(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】熱接合装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230407BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20230407BHJP
H01L 21/607 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
B23K20/10
H01L21/607 C
(21)【出願番号】P 2018244409
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】園田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆稔
(72)【発明者】
【氏名】小塩 哲平
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-198629(JP,A)
【文献】特開2007-088150(JP,A)
【文献】特開2006-269741(JP,A)
【文献】特開2012-094912(JP,A)
【文献】特開2005-243665(JP,A)
【文献】特開2004-207294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-21/607
H01L 21/50-21/52
H01L 21/58
H01L 21/02
H05K 3/32- 3/34
H05K 13/00-13/08
B23K 20/00-20/26
B24B 5/00- 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、下端面で部品を吸着する接合ツールとを備え、前記基板と前記接合ツールとをともに加熱した状態で前記接合ツールにより吸着した前記部品を前記基板に接合させる熱接合装置であって、
上面に前記接合ツールの下端面が接触される
直方体形状のクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を加熱するクリーニング部材加熱部と、
前記接合ツールとともに前記クリーニング部材が加熱された状態で前記接合ツールの下端面を前記クリーニング部材の前記
上面に接触させ、その状態で前記接合ツールに対して前記クリーニング部材を横方向に相対移動させることで前記接合ツールの前記下端面をクリーニングするクリーニング動作制御部と、
前記クリーニング動作制御部による前記接合ツールの前記下端面のクリーニングが実行される前に、前記クリーニング部材加熱部によって前記クリーニング部材が加熱された状態で
前記上面に沿った平面の方向である前記クリーニング部材の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段によって検出された前記クリーニング部材の姿勢の情報を表示する表示手段とを備えた熱接合装置。
【請求項2】
基板を保持する基板保持部と、下端面で部品を吸着する接合ツールとを備え、前記基板と前記接合ツールとをともに加熱した状態で前記接合ツールにより吸着した前記部品を前記基板に接合させる熱接合装置であって、
上面に前記接合ツールの下端面が接触される
直方体形状のクリーニング部材と、
前記クリーニング部材を加熱するクリーニング部材加熱部と、
前記接合ツールとともに前記クリーニング部材が加熱された状態で前記接合ツールの下端面を前記クリーニング部材の前記
上面に接触させ、その状態で前記接合ツールに対して前記クリーニング部材を横方向に相対移動させることで前記接合ツールの前記下端面をクリーニングするクリーニング動作制御部と、
前記クリーニング動作制御部による前記接合ツールの前記下端面のクリーニングが実行される前に、前記クリーニング部材加熱部によって前記クリーニング部材が加熱された状態で
前記上面に沿った平面の方向である前記クリーニング部材の姿勢を検出する姿勢検出手段とを備え、
前記姿勢検出手段は、検出した前記クリーニング部材の姿勢が予め定められた目標姿勢
である前記接合ツールの上下軸に対する垂直方向からずれていた場合にそのずれが許容範囲内であるか否かを判定し、
