(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ホーニング加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 33/02 20060101AFI20230406BHJP
B24B 33/08 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B24B33/02
B24B33/08
(21)【出願番号】P 2023511919
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2022043300
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2022095448
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 智宏
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第2374574(EP,B1)
【文献】特開平9-85609(JP,A)
【文献】実公昭49-43355(JP,Y1)
【文献】特開平2-212069(JP,A)
【文献】特開昭50-115391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 33/00 - 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に砥石が設けられたホーニングツールと、
長尺であり長手方向における一端側から前記ホーニングツールの先端部が延出した状態で前記ホーニングツールが固定された主軸と、
前記主軸を前記主軸の長手方向に沿った第1回転軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記主軸を前記第1回転軸に沿った第1方向へ移動させる軸方向駆動部と、
ワークの加工孔の中心軸と前記第1回転軸とが一致した状態で前記ワークを保持するワークホルダと、
前記ワークホルダにおける前記第1回転軸の延長線上に相当する部分へ前記第1回転軸に沿った方向へ駆動力を作用することにより、前記ワークホルダを前記第1方向とは反対方向の第2方向へ移動させるホルダ駆動ユニットと、を備える、
ホーニング加工装置。
【請求項2】
前記主軸が前記第1回転軸に沿った方向で周期的に振動するように前記軸方向駆動部を制御するとともに、前記ワークホルダが前記第1回転軸に沿った方向で前記主軸と同一周期で周期的に振動し且つ前記主軸の振動波形との間に位相差がある振動波形となるように前記ホルダ駆動ユニットを制御する制御部を更に備える、
請求項1に記載のホーニング加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記主軸の振動波形との間にπラジアンの位相差がある振動波形で前記ワークホルダを振動させるように前記ホルダ駆動ユニットを制御する、
請求項2に記載のホーニング加工装置。
【請求項4】
利用者が前記主軸の振動波形の振幅と前記ワークホルダの振動波形の振幅との振幅比率を示す振幅比率情報を入力する入力部を更に備え、
前記制御部は、前記振幅比率情報が示す振幅比率で前記主軸と前記ワークホルダとが振動するように前記軸方向駆動部と前記ホルダ駆動ユニットとを制御する、
請求項2または3に記載のホーニング加工装置。
【請求項5】
前記ホルダ駆動ユニットは、
長尺であり長手方向が前記第1回転軸に沿うように配置されたラックギアと、
前記第1回転軸と直交する第2回転軸周りに回転し前記ラックギアと前記第1回転軸の延長線上において噛合するピニオンギアと、を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【請求項6】
前記ワークホルダは、
前記ワークが前記ワークホルダに対して前記加工孔の中心軸周りに相対的に回転するのを規制するワーク回転規制部と、
前記ワークが前記ワークホルダに対して前記加工孔の中心軸方向へ相対的に移動するのを規制するワーク軸方向移動規制部と、
前記加工孔の中心軸が前記第1回転軸と一致するように、前記第1回転軸に沿った方向と直交する方向へ移動可能に支持するワーク支持機構と、を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【請求項7】
前記ホーニングツール、前記主軸、前記回転駆動部および前記軸方向駆動部を纏めて保持するヘッドと、長尺であり長手方向が鉛直方向に沿う姿勢で配置されるとともに、鉛直上側の一端部における前記ヘッドを支持する支柱と、を有する機体を更に備え、
