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  • 特許-二次電池用負極活物質及び二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20230407BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019562080
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047755
(87)【国際公開番号】W WO2019131724
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2017252456
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山本 格久
(72)【発明者】
【氏名】明楽 達哉
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125815(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026228(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/077654(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121320(WO,A1)
【文献】特開2014-139919(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Naと、Siと、M(アルカリ金属とSi以外の元素)と、を含むシリケート相と、
前記シリケート相中に分散したシリコン粒子と、を備え、
前記M は、Mg、Ca、Ti、Zr、Y、B、Al、Nb、V、La、Ta、Wのうちの少なくともいずれか1つを含み、
前記シリケート相における酸素以外の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、Mが3~50モル%であり、Siが25モル%以上である、二次電池用負極活物質。
【請求項2】
Naと、Siと、M(アルカリ金属とSi以外の元素)と、を含むシリケート相と、
前記シリケート相中に分散したシリコン粒子と、を備え、
前記M は、Mgの元素Aと、Ca、Ti、Zr、Y、B、Al、Nb、V、La、Ta、Wのうちの少なくともいずれか1つを含む元素Bと、を有し、
前記シリケート相における酸素以外の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、Mgが3~12モル%であり、前記元素Bが3~50モル%であり、Siが25モル%以上である、二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記シリケート相は、前記Na以外のアルカリ金属を5モル%未満含む、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池用負極活物質を有する負極と、正極と、電解質と、を備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池用負極活物質及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)、SiOで表されるシリコン酸化物などのシリコン材料は、黒鉛などの炭素材料と比べて単位体積当りに多くのリチウムイオン等のイオンを吸蔵できることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、SiOを黒鉛と混合して負極活物質とした非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-233245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シリコン粒子を負極活物質として用いた二次電池においては、充放電サイクル特性の改善が望まれている。
【0006】
そこで、本開示の目的は、シリコン粒子を負極活物質として用いた二次電池の充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能な二次電池用負極活物質および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である二次電池用負極活物質は、Naと、Siと、M(Mはアルカリ金属、Si以外の元素)と、を含むシリケート相と、前記シリケート相中に分散したシリコン粒子と、を備え、前記シリケート相における酸素以外の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、Mxが3~50モル%であり、Siが25モル%以上であることを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様である二次電池は、上記二次電池用負極活物質を有する負極と、正極と、電解質と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、シリコン粒子を負極活物質として用いた二次電池の充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である負極活物質粒子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質としてシリコン粒子を用いた場合、当該二次電池の充放電時には、例えば、下記の反応が起こる。
充電:Si+4Li+4e → LiSi
放電:LiSi → Si+4Li+4e
【0012】
通常、シリコン粒子は、上記の充放電反応に伴う体積変化が大きいため、充放電サイクルを重ねると粒子構造が破壊され、電池の充放電サイクル特性が低下する。そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、所定の成分を有するシリケート相にシリコン粒子を分散させることで、充放電反応に伴うシリコン粒子の体積変化を抑え、粒子構造の破壊を抑制することができることを見出し、以下に示す態様の負極活物質を想到するに至った。
【0013】
本開示の一態様である二次電池用負極活物質は、Naと、Siと、M(Mアルカリ金属、Si以外の元素)と、を含むシリケート相と、前記シリケート相中に分散したシリコン粒子と、を備え、前記シリケート相における酸素以外の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、Mxが3~50モル%であり、Siが25モル%以上である。上記シリケート相は、充放電反応に伴うシリコン粒子の体積変化を抑えるのに十分な硬度を有しているため、このシリケート相にシリコン粒子を分散させることで、充放電反応に伴うSi粒子の体積変化が低減されると考えられる。その結果、充放電サイクルに伴う粒子構造の破壊が抑制され、電池の充放電サイクル特性の低下が抑制されると考えられる。なお、このシリケート相は、リチウムイオン等のイオンに対して良好なイオン伝導性を示すため、充放電時には、リチウムイオン等のイオンがシリケート相内を比較的スムーズに移動し、シリケート相内に分散したシリコン粒子と効率的に反応すると考えられる。