前記クリーニング動作制御部は、前記姿勢検出手段により前記クリーニング部材の姿勢の前記目標姿勢からのずれが許容範囲内であると判定された場合に、前記接合ツールの前記下端面のクリーニングを実行する熱接合装置。
【請求項3】
前記姿勢検出手段により前記クリーニング部材の姿勢の前記目標姿勢からのずれが許容範囲内でないと判定された場合に、前記姿勢検出手段によって検出された前記クリーニング部材の姿勢の情報を表示する表示手段を備えた請求項2に記載の熱接合装置。
【請求項4】
前記姿勢検出手段は前記クリーニング部材の姿勢の検出を少なくとも前記熱接合装置のセットアップ時に行う請求項1~3のいずれかに記載の熱接合装置。
【請求項5】
前記姿勢検出手段は、前記クリーニング部材上の複数の計測点それぞれの高さを計測して前記クリーニング部材の姿勢を検出する請求項1~4のいずれかに記載の熱接合装置。
【請求項6】
前記姿勢検出手段により前記クリーニング部材の姿勢が検出されている間、前記クリーニング部材は、前記クリーニング部材加熱部により加熱されて前記接合ツールをクリーニングするときとほぼ同一の温度にされる請求項1~5のいずれかに記載の熱接合装置。
【請求項7】
前記接合ツールは超音波振動子により超音波振動される超音波ホーンに取り付けられている請求項1~6のいずれかに記載の熱接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱された接合ツールにより吸着した部品を加熱された基板に接合して部品の熱接合作業を行う熱接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱接合装置は半導体チップ等の部品を基板に熱接合する装置であり、基板を保持する基板保持部と、下端面で部品を吸着する接合ツールとを備え、基板と接合ツールとをともに加熱した状態で接合ツールにより吸着した部品を基板に接合させるようになっている。このような構成の熱接合装置では、基板に部品を熱接合する作業(熱接合作業)の回数が多くなってくると、接合ツールの下端面が汚れてきて接合ツールに必要な性能(部品の吸着性能および実装時に必要な部品との摩擦力)が低下する。このため熱接合装置では、熱接合作業の連続実行回数が一定数に達すると、作業を一時的に中断し、接合ツールの下端面をクリーニングするクリーニング作業を行うようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
接合ツールのクリーニング作業では、砥石等のクリーニング部材の表面に接合ツールの下端面を接触させたうえで接合ツールに対してクリーニング部材を横方向に相対移動(往復移動)させる。これにより接合ツールの下端面に付着した汚れがクリーニング部材の表面との摩擦によって削ぎ落されるとともに、接合ツールの下端面に適度な面粗さを生じさせる微細な凹凸が接合ツールの下端面に新たに形成されるので、使用により低下した接合ツールの性能が回復し、維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記接合ツールのクリーニング作業において、クリーニング部材の姿勢が予め定められた目標姿勢からずれていた(傾いていた)場合には、クリーニング作業後の接合ツールの下端面が正常な状態(接合ツールの上下軸に対して垂直な平面となる状態)から変化してしまい、クリーニング作業によって却って接合ツールの性能が低下し、ひいては熱接合装置の生産性を低下させてしまう場合があるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、性能が損なわれないように接合ツールをクリーニングして生産性を高めることができる熱接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱接合装置は、基板を保持する基板保持部と、下端面で部品を吸着する接合ツールとを備え、前記基板と前記接合ツールとをともに加熱した状態で前記接合ツールにより吸着した前記部品を前記基板に接合させる熱接合装置であって、上面に前記接合ツールの下端面が接触される直方体形状のクリーニング部材と、前記クリーニング部材を加熱するクリーニング部材加熱部と、前記接合ツールとともに前記クリーニング部材が加熱された状態で前記接合ツールの下端面を前記クリーニング部材の前記上面に接触させ、その状態で前記接合ツールに対して前記クリーニング部材を横方向に相対移動させることで前記接合ツールの前記下端面をクリーニングするクリーニング動作制御部と、前記クリーニング動作制御部による前記接合ツールの前記下端面のクリーニングが実行される前に、前記クリーニング部材加熱部によって前記クリーニング部材が加熱された状態で前記上面に沿った平面の方向である前記クリーニング部材の姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記姿勢検出手段によって検出された前記クリーニング部材の姿勢の情報を表示する表示手段とを備えた。