前記ホルダ駆動ユニットは、前記支柱における鉛直下側の他端部に固定されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のホーニング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーニングツールを保持した状態で回転駆動されるスピンドルと、ワークを保持しリニアモータにより鉛直上下方向へ振動するように駆動されるワークホルダと、を備え、スピンドルを鉛直方向へ振動するように駆動するとともに、ワークを保持したワークホルダを鉛直方向へ振動するように駆動することにより、ホーニングツールのワークに対する鉛直方向の相対的な速度を高めて加工時間を短縮することができる高速ホーニング盤が提案されている(例えば特許文献1参照)。この高速ホーニング盤では、リニアモータの長尺の固定子をその長手方向が鉛直方向に沿うように配置され、リニアモータの可動子に固定されたワークホルダが固定子の側方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された高速ホーニング盤では、ワークのホーニング加工時において、鉛直方向と直交する方向において、固定子から可動子に駆動力が作用する位置と、ワークホルダに保持されたワークとホーニングツールとの間の摩擦抵抗に起因した力が作用する位置と、がずれている。このため、特に、摩擦抵抗に起因した力が鉛直下方へ作用する場合、ワークホルダに加わる重力が合成されて可動子に固定されたワークホルダに対して可動子を支点として旋回する方向への力が生じ、ワークホルダが可動子に対して傾いてしまう場合がある。この場合、ワークの加工孔の中心軸が鉛直方向に対して傾斜してしまい、ワークの加工精度が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、ワークの加工時間を短縮しつつワークの加工精度を向上させることができるホーニング加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るホーニング加工装置は、
先端部に砥石が設けられたホーニングツールと、
長尺であり長手方向における一端側から前記ホーニングツールの先端部が延出した状態で前記ホーニングツールが固定された主軸と、
前記主軸を前記主軸の長手方向に沿った第1回転軸周りに回転させる回転駆動部と、
前記主軸を前記第1回転軸に沿った第1方向へ移動させる軸方向駆動部と、
ワークの加工孔の中心軸と前記第1回転軸とが一致した状態で前記ワークを保持するワークホルダと、
前記ワークホルダにおける前記第1回転軸の延長線上に相当する部分へ前記第1回転軸に沿った方向へ駆動力を作用することにより、前記ワークホルダを前記第1方向とは反対方向の第2方向へ移動させるホルダ駆動ユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸方向駆動部が、ホーニングツールが固定された主軸を主軸の第1回転軸に沿った第1方向へ移動させる。また、ホルダ駆動ユニットが、ワークホルダにおける主軸の第1回転軸の延長線上に相当する部分へ第1回転軸に沿った方向へ駆動力を作用することにより、ワークホルダを第1方向とは反対方向の第2方向へ移動させる。これにより、ワークのホーニング加工時において、ホーニングツールのワークに対する相対的な速度を上昇させることができるので、ワークの加工時間を短縮できる。また、ワークのホーニング加工時において、主軸の第1回転軸に沿った方向において、ホルダ駆動ユニットがワークホルダに駆動力を作用させる位置と、ワークホルダに保持されたワークとホーニングツールとの間の摩擦抵抗に起因した力が作用する位置と、を一致させることができる。従って、ワークホルダが傾く方向へ作用する力の発生が抑制されるので、ワークの加工孔の中心軸が第1回転軸方向に対して傾斜することが抑制され、ワークの加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るホーニング加工装置の斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るホーニング加工装置の側面図である。
【
図3】実施の形態に係るホーニング加工装置の一部の側面図である。
【
図4】実施の形態に係るホーニング加工装置の一部の
図3のA-A線における断面矢視図である。
【
図5A】実施の形態に係るワークホルダの断面図である。
【
図5B】実施の形態に係るワークホルダの
図5AのB-B線における断面矢視図である。
【
図6A】実施の形態に係るホルダ駆動ユニットについて、ホルダ支持体が下限位置に配置された状態を示す断面図である。
【
図6B】実施の形態に係るホルダ駆動ユニットについて、ホルダ支持体が上限位置に配置された状態を示す断面図である。
【
図7A】実施の形態に係るホーニング加工装置において、ヘッドが加工時上限位置、ワークホルダが加工時下限位置に配置された状態を示す図である。
【
図7B】実施の形態に係るホーニング加工装置において、ヘッドが加工時下限位置、ワークホルダが加工時上限位置に配置された状態を示す図である。
【
図8A】実施の形態に係るホーニング加工装置のヘッドとワークホルダの振動波形を示す図である。
【
図8B】実施の形態に係るホーニング加工装置のワークホルダの振幅を減少させた場合のヘッドとワークホルダの振動波形を示す図である。
【
図9】比較例に係るホーニング加工装置の一部の側面図である。
【
図10】変形例に係るホーニング加工装置の斜視図である。
【
