IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カプコンの特許一覧

<>
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図1
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図2
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図3
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図4
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図5
  • 特許-情報処理システムおよびプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】情報処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/70 20140101AFI20230407BHJP
   A63F 13/79 20140101ALI20230407BHJP
【FI】
A63F13/70
A63F13/79 520
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020132975
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2022029608
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100207619
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 知晴
(72)【発明者】
【氏名】奥山 幹樹
(72)【発明者】
【氏名】北口 里英
(72)【発明者】
【氏名】田中 大将
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
(72)【発明者】
【氏名】津原 一成
(72)【発明者】
【氏名】川上 智司
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0266650(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0213566(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0282906(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105435451(CN,A)
【文献】国際公開第2019/117609(WO,A1)
【文献】コンセンサス・ベイス株式会社,ブロックチェーンのしくみと開発がこれ1冊でしっかりわかる教科書,第1版,日本,株式会社技術評論社 片岡 巌,2019年09月14日,p.10-19,256-260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/00-13/98
A63F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲームにおけるゲーム媒体の取引にかかる情報処理システムであって、
前記ゲーム媒体の取引に関する取引履歴である第1情報を取得する第1情報取得手段と、
前記取引履歴に改ざん防止措置を施すことに関する第2情報を取得する第2情報取得手段と、
取引の事前又は事後に取得されたゲーム情報に基づいて、前記ゲーム媒体の過去の取引のそれぞれにおいて、不正な取引が行われていないことに関する第3情報を取得する第3情報取得手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報のすべて又は一部と、前記ゲーム媒体と関連付けて記憶する記憶手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報が所定の条件を満たしている場合に、前記ゲーム媒体と関連付けられた鑑定書を生成する生成手段と、
前記鑑定書が生成された場合に、前記ゲーム媒体に関する所定の処理を実行する実行手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
生成された前記鑑定書を、前記ゲームをプレイするユーザに提示する提示手段と、
をさらに備える請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記生成手段は、前記ゲームをプレイするユーザからの要求に基づいて、前記鑑定書を生成する、
請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記生成手段は、事前に定められた所定のタイミングで、前記鑑定書を生成する、
請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記生成手段は、情報の改ざん可能性を低減する措置が施された前記鑑定書を生成する、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記鑑定書は、前記ゲーム内のゲーム媒体として生成される、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記実行手段は、前記ゲーム媒体の譲渡先が決定している場合に、譲渡する前記ゲーム媒体の内容に応じて、前記ゲーム媒体の譲渡を制限する処理、又は前記鑑定書が生成されていない場合に対象となる前記ゲーム媒体のやり取りを禁止する処理を実行する、
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記実行手段は、前記ゲーム媒体を保有する主体が変更された履歴に応じて、前記ゲーム媒体の前記ゲームにおける効果または内容を変更する処理を実行する、
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記実行手段は、前記ゲーム媒体を保有する主体が変更された履歴に基づいて、前記ゲーム媒体の前記ゲームにおける効果または内容を変更する処理を実行する、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記実行手段は、前記鑑定書が生成された場合は前記ゲーム媒体の取引を許可し、前記鑑定書が生成されない場合は前記ゲーム媒体の取引を禁止する、
請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記実行手段は、前記ゲーム媒体の前記ゲーム内における使用の可否に関する処理を実行する、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項12】
複数の前記ゲームの夫々について前記鑑定書が生成されている場合において、
前記実行手段は、複数の前記鑑定書に基づいて、前記ゲームに関する所定の処理を実行する、
