IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社アンセイの特許一覧

<図1>
  • 特許-車両のステップ装置 図1
  • 特許-車両のステップ装置 図2
  • 特許-車両のステップ装置 図3
  • 特許-車両のステップ装置 図4
  • 特許-車両のステップ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
B60R3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019196865
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070373
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉紀
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-039543(JP,A)
【文献】実開平02-016340(JP,U)
【文献】特開平09-039666(JP,A)
【文献】特表2001-516303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329055(US,A1)
【文献】特開2015-066961(JP,A)
【文献】特開2005-297888(JP,A)
【文献】特開2015-127165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記車体固定部材に取り付けられたカバー部材と、
前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、
前記ステップ支持部材は、前記車体の前後方向で前記ステップ支持部材の外方に突出する第1突出部を有しており、
前記カバー部材は、
前記ステップ支持部材に対して前記車体の前後方向で隙間を有しつつ、前記乗降用ステップの格納位置において前記ステップ支持部材の少なくとも一部を前記車体の前後方向で覆うように下方に延びる本体部と、
前記車体の前後方向で前記カバー部材の内方に突出し、前記乗降用ステップの格納位置において前記第1突出部に上方から対向する第2突出部と、
を有していることを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項2】
前記ステップ支持部材の前記第1突出部は、前記ステップ支持部材から離れる方向へ下方に傾斜する第1傾斜面を有しており、
前記カバー部材の第2突出部は、前記カバー部材から離れる方向へ上方に傾斜する第2傾斜面を有しており、
前記乗降用ステップの格納位置において、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に上方から対向している、請求項1記載の車両のステップ装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記第2突出部の上側に配置された、前記第2突出部と同じ方向に突出する少なくとも1つの上側突出部を有しており、
前記カバー部材は、前記第2突出部及び前記上側突出部の間に、前記第2突出部及び前記上側突出部とは反対方向に窪んだ陥凹部を有している、請求項1又は2記載の車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に備えられたステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロア位置の高い自動車等の車両において、乗員の乗降性を向上させるためにステップ装置が備えられたものがある。例えば、特許文献1には、車両のサイドドアの下部に備えられた可動式のサイドステップ装置が開示されている。特許文献1に記載されたサイドステップ装置は、車体の下部に固定されたブラケットに設けられた平行リンクを介して乗降用ステップ(サイドステップ)が連結されており、車体に対して縦方向(上下方向及び車幅方向)に乗降用ステップが移動可能な構造になっている。当該サイドステップ装置は、アクチュエータを作動させることで、車体下部に格納される格納位置と、車体より側方に突出した展開位置との間を、乗降用ステップが移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-39543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行中、格納位置にある乗降用ステップの上面には、車両前方から後方へ向けて風が流れ、このような風の流れによって、サイドステップ装置の内部の空気が吸い出される。このため、サイドステップ装置の周辺に存在する泥、埃、雪などの異物(以下、単に「異物」という)が、特に乗降用ステップとブラケットとの間からサイドステップ装置の内部に吸い込まれる。そして、サイドステップ装置の内部に吸い込まれた異物は、当該サイドステップ装置の内部に堆積する。