図11】変形例に係るホーニング加工装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るホーニング加工装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るホーニング加工装置は、先端部に砥石が設けられたホーニングツールと、長尺であり長手方向における一端側からホーニングツールの先端部が延出した状態でホーニングツールが固定された主軸と、主軸を前記主軸の長手方向に沿った回転軸周りに回転させる回転駆動部と、主軸を回転軸に沿った第1方向へ移動させる軸方向駆動部と、を備える。また、このホーニング加工装置は、ワークの加工孔の中心軸と主軸の回転軸とが一致した状態でワークを保持するワークホルダと、ワークホルダにおける回転軸の延長線上に相当する部分へ回転軸に沿った方向へ駆動力を作用することにより、ワークホルダを第1方向とは反対方向の第2方向へ移動させるホルダ駆動ユニットと、を備える。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係るホーニング加工装置は、ワークの加工孔の内壁を加工するものであり、ホーニングツール1と、回転主軸2と、ワークホルダ3と、ワークホルダ3を支持しワークホルダ3をZ軸方向で振動するように駆動するホルダ駆動ユニット6と、機体9と、を備える。以下、本明細書において鉛直上下方向を±Z方向またはZ軸方向、鉛直方向と直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれ±X方向、±Y方向またはX軸方向、Y軸方向と表現して説明する。また、ホーニング加工装置は、
図2に示すように、回転駆動部5と、軸方向駆動部4と、拡張駆動部8と、ホルダ駆動ユニット6、回転駆動部5、軸方向駆動部4および拡張駆動部8の動作を制御する制御部10と、を備える。なお、
図2では、ワークWが、その加工孔Whの中心軸J2と回転主軸2の中心軸J1とが一致する姿勢で配置されている。機体9は、ワークホルダ3、ホルダ駆動ユニット6を支持するベース92と、ホーニングツール1、回転主軸2、回転駆動部5、軸方向駆動部4および拡張駆動部8を纏めて保持するヘッド93と、ベース92に立設されヘッド93を支持する支柱91と、を有する。支柱91は、長尺でありその長手方向が鉛直方向、即ち、Z軸方向に沿う姿勢で配置され、鉛直上側の端部においてヘッド93を支持する。
【0011】
ホーニングツール1は、長尺円筒状であり回転主軸2の下端部2aから-Z方向へ延在するように回転主軸2に交換可能に装着されたツール本体11と、ツール本体11の-Z方向側の端部においてツール本体11の径方向へ拡縮可能に設けられた複数の砥石12と、を有する。また、ホーニングツール1は、-Z方向側の端部に設けられたウェッジ部分(図示せず)を有し、ツール本体11の内側において砥石12が固定された砥石台(図示せず)の砥石12側とは反対側の傾斜面にウェッジ部分が当接した状態で配置され、ツール本体11に対して鉛直方向へ相対的に移動することにより砥石12を拡張移動させるためのウェッジロッド(図示せず)と、砥石12を収縮移動する方向へ付勢する付勢部材(図示せず)と、を有する。ウェッジロッドは、回転主軸2の内部におけるウェッジロッドの+Z方向側に配置された後述の拡張ロッド87に連結されている。また、砥石12は、前述の付勢部材により常時収縮方向へ付勢されている。これにより、ウェッジロッドが-Z方向へ移動するのに伴って、砥石台および砥石台に固定された砥石12がウェッジ部分に押圧されて拡張方向へ移動する。一方、ウェッジロッドが+Z方向へ移動すると、付勢部材の付勢力により、砥石台および砥石12が収縮方向へ移動する。なお、付勢部材としては、リングばね、リング状のゴム等を採用することができる。
【0012】
回転主軸2は、その+Z方向側に設けられたスプラインシャフト部2bがスプライン軸受55を介して機体9のヘッド93に支持され、スプライン軸受55に対してZ軸方向へ移動可能であり且つ回転主軸2の長手方向に沿った中心軸J1周りに回転可能となっている。ここで、回転主軸2の回転軸、即ち、第1回転軸は、中心軸J1に一致している。
【0013】
回転駆動部5は、モータ51と、プーリ52、54と、ベルト53と、を有し、回転主軸2をその中心軸J1、即ち、第1回転軸周りに回転させる。プーリ54には、回転主軸2のスプラインシャフト部2bがスプライン嵌合されている。プーリ54は、ベルト53を介して、モータ51のモータ軸51aに固定されたプーリ52に連結されている。モータ51は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサとトルクセンサとが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ51の回転量が検出される。モータ51によりプーリ52が回転されると、スプラインシャフト部2bがプーリ54にスプライン嵌合した回転主軸2と回転主軸2に固定されたホーニングツール1とが回転する。
【0014】
軸方向駆動部4は、スライド本体42と、スライド本体42を案内する案内レール43と、スライド本体42を駆動する送り螺子機構41と、カップリング45と、モータ44と、を有し、回転主軸2をその中心軸J1、即ち、第1回転軸に沿った方向へ移動させる。スライド本体42は、回転主軸2を、軸受(図示せず)を介して回転可能に支持する。案内レール43は、Z軸方向に沿って直線状に延在しており、スライド本体42が、案内レール43上を上下方向へ摺動自在となっている。送り螺子機構41は、スライド本体42が固定された送り螺子ナット41aと、鉛直方向に沿って配置され機体9に回転可能に軸支されるとともに送り螺子ナット41aが螺合された送り螺子41bと、を有する。送り螺子41bは、+Z方向側の端部がカップリング45を介してモータ44のモータ軸44aに連結されている。モータ44は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ44の回転量および位相が検出される。モータ44により送り螺子41bが回転されると、送り螺子ナット41aと送り螺子ナット41aが固定されたスライド本体42とがZ軸方向に沿って移動し、回転主軸2およびホーニングツール1が昇降する。
