(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】飛沫感染抑制システム、及び、飛沫感染抑制方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230407BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20230407BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20230407BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2018130583
(22)【出願日】2018-07-10
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高柳 哲也
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-222567(JP,A)
【文献】特開2011-174624(JP,A)
【文献】特開2011-092307(JP,A)
【文献】特開2016-176658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/74
F24F 110/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間における咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出部と、
前記対象空間における相対湿度を制御する湿度調整部と、
前記対象空間において、下方に
向かう気流を発生する気流発生部と、
前記検出部が前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した第1検出回数が第1閾値回数以上である場合に、前記湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、前記気流発生部に前記下方に
向かう気流として第1の強さの気流を発生させる制御部とを備える
飛沫感染抑制システム。
【請求項2】
前記第1所定湿度は、40%である
請求項1に記載の飛沫感染抑制システム。
【請求項3】
前記制御部は、さらに、前記第1検出回数が前記第1閾値回数より多い第2閾値回数以上である場合に、前記第1所定湿度より低い第2所定湿度以下に低下させる、及び、前記下方に
向かう気流として前記第1の強さより強い第2の強さの気流を発生させるの少なくとも一方を行う
請求項1又は2に記載の飛沫感染抑制システム。
【請求項4】
前記対象空間は、第1領域及び第2領域を含み、
前記検出部は、前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれにおいて、前記咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出し、
前記制御部は、前記第1領域における第2検出回数と前記第2領域における第3検出回数とに基づく前記第1検出回数が前記第1閾値回数以上であり、かつ前記第2検出回数が前記第3検出回数より多い場合に、前記第1領域の気流の強さを前記第2領域の気流の強さより強くさせる
請求項1~3のいずれか1項に記載の飛沫感染抑制システム。
【請求項5】
前記対象空間の相対湿度を計測する湿度測定部を備え、
前記制御部は、前記第1検出回数が前記第1閾値回数以上であり、かつ前記湿度測定部が計測した相対湿度が前記第1所定湿度以下である場合に、前記湿度調整部による前記対象空間の相対湿度の制御を停止させる
請求項1~4のいずれか1項に記載の飛沫感染抑制システム。
【請求項6】
対象空間における、咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出ステップと、
前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方が検出された検出回数が閾値回数以上である場合に、湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部に下方に
向かう気流を発生させる制御ステップとを含む
飛沫感染抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感染症の感染を抑制する飛沫感染抑制システム、及び、飛沫感染抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症には、接触感染、飛沫感染、及び、空気感染などの種々の感染ルートがある。例えば、インフルエンザの場合には一般的に、飛沫感染、及び、空気感染が主要な感染ルートであると考えられている。したがって、ある感受者の集団の中に、感染者が存在すると、感染者の咳及びくしゃみに曝露されたり、感染者の呼気に含まれるインフルエンザウイルス等を吸い込んだりすることによって、感染が成立し、場合によっては集団感染が起きる場合もある。
【0003】
非特許文献1には、室内が換気されている場合に感染者が咳又はくしゃみをしたときにどのように飛沫が飛散していくかの数値シミュレーションによる結果が開示されている。この結果によれば、初速度10m/sで人が咳又はくしゃみをした場合には、5秒程度で1m先の感受者に到達し、感受者は感染者の咳及びくしゃみに曝露される。したがって、飛沫感染を防ぐためには、例えば10秒以内のごく短時間に感染者の飛沫から感受者を守る必要がある。
【0004】
そして、そのような飛沫感染から感受者を守る技術として、例えば、特許文献1には、医師(感受者)が患者(感染者)を診断する際に、患者からの咳による飛沫感染を防止するための感染防止ブースが開示されている。特許文献1によれば、医師をクリーンブースで覆い、クリーンブース内にHEPAフィルタを通過した清浄空気を供給する。この清浄空気が上流側の医師から下流側の患者に流れるようにすることで、患者が咳を行った場合にも医師に咳が届くことを防止することができる。
【0005】
また、非特許文献2には、種々の粒径、及び、種々の相対湿度に応じて、飛沫の蒸発時間を数値シミュレーションした結果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kang Z., Zhang Y., Fan H., Feng G., Proc. Eng. (2015) 114-121
【文献】Li X., Shang Y., Yan Y., Tu J. Build. and Env. (2018) 698-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、特許文献1の方法は、介護施設のコミュニティルームなど不特定多数の人が存在する場合には、適用することが難しい。また、特許文献1の方法では、相対湿度等が考慮されていない。
【0009】
そこで、本開示は、以上のような事情を鑑みたものであり、感染者の咳又はくしゃみにより飛沫感染することを適切に抑制することができる飛沫感染抑制システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る飛沫感染抑制システムは、対象空間における咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出部と、前記対象空間における相対湿度を制御する湿度調整部と、前記対象空間において、気流を発生する気流発生部と、前記検出部が前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した第1検出回数が第1閾値回数以上である場合に、前記湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、前記気流発生部に第1の強さの気流を発生させる制御部とを備える。