サイドステップ装置の内部に異物が堆積すると、乗降用ステップを格納位置と展開位置との間で移動する動作が阻害される恐れがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部への異物の進入を抑制することのできる車両のステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記車体固定部材に取り付けられたカバー部材と、前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、前記ステップ支持部材は、前記車体の前後方向で前記ステップ支持部材の外方に突出する第1突出部を有しており、前記カバー部材は、前記ステップ支持部材に対して前記車体の前後方向で隙間を有しつつ、前記乗降用ステップの格納位置において前記ステップ支持部材の少なくとも一部を前記車体の前後方向で覆うように下方に延びる本体部と、前記車体の前後方向で前記カバー部材の内方に突出し、前記乗降用ステップの格納位置において前記第1突出部に上方から対向する第2突出部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記ステップ支持部材の前記第1突出部は、前記ステップ支持部材から離れる方向へ下方に傾斜する第1傾斜面を有しており、前記カバー部材の第2突出部は、前記カバー部材から離れる方向へ上方に傾斜する第2傾斜面を有しており、前記乗降用ステップの格納位置において、前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面に上方から対向している。
【0008】
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記カバー部材は、前記第2突出部の上側に配置された、前記第2突出部と同じ方向に突出する少なくとも1つの上側突出部を有しており、前記カバー部材は、前記第2突出部及び前記上側突出部の間に、前記第2突出部とは反対方向に窪んだ陥凹部を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両のステップ装置によれば、ステップ支持部材は、車体の前後方向でステップ支持部材の外方に突出する第1突出部を有している。更に、カバー部材は、ステップ支持部材に対して車体の前後方向で隙間を有しつつ、乗降用ステップの格納位置においてステップ支持部材の少なくとも一部を車体の前後方向で覆う本体部と、乗降用ステップの格納位置において第1突出部に上方から対向する第2突出部と、を有している。
【0010】
従って、カバー部材の本体部とステップ支持部材との間の前後方向での隙間(以下、「稼働隙間」ともいう)と、ステップ支持部材の第1突出部とカバー部材の第2突出部との間の隙間(以下、「対向隙間」ともいう)とを別々の大きさに設定することができる。具体的には、展開位置と格納位置との間での乗降用ステップの移動のために必要な稼働隙間を十分に確保しつつ、第1突出部と第2突出部との対向隙間を稼働隙間よりも狭く設定することができる。よって、外部の空気が対向隙間を通過する際の抵抗が大きくなり、ステップ装置の内部へ吸い込まれる空気の量を低減することができる。また、異物が対向隙間を通過する際の抵抗も大きくなる。このため、車両の走行中にステップ装置の内部の空気が吸い出されたとしても、当該異物のステップ装置の内部への進入を抑制することができる。これにより、ステップ装置の内部に異物が堆積することによる乗降用ステップの動作不良を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のステップ装置を備えた車両の外形図である。
図2】格納状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
図3図2におけるA-A線に沿う断面を示す断面図である。
図4図3におけるB部を拡大して示す拡大図である。
図5】展開状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した車両のステップ装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステップ装置1を備えた車両2の外形図である。図2は、格納状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。図3は、図2におけるA-A線に沿う断面を示す断面図である。図4は、図3におけるB部を拡大して示す拡大図である。図5は、展開状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。なお、説明の便宜上、車両2の進行方向を基準に着座乗員から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は車両2の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は車両2の車幅方向を示し、矢印「上」及び「下」は車両2の上下方向を示している。なお、図1では、車両2の左側(助手席側)のフロントドア及びリヤドアの図示を省略しており、ステップ装置1は展開状態である。図2及び図5は、リヤリンク機構5及びその周辺部を車両2の後方から視た図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態のステップ装置1は、例えば1BOX型の車両2の助手席側の下部に備えられた可動式のステップ装置である。ステップ装置1は、ステッププレート3(乗降用ステップ)と、ステッププレート3を縦方向(車幅方向及び上下方向)に移動可能に支持する2個のリンク機構4、5を備えている。