請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記実行手段は、複数の前記鑑定書が生成された場合において、夫々の前記鑑定書が生成された夫々のゲームにおけるゲーム媒体の効果または内容に基づいて、ゲーム処理を実行する前記ゲームにおける前記ゲーム媒体の効果または内容を決定することを含む処理を実行する、
請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項14】
ゲームにおけるゲーム媒体の取引にかかるコンピュータが実行する情報処理方法であって、
前記ゲーム媒体の取引に関する取引履歴である第1情報を取得する第1情報取得手段と、
前記取引履歴に改ざん防止措置を施すことに関する第2情報を取得する第2情報取得手段と、
取引の事前又は事後に取得されたゲーム情報に基づいて、前記ゲーム媒体の過去の取引のそれぞれにおいて、不正な取引が行われていないことに関する第3情報を取得する第3情報取得手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報のすべて又は一部と、前記ゲーム媒体と関連付けて記憶する記憶手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報が所定の条件を満たしている場合に、前記ゲーム媒体と関連付けられた鑑定書を生成する生成手段と、
前記鑑定書が生成された場合に、前記ゲーム媒体に関する所定の処理を実行する実行手段と、
を含む情報処理方法。
【請求項15】
ゲームにおけるゲーム媒体の取引にかかるコンピュータを、
前記ゲーム媒体の取引に関する取引履歴である第1情報を取得する第1情報取得手段と、
前記取引履歴に改ざん防止措置を施すことに関する第2情報を取得する第2情報取得手段と、
取引の事前又は事後に取得されたゲーム情報に基づいて、前記ゲーム媒体の過去の取引のそれぞれにおいて、不正な取引が行われていないことに関する第3情報を取得する第3情報取得手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報のすべて又は一部と、前記ゲーム媒体と関連付けて記憶する記憶手段と、
前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報が所定の条件を満たしている場合に、前記ゲーム媒体と関連付けられた鑑定書を生成する生成手段と、
前記鑑定書が生成された場合に、前記ゲーム媒体に関する所定の処理を実行する実行手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ネットワークを利用するゲームなどにおいて、現実世界の取引と同様に、ユーザが、他のユーザに対してアイテムなどを譲渡(売買)することは一般的に行われている。しかし、このようなゲーム内の取引は、現実世界の取引と比較して、不正が介在する余地が多く、また、取引の履歴などが改ざんされる恐れもある。
これに対して、取引の結果と取引の対象となるデータの帰属状態を一致させることにより、取引に関する不正を低減させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-187143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1に記載の技術を含む従来技術では、取引の内容と取引の対象となるデータの帰属状態を一致させることができるに過ぎず、取引自体に不正が介在する場合などには対応することができない。また、取引履歴の改ざんなどに対して対応することもできない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、情報の改ざんやゲーム内の不正の可能性を低減し、よりユーザが楽しみやすいゲームシステムを提供する。
【0006】
本発明の第1の側面は、
ゲームの提供にかかる情報処理システムであって、
前記ゲームの過去の事象に関する第1情報および前記第1情報が所定の条件を満たしているか否かを判定した結果に関する第2情報を、前記ゲーム内の媒体に関連付けて記憶する記憶手段と、
前記媒体に関連付けられた前記第1情報および前記第2情報の内容に基づいて、前記ゲームに関する所定の処理を実行する実行手段と、
を備え、
前記第1情報および前記第2情報の少なくともいずれかの情報は、情報の改ざんの可能性を低減する措置が施されている、
情報処理システムである。
【0007】
また第1の側面において、
前記第1情報は前記ゲームにおける不正の有無の判別に利用可能な情報および前記媒体を保有する主体の変更に関する情報を含み、
前記第2情報は前記ゲームにおいて不正が行われているか否かについての情報を含み、
前記実行手段は、前記第1情報が改ざんされておらず、前記第2情報において前記ゲームにおいて不正が行われていないことが保証されていることを条件として、前記ゲームに関する所定の処理を実行することができる。
【0008】
また第1の側面において、
前記第1情報が改ざんされておらず、前記第2情報において前記ゲームにおいて不正が行われていないことが保証されている場合に、当該保証の内容に関する第3情報を生成する生成手段と、
をさらに備えることができる。
【0009】
また第1の側面において、
生成された前記第3情報を、前記ゲームをプレイするユーザに提示する提示手段と、
をさらに備えることができる。
【0010】
また第1の側面において、
前記第3情報は前記ゲームをプレイするユーザからの要求に基づいて生成されることができる。
【0011】
また第1の側面において、
前記生成手段は情報の改ざん可能性を低減する措置が施された前記第3情報を生成することができる。
【0012】
また第1の側面において、
前記実行手段は、前記媒体について事前に決定された譲渡の内容に基づいて、前記媒体の譲渡に関する処理を実行することを含む処理を実行することができる。
【0013】
また第1の側面において、
前記実行手段は、前記媒体を保有する主体の変更に応じて、前記媒体のゲーム内の効果または内容を決定することを含む処理を実行することができる。
【0014】
また第1の側面において、
前記実行手段は、前記第3情報が生成された場合は前記媒体の取引を許可し、前記第3情報が生成されない場合は前記媒体の取引を禁止することができる。
【0015】
また第1の側面において、
前記実行手段は、前記媒体の前記ゲーム内における使用の可否に関する所定の処理を実行することができる。
【0016】
また第1の側面において、
前記第1情報または第2情報は、前記ゲームにおける前記媒体の取得時の不正に関する情報を含むことができる。
【0017】
また第1の側面において、
複数の前記ゲームの夫々について前記第3情報が生成されている場合において、
前記実行手段は、複数の前記第3情報に基づいて、前記ゲームに関する所定の処理を実行することができる。
【0018】
また第1の側面において、