【0011】
また、本開示の一態様に係る飛沫感染抑制方法は、対象空間における、咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出ステップと、前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方が検出された検出回数が閾値回数以上である場合に、湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部に気流を発生させる制御ステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、感染者の咳又はくしゃみにより飛沫感染することを適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る飛沫感染抑制システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る飛沫感染抑制システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る咳及びくしゃみの検出回数と飛沫感染リスクとの関係を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る飛沫感染抑制システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る気流発生装置のルーバの制御の有無における気流の流速分布を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る気流発生装置が複数の領域それぞれにおける咳又はくしゃみの回数に応じた制御を行う一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本開示の基礎となった知見)
感染症のアウトブレイクという社会課題は、海外はもちろん日本においても深刻である。例えば、インフルエンザを例に挙げれば、ワクチン接種、手洗い及びうがいの励行を行っているにも関わらず、毎年のように流行している。インフルエンザウイルスはかなりの速度で遺伝子の型が変化しており、これによって、ワクチン接種による免疫獲得が上手く作用しないことが一つの原因である。
【0015】
感受者が感染者の咳又はくしゃみなどに暴露されてインフルエンザに感染すると、通常、1~2日の潜伏期間を経て、高熱や激しい倦怠感に見舞われる。特に、子供や高齢者といった健康弱者の場合には、重症化しやすく、最悪の場合では死亡する報告例もある。したがって、多くの高齢者が居住している老人介護施設などの施設では、インフルエンザ対策を徹底することが急務である。介護施設では、特に、施設職員の手指衛生の徹底、感染症対策マニュアルによる対策など様々な感染症対策が実施されているが、施設外からの感染症の持ち込みによる集団感染は定期的に起きている。インフルエンザは先にも述べた通り、主には飛沫感染と空気感染とが主要な感染ルートである。飛沫感染は、主に感染者が咳又はくしゃみをした場合に、ウイルスがその局所的かつ高速な気流に乗って、飛散し、飛散したウイルスに感受者が暴露されることによって成立する。そのため、感染者の咳又はくしゃみに曝露されないようにすることが重要な対策手段である。
【0016】
しかしながら、例えば、特許文献1では、不特定多数の人がいる場合、多数のクリーンブースを必要とするため、コスト面や実際の実施の形態を考えれば現実的ではない。例えば、多数のクリーンブースが必要になるで、システムが大掛かりになってしまう。つまり、特許文献1の技術は、医師などの特定少数の人を飛沫感染から守る技術としては使えるが、例えば、介護施設のコミュニティルームなど多数の高齢者が同時に存在する場合に、これら高齢者をすべて守るには、コスト面や装置の大きさを考えると、現実的ではない。また、予め感染者が特定されていない場合には適用が難しい。
【0017】
また、咳又はくしゃみを発生した場合に生じる飛沫は人の唾液などに含まれるNaCl又はKClなどの飛沫核と呼ばれる不揮発性の成分と、飛沫核の周りに存在する水とからなり、この飛沫の水分は飛沫の初期粒径及び室内の相対湿度に応じて、揮発していく事が知られている。非特許文献2によれば、10μm以下の粒径は1秒以内など、極めて短時間の間に飛沫核へ蒸発するが、例えば、100μmなどの比較的大きな粒子は相対湿度が90%など高い場合には、蒸発に10秒以上かかる。100μm以上の大きな飛沫は重力により速やかに沈降すると考えられているが、多くの数値シミュレーション(例えば、非特許文献1及び2)は乱流モデルという定常状態の気流に適したモデルで計算されており、実際には咳又はくしゃみなどの非定常な気流に対する精度は高くない。実験的にも観測されているが、咳発生時には主流の周辺に渦を生じながら、咳気流は伝播していく。
【0018】
このため、100μm以下の微粒子は渦を伴った気流に影響されながら、高速で空間を伝播していくことになる。すなわち、100μm程度の比較的大きな微粒子も乱流モデルで予測されるほど短時間には重力沈降せず、飛沫感染に寄与する可能性がある。そして、粒径の大きな微粒子の場合、10μm程度の粒径の粒子に比べて、慣性が大きいため、当該微粒子の移動を止めにくい。例えば、ここでは飛沫核の組成をNaCl、粒径を10μm、咳が生じた瞬間における飛沫の大きさを90μmとする。この場合、NaClの密度を2160kg/m3、水の密度を1000kg/m3とすると、飛沫と飛沫核との質量比はおよそ340倍程度異なる。つまり、咳又はくしゃみによって飛沫が生じた場合に同じ程度の速度まで加速されたとすれば、100μm程度の大きな粒子は10μm程度の粒子の300倍以上止めにくい。このため、これら大きな飛沫まで含めた飛沫感染を防止するには、装置が大掛かりになる。
【0019】
そこで、本願発明者は、適切に感受者を飛沫感染から防ぐことについて鋭意検討を行った。そして、咳及びくしゃみの少なくとも一方の検出に応じて、空間の相対湿度を所定湿度以下に下げることで、上記課題を解決することを見出した。
【0020】
そこで、本開示の一態様に係る飛沫感染抑制システムは、対象空間における咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出部と、前記対象空間における相対湿度を制御する湿度調整部と、前記対象空間において、気流を発生する気流発生部と、前記検出部が前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した第1検出回数が第1閾値回数以上である場合に、前記湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、前記気流発生部に第1の強さの気流を発生させる制御部とを備える。
【0021】
これにより、所定期間内における検出回数が第一閾値回数以上生じている空間Rの相対湿度を下げることにより、粒径の大きな飛沫の蒸発及び乾燥を促進し、粒子の慣性を下げることができる。つまり、空間における飛沫感染リスクが高い環境下であっても、飛沫感染の原因となる飛沫が空気抵抗等により飛びにくい状況を形成することができる。そして、気流発生部が空間内に例えば下向きの気流を発生させることで、慣性の小さくなった粒子を容易に沈降させることができる。よって、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システムは、適切に飛沫感染を抑制することができる。
【0022】
また、前記第1所定湿度は、40%であってもよい。
【0023】
これにより、飛沫を数秒などの短期間で飛沫核にすることができる。例えば、100μmの飛沫を数秒で飛沫核とすることができる。飛沫を短期間で空気抵抗等により移動が抑制されやすい状態とすることができるので、感染者の咳又はくしゃみにより飛沫感染することをより適切に抑制することができる。
