20のコア21に第1のレーザ光が入射する際の反射を抑えるために、ブリッジファイバ20のコア21の屈折率は、第1の入力光ファイバ10のコア11の屈折率と略同一であることが好ましい。
【0016】
中間光ファイバ30は、コア31と、コア31の周囲を覆うクラッド32とを有している。クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低くなっており、コア31の内部には、第1のレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。中間光ファイバ30のコア31の大きさは、ブリッジファイバ20のブリッジ出射面27におけるコア21の大きさ以上となっており、ブリッジファイバ20と中間光ファイバ30とは、ブリッジ出射面27におけるブリッジファイバ20のコア21が中間光ファイバ30のコア31の領域内に位置するように融着接続される。このように、中間光ファイバ30は、ブリッジファイバ20から伝搬してきた第1のレーザ光をそのコア31の内部に伝搬させるように構成されている。なお、ブリッジファイバ20のコア21から中間光ファイバ30のコア31に第1のレーザ光が入射する際の反射を抑えるために、中間光ファイバ30のコア31の屈折率は、ブリッジファイバ20のコア21の屈折率と略同一であることが好ましい。
【0017】
本実施形態では、6本の第2の入力光ファイバ40がこの中間光ファイバ30を取り囲んでその外周面に接するように配置されており、隣り合う第2の入力光ファイバ40は互いに接した状態となっている。それぞれの第2の入力光ファイバ40は、コア41と、コア41の周囲を覆うクラッド42とを有している。クラッド42の屈折率はコア41の屈折率よりも低くなっており、コア41の内部には、第2のレーザ光源2Bからの第2のレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。このように、第2の入力光ファイバ40は、第2のレーザ光源2Bからの第2のレーザ光をそのコア41の内部に伝搬させて出射端部40A(図3参照)から出射するように構成されている。このような第2の入力光ファイバ40としては、上述した第1の入力光ファイバ10と同種の光ファイバを用いることができる。なお、第2の入力光ファイバ40は、出力光ファイバ50から離れた位置でクラッド42の外周面を覆う被覆層(図示せず)を有している。
【0018】
図4は、出力光ファイバ50の断面を半径方向に沿った屈折率分布とともに示す図である。図4に示すように、出力光ファイバ50は、センタコア51と、センタコア51の周囲を覆う内側クラッド52と、内側クラッド52の周囲を覆うリングコア53と、リングコア53の周囲を覆う外側クラッド54とを有している。内側クラッド52の屈折率はセンタコア51及びリングコア53の屈折率よりも低くなっており、外側クラッド54の屈折率はリングコア53の屈折率よりも低くなっている。これにより、センタコア51の内部にレーザ光が伝搬する第1の光導波路が形成され、リングコア53の内部にレーザ光が伝搬する第2の光導波路が形成される。本実施形態では、リングコア53の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率媒質として、リングコア53の周囲に外側クラッド54が形成されているが、このような低屈折率媒質は、外側クラッド54のような被覆層に限られるものではなく、例えばリングコア53の周囲に空気の層を形成し、この空気の層を低屈折率媒質として用いてもよい。なお、出力光ファイバ50は、中間光ファイバ30及び第2の入力光ファイバ40から離れた位置で外側クラッド54の外周面を覆う被覆層(図示せず)を有している。
【0019】
中間光ファイバ30の出射端部と第2の入力光ファイバ40の出射端部40Aとはそれぞれ出力光ファイバ50に融着接続されている。図5は、中間光ファイバ30及び第2の入力光ファイバ40と出力光ファイバ50との接続関係を示す模式図である。本実施形態では、出力光ファイバ50のセンタコア51の大きさは、中間光ファイバ30のコア31よりも大きくなっており、図5に示すように、中間光ファイバ30と出力光ファイバ50とは、中間光ファイバ30のコア31が出力光ファイバ50のセンタコア51の領域(内側の網掛け領域)内に位置するように融着接続される。また、出力光ファイバ50のリングコア53の大きさは、第2の入力光ファイバ40のすべてのコア41を内部に包含できるような大きさとなっており、図5に示すように、第2の入力光ファイバ40と出力光ファイバ50とは、すべての第2の入力光ファイバ40のコア41が出力光ファイバ50のリングコア53の領域(外側の網掛け領域)内に位置するように融着接続される。
【0020】