前記実行手段は、複数の前記第3情報が生成された場合において、夫々の第3情報が生成された夫々のゲームにおける媒体の効果または内容に基づいて、ゲーム処理を実行する前記ゲームにおける前記媒体の効果または内容を決定することを含む処理を実行することができる。
【0019】
本発明の第2の側面は、
ゲームの提供にかかるコンピュータを、
前記ゲームの過去の事象に関する第1情報および前記第1情報が所定の条件を満たしているか否かを判定した結果に関する第2情報を、前記ゲーム内の媒体に関連付けて記憶する記憶手段と、
前記媒体に関連付けられた前記第1情報および前記第2情報の内容に基づいて、前記ゲームに関する所定の処理を実行する実行手段と、
として機能させ、
前記第1情報および前記第2情報の少なくともいずれかの情報は、情報の改ざんの可能性を低減する措置が施されている、
プログラムである。
【0020】
本発明の一態様のプログラムも、本発明の一態様の情報処理システムに対応するプログラムとして提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、情報の改ざんやゲーム内の不正の可能性を低減し、よりユーザが楽しみやすいゲームシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の情報処理システムの適用対象となるサービスの概要を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態の情報処理システムの一例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4図3のサーバおよび図2のユーザ端末の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図3のサーバにより決定されるゲーム処理の一例を示す図である。
図6図3のサーバおよび図2のユーザ端末が実行する処理のうち、鑑定書関連処理の流れを説明するアローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態]
本発明の一実施形態にかかる情報処理システム(以下、「本システム」と呼ぶ)について、図面を参照して説明する。
【0024】
<概要の説明>
まず、図1を参照しつつ、本システムの適用対象となるサービス(以下、「本サービス」と呼ぶ)について、具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の情報処理システムの適用対象となるサービスの概要を説明する図である。
【0025】
本サービスは、所定の媒体(以下、「アイテム」と呼ぶ)の取引などを含むゲームにおいて付随して提供されるサービスである。具体的に例えば、図1に示す通り、本サービスでは、ブロックチェーンに代表される各種技術を利用して、ゲーム内のアイテムなどに「鑑定書」を生成することで、そのアイテムの正当性(取得や取引において不正がないこと)を保証することができる。そして、この鑑定書が生成されていることや鑑定書の内容に応じて、様々なゲーム処理が実行される。
【0026】
ここで、本実施形態におけるゲームとは、例えば、MMO(Massively Multiplayer Online)型のネットワークゲームである。このようなタイプのゲームでは、一般的に、ネットワークを介して接続された多数の情報処理端末において仮想空間を共有し、複数のユーザが協力することで所定の目的を達成するような仕様が採用されている。そして、それらの目的の達成を容易とするため、そのゲーム内で使用可能なアイテムが数多く設定されている。アイテムの中には、ゲーム内に一定数以下の数しか同時に存在し得ないような極めて希少性の高いアイテムが設定されているような場合がある。
そのような理由から、MMO型のネットワークゲームにおいては、希少性の高いアイテムなどを含め、各ユーザの間でゲーム内の通貨などを用いた自由な取引が認められることがある。すなわち、本実施形態におけるゲームは、典型的には、ゲーム内にアイテムの自由な取引が認められたMMO型のネットワークゲームである。
【0027】
また、情報の改ざんの可能性を低減する技術とは、例えば、ブロックチェーンや各種分散型台帳に関する技術またはその組み合わせにより構成され得る。本実施形態では、各種情報(例えば、取引情報や鑑定書など)に、適宜、ブロックチェーン技術などを適用することで、より情報の改ざんを容易に防ぎ、アイテムの正当性を保証することが可能となる。
具体的に例えば、アイテムXの取引情報は、ブロックチェーンの各ブロックとして機能し得る。具体的に例えば、各ブロックのアイテムXの取引情報は、1つ前のブロックから算出されたハッシュ値などの情報を含むことにより、各ブロックが連結した状態で各種データベースなどに格納される。
なお、ブロックチェーンに関する各種処理は、後述するサーバ1で行われてもよいし、後述するサーバ1とは異なる他の情報処理装置やクラウド型のサーバなどで行われてもよい。
【0028】
さらに、本サービスは、NFT(Non-Fungible Token)と呼ばれる技術を組み合わせて利用することができる。NFTは、ブロックチェーンの技術を利用することで、代替不可能な(複製困難な)唯一のトークンを生成し、任意の対象に付与することが可能となる。これをゲーム内の様々な資産(アイテムやキャラクターなど)などと紐づけることで、ゲーム内のデータであっても、代替不可能な資産として現実世界の資産と近い感覚で利用できるなどの効果が期待できる。そのため、NFTは、現在多くのゲームなどにおいて採用が試みられている。本サービスにおいても、NFTを任意の方法により適用することで、さらにゲーム性の高いゲームシステムを提供することができる。
【0029】
以上のような前提のもと、図1を参照しつつ、本サービスの概念について具体的に説明する。
図1の例では、ゲーム内で行われたアイテムXの過去の取引に関する各種情報(以下、「取引情報」と呼ぶ)がブロックチェーンとして記録され、情報の改ざんが困難な状況が確保されている。そしてまた、ユーザのゲームのプレイ記録に基づく、不正が行われていないことが確認されている。
後述するサーバ1において、このような二つの条件が満たされている場合、これらの条件が満たされていることを保証する「鑑定書」が生成される。本サービスでは、この「鑑定書」が生成されること、もしくは生成された鑑定書の内容などに応じて、各種ゲーム処理が実行される。
なお、この「鑑定書」は、任意のタイミングでユーザに提示されてもよい。これにより、ユーザは、アイテムXの正当性を信じてゲームをプレイできる。
【0030】
また、本実施形態において、ゲーム内の不正とは、取引情報やユーザのプレイ記録などを含むゲームに関する各種情報(以下「ゲーム情報」)に基づいて、抽出可能な各種不正である。具体的に例えば、詐欺や脅迫を伴う不釣り合いな相場での取引や、アイテム取得時の乱数やテーブル情報の改ざんなどがこれに該当する。
【0031】