【0024】
また、前記制御部は、さらに、前記第1検出回数が前記第1閾値回数より多い第2閾値回数以上である場合に、前記第1所定湿度より低い第2所定湿度以下に低下させる、及び、前記第1の強さより強い第2の強さの気流を発生させるの少なくとも一方を行なってもよい。
【0025】
これにより、所定期間における咳又はくしゃみの検出回数が多いときに、飛沫感染リスクをより低減することができる。つまり、感染リスクが高い場合であっても、感染者の咳又はくしゃみにより飛沫感染することを適切に抑制することができる。
【0026】
また、前記対象空間は、第1領域及び第2領域を含み、前記検出部は、前記第1領域及び前記第2領域のそれぞれにおいて、前記咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出し、前記制御部は、前記第1領域における第2検出回数と前記第2領域における第3検出回数とに基づく前記第1検出回数が前記第1閾値回数以上であり、かつ前記第2検出回数が前記第3検出回数より多い場合に、前記第1領域の気流の強さを前記第2領域の気流の強さより強くさせてもよい。
【0027】
これにより、空間内の場所ごとに感染リスクが異なる場合、感染リスクが高い領域の感染リスクを優先して低減することがでる。よって、感染者の咳又はくしゃみにより飛沫感染することをさらに適切に抑制することができる。
【0028】
また、前記対象空間の相対湿度を計測する湿度測定部を備え、前記制御部は、前記第1検出回数が前記第1閾値回数以上であり、かつ前記湿度測定部が計測した相対湿度が前記第1所定湿度以下である場合に、前記湿度調整部による前記対象空間の相対湿度の制御を停止させてもよい。
【0029】
これにより、空間内の相対湿度を下げる必要があるときにのみ、湿度調整部を動作させることができる。よって、湿度調整部の省電力化を実現することができる。
【0030】
また、本開示の一態様に係る飛沫感染抑制方法は、対象空間における、咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間検出する検出ステップと、前記所定期間に前記咳及びくしゃみの少なくとも一方が検出された検出回数が閾値回数以上である場合に、湿度調整部に前記対象空間の相対湿度を所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部に気流を発生させる制御ステップとを含む。
【0031】
これにより、上記飛沫感染抑制システムと同様の効果を奏する。
【0032】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、コンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、及び、記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0033】
以下、本開示の実施の形態に関して、
図1~
図6を用いて詳細に説明する。
【0034】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0035】
なお、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0036】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指す。なお、「上方」及び「下方」は、「鉛直上方」及び「鉛直下方」と完全に一致することに加え、実質的に同じ方向であることをも含む表現である。例えば、「上方」と「鉛直上方」とは、数%程度の誤差を含んでいてもよい。また、本明細書において、「平面視」とは、鉛直上方から鉛直下方に向かって飛沫感染抑制システムを見ることを意味する。
【0037】
また、本明細書において、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0038】
また、本明細書において、「感染」とは生体内にウイルス、細菌等の微生物が侵入することを指し、この生体の持ち主を感染者とも記載する。また、微生物が侵入していない生体の持ち主、すなわち感染していない生体の持ち主を感受者とも記載する。
【0039】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム等について、
図1~
図6を参照しながら説明する。
【0040】
[1.飛沫感染抑制システムの概要]
まず、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10の構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0041】
図1は、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10の概略構成を示す図である。
図2は、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10の機能構成を示すブロック図である。
【0042】
図1に示すように、飛沫感染抑制システム10は、検出装置20と、湿度制御装置30と、気流発生装置40とを備える。検出装置20と、湿度制御装置30と、気流発生装置40とは、空間Rに設置される。空間Rは、例えば、介護施設のコミュニティルーム、会社の会議室、学校の教室、及び、飲食店など不特定多数の人hが滞在するような空間である。また、空間Rとは、例えば、人hが搭乗する移動体(車両及び飛行機など)内の空間(例えば、閉鎖空間)であってもよい。なお、飛沫感染抑制システム10が備える検出装置20、湿度制御装置30、及び、気流発生装置40の数は、それぞれ1つである例について説明するが、それぞれの数は特に限定されない。また、空間Rは対象空間の一例である。
【0043】
また、人hは空間R内に存在し、介護施設のコミュニティルームを一例に説明すると、居住者、職員、又は、施設の来訪者である。また、本実施の形態では、飛沫感染抑制システム10は、人hが感染症に感染しているか否かを、判定しない。人hが感染症に感染した場合には、まずその人hの体内でウイルスが急激に増加し、ある一定のウイルス量で他者に感染させることができる感染能を有するようになる。SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)などの一部の感染症を除けば、多くの場合、この時点で既に強い感染力を有する。そして、体内でウイルスの数がさらに増えると、各感染症に応じた症状が現れることになる。例えば、インフルエンザの場合には、激しい倦怠感や高熱に見舞われる。すなわち、感染能を有する期間と、症状を有する期間の2つの期間とは時期が異なり、感染能を有し始めた瞬間を捉えるということは現時点での技術では難しい。このため、空間Rに存在している人hは、基本的には感染者であると見なす。ただし、感染能を有し、なおかつ症状も現れている期間においては、感染者、及び、非感染者の判定は十分可能である。例えば、医者の診断結果、又は、体温若しくは心拍数などの生体情報から感染者と判定できる場合には、そのような感染情報を飛沫感染抑制システム10に反映してもよい。具体的には、感染者が咳又はくしゃみをしたときだけ、飛沫感染抑制システム10は、動作してもよい。例えば、検出装置20が画像又は音声などから感染者が咳及びくしゃみの少なくとも一方をしたことを検出したときに、湿度制御装置30及び気流発生装置40は、動作してもよい。なお、以下では、人hが感染症に感染しているか否かの判定を行わない場合について説明する。
【0044】
