(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】構造体、システム及び構造物
(51)【国際特許分類】
B32B 3/18 20060101AFI20230407BHJP
B32B 3/22 20060101ALI20230407BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B32B3/18
B32B3/22
B32B3/24 Z
(21)【出願番号】P 2021522211
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019383
(87)【国際公開番号】W WO2020241296
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019101613
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 将啓
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】小谷 友規
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-045643(JP,A)
【文献】国際公開第2018/144919(WO,A1)
【文献】特開2009-030198(JP,A)
【文献】実開昭49-123888(JP,U)
【文献】実開平04-111335(JP,U)
【文献】実公平02-037397(JP,Y2)
【文献】特開2008-006234(JP,A)
【文献】特公昭51-008756(JP,B2)
【文献】特表平08-509677(JP,A)
【文献】特開平05-345588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182433(US,A1)
【文献】特開平09-135648(JP,A)
【文献】特開2019-039654(JP,A)
【文献】特開2017-075773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0060888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 64/00-64/40
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の網形状を構成する複数の網線を有する3次元網形状造形体と、
前記複数の網線により区切られる複数の空間のうち2つ以上の空間のそれぞれに存在する物体とを備え、
複数の前記物体のそれぞれは、
前記複数の空間のうち1つの空間の内部のみを移動する移動体であり、
前記複数の物体と前記複数の網線とは、前記複数の物体が、前記複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動しないような構成であり、
第1方向と第2方向と第3方向とを、それぞれ互いに直交する方向としたとき、
前記複数の空間は、前記第1方向と前記第2方向と前記第3方向とに沿って設けられ、
前記複数の物体のそれぞれは、金属材料及び無機化合物材料のうち少なくとも1つ以上の材料を含
み、
前記複数の網線は、複数の主網線と複数の副網線とを含み、
前記複数の主網線及び前記複数の副網線によって囲まれる開口部が、前記複数の空間を構成する境界面に設けられ、
前記複数の副網線は、前記開口部の大きさが前記複数の物体が前記複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動しないような大きさとなるように、構成されている
構造体。
【請求項2】
構造体であって、
3次元の網形状を構成する複数の網線を有する3次元網形状造形体と、
前記複数の網線により区切られる複数の空間のうち2つ以上の空間のそれぞれに存在する物体とを備え、
複数の前記物体のそれぞれは、
前記複数の空間のうち1つの空間の内部のみを移動する移動体であり、
前記複数の物体と前記複数の網線とは、前記複数の物体が、前記複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動しないような構成であり、
第1方向と第2方向と第3方向とを、それぞれ互いに直交する方向としたとき、
前記複数の空間は、前記第1方向と前記第2方向と前記第3方向とに沿って設けられ、
前記複数の物体のそれぞれは、金属材料及び無機化合物材料のうち少なくとも1つ以上の材料を含み、
前記構造体は、
さらに、前記複数の物体の移動を抑制する隔壁を備え、
前記隔壁は、前記複数の空間を構成する境界面に設けられる
構造体。
【請求項3】
前記境界面の一部は、前記3次元網形状造形体の最も外側の面である最外面の一部であり、
前記隔壁は、前記最外面のうち1つ以上の面全体に設けられる
請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記複数の物体は、第1物体と、第2物体とを含み、
前記第1物体と、前記第2物体とは、前記複数の空間のうち1つの空間に存在する
請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記複数の物体は、前記複数の空間のすべての空間に存在する
請求項1から4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
前記複数の物体の形状は、球形状である
請求項1から5のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項7】
前記3次元網形状造形体は、弾性変形する弾性体である
請求項1から6のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記複数の空間のうち異なる空間のそれぞれに存在する前記複数の物体どうしは、接触している
請求項1から7のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の構造体と、
前記複数の物体にエネルギーを与えることで前記複数の物体を移動させるエネルギー供給装置とを備える
システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の構造体を備える
構造物。
【請求項11】
前記複数の物体は、前記複数の空間内を移動することで、前記構造体が有する光学特性、電気伝導特性、熱伝導特性、又は、流体抵抗特性のうち1つ以上の特性を制御する
請求項10に記載の構造物。
【請求項12】
前記構造物は、電子機器である