以上をまとめると、本サービスにおいて、「鑑定書」は、アイテムXの取引情報が改ざんされておらず、ゲームにおいて不正が行われていないことが保証されている場合にのみ生成される。すなわち、「鑑定書」と紐づけられたアイテムXは、アイテムの取引時にも、不正や改ざんの可能性が低いことが保証されている。本サービスでは、このような性質を有する「鑑定書」を利用することで、「鑑定書」と紐づけられたアイテムXの正当性を容易に示すことができるとともに、鑑定書の生成の有無などに応じて異なるゲーム処理を実行する。これにより、本サービスは、ユーザに対して、利便性が高く、さらに深みのあるゲームシステムを提供することができる。
【0032】
続いて、図2を参照しつつ、本システムの具体的な構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態の情報処理システムの一例を示すブロック図である。
図2に示す通り、本システムは、サーバ1と、ユーザ端末2-1乃至2-nとを含み構成される。サーバ1と、ユーザ端末2-1乃至2-nとはインターネット、LAN(Local Area Network)などを含む所定のネットワークNを介して相互に接続されている。
なお、ネットワークNは、必須な構成要素ではなく、例えば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信が合わせて利用されてもよい。
また、以降の説明においてユーザ端末2-1乃至2-nの夫々を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「ユーザ端末2」と呼ぶ。
【0033】
ここで、本実施形態におけるゲームは、例えば、プレイステーション(登録商標)等の家庭用ゲーム機、ニンテンドースイッチ(登録商標)等の携帯用ゲーム機、もしくは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等の電子機器等であるユーザ端末2を用いて実行される。
ユーザ端末2は、ユーザからの操作指示に基づき、ゲームに関する各種画像や音声などを図示せぬ出力部などに出力しながらゲームを進行させる。なお、ユーザ端末2は、サーバ1からゲームの進行に必要な各種情報を取得する。
なお、以下、単に「画像」と呼ぶ場合には、「動画像」と「静止画画像」の両方を含むものとする。
また、以下、単に「音声」と呼ぶ場合には、人の声帯から発生した声だけでなく、音楽やBGM、効果音などを広く含むものとする。
【0034】
<ハードウェア構成>
図3は、本発明の一実施形態にかかるサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
サーバ1は、パーソナルコンピュータ等で構成される。
図3に示すように、サーバ1は、制御部11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【0035】
制御部11は、CPUやGPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROM12に記録されているプログラム、または、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、制御部11が各種の処理を実行する上において必要な情報等も適宜記憶される。
【0036】
制御部11、ROM12およびRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、ドライブ20が接続されている。
【0037】
出力部16は、各種液晶ディスプレイ等で構成され、各種情報を出力する。
【0038】
入力部17は、各種ハードウェア等で構成され、各種情報を入力する。
【0039】
記憶部18は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成され、各種情報を記憶する。例えば、本実施形態にかかるプログラムの一部を含む各種プログラムの他、ゲーム情報DB300、関連付け情報DB400などを含む各種情報が記憶されている。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば、ユーザ端末2の夫々)との間で行う通信を制御する。
【0040】
ドライブ20は、必要に応じて設けられる。ドライブ20には磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。またリムーバブルメディア31は、記憶部18に記憶されている各種情報も、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0041】
ここで、ユーザ端末2のハードウェア構成は、サーバ1のハードウェア構成と基本的に同様とすることができるので、図4を参照しつつ、必要な説明のみを行う。
【0042】
ユーザ端末2の制御部100は、CPUやGPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータ等で構成され、図示せぬ記憶部等に記録されているプログラム、または、図示せぬ記憶部からRAM等にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0043】
出力部110は、ゲームに関する各種情報(画像や音声など)を出力する。具体的に例えば、出力部110は、スピーカー、ヘッドホン、液晶ディスプレイなどにより構成される。
【0044】
入力部120は、ユーザによるゲームに関する各種入力操作を受け付ける。なお、ユーザの操作の夫々に対応する各種情報は、制御部100のゲーム処理実行手段200などでゲームにおける入力情報として処理される。
ここで、本実施形態において、出力部110と入力部120とは、いわゆるタッチパネルが構成する。具体的に例えば、入力部120は、出力部110の表面に積層される静電容量式、または、威圧式の位置入力センサにより構成され、タッチ操作がなされた位置座標を検出する。
【0045】
通信部130は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば、サーバ1)との間で行う通信を制御する。
【0046】
<機能的構成>
図4は、図3のサーバおよび図2のユーザ端末の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、サーバ1の制御部11は、各種プログラム等を実行することにより、ゲーム情報取得手段60と、取引情報管理手段61と、不正判定手段62と、関連付け手段63と、鑑定書要求取得手段64と、鑑定書生成手段65と、ゲーム処理管理手段66として機能する。
ここで、サーバ1の記憶部18の一領域には、ゲーム情報DB300と、関連付け情報DB400とが設けられている。
【0047】
サーバ1のゲーム情報取得手段60は、ユーザ端末2の夫々から送信されてくるゲームに関する各種情報、すなわちゲーム情報を取得する。
ここで、ゲーム情報には、ゲーム内で行われたアイテムの取引に関する過去の履歴に関する情報、すなわち取引情報と、ゲームにおけるユーザからの入力に関する情報(以下、「入力情報等」と呼ぶ)が含まれる。なお、入力情報は、入力情報が取得された時間に関する情報を含む。