検出装置20は、空間Rに存在する人hの咳及びくしゃみの少なくとも一方の検出を行い、所定期間の間に検出された咳及びくしゃみの少なくとも一方の検出回数を算出する。そして、検出装置20は、所定期間の間の検出回数が閾値回数(例えば、第1閾値回数)以上である場合には、咳又はくしゃみによる飛沫感染リスクが高いと判定し、制御信号を湿度制御装置30及び気流発生装置40に出力する。
図2に示すように、検出装置20は、検出部21、制御部22、通信部23、及び、記憶部24を有する。
【0045】
検出部21は、空間Rにいる人hの咳及びくしゃみの少なくとも一方を継続的に検出する。本実施の形態では、検出部21は、咳及びくしゃみの両方を所定期間検出する。検出部21は、空間R内に存在する人hの咳及びくしゃみを検出する。検出部21は、検出した結果を制御部22に出力する。なお、本実施の形態では、検出部21は、咳又はくしゃみをした人hの空間R内における位置の特定は行わない。
【0046】
咳及びくしゃみの検出方法としては、例えば、収音装置(例えば、マイクロフォンなど)の音情報によって検出することができる。検出部21は、例えば、マイクロフォンを含んで構成される。咳及びくしゃみは特有のスペクトルを有するので、音情報を解析することで、咳及びくしゃみを検出することができる。このとき、音の大きさ(dB)の閾値を設けてもよい。具体的には、検出部21は、閾値以下のスペクトルは検出対象外と判定することで、空間R内に存在する人hの咳又はくしゃみを選択的に検出することができる。
【0047】
なお、検出部21は、撮像装置(例えば、カメラ)を含んで構成されてもよい。検出部21は、撮像装置が撮像した画像を画像処理し分析することで、咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出してもよい。この場合、例えば、機械学習などの分類アルゴリズム(分類モデル)によって、画像処理により得られた動作パターンが咳又はくしゃみであるか否かを容易に分類することができる。また、検出部21は、収音装置と撮像装置との組み合わせで構成されていてもよい。
【0048】
検出部21は、咳又はくしゃみを検出すると、咳又はくしゃみを検出したことを示す情報を制御部22に出力する。
【0049】
制御部22は、検出装置20の各構成要素を制御する制御装置である。制御部22は、例えば、所定期間ごとの時間間隔で、咳及びくしゃみが検出された回数である検出回数を算出し、記憶部24に記憶する。所定期間は、例えば、30分又は1時間などであってもよい。制御部22は、例えば、検出部21から咳又はくしゃみを検出したことを示す情報を取得した回数を累積することで、検出回数を算出してもよい。なお、検出部21が空間Rにおいて所定期間に咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した回数である検出回数は、第1検出回数の一例である。また、制御部22は、現在の年月日及び時刻を計時するリアルタイムクロック機能を有していてもよい。
【0050】
制御部22は、所定期間の間に検出された咳又はくしゃみの検出回数が閾値回数以上である場合には、空間Rにおいて飛沫感染リスクが高いと判定する。
図3は、本実施の形態に係る咳及びくしゃみの検出回数と飛沫感染リスクとの関係を示す図である。
図3では、横軸は時間、縦軸は咳及びくしゃみ検出回数を示している。なお、
図3では閾値回数が第1閾値回数の1つだけである例について示しているが、閾値回数は複数あってもよい。
【0051】
図3に示すように、所定期間T1の時刻t1において、検出回数が第1閾値回数以上となっている。よって、
図3の例では、制御部22は、空間Rにおける飛沫感染リスクが高いと判定する。すなわち、飛沫感染リスクがあると判定する。なお、制御部22は、所定期間T1において検出回数が第1閾値回数未満である場合、空間Rにおける飛沫感染リスクが低いと判定する。
【0052】
なお、例えば、閾値回数を10回以上などと設定すればよい。閾値回数は、一例として、所定期間T1が30分のときに、10回であってもよい。この咳及びくしゃみの検出回数は、空間R内に存在している人hの人数と強く相関している。当然のことながら、空間R内の人数が多ければ、検出される咳及びくしゃみの検出回数が増える。また、同じ咳及びくしゃみの検出回数であったとしても、空間R内に存在している人数が多ければ、飛沫に曝露される可能性のある感受者が多いことを意味しており、空間R全体で評価した飛沫感染リスクは異なってくる。したがって、制御部22は、空間R内に存在している人の人数に応じて、閾値回数を変更してもよい。制御部22は、例えば、空間R内に存在している人の人数が多いほど、飛沫感染リスクが高いと判定する閾値回数を少ない値としてもよい。こうすることで、空間R内の人の人数を加味した上で、飛沫感染リスクを抑制することができる。なお、制御部22は、飛沫感染抑制システム10外の装置から空間R内に存在する人の人数を取得してもよいし、検出部21が撮像装置を含み当該検出部21が撮像した画像から空間R内に存在する人の人数を取得してもよい。
【0053】
制御部22は、咳及びくしゃみの検出回数が閾値回数以上である場合に、湿度制御装置30に空間Rの相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生装置40に第1の強さの気流を発生させる。具体的には、制御部22は、通信部23を介して湿度制御装置30及び気流発生装置40に所定の信号を出力する。所定の信号とは、例えば、湿度制御装置30及び気流発生装置40の動作を制御する制御情報(例えば、湿度、気流の強さなどの情報)を含む。なお、所定の信号は、検出回数が閾値回数以上となったことを示す情報(言い換えると、飛沫感染リスクが高いことを示す情報)を含んでいてもよい。なお、制御情報に含まれる湿度及び気流の強さなどを制御値とも記載する。
【0054】
通信部23は、検出装置20と湿度制御装置30及び気流発生装置40との通信を行うための装置である。通信部23は、通信回路から構成される。
【0055】
記憶部24は、制御部22が実行する制御プログラムを記憶する記憶装置である。また、記憶部24は、検出部21が検出した検出結果などを記憶してもよい。記憶部24は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0056】
湿度制御装置30は、空間R内(例えば、室内)の湿度を制御する。湿度制御装置30は、例えば、検出装置20から取得した制御情報に基づいて、空間Rにおける相対湿度を制御する。
図2に示すように、湿度制御装置30は、湿度調整部31、制御部32、通信部33、記憶部34、及び、湿度測定部35を有する。
【0057】
湿度調整部31は、制御部32の制御により空間R内の相対湿度を調整するための装置である。湿度調整部31は、加湿機能(加湿モード)と除湿機能(除湿モード)とを切り替えて動作できる装置である。湿度調整部31は、空間Rの相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる制御を行う。
【0058】
制御部32は、例えば、通信部33を介して検出装置20から制御情報を取得すると、空間R内の相対湿度が取得した制御情報に応じた相対湿度となるように湿度調整部31を介して湿度制御を行う。制御部32は、例えば、制御情報に含まれる相対湿度(所定湿度の一例であり、空間Rにおける制御後の相対湿度)と、湿度測定部35の測定結果(例えば、空間Rにおける現在の相対湿度)とから、湿度調整部31の動作(例えば、吸気量など)を制御する。制御部32は、10分などの予め定められた期間内に空間R内の相対湿度が所定湿度以下となるように湿度調整部31の動作を制御する。なお、制御部32は、検出装置20から取得した制御情報、湿度測定部35が測定した相対湿度を示す情報などを記憶部34に記憶してもよい。
【0059】
通信部33は、検出装置20と湿度制御装置30との通信を行うための装置である。通信部33は、通信回路から構成される。