【0015】
拡張駆動部8は、拡張ロッド87および拡張ロッド87に固定されたウェッジロッドを介して砥石12を拡張移動させる。拡張駆動部8は、ウェッジロッドが固定された拡張ロッド87と、ロッド駆動機構85と、スプラインシャフト86aと、歯車機構82と、モータ81とを有する。拡張ロッドは、Z軸方向に沿って移動可能であり、その-Z方向側の端部にウェッジロッドが連結されている。ロッド駆動機構85は、拡張ロッド87を鉛直方向に移動させるものであり、拡張ロッド87に連結された従動体85aと従動体85aをZ軸方向に沿って移動させるための送り螺子85bとを有する。送り螺子85bは、回転主軸2と平行な姿勢でスライド本体42に回転可能に軸支されている。従動体85aには、拡張ロッド87が固定され、拡張ロッド87とともに回転主軸2に対して相対的にZ軸方向へ移動可能となっている。従動体85aは、送り螺子85bに螺合した送り螺子ナット(図示せず)を有し、送り螺子85bがその中心軸周りに回転されると、それに伴い、Z軸方向へ移動する。
【0016】
スプラインシャフト86aは、-Z方向側の端部がカップリング86cを介して送り螺子85bの+Z方向側の端部に連結されている。また、スプラインシャフト86aの上端部分は、接続部材86bを介して歯車軸82aにスプライン嵌合されており、歯車軸82aに対してZ軸方向へ移動可能となっている。また、歯車軸82aは、モータ81のモータ軸81aに固定された歯車82bに噛合している。モータ81は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサとトルクセンサとが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ81の回転量が検出される。モータ81によりスプラインシャフト86aが回転すると、これに連結された送り螺子85bが回転して送り螺子85bに螺合した送り螺子ナットを有する従動体85aが、回転主軸2に対して相対的にZ軸方向へ移動する。ここで、従動体85aが-Z方向へ移動すると、拡張ロッド87と拡張ロッド87に連結されたウェッジロッドとが-Z方向へ移動し、砥石12が拡張移動する。一方、従動体85aが+Z方向へ移動すると、拡張ロッド87と拡張ロッド87に連結されたウェッジロッドとが+Z方向へ移動し、これに伴い前述の付勢部材により砥石12が収縮移動する。
【0017】
ワークホルダ3は、
図3および
図4に示すように、ホルダ本体34と、ホルダ本体34に挟持されたワークWがホルダ本体34とともに載置される基台部31と、板状であり厚さ方向に貫通する窓部32aが形成され基台部31に載置されたホルダ本体34の+Z方向側に当接した状態で配置される押え部材32と、を有する。また、ワークホルダ3は、柱状であり基台部31の周部に立設されるとともに先端部に押え部材32の周部が固定される複数の支柱33を有する。ワークホルダ3は、ワークWをその加工孔Whの中心軸J2が回転主軸2の中心軸J1と一致する姿勢で保持する。
【0018】
ホルダ本体34は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、筒状であり内側にワークWが嵌入された状態でワークWを保持する保持筒341と、環状であり保持筒341の+Z方向側の端部近傍に外嵌される保持リング342と、保持筒341および保持リング342を纏めてY軸方向へ摺動自在に支持するベース部材343と、を有する。ベース部材343は、基台部31に固定されている。また、ホルダ本体34は、2つのピン3441と、2つのピン3442と、を有する。2つのピン3441は、それぞれ、保持筒341の+Z方向側の端部近傍におけるX軸方向において保持筒341の中心軸を挟んで対向する2箇所に穿設された2つの貫通孔341aそれぞれに挿通されている。ここで、保持筒341には、その+Z方向側の端部から貫通孔341aに連通し、先端部がピン3441に当接した状態でピン3441の貫通孔341aからの脱落を防止するためのイモ螺子346が螺合する螺子孔341bが穿設されている。そして、ピン3441は、イモ螺子346により貫通孔341aの内側に固定されている。また、ピン3441の先端部は、保持リング342の側壁を貫通する貫通孔342aに挿通されており、保持筒341は、保持リング342に対して貫通孔342aに挿通されたピン3411に案内されてX軸方向へ摺動自在となっている。
【0019】
また、2つのピン3442は、それぞれ、保持リング342の周壁におけるY軸方向において保持リング342の中心を挟んで対向する2箇所に穿設された2つの貫通孔342bそれぞれに挿通されている。ここで、保持リング342にも、その+Z方向側の端部から貫通孔342bに連通し、先端部がピン3442に当接した状態でピン3442の貫通孔342bからの脱落を防止するためのイモ螺子(図示せず)が螺合する螺子孔(図示せず)が穿設されている。そして、ピン3442は、イモ螺子により貫通孔342bの内側に固定されている。
【0020】