また、ゲーム情報取得手段60は、取得したゲーム情報をゲーム情報DB300に格納する。
【0048】
取引情報管理手段61は、ゲーム情報DB300に格納されているゲーム情報(特に取引情報)を管理する。
すなわち、取引情報管理手段61は、ゲーム情報DB300に格納されているゲーム情報のうち取引情報について、任意の手段により情報の改ざんの可能性を低減する措置(以下、「改ざん防止措置」と呼ぶ)を施す。
具体的に例えば、取引情報管理手段61は、既存のサービスまたは図示せぬクラウド上に設置されたサーバなどを活用し、取引情報をブロックチェーンの各ブロックとして機能させ、各ブロックが連結した状態でゲーム情報DB300に格納する。
また、取引情報管理手段61は、改ざん防止手段71を含む。改ざん防止手段71は、取引情報に改ざん防止措置が施されていることの確認を行う。
【0049】
不正判定手段62は、ゲーム情報に基づいて、ゲーム内で不正が行われたか否かを判定する。すなわち、不正判定手段62は、ゲーム情報が所定の条件を満たしているか否かを判定する。
具体的に例えば、不正判定手段62は、ゲーム情報に基づいて、詐欺や脅迫を伴う不釣り合いな相場での取引や、アイテム取得時の乱数やテーブル情報の改ざんなどのゲーム内の不正が行われたか否かを判定する。
なお、判定する不正の種別や判定の方法は、特に限定されず、本サービスの提供者などにより任意に定められてもよい。
【0050】
関連付け手段63は、取引情報管理手段61で管理されているゲーム情報と不正判定手段62で判定された不正の有無の判定結果を、対象となるアイテムと関連付けて、関連付け情報DB400に格納する。
【0051】
ここで、本サービスにおいて、ユーザが後述する鑑定書の生成を希望する場合、ユーザは、ユーザ端末2を介して、ユーザが鑑定書の生成を希望する旨を示す情報(以下、「鑑定書要求」と呼ぶ)を入力する。そして、ユーザ端末2は、入力された鑑定書要求を、サーバ1へ送信する。
そこで、鑑定書要求取得手段64は、ユーザ端末2から送信されてきた鑑定書要求を、通信部19を介して取得する。
【0052】
鑑定書生成手段65は、改ざん防止手段71で取引情報に改ざん防止措置が施されていることが確認され、かつ不正判定手段62で不正が行われていないと判定された場合、その旨を示す鑑定書を生成する。
ここで、鑑定書生成手段65は、生成した鑑定書について、改ざん防止措置を施したり、代替不可能性を担保する技術などを応用するなどして、さらに鑑定書の価値を向上させてもよい。
具体的に例えば、鑑定書生成手段65は、生成した鑑定書に対して、NFTに関連する技術を利用して、代替不可能な(複製困難な)唯一のトークンを生成し、付与してもよい。
これにより、鑑定書の希少性は向上し、情報の改ざんや悪意などによる価値の変動の可能性を低減することができる。そのため、例えば、生成した鑑定書を他のゲームや現実世界において利用する場合も、その価値を大きく変動させずに利用できると期待できる。
なお、鑑定書生成手段65は、取引情報および不正の有無の判定の結果と関連付けられたアイテム毎に鑑定書を生成してもよい。また、鑑定書生成手段65は、対象となるゲームが複数存在する場合には、各ゲームの夫々について鑑定書を生成してもよい。
【0053】
ゲーム処理管理手段66は、鑑定書生成手段65により生成された鑑定書に基づいて、ゲームで実行する所定の処理の内容を決定する。
すなわち、ゲーム処理管理手段66は、取引情報が改ざんされておらず、不正の有無の判定の結果として不正が行われていないことが保証されていることを条件として、ゲームに関する所定の処理を実行する。
ここで、ゲームで実行する所定の処理には、例えば、以下のような処理が含まれる。
(1)対象となるアイテムについて、譲渡の内容が事前に決定されていた場合に、事前に決定された譲渡の内容に応じて、そのアイテムの譲渡に関するゲーム処理を実行することができる。
具体的に例えば、MMO型のネットワークゲームにおいて、ユーザがゲームを引退などする場合、所持していたアイテムを他のユーザに任意の配分で分配する場合がある。このように予め多数のアイテムの譲渡先が決定しているような場合には、その内容に応じて、アイテムの譲渡を制限するなどのゲーム処理を実行することができる。
(2)対象となるアイテムを保有する主体の変更に応じて、そのアイテムの効果または内容を決定するゲーム処理を実行することができる。
具体的に例えば、改ざん防止措置が施された取引情報においては、そのアイテムを保有する主体の変動が正確に記録される。このような場合、アイテムを保有した主体が多い場合、アイテムが特定の主体に保有されていた場合、アイテムがユーザと特別な関係性を持つ主体に保有されていた場合などに、アイテムの効果を強化するといった所定のゲーム処理を実行することができる。
(3)鑑定書が生成された場合は対象となるアイテムの取引を許可し、鑑定書が生成されていない場合には対象となるアイテムの取引を禁止するゲーム処理を実行することができる。
(4)鑑定書が生成された場合は対象となるアイテムの使用を許可し、鑑定書が生成されていない場合には対象となるアイテムの使用を禁止するゲーム処理を実行することができる。
ゲーム処理管理手段66は、決定した処理の内容に関する情報(以下、「ゲーム処理情報」と呼ぶ)を、ユーザ端末2へ送信する。
【0054】
次に、ユーザ端末2の機能的構成について、説明する。
図4に示すように、ユーザ端末2の制御部100は、各種プログラム等を実行することにより、ゲーム処理実行手段200として機能する。
ゲーム処理実行手段200は、ゲームに関する各種処理を実行する。
具体的に例えば、ゲーム処理実行手段200は、ユーザによる各種入力情報に従って、ゲームデータに含まれる仮想ゲーム空間オブジェクトおよびテクスチャなどのデータを図示せぬ記憶部等から読みだして、ゲームプログラムを実行しつつ、2次元または3次元の画像や音声などのゲームに関する各種情報を生成する。
また、ゲーム処理実行手段200は、ユーザの操作などに応じて、ゲーム内のキャラクタの位置や行動などを制御する。
【0055】
ここで、ゲーム処理実行手段200には、ゲーム情報管理手段220と、鑑定書要求管理手段221と、鑑定書関連処理手段222とが含まれる。
ゲーム情報管理手段220は、ゲームに関する各種情報、すなわちゲーム情報を取得する。ゲーム情報管理手段220は、取得したゲーム情報を、通信部130を介して、サーバ1へ送信する。
また、ゲーム情報管理手段220には、取引情報管理手段240が含まれる。取引情報管理手段240は、ゲーム情報のうち取引情報を取得する。取引情報管理手段240は、取得したゲーム情報を、通信部130を介してサーバ1へ送信する。
【0056】
鑑定書要求管理手段221は、ユーザにより入力されたユーザが鑑定書の生成を希望する旨を示す情報、すなわち鑑定書要求を取得する。鑑定書要求管理手段221は、取得した鑑定書要求を、通信部130を介して、サーバ1へ送信する。
【0057】
鑑定書関連処理手段222は、サーバ1から送信されてきた鑑定書が生成された結果として決定された処理の内容に関する情報、すなわちゲーム処理情報を取得する。鑑定書関連処理手段222は、取得したゲーム処理情報に基づく、各種ゲーム処理を実行する。