【0008】
もうひとつの本発明の熱接合装置は、基板を保持する基板保持部と、下端面で部品を吸着する接合ツールとを備え、前記基板と前記接合ツールとをともに加熱した状態で前記接合ツールにより吸着した前記部品を前記基板に接合させる熱接合装置であって、上面に前記接合ツールの下端面が接触される直方体形状のクリーニング部材と、前記クリーニング部材を加熱するクリーニング部材加熱部と、前記接合ツールとともに前記クリーニング部材が加熱された状態で前記接合ツールの下端面を前記クリーニング部材の前記上面に接触させ、その状態で前記接合ツールに対して前記クリーニング部材を横方向に相対移動させることで前記接合ツールの前記下端面をクリーニングするクリーニング動作制御部と、前記クリーニング動作制御部による前記接合ツールの前記下端面のクリーニングが実行される前に、前記クリーニング部材加熱部によって前記クリーニング部材が加熱された状態で前記上面に沿った平面の方向である前記クリーニング部材の姿勢を検出する姿勢検出手段とを備え、前記姿勢検出手段は、検出した前記クリーニング部材の姿勢が予め定められた目標姿勢である前記接合ツールの上下軸に対する垂直方向からずれていた場合にそのずれが許容範囲内であるか否かを判定し、前記クリーニング動作制御部は、前記姿勢検出手段により前記クリーニング部材の姿勢の前記目標姿勢からのずれが許容範囲内であると判定された場合に、前記接合ツールの前記下端面のクリーニングを実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、性能が損なわれないように接合ツールをクリーニングして部品実装装置の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態における熱接合装置の全体構成図
【
図2】本発明の一実施の形態における熱接合装置の熱接合作業に関する部分の構成図
【
図3】本発明の一実施の形態における熱接合装置のクリーニング作業に関する部分の構成図
【
図4】本発明の一実施の形態における熱接合装置の姿勢検出作業に関する部分の構成図
【
図5】本発明の一実施の形態における熱接合装置が実行する姿勢検出作業で高さを計測する計測点の配置の一例を示すクリーニング部材の斜視図
【
図6】本発明の一実施の形態における熱接合装置が備える姿勢検出部により検出されるクリーニング部材の姿勢の目標姿勢からのずれを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施の形態における熱接合装置1を示している。熱接合装置1は、基板2に半導体チップ等の部品3を接合して部品実装基板を製造する装置である。熱接合装置1は、
図1に示すように、部品3を供給する部品供給部11、基板2を保持する基板保持部12、基板保持部12を移動させる移動テーブル13、昇降機構としての昇降シリンダ14、昇降シリンダ14によってホーン支持部材15を介して昇降される超音波ホーン16および超音波ホーン16に取り付けられた接合ツール17のほか、制御装置18と表示部19とを備えている。
【0012】
図1において、部品供給部11には基板2に接合される部品3が上面に載置されている。部品3の下面側には複数の金属バンプ3Bが形成されている。基板保持部12は上面に基板2を吸着して保持する。基板2の上面には部品3の金属バンプ3Bと接合される電極部(図示せず)が形成されている。移動テーブル13は例えばXYテーブルから成り、基板保持部12を横方向に移動させる。昇降シリンダ14はピストンロッド14Rを下方に向けており、横方向に移動自在となっている。
【0013】
ホーン支持部材15は昇降シリンダ14のピストンロッド14Rの下端に取り付けられており、超音波ホーン16はホーン支持部材15によって支持されている。超音波ホーン16は金属製であり、全体として棒状に延びた形状を有している。超音波ホーン16はホーン支持部材15によってほぼ水平な方向に延び、かつ両端が自由な状態に支持されている。