更に、ホルダ本体34は、環状であり+Z方向側に突設された突条部345aを有し、ワークWの-Z方向側の端部に設けられた凹部Wtrに突条部345aが嵌入した状態でワークWが回転主軸2の中心軸J1周りに回転するのを規制するワーク回転規制部345を有する。このワーク回転規制部345は、基台部31の+Z方向側に載置され、基台部31に対してXY方向へ摺動自在となっている。また、ホルダ本体34は、環状であり、押え部材32の窓部32aの内側に一部が嵌入されるリブ347aが突設されるとともに、-Z方向側がワークWの+Z方向側の端部に当接し、ベース部材343とともにワークWを挟持してワークWがワークホルダ3に対して加工孔Whの中心軸J2方向へ相対的に移動するのを規制するワーク軸方向移動規制部347を有する。
【0021】
ベース部材343は、扁平な形状でありワークWの-Z方向側に配置されワークWの+Z方向側の端部に当接する本体部343aと、本体部343aから+Z方向へ延在し先端部に保持リング342に固定されたピン3442の先端部が挿通される貫通孔343cが設けられた支柱部343bと、を有する。そして、保持リング342は、ベース部材343に対して貫通孔343cに挿通されたピン3442に案内されてY軸方向へ摺動自在となっている。ここで、保持筒341と保持リング342とピン3441、3442とベース部材343とから、ワークWの加工孔Whの中心軸J2が回転主軸2の回転軸、即ち、中心軸J1と一致するように、ワークWをX軸方向とY軸方向との少なくとも一方へ移動可能に支持するワーク支持機構が構成されている。なお、摺動機構は、ワークWを中心軸J1と直交する面内方向へ摺動自在に支持するためのものに限定されるものではない。例えば、摺動機構が、ワークWを、中心軸J1と直交する面内方向とともに、中心軸J1に対して加工孔Whの中心軸J2が傾く方向へワークWの姿勢が可変な状態でワークWを支持するワーク支持機構であってもよい。
【0022】
図3および
図4に戻って、ホルダ駆動ユニット6は、ワークホルダ3における中心軸J1の延長線上に相当する部分へ中心軸J1に沿った方向へ駆動力を作用することにより、ワークホルダ3を回転主軸2の移動方向とは反対方向へ移動させる。ホルダ駆動ユニット6は、長尺であり長手方向が中心軸J1方向、即ち、Z軸に沿うように配置されたラックギア62と、Z軸と直交する後述のシャフト642の中心軸J3、即ち、第2回転軸周りに回転しラックギア62と+X方向から見たときに中心軸J1の延長線上において噛合するピニオンギア63と、を備える。また、ホルダ駆動ユニット6は、駆動部本体69と、ワークホルダ3を支持するホルダ支持体61と、ピニオンギア63を回転駆動するギア駆動部64と、ホルダ支持体61をZ軸方向に沿って移動自在に支持するレール65と、を備える。
【0023】
ホルダ支持体61は、板状であり厚さ方向がZ軸方向と直交する姿勢で配置された主片611と、板状であり厚さ方向がZ軸方向に沿うように配置されるとともに+Z方向側にワークホルダ3を支持する支持片612と、を有する。主片611には、Z軸方向に延在し、主片611を厚さ方向に貫通する長孔611aが形成されている。また、ホルダ支持体61は、主片611における-Y方向側に固定され、レール65に懸架された状態でZ軸方向へ移動自在な摺動体(図示)を有する。
【0024】
ラックギア62は、長手方向に沿って並列する複数の歯62aを有し、+Y方向側から見たときに複数の歯62aが長孔611aの内側に突出するように主片611に固定されている。ピニオンギア63は、平面視円形のホイール631と、ホイール631の周部にその周方向に沿って等間隔に配設された複数のローラ632と、を有する。複数のローラ632は、それぞれ、中心軸がシャフト642の中心軸J3、即ち、ピニオンギア63の第2回転軸方向と平行であり、各中心軸周りに回転自在にホイール631に支持されている。そして、ピニオンギア63は、その複数のローラ632がラックギア62の歯62aに噛合した状態で、ホルダ支持体61の長孔611aに挿通されている。
【0025】
ギア駆動部64は、モータ641と、モータ641の出力軸(図示せず)に連結された入力軸(図示せず)を有する減速機643と、減速機643の出力軸(図示せず)に連結されピニオンギア63のホイール631が固定されたシャフト642と、を有する。モータ641は、例えばロータリエンコーダのような位置検出センサが内蔵されたサーボモータであり、位置検出センサによりモータ641の回転量および位相が検出される。減速機643は、例えばボール減速機である。
【0026】
このホルダ駆動ユニット6では、
図6Aに示すように、ギア駆動部64がシャフト642に固定されたピニオンギア63を矢印AR11に示すように+Y方向から見て左回りに回転させると、ピニオンギア63に噛合するラックギア62が固定されたホルダ支持体61が矢印AR12に示すように+Z方向側へ移動する。そして、
図6Bに示すように、ホルダ支持体61が+Z方向側に配置される。一方、ホルダ支持体61が
図6Bに示す位置に配置された状態で、ギア駆動部64がシャフト642に固定されたピニオンギア63を矢印AR21に示すように+Y方向から見て右回りに回転させると、ピニオンギア63に噛合するラックギア62が固定されたホルダ支持体61が矢印AR22に示すように-Z方向側へ移動する。そして、
図6Aに示すように、ホルダ支持体61が再び-Z方向側に配置される。このようにして、ギア駆動部64がピニオンギア63を+Y方向から見て左回りの回転、右回りの回転を交互に繰り返すことにより、ホルダ支持体61およびホルダ支持体61に支持されたワークホルダ3をZ軸方向に沿って振動させる。