請求項10に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、システム及び構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラティス構造などに代表される3次元の網形状を含む構造体が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ラティス構造を用いて、剛性の低下抑制など力学的な特性を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、3次元の網形状を含む構造体については、主に力学的な特性を制御する技術が開発され、力学的な特性以外の新規な機能を発揮させる技術は、着目されてこなかった。
【0006】
そこで、本発明は、3次元の網形状を含む構造体を使って、新規な機能を発揮させる構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る構造体は、3次元の網形状を構成する複数の網線を有する3次元網形状造形体と、前記複数の網線により区切られる複数の空間のうち2つ以上の空間のそれぞれに存在する物体とを備え、複数の前記物体は、前記複数の空間のうち1つの空間の内部を移動する、及び/又は、前記複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動する移動体である。
【0008】
さらに、本発明の一態様に係るシステムは、前記構造体と、前記複数の物体にエネルギーを与えることで前記複数の物体を移動させるエネルギー供給装置とを備える。
【0009】
さらに、本発明の一態様に係る構造物は、前記構造体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な機能を発揮させる構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態1に係るシステムの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態1に係る複数の空間のうちの1つの空間を拡大した斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態2に係るシステムの概略図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すIV-IV線での構造体の断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態3に係る構造物の概略図である。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態3に係る複数の空間のうちの1つの空間を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態に係る構造体について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。従って、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
また、本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語及び正方形又は長方形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0015】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、複数の空間を構成する境界面の1つに平行な二軸をx軸及びy軸とし、当該境界面に直交する方向をz軸方向としている。
【0016】
(実施の形態1)
[構成]
まず、本実施の形態に係るシステム1000の構成について、
図1A及び
図1Bを用いて説明する。
【0017】
図1Aは、実施の形態1に係るシステム1000の概略図である。本実施の形態に係るシステム1000は、構造体100と、エネルギー供給装置200とを備えるシステムである。また、本実施の形態に係るシステム1000は、構造体100が載置される載置台201を備える。構造体100は、3次元網形状造形体10と、移動体である複数の物体40とを備える。また、エネルギー供給装置200は、複数の物体40にエネルギーを与えることで複数の物体40を移動させる装置である。例えば、システム1000は、エネルギー供給装置200が複数の物体40にエネルギーを与え、複数の物体40が移動することで、構造体100が有する新規な機能を発揮させるシステムである。本実施の形態に係るシステム1000は、例えば、エネルギー供給装置200が複数の物体40にエネルギーを与え、複数の物体40が移動することで、構造体100が回転運動するシステムである。
【0018】
本実施の形態に係るエネルギー供給装置200は、電磁石を含む装置である。本実施の形態に係るエネルギー供給装置200は、例えば、コイルと、当該コイルが巻かれた磁性材料と、当該コイルに接続される電源とにより構成されている。電流がコイルに流れることで、本実施の形態に係るエネルギー供給装置200は、磁力及び磁場を発生させることができる。本実施の形態に係るエネルギー供給装置200が磁場を発生させることで、複数の物体40は、エネルギーを与えられる。また、本実施の形態に係るエネルギー供給装置200は、構造体100の上方側(z軸正方向側)に位置している。エネルギー供給装置200は、載置台201と接続される支持支柱202によって、構造体100の上方側に、離間して、位置してもよい。
【0019】
次に、本実施の形態に係る構造体100について、説明する。上述の通り、構造体100は、複数の網線20を有する3次元網形状造形体10と、複数の網線20により区切られる複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する物体40とを備える。本実施の形態に係る構造体100は、例えば、載置台201に載置されている。
【0020】
なお、本実施の形態においては、構造体100は、エネルギー供給装置200の下方(z軸負方向側)に位置しているが、構造体100とエネルギー供給装置200との位置関係は、これに限らない。また、構造体100とエネルギー供給装置200とは、直接接触していてもよい。つまり、構造体100に含まれる複数の物体40がエネルギー供給装置200から供給されるエネルギーを受け取ることができる位置関係であれば、どのような位置関係であってもよい。
【0021】
3次元網形状造形体10が有する複数の網線20は、3次元の網形状を構成する部材である。また、複数の網線20は、3次元網形状造形体10の骨格を構成する部材である。複数の網線20は、3次元の網形状を構成するが、複数の網線20のそれぞれが、編まれている必要はない。例えば、複数の網線20は、複数の網線20の一部分から分岐して延びる形状であってもよい。また、例えば、複数の網線20は、複数の網線20のそれぞれが接続される形状であってもよい。