【0060】
記憶部34は、制御部32が実行する制御プログラムを記憶する記憶装置である。また、記憶部34は、検出装置20から取得した制御情報、湿度測定部35が測定した相対湿度などを記憶してもよい。記憶部34は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0061】
湿度測定部35は、空間R内の湿度を測定する。本実施の形態では、湿度測定部35は、空間R内の相対湿度を継続的に測定する。湿度測定部35は、相対湿度を直接的に測定してもよいし、温度と絶対湿度とを測定して相対湿度を算出してもよい。湿度測定部35は、湿度センサを含んで構成される。湿度測定部35が測定した湿度は、制御部32に出力される。
【0062】
なお、飛沫感染抑制システム10の外部の装置から相対湿度の測定結果を取得してもよい。この場合、湿度制御装置30は、湿度測定部35を有していなくてもよい。
【0063】
湿度制御装置30が空間R内の相対湿度を下げることで、10秒以内に飛沫核まで水分が蒸発する10μm以下の粒子だけでなく、蒸発に10秒程度かかる100μmの粒子の水分を速やかに蒸発及び乾燥させることができる。これにより、粒径が小さくなることで先にも述べた通り慣性が100倍以上小さくなるため、後述する気流発生部41による気流制御により、例えば、飛沫の制御(例えば、飛沫を沈降させる制御)が容易になる。
【0064】
所定湿度は、例えば、飛沫sが数秒で飛沫核となる値に設定されるとよい。所定湿度は、例えば、100μmの飛沫sを数秒で飛沫核とすることが可能な相対湿度40%以下であるとよい。すなわち、所定湿度の上限値は、飛沫感染を抑制する観点から設定される。なお、飛沫sをより速く飛沫核とするために、所定湿度は相対湿度30%以下に設定されるとよい。また、所定湿度は、例えば、湿度制御装置30がおよそ数分から数10分以内に到達させることができる値に設定されるとよい。所定湿度は、例えば、20分以内に到達させることが可能な値に設定されてもよい。すなわち、所定湿度の下限値は、当該所定湿度に到達するまでに要する時間、つまり湿度制御装置30の性能に応じて設定されてもよく、例えば、相対湿度10%とすることができる。以上のように、所定湿度は、一例として相対湿度が10%以上40%以下の範囲内で設定される。本実施の形態に係る湿度制御装置30は、咳又はくしゃみが検出された場合に、積極的に相対湿度を下げる制御を行う。
【0065】
湿度制御装置30は、例えば、除湿器、加湿器、又は、エア・コンディショナーなどを用いることができる。または、湿度制御装置30は、除湿器、加湿器、及び、エア・コンディショナーなどの組み合わせで実現されてもよい。
【0066】
気流発生装置40は、空間R内(例えば、室内)に気流を発生する。気流発生装置40は、例えば、検出装置20から取得した制御情報に基づいて、気流を発生する。
図2に示すように、気流発生装置40は、気流発生部41、制御部42、通信部43、及び、記憶部44を有する。
【0067】
気流発生部41は、制御部42の制御により空間R内に気流を発生する装置である。気流発生部41は、DC(direct current)ファンなど気流を発生させるデバイスを使用することができる。
【0068】
制御部42は、例えば、通信部43を介して検出装置20から制御情報を取得すると、当該制御情報に応じた気流を空間R内に発生させる制御を行う。制御部42は、例えば、制御情報に含まれる気流の強さの情報に基づいて、気流発生部41からの気流の強さを制御する。本実施の形態では、制御部42は、空間Rに下方に向かう気流(以降において、下向きの気流とも記載する)を発生させる。下向きの気流を発生させることによって、湿度制御によって速やかに乾燥し、慣性が小さくなっている粒子を沈降させることができ、飛沫感染を抑制する事ができる。なお、気流の強さとは、気流の流量及び風速の少なくとも一方を含む。
【0069】
ここで、下向きの気流とは、気流を制御している空間Rにおける風速分布において、鉛直下向き成分の速度が所定速度以上ある気流を下向きの気流と定義する。所定速度としては、例えば、0.1m/s以上0.2m/s以下の速度を用いればよい。
【0070】
また、人hの動線を考慮すると空間Rを形成する壁からの距離が所定距離(例えば、50cm)未満の領域では、人h(例えば、感受者)が存在する確率が低いので、当該領域における飛沫感染リスクは低い。よって、気流発生部41は、空間R全てに下向きの気流を発生させる必要はなく、空間Rのうち、壁から所定距離の領域を除く内側の領域に対して、気流を発生させてもよい。所定距離は、適宜決定される。
【0071】
なお、制御部42は、検出装置20から取得した制御情報を記憶部44に記憶してもよい。
【0072】
通信部43は、検出装置20と気流発生装置40との通信を行うための装置である。通信部43は、通信回路から構成される。
【0073】
記憶部44は、制御部42が実行する制御プログラムを記憶する記憶装置である。また、記憶部44は、検出装置20から取得した制御情報を記憶してもよい。記憶部44は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0074】
[2.飛沫感染抑制システムの動作]
次に、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10の動作について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
【0075】
図4は、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図4では、閾値回数が2つ設定されている場合について説明する。なお、閾値回数は、3つ以上設定されていてもよい。例えば、空間R内にスーパー・スプレッダーが存在した場合には、通常想定される咳及びくしゃみの回数の10倍以上の咳及びくしゃみが検出される可能性が高い。このような場合には、飛沫感染リスクが短時間の間に飛躍的に高くなる。つまり、空間R内にスーパー・スプレッダーがいない場合に比べ、飛沫感染リスクがさらに高くなる。したがって、
図4に示すように閾値回数を複数設けてもよい。例えば、閾値回数ごとに相対湿度及び気流の少なくとも一方の制御値が異なるように設定される。なお、スーパー・スプレッダーとは、平均的に想定される感染リスクを大きく上回る感染者を意味する。咳及びくしゃみの回数には個人差があり、不特定多数の人が集まった場合には、咳及びくしゃみの回数が他者と比べて10倍以上になる人(スーパー・スプレッダー)が一定の確率で存在する。
【0076】
また、
図4において、飛沫感染抑制システム10の各構成要素は、電源が入っているものとする。
【0077】
図4に示すように、検出装置20は、まず咳又はくしゃみを検出したか否かを判定する(S10)。制御部22は、検出部21が咳又はくしゃみを検出する(S10でYes)と、検出回数N(第一検出回数の一例)のカウントを1増加させる(S20)。検出部21が咳又はくしゃみを検出していない(S10でNo)と、検出回数Nのカウントを変更せずにステップS10に戻る。なお、初期(例えば、電源オン時)の検出回数Nは、初期値(N=0)である。
【0078】
次に、制御部22は、検出回数Nを累積する検出期間が第1期間(例えば、
図3に示す所定期間T1)を経過したか否かを判定する(S30)。検出期間は、咳又はくしゃみの検出回数をカウントし始めた時刻を基準とした期間である。第1期間は、例えば、10分以上30分以下の期間であってもよい。第1期間を10分以上とすれば、湿度制御装置30がこまめに動作の開始及び停止を行うことで、湿度制御装置30の負荷が増大することを抑制することができる。また、湿度制御装置30の省電力化にもつながる。
【0079】