ステッププレート3は、車両2の左側(助手席側)のフロントドアの開口部6及びスライド式のリヤドアの開口部7の下方を車両前後方向に延び、乗員の足を載せることが可能な車幅方向長さに設定されている。ステッププレート3は、2個のリンク機構4、5を介して、車体の下部、詳しくは車両2の左側(助手席側)のサイドシル8の下部に支持されている。
【0014】
2個のリンク機構4、5は、車両前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。ステップ装置1は、ステッププレート3が、車両2の下部に位置する格納位置と、サイドシル8より車幅方向外側(左側)に突出した展開位置との間で、車幅方向に移動可能に構成されている。2個のリンク機構4、5のうち、車両2の後方側のリヤリンク機構5は、リンク(後述するドライブリンク12)を回転駆動させる駆動モータ10(アクチュエータ)を備えている。車両2の前方側のフロントリンク機構4は、駆動モータを備えておらず、ステッププレート3の移動に追従して作動する。
【0015】
駆動モータ10は、車両2の助手席側のフロントドア及びリヤドアの開閉に伴って自動的に作動するよう制御される。例えば、フロントドア及びリヤドアが閉状態では、ステッププレート3が格納位置に位置し、フロントドア及びリヤドアの少なくとも一方が開操作された場合に、ステッププレート3が展開位置に移動するように駆動モータ10が作動制御される。
【0016】
以下、駆動モータ10を備えたリヤリンク機構5について説明するが、フロントリンク機構4はリヤリンク機構5と駆動モータが備えられていない点が異なり、リンク機構4、5における各リンクの長さ、車両2における車幅方向位置及び上下位置等については、同一の構成になっている。
図2及び図3に示すように、リヤリンク機構5は、リンクブラケット11(車体固定部材)、ドライブリンク12(第1リンクアーム)、ドリブンリンク13(第2リンクアーム)、リンクアーム14(ステップ支持部材)、及びカバー部材15とを備えている。
【0017】
リンクブラケット11は、前後方向に間隔をおいて配置され車幅方向及び上下方向に延びる2枚の厚板状の縦板部材11aと、当該2枚の縦板部材11aを接続してリンクブラケット11の上方を閉塞する板状の接続部材11bとを有し、下方が開口した箱型に形成されている。リンクブラケット11は、車体20の下部に前後左右の4か所でボルトによって固定されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、リンクアーム14は、車幅方向に延びるように配置されたアーム状の部材であり、前後方向に間隔をおいて配置された2枚の厚板状の縦板部材14aと、2枚の縦板部材14aを接続する板状の接続部材14bとを有している。リンクアーム14の車幅方向外側(左側)となる外側端部14cには、ステッププレート3が固定されている。図3に示すように、リンクブラケット11とリンクアーム14とは、同一の前後位置に配置されている。詳しくは、リンクブラケット11の縦板部材11aとリンクアーム14の縦板部材14aは、夫々同一の前後位置に配置されている。
【0019】
図3及び図4に示すように、リンクアーム14は、前後方向でリンクアーム14の外方に突出する第1突出部14dを有している。具体的には、リンクアーム14の第1突出部14dは、縦板部材14aの夫々の上方端部において、車幅方向に連続的に延びる部分である。なお、第1突出部14dは、車幅方向に間欠的に延びてもよいし、車幅方向の一部にのみ設けられていてもよい。第1突出部14dは、前方向に突出する第1前方突出部14e、及び、後方向に突出する第1後方突出部14fを有している。なお、第1突出部14dは、第1前方突出部14e及び第1後方突出部14fのいずれか一方のみを有していてもよい。
【0020】
図3及び図4に示すように、第1前方突出部14eは、前方向へ先細りの形状を有しており、リンクアーム14から離れる方向(前方向)且つ下方向に傾斜する第1前方傾斜面14gと、前方端縁14kからリンクアーム14に接近する方向且つ下方向に傾斜する第1前方接続面14hとを含んでいる。なお、第1前方突出部14eは、第1前方傾斜面14gのみを有していてもよく、この場合、第1前方接続面14hは、前後方向に水平に延びていてもよいし、前方端縁14kから後方向且つ上方向に傾斜していてもよい。図4に示すように、前方端縁14kは、丸みを持って形成されてもよいし、角を持って形成されてもよい。
【0021】