【0014】
超音波ホーン16の一端側には超音波振動子16Sが取り付けられている。超音波振動子16Sが制御装置18の加振制御部18a(
図1)から制御されて超音波振動すると、超音波ホーン16の全体が、ホーン支持部材15によって支持された箇所が節となる振動モードで、超音波ホーン16の長手方向に振動(縦振動)する。
【0015】
接合ツール17は超音波ホーン16の下面側に備えられている。接合ツール17は超音波ホーン16に取り付けられた状態で超音波ホーン16の下面から下方に突出しており、接合ツール17の下端面17aは部品3の上面を真空吸着する平らな吸着面となっている。接合ツール17は超音波振動した状態の超音波ホーン16の定在波の波形(腹および節の位置)を基準とする最適の部分に取り付けられている。このため接合ツール17は超音波ホーン16の縦振動により超音波ホーン16の長手方向に振動する。
【0016】
図1および
図2において、超音波ホーン16の内部には吸引管路21が設けられている。吸引管路21の一端側は接合ツール17に繋がっており、他端側は超音波ホーン16の外部を延びる外部管路22に繋がっている。外部管路22は真空源23に繋がっており、真空源23が作動することで外部管路22を通じて接合ツール17に真空圧が供給される。これにより接合ツール17の下端面17aに真空吸着力が発生し、接合ツール17に部品3を吸着させることができる。
【0017】
図1および
図2において、超音波ホーン16にはツール加熱部としてのツール用ヒータ24と、ツール温度検出部としてのツール用熱電対25が設けられている。ツール用ヒータ24とツール用熱電対25はそれぞれ熱接合装置1が備える制御装置18のツール用加熱制御部18bに接続されている。
【0018】
ツール用ヒータ24はツール用加熱制御部18bに制御されて超音波ホーン16を加熱し、更に超音波ホーン16を通じて接合ツール17を加熱する。また、接合ツール17が部品3を吸着している場合には、接合ツール17を通じて部品3も加熱する。ツール用熱電対25は超音波ホーン16の(すなわち接合ツール17の)温度を検出してその情報をツール用加熱制御部18bに送り、ツール用加熱制御部18bはツール用熱電対25から送られてくる接合ツール17の温度に基づいてツール用ヒータ24を制御する。
【0019】
図1および
図2において、基板保持部12には基板保持部加熱部としての基板用ヒータ26と、基板保持部温度検出部としての基板用熱電対27が設けられている。基板用ヒータ26と基板用熱電対27はそれぞれ制御装置18の基板用加熱制御部18cに接続されている。
【0020】
基板用ヒータ26は基板用加熱制御部18cに制御されて基板保持部12を加熱し、更に基板保持部12を通じて基板保持部12に保持された基板2を加熱する。基板用熱電対27は基板保持部12の温度を検出してその情報を基板用加熱制御部18cに送り、基板用加熱制御部18cは基板用熱電対27から送られてくる基板保持部12の温度に基づいて基板用ヒータ26を制御する。
【0021】
図1および
図3において、熱接合装置1は更に、クリーニング部材31、クリーニング部材ホルダ32およびホルダ移動機構33を備えている。クリーニング部材31は例えば直方体形状の砥石から成っている。クリーニング部材31の表面(上面)31Sは接合ツール17の下端面17aをクリーニングするクリーニング面であり、後述する接合ツール17のクリーニング作業時には、接合ツール17の下端面17aが接触される。ここでは、クリーニング部材31は砥石であり、その全体が表面31Sと同じ材質から構成されたものとなっているが、表面31S以外の部分が表面31Sとは異なる材質からなるもの(例えば、直方体状のベース部材の上面にクリーニング部材31の表面31Sに相当する膜状の部材を取り付けたもの)であってもよい。
【0022】
図1および
図3において、クリーニング部材31はクリーニング部材ホルダ32に保持されている。クリーニング部材31は姿勢調整手段32Rを介してクリーニング部材ホルダ32に保持されている。作業者は、姿勢調整手段32Rを操作することによって、クリーニング部材ホルダ32に対するクリーニング部材31の姿勢を調節することができる。
【0023】