【0022】
本実施の形態に係る複数の網線20のそれぞれは、直線形状であるが、これに限らない。例えば、複数の網線20のそれぞれは、曲線形状であってもよく、直線形状と曲線形状とを組み合わせた形状であってもよい。複数の網線20のそれぞれは、線の太さが同じでもよく、異なってもよい。
【0023】
本実施の形態に係る複数の網線20は、線の太さがより太い複数の主網線21と、線の太さがより細い複数の副網線22とを含む。本実施の形態においては、複数の主網線21の線の太さは、複数の副網線22の線の太さよりも太い。
【0024】
本実施の形態に係る複数の主網線21のそれぞれは、x軸、y軸又はz軸の内の一方向に向かって直線状に延びている。
【0025】
複数の主網線21のうちx軸方向に延びる線は、互いに平行で、かつ、等間隔に並んでいる。複数の主網線21のうちy軸方向に延びる線は、互いに平行で、かつ、等間隔に並んでいる。複数の主網線21のうちz軸方向に延びる線は、互いに平行で、かつ、等間隔に並んでいる。
【0026】
また、本実施の形態においては、複数の主網線21のうちx軸方向に延びる線の並び間隔と、y軸方向に延びる線の並び間隔と、z軸方向に延びる線の並び間隔とは、いずれも等しい。なお、複数の主網線21のうちx軸方向に延びる線の並び間隔と、y軸方向に延びる線の並び間隔と、z軸方向に延びる線の並び間隔とは、異なっていてもよい。
【0027】
以上のような複数の主網線21の構成により、複数の主網線21の形状は、3次元の格子形状である。
【0028】
また、後述するが、本実施の形態に係る複数の空間30の形状は、いずれも立方体形状である。複数の空間30は、複数の網線20により区切られる領域であるため、本実施の形態に係る複数の主網線21は、立方体(複数の空間30)の各辺に対応する位置に設けられている。
【0029】
また、本実施の形態に係る複数の網線20が含む複数の副網線22については、
図1Bを用いて詳細を説明する。
【0030】
複数の空間30は、複数の網線20により区切られる領域である。つまり、複数の空間30は、複数の網線20に区切られる3次元の領域である。
【0031】
本実施の形態に係る複数の空間30は、主に、複数の主網線21により区切られる領域である。しかしながら、複数の空間30は、複数の主網線21及び複数の副網線22により区切られる領域であってもよい。つまり、複数の空間30の形状は、複数の主網線21及び複数の副網線22が組み合わさって構成された形状であってもよい。
【0032】
上述のように、複数の主網線21のうちx軸方向に延びる線の並び間隔と、y軸方向に延びる線の並び間隔と、z軸方向に延びる線の並び間隔とは、いずれも等しい。そのため、本実施の形態に係る複数の空間30の形状は、いずれも立方体形状である。
【0033】
また、複数の空間30の形状は、立方体形状に限らない。例えば、複数の空間30の形状は、直方体形状、角錐形状、角柱形状、円錐形状、円柱形状、球形状及び正多面体形状など、その他の形状であってもよく、これら形状を組み合わせた形状であってもよい。また、複数の空間30の形状は、それぞれ異なっていてもよい。また、複数の空間30の大きさは、それぞれ異なっていてもよい。例えば、複数の空間30は、より大きい立方体形状の空間30と、より小さい立方体形状の空間30とを組み合わせてもよい。
【0034】
また、第1方向と第2方向と第3方向とを、それぞれ互いに直交する方向としたとき、複数の空間30は、第1方向と第2方向と第3方向とに沿って設けられる。本実施の形態においては、例えば、x軸方向が第1方向であり、y軸方向が第2方向であり、z軸方向が第3方向である。本実施の形態に係る複数の空間30は、より具体的には、x軸方向に3つ、y軸方向に2つ、z軸方向に2つ並べられている。なお、x軸方向、y軸方向及びz軸方向に並べられる複数の空間30の数は、上記に限られない。
【0035】
上述のように、3次元網形状造形体10は、複数の網線20を有する。本実施の形態においては、複数の網線20により区切られる複数の空間30の形状は、立方体であり、x軸方向、y軸方向及びz軸方向に沿って並べられている。このように3次元網形状造形体10は、立体的な格子が連続的に繰り返される構造を有するため、ラティス構造体であるともいえる。さらに、複数の空間30がx軸方向に3つ、y軸方向に2つ、z軸方向に2つ並べられているため、3次元網形状造形体10の形状は、直方体形状である。
【0036】
なお、上述のように、複数の空間30の形状が、立方体形状でない場合、3次元網形状造形体10の形状は、同様に、直方体形状ではない。3次元網形状造形体10の形状は、直方体形状、角錐形状、角柱形状、円錐形状、円柱形状、球形状及び正多面体形状など、その他の形状であってもよい。
【0037】
また、本実施の形態に係る3次元網形状造形体10は、剛性が高い性質を示す。すなわち、3次元網形状造形体10に対し力が与えられても、変形量が非常に小さい。
【0038】
物体40は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する。すなわち、本実施の形態に係る構造体100においては、2つ以上の物体40、すなわち、複数の物体40が存在する。複数の物体40は、移動する移動体である。具体的には、複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部を移動する、及び/又は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動する。本実施の形態に係る複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部を移動する。一方で、本実施の形態に係る複数の物体40は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動しない。
【0039】
また、本実施の形態においては、複数の物体40は、4つ存在する。4つの物体40のそれぞれは、複数の空間30のうち最もx軸正方向側の4つの空間30のそれぞれに存在する。なお、複数の物体40が存在する空間30は、上記に限られない。複数の物体40は、構造体100が有する機能に応じて、複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する。
【0040】