【0014】
本開示の一態様である二次電池用負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池用の負極活物質として好適に用いられる。以下では、リチウムイオン二次電池を例に、本開示の一態様である二次電池用負極活物質を説明する。以下の実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0015】
実施形態の一例であるリチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、電解質とを備える。正極と負極との間には、セパレータを設けることが好適である。リチウムイオン二次電池の構造の一例としては、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる電極体と、電解質とが外装体に収容された構造が挙げられる。電極体は、巻回型の電極体に限定されるものではなく、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。リチウムイオン二次電池は、例えば円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型など、いずれの形態であってもよい。
【0016】
[正極]
正極は、例えば金属箔等からなる正極集電体と、当該集電体上に形成された正極合材層とで構成されることが好適である。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質を含み、その他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。また、正極活物質の粒子表面は、酸化アルミニウム(Al)等の酸化物、リン酸化合物、ホウ酸化合物等の無機化合物の微粒子で覆われていてもよい。
【0017】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム遷移金属酸化物が例示できる。リチウム遷移金属酸化物は、例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-y、LiCo1-y、LiNi1-y、LiMn、LiMn2-y、LiMPO、LiMPOF(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)である。これらは、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0018】
導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料等が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩(CMC-Na、CMC-K、CMC-NH等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[負極]
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とで構成されることが好適である。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質(以下で説明する負極活物質粒子)を含み、その他に、結着材を含むことが好適である。結着材としては、正極の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩(CMC-Na、CMC-K、CMC-NH等、また部分中和型の塩であってもよい)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA-Na、PAA-K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0021】
図1に実施形態の一例である負極活物質粒子の断面図を示す。図1に示す負極活物質粒子10は、負極合材層に含まれる負極活物質であり、シリケート相11と、当該相中に分散したシリコン粒子12と、を有する母粒子13を備える。母粒子13は、例えば、シリケートのマトリックス中に微細なシリコン粒子12が分散した海島構造を有している。図1に示すように、負極活物質粒子10は、母粒子13の表面に形成された導電層14を有することが好適である。
【0022】
シリコン粒子12は、黒鉛等の炭素材料と比べてより多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、電池の高容量化が図られる。シリコン粒子12の表面には、自然酸化膜としてのSiOが形成される場合がある。自然酸化膜としてのSiOが多くなると、電池容量や充放電サイクル特性等の低下に繋がる場合があるため、自然酸化膜のSiOの含有量は、母粒子13の総質量に対して、10質量%未満であることが好ましく、7質量%未満であることがより好ましい。
【0023】
母粒子13におけるシリコン粒子12の含有量は、高容量化及び充放電サイクル特性の向上等の観点から、母粒子13の総質量に対して20質量%~95質量%であることが好ましく、35質量%~75質量%がより好ましい。シリコン粒子12の含有量が低すぎると、例えば充放電容量が低下し、またリチウムイオンの拡散不良により負荷特性が低下する場合がある。シリコン粒子12の含有量が高すぎると、例えば、充放電サイクル特性の低下抑制効果が低減する場合がある。
【0024】
シリコン粒子12の平均粒径は、例えば初回充電前において500nm以下であり、200nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。充放電後においては、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。シリコン粒子12を微細化することにより、充放電時の体積変化が小さくなり電極構造の崩壊を抑制し易くなる。シリコン粒子12の平均粒径は、負極活物質粒子10の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定され、具体的には100個のシリコン粒子12の最長径を平均して求められる。
【0025】
