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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
B60R3/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019196866
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070374
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉紀
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-039543(JP,A)
【文献】実開平04-095847(JP,U)
【文献】特開平10-278681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、
前記乗降用ステップの格納位置で、前記第2リンクアームは、該第2リンクアームの他端部において前記第1リンクアームへ向かって凸に形成された凸部と、該凸部より車幅方向外側において前記第1リンクアームから離れる方向へ凹に形成された凹部とを有していることを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項2】
前記第1リンクアームは、該第1リンクアームの他端部において該第1リンクアームから突出して形成される突出部を有しており、該突出部は、前記乗降用ステップの展開位置において、前記第2リンクアームの前記凹部に突入しつつ、前記凹部との間に第1空間を形成するように形成されている、請求項1記載の車両のステップ装置。
【請求項3】
前記車体固定部材は、前記第1リンクアーム及び前記第2リンクアームに対向し車幅方向に延びる対向壁部を有しており、該対向壁部は、前記格納位置から前記展開位置への前記乗降用ステップの移動に伴い前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの間に堆積した堆積物に接触して該堆積物を除去しつつ、前記乗降用ステップの展開位置において前記第1リンクアームと前記第2リンクアームと共に第2空間を形成するように、車幅方向外側から内側へ上方向に湾曲し、車幅方向内側且つ下側へ斜め方向に凸に形成されている、請求項1又は2記載の車両のステップ装置。
【請求項4】
前記第1リンクアームの一端部は、第1リンクピンを介して前記車体固定部材に回動可能に支持されるとともに、前記第1リンクピンの周囲を部分的に取り囲む円筒面を有し、
前記第2リンクアームの一端部は、第2リンクピンを介して前記車体固定部材に回動可能に支持されるとともに、前記第2リンクピンの周囲を部分的に取り囲む円筒面を有してなる、請求項3記載の車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に備えられたステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロア位置の高い自動車等の車両において、乗員の乗降性を向上させるためにステップ装置が備えられたものがある。例えば、特許文献1には、車両のサイドドアの下部に備えられた可動式のサイドステップ装置が開示されている。特許文献1に記載されたサイドステップ装置は、車体の下部に平行リンクを介して乗降用ステップ(サイドステップ)が連結されており、車体に対して縦方向(上下方向及び車幅方向)に乗降用ステップが移動可能な構造になっている。当該サイドステップ装置は、アクチュエータを作動させることで、車体下部に格納される格納位置と、車体より側方に突出した展開位置との間を、乗降用ステップが移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-39543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行中、格納位置にある乗降用ステップの上面には、車両前方から後方へ向けて風が流れ、このような風の流れによって、サイドステップ装置の内部の空気が吸い出される。このため、車両が雪路を走行する際に前輪によって巻き上げられて床下を車両後方へ向かって流れる雪は、サイドステップ装置の内部に吸い込まれる。そして、サイドステップ装置の内部に吸い込まれた雪は、当該サイドステップ装置の構成部品(例えば平行リンク等)に衝突し、当該サイドステップ装置の内部に堆積する。