クリーニング部材31の姿勢の調整時における目標となる姿勢として、クリーニング部材31の目標姿勢が予め定められている。目標姿勢は、クリーニング作業後の接合ツール17の下端面17aが正常な状態(接合ツール17の上下軸に対して垂直な平面となる状態)を維持するようにするために定められるものである。従って、
図3に示すように、接合ツール17の上下軸VJに対して垂直な平面を基準面SSとして定めると、接合ツール17の下端面17aは基準面SSに対して平行な面となる状態が正常な状態として規定される。そして、この基準面SSに対して表面31Sが平行(ほぼ平行)となるようなクリーニング部材31の姿勢が目標姿勢として定められる。この場合、接合ツール17の上下軸VJが鉛直方向に一致している場合には、基準面SSは水平面に一致する。
【0024】
図1および
図3において、ホルダ移動機構33は制御装置18のクリーニング動作制御部18dによって制御され、クリーニング部材ホルダ32を横方向(接合ツール17の上下軸VJに対して垂直な方向)に往復移動させる。これによりクリーニング部材ホルダ32に保持されたクリーニング部材31の表面31Sは横方向に往復移動し、クリーニング部材31の表面31Sに接触した接合ツール17の下端面17aは、クリーニング部材31の表面31Sとの間の摩擦によって表面がわずかに削られつつクリーニングされる。
【0025】
図1および
図3において、クリーニング部材ホルダ32にはクリーニング部材加熱部としてのクリーニング部材用ヒータ34と、クリーニング部材温度検出部としてのクリーニング部材用熱電対35が設けられている。クリーニング部材用ヒータ34とクリーニング部材用熱電対35はそれぞれ制御装置18のクリーニング部材用加熱制御部18eに接続されている。
【0026】
クリーニング部材用ヒータ34はクリーニング部材用加熱制御部18eに制御され、クリーニング部材ホルダ32を加熱し、更にクリーニング部材ホルダ32を通じてクリーニング部材ホルダ32に保持されたクリーニング部材31を加熱する。クリーニング部材用熱電対35はクリーニング部材ホルダ32の(すなわちクリーニング部材31の)温度を検出してその情報をクリーニング部材用加熱制御部18eに送り、クリーニング部材用加熱制御部18eはクリーニング部材用熱電対35から送られてくるクリーニング部材31の温度に基づいてクリーニング部材用ヒータ34を制御する。
【0027】
熱接合装置1による部品3の熱接合作業(基板2の上面に部品3を熱接合する作業)は、ツール用ヒータ24と基板用ヒータ26によって接合ツール17と基板2がそれぞれ所定の温度にされた状態で行われる。熱接合作業では先ず、基板2を保持した基板保持部12を移動テーブル13によって移動させ、下端面17aに部品3を吸着保持した接合ツール17の下方に基板2を位置させる。そして、昇降シリンダ14を作動させて超音波ホーン16を(すなわち接合ツール17を)下降させ(
図2中に示す矢印D)、部品3の下面に形成された金属バンプ3Bを基板2の上面の電極部に押し付ける(
図2)。
【0028】
金属バンプ3Bを基板2の電極部に押し付けたら、加振制御部18aが超音波振動子16Sを作動させて、超音波ホーン16を超音波振動させる。これにより接合ツール17が超音波ホーン16の長手方向に超音波振動し、金属バンプ3Bを介して部品3と基板2が接合される。
【0029】
このような構成の熱接合装置1では、上記のような熱接合作業を繰り返し実行していると、接合ツール17の下端面17aが汚れてきて接合ツール17に必要な性能(部品3の吸着性能および実装時に必要な部品3との摩擦力)が低下する。このため熱接合作業の連続実行回数が一定数に達した場合には、作業を一時的に中断して接合ツール17の下端面17aをクリーニングする作業(接合ツール17のクリーニング作業)を実行する。
【0030】
接合ツール17のクリーニング作業では、予め、接合ツール17の温度とクリーニング部材31の温度をそれぞれ熱接合作業時に対応した所定の温度に設定しておき、そのうえで、接合ツール17の下方にクリーニング部材31を位置させる。そして、接合ツール17の下方にクリーニング部材31が位置したら、昇降シリンダ14を作動させて、超音波ホーン16を(すなわち接合ツール17を)下降させる(
図3。図中に示す矢印L)。
【0031】
超音波ホーン16を下降させることによって接合ツール17の下端面17aがクリーニング部材31の表面31Sに接触したら、クリーニング動作制御部18dはクリーニング部材ホルダ32を横方向へ往復移動させる(