シリケート相11は、Naと、Siと、M(アルカリ金属及びSi以外の元素)と、を含み、シリケート相11における酸素以外の元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、Mxが3~50モル%であり、Siが25モル%以上である。このように、特定の成分を所定量有するシリケート相11は、既述したように、シリコン粒子12の体積変化を抑えるのに十分な硬度を有し、また高いイオン伝導性を有する。このようなシリケート相11に分散しているシリコン粒子12は、充放電反応に伴う体積変化が低減され、充放電サイクルによる粒子構造の破壊が抑制されるため、電池の充放電サイクル特性の低下が抑制される。なお、Mは、M、M、M、M及びMのいずれか一つであり、M、M、M、M及びMは、それぞれMO、M 、M、M 及びMOを構成する元素である。つまり、シリケート相11は、NaOと、MO、M、M 、M 及びM等の酸化物と、SiOとが互いに結合した構造であると考えられる。
【0026】
シリケート相11は、例えばMOを混合し焼結させて製造することによって、アルカリ土類金属Mを含むことが好ましい。具体的には、MOは、MgO、CaO、SrO、BaO、RaO、PbO及びCuOのうちの少なくともいずれか1つであり、これらを混合し焼結させることによって、シリケート相11がMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Pb及びCuのいずれか一つの元素を含むことが好ましく、特に、MgO、CaOのうちの少なくともいずれか1つを混合し焼結させることによって、MgもしくはCaを含むことが好ましい。上記酸化物を混合し、焼結させることによって、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が上昇し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0027】
シリケート相11は、例えばMを混合し焼結させて製造することによって、Mを含むことが好ましい。具体的には、Mは、ZrO、GeO及びTiOのうちの少なくともいずれか1つであり、これらを混合し焼結させることによって、シリケート相11がZr,Ge及びTiのいずれか一つの元素を含むことが好ましく、特にTiO、ZrOのうちの少なくともいずれか1つを混合し焼結させることによって、MgもしくはCaを含むことが好ましい。上記酸化物を混合し、焼結させることによって、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が上昇し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0028】
シリケート相11は、例えばM を混合し焼結させて製造することによって、M2を含むことが好ましい。具体的には、M は、Al、B、Bi、Y及びSbのうちの少なくともいずれか1つであり、これらを混合し焼結させることによって、シリケート相11がAl、B、Bi、Y及びSbのいずれか一つの元素を含むことが好ましく、特に、Y、B、Alのうちの少なくともいずれか1つを混合し焼結させることによって、Y,BもしくはAlを含むことが好ましい。上記酸化物を混合し、焼結させることによって、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が上昇し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0029】
シリケート相11は、例えばM 混合し焼結させて製造することによって、Mを含むことが好ましい。具体的には、M は、Nb、La、Ta、P及びVのうちの少なくともいずれか1つであり、これらを混合し焼結させることによって、シリケート相11がNb、La、Ta、P及びVのいずれか一つの元素を含むことが好ましく、特に、Nb、V、La、Taのうちの少なくともいずれか1つを混合し焼結させることによって、Nb、V、LaもしくはTaを含むことが好ましい。上記酸化物を混合し、焼結させることによって、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が上昇し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0030】
シリケート相11は、例えばM混合し焼結させて製造することによって、Mを含むことが好ましい。具体的には、MはWOであり、これらを混合し焼結させることによって、シリケート相11がNb、La、Ta、P及びVのいずれか一つの元素を含むことが好ましい。上記酸化物を混合し、焼結させることによって、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が上昇し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0031】
より好ましいシリケート相11の組成及び含有量としては、Naと、Mg、Ca、Ti、Zr、Y、B、Al、Nb、V、La、Ta、Wのうちの少なくともいずれか1つの元素と、Siと、を含み、シリケート相11におけるNa、Si、酸素以外の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、前記元素が3~50モル%であり、Siが25モル%以上である。或いは、Naと、Mgの元素Aと、Ca、Ti、Zr、Y、B、Al、Nb、V、La、Ta、Wのうちの少なくともいずれか1つを含む元素Bと、Siと、を含み、シリケート相11における酸素以外の元素の合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、前記元素Aの元素が3~12モル%であり、前記元素Bの元素が3~50モル%であり、Siが50モル%以上である。上記組成及び含有量とすることで、シリケート相11の硬度或いはイオン伝導性が向上し、充放電サイクル特性の低下がより抑制されたり電池の高容量化が図られたりする場合がある。
【0032】
シリケート相11は、Naと、M、M、M、M及びM(Mはアルカリ土類金属、M、M、M,Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Si以外の元素)のうちの少なくともいずれか1つから選択される元素と、Si以外の化合物を含んでいてもよいが、Na以外のアルカリ金属(Li、K等)については、実質的に含まれないことが好ましい。具体的には、シリケート相11におけるNa以外のアルカリ金属の含有量は、5モル%未満であることが好ましい。シリケート相11中に5モル%以上のNa以外のアルカリ金属が含まれると、当該アルカリ金属とNaとの相互作用により、リチウムイオンの移動が阻害され、充放電サイクル特性の低下を抑制する効果が低減する場合がある。
【0033】
シリケート相11における各金属酸化物の定量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)を用いて以下の方法により推定することができる。
【0034】
まずシリケート相11を加熱した酸溶液(フッ化水素酸と硝酸、硫酸の混酸)で試料を全溶解し、溶解残渣の炭素をろ過して除去後、得られたろ液をICP-AESにて分析して各金属元素のスペクトル強度を測定する。市販されている金属元素の標準溶液を用いて検量線を作成し、シリケート相11に含まれる各金属元素の含有量を算出する。シリコン、ホウ素については炭酸ナトリウムで融解して、ろ過後に同様に測定する。