サイドステップ装置の内部に堆積した雪により、サイドステップ装置の構成部品の動作が制限され、乗降用ステップを格納位置と展開位置との間で移動する動作、特に乗降用ステップを格納位置から展開位置へ移動する展開動作が阻害される恐れがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部に雪が堆積した場合であっても展開動作を持続することのできる車両のステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、前記乗降用ステップの格納位置で、前記第2リンクアームは、該第2リンクアームの他端部において前記第1リンクアームへ向かって凸に形成された凸部と、該凸部より車幅方向外側において前記第1リンクアームから離れる方向へ凹に形成された凹部とを有していることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記第1リンクアームは、該第1リンクアームの他端部において該第1リンクアームから突出して形成される突出部を有しており、該突出部は、前記乗降用ステップの展開位置において、前記第2リンクアームの前記凹部に突入しつつ、前記凹部との間に第1空間を形成するように形成されている。
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記車体固定部材は、前記第1リンクアーム及び前記第2リンクアームに対向し車幅方向に延びる対向壁部を有しており、該対向壁部は、前記格納位置から前記展開位置への前記乗降用ステップの移動に伴い前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとの間に堆積した堆積物に接触して該堆積物を除去しつつ、前記乗降用ステップの展開位置において前記第1リンクアームと前記第2リンクアームと共に第2空間を形成するように、車幅方向外側から内側へ上方向に湾曲し、車幅方向内側且つ下側へ斜め方向に凸に形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記第1リンクアームの一端部は、第1リンクピンを介して前記車体固定部材に回動可能に支持されるとともに、前記第1リンクピンの周囲を部分的に取り囲む円筒面を有し、前記第2リンクアームの一端部は、第2リンクピンを介して前記車体固定部材に回動可能に支持されるとともに、前記第2リンクピンの周囲を部分的に取り囲む円筒面を有してなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両のステップ装置によれば、乗降用ステップの格納位置で、第2リンクアームは、第2リンクアームの他端部において第1リンクアームへ向かって凸に形成された凸部を有している。従って、第1リンクアームと第2リンクアームとの間の空間を狭くすることができ、当該空間に堆積する雪の量を低減することができる。また、本発明に係る車両のステップ装置は、凸部より車幅方向外側において第1リンクアームから離れる方向へ凹に形成された凹部を有している。従って、第1リンクアームと第2リンクアームとの間の空間に堆積し、乗降用ステップの展開動作に伴って圧縮される雪を凹部に保持することができる。このように、第1リンクアームと第2リンクアームとの間の空間に堆積する雪の量(体積)を低減しつつ、乗降用ステップの展開動作に伴って圧縮されて体積が更に減少した雪を第2リンクアームの凹部に保持することができる。よって、サイドステップ装置の内部に雪が堆積した場合であっても、当該雪によりサイドステップ装置の構成部品の動作が制限されることを回避でき、乗降用ステップを格納位置と展開位置との間で移動する動作、特に乗降用ステップを格納位置から展開位置へ移動する展開動作を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態のステップ装置を備えた車両の外形図である。
図2】格納状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
図3】展開状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
図4】格納状態におけるリヤリンク機構の内部に雪が堆積した状態を示す概略図である。
図5】リヤリンク機構の内部に堆積した雪がドリブンリンクに付着したまま展開状態となったリヤリンク機構を示す概略図である。
図6】リヤリンク機構の内部に堆積した雪がドライブリンクに付着したまま展開状態となったリヤリンク機構を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した車両のステップ装置1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステップ装置1を備えた車両2の外形図である。図2は、格納状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。図3は、展開状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。なお、説明の便宜上、車両2の進行方向を基準に着座乗員から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は車両2の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は車両2の車幅方向を示し、矢印「上」及び「下」は車両2の上下方向を示している。図1では、車両2の左側(助手席側)のフロントドア及びリヤドアの図示を省略しており、ステップ装置1は展開状態である。図2及び図3は、リヤリンク機構5及びその周辺部を車両2の後方から視た図である。