【0027】
図2に戻って、制御部10は、例えばPLC(Programable Logic Controller)であり、CPU(Central Processing Unit)ユニットと、入出力制御ユニットと、を有する。そして、制御部10は、入出力制御ユニットを介してホルダ駆動ユニット6のギア駆動部64、回転駆動部5、軸方向駆動部4および拡張駆動部8へ制御信号を出力することによりこれらの動作を制御する。制御部10は、回転主軸2がZ軸方向に沿って周期的に振動するように軸方向駆動部4を制御するとともに、ワークホルダ3がZ軸方向に沿って回転主軸2と同一周期で周期的に振動し且つ回転主軸2の振動波形との間に位相差がある振動波形となるようにホルダ駆動ユニット6のギア駆動部64を制御する。制御部10は、例えば軸方向駆動部4を制御して、回転主軸2をZ軸方向に沿った第1方向へ移動させるとともに、ギア駆動部64を制御して、ワークホルダ3を前述の第1方向とは反対方向の第2方向へ移動させる。
【0028】
制御部10は、例えば
図7Aに示すように回転主軸2の-Z方向側の端部が位置Pos11に配置されワークWの+Z方向側の端部が位置Pos12に配置された状態において、軸方向駆動部4を制御して、矢印AR13に示すように、回転主軸2を-Z方向へ移動させるとともに、ギア駆動部64を制御して、矢印AR12に示すように、ワークホルダ3を+Z方向側へ移動させる。これにより、
図7Bに示すように、回転主軸2の-Z方向側の端部が位置Pos21に配置されワークホルダ3に保持されたワークWの+Z方向側の端部が位置Pos22に配置され、回転主軸2とワークホルダ3とが互いに近接した状態となる。そして、制御部10は、
図7Bに示す状態において、矢印AR23に示すように、回転主軸2を+Z方向へ移動させるとともに、ギア駆動部64を制御して、矢印AR22に示すように、ワークホルダ3を-Z方向側へ移動させる。これにより、
図7Aに示すように、再び回転主軸2の-Z方向側の端部が位置Pos11に配置されワークホルダ3に保持されたワークWの+Z方向側の端部が位置Pos12に配置され、回転主軸2とワークホルダ3とが互いに離間した状態となる。そして、制御部10は、軸方向駆動部4およびギア駆動部64を制御して、回転主軸2の-Z方向への移動およびワークホルダ3の+Z方向側への移動と、回転主軸2の+Z方向への移動およびワークホルダ3の-Z方向側への移動と、を交互に繰り返すことにより、回転主軸2およびワークホルダ3をZ軸方向に沿って振動させる。
【0029】
また、制御部10は、例えば
図8Aに示すように、回転主軸2の-Z方向側の端部の振動波形とワークWの+Z方向側の端部の振動波形とが、それぞれ、振幅L1、L21の正弦波波形となるように、軸方向駆動部4およびギア駆動部64を制御する。ここで、制御部10は、回転主軸2の振動波形との間にπラジアンの位相差がある振動波形でワークホルダ3を振動させるようにホルダ駆動ユニット6のギア駆動部64を制御する。また、制御部10は、例えば回転主軸2のZ軸方向の移動速度が25m/minであり、ワークWの移動速度が25m/minとなるようにして、ワークWの回転主軸2に対する相対速度が50m/minとなるように軸方向駆動部4およびギア駆動部64を制御する。
【0030】
更に、制御部10は、ワークWの重量が大きくなるほど振動振幅が小さくなるようにワークホルダ3を振動させるようにホルダ駆動ユニット6のギア駆動部64を制御する。制御部10は、例えば
図8Bに示すように、ワークWの重量が大きくなると、それに伴い、ワークWの+Z方向側の端部の振動波形の振幅を振幅L21から振幅L21よりも小さい振幅L22に変化させるようギア駆動部64を制御する。この場合、制御部10は、回転主軸2の振動周期とワークWの振動周期とが等しくなるように、例えば回転主軸2のZ軸方向の移動速度が25m/minであり、ワークWの移動速度が12.5m/minとなるようにして、ワークWの回転主軸2に対する相対速度が37.5m/minとなるように軸方向駆動部4およびギア駆動部64を制御する。
【0031】
ここで、本実施の形態に係るホーニング加工装置の特徴について、比較例に係るホーニング加工装置と比較しながら説明する。比較例に係るホーニング加工装置は、
図9に示すようなリニアモータ9064によりワークホルダ3をZ軸方向へ駆動するホルダ駆動ユニット9006を備える。なお、
図9において、実施の形態と同様の構成については、
図2および
図4と同一の符号を付している。ホルダ駆動ユニット9006は、ワークホルダ3を支持するホルダ支持体9061と、長尺であり長手方向がZ軸方向に沿うよう姿勢で配置されたレール9661と、ホルダ支持体9061が固定されレール9661に懸架された状態でZ軸方向へ移動自在なスライド体9662と、を有する。ここで、ホルダ支持体9061は、主部9611と、主部9611の+Z方向側に固定された支持片612と、を有する。また、リニアモータ9064は、長尺でありレール9661に沿って配置された固定子9641と、固定子9641の長手方向に沿った中心軸J94方向への駆動力によりZ軸方向へ移動する可動子9642と、を有する。
【0032】