図3中に示す矢印M)。これにより接合ツール17の下端面17aはクリーニング部材31の表面31Sに対して相対移動を繰り返し、接合ツール17の下端面17aに付着した汚れはクリーニング部材31の表面31Sとの間の摩擦によって削ぎ落とされる。また、接合ツール17の下端面17aには、部品3の吸着性能および部品3との摩擦力を高める適度な面粗さを生じさせる微細な凹凸が新たに形成される。
【0032】
このように、本実施の形態において、制御装置18のクリーニング動作制御部18dは、接合ツール17とともにクリーニング部材31が加熱された状態で接合ツール17の下端面17aをクリーニング部材31の表面31Sに接触させ、その状態で接合ツール17に対してクリーニング部材31を横方向に相対移動(ここではクリーニング部材31を横方向に移動)させることで接合ツール17の下端面17aをクリーニングするようになっている。
【0033】
クリーニング作業は、クリーニングするクリーニング部材31とクリーニングされる接合ツール17がそれぞれ熱接合作業時と同じ温度に調整された状態で実行される。このため、クリーニング作業によって熱接合作業が中断されている間も接合ツール17の温度は熱接合作業時と同じ温度に保たれ、接合ツール17には熱変形が生じないので、クリーニング作業後、すぐに熱接合作業に移行(熱接合作業を再開)することができる。
【0034】
上記のクリーニング作業では、前述したように、接合ツール17の下端面17aは、クリーニング部材31の表面31Sとの間の摩擦によって表面がわずかに削られる。このため、クリーニング部材31が目標姿勢からずれて(傾いて)いた場合には、クリーニング作業後の接合ツール17の下端面17aは、基準面SSに対して傾いた面になる等、正常な状態(接合ツール17の上下軸VJに対して垂直な平面となる状態)とはならない。
【0035】
このため本実施の形態では、接合ツール17のクリーニングが実行される前(少なくとも熱接合装置1のセットアップ時)に、クリーニング部材31の姿勢を検出する姿勢検出作業を行う。そして、その検出結果(姿勢の情報)を表示手段としての表示部19に表示し、作業者が適切な対応をとり得るようにしている。次に、このクリーニング部材31の姿勢検出作業について説明する。
【0036】
クリーニング部材31の姿勢検出作業は姿勢検出手段40(
図4)が実行する。姿勢検出手段40は、制御装置18の姿勢検出部18f(
図1および
図4)、昇降シリンダ14および接合ツール17の下端面17aの高さを検出する高さセンサ17Sを備えて構成されている。
【0037】
姿勢検出手段は、クリーニング部材用ヒータ34によってクリーニング部材31が加熱された状態で、姿勢検出部18fが、クリーニング部材31の表面31S上の複数の計測点Pの高さを計測することによって行う。
図5は計測点Pの配置の一例を示しており、マトリクス状に6(=2×3)個の計測点P(P1,P2,P3,P4,P5,P6)が設定されるようにした場合の例である。
【0038】
計測点Pの高さの計測は、クリーニング部材31の上方から昇降シリンダ14によって接合ツール17を下降させ、接合ツール17の下端面17aがクリーニング部材31の表面31Sに接触したときの接合ツール17の下端面17aの高さを高さセンサ17Sによって読み取ることによって行う。なお、
図5に示した計測点Pの配置は一例であり、数も並びも任意に設定することができる。
【0039】
計測点Pの計測は、横方向の座標が分かっている所定の位置から接合ツール17を下降させて接合ツール17の下端面17aをクリーニング部材31の表面31Sに当接させ、その当接したところを計測点Pとしてその高さを読み取る。但し、これは一例であり、他の方法によってもよい。
【0040】
姿勢検出部18fは、姿勢検出作業を行うときは、先ず、クリーニング部材用ヒータ34によってクリーニング部材31を加熱することにより、クリーニング部材31の温度がクリーニング作業のときと同一(ほぼ同一)の温度になるようにする。そして、上記の要領で複数の計測点Pについて高さ計測を行い、その結果に基づいて、基準面SSに対するクリーニング部材31の姿勢を検出する。
【0041】