【0035】
また各金属元素の含有量から推定金属酸化物量を算出することもできる。例えば、金属元素がAlである場合、全てのAlがAlを形成していると仮定して算出したAl量を推定Al酸化物量とする。また、金属元素がCaである場合、全てのCaがCaOを形成していると仮定して算出したCaO量を推定Ca酸化物量とする。
【0036】
ナトリウムシリケート相11の含有量は、充放電サイクル特性の向上等の観点から、母粒子13の総質量に対して5質量%~80質量%であることが好ましく、25質量%~65質量%がより好ましい。
【0037】
負極活物質粒子10の平均粒径は、高容量化及びサイクル特性の向上等の観点から、1~15μmが好ましく、4~10μmがより好ましい。ここで、負極活物質粒子10の平均粒径とは、レーザー回折散乱法(例えば、HORIBA製「LA-750」を用いて)で測定される粒度分布において体積積算値が50%となる粒径(体積平均粒径)を意味する。負極活物質粒子10の平均粒径が小さくなり過ぎると、表面積が大きくなるため、電解質との反応量が増大して容量が低下する傾向にある。一方、平均粒径が大きくなり過ぎると、充放電による体積変化量が大きくなるため、充放電サイクル特性の低下抑制効果が低減する場合がある。なお、負極活物質粒子10(母粒子13)の表面には、導電層14を形成することが好ましいが、導電層14の厚みは薄いため、負極活物質粒子10の平均粒径にほとんど影響しない(負極活物質粒子10の粒径≒母粒子13の粒径)。
【0038】
負極合材層には、負極活物質として負極活物質粒子10のみを単独で用いてもよいし、その他の活物質を併用してもよい。他の活物質としては、例えば黒鉛等の炭素材料が好ましい。炭素材料を併用する場合、負極活物質粒子10と炭素材料との割合は、高容量化及び充放電サイクル特性の向上等の点から、質量比で1:99~30:70が好ましい。
【0039】
母粒子13は、例えば下記の工程1~4を経て作製される。以下の工程は、いずれも不活性雰囲気中で行うことが好ましいが、工程1は大気雰囲気で行うことも可能である。
(1)Na原料と、Si原料と、M原料、M原料、M原料、M原料及M原料の少なくともいずれか1つを含む原料とを、所定量混合した混合物を加熱溶融し、融液を金属ローラーに通してフレーク化してシリケートを作製する。その後フレーク化したシリケートを大気雰囲気で、ガラス転移点以上融点以下の温度で熱処理により結晶化させる。なおフレーク化したシリケートは結晶化させずに使用することも可能である。また所定量混合した混合物を溶融させずに、結晶融点以下の温度で焼成して固相反応によりシリケートを製造することも可能である。Na原料は、例えば、酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。Si原料は、酸化ケイ素等が挙げられる。M原料は、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸化合物等が挙げられる。また、M原料、M原料、M原料及M原料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Si以外の元素の酸化物、水酸化物、炭酸化合物等が挙げられる。ナトリウム以外のアルカリ金属(リチウム、カリウムなど)がシリケートに存在するとイオン伝導が低下するため、可能な限りナトリウム以外のアルカリ金属の混入を避けることが好ましい。しかし、不可避の不純物としてナトリウム以外のアルカリ金属がシリケートに混入してしまう場合は、5モル%未満とすることが好ましい。
(2)上記シリケートを平均粒径が数μm~数十μm程度に粉砕することにより得られたシリケート粉末と、平均粒径が数μm~数十μm程度のSi粉末とを、例えば20:80~95:5の重量比で混合して混合物を作製する。
(3)次に、ボールミルを用いて上記混合物を粉砕し微粒子化する。なお、それぞれの原料粉末を微粒子化してから、混合物を作製することも可能である。粉砕処理時間は粉砕した粉末をXRD測定により得られるXRDパターンのSi(111)面の回折ピークの半値幅からシェラーの式により算出される結晶子サイズが25nm以下となる時間とすることが望ましい。具体的な結晶子サイズの測定条件等は、下記のとおりである。
測定装置:試料水平型多目的X線回折装置 UltimaIV(株式会社リガク社製)
解析ソフト:統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL(株式会社リガク社製)
測定条件:20~90°、Si(111)面の回折ピーク(2θ=28~29°)を使用、ピークトップ5000count以上
対陰極:Cu-Kα
管電流/電圧:40mA/40kV
計数時間:1.0s
発散スリット:2/3°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット: 2/3°
受光スリット:0.3mm
試料回転:60rpm
(4)粉砕された混合物を、例えば600~1000℃で熱処理する。当該熱処理では、ホットプレスのように圧力を印加して上記混合物の焼結体を作製してもよい。また、ボールミルを使用せず、Si粉末及びシリケート粉末を混合して熱処理を行うことで母粒子13を作製することも可能である。
【0040】
上記(1)で作製したシリケートは、前述のシリケート相11を構成するものであり、高い硬度を有する。したがって、上記(3)においては、高い硬度を有するシリケート粉末とSi粉末とが接触するため、Si粉末が微粒子化し易く、規定の粉砕レベルに達するまでの時間を短縮することができる。
【0041】
導電層14を構成する導電材料としては、電気化学的に安定なものが好ましく、炭素材料、金属、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。当該炭素材料には、正極合材層の導電材と同様に、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、及びこれらの2種以上の混合物などを用いることができる。当該金属には、負極の電位範囲で安定な銅、ニッケル、及びこれらの合金などを用いることができる。当該金属化合物としては、銅化合物、ニッケル化合物等が例示できる(金属又は金属化合物の層は、例えば無電解めっきにより母粒子13の表面に形成できる)。中でも、炭素材料を用いることが特に好ましい。
【0042】
母粒子13の表面を炭素材料で被覆する方法としては、アセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等を母粒子13と混合し、熱処理を行う方法などが例示できる。また、カーボンブラック、ケッチェンブラック等を結着材を用いて母粒子13の表面に固着させてもよい。
【0043】