検出期間が第1期間を経過すると(S30でYes)、制御部22は、第1期間に検出された咳又はくしゃみの累積回数である検出回数Nが第1閾値回数以上であるか否かの判定を行う(S40)。ここで、第1閾値回数とは、例えば、空間R内にスーパー・スプレッダーなどが存在しない場合に起こりうる咳又はくしゃみの回数の閾値である。第1閾値回数は、例えば、第1期間(例えば、所定期間T1)が30分である場合、例えば、10回などである。また、検出期間が第1期間を経過していないと(S30でNo)、ステップS10に戻る。
【0080】
制御部22は、検出回数Nが第1閾値回数以上である場合(S40でYes)に、第2閾値以上であるか否かの判定を行う(S50)。ここで、第2閾値回数とは、例えば、空間R内にスーパー・スプレッダーなどが存在した場合に起こりうる咳又はくしゃみの回数の閾値である。第2閾値回数は、第1閾値回数より多い回数であり、例えば、第1期間(所定期間T)が30分である場合、例えば、50回などである。
【0081】
制御部22は、検出回数Nが第2閾値回数未満である場合(S50でNo)に、湿度制御装置30及び気流発生装置40の制御を開始させる(S60)。具体的には、制御部22は、記憶部24から検出回数Nが第1閾値回数以上第2閾値未満の場合の制御情報を読み出し、読み出した制御情報を通信部23を介して、湿度制御装置30及び気流発生装置40に出力する。
図4の例では、制御部22は、空間R内の湿度を第1所定湿度とすることを含む制御情報を湿度制御装置30に出力し、気流の強さを第1強さにすることを含む制御情報を気流発生装置40に出力する。すなわち、制御部22は、検出回数Nが第1閾値回数以上である場合に、湿度調整部31に空間Rの相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部41に第1の強さの気流を発生させる。なお、第1所定湿度は、空間R内にスーパー・スプレッダーなどが存在していない場合に設定される湿度であり、例えば、相対湿度40%である。そして、制御部22は、検出期間をリセットする(例えば、検出期間をゼロにする)。
【0082】
また、制御部22は、検出回数Nが第2閾値回数以上である場合(S50でYes)に、湿度制御装置30及び気流発生装置40の制御を開始させる(S70)。具体的には、制御部22は、記憶部24から検出回数Nが第2閾値回数以上である場合の制御情報を読み出し、読み出した制御情報を通信部23を介して、湿度制御装置30及び気流発生装置40に出力する。
図4の例では、制御部22は、空間R内の湿度を第2所定湿度とすることを含む制御情報を湿度制御装置30に出力し、気流の強さを第2強さにすることを含む制御情報を気流発生装置40に出力する。すなわち、制御部22は、検出回数Nが第2閾値回数以上である場合に、湿度調整部31に空間Rの相対湿度を第2所定湿度以下に低下させ、かつ気流発生部41に第2の強さの気流を発生させる。なお、第2所定湿度は、空間R内にスーパー・スプレッダーなどが存在している可能性がある場合に設定される湿度であり、例えば、第1所定湿度より低い値である。第2所定湿度は、例えば、相対湿度30%である。そして、制御部22は、検出期間をリセットする(例えば、検出期間をゼロにする)。
【0083】
なお、制御部22は、検出回数Nが第1閾値回数より少ない場合(S40でNo)、検出回数Nをリセット(N=0)とし(S80)、ステップS10に戻り、処理を継続する。また、このとき、検出期間もリセットされる。
【0084】
上記のように、閾値回数を複数設定した場合(例えば、第1閾値回数及び第2閾値回数)、咳又はくしゃみの回数に応じて設定する湿度及び気流の強さを変更してもよい。これにより、発生している咳及びくしゃみの回数、つまり飛沫感染リスクに応じて、飛沫感染抑制システム10の動作条件を変えることができるので、効率よく飛沫感染を抑制することができる。
【0085】
なお、上記では、ステップS70における湿度及び気流の設定値(第2所定湿度及び第2の強さ)の両方が、ステップS60における湿度及び気流の設定値(第1所定湿度及び第1の強さ)と異なる例について説明したが、これに限定されない。制御部22は、ステップS70において、飛沫感染リスクをステップS60の設定値のときより低減するように湿度制御装置30及び気流発生装置40を制御すればよい。具体的には、制御部22は、ステップS70において(例えば、検出回数Nが第2閾値回数以である場合)、空間Rの相対湿度を第2所定湿度以下に低下させる、及び、第2の強さの気流を発生させるの少なくとも一方を行えばよい。なお、第2の強さの気流は、例えば、第1の強さの気流に比べ、風速が速い又は流量が多い。例えば、第1の強さの気流の風速(第1風速とも記載する)は、第2の強さの気流の風速(第2風速)より速い。
【0086】
湿度制御装置30は、ステップS60又はS70において、検出装置20から出力された制御情報に基づいて、空間Rにおける湿度を制御する。また、気流発生装置40は、ステップS60又はS70において、検出装置20から出力された制御情報に基づいて、空間Rにおいて気流を発生する。なお、湿度制御装置30は、制御情報を取得したときに湿度測定部35が測定した空間Rの相対湿度が、取得した制御情報に含まれる第1所定湿度以下である場合、湿度制御を行わなくてもよい。すなわち、湿度制御装置30は、検出回数Nが第1閾値回数以上であり、かつ湿度測定部35が計測した現在の相対湿度が第1所定湿度以下である場合、湿度制御を停止してもよい。言い換えると、制御部22は、検出回数Nが第1閾値回数以上であり、かつ湿度測定部35が計測した相対湿度が第1所定湿度以下である場合に、湿度調整部31による空間Rの相対湿度の制御を停止させてもよい。この場合、湿度制御装置30及び気流発生装置40のうち気流発生装置40のみが動作する。
【0087】
制御部22は、ステップS60又はS70において、湿度制御装置30及び気流発生装置40の動作を開始したときからの経過時間である制御期間T2が第2期間を経過したか否かを判定する(S90)。制御部22は、制御期間T2が第2期間を超えている場合(S90でYes)、湿度及び気流の制御を停止させる(S100)。制御部22は、制御期間T2が第2期間を超えた場合、湿度調整部31が空間Rの相対湿度を第1所定湿度又は第2所定湿度以下に低下することを停止させ、かつ気流発生部41が第1の強さ又は第2の強さの気流を発生することを停止させる。具体的には、制御部22は、湿度制御装置30に湿度制御を停止することを含む制御情報を出力し、気流発生装置40に気流の発生を停止することを含む制御情報を出力する。これにより、空間Rの湿度及び気流状態を、ステップS60又はS70で湿度及び気流の制御を開始する前に戻すことができる。なお、ステップS100においては、少なくとも湿度の制御を停止させればよい。制御部22は、湿度制御装置30の動作を停止させればよい。また、第2期間は、例えば、30分程度である。
【0088】
空間R内の相対湿度が40%を下回った場合には、一般的にはインフルエンザウイルスが不活化されにくいと言われており、常に空間R内の相対湿度を40%以下に保った場合、飛沫核として漂う活性なインフルエンザウイルスを吸引することによる空気感染リスクが高くなる可能性がある。したがって、所定の期間(例えば、第2期間)、相対湿度を所定湿度(例えば、第1所定湿度又は第2所定湿度)に制御した後には、相対湿度を制御前の相対湿度に戻すために、ステップS90の処理が行われる。これにより、飛沫感染に加えて空気感染のリスクを低減することができる。
【0089】
なお、制御部22は、ステップS100において湿度制御装置30に湿度制御を停止させる例について説明したが、湿度制御装置30に加湿させてもよい。具体的には、制御部22は、ステップS100において、加湿することを含む制御情報を湿度制御装置30に出力する。湿度制御装置30は、加湿することを含む制御情報を取得すると、湿度制御を開始する前に湿度測定部35が測定した相対湿度と、湿度測定部35が現在測定した相対湿度とに基づいて、加湿を行ってもよい。これにより、空気感染のリスクをさらに低減することができる。