このような構成において、第1のレーザ光源2Aで生成された第1のレーザ光は、第1の入力光ファイバ10のコア11を伝搬し、ブリッジファイバ20のブリッジ入射面26からブリッジファイバ20のコア21に入射する。ブリッジファイバ20のコア21に入射したレーザ光は、コア21とクラッド22との界面で反射しながらブリッジファイバ20のコア21を伝搬し、縮径部24によってそのビーム径が小さくなった状態でブリッジ出射面27から中間光ファイバ30のコア31に入射する。中間光ファイバ30のコア31に入射したレーザ光は、コア31の内部を伝搬して出力光ファイバ50のセンタコア51に入射し、第1の光導波路であるセンタコア51の内部を伝搬してレーザ出射部4(図1参照)から出射される。また、第2のレーザ光源2Bで生成された第2のレーザ光は、第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬し、出力光ファイバ50のリングコア53に入射する。出力光ファイバ50のリングコア53に入射したレーザ光は、第2の光導波路であるリングコア53の内部を伝搬してレーザ出射部4(図1参照)から出射される。
【0021】
このように、本実施形態では、第1の入力光ファイバ10のコア11及び第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬するレーザ光をそれぞれ出力光ファイバ50のセンタコア51とリングコア53に導入する際に、第1の入力光ファイバ10のコア11を伝搬する光をブリッジファイバ20でビーム径を小さくした後に出力光ファイバ50のセンタコア51に導入しているため、第1の入力光ファイバ10の径を小さくすることなく第1の入力光ファイバ10をブリッジファイバ20に接続することができる。したがって、第1の入力光ファイバ10の機械的強度を維持することができるため、光コンバイナ3の製造も容易である。また、第1の入力光ファイバ10の径を小さくすることなく、第1の入力光ファイバ10の数を増やすことができるため、出力光ファイバ50のセンタコア51に導入するレーザ光のパワーを高めることも容易となり、センタコア51を伝搬するレーザ光とリングコア53を伝搬するレーザ光の出力バランスを調整することも容易となる。これにより、レーザ装置1のレーザ出射部4から所望のビームプロファイルを有するレーザ光を出力することが可能となる。
【0022】
また、制御部5によって第1のレーザ光源2A(例えば第1のレーザ光源2Aに供給する電流)を制御することによって第1のレーザ光源2Aによって生成される第1のレーザ光の出力を調整することができ、また、第2のレーザ光源2B(例えば第2のレーザ光源2Bに供給する電流)を制御することによって第2のレーザ光源2Bによって生成される第2のレーザ光の出力を調整することができる。したがって、制御部5によって第1のレーザ光源2A及び第2のレーザ光源2Bを制御して第1のレーザ光と第2のレーザ光の強度の割合を変化させることができ、出力光ファイバ50のセンタコア51に導入される第1のレーザ光とリングコア53に導入される第2のレーザ光の割合を調整することができる。このようにして、レーザ装置1のレーザ出射部4から出力されるレーザ光のプロファイルを容易に所望の形状にすることができる。
【0023】
本実施形態では、中間光ファイバ30のコア31は、出力光ファイバ50のセンタコア51の領域内に位置しているため、中間光ファイバ30のコア31を伝搬するレーザ光を効率的に出力光ファイバ50のセンタコア51に導入することができる。また、同様に、本実施形態では、すべての第2の入力光ファイバ40のコア41が、出力光ファイバ50のリングコア53の領域内に位置しているため、第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬するレーザ光を効率的に出力光ファイバ50のリングコア53に導入することができる。なお、この場合において、すべての第2の入力光ファイバ40のコア41ではなく、一部の第2の入力光ファイバ40のコア41が出力光ファイバ50のリングコア53の領域内に位置していてもよい。
【0024】
また、図5に示すように、中間光ファイバ30のクラッド32の外周縁が出力光ファイバ50の内側クラッド52の領域(内側の網掛け領域と外側の網掛け領域との間の領域)内に位置していることが好ましい。中間光ファイバ30のクラッド32の外周縁が出力光ファイバ50の内側クラッド52の領域内に位置している場合には、中間光ファイバ30の外側に位置する第2の入力光ファイバ40のいずれもが、出力光ファイバ50のセンタコア51の外側の領域に位置することとなるため、第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬するレーザ光が、中間光ファイバ30のコア31から出力光ファイバ50のセンタコア51に入射するレーザ光に混ざってしまうことを抑制することができる。
【0025】