導電層14は、母粒子13の表面の略全域を覆っていることが好適である。導電層14の厚みは、導電性の確保と母粒子13へのリチウムイオンの拡散性を考慮して、1~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましい。導電層14の厚みが薄くなり過ぎると、導電性が低下し、また母粒子13を均一に被覆することが難しくなる。一方、導電層14の厚みが厚くなり過ぎると、母粒子13へのリチウムイオンの拡散が阻害されて容量が低下する傾向にある。導電層14の厚みは、SEM又はTEM等を用いた粒子の断面観察により計測できる。
【0044】
[電解質]
電解質は、溶媒と、溶媒に溶解した電解質塩とを含む。電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等からなる非水溶媒や水系溶媒を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0045】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0047】
上記ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等を用いることが好ましい。
【0048】
電解質塩は、リチウム塩等が用いられる。リチウム塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6-x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、LiPFを用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、非水溶媒1L当り0.8~1.8molとすることが好ましい。
【0049】
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
[負極活物質の作製]
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化カルシウムをモル比として、SiO/NaO/CaO=60/35/5となるように混合した。この混合物を、不活性雰囲気中で、1500℃、5時間溶解し、融液を金属ローラーを通してフレーク状とし、750℃、5時間の熱処理により結晶化しSiと、Naと、Caとを含むシリケートを作製した。
【0052】
上記シリケートを平均粒径が10μmになるまで粉砕し、シリケート粉末を得た。そして、不活性雰囲気中で、Si粉末(3N、10μm粉砕品)及び上記シリケート粉末を、42:58の質量比で混合し、遊星ボールミル(フリッチュ製、P-5)のポット(SUS製、容積:500mL)に充填した。当該ポットにSUS製ボール(直径20mm)を24個入れてフタを閉め、200rpmで25時間粉砕処理した。その後、不活性雰囲気中で粉末を取り出し、温度600℃の条件で、不活性雰囲気・4時間の熱処理を行った。熱処理した粉末(以下、母粒子という)を粉砕し、40μmのメッシュに通した後、石炭ピッチ(JFEケミカル製、MCP250)と混合して、温度800℃の条件で、不活性雰囲気・5時間の熱処理を行い、母粒子の表面を炭素で被覆して導電層を形成した。炭素の被覆量は、母粒子、導電層を含む粒子の総質量に対して5質量%である。その後、エルボージェット分級機を用いて平均粒径を5μmに調整した負極活物質を得た。
【0053】
[負極活物質の分析]
負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。各酸化物の含有量はICP発光分光分析法により、それぞれの金属の含有量を測定し、算出した。なお、Siはシリケート相の酸化物と粉砕工程で混合するSi粉末からなり、両者を区別する必要がある。ICP発光分光分析法により、負極活物質全体に含まれるSi量を測定し、シリケート相中のSi粒子は、真空雰囲気中において950℃×10時間加熱して結晶化させ、その粉末のXRD分析におけるSiピーク積分値よりSi含有量を算出し、演算によってシリケート相中のSi酸化物の量を測定した。その結果、シリケート相における各元素の含有量は、Siが44.4モル%であり、Naが51.9モル%であり、Caが3.7モル%であった。
【0054】
[負極の作製]
次に、上記負極活物質及びポリアクリロニトリル(PAN)を、95:5の質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した後、混合機(シンキー製、あわとり練太郎)を用いて攪拌して、負極合材スラリーを調製した。そして、銅箔の片面に負極合材層の1m当りの質量が25gとなるように当該スラリーを塗布し、大気中、105℃で塗膜を乾燥した後、圧延することにより負極を作製した。負極合材層の充填密度は、1.50g/cmとした。
【0055】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に、LiPFを濃度が1.0mol/Lとなるように添加して非水電解液を調製した。
【0056】
[非水電解質二次電池の作製]
不活性雰囲気中で、Niタブを取り付けた上記負極及びリチウム金属箔を、ポリエチレン製セパレータを介して対向配置させることにより電極体を作製した。当該電極体をアルミニウムラミネートフィルムで構成される電池外装体内に入れ、非水電解液を電池外装体内に注入し、電池外装体を封止して非水電解質二次電池を作製した。
【0057】
<実施例2>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化カルシウムをモル比として、SiO/NaO/CaO=55/35/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Caとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが40.7モル%であり、Naが51.9モル%であり、Caが7.4モル%であった。
【0058】
<実施例3>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化カルシウムをモル比として、SiO/NaO/CaO=50/35/15となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Caとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが37モル%であり、Naが51.9モル%であり、Caが11.1モル%であった。
【0059】
<実施例4>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウムをモル比として、SiO/NaO/B/Al=59/15/6/20となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Bと、Alとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが41.8モル%であり、Naが21.3モル%であり、Bが8.5モル%、Alが28.4モル%であった。