本実施の形態に係る複数の物体40は、固体の物質である。複数の物体40は、金属材料、無機化合物材料及び有機化合物材料のうち少なくとも1つ以上の材料を含む。金属材料は、例えば、1種類の金属により構成された材料でもよく、2種類以上の金属により構成された合金材料でもよい。無機化合物材料は、酸化物、窒化物、硫化物及びハロゲン化物などであってもよい。無機化合物材料は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、炭酸、ホウ酸及びフッ化水素酸などの無機酸由来の材料であってもよい。有機化合物材料は、高分子化合物により構成される樹脂であってもよい。本実施の形態においては、複数の物体40は、鉄、コバルト、ニッケル又はフェライトなどの強磁性を示す材料を含む。より具体的には、本実施の形態に係る複数の物体40は、鉄を含む。このため、本実施の形態に係る複数の物体40は、強磁性を示す。
【0041】
本実施の形態に係る複数の物体40の形状は、球形状である。しかしながら、複数の物体40の形状は、これに限らない。複数の物体40の形状は、直方体形状、角錐形状、角柱形状、円錐形状、円柱形状及び卵形状などであってもよい。
【0042】
複数の物体40の形状が球形状であることで、複数の物体40の形状は、角又は突起を有さない。そのため、複数の物体40は、複数の空間30の内部での引っ掛かりを抑制し、複数の空間30の内部を円滑に移動することができる。
【0043】
続いて、複数の空間30が有する境界面31と、複数の副網線22との詳細について、
図1Bを用いて説明する。
【0044】
図1Bは、実施の形態1に係る複数の空間30のうちの1つの空間30を拡大した斜視図である。
【0045】
本実施の形態に係る複数の空間30には、複数の空間30を構成する境界面31が存在する。境界面31は、当該境界面31を含む複数の空間30において、複数の網線20に区切られる2次元の領域である。本実施の形態に係る複数の空間30の形状が立方体形状であるため、本実施の形態に係る複数の空間30のそれぞれは、6つの境界面31を含む。境界面31は、複数の空間30のうち隣り合う2つの空間30の境界となる面を含む。また、境界面31の一部は、3次元網形状造形体10の最も外側の面である最外面の一部である。上述のように、3次元網形状造形体10の形状が直方体形状であるため、最外面は、当該直方体形状を構成する6つの面である。また、本実施の形態においては、最外面の1つの面は、構造体100と載置台201とが接する面である。
【0046】
続いて、複数の副網線22について説明する。
【0047】
本実施の形態に係る複数の副網線22のそれぞれは、x軸又はz軸の内の一方向に向かって直線状に延びている。
【0048】
複数の副網線22のうちx軸方向に延びる線は、複数の主網線21のうちx軸方向に延び、かつ、隣り合う線の中央に位置している。本実施の形態においては、複数の副網線22のうちx軸方向に延びる線は、xy平面と平行な境界面31及びxz平面と平行な境界面31に位置する。
【0049】
複数の副網線22のうちz軸方向に延びる線は、複数の主網線21のうちz軸方向に延び、かつ、隣り合う線の中央に位置している。本実施の形態においては、複数の副網線22のうちx軸方向に延びる線は、yz平面と平行な境界面31に位置する。
【0050】
また、境界面31において、複数の主網線21と複数の副網線22とに囲まれる開口部31aが存在する。複数の物体40が複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動するか否かは、開口部31aの大きさに依存する。つまり、開口部31aがより大きいと、複数の物体40は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動しやすくなる。一方で、開口部31aがより小さいと、複数の物体40は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動しにくくなる。
【0051】
図1Bに示すように、本実施の形態においては、開口部31aの形状は、長方形である。
図1Bにおいては、開口部31aは、矩形の点線により示されている。また、本実施の形態において、開口部31aの短手方向の長さをXとしたとき、Xは、球形状を有する複数の物体40の直径よりも、短い。本実施の形態に係る複数の網線20が含む複数の主網線21と、複数の副網線22とは、上記のような位置関係で配置されている。
【0052】
従って、本実施の形態においては、複数の物体40と複数の網線20とは、複数の物体40が、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動しないような構成である。
【0053】
これにより、複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部に留まることができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、1つの境界面31に1つの副網線22が配置されているが、これに限らない。例えば、1つの境界面31には、2つ以上の副網線22が配置されてもよい。また、1つの境界面31に、2つ以上の副網線22が配置された場合において、2つ以上の副網線22は、互いに平行である必要はない。2つ以上の副網線22は、例えば、十字形状又はメッシュ形状に交差する形状であってもよい。
【0055】
本実施の形態に係る構造体100は、以上のような構成をもつ。ここで、本実施の形態に係る構造体100の製造方法について説明する。
【0056】
[製造方法]
まず、本実施の形態に係る構造体100が備える3次元網形状造形体10の製造方法について、説明する。
【0057】
3次元網形状造形体10は、3Dプリンタ(付加製造技術)を用いて製造することができる。すなわち、3次元網形状造形体10が有する複数の網線20は、3Dプリンタを用いて製造することができる。3Dプリンタは、所望の3次元の製造対象を表す3次元コンピュータデータを使用して、複数の層を積層することによって3次元の製造対象を製造する。3Dプリンタを用いた製造方法は、例えば、材料押出法、液槽光重合法、材料噴射法、結合剤噴射法又は粉末床溶融結合法などがある。
【0058】
本実施の形態においては、3次元網形状造形体10は、材料押出法を用いて製造される。材料押出法は、以下の通りの手順である。
【0059】
まず、フィラメントを溶融することで、フィラメント溶融物が得られる。3次元網形状造形体10は、このフィラメントによって構成される。つぎに、3次元コンピュータデータに基づいて、フィラメント溶融物は、製造ステージの所定の位置に、ノズルから吐出される。このフィラメント溶融物が吐出される処理が繰り返されることで、フィラメント溶融物の層が積層され、所望の3次元の製造対象が得られる。また、製造後に、水溶性のサポート材料を除去することで、所望の3次元の製造対象が得られてもよい。
【0060】
また、フィラメントは、熱溶融する性質をもてばよく、例えば、熱可塑性樹脂とフィラー(充填剤)とが配合された材料であってもよい。フィラーは、金属粉、木粉又は蓄光材が配合された材料であってもよい。また、フィラーは、樹脂と複合することで、樹脂に新しい特性をもたせることができるため、用途に合わせて選択される。