クリーニング部材31の姿勢の検出では、先ず、計測した複数の計測点Pの全てが同一の平面内に位置しているか否かを調べる.その結果、複数の計測点Pのうちひとつでも同一の平面内(但し、一定の許容値内)に位置していなかった場合には、そのクリーニング部材31の表面31Sは平坦でないと判断し、クリーニング部材31自体が不良であると判定する。そして、表示部19に例えば「クリーニング部材不良」という文字を表示させることによって、クリーニング部材31そのものが不良である旨の情報を、表示部19を通じて作業者に通知する。
【0042】
これに対し、姿勢検出部18fは、計測した複数の計測点Pの全てが同一の平面内に位置していた場合には、クリーニング部材31の表面31Sは平坦であると判断する。そして、更に、クリーニング部材31の表面31Sに沿った平面としての計測平面KS(
図6)が、基準面SSに対して平行(ほぼ平行)となっているか否かに基づいて、クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれが許容範囲内であるか否かを判定する。
【0043】
ここで、計測平面KSが基準面SSに対して平行(ほぼ平行)であるか否かの判断は、計測平面KS上に定めた複数点の高さ(基準面SSからの高さ)に基づいて、
図6に示す計測平面KSの基準面SSに対する傾き角θを求め、その求めた傾き角θが予め定められた基準角度よりも大きいか否かによって行う。そして、求めた傾き角θが基準角度よりも小さい場合には計測平面KSは(すなわち接合ツール17の下端面17aは)基準面SSに対して平行(ほぼ平行)であると判断し、クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれは許容範囲内であると判定する。一方、求めた傾き角θが基準角度よりも大きい場合には計測平面KSは基準面SSに対して平行でないと判断し、クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれは許容範囲外であると判定する。なお、上記判断は、傾き角θの代わりに、クリーニング部材31の表面31Sにおける高低差が許容量よりも大きいか否かによって行ってもよい。
【0044】
姿勢検出部18fは、クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれが許容範囲内であると判定した場合には、表示部19に例えば「OK」という文字を表示させることによって、クリーニング部材31の姿勢の情報を、表示部19を通じて作業者に通知する。一方、姿勢検出部18fは、クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれが許容範囲外であると判定した場合には、表示部19に例えば「NG」という文字を表示させることによって、クリーニング部材31の姿勢の情報を、表示部19を通じて作業者に通知する。
【0045】
作姿勢検出作業の結果、表示部19に「OK」と表示された場合には、作業者は、制御装置18に対して所定の操作を行うことで、熱接合装置1にクリーニング作業を実行させる。或いは、表示部19に「OK」と表示されることなく、自動的にクリーニング動作制御部18dが接合ツール17のクリーニング作業を開始するようになっていてもよい。クリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれが許容範囲内である状態でクリーニング作業が実行されることで、クリーニング作業後も接合ツール17の下端面17aは正常な状態に維持される。なお、表示部19に「OK」と表示されることなく、自動的にクリーニング動作制御部18dが接合ツール17のクリーニング作業を開始するようになっている場合には、表示部19における検出結果の表示は必ずしも必要ではない。
【0046】
一方、姿勢検出作業の結果、表示部19に「NG」と表示された場合には、作業者は、姿勢調整手段32Rを操作してクリーニング部材ホルダ32に対するクリーニング部材31の姿勢を再調整し、そのうえで再度、姿勢検出作業を再度実行する。そして、表示部19に「OK」と表示されるまで姿勢検出作業を繰り返す。これによりクリーニング部材31の姿勢の目標姿勢からのずれを許容範囲内にすることができ、そのうえでクリーニング作業を行うことで、クリーニング作業後も接合ツール17の下端面17aは正常な状態に維持される。
【0047】