さらに、図5に示すように、第2の入力光ファイバ40の外周縁の少なくとも一部が出力光ファイバ50の内側クラッド52の領域(内側の網掛け領域と外側の網掛け領域との間の領域)内に位置していることが好ましい。第2の入力光ファイバ40の外周縁の少なくとも一部が出力光ファイバ50の内側クラッド52の領域内に位置している場合には、第2の入力光ファイバ40の内側に位置する中間光ファイバ30が、出力光ファイバ50のリングコア53の内側の領域に位置しやすくなるため、中間光ファイバ30のコア31を伝搬するレーザ光が、第2の入力光ファイバ40のコア41から出力光ファイバ50のリングコア53に入射するレーザ光に混ざってしまうことを抑制することができる。
【0026】
例えばレーザ出射部4から反射光が戻ってくると、この反射光が光コンバイナ3の内部で漏れ出すことが考えられる。特許文献1に記載されているような従来の光コンバイナにおいては、中心側光ファイバと外側光ファイバとが出力光ファイバの同一面に接続されているため、出力光ファイバの中心コアを伝搬する反射光と外側コアを伝搬する反射光とが出力光ファイバの1つの面から漏れ出して局所的な発熱量が多くなる可能性がある。これに対して、本実施形態では、第1の入力光ファイバ10がブリッジファイバ20のブリッジ入射面26に接続され、第2の入力光ファイバ40が出力光ファイバ50に接続されているため、出力光ファイバ50のセンタコア51を伝搬する反射光はブリッジファイバ20のブリッジ入射面26から漏れ出し、リングコア53を伝搬する反射光は出力光ファイバ50の端面から漏れ出すこととなる。このように、本実施形態では、センタコア51を伝搬する反射光が漏れ出す面とリングコア53を伝搬する反射光が漏れ出す面とが異なっているため、反射光が分散されて局所的な発熱を低減することができる。このため、光コンバイナ3が故障するリスクも低減する。
【0027】
例えば、本実施形態におけるレーザ装置1により薄い金属板である加工対象物を切断する場合には、レーザ光Lの中心側の光パワー密度が高い小径の円形形状のビームを使用してもよく、厚い金属板である加工対象物を切断する場合には、ビームウェスト部からレーザ伝搬方向(加工対象物の厚さ方向)にずれた位置でのスポット径や光パワー密度の変化率が小さい大径円環形状のビームを使用してもよい。このような大径円環形状のビームは、ビーム径及びビーム出力が同じであっても、円形形状のビームに比べてビームウェスト部での光パワー密度を大きくできるという利点があり、厚板を切断するのに適している。
【0028】
しかしながら、レーザ出射部4において出力光ファイバ50のリングコア53から出射されるレーザ光の出射角度がセンタコア51から出射されるレーザ光の出射角度よりも大きいと、厚板を切断するのに適した大径円環形状のビームの優位性が低減してしまう。これは、光の出射角が大きくなると、パワー密度の低下が焦点位置から離れるに従って大きくなるので、加工対象物が厚くなると、切断に必要なパワー密度を厚さ方向に対して得られなくなってしまうからである。
【0029】
このような観点から、出力光ファイバ50のリングコア53から出射されるレーザ光の出射角度がセンタコア51から出射されるレーザ光の出射角度よりも小さくなるように光コンバイナ3を構成してもよい。例えば、レーザ光源2A,2Bとして同等の性能の光源を用いた場合に、第2の入力光ファイバ40から出力光ファイバ50のリングコア53に出射される光のNAを第1の入力光ファイバ10からブリッジファイバ20及び中間光ファイバ30を通って出力光ファイバ50のセンタコア51に出射される光のNAよりも低くしてもよい。ここでいう光のNAとは、ビームが伝搬するコアの屈折率をn、そのビームの伝搬角をθとすると、NA=nsinθにより定義される量を意味している。また、本明細書においては、レーザ光源における「同等の性能」は、製造上のばらつきが許容される範囲の性能を意味し、例えばビームパラメータ積(BPP)が±20%の範囲に入るものが挙げられる。
【0030】
第2の入力光ファイバ40から出力光ファイバ50のリングコア53に出射される光のNAを低くするために、例えば、出力光ファイバ50のリングコア53に接続される部分で第2の入力光ファイバ40の径が最も小さくなるように第2の入力光ファイバ40に縮径部を形成してもよい。この場合において、出力光ファイバ50のリングコア53に接続される第2の入力光ファイバ40の縮径部の端面におけるコア41の径に対する第2の入力光ファイバ40の縮径されていない部分のコア41の径の比を第2の入力光ファイバ40の縮径部の縮経率と定義すると、第2の入力光ファイバ40の縮径部の縮径率は、出力光ファイバ50のセンタコア51に接続される中間光ファイバ30のコア31の径に対するブリッジファイバ20のブリッジ入射面26におけるコア21の径の比よりも小さいことが厚板を切断するのに適したレーザ光Lを出力する上で好ましい。
【0031】