【0012】
図1に示すように、本発明の一実施形態のステップ装置1は、例えば1BOX型の車両2の助手席側の下部に備えられた可動式のステップ装置である。ステップ装置1は、ステッププレート3(乗降用ステップ)と、ステッププレート3を縦方向(車幅方向及び上下方向)に移動可能に支持する2個のリンク機構4、5を備えている。
ステッププレート3は、車両2の左側(助手席側)のフロントドアの開口部6及びスライド式のリヤドアの開口部7の下方を車両前後方向に延び、乗員の足を載せることが可能な車幅方向長さに設定されている。ステッププレート3は、2個のリンク機構4、5を介して、車体の下部、詳しくは車両2の左側(助手席側)のサイドシル8の下部に支持されている。
【0013】
2個のリンク機構4、5は、車両前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。ステップ装置1は、ステッププレート3が、車両2の下部に位置する格納位置と、サイドシル8より車幅方向外側(左側)に突出した展開位置との間で、車幅方向に移動可能に構成されている。2個のリンク機構4、5のうち、車両2の後方側のリヤリンク機構5は、リンク(後述するドライブリンク12)を回転駆動させる駆動モータ10(アクチュエータ)を備えている。車両2の前方側のフロントリンク機構4は、駆動モータを備えておらず、ステッププレート3の移動に追従して作動する。
【0014】
駆動モータ10は、車両2の助手席側のフロントドア及びリヤドアの開閉に伴って自動的に作動するよう制御される。例えば、フロントドア及びリヤドアが閉状態では、ステッププレート3が格納位置に位置し、フロントドア及びリヤドアの少なくとも一方が開操作された場合に、ステッププレート3が展開位置に移動するように駆動モータ10が作動制御される。
【0015】
以下、駆動モータ10を備えたリヤリンク機構5について説明するが、フロントリンク機構4はリヤリンク機構5と駆動モータが備えられていない点が異なり、リンク機構4、5における各リンクの長さ、車両2における車幅方向位置及び上下位置等については、同一の構成になっている。
図2に示すように、リヤリンク機構5は、リンクブラケット11(車体固定部材)、ドライブリンク12(第1リンクアーム)、ドリブンリンク13(第2リンクアーム)、及びリンクアーム14(ステップ支持部材)を備えている。
【0016】
リンクブラケット11は、前後方向に間隔をおいて配置され車幅方向及び上下方向に延びる2枚の厚板状の縦板部材11aと、当該2枚の縦板部材11aを前後方向で接続して車幅方向及び前後方向に延びる板状の接続部材11bとを有し、下方が開口した箱型に形成されている。リンクブラケット11は、車体20の下部に前後左右の4か所でボルトによって固定されている。
【0017】
図2に示すように、リンクブラケット11の接続部材11bは、ステッププレート3の格納位置において、ドライブリンク12及びドリブンリンク13に上側から対向し車幅方向に延びる部分である対向壁部11cを有している。対向壁部11cは、車幅方向外側から内側(左側から右側)へ上方向に湾曲して形成される部分であり、ステッププレート3の格納位置において、ドライブリンク12の後述する第2壁部対向面12gに沿うように対向するドライブリンク側対向面11d、ドリブンリンク13の後述する第1壁部対向面13gに沿うように対向するドリブンリンク側対向面11e、及び、ドライブリンク側対向面11dとドリブンリンク側対向面11eとを接続する接続対向面11fを有している。対向壁部11cは、接続対向面11fの部分において、車幅方向内側(右側)且つ下側へ斜め方向に凸に形成されている。
【0018】
リンクアーム14は、車幅方向に延びるように配置されたアーム状の部材であり、前後方向に間隔をおいて配置された2枚の厚板状の縦板部材14aを有し、当該縦板部材14aが車幅方向外側(左側)の部位等で連結されて構成されている。リンクアーム14の車幅方向外側となる外側端部14bには、ステッププレート3が固定されている。リンクブラケット11とリンクアーム14とは、同一の前後位置に配置されている。詳しくは、リンクブラケット11の前側の縦板部材11aとリンクアーム14の前側の縦板部材14a、リンクブラケット11の後側の縦板部材11aとリンクアーム14の後側の縦板部材14aは、夫々同一の前後位置に配置されている。
【0019】
ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、断面が箱型のアーム状の部材である。図2に示すように、ステッププレート3の格納位置で、ドリブンリンク13は、ドリブンリンク13の車幅方向内側(右側)の端部である他端部13aにおいてドライブリンク12へ向かって凸に形成された凸部13bと、凸部13bより車幅方向外側(左側)においてドライブリンク12から離れる方向へ凹に形成された凹部13cとを有している。また、ドリブンリンク13は、ステッププレート3の格納位置において、ドライブリンク12に対向する凸部13bの部分である凸部対向面13dと、ドライブリンク12に対向する凹部13cの部分である凹部対向面13eと、凹部対向面13eから連続して延びる延長対向面13fと、延長対向面13fから対向壁部11cのドリブンリンク側対向面11eに沿うように延びる第1壁部対向面13gと、第1壁部対向面13gから連続して延びるドリブンリンク包囲面13hとを有している。具体的には、図2に示すように、凸部対向面13dは、ステッププレート3の格納位置において車幅方向及び前後方向に延びる平面である。図2に示すように、凹部対向面13eは、凸部対向面13dの車幅方向外側(左側)の端縁から車幅方向外側且つ下方に斜めに延びる第1傾斜面13iと、第1傾斜面13iの車幅方向外側の端縁から下側に凹に形成された湾曲面13jと、湾曲面13jの車幅方向外側の端縁から車幅方向外側且つ上方に斜めに延びる第2傾斜面13kとを有している。第2傾斜面13kは、第1傾斜面13iより短い長さ且つ急な勾配で形成されている。なお、第2傾斜面13kは、第1傾斜面13iより長く且つ緩やかな勾配で形成されてもよいし、第1傾斜面13iと同じ長さ且つ同じ勾配で形成されていてもよい。更に、図2に示すように、延長対向面13fは、凹部対向面13eにおける第2傾斜面13kの車幅方向外側の端縁から車幅方向外側且つ上方に斜めに延びる面であり、第1壁部対向面13gは、延長対向面13fの車幅方向外側から更に車幅方向外側に延びる面であり、ドリブンリンク包囲面13hは、第1壁部対向面13gの車幅方向外側の端縁から後述する第2リンクピン22の周囲を部分的に取り囲むように延びる円筒面である。
【0020】
図2に示すように、ドライブリンク12は、ドライブリンク12の車幅方向内側(右側)の端部である他端部12aにおいてドライブリンク12から突出して形成される突出部12bを有している。図3に示すように、突出部12bは、ステッププレート3の展開位置において、ドリブンリンク13の凹部13cに突入しつつ、凹部13cとの間に後述する第1空間G1を形成するように形成されている。また、ドライブリンク12は、ステッププレート3の格納位置において、後述する第3リンクピン23を部分的に取り囲むように延びる突出部12bの部分である包囲粉砕面12cと、包囲粉砕面12cの車幅方向外側の端縁から車幅方向外側へ延びるドライブリンク対向面12dと、ドライブリンク対向面12dの車幅方向外側の端縁から車幅方向外側且つ上方に斜めに延びるドライブリンク傾斜面12eと、ドライブリンク傾斜面12eの車幅方向外側の端縁から後述する第1リンクピン21を部分的に包囲するように延びて円筒面をなすドライブリンク包囲面12fと、ドライブリンク包囲面12fの上側の端縁から連続して車幅方向内側且つ上方に斜めに対向壁部11cのドライブリンク側対向面11dに沿うように延びる第2壁部対向面12gとを有している。
【0021】
図2に示すように、ステッププレート3の格納位置において、ドライブリンク12のドライブリンク対向面12dとドリブンリンク13の凸部対向面13dとは、互いに対向して配置され、互いに平行又は略平行に延びている。当該格納位置において、ドリブンリンク13の凸部対向面13dは、ドライブリンク12のドライブリンク対向面12dに当接していてもよいし、隙間を有して配置されてもよい。また、当該格納位置において、ドライブリンク12のドライブリンク傾斜面12eとドリブンリンク13の凹部対向面13e(第1傾斜面13i、湾曲面13j及び第2傾斜面13k)とは、所定の空間G0を形成しつつ互いに対向して配置されている。なお、図2に示すように、当該格納位置において、空間G0は、ドライブリンク対向面12dと凸部対向面13dとの間に形成された隙間よりも大きい。
【0022】
図2に示すように、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、夫々、一端がリンクブラケット11に他端がリンクアーム14に、前後方向に軸線が延びるように配置されたリンクピン21、22、23、24によって回動可能に支持されている。したがって、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、車体20に対して車幅方向に揺動可能に配置されている。ドライブリンク12は、ドリブンリンク13より車幅方向内側(右側)に配置されている。また、ドライブリンク12はドリブンリンク13よりも短く形成されている。
【0023】