比較例に係るホルダ駆動ユニット9006では、例えばワークWのホーニング加工時において、ワークホルダ3を+Z方向へ移動させる際、可動子9642における固定子9641に対応する部分に矢印AR91で示す方向へ駆動力が作用する。また、加工孔Whにホーニングツール1が挿通された状態でホーニングツール1を-Z方向へ移動させる際、ホーニングツール1の砥石12がワークホルダ3に保持されたワークWの加工孔Whの内壁を-Z方向へ摺動することに伴って、ワークWに矢印AR92で示す方向へ砥石12と加工孔Whの内壁との間の摩擦に起因した抵抗力が加工孔Whの中心軸J2に沿って作用する。このように、比較例に係るホーニング加工装置では、加工孔Whの中心軸J2に直交する方向において、可動子9642における駆動力が作用する位置とワークWに加わる抵抗力が作用する位置とがずれている。このため、ホルダ支持体9061には、矢印AR93に示すような、ワークホルダ3の自重に伴う慣性力とワークWに加わる抵抗力によりホルダ支持体9061を弾性変形させる方向への力が作用する。そして、ホルダ支持体9061が弾性変形することによりホルダ支持体9061に支持されたワークホルダ3が保持するワークWの加工孔Whの中心軸J2がZ軸方向に対して傾斜してしまい、加工孔Whの加工精度が低下してしまう虞がある。
【0033】
これに対して、本実施の形態に係るホーニング加工装置では、
図3および
図4に示すように、ホルダ駆動ユニット6におけるラックギア62とピニオンギア63とが互いに噛合する部分が、ワークホルダ3に保持されたワークWの加工孔Whの中心軸J2近傍に位置している。このため、ホルダ駆動ユニット6は、ワークホルダ3における中心軸J2、即ち、回転主軸2の中心軸J1の延長線上に相当する部分へ中心軸J1、J2に沿った方向へ駆動力を作用させることができる。つまり、ホーニング加工時において、ワークホルダ3に作用する駆動力と、ワークホルダ3の自重に伴う慣性力とワークWに加わる抵抗力と、が略中心軸J1,J2上で働くようにすることができる。これにより、ホルダ駆動ユニット6のホルダ支持体61を弾性変形させる方向への力が低減されるので、ワークホルダ3が保持するワークWの中心軸J2がZ軸に対して傾斜してしまうことを抑制でき、その分、加工孔Whの加工精度を高めることができる。
【0034】
以上説明したように、軸方向駆動部4が、ホーニングツール1が固定された回転主軸2をZ軸方向へ移動させる。また、ホルダ駆動ユニット6が、ワークホルダ3における回転主軸2の中心軸J1の延長線上に相当する部分にZ軸方向へ駆動力を作用することにより、ワークホルダ3をZ軸方向へ移動させる。これにより、ワークWのホーニング加工時において、ホーニングツール1のワークWに対する相対的な速度を上昇させつつ、回転主軸2のZ軸方向において、ホルダ駆動ユニット6がワークホルダWに駆動力を作用させる位置と、ワークホルダ3に保持されたワークWの加工孔Whとホーニングツール1の砥石12との間の摩擦抵抗に起因した抵抗力が作用する位置と、を略一致させることができる。従って、ワークホルダ3が傾く方向へ作用する力の発生が抑制されるので、ワークWの加工孔Whの中心軸J2がZ軸方向に対して傾斜することが抑制され、ワークWの加工精度を向上させることができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る制御部10は、回転主軸2の振動波形との間にπラジアンの位相差がある振動波形でワークホルダ3を振動させるようにホルダ駆動ユニット6を制御する。これにより、ワークWのホーニング加工時におけるホーニングツール1のワークWに対する相対的な速度を最も大きくすることができるので、その分、加工効率を高めることができる。
【0036】
ところで、ホルダ駆動ユニットをリニアモータ或いは送り螺子ナットを利用して実現しようとした場合、リニアモータの固定子或いは送り螺子が長尺であるため、ワークホルダ3の-Z方向側にホルダ駆動ユニット全体を配置できだけのスペースを設ける必要がある。特に、リニアモータを利用する場合、可動子を高速駆動させようとするとその分固定子が大型化してしまう。これに対して、本実施の形態に係るホルダ駆動ユニット6は、前述のラックギア62と、ラックギア62と回転主軸2の中心軸J1の延長線上において噛合するピニオンギア63と、を備える。これにより、ラックギア62、ピニオンギア63のようなリニアモータの固定子或いは送り螺子と比較して小型の部品でホルダ駆動ユニット6が実現されているので、その分、ホルダ駆動ユニット6全体の小型化を図ることができる。
【0037】
更に、本実施の形態に係るワークホルダ3では、ワーク支持機構が、ワークWの加工孔Whの中心軸J2と回転主軸2の中心軸J1とを一致するように、ワークWをX軸方向とY軸方向との少なくとも一方へ移動可能に支持する。これにより、ワークホルダ3を振動させる際に、ワークWの加工孔Whの中心軸J2と回転主軸2の中心軸J1とがずれていることに起因した歪みがワークWに加わることを抑制することができるので、ワークホルダ3全体が傾く方向への力の発生を抑制できる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば制御部10が、回転主軸2の振動波形との間にπラジアン未満の位相差がある振動波形でワークホルダ3を振動させるようにホルダ駆動ユニット6のギア駆動部64を制御するものであってもよい。
【0039】