【0060】
<実施例5>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化アルミニウムをモル比として、SiO/NaO/B/Al=54/10/6/30となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Bと、Alとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、ICP発光分光分析法により、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが37モル%であり、Naが13.7モル%であり、Bが8.2モル%、Alが41.1モル%であった。
【0061】
<実施例6>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ホウ素をモル比として、SiO/NaO/B=55/35/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Mgとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが40.7モル%であり、Naが51.9モル%であり、Mgが7.4モル%であった。SiOが55モル%であり、NaOが35モル%であり、MgOが10モル%であった。
【0062】
<実施例7>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ホウ素をモル比として、SiO/NaO/B=50/35/15となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Mgとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが37モル%であり、Naが51.9モル%であり、Mgが11.1モル%であった。
【0063】
<実施例8>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化イットリウムをモル比として、SiO/NaO/CaO/Y=59/30/1/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Caと、Yとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが42.1モル%であり、Naが42.9モル%であり、Caが0.7モル%、Yが14.3モル%であった。
【0064】
<実施例9>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化チタンをモル比として、SiO/NaO/TiO=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Tとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが46.2モル%であり、Naが46.2モル%であり、Tiが7.7モル%であった。
【0065】
<実施例10>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/ZrO=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが46.2モル%であり、Naが46.2モル%であり、Zrが7.7モル%であった。
【0066】
<実施例11>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/TiO/ZrO=60/30/5/5となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Zrと、Tiとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが46.2モル%であり、Naが46.2モル%であり、Tiが3.8モル%であり、Zrが3.8モル%であった。
【0067】
<実施例12>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ニオブをモル比として、SiO/NaO/Nb=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Nbとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが42.9モル%であり、Naが42.9モル%であり、Nbが14.3モル%であった。
【0068】
<実施例13>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化バナジウムをモル比として、SiO/NaO/V=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Vとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが42.9モル%であり、Naが42.9モル%であり、Vが14.3モル%であった。
【0069】
<実施例14>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ランタンをモル比として、SiO/NaO/La=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Laとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが42.9モル%であり、Naが42.9モル%であり、Laが14.3モル%であった。
【0070】
<実施例15>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化タンタルをモル比として、SiO/NaO/Ta=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Taとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが42.9モル%であり、Naが42.9モル%であり、Taが14.3モル%であった。
【0071】
<実施例16>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化タングステンをモル比として、SiO/NaO/WO=60/30/10となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Wとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが46.2モル%であり、Naが46.2モル%であり、Wが7.7モル%であった。
【0072】