【0061】
本実施の形態においては、3次元網形状造形体10及び複数の網線20は、フィラメントとしてABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)系樹脂材料を用いて、製造される。なお、本実施の形態においては、ABS系樹脂材料が高い剛性を有する材料であるため、3次元網形状造形体10は、高い剛性をもつ。
【0062】
続いて、本実施の形態に係る複数の物体40について、説明する。本実施の形態においては、複数の物体40は、3次元網形状造形体10の製造途中で、複数の空間30に存在するように配置される。すなわち、本実施の形態に係る3次元網形状造形体10の製造は、層の積層の途中において、一旦停止され、複数の物体40が配置された後、再度、3次元網形状造形体10の製造が開始される。
【0063】
以上のような製造方法を用いて、本実施の形態に係る構造体100は、製造される。
【0064】
ここで、エネルギー供給装置200が磁場を発生させたときの構造体100の挙動について説明する。
【0065】
[磁場発生時の挙動]
図2は、
図1Aに示すII-II線での構造体100の断面図である。
図2は、より具体的には、本実施の形態に係るシステム1000において、エネルギー供給装置200により磁場が発生し、複数の物体40に対し磁力M1が発生したときの、構造体100の挙動を示す図である。
図2の(a)は、磁力M1が発生する前の構造体100の断面図を示し、
図2の(b)は、磁力M1が発生した後の構造体100の断面図を示す。また、
図2においては、図が煩雑になることを避けるため、エネルギー供給装置200、載置台201及び支持支柱202は、図示されない。
【0066】
本実施の形態に係る構造体100においては、上述のように、複数の物体40は、複数の空間30のうち最もx軸正方向側の空間30に存在する。
【0067】
また、本実施の形態に係る構造体100は、軸aを含む。軸aは、最もx軸負方向側、かつ、最もz軸負方向側に位置する複数の主網線21のうちの1つ主網線21の中心に位置し、y軸方向に延びる直線状の軸である。軸aは、当該軸a自体が固定された位置から移動することができない。このような構成により、本実施の形態に係る構造体100は、軸aを中心に回動可能に固定されている。
【0068】
また、本実施の形態に係るエネルギー供給装置200は、電磁石を含む装置であって、磁場を発生させる。
【0069】
図2の(a)に示されるように、磁場が発生する前、すなわち磁力M1が発生する前においては、構造体100は、静止したままである。
【0070】
一方で、
図2の(b)に示されるように、磁場が発生した後、すなわち磁力M1が発生した後においては、構造体100は、軸aを回転軸として、回転方向Rに従って回転運動をする。この現象は、以下のメカニズムによって説明される。
【0071】
本実施の形態に係る複数の物体40は、強磁性を示す。そのため、複数の物体40のそれぞれは、磁場により、磁化される。さらに、複数の物体40には、エネルギー供給装置200が含む電磁石に引き寄せられる磁力M1が発生する。本実施の形態においては、エネルギー供給装置200は、構造体100の上方(z軸正方向側)に位置するため、磁力M1の向きは、z軸正方向である。これにより、複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部を移動する。複数の物体40が移動した結果、複数の物体40は、複数の網線20に接触し、複数の網線20を磁力M1の向きに押圧する。これにより、構造体100には、複数の物体40と同様に、磁力M1の向きに移動する力が働く。一方で、構造体100は、軸aを中心に回動可能に固定されている。そのため、構造体100は、軸aを回転軸として、回転方向Rに従って回転運動をする。
【0072】
以上のような構成により、構造体100は、複数の物体40が移動することで、構造体100が有する新規な機能を発揮させる。本実施の形態においては、複数の物体40が移動することで、構造体100は、回転運動をする。すなわち、本実施の形態においては、新規な機能とは、構造体100が回転運動する機能である。また、本実施の形態においては、複数の空間30は、3次元網形状造形体10が有する複数の網線20により区切られる領域であり、複数の物体40は、構造体100が有する機能に応じて、複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する。すなわち、複数の物体40は、構造体100が有する機能に応じて、最適な複数の空間30に存在する。そのため、構造体100は、構造体100が有する機能を最大限に発揮させることができる。
【0073】
また、本実施の形態に係るシステム1000は、構造体100と、複数の物体40にエネルギーを与えることで複数の物体40を移動させるエネルギー供給装置200とを備える。
【0074】
これにより、本実施の形態に係るシステム1000は、容易に複数の物体40を移動させることができる。そのため、結果、本実施の形態に係る構造体100は、構造体100が有する新規な機能を容易に発揮する。
【0075】
本実施の形態においては、複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部を移動したが、これに限らない。複数の物体40は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動してもよい。この場合においても、磁場が発生すると、複数の物体40は、複数の網線20に接触し、複数の網線20を磁力M1の向きに押圧する。
【0076】
本実施の形態に係る構造体100は、軸aを含むが、これに限らない。構造体100が軸aを含まない場合、すなわち、構造体100が回動可能に固定されていない場合、磁力M1の向きに従って、構造体100は、移動する。すなわち、この場合において、新規な機能とは、構造体100が移動するという機能である。
【0077】
本実施の形態においては、1つの空間30には、1つの物体40が存在したが、これに限らない。例えば、複数の物体40は、第1物体と、第2物体とを含み、第1物体と、第2物体とは、複数の空間30のうち1つの空間30に存在してもよい。すなわち、1つの空間30には、2つの物体40が存在してもよい。また、1つの空間30には、2つ以上の物体40が存在してもよい。
【0078】
これにより、構造体100は、より多くの物体40を含むことができる。その結果、複数の物体40が複数の網線20を磁力M1の向きに押圧する力が増す。すなわち、構造体100は、構造体100が有する新規な機能を発揮しやすくなる。