【0090】
制御部22は、制御期間T2が第2期間以下である場合(S90でNo)、咳又はくしゃみが検出されたか否かを判定する(S110)。制御部22は、検出部21の検出結果に基づき、湿度及び気流の制御中に咳又はくしゃみが検出されたか否かを判定する。制御部22は、咳又はくしゃみが検出された場合(S110でYes)、制御期間T2をリセット(T2=0)し(S120)、ステップS90に戻る。これにより、現時点において最後に咳又はくしゃみを検出した後から第2期間の間、湿度及び気流の制御が行われるので、飛沫感染のリスクをさらに抑制することができる。また、制御部22は、咳又はくしゃみが検出されなかった場合(S110でNo)、制御期間T2に1を加えて(S130)、ステップS90に戻る。
【0091】
なお、第2期間は、検出回数Nに応じて異なった期間であってもよい。飛沫感染リスクを低減する観点から、検出回数Nが第2閾値回数以上である場合の第2期間は、検出回数Nが第1閾値回数以上第2閾値回数未満である場合に比べ、長くてもよい。これにより、飛沫感染リスクが高い場合に、飛沫感染リスクが低い場合より長い期間、湿度制御装置30及び気流発生装置40がステップS70に示す条件で動作するので、効果的に飛沫感染リスクを低減することができる。また、空気感染リスクを低減する観点から、検出回数Nが第2閾値回数以上である場合の第2期間は、検出回数Nが第1閾値回数以上第2閾値回数未満である場合に比べ、短くてもよい。これにより、空気感染リスクが高くなる可能性がある場合に、空気感染リスクの可能性が低い場合より短い期間、湿度制御装置30及び気流発生装置40がステップS70に示す条件で動作するので、湿度制御装置30の動作を停止した後の空気感染リスクをさらに低減することができる。
【0092】
なお、ステップS110及び120の処理は行われなくてもよい。制御部22は、例えば、ステップS90でNoであった場合、ステップS130の処理を実行してもよい。また、
図4に示すフローチャートは、繰り返し実行される。
【0093】
なお、閾値回数が1つ(例えば、第1閾値回数のみ)である場合、ステップS50及びS70の処理は行われない。つまり、制御部22は、検出部21が第1期間に咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した検出回数Nが第1閾値回数以上である場合に、湿度調整部31に空間Rの相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部41に第1の強さの気流を発生させる。
【0094】
なお、気流発生装置40は、気流を発生させているとき、ルーバの制御を行ってもよい。
図5は、本実施の形態に係る気流発生装置40のルーバの制御の有無における気流の流速(風速)分布を示す図である。
図5の実線は、気流発生装置40のルーバを所定の時間間隔でスイープした場合の空間Rの中央付近の流速分布を示しており、破線は、気流発生装置40のルーバをスイープしていない場合の空間Rの中央付近の流速分布を示している。なお、所定の時間間隔は、特に限定されない。また、縦方向の破線より右側は空間Rの中心付近での上方向の気流の流速分布を示しており、破線より左側は空間Rの中心付近での下方向の気流の流速分布を示している。縦軸は、頻度を示す。また、
図5は、気流発生装置40は、空間Rを形成する天井に取り付けられているときの結果を示す。
【0095】
図5に示すように、気流発生装置40のルーバを所定の時間間隔でスイープしながら気流を発生させることで、空間Rの中心付近において、下方向の流速の頻度が増えている。よって、気流発生装置40は、ルーバを所定の時間間隔でスイープすることで、さらに効率的に飛沫を沈降させることができる。
【0096】
ここで、検出部21が咳又はくしゃみの検出場所を特定することができる場合について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、本実施の形態に係る気流発生装置40が複数の領域それぞれにおける咳又はくしゃみの回数に応じた制御を行う一例を示す模式図である。なお、検出部21が撮像装置である場合、又は、複数のマイクロフォン(例えば、アレー状に配置されたマイクロフォン)を含んで構成されている場合、空間Rにおける咳又はくしゃみが行われた場所を特定することできる。
【0097】
図6に示すように、空間Rは第1領域A1及び第2領域A2を含む複数の領域を有する。複数の領域は、平面視において空間Rが区画されて形成される領域である。第1領域A1及び第2領域A2は、例えば、重複していない領域である。
【0098】
検出部21は、第1領域A1及び第2領域A2を含む複数の領域のそれぞれにおいて、咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出する。すなわち、
図4に示すステップS10において、検出部21は、咳又はくしゃみがどの領域(例えば、第1領域A1)でされたかを検出する。制御部22は、例えば、複数の領域それぞれごと、つまり空間Rの場所ごとに検出回数を累積する。例えば、第1領域A1において所定期間Tに咳又はくしゃみが検出された回数を第2検出回数、第2領域A2において所定期間Tに咳又はくしゃみが検出された回数を第3検出回数とする。なお、第1検出回数は、第2検出回数及び第3検出回数を含む複数の領域それぞれの検出回数に基づく回数である。第1検出回数は、複数の領域それぞれの検出回数の合計であってもよいし、複数の領域それぞれの検出回数の最大値であってもよい。
【0099】
図6では、咳及びくしゃみの頻度、すなわち咳及びくしゃみの検出回数Nをコンター図で表している。色が濃いほど、検出回数が多い、すなわち飛沫感染のリスクが高い領域であることを示している。
図6では、机50及び椅子60の周辺の第1領域A1において、咳及びくしゃみの検出頻度が高く、第2領域A2において、咳及びくしゃみの検出頻度が低い様子を示している。
【0100】
制御部22は、
図4に示す検出回数N(第1検出回数)が第1閾値回数以上である場合、ステップS60又はS70で気流発生装置40に出力する制御情報に、空間Rにおいて気流を強く発生させる場所(例えば、第1領域A1を含む範囲)を示す領域情報を含めて出力する。制御情報は、例えば、咳又はくしゃみの検出回数が多いほど、発生させる気流が強くなるように制御することが含まれる。言い換えると、制御部22は、第1検出回数が第1閾値回数以上であり、かつ第2検出回数が第3検出回数より多い場合に、第1領域A1の気流の強さを第2領域A2の気流の強さより強くさせる。なお、気流が強いとは、気流の流速が高い又は気流の流量が多いことを意味する。
【0101】
検出回数が多い第1領域A1に発生させる気流は、検出回数が少ない第2領域A2に発生させる気流に比べ、流速が高い又は流量が多くなる。咳又はくしゃみの検出頻度が高い、すなわち検出回数が多い第1領域A1に気流を優先的に発生させることで、飛沫感染リスクの高い第1領域A1における飛沫感染を効果的に抑制することができる。なお、流速が低い又は終了が少ないとは、例えば、該当する領域に気流を発生させないことを含む。気流発生装置40は、第2領域A2には気流を発生しなくてもよい。
【0102】
なお、複数の領域の平面視形状は、矩形である例について示しているが、これに限定されない。複数の領域の平面視形状は、多角形であってもよいし、円形であってもよい。また、複数の領域の平面視形状は、同一であることに限定されない。
【0103】
なお、
図6では、検出装置20は、例えば、机50に設けられている。検出装置20は、空間R内において人が集まりやすい場所に設けられていてもよい。検出装置20は、例えば、机50に埋め込まれていてもよい。
【0104】