【0058】
ここで、ブロックチェーンネットワークBとは、本サービスにかかるブロックチェーンに関する処理を実行し、各種情報を分散して記憶する役割を担うクラウド上に構築されたネットワークまたはシステムである。
【0059】
<具体例>
ここで、図5を参照しつつ、ゲーム処理管理手段66により決定される具体的な処理の内容の一例について詳細に説明する。
図5は、図3のサーバにより決定されるゲーム処理の一例を示す図である。
例えば、図5に示されたアイテムYは、ゲーム内で使用した場合、1/100の確率で致命傷となり得る大ダメージを受ける特殊な呪いのアイテムである。
このアイテムYは、例えば、運が悪く大ダメージを受けた場合でも、使用したキャラクタがそのまま生存した場合にはアイテムを継続して使用可能である。しかしその一方で、使用したキャラクタが大ダメージに耐えきれずに死亡した場合にはアイテムはそのキャラクタの保有アイテムではなくなり他のキャラクタが取得可能な(他のキャラクタにドロップし得る)状態となる。
そして、アイテムYは、使用するキャラクタが大ダメージを受けて死亡し他のキャラクタに取得されるという一連のプロセスを経るごとにアイテムの性能が強化される仕様となっている。このような仕様は、アイテムYを保有する主体の履歴が全て正確に維持されているという本サービスの特徴がなければ実現することが困難な仕様であり、本サービスの利点を十分に活かしたアイテムの仕様と言える。
【0060】
図6は、図3のサーバおよび図2のユーザ端末が実行する処理のうち、鑑定書関連処理の流れを説明するアローチャートである。
ステップS1において、ユーザ端末2のゲーム情報管理手段220は、取得したゲーム情報を、通信部130を介して、サーバ1へ送信する。
【0061】
ステップS21において、サーバ1のゲーム情報取得手段60は、ステップS1でユーザ端末2の夫々から送信されたゲーム情報を取得する。ステップS21において、ゲーム情報取得手段60は、取得したゲーム情報をゲーム情報DB300に格納する。
【0062】
ステップS22において、サーバ1の取引情報管理手段61は、ゲーム情報DB300に格納されているゲーム情報のうち取引情報について、任意の手段により改ざん防止措置を施す。
【0063】
ステップS2において、ユーザ端末2の鑑定書要求管理手段221は、ユーザにより入力された鑑定書要求を取得する。ステップS2において、鑑定書要求管理手段221は、取得した鑑定書要求を、通信部130を介して、サーバ1へ送信する。
【0064】
ステップS23において、サーバ1の鑑定書要求取得手段64は、ユーザ端末2から送信されてきた鑑定書要求を、通信部19を介して取得する。
【0065】
ステップS24において、サーバ1の改ざん防止手段71は、取引情報に改ざん防止措置が施されていることの確認を行う。
【0066】
ステップS25において、サーバ1の不正判定手段62は、ゲーム情報DB300に格納されているゲーム情報に基づいて、ゲーム内で不正が行われたか否かを判定する。
【0067】
ステップS26において、サーバ1の関連付け手段63は、取引情報管理手段61で管理されているゲーム情報と、不正判定手段62で判定された不正の有無の判定結果を、所定のアイテムと関連付けて、関連付け情報DB400に格納する。
【0068】
ステップS27において、サーバ1の鑑定書生成手段65は、改ざん防止手段71で取引情報に改ざん防止措置が施されていることが確認され、かつ不正判定手段62で不正が行われていないと判定された場合、その旨を示す鑑定書を生成する。
【0069】
ステップS28において、サーバ1のゲーム処理管理手段66は、鑑定書生成手段65により生成された鑑定書に基づいて、ゲームで実行する所定の処理の内容を決定する。
【0070】
ステップS29において、サーバ1のゲーム処理管理手段66は、決定した処理の内容に関する情報、すなわちゲーム処理情報を、通信部19を介して、ユーザ端末2へ送信する。
【0071】
ステップS3において、ユーザ端末2の鑑定書関連処理手段222は、サーバ1から送信されてきたゲーム処理情報を取得する。
【0072】
ステップS4において、鑑定書関連処理手段222は、取得したゲーム処理情報に基づく、各種ゲーム処理を実行する。
【0073】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0074】
<他の実施形態>
ここで、本発明の背景について、簡単に補足する。
従来より、ブロックチェーンやNFTをアイテムの取引などに利用することで、ゲームへと応用しようとする試みは知られている。このような技術を利用したゲームにおいては、アイテムやゲーム内通貨を、現実の通貨や仮想通貨などと換金性を有するような形で運用しようという試みも少なくない。
しかし、従来のこのような類のゲームにおいては、取引情報などにブロックチェーンを利用することで改ざんを防止するなどの効果を付する程度の利用に留まるものである。ゲーム内の不正、具体的にはアイテムの取得時や取引時に生じ得るアナログな不正を含むあらゆる不正に対して有効に機能することは期待できない。
ここで、アナログな不正とは、例えば、「脅されるなどにより、ゲーム内の相場より不正に低い価値のアイテムとの取引が行われた場合」、「いわゆるRMT、未成年による高額な価値のアイテムの取引、アカウントの譲渡(譲渡したアカウントによる取引)など、ゲーム内の規約に反する取引が行われた場合」、「取引を行うと約束をしたにも関わらずアイテムの提供がない場合」などである。
換言すれば、アイテムなどにブロックチェーンやNFTの技術を利用する以上、ブロックチェーンに記憶された情報からゲームのプレイの正当性を検証することは可能である。しかし逆に言えば、そこから得られる情報や正当性の検証以外は行うことができないという限界があった。
そこで、本サービスにおいて、サーバ1は、ブロックチェーンなどを利用した改ざん防止措置と、ゲーム内で起こり得る不正の検証を別途実行し、その内容や結果を、アイテムなどと紐づけて記憶する。そして、サーバ1は、アイテムと関連した取引履歴の改ざんやその他の不正が行われていない場合にのみ鑑定書を生成する。
すなわち、例えば、アイテムの取引前に、そのアイテムの取得や取引に不正がないことを保証する鑑定書を生成し、取引時に鑑定書にトークンが付与されていることを条件として、アイテムの効果を確定するなどの各種ゲーム処理を実行することができる。
そのため、本サービスの提供者などは、ユーザに、さらにゲーム性の高いゲームシステムを提供できるだけでなく、不正を行っていないユーザに、納得感のあるメリットを提供することができる。
【0075】
ここで、上述の実施形態においても利用可能なブロックチェーン技術について、簡単に説明する。
ブロックチェーンとは、ブロックと呼ばれるデータの単位を構成し、鎖(チェーン)のように連結していくことによりデータを保管するデータベース、またはそれに関連する各種技術の総称である。各ブロックには、前のブロックに紐づけられたハッシュ、タイムスタンプ、トランザクション(取引情報)などを含むことにより、対象となる当事者間の取引の記録を効率的かつ検証可能な形で記録することができる。