【0079】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る構造体100は、3次元の網形状を構成する複数の網線20を有する3次元網形状造形体10を備える。また、本実施の形態に係る構造体100は、複数の網線20により区切られる複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する物体40を備える。複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部を移動する、及び/又は、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動する移動体である。
【0080】
これにより、構造体100は、複数の物体40が移動することで、構造体100が有する新規な機能を発揮させる。本実施の形態においては、複数の物体40が移動することで、構造体100は、回転運動をする。すなわち、本実施の形態においては、新規な機能とは、構造体100が回転運動する機能である。また、本実施の形態においては、複数の空間30は、3次元網形状造形体10が有する複数の網線20により区切られる領域であり、複数の物体40は、構造体100が有する機能に応じて、複数の空間30のうち2つ以上の空間30のそれぞれに存在する。すなわち、複数の物体40は、構造体100が有する機能に応じて、最適な複数の空間30に存在する。そのため、構造体100は、構造体100が有する機能を最大限に発揮させることができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る構造体100は、複数の物体40と複数の網線20とは、複数の物体40が、複数の空間30のうち2つ以上の空間30に亘って移動しないような構成である。
【0082】
これにより、複数の物体40は、複数の空間30のうち1つの空間30の内部に留まることができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る構造体100において、複数の物体40は、第1物体と、第2物体とを含み、第1物体と、第2物体とは、複数の空間30のうち1つの空間30に存在する。
【0084】
これにより、構造体100は、より多くの物体40を含むことができる。その結果、複数の物体40が複数の網線20を磁力M1の向きに押圧する力が増す。すなわち、構造体100は、構造体100が有する新規な機能を発揮しやすくなる。
【0085】
また、本実施の形態に係る構造体100において、複数の物体40の形状は、球形状である。
【0086】
これにより、複数の物体40の形状は、角又は突起を有さない。そのため、複数の物体40は、複数の空間30の内部での引っ掛かりを抑制し、複数の空間30の内部を円滑に移動することができる。
【0087】
また、本実施の形態に係るシステム1000は、上記構造体100と、複数の物体40にエネルギーを与えることで複数の物体40を移動させるエネルギー供給装置200とを備える。
【0088】
これにより、システム1000は、容易に複数の物体40を移動させることができる。そのため、結果、本実施の形態に係る構造体100は、構造体100が有する新規な機能を容易に発揮する。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、複数の物体40は、複数の空間30のうち一部の空間30に存在する構成を示したが、これに限らない。実施の形態2においては、複数の物体40Aが複数の空間30Aのすべての空間30Aに存在する点が、実施の形態1とは異なる。なお、実施の形態2では、実施の形態1と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0090】
[構成]
まず、本実施の形態に係るシステム1000Aの構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態2に係るシステム1000Aの概略図である。
【0091】
本実施の形態に係るシステム1000Aは、構造体100Aと、エネルギー供給装置200Aとを備えるシステムである。また、本実施の形態に係るシステム1000Aは、構造体100Aが載置される載置台201Aを備える。構造体100Aは、3次元網形状造形体10Aと、移動体である複数の物体40Aとを備える。また、エネルギー供給装置200Aは、複数の物体40Aにエネルギーを与えることで複数の物体40Aを移動させる装置である。本実施の形態に係るエネルギー供給装置200Aは、実施の形態1と同じく、電磁石を含む装置であり、構造体100Aよりx軸負方向側に設けられる。
【0092】
例えば、システム1000Aは、エネルギー供給装置200Aが複数の物体40Aにエネルギーを与え、複数の物体40Aが移動することで、構造体100Aが有する新規な機能を発揮させるシステムである。本実施の形態においては、システム1000Aは、エネルギー供給装置200Aが複数の物体40Aにエネルギーを与え、複数の物体40Aが移動することで、構造体100Aが有する特性を制御するシステムである。すなわち、システム1000Aは、複数の物体40Aが移動することで、構造体100Aが有する光学特性、電気伝導特性、熱伝導特性、又は、流体抵抗特性のうち1つ以上の特性を制御する。本実施の形態においては、システム1000Aは、構造体100Aが有する光学特性を制御するシステムである。
【0093】
また、3次元網形状造形体10Aは、複数の網線20Aを有する。複数の網線20Aは、複数の主網線21Aと、複数の副網線22Aとを含む。複数の空間30Aは、複数の網線20Aにより区切られる領域である。なお、3次元網形状造形体10A、複数の網線20A、複数の空間30Aと、複数の主網線21Aと、複数の副網線22Aと、複数の空間30Aとは、実施の形態1と同じ構成である。
【0094】
本実施の形態に係る構造体100Aは、実施の形態1に示す構造体100とは異なり、軸aを有さず、所定の位置に固定されている。
【0095】
本実施の形態においては、複数の物体40Aは、複数の空間30Aのすべての空間30Aに存在する。つまり、複数の空間30Aうちのすべての空間30Aのそれぞれに、1つ以上の物体40Aが存在する。
【0096】
複数の物体40Aは、光を制御する特性を示してもよい。例えば、複数の物体40Aは、光を吸収、反射又は透過させる特性を示してもよい。さらに、複数の物体40Aは、このような光を制御する特性と、さらに、実施の形態1で示したような強磁性とを示してもよい。そのため、複数の物体40Aは、異なる2つ以上の材料を含んでもよい。
【0097】