リンクブラケット11とドライブリンク12とを支持する第1リンクピン21は、駆動モータ10の駆動軸と一体に構成されている。駆動モータ10はリンクブラケット11に固定されている。リンクブラケット11とドリブンリンク13とを支持する第2リンクピン22は、第1リンクピン21に対して車幅方向外側に離間して配置されるとともに、第1リンクピン21よりも下方にオフセットして配置されている。一方、車幅方向に延びるリンクアーム14において、リンクアーム14とドライブリンク12とを支持する第3リンクピン23は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部14cに配置されている。リンクアーム14とドリブンリンク13とを支持する第4リンクピン24は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部14cの近傍に配置されるとともに、第3リンクピン23よりも車幅方向外側かつ下方に離間して配置されている。
【0024】
図2に示すように、ステッププレート3が格納位置に位置する格納状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向内側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向内側に位置する。
図3に示すように、駆動モータ10を駆動して、ドライブリンク12を回転させることで、ステッププレート3が格納位置と展開位置との間を移動する。ステッププレート3が展開位置に位置する展開状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向外側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向外側に位置する。図3に示すように、ステッププレート3の展開位置では、ステッププレート3の上面3aが略水平(車体20の水平面と平行)となっている。一方、ステッププレート3の格納位置では、ステッププレート3は展開位置よりも車幅方向内側に位置し、かつステッププレート3の上面3aが展開位置よりもわずかに上方に位置するとともに車幅方向外側に向けて下方にわずかに傾斜している。また、図6に後述するように、対向壁部11cは、格納位置から展開位置へのステッププレート3の移動に伴いドライブリンク12とドリブンリンク13との間に堆積した堆積物(例えば雪)に接触して当該堆積物を除去しつつ、ステッププレート3の展開位置においてドライブリンク12とドリブンリンク13と共に第2空間G2を形成するように、車幅方向外側から内側へ上方向に湾曲し、車幅方向内側且つ下側へ斜め方向に凸に形成されている。
【0025】
次いで、図4から図6を用いて本発明の一実施形態のステップ装置1の作用、効果について説明する。図4は、格納状態におけるリヤリンク機構5の内部に雪Sが堆積した状態を示す概略図である。図5は、リヤリンク機構5の内部に堆積した雪Sがドリブンリンク13に付着したまま展開状態となったリヤリンク機構5を示す概略図である。図6は、リヤリンク機構5の内部に堆積した雪Sがドライブリンク12に付着したまま展開状態となったリヤリンク機構4を示す概略図である。
【0026】
図4に示すように、車両2が雪路を走行する際に床下を車両後方へ向かって流れ、リヤリンク機構5の内部に吸い込まれた雪Sは、当該リヤリンク機構5の構成部品(例えばドライブリンク12、ドリブンリンク13等)に衝突し、当該リヤリンク機構5の内部に堆積する。具体的には、当該雪Sは、図4に示すように、ドライブリンク12のドライブリンク傾斜面12e、ドリブンリンク13の凹部対向面13e(第1傾斜面13i、湾曲面13j、及び第2傾斜面13k)、ドリブンリンク13の延長対向面13fによって囲まれた空間G0内に堆積する。なお、当該雪Sは、上記の空間G0に加え、ドリブンリンク13の凸部対向面13dとドライブリンク12のドライブリンク対向面12dとの間の空間や、ドリブンリンク13の第1壁部対向面13gと対向壁部11cのドリブンリンク側対向面11eとの間の空間に堆積することもある。
【0027】
ここで、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、ステッププレート3の格納位置で、ドリブンリンク13は、ドリブンリンク13の車幅方向内側(右側)の端部である他端部13aにおいてドライブリンク12へ向かって凸に形成された凸部13bと、凸部13bより車幅方向外側(左側)においてドライブリンク12から離れる方向へ凹に形成された凹部13cとを有している。具体的には、ドリブンリンク13の凸部13bがドライブリンク12へ向かって形成されているため、当該凸部13bの凸部対向面13dとドライブリンク12のドライブリンク対向面12dとの間の距離を極めて小さく又は無くすことができ、ドライブリンク12とドリブンリンク13との間において雪Sが堆積する空間を狭くすることができる。このため、ドライブリンク12とドリブンリンク13との間に堆積する雪Sの量を低減することができる。
【0028】