第1後方突出部14fは、図3に示す中心軸線Cに対して、第1前方突出部14eと線対称な形状を有している。具体的には、第1後方突出部14fは、後方向へ先細りの形状を有しており、リンクアーム14から離れる方向(後方向)且つ下方向に傾斜する第1後方傾斜面14iと、後方端縁14lからリンクアーム14に接近する方向且つ下方向に傾斜する第1後方接続面14jとを含んでいる。なお、第1後方突出部14fは、第1後方傾斜面14iのみを有していてもよく、この場合、第1後方接続面14jは、前後方向に水平に延びていてもよいし、後方端縁14lから前方向且つ上方向に傾斜していてもよい。図3に示すように、後方端縁14lは、丸みを持って形成されてもよいし、角を持って形成されてもよい。
【0022】
ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、断面が箱型のアーム状の部材である。図2に示すように、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、夫々、一端がリンクブラケット11に他端がリンクアーム14に、前後方向に軸線が延びるように配置されたリンクピン21、22、23、24によって回動可能に支持されている。したがって、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、車体20に対して車幅方向に揺動可能に配置されている。ドライブリンク12は、ドリブンリンク13より車幅方向内側(右側)に配置されている。また、ドライブリンク12はドリブンリンク13よりも短く形成されている。
【0023】
リンクブラケット11とドライブリンク12とを支持する第1リンクピン21は、駆動モータ10の駆動軸と一体に構成されている。駆動モータ10はリンクブラケット11に固定されている。リンクブラケット11とドリブンリンク13とを支持する第2リンクピン22は、第1リンクピン21に対して車幅方向外側に離間して配置されるとともに、第1リンクピン21よりも下方にオフセットして配置されている。一方、車幅方向に延びるリンクアーム14において、リンクアーム14とドライブリンク12とを支持する第3リンクピン23は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部に配置されている。リンクアーム14とドリブンリンク13とを支持する第4リンクピン24は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部近傍に配置されるとともに、第3リンクピン23よりも車幅方向外側かつ下方に離間して配置されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、カバー部材15は、例えばボルト25,26によりリンクブラケット11に取り付けられている。カバー部材15は、上下方向及び左側を開放して形成されており、リンクブラケット11に固定された状態でリンクブラケット11を前後方向及び右側から部分的に覆うように形成されている。具体的には、カバー部材15は、リンクブラケット11に固定された状態で、リンクブラケット11を前側から部分的に覆う板状の前側カバー部15aと、リンクブラケット11を後側から部分的に覆う板状の後側カバー部15bと、前側カバー部15a及び後側カバー部15bを車幅方向内側(右側)で接続し、リンクブラケット11を右側から部分的に覆う板状の接続カバー部(図示せず)とにより構成されている。
【0025】
カバー部材15は、柔軟性を有するように軟質樹脂材で形成されており、後述するようにリンクアーム14と接触した際に所定の撓みを形成する。図2及び図3に示すように、カバー部材15は、リンクアーム14に対して前後方向で隙間(稼働隙間)G1を有しつつ、ステッププレート3の格納位置においてリンクアーム14の少なくとも一部を前後方向で覆うように、下方に延びる本体部15cを有している。本体部15cは、前側カバー部15a及び後側カバー部15bの夫々における下側に設けられている。本体部15cは、リンクアーム14を前側から覆う前側本体部15dと、リンクアーム14を後側から覆う後側本体部15eとを有している。図3に示すように、稼働隙間G1は、前側本体部15dの後方向を向く後側対向面15fと、リンクアーム14の第1前方突出部14eの前方端縁14kとの間の距離である。また、稼働隙間G1は、後側本体部15eの前方向を向く前側対向面15gと、リンクアーム14の第1後方突出部14fの後方端縁14lとの間の距離でもよい。
【0026】
また、図3に示すように、カバー部材15は、本体部15cから前後方向でカバー部材15の内方に突出し、ステッププレート3の格納位置において第1突出部14dに上方から対向する、第2突出部15hを有している。第2突出部15hは、カバー部材15の本体部15cの上側において、車幅方向に連続的に延びる部分であってもよいし、車幅方向に間欠的に延びてもよいし、車幅方向の一部にのみ設けられていてもよい。具体的には、第2突出部15hは、カバー部材15から離れる方向(後方向)に突出する第2後方突出部15i、及び、カバー部材15から離れる方向(前方向)に突出する第2前方突出部15jを有している。なお、第2突出部15hは、第2後方突出部15i及び第2前方突出部15jのいずれか一方のみを有していてもよい。