<実施例17>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブをモル比として、SiO/NaO/Y/Al/TiO/ZrO/Nb=60/30/2/2/2/2/2となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、SiOと、Naと、Yと、Alと、Tiと、Zrと、Nbとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが44.1モル%であり、Naが44.1モル%であり、Yが2.9モル%であり、Alが2.9モル%であり、Tiが1.5モル%であり、Zrが1.5モル%であり、Nbが2.9モル%であった。
【0073】
<実施例18>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化ランタンをモル比として、SiO/NaO/Y/TiO/ZrO/V/La=60/30/2/2/2/2/2となるように混合したしたこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Yと、Tiと、Zrと、Vと、Laとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが44.1モル%であり、Naが44.1モル%であり、Yが2.9モル%であり、Tiが1.5モル%であり、Zrが1.5モル%であり、Vが2.9モル%であり、Laが2.9モル%であった。
【0074】
<実施例19>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/ZrO=90/5/5となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが85.7モル%であり、Naが9.5モル%であり、Zrが4.8モル%であった。
【0075】
<実施例20>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/MgO/ZrO=60/30/5/5となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Mgと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが46.2モル%であり、Naが46.2モル%であり、Mgが3.8モル%であり、Zrが3.8モル%であった。
【0076】
<比較例1>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/ZrO=94/1/5となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが93.1モル%であり、Naが2モル%であり、Zrが5モル%であった。
【0077】
<比較例2>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/ZrO=94/5/1となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが89.5モル%であり、Naが9.5モル%であり、Zrが1モル%であった。
【0078】
<比較例3>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンをモル比として、SiO/NaO/MgO/CaO/ZrO/La=45/5/15/5/15/15となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Mgと、Caと、Zrと、Laとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが37.5モル%であり、Naが8.3モル%であり、Mgが12.5モル%であり、Caが4.2モル%であり、Zrが12.5モル%であり、Laが25モル%であった。
【0079】
<比較例4>
二酸化珪素、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウムをモル比として、SiO/NaO/CaO/ZrO=30/45/20/5となるように混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で、Siと、Naと、Caと、Zrとを含むシリケートを作製した。そして、上記シリケートを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、負極活物質及び非水電解質二次電池を作製した。負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は100nm未満であった。また、実施例1と同様の方法で、シリケート相における各元素の含有量を測定した結果、Siが20.7モル%であり、Naが62.1モル%であり、Caが13.8モル%であり、Zrが3.4モル%であった。
【0080】
[充放電サイクル試験]
各実施例及び各比較例の電池について、以下の方法で充放電サイクル試験を行った。
・充電
1It(800mA)の電流で電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後4.2Vの定電圧で電流が1/20It(40mA)になるまで定電圧充電した。
・放電
1It(800mA)の電流で電圧が2.75Vになるまで定電流放電を行った。
・休止
上記充電と上記放電との間の休止期間は10分とした。
・充放電サイクル
上記充放電を100サイクル行った。
【0081】
表1、2に、シリケート相に関する事項、及び以下の式により算出した容量維持率の結果をまとめた。なお、容量維持率が高いほど充放電サイクル特性の低下が抑制されたことを示している。
容量維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、実施例1~20の電池は、Naと、M、M、M、M及びM(Mはアルカリ土類金属、M、M、M,Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Si以外の元素)のうちの少なくともいずれか1つから選択される元素と、Siと、を含むシリケート相と、前記シリケート相中に分散したシリコン粒子と、を備え、前記シリケート相におけるNa、Si、M、M、M、M及びMの合計に対する各元素の含有量は、Naが9~52モル%であり、M、M、M、M及びMが3~50モル%であり、Siが25モル%以上である負極活物質を使用している。一方、比較例1~4の電池は、シリケート相における各元素の含有量が上記範囲を満たさない負極活物質を使用している。これらの実施例1~20及び比較例1~4と比べると、実施例1~20はいずれも、比較例1~4と比べて、容量維持率が高く、充放電サイクル特性の低下が抑制された結果を示した。
【符号の説明】
【0085】
10 負極活物質粒子、11 リチウムシリケート相、12 シリコン粒子、13 母粒子、14 導電層。
図1