あるいは、図6に示すように、第2の入力光ファイバ40と出力光ファイバ50との間に、内部を伝搬するレーザ光の出射角度を小さくする機能を有する光調整部材60を設けてもよい。このような光調整部材60としては、例えば中心軸から半径方向外側に向かって次第に屈折率が低くなったGRIN(Graded Index又はGradient Index)レンズ部材を用いることができる。このような光調整部材60により、第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬するレーザ光の出射角度を小さくしてから出力光ファイバ50のリングコア53に導入することで、レーザ出射部4のリングコア53から出力されるレーザ光のNAを低下させることができる。したがって、このようなレーザ光を加工対象物Wの加工に用いることで、加工対象物Wの表面や内部、裏面でのビーム径及び光パワー密度の変動を抑えることができ、例えば厚い金属板を加工するのに適したレーザ光Lを加工対象物Wに照射することが可能である。
【0032】
一方で、レーザ出射部4において出力光ファイバ50のリングコア53から出射されるレーザ光の出射角度とセンタコア51から出射されるレーザ光の出射角度との間に差があると、集光光学系の焦点位置からずれたデフォーカス位置でリングコア53からのレーザ光とセンタコア51からのレーザ光とが重なってしまい、加工性能の低下を招くおそれがある。この観点から、図6に示す光調整部材60に代えて、内部を伝搬する第2のレーザ光の出射角度を増加させる機能を有する光調整部材を用いてもよい。このような光調整部材60としては、例えば、第2の入力光ファイバ40のモードフィールド径よりも大きなモードフィールド径を有する光ファイバ、中心部から半径方向外側の周縁部に向かって次第に屈折率が上昇する屈折率分布を有する円柱状のレンズ部材、第2の入力光ファイバ40から光軸方向に沿って次第に径が小さくなったテーパ部材、2つのGRINレンズ部材を組み合わせたものなどが考えられる。
【0033】
ところで、レーザ光が上述した光コンバイナ3を伝搬する間にコアから漏れ出してクラッドを伝搬するクラッドモード光が発生することがある。このようなクラッドモード光は、光コンバイナ3の下流側の出力光ファイバ50において発熱の原因となることが考えられ、また、レーザ出射部4からクラッドモード光が意図しない領域に照射されてレーザ加工の品質を低下させることも考えられる。
【0034】
特に、上述した実施形態のように、出力光ファイバ50が複数のコア51,53を含んでいる場合には、それぞれのコア51,53にレーザ光を入射する際に発生するクラッドモード光が同一の出力光ファイバ50のクラッド52,54を伝搬することになるため、出力光ファイバ50をシングルコア光ファイバにより構成した場合と比較して、出力光ファイバ50を伝搬するクラッドモード光が多くなる傾向にある。このようなクラッドモード光を除去するために、出力光ファイバ50の途中にクラッドモード光除去部を設けた場合には、クラッドモード光除去部での発熱量が増大するため、クラッドモード光を十分に除去しきれないことも考えられる。
【0035】
したがって、図7に示すように、中間光ファイバ30の途中に、中間光ファイバ30のコア31からクラッド32に漏洩するクラッドモード光を除去する第1のクラッドモード光除去部210を設け、出力光ファイバ50の途中に、出力光ファイバ50のリングコア53から外側クラッド54に漏洩するクラッドモード光を除去する第2のクラッドモード光除去部220を設けてもよい。このような構成により、中間光ファイバ30のクラッド32に漏洩したクラッドモード光が出力光ファイバ50に入射する前に第1のクラッドモード光除去部210において除去されるので、第2のクラッドモード光除去部220における発熱量を低減することができる。これらのクラッドモード光除去部210,220としては公知のクラッドモード光除去構造を用いることができる。
【0036】
光ファイバに負荷を加えると、光ファイバから出射される光の出射角度が大きくなることが知られている。したがって、レーザ出射部4において出力光ファイバ50のセンタコア51から出射されるレーザ光の出射角度とリングコア53から出射されるレーザ光の出射角度とを制御するために、図7に示すように、中間光ファイバ30の途中に、中間光ファイバ30に印加する負荷を制御することで中間光ファイバ30のコア31を伝搬する光のNAを制御する第1の光制御部230を設け、出力光ファイバ50の途中に、出力光ファイバ50に印加する負荷を制御することで出力光ファイバ50のセンタコア51及びリングコア53を伝搬する光のNAを制御する第2の光制御部240を設けてもよい。例えば、このような光制御部230,240としては、加熱や温度分布の形成により光ファイバに負荷を印加するもの、光ファイバに曲げを与えるもの、光ファイバに側圧を印加するものなどがある。
【0037】
第2の光制御部240により出力光ファイバ50に印加された負荷は主として外側に位置するリングコア53を伝搬する光に影響を与え、中心側のセンタコア51を伝搬する光はそれほど影響を受けない。一方、中間光ファイバ30から出力光ファイバ50のセンタコア51に出射される光は、第1の光制御部230により中間光ファイバ30に印加された負荷の影響を受ける。したがって、出力光ファイバ50のセンタコア51から出射されるレーザ光の出射角度を主に第1の光制御部230によって制御することができ、リングコア53から出射されるレーザ光の出射角度を主に第2の光制御部240によって制御することが可能となる。