実施の形態において、ホルダ駆動ユニットが、ホルダ支持体61の支持片612の+Z方向側において、ワークホルダ3全体をZ軸方向に直交する方向、即ち、XY平面に沿った方向へ揺動自在に支持する揺動機構(図示せず)と、ワークホルダ3の揺動を減殺する揺動減殺機構(図示せず)と、を有するものであってもよい。ここで、揺動減殺機構としては、例えばワークホルダ3の側方に当接しZ軸に直交する方向へ移動自在であるスライダ(図示せず)と、スライダを移動自在に保持するスライダ保持部(図示せず)と、スライダ保持部が保持するスライダをワークホルダ3に近づく方向へ付勢する付勢部(図示せず)と、を有するものであってもよい。
【0040】
本構成によれば、ワークWをZ軸方向に直交するXY平面内においてワークWの加工孔Whの中心軸J2が回転主軸2の中心軸J1と一致するように調整することができる。
【0041】
実施の形態において、利用者が前記主軸の振動波形の振幅と前記ワークホルダの振動波形の振幅との振幅比率を示す振幅比率情報を入力する入力部(図示せず)を備えるものであってもよい。ここで、入力部としては、例えばタッチパッド、キー入力装置等が挙げられる。この場合、制御部10は、入力部を介して入力された振幅比率情報が示す振幅比率で回転主軸2とワークホルダ3とが振動するように軸方向駆動部4とホルダ駆動ユニット6とを制御すればよい。
【0042】
本構成によれば、利用者が、入力部を介して例えばワークWの重量が大きくなるほど回転主軸2の振動振幅を一定としてワークホルダ3の振動振幅が小さくなるように振幅比率情報を入力すれば、ワークWの重量が大きい場合、それに応じてワークホルダ3を振動させる際のワークホルダ3の加速度を低減させることができる。従って、重量が大きいワークWをホーニング加工する際にホルダ駆動ユニット6に加わる負荷を低減することができる。
【0043】
実施の形態では、ホルダ駆動ユニット6がベース92に固定されている例について説明した。但し、これに限らず、
図10および
図11に示すように、長尺であり長手方向が鉛直方向に沿う姿勢で配置されるとともに、鉛直上側の端部でヘッド93を支持する支柱2091にホルダ駆動ユニット6が固定された機体2009を備えるものであってもよい。なお、
図10および
図11において、実施の形態と同様の構成については
図1および
図2と同一の符号を付している。ここで、ホルダ駆動ユニット6は、支柱2091における鉛直下側の他端部に固定されている。ここで、ホルダ駆動ユニット6は、そのピニオンギア63が固定されたシャフト642の中心軸J3がX軸方向に沿う姿勢で配置されている。
【0044】
本構成によれば、ヘッド93およびホルダ駆動ユニット6を支柱2091近傍に纏めて配置することができるので、その分、機体2009の小型化を図ることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0046】
本出願は、2022年6月14日に出願された日本国特許出願特願2022-095448号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2022-095448号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、トランスミッションに用いられるギア、インジェクタ部品等を加工するホーニング加工装置に好適である。
【符号の説明】
【0048】
1:ホーニングツール、2:回転主軸、2a:下端部、2b:スプラインシャフト部、3:ワークホルダ、4:軸方向駆動部、5:回転駆動部、6:ホルダ駆動ユニット、8:拡張駆動部、9,2009:機体、10:制御部、11:ツール本体、12:砥石、31:基台部、32:押え部材、32a:窓部、33,2091:支柱、34:ホルダ本体、41:送り螺子機構、41a:送り螺子ナット、41b,85b:送り螺子、42:スライド本体、43:案内レール、45,86c:カップリング、44,51,81,641:モータ、44a,51a:モータ軸、52、54:プーリ、53:ベルト、55:スプライン軸受、61:ホルダ支持体、62:ラックギア、62a:歯、63:ピニオンギア、64:ギア駆動部、65:レール、69:駆動部本体、82:歯車機構、82a:歯車軸、82b:歯車、85:ロッド駆動機構、85a:従動体、86a:スプラインシャフト、86b:接続部材、87:拡張ロッド、91:支柱、92:ベース、93:ヘッド、341:保持筒、341a,342a,342b,343c:貫通孔、341b:螺子孔、342:保持リング、343:ベース部材、343a:本体部、343b:支柱部、345:ワーク回転規制部、345a:突条部、346:イモ螺子、347:ワーク軸方向移動規制部、347a:リブ、611:主片、611a:長孔、612:支持片、631:ホイール、632:ローラ、642:シャフト、643:減速機、3441,3442:ピン、J1,J2,J3:中心軸、W:ワーク、Wh:加工孔
【要約】
ホーニング加工装置は、ホーニングツール(1)と、ホーニングツール(1)が固定された回転主軸(2)と、回転主軸(2)をZ軸方向へ移動させる軸方向駆動部(4)と、ワーク(W)の加工孔(Wh)の中心軸(J2)と回転主軸(2)の中心軸(J1)とが一致した状態でワーク(W)を保持するワークホルダ(3)と、ワークホルダ(3)における回転主軸(2)の中心軸(J1)の延長線上に相当する部分に中心軸(J1)に沿った方向へ駆動力を作用することにより、ワークホルダ(3)を中心軸(J1)に沿った方向へ移動させるホルダ駆動ユニット(6)と、を備える。