【0027】
図3及び図4に示すように、第2突出部15hの第2後方突出部15iは、後方向且つ上方向に傾斜する第2後方傾斜面15kを有している。第2後方傾斜面15kは、前側本体部15dの後側対向面15fと接続される部分である。また、第2前方突出部15jは、図3に示す中心軸線Cに対して、第2後方突出部15iと線対称な形状を有しており、第2前方突出部15jは、前方且つ上方向に傾斜する第2前方傾斜面15lを有している。第2前方傾斜面15lは、後側本体部15eの前側対向面15gと接続される部分である。
【0028】
カバー部材15は、第2突出部15hの上側に配置された、第2突出部15hと同じ方向に突出する少なくとも1つの上側突出部15mを有している。具体的には、上側突出部15mは、第2後方突出部15iの上側に配置され、第2後方突出部15iと同じ方向(後方向)に突出する上側後方突出部15nと、第2前方突出部15jの上側に配置され、第2前方突出部15jと同じ方向(前方向)に突出する上側前方突出部15oとを有している。
【0029】
更に、カバー部材15は、第2突出部15h及び上側突出部15mの間に、第2突出部15h及び上側突出部15mとは反対方向に窪んだ陥凹部15pを有している。具体的には、陥凹部15pは、第2後方突出部15i及び上側後方突出部15nの間に位置し、前方向に窪んだ部分である前方陥凹部15qと、第2前方突出部15j及び上側前方突出部15oの間に位置し、後方に窪んだ部分である後方陥凹部15rとを有している。このように、第2突出部15h、陥凹部15p、及び上側突出部15mは、カバー部材15において、いわゆる蛇腹状の部分を形成している。なお、陥凹部15p及び上側突出部15mは複数設けられていてもよい。また、図3に示すように、上側突出部15mは、第2突出部15hに対して前後方向にオフセットして配置されていてもよいし、前後方向において同一の位置に配置されてもよい。
【0030】
図3及び図4に示すように、ステッププレート3の格納位置において、カバー部材15の第2傾斜面(第2後方傾斜面15k及び第2前方傾斜面15l)は、リンクアーム14の第1傾斜面(第1前方傾斜面14g及び第1後方傾斜面14i)に上方から対向している。具体的には、ステッププレート3の格納位置において、カバー部材15の第2後方傾斜面15kは、リンクアーム14の第1前方傾斜面14gに上方且つ前方から、所定の隙間(対向隙間)G2を有して対向している。また、カバー部材15の第2前方傾斜面15lは、リンクアーム14の第1後方傾斜面14iに上方且つ後方から、対向隙間G2で対向している。対向隙間G2は、カバー部材15の第2傾斜面(第2後方傾斜面15k及び第2前方傾斜面15l)とリンクアーム14の第1傾斜面(第1前方傾斜面14g及び第1後方傾斜面14i)との間の最小距離であり、稼働隙間G1より小さく設定されている。なお、対向隙間G2は、稼働隙間G1と同じであってもよい。カバー部材15の第2傾斜面とリンクアーム14の第1傾斜面とは、ステッププレート3の格納位置において互いに接触していてもよく、この場合、対向隙間G2はゼロとなる。
【0031】
図2に示すように、ステッププレート3が格納位置に位置する格納状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向内側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向内側に位置する。
図4に示すように、駆動モータ10を駆動して、ドライブリンク12を回転させることで、ステッププレート3が格納位置と展開位置との間を移動する。ステッププレート3が展開位置に位置する展開状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向外側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向外側に位置する。図4に示すように、ステッププレート3の展開位置では、ステッププレート3の上面3aが略水平(車体20の水平面と平行)となっている。一方、ステッププレート3の格納位置では、ステッププレート3は展開位置よりも車幅方向内側に位置し、かつステッププレート3の上面3aが展開位置よりもわずかに上方に位置するとともに車幅方向外側に向けて下方にわずかに傾斜している。
【0032】