【0038】
図7に示すように、クラッドモード光除去部210,220と光制御部230,240の両方を設けてもよいし、どちらか一方のみを設けてもよい。クラッドモード光除去部210,220と光制御部230,240の両方を設ける場合には、光制御部230,240による負荷の印加によりクラッドモード光が発生することがあるため、発生したクラッドモード光を効率的に除去するために、図7に示すように、第1のクラッドモード光除去部210を第1の光制御部230の下流側に設け、第2のクラッドモード光除去部220を第2の光制御部240の下流側に設けることが好ましい。
【0039】
上述した出力光ファイバ50は、図4に示される構造のものに限られるわけではない。例えば、上述した出力光ファイバ50に代えて、図8に示すような出力光ファイバ150を用いることもできる。図8に示す出力光ファイバ150は、コア151と、コア151の周囲を覆う内側クラッド152と、内側クラッド152の周囲を覆う外側クラッド153とを有している。内側クラッド152の屈折率はコア151の屈折率よりも低くなっており、外側クラッド153の屈折率は内側クラッド152の屈折率よりも低くなっている。これにより、コア151の内部にレーザ光が伝搬する第1の光導波路が形成され、内側クラッド152とコア151の内部にレーザ光が伝搬する第2の光導波路が形成される。このような出力光ファイバ150のコア151に中間光ファイバ30のコア31が融着接続され、内側クラッド152に第2の入力光ファイバ40のコア41が融着接続される。なお、出力光ファイバ150は、中間光ファイバ30及び第2の入力光ファイバ40から離れた位置で外側クラッド153の外周面を覆う被覆層(図示せず)を有している。
【0040】
このような構成において、第1の入力光ファイバ10のコア11を伝搬してきたレーザ光は、ブリッジファイバ20のブリッジ入射面26からブリッジファイバ20のコア21に入射し、縮径部24によってそのビーム径が小さくなった状態でブリッジ出射面27から中間光ファイバ30のコア31に入射する。中間光ファイバ30のコア31に入射したレーザ光は、コア31を伝搬して出力光ファイバ150のコア151に入射し、第1の光導波路であるコア151の内部を伝搬してレーザ出射部4(図1参照)から出射される。また、第2の入力光ファイバ40のコア41を伝搬してきたレーザ光は、出力光ファイバ150の内側クラッド152に入射し、第2の光導波路である内側クラッド152及びコア151の内部を伝搬してレーザ出射部4(図1参照)から出射される。
【0041】
図8に示す出力光ファイバ150では、内側クラッド152の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率媒質として、内側クラッド152の周囲に外側クラッド153が形成されているが、このような低屈折率媒質は、外側クラッド153のような被覆層に限られるものではなく、例えば内側クラッド152の周囲に空気の層を形成し、この空気の層を低屈折率媒質として用いてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、複数のレーザ光源2Bと複数の入力光ファイバ40を設けた例を説明しているが、出力光ファイバ50,150の第2の光導波路に接続される入力光ファイバ40の数は1つであってもよく、この入力光ファイバ40に接続されるレーザ光源2Bの数も1つであってもよい。また、上述した実施形態では、複数の入力光ファイバ10のそれぞれにレーザ光源2Aが接続されている例を説明しているが、レーザ光源2Aを複数の入力光ファイバ10のすべてに接続する必要はなく、1つ以上の入力光ファイバ10にレーザ光源2Aを接続してもよい。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0044】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、出力光ファイバの第1の光導波路と第2の光導波路とにそれぞれレーザ光を導入することができる製造容易な光コンバイナが提供される。この光コンバイナは、それぞれコアを含む複数の第1の入力光ファイバと、上記複数の第1の入力光ファイバの上記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って上記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、上記光軸方向において上記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、上記ブリッジファイバの上記ブリッジ出射面に接続されるコアを含む中間光ファイバと、コアを含む少なくとも1つの第2の入力光ファイバと、上記中間光ファイバの上記コアに接続される第1の光導波路と、上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記コアに接続される第2の光導波路とを含む出力光ファイバとを備える。