本実施の形態に係る複数の物体40Aは、コアシェル構造により構成される。コアシェル構造とは、2つ以上の材料を含む構造であって、1つの材料が核(コア)を形成し、他方の材料がコアの周囲を取り囲んだ層(シェル)を形成する構造である。本実施の形態においては、複数の物体40Aのコアは、実施の形態1と同じく、鉄を含み、複数の物体40Aのシェルは、光吸収率が高い材料を含む。より具体的には、複数の物体40Aのシェルは、可視光吸収率が高い黒色の材料を含む。黒色の材料とは、例えば、カーボンブラックなどである。このような構成により、複数の物体40Aは、強磁性を示し、さらに、可視光を吸収する。なお、黒色の材料は、カーボンブラックに限らず、黒色の顔料又は黒色の染料であってもよく、例えば、金属酸化物でもよい。
【0098】
次に、エネルギー供給装置200Aが磁場を発生させたときの構造体100Aの挙動について説明する。
【0099】
[磁場発生時の挙動]
図4は、
図3に示すIV-IV線での構造体100Aの断面図である。
図4は、より具体的には、本実施の形態に係るシステム1000Aにおいて、エネルギー供給装置200Aにより磁場が発生し、複数の物体40Aに対し磁力M2が発生したときの、構造体100Aの挙動を示す図である。
図4の(a)は、磁力M2が発生する前の構造体100Aの断面図を示し、
図4の(b)は、磁力M2が発生した後の構造体100Aの断面図を示す。また、
図4においては、図が煩雑になることを避けるため、エネルギー供給装置200A及び載置台201Aは、図示されない。
【0100】
本実施の形態に係るエネルギー供給装置200Aは、実施の形態1と同じく、電磁石を含む装置であって、磁場を発生させる。
【0101】
図4の(a)に示されるように、磁場が発生する前、すなわち磁力M2が発生する前において、複数の物体40Aは、複数の空間30Aのそれぞれに、ランダムな位置に存在している。
【0102】
ここで、構造体100Aに光Lが照射されたとする。光Lは、z軸負方向に直進する光であって、可視光領域の波長によって構成される白色の光である。上述のように、本実施の形態に係る複数の物体40Aは、可視光を吸収する。そのため、光Lのうち複数の物体40Aに入射した光は、複数の物体40Aにより吸収され、消光する。従って、光Lのうち複数の物体40Aに入射した光は、構造体100Aを透過することが出来ない。つまり、磁場が発生する前の構造体100Aの光透過率は、低い。
【0103】
一方で、
図4の(b)に示されるように、磁場が発生した後、すなわち磁力M2が発生した後においては、構造体100Aは、より多くの光Lを透過させる。つまり、磁場が発生した後の構造体100Aの光透過率は、高い。この現象は、以下のメカニズムによって説明される。
【0104】
本実施の形態に係る複数の物体40Aは、強磁性を示す。そのため、複数の物体40Aは、磁場により、磁化される。さらに、複数の物体40Aには、エネルギー供給装置200Aが含む電磁石に引き寄せられる磁力M2が発生する。本実施の形態においては、エネルギー供給装置200Aは、構造体100Aのx軸負方向側に位置するため、磁力M2の向きは、x軸負方向である。これにより、複数の物体40Aは、複数の空間30Aのうち1つの空間30Aの内部を移動する。複数の物体40Aが移動した結果、複数の物体40Aは、複数の空間30Aのそれぞれにおいて、x軸負方向側に位置する。
【0105】
これにより、光Lの進行方向(z軸負方向)に構造体100Aを見たとき、複数の物体40Aは、重なるように位置する。従って、磁力M2が発生することで(すなわち、
図4の(a)から
図4の(b)へ変化することで)、光Lのうち複数の物体40Aに入射する光は、減少する。つまり、磁力M2が発生した後の構造体100Aの光透過率は、高い。すなわち、本実施の形態に係るシステム1000Aは、光の透過率を制御する光透過率制御素子として利用することができる。
【0106】
以上のような構成により、構造体100Aは、複数の物体40Aが移動することで、構造体100Aが有する新規な機能を発揮する。本実施の形態においては、複数の物体40Aが移動することで、構造体100Aが有する光学特性の一つである光透過特性を制御することができる。すなわち、本実施の形態においては、新規な機能とは、構造体100Aの光透過特性を制御する機能である。また、このような構造体100Aを備えるシステム1000Aは、光の透過率を制御する光透過率制御素子として利用することができる。
【0107】
本実施の形態においては、複数の物体40は、複数の空間30Aのすべての空間30Aに存在する。
【0108】
これにより、構造体100Aは、より多くの物体40Aを含むことができる。そのため、磁場の発生前において、より多くの光Lが、複数の物体40Aに吸収され、消光する。すなわち、磁場が発生する前の構造体100Aの光透過率をより低下させることができる。従って、構造体100Aが有する光学特性の一つである光透過特性をより容易に制御することができる。
【0109】
また、本実施の形態において、第1方向と第2方向と第3方向とを、それぞれ互いに直交する方向としたとき、複数の空間30Aは、第1方向と第2方向と第3方向とに沿って設けられる。本実施の形態においては、例えば、x軸方向が第1方向であり、y軸方向が第2方向であり、z軸方向が第3方向である。本実施の形態に係る複数の空間30Aは、より具体的には、x軸方向に3つ、y軸方向に2つ、z軸方向に2つ並べられており、実施の形態1と同じ構成である。
【0110】
これにより、構造体100Aにおける複数の空間30Aを、第1方向、第2方向及び第3方向に重なるように配置することができる。よって、構造体100Aは、より多くの物体40Aを含むことができる。そのため、磁場の発生前において、より多くの光Lが、複数の物体40Aに吸収され、消光する。すなわち、磁場が発生する前の構造体100Aの光透過率をより低下させることができる。従って、構造体100Aが有する光学特性の一つである光透過特性をより容易に制御することができる。
【0111】
(実施の形態3)
実施の形態1及び2において、システム1000及び1000Aは、エネルギー供給装置200及び200Aによって、複数の物体40及び40Aにエネルギーが与えられたが、これに限らない。また、実施の形態3においては、3次元網形状造形体10Bは、弾性変形する弾性体である点が、実施の形態1及び2とは異なる。さらに、実施の形態3においては、構造体100Bは、隔壁32Bを備える点が、実施の形態1及び実施の形態2とは異なる。なお、実施の形態3では、実施の形態1及び2と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0112】
[構成]
まず、本実施の形態に係る構造物300Bの構成について、
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
【0113】
図5Aは、実施の形態3に係る構造物300Bの概略図である。構造物300Bは、複数の物体40Bが複数の空間30B内を移動することで、構造体100Bが有する光学特性、電気伝導特性、熱伝導特性、又は、流体抵抗特性のうち1つ以上の特性を制御する装置である。