次いで、図2及び図3を用いて本発明の一実施形態のステップ装置1の作用、効果について説明する。上述したように、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、リンクアーム14は、前後方向でリンクアーム14の外方に突出する第1突出部14dを有している。また、カバー部材15は、リンクアーム14に対して前後方向で稼働隙間G1を有しつつ下方に延びる本体部15cと、ステッププレート3の格納位置において第1突出部14dに上方から対向する、第2突出部15hを有している。従って、カバー部材15の本体部15cとリンクアーム14との間の稼働隙間G1と、リンクアーム14の第1突出部14dとカバー部材15の第2突出部15hとの間の対向隙間G2とを別々の大きさに設定することができる。詳細には、展開位置と格納位置との間でのステッププレート3の移動のために必要な稼働隙間G1を十分に確保しつつ、第1突出部14dと第2突出部15hとの対向隙間G2を稼働隙間G1よりも狭く設定することができる。よって、外部の空気が対向隙間G2を通過する際の抵抗が大きくなり、ステップ装置1の内部へ吸い込まれる空気の量を低減することができる。また、異物が対向隙間G2を通過する際の抵抗も大きくなる。このため、車両2の走行中にステップ装置1の内部の空気が吸い出されたとしても、当該異物のステップ装置1の内部への進入を抑制することができる。これにより、ステップ装置1の内部に異物が堆積することによるステッププレート3の動作不良を回避することができる。
【0033】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、リンクアーム14の第1前方突出部14eは、リンクアーム14から離れる方向(前方向)且つ下方向に傾斜する第1前方傾斜面14gを有し、カバー部材15の第2後方突出部15iは、カバー部材15から離れる方向(後方向)且つ上方向に傾斜する第2後方傾斜面15kを有している。また、ステッププレート3の格納位置において、カバー部材15の第2後方傾斜面15k(第2傾斜面)は、リンクアーム14の第1前方傾斜面14g(第1傾斜面)に上方から対向している。従って、ステッププレート3の格納位置において、カバー部材15の第2後方傾斜面15kとリンクアーム14の第1前方傾斜面14gとの間に、図4に示すように、斜め方向の対向隙間G2を形成することができる。このため、第2後方傾斜面15kと第1前方傾斜面14gとの間の上下方向でのストローク距離S(図4参照)を、上記対向隙間G2よりも大きく設定することができる。よって、製造誤差等により、ステッププレート3の格納位置において、リンクアーム14の第1前方突出部14eがカバー部材15の第2後方突出部15iに近づく場合あっても、ストローク距離Sの分だけ余裕を持たせることができる。このため、ステッププレート3の格納位置においてリンクアーム14がカバー部材15に接触する状態を回避しつつ、ステップ装置1の内部への異物の進入を抑制することができる。なお、上述したリンクアーム14の第1前方突出部14eとカバー部材15の第2後方突出部15iとの関係は、リンクアーム14の第1後方突出部14fとカバー部材15の第2前方突出部15jとの間にも同様に適用されるため、その説明を省略する。
【0034】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、カバー部材15は、第2突出部15hの上側に配置された、第2突出部15hと同じ方向に突出する少なくとも1つの上側突出部15mを有している。また、カバー部材15は、第2突出部15h及び上側突出部15mの間に、第2突出部15h及び上側突出部15mとは反対方向に窪んだ陥凹部15pを有している。このため、第2突出部15h、上側突出部15m、及び陥凹部15pによって、カバー部材15は上下方向に柔軟性を有している。よって、ステッププレート3の格納位置においてリンクアーム14がカバー部材15に接触した場合であっても、カバー部材15が上下方向で撓むことにより、リンクアーム14の格納動作を持続することができる。更に、カバー部材15の第2傾斜面(第2後方傾斜面15k及び第2前方傾斜面15l)が、リンクアーム14の第1傾斜面(第1前方傾斜面14g及び第1後方傾斜面14i)と接触することで、対向隙間G2をゼロとすることができ、異物のステップ装置1の内部への進入を抑制することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るステップ装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態では、駆動モータ10によってドライブリンク12を回転駆動する構造であるが、駆動モータ10の代わりにシリンダ等の他のアクチュエータによってドライブリンク12を駆動させる構造であってもよい。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0036】
1 ステップ装置
3 ステッププレート(乗降用ステップ)
10 駆動モータ(アクチュエータ)
11 リンクブラケット(車体固定部材)
12 ドライブリンク(第1リンクアーム)
13 ドリブンリンク(第2リンクアーム)
14 リンクアーム(ステップ支持部材)
14d 第1突出部
14g 第1前方傾斜面(第1傾斜面)
14i 第1後方傾斜面(第1傾斜面)
15 カバー部材
15c 本体部
15h 第2突出部
15k 第2後方傾斜面(第2傾斜面)
15l 第2前方傾斜面(第2傾斜面)
15m 上側突出部
15p 陥凹部
20 車体
図1
図2
図3
図4
図5