また、これらのブロックチェーンは通常、P2P(Peer to Peer)などの分散型のネットワークにより管理され、後続のすべてのブロックを変更しない限り遡及的に変更することができない。そのため、ブロックチェーンとして記憶された情報の改ざんは、不可能ではないものの、現実的には極めて困難であると考えられている。
なお、ブロックチェーンおよびビットコインシステムなどの技術の詳細については、次の非特許文献1を参照されたい。
[非特許文献1]Satoshi Nakamoto. Bitcoin: A peer-to-peer electronic cash system,2008
【0076】
また例えば、上述の実施形態において、鑑定書は対象となるゲームで一つ生成されるものとして説明したが特にこれに限定されない。
すなわち、鑑定書は、一つのゲームで複数生成されてもよいし、また、対象となるゲーム以外の他のゲームにおいて複数生成されてもよい。ここで、他のゲームで生成された鑑定書に基づいて、各種ゲーム処理を実行する場合、サーバ1は少なくとも以下の二つの考え方を含み実行するゲーム処理の内容を決定してもよい。
(1)他のゲームで生成された鑑定書を、原則として正しいものと仮定して、対象となるゲームで生成された鑑定書と同様に扱い、実行するゲーム処理を決定してもよい。
(2)他のゲームで生成された鑑定書の内容を原則として確認し、鑑定書の内容が正しいと確認された場合のみ、対象となるゲームで生成された鑑定書と同様に扱い、実行するゲーム処理を決定する。
さらに言えば、他のゲームにおいて鑑定書が生成された場合において、鑑定書が生成された他のゲームのアイテムの効果または内容に基づいて、対象となるゲームのアイテムの内容や効果、またはその他実行するゲーム処理の内容を決定してもよい。
【0077】
具体的に例えば、他のゲームで鑑定書を使用する場合の効果とは、例えば、以下のような効果が想定される。
(1)別のゲームで手に入れたアイテムを、対象となるゲームにおいて取得(合成)することができる。
(2)ユーザの保有する1つのアイテムを異なるゲームにおいて、共通して使用することができる。
この場合、そのアイテムを育成すると、例えば、複数のゲームに共通してアイテムが強化されてもよいし、個別のゲーム毎にアイテムの強さが管理されてもよい。さらに言えば、例えば、任意のゲーム間ではアイテムの強さが共通に管理され、それ以外のゲームではアイテムの強さが個別に管理されるというように、上記二つの方法が組み合わせて採用されてもよい。なお、複数のゲームでアイテムを共通して使用する場合、異なるゲームジャンルのゲームでアイテムが共有できてもよい。逆に、サッカーゲームの選手を野球ゲームに移籍させるなど、一つのゲームでしか使用できないようなキャラクタ(媒体)であっても、他のゲームで取得(合成)可能であってもよい。
(3)また、アイテムを複数のゲームで共通して使用することができる場合、任意のゲームでそのアイテムを使用(取得・合成)すると、そのアイテムが消滅する仕様を採用してもよいし、消滅しない仕様を採用してもよい。
(4)任意のゲームのガチャでアイテムを取得した場合、他の全てのゲームにおいて、そのアイテムを使用できる仕様が採用してもよい。また、ガチャでアイテムを取得した後に、開始したゲームについては、そのアイテムの取得を認めてもよいし、認めなくてもよい。
【0078】
また例えば、上述の実施形態において、鑑定書は、取引情報に改ざんの可能性を低減する手段が施されており、かつ不正が行われていないと判定された場合に生成されるものとして説明したが特にこれに限定されない。
すなわち、サーバ1は、いずれかの要件が満たされていない場合であっても鑑定書を生成してもよい。なお、この場合、生成した鑑定書には、満たされていない要件や保証されていない不正の詳細などが記載されてもよい。
【0079】
また例えば、上述の実施形態において、不正の可能性を低減する措置として、ブロックチェーンに関連する技術を利用するものとして説明したが特にこれに限定されない。すなわち、不正の可能性を低減する措置には、例えば、分散型台帳や今後新たに開発され得る情報の改ざんの可能性を低減するあらゆる技術を採用することができる。
また例えば、上述の実施形態において、代替不可能な(複製困難な)トークンを生成する技術としてNFTに関連する技術を採用するものとして説明したが特にこれに限定されない。NFTに関連する技術に限らず、情報の改ざんの可能性を低減する措置などを利用して代替不可能性を表現しようと試みるあらゆる技術がこれに含まれ得る。
なお、本明細書において、情報の改ざんの可能性を低減する技術とは、ブロックチェーンや各種分散型台帳などの技術そのものだけでなく、上記の性質を利用した各種技術などを含むものとする。具体的に例えば、NFTなどの代替不可能性に着目した各種技術についても、情報の改ざんの可能性を低減する技術に含まれる。
【0080】
また例えば、ブロックチェーン、情報の改ざんの可能性を低減する各種技術に関する処理は、サーバ1または、クラウド型のサーバなどにより実行されるものとして説明したが、特にこれに限定されない。
すなわち、ブロックチェーン、情報の改ざんの可能性を低減する各種技術に関する処理はユーザ端末2で実行されてもよい。
【0081】
また例えば、上述の実施形態において、ゲーム情報のうち取引情報にブロックチェーンに関連する技術を適用し、生成された鑑定書にNFTに関連する技術を適用するものとして説明したが特にこれに限定されない。
すなわち、例えば、サーバ1は、ゲーム情報のすべてにブロックチェーンに関連する技術を適用して情報の改ざんの可能性を低減してもよいし、取引情報自体に対してNFTに関連する技術を適用しトークンなどを付与してもよい。
換言すれば、サーバ1は、実行する処理において取り扱うあらゆる情報に対して、ブロックチェーンやNFTなどに関連する技術を適用してもよい。
【0082】
また例えば、上述の実施形態において、ブロックチェーンに関連する技術の有する特性のうち情報の分散保持に基づく、情報の改ざんの可能性を低減するという観点に着目して説明を行ったが特にこれに限定されない。
すなわち、サーバ1は、ブロックチェーンに関連する技術の有する、例えば、合意形成方法(例えば、Proof Of Workなど)、特徴的なマイナーによる承認処理の方法、流通する稼働通貨の総量の決定方法などの他の特性を、本システムに適用することができる。
【0083】
また例えば、上述の実施形態において、ゲームの内容はMMO型のネットワークゲームであるものとして説明したが、特にこれに限定されない。例えば、RPG(Role Playing Game)、シミュレーションゲーム、格闘ゲーム、スポーツゲームやカードゲーム、バトルロワイヤル(対称型、非対称型)、FPS(First Person Shooter)、RTS(Real Time Strategy)、MOBA(Multiplayer online battle arena)、音楽ゲームなどのあらゆるゲームのジャンルでもよい。