【0045】
このような構成によれば、複数の第1の入力光ファイバのコアを伝搬する光をブリッジファイバでビーム径を小さくした後に出力光ファイバの第1の光導波路に導入しているため、第1の入力光ファイバの径を小さくすることなく第1の入力光ファイバをブリッジファイバに接続することができる。したがって、第1の入力光ファイバの機械的強度を維持することができるため、光コンバイナの製造も容易である。また、第1の入力光ファイバの径を小さくすることなく、第1の入力光ファイバの数を増やすことができるため、出力光ファイバの第1の光導波路に導入する光のパワーを高めることも容易となり、第1の光導波路を伝搬する光と第2の光導波路を伝搬する光の出力バランスを調整することも容易となる。
【0046】
上記出力光ファイバは、センタコアと、上記センタコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記センタコアの周囲を覆う内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆うリングコアと、上記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質とを有していてもよい。この場合において、上記センタコアは、上記第1の光導波路を構成し、上記リングコアは、上記第2の光導波路を構成する。
【0047】
上記中間光ファイバの外周縁は、上記出力光ファイバの上記内側クラッドの領域に位置していることが好ましい。この場合には、中間光ファイバの径方向外側に位置する第2の入力光ファイバが、出力光ファイバのセンタコアの外側の領域に位置することとなるため、第2の入力光ファイバのコアを伝搬するレーザ光が、中間光ファイバのコアから出力光ファイバのセンタコアに入射するレーザ光に混ざってしまうことを抑制することができる。
【0048】
上記中間光ファイバの上記コアは、上記出力光ファイバの上記センタコアの領域内に位置していることが好ましい。この場合には、中間光ファイバのコアを伝搬するレーザ光を効率的に出力光ファイバのセンタコアに導入することができる。
【0049】
上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの外周縁の少なくとも一部は、上記出力光ファイバの上記内側クラッドの領域に位置していることが好ましい。この場合には、第2の入力光ファイバの径方向内側に位置する中間光ファイバが、出力光ファイバのリングコアの内側の領域に位置しやすくなるため、中間光ファイバのコアを伝搬するレーザ光が、第2の入力光ファイバのコアから出力光ファイバのリングコアに入射するレーザ光に混ざってしまうことを抑制することができる。
【0050】
上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記コアは、上記出力光ファイバの上記リングコアの領域内に位置していることが好ましい。この場合には、第2の入力光ファイバのコアを伝搬するレーザ光を効率的に出力光ファイバのリングコアに導入することができる。
【0051】
上記出力光ファイバは、コアと、上記コアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記コアの周囲を覆う内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆う低屈折率媒質とを有していてもよい。この場合において、上記コアは、上記第1の光導波路を構成し、上記コア及び上記内側クラッドは、上記第2の光導波路を構成する。
【0052】
上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバは、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に接続される部分で最も径が小さくなる縮径部を有していてもよい。この場合において、上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記縮径部の縮径率は、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に接続される上記中間光ファイバの上記コアの径に対する上記ブリッジファイバの上記ブリッジ入射面におけるコアの径の比よりも小さくてもよい。
【0053】
本発明の第2の態様によれば、所望のビームプロファイルを有するレーザ光を出力することができるレーザ装置が提供される。このレーザ装置は、第1のレーザ光を生成する少なくとも1つの第1のレーザ光源と、第2のレーザ光を生成する少なくとも1つの第2のレーザ光源と、上述した光コンバイナとを備える。上記光コンバイナの上記複数の第1の入力光ファイバのうち少なくとも1つは、上記少なくとも1つの第1のレーザ光源に接続される。上記光コンバイナの上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバは、上記少なくとも1つの第2のレーザ光源に接続される。