以上のように、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10は、空間Rにおける咳及びくしゃみの少なくとも一方を所定期間T検出する検出部21と、空間Rにおける相対湿度を制御する湿度調整部31と、空間Rにおいて、気流を発生する気流発生部41と、湿度調整部31及び気流発生部41の動作を制御する制御部22とを備える。そして、制御部22は、検出部21が所定期間Tに咳及びくしゃみの少なくとも一方を検出した検出回数Nが第1閾値回数以上である場合に、湿度調整部31に空R間の相対湿度を第1所定湿度以下に低下させる、及び、気流発生部41に第1の強さの気流を発生させる。
【0105】
これにより、所定期間T内における検出回数Nが第一閾値回数以上生じている空間Rの相対湿度を下げることにより、粒径の大きな飛沫sの蒸発及び乾燥を促進し、粒子の慣性を下げることができる。つまり、空間Rにおける飛沫感染リスクが高いときに、飛沫感染の原因となる飛沫sが空気抵抗等により飛びにくい状況を形成することができる。そして、気流発生部41が空間R内に例えば下向きの気流を発生させることで、慣性の小さくなった粒子を容易に沈降させることができる。よって、本実施の形態に係る飛沫感染抑制システム10は、適切に飛沫感染を抑制することができる。
【0106】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る飛沫感染抑制システム等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0107】
例えば、上記実施の形態では、気流発生部は下方に向けて気流を発生する例について説明したが、これに限定されない。気流発生部が床などの人より低い位置に設けられる場合、当該気流発生部は上方(例えば天井)に向けて気流を発生させてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態では、検出装置、湿度制御装置、及び、気流発生装置は、それぞれ異なる装置である例について説明したが、これに限定されない。例えば、検出装置、湿度制御装置、及び、気流発生装置の少なくとも2つは、1つの装置で構成されてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態における装置間の通信方法は特に限定されない。装置間では、無線通信が行われてもよいし、有線通信が行われてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態における湿度制御装置及び気流発生装置は、ユーザからの操作によって制御されてもよい。湿度制御装置及び気流発生装置はそれぞれ、ユーザからの操作を取得する取得部(例えば、タッチパネル又はボタンなどのユーザインターフェース)を有し、当該取得部によって取得された操作に基づいて、制御されてもよい。湿度制御装置及び気流発生装置は、検出装置からの制御情報に基づき制御されているときに取得部を介してユーザからの操作を取得すると、当該ユーザからの操作を優先して実行してもよい。
【0111】
また、上記実施の形態において、検出装置の制御部は、閾値回数が1つ(例えば、第1閾値回数)のみ設定されている場合、検出期間が第1期間を経過していなくても、湿度及び気流の制御を開始してもよい。具体的には、
図4に示すフローチャートにおいて、検出装置の制御部は、検出期間が第1期間を経過する前であっても、検出回数が第1閾値回数を超えた場合に、湿度及び気流の制御を開始してもよい(例えば、ステップS50に進んでもよい)。これにより、飛沫感染リスクが高い場合に、迅速に飛沫感染リスクを低減することができる。
【0112】
また、上記実施の形態において、相対湿度の制御は、湿度制御装置が除湿又は加湿を行うことにより実現される例について説明したが、これに限定されない。例えば、湿度制御装置がエア・コンディショナーなどの温度調整機能を有する装置によって実現されている場合、空間内の温度を変更することで、湿度制御が行われてもよい。相対湿度は、各気温における飽和蒸気圧に対する蒸気圧との比であり、飽和蒸気圧は例えば、経験式であるアントワン式を使って予測する事ができる。アントワン式は、飽和蒸気圧をp[mmHg]、温度をT[℃]、経験的なパラメータをA、B、及び、Cとしたときに、
【数1】
で表される。パラメータA、B、及び、Cは物質によって定まる定数であり、水の場合、パラメータの値はそれぞれA=8.02574、B=1705.616、C=231.405などの値がよく使用される。したがって、エア・コンディショナーを用いて空間内の温度を上げることによっても相対湿度を下げることができる。例えば、式1に示すアントワン式によれば、空間内の気温が19℃、相対湿度が50%であった場合に、エア・コンディショナーによって、26℃まで昇温したとすれば、相対湿度を32%まで下げることができる。
【0113】
また、上記実施の形態において説明された複数の処理の順序は一例である。複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。また、各構成要素で行われる処理の全部又は一部は、他の構成要素によって行われてもよい。例えば、検出装置の制御部が行う処理の全部又は一部を、湿度制御装置又は気流発生装置の制御部が行ってもよい。
【0114】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素の全部又は一部は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素の全部又は一部は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、制御部などの構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0116】
また、例えば、本開示は、上記実施の形態の飛沫感染抑制システムが行う処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。このようなプログラムには、スマートフォンまたはタブレット端末などの携帯端末にインストールされるアプリケーションプログラムが含まれる。また、本開示は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。例えば、上記プログラム及び上記プログラムからなるデジタル信号は、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものであってもよい。また、上記プログラム及び上記プログラムからなるデジタル信号は、記録媒体に記録して移送されることにより、又はネットワーク等を経由して移送されることにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施されてもよい。
【0117】
また、上記で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0118】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本開示は、例えば、コミュニケーションなどを行う人が集まる空間に配置される飛沫感染抑制システムなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
10 飛沫感染抑制システム
20 検出装置
21 検出部
22、32、42 制御部
23、33、43 通信部
24、34、44 記憶部
30 湿度制御装置
31 湿度調整部
35 湿度測定部
40 気流発生装置
41 気流発生部
50 机
60 椅子
A1 第1領域
A2 第2領域
h 人
N 検出回数(第1検出回数)
s 飛沫
R 空間(対象空間)
T1 所定期間
T2 制御期間