【0084】
また例えば、上述の実施形態において、鑑定書はユーザからの要望により生成されるものとして説明したが特にこれに限定されない。
すなわち、鑑定書はユーザからの要望によらず、本サービスの提供者などにより定められた任意のタイミングで生成(生成できるかの確認)が行われてもよいし、例えば、一定の時間間隔により定期的に生成(生成できるかの確認)が行われてもよい。
【0085】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図4の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図4の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、図4に特に限定されず、任意でよい。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0086】
また例えば、本システムを構成する各種ハードウェア(サーバ1およびユーザ端末2)の数や使用者は任意であるし、他のハードウェア等を含み構成されてもよい。具体的に例えば、サーバ1とユーザ端末2には、同一のコンピュータ等が採用されても構わない。
【0087】
また例えば、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであっても良い。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
即ち、例えば、上述の実施形態における各種ハードウェア(サーバ1およびユーザ端末2)には、任意のコンピュータ、任意のスマートフォン等の携帯端末、任意のゲーム機等が自由に採用されてもよい。さらに言えば、各種入力部や各種出力部等の種別や内容についても任意の組み合わせが採用されてもよい。
【0088】
また例えば、上述の実施形態では説明を省略したが、不正判定手段62が不正の有無を判定するタイミングは特に限定されない。
例えば、サーバ1は、任意のタイミングで不正の有無を判定してもよいし、鑑定書要求を取得したタイミングで不正の有無を判定してもよい。
【0089】
また例えば、上述の実施形態において、鑑定書の生成(および関連付け情報DB400への情報の格納)は、アイテム毎にされるものとして説明したが、特にこれに限定されない。
例えば、鑑定書の生成(および関連付け情報DB400への情報の格納)は複数のアイテム毎にされてもよいし、ゲーム毎に夫々1つの鑑定書が生成されてもよい。
【0090】
また例えば、このようなプログラムを含む記録媒体は、プレイヤにプログラムを提供するために装置本体とは別に提供される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でプレイヤに提供される記録媒体等で構成される。
【0091】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0092】
以上をまとめると、本発明が適用されるプログラムは、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
すなわち本発明が適用される情報処理システムは、
ゲームの提供にかかる情報処理システムであって、
前記ゲームの過去の事象に関する第1情報(例えば、ゲーム情報または取引履歴)および前記第1情報が所定の条件を満たしているか否かを判定した結果に関する第2情報(例えば、不正判定手段62の判定結果)を、前記ゲーム内の媒体に関連付けて記憶する記憶手段(例えば、関連付け手段63)と、
前記媒体に関連付けられた前記第1情報および前記第2情報の内容に基づいて、前記ゲームに関する所定の処理を実行する実行手段(例えば、ゲーム処理管理手段66)と、
を備え、
前記第1情報および前記第2情報の少なくともいずれかの情報は、情報の改ざんの可能性を低減する措置が施されている。
【0093】
<効果>
これにより、ユーザは、ゲーム内の情報の改ざんを心配することなく、ゲームをプレイすることができる。
【0094】
またこれにより、ユーザは、ゲーム内の情報(特に取引履歴)の改ざんや不正の心配をすることなく、より安全にゲームを楽しむことができる。
【0095】
またこれにより、ユーザは、鑑定書の存在により、情報の改ざんや不正を行っていないことを容易に示すことができる。
【0096】
またこれにより、ユーザは、自身の取引や対象となるアイテムの取引履歴などについて、情報の改ざんや不正が行われていないことを、さらに容易に確認することができる。
【0097】
またこれにより、ユーザは、自身の要求に応じて、ゲーム内の任意のタイミングにおいて、鑑定書を生成することができるため、情報の改ざんや不正が行われていないことを容易に確認することができる。
【0098】
またこれにより、鑑定書自体にブロックチェーンやNFTの技術が適用されるため、ユーザまたは本サービスの提供者などは、鑑定書自体をより安全に取り扱うことができる。
【0099】
またこれにより、ユーザまたは他のユーザは、予め決定された譲渡の内容に基づいて、取引を実行することができるため、より便利に安全な取引を実現することができる。
【0100】
またこれにより、ユーザは、より対象となるアイテムに愛着を持つことができ、さらにゲームを楽しむことができる。
【0101】
またこれにより、ユーザは、鑑定書が生成されない場合に、事前に取引を行わずに済むため、よりゲームを安心してプレイすることができる。
【0102】
例えば鑑定書が生成されない場合にはアイテムの使用ができないのであるから、多くのユーザは不正を行おうとは思わない。これにより、多くのユーザは、より安全にゲームをプレイすることができる。
【0103】
またこれにより、本サービスの提供者などは、アイテムの取得時に不正が行われているか否かも容易に検出することができるため、より安全なゲームシステムをユーザに提供することができる。
【0104】
またこれにより、本サービスの提供者などは、複数のゲームで生成された鑑定書を用いてゲーム処理の内容を決定することができるため、より自由度の高いゲームシステムをユーザに提供することができる。
【0105】
またこれにより、ユーザは、他のゲームで生成した鑑定書(またはアイテム)の価値に基づいてゲームをプレイすることができるため、他のゲームをプレイした時間や内容を無駄にせず新たなゲームを楽しむことができる。
【符号の説明】
【0106】
1 サーバ
11 制御部
60 ゲーム情報取得手段
61 取引情報管理手段
62 不正判定手段
63 関連付け手段
64 鑑定書要求取得手段
65 鑑定書生成手段
66 ゲーム処理管理手段
300 ゲーム情報DB300
400 関連付け情報DB400
2 ユーザ端末
100 制御部
200 ゲーム処理実行手段
220 ゲーム情報管理手段
221 鑑定書要求管理手段
222 鑑定書関連処理手段
240 取引情報管理手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6