更に、ドリブンリンク13の凹部13cがドライブリンク12から離れる方向へ凹に形成されているため、図5に示すように、ドライブリンク12とドリブンリンク13との間に堆積し、ステッププレート3の展開動作に伴って圧縮される雪Sを保持するスペース(即ち凹部13c)を確保することができる。このように、ドライブリンク12とドリブンリンク13との間に堆積する雪Sの量(体積)を低減しつつ、ステッププレート3の展開動作に伴って圧縮されて体積が更に減少した雪Sをドリブンリンク13の凹部13cに保持することができる。よって、リヤリンク機構5の内部に雪Sが堆積した場合であっても、当該雪Sによりリヤリンク機構5のドライブリンク12及びドリブンリンク13の動作が制限されることを回避でき、ステッププレート3を格納位置と展開位置との間で移動する動作、特にステッププレート3を格納位置から展開位置へ移動する展開動作を持続することができる。
【0029】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、図4に示すように、ドライブリンク12は、ドライブリンク12の他端部12aにおいてドライブリンク12から突出して形成される突出部12bを有している。そして、図5に示すように、突出部12bは、ステッププレート3の展開位置において、ドリブンリンク13の凹部13cに突入しつつ、凹部13cとの間に後述する第1空間G1を形成するように形成されている。従って、リヤリンク機構5の内部に堆積した雪Sがドリブンリンク13の凹部13cに付着したままステッププレート3を展開位置に移動した場合であっても、ステッププレート3の移動過程において、ドライブリンク12の突出部12bが当該雪Sに突入し、当該雪Sを突出部12bで粉砕し、粉砕できずに残った雪Sを第1空間G1において圧縮することができる。このため、ステッププレート3の展開動作に伴って当該雪Sの体積を減少することができる。また、粉砕できずに残った雪Sを圧縮した状態で第1空間G1に保持することができる。このため、リヤリンク機構5の内部に雪Sが堆積した場合であっても、当該雪Sによりリヤリンク機構5のドライブリンク12及びドリブンリンク13の動作が制限されることを回避でき、ステッププレート3を格納位置から展開位置へ移動する展開動作を持続することができる。
【0030】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、図6に示すように、対向壁部11cは、格納位置から展開位置へのステッププレート3の移動に伴いドライブリンク12とドリブンリンク13との間に堆積した雪Sに接触して当該雪Sを除去しつつ、ステッププレート3の展開位置においてドライブリンク12とドリブンリンク13と共に第2空間G2を形成するように、車幅方向外側から内側へ上方向に湾曲し、車幅方向内側且つ下側へ斜め方向に凸に形成されている。従って、リヤリンク機構5の内部に堆積した雪Sがドライブリンク12のドライブリンク傾斜面12eに付着したままステッププレート3を展開位置に移動した場合であっても、ステッププレート3の移動過程において、対向壁部11cの接続対向面11fが当該雪Sに接触して粉砕し、粉砕できずに残った雪Sを第2空間G2において圧縮することができる。このため、ステッププレート3の展開動作に伴って当該雪Sの体積を減少することができる。また、粉砕できずに残った雪Sを圧縮した状態で第2空間G2に保持することができる。このため、リヤリンク機構5の内部に雪Sが堆積した場合であっても、当該雪Sによりリヤリンク機構5のドライブリンク12及びドリブンリンク13の動作が制限されることを回避でき、ステッププレート3を格納位置から展開位置へ移動する展開動作を持続することができる。
【0031】
また、ドライブリンク12のドライブリンク包囲面12f及びドリブンリンク13のドリブンリンク包囲面13hは円筒面をなしているので、これらドライブリンク包囲面12fやドリブンリンク包囲面13hの円筒面に付着した雪Sはドライブリンク12及びドリブンリンク13が作動しても圧縮されることはなく、やはり当該雪Sによりリヤリンク機構5のドライブリンク12及びドリブンリンク13の動作が制限されることを回避することができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るステップ装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態では、駆動モータ10によってドライブリンク12を回転駆動する構造であるが、駆動モータ10の代わりにシリンダ等の他のアクチュエータによってドライブリンク12を駆動させる構造であってもよい。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0033】
1 ステップ装置
3 ステッププレート(乗降用ステップ)
10 駆動モータ(アクチュエータ)
11 リンクブラケット(車体固定部材)
11c 対向壁部
12 ドライブリンク(第1リンクアーム)
12b 突出部
13 ドリブンリンク(第2リンクアーム)
13b 凸部
13c 凹部
14 リンクアーム(ステップ支持部材)
20 車体
G1 第1空間
G2 第2空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6