また、姿勢検出作業の結果、クリーニング部材31自体が不良であり、表示部19に「クリーニング部材不良」と表示された場合には、作業者は、クリーニング部材31をクリーニング部材ホルダ32から取り外したうえで新たな別のクリーニング部材31をクリーニング部材ホルダ32に設置し、改めて姿勢検出作業を実行する。そして、表示部19に「OK」と表示されるまで姿勢検出作業を繰り返すことにより、クリーニング部材31の姿勢を目標姿勢にすることができ、そのうえでクリーニング作業を行うことで、クリーニング作業後も接合ツール17の下端面17aは正常な状態に維持される。
【0048】
このように、本実施の形態における熱接合装置1では、姿勢検出部18fが検出したクリーニング部材31の姿勢の情報が表示され、作業者はクリーニング部材31の姿勢が目標姿勢からずれている場合にはそれをクリーニング作業の実行前に把握することができる。これにより作業者はクリーニング部材ホルダ32上でのクリーニング部材31の姿勢を修正する等の適切な処置をとることができるので、クリーニング作業後も接合ツール17の下端面17aを正常な状態(接合ツール17の上下軸VJに対して垂直な平面となる状態)に維持できる。このため、部品3の吸着性能および部品3との摩擦力の回復のために行った接合ツール17のクリーニング作業によって部品3の吸着性能および部品3との摩擦力が却って低下しまうといった不都合は生じず、接合ツール17の下端面17aをクリーニングする効果によって、熱接合装置1の生産性を高めることができる。
【0049】
なお、前述したように、姿勢検出手段40によりクリーニング部材31の姿勢が検出されている間、クリーニング部材31はクリーニング部材用ヒータ34により加熱されて、接合ツール17をクリーニングするときと同一(ほぼ同一)の温度にされており、姿勢検出作業の段階で既にその後のクリーニング作業と同様の熱環境が実現されている。このため、姿勢検出作業が終了した後にはそのままクリーニング作業に移行することができ、クリーニング部材31の姿勢検出から接合ツール17のクリーニング作業に至るまでの作業時間を短くすることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態における熱接合装置1では、接合ツール17の下端面17aのクリーニング作業の実行前にクリーニング部材31の姿勢を検出するようになっており、作業者は必要に応じて適切な処理(クリーニング部材31の姿勢の修正等)をとることができる。このため接合ツール17の下端面17aはクリーニング作業後も正常な状態(接合ツール17の上下軸VJに対して垂直な平面となる状態)が維持され、クリーニング作業によって部品3の吸着性能および部品3との摩擦力が却って低下するといった事態は生じない。このように本実施の形態における熱接合装置1によれば、性能が損なわれないように接合ツール17をクリーニングして生産性を高めることができる。
【0051】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、クリーニング部材ホルダ32に保持された状態のクリーニング部材31の表面31Sに接合ツール17の下端面17aを接触させることで計測点Pの高さを計測するようになっていたが、この計測を行う手段は他の構成のものであってもよい。例えば、光等を用いて計測点Pの高さを計測するもの(光センサ)等であってもよい。また、前述の実施の形態では、熱接合装置1は超音波ホーン16を備えた構成であったが、これは熱接合装置1の一形態を示したものであり、本発明が適用される熱接合装置1は必ずしも超音波ホーン16を備えていなくてもよい。また、上述の実施の形態では、超音波ホーン16および超音波ホーン16に取り付けられた接合ツール17を昇降させる昇降機構としてシリンダ(昇降シリンダ14)を示したが、昇降機構はシリンダ以外の装置(例えばボイルコイルモータ等)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
性能が損なわれないように接合ツールをクリーニングして生産性を高めることができる熱接合装置を提供する。
【符号の説明】
【0053】
1 熱接合装置
2 基板
3 部品
12 基板保持部
17 接合ツール
17a 下端面
18d クリーニング動作制御部
19 表示部(表示手段)
31 クリーニング部材
31S 表面
34 クリーニング部材用ヒータ(クリーニング部材加熱部)
40 姿勢検出手段
P 計測点