【0114】
本実施の形態に係る構造物300Bは、構造体100Bと、接点50とを備える装置である。接点50は、互いに一対となる接点51と、接点52とを含む。本実施の形態において、構造物300Bは、構造体100Bが有する電気伝導特性を制御する電子機器である。
【0115】
本実施の形態に係る構造物300Bは、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れることをセンシングするセンサーとして利用することができる。なお、本実施の形態においては、構造物300Bを挟んで正面に相対する接点51と接点52との組み合わせが互いに一対となっている。すなわち、本実施の形態においては、接点51と接点52との組み合わせが3つ存在している。
【0116】
そのため、互いに一対となる接点51及び接点52は、電圧を印加するための電源装置及び電流値を計測するための電流計測装置と電気的に接続されている。しかしながら、
図5Aにおいては、図が煩雑になることを避けるため、電源装置及び電流計測装置は、図示されない。
【0117】
また、構造体100Bは、3次元網形状造形体10Bと、移動体である複数の物体40Bと、複数の物体40Bの移動を抑制する隔壁32Bとを備える。3次元網形状造形体10Bは、複数の網線20Bを有する。複数の網線20Bは、複数の主網線21Bと、複数の副網線22Bとを含む。複数の空間30Bは、複数の網線20Bにより区切られる領域である。
【0118】
まずは、本実施の形態に係る隔壁32Bと、複数の物体40Bとについて説明する。
【0119】
上述のように、本実施の形態に係る構造体100Bは、複数の物体40Bの移動を抑制する隔壁32Bを備える。隔壁32Bは、境界面に設けられる。また、隔壁32Bは、最外面のうち1つ以上の面全体に設けられる。すなわち、本実施の形態においては、隔壁32Bは、複数の空間30Bのうち隣り合う2つの空間30Bの境界となる面、及び、最外面のうち1つ以上の面全体に設けられる。また本実施の形態に係る隔壁32Bは、複数の空間30Bのうち隣り合う2つの空間30Bの境界となる面に設けられる隔壁32Baと、最外面のうち1つ以上の面全体に設けられる隔壁32Bbとを含む。
【0120】
このように隔壁32Bが設けられることで、複数の物体40Bが複数の空間30Bのうち2つ以上の空間30Bに亘って移動することを抑制する。従って、複数の物体40Bは、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bの内部に留まることができる。さらに、複数の物体40Bが3次元網形状造形体10Bの外部に漏出することを抑制することができる。
【0121】
本実施の形態に係る複数の物体40Bは、高い電気伝導率を示す材料を含む。より具体的には、複数の物体40Bの表面は、高い電気伝導率を示す材料である銅により覆われている。そのため、複数の物体40Bは、高い電気伝導特性を示す。複数の物体40Bのそれぞれが互いに接触することで、電気伝導のための経路が発生する。また、複数の物体40Bは、実施の形態2と同じく、複数の空間30Bのすべての空間30Bに存在する。
【0122】
なお、本実施の形態に係る複数の物体40Bの形状は、実施の形態1及び2と同じく、球形状であって、複数の物体40Bの直径は、立方体形状である複数の空間30Bの一辺よりも小さい。
【0123】
続いて、複数の網線20Bを有する3次元網形状造形体10Bの詳細について、
図5Bを用いて説明する。
【0124】
図5Bは、実施の形態3に係る複数の空間30Bのうちの1つの空間30Bを拡大した斜視図である。より具体的には、
図5Bは、複数の空間30Bのうち最もx軸正方向側に位置する空間30Bを拡大した斜視図である。そのため、
図5Bに示す複数の空間30Bの1つにおいて、x軸正方向側に隔壁32Bbと、x軸負方向側に32Baとが設けられている。
【0125】
本実施の形態に係る3次元網形状造形体10Bは、弾性を示すエラストマー材料により構成されている。すなわち、本実施の形態に係る複数の網線20Bは、弾性を示すエラストマー材料により構成されている。本実施の形態においては、複数の網線20Bは、熱可塑性ポリウレタン系樹脂材料により構成されている。しかしながら、複数の網線20Bを構成する材料は、上記に限られるものではない。
【0126】
なお、隔壁32Bは、複数の網線20Bと同じ材料又は異なる材料により構成されてもよい。本実施の形態においては、隔壁32Bは、複数の網線20Bと同じ材料により構成されている。
【0127】
このように構成された複数の網線20Bを有する3次元網形状造形体10Bは、弾性変形する弾性体である。弾性体は、力を与えられることで弾性体自身の形状を変化させ、力を取り除くことで元の弾性体自身の形状に復元する性質をもつ。また、3次元網形状造形体10Bが弾性変形することで、構造体100B及び複数の空間30Bは、同様に、変形する。
【0128】
本実施の形態に係る複数の網線20Bは、線の太さがより太い複数の主網線21Bと、線の太さがより細い複数の副網線22Bとを含む。複数の主網線21Bのうちy軸方向及びz軸方向に延びる線は、隔壁32Bと一体化している。また、複数の副網線22Bのうちz軸方向に延びる線も、同様に、隔壁32Bと一体化している。
【0129】
次に、構造物300Bに、力Pが与えられたときの構造物300Bの挙動について説明する。
【0130】
[力P発生時の挙動]
図6は、
図5Aに示す構造物300Bの正面図である。より具体的には、
図6は、
図5Aに示す構造物300Bをy軸負方向に見た正面図である。
図6の(a)は、力Pが発生する前の構造物300Bの正面図を示し、
図6の(b)は、力Pが発生した後の構造物300Bの正面図を示す。
【0131】
本実施の形態に係る構造物300Bには、外部から押圧する力Pが与えられる。本実施の形態においては、力Pの向きは、構造物300Bを挟み込む方向に発生する。すなわち、力Pの向きは、構造物300Bの上面(z軸正方向側面)に対してz軸負方向と構造物300Bの下面(z軸負方向側面)に対してz軸正方向に向かう方向である。
【0132】
上述のように、複数の物体40Bの直径が立方体形状である複数の空間30Bの一辺よりも小さい。これにより、
図6の(a)に示されるように、力Pが発生する前において、複数の物体40Bのそれぞれは、互いに接触していない。そのため、互いに一対となる接点51と接点52との間の電気抵抗値は非常に高く、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れることはない。
【0133】
一方で、
図6の(b)に示されるように、力Pが発生した後においては、複数の物体40Bのそれぞれは、互いに接触し、また、複数の物体40Bは、接点51及び接点52とも接触している。これにより、互いに一対となる接点51と接点52との間