【0054】
上述の光コンバイナにより、出力光ファイバの第1の光導波路を伝搬するレーザ光と第2の光導波路を伝搬するレーザ光の出力バランスを調整することも容易となるため、レーザ装置から所望のビームプロファイルを有するレーザ光を出力することが可能となる。
【0055】
また、上記レーザ装置は、上記少なくとも1つの第1のレーザ光源及び上記少なくとも1つの第2のレーザ光源を制御することにより、上記少なくとも1つの第1のレーザ光源により生成される第1のレーザ光の出力及び上記少なくとも1つの第2のレーザ光源により生成される第2のレーザ光の出力を調整する制御部をさらに備えることが好ましい。このような制御部によって第1のレーザ光源によって生成される第1のレーザ光の出力と第2のレーザ光源によって生成される第2のレーザ光の出力の割合を変化させることで、出力光ファイバの第1の光導波路に導入される第1のレーザ光と第2の光導波路に導入される第2のレーザ光の割合を調整することができる。したがって、レーザ装置から出力されるレーザ光のプロファイルを容易に所望の形状にすることができる。
【0056】
上記少なくとも1つの第1のレーザ光源と上記少なくとも1つの第2のレーザ光源とが、同等の性能を有している場合には、上記少なくとも1つの第2のレーザ光源に接続された上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバを通って上記出力光ファイバの上記第2の光導波路から出力される上記第2のレーザ光の出射角度は、上記少なくとも1つの第1のレーザ光源に接続された上記複数の第1の入力光ファイバのうち少なくとも1つを通って上記出力光ファイバの上記第1の光導波路から出力される第1のレーザ光の出射角度よりも小さくてもよい。
【0057】
上記レーザ装置は、上記中間光ファイバの上記コアから漏洩するクラッドモード光を除去する第1のクラッドモード光除去部と、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路から漏洩するクラッドモード光を除去する第2のクラッドモード光除去部とをさらに備えていてもよい。このような構成によれば、中間光ファイバのコアから漏洩したクラッドモード光が出力光ファイバに入射する前に第1のクラッドモード光除去部において除去されるので、第2のクラッドモード光除去部における発熱量を低減することができる。
【0058】
上記レーザ装置は、上記中間光ファイバに印加する負荷を制御して上記中間光ファイバの上記コアを伝搬する上記第1のレーザ光の出射角度を制御する第1の光制御部と、上記出力光ファイバに印加する負荷を制御して少なくとも上記出力光ファイバの上記第2の光導波路を伝搬する第2のレーザ光の出射角度を制御する第2の光制御部とをさらに備えていてもよい。このような構成によれば、出力光ファイバの第1の光導波路から出射される第1のレーザ光の出射角度を主に第1の光制御部によって制御することができ、出力光ファイバの第2の光導波路から出射される第2のレーザ光の出射角度を主に第2の光制御部によって制御することが可能となる。
【0059】
本出願は、2019年9月30日に提出された日本国特許出願特願2019-178605号及び2019年9月30日に提出された日本国特許出願特願2019-178523号に基づくものであり、当該出願の優先権を主張するものである。当該出願の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、複数の入力光ファイバからのレーザ光を結合して出力光ファイバから出力する光コンバイナに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0061】
1 レーザ装置
2A 第1のレーザ光源
2B 第2のレーザ光源
3 光コンバイナ
4 レーザ出射部
5 制御部
6,7 光ファイバ
10 第1の入力光ファイバ
11 コア
12 クラッド
20 ブリッジファイバ
21 コア
22 クラッド
23 第1の円筒部
24 縮径部
25 第2の円筒部
26 ブリッジ入射面
27 ブリッジ出射面
30 中間光ファイバ
31 コア
32 クラッド
40 第2の入力光ファイバ
41 コア
42 クラッド
50 出力光ファイバ
51 センタコア
52 内側クラッド
53 リングコア
54 外側クラッド(低屈折率媒質)
60 光調整部材
150 出力光ファイバ
151 コア
152 内側クラッド
153 外側クラッド(低屈折率媒質)
210 第1のクラッドモード光除去部
220 第2のクラッドモード光除去部
230 第1の光制御部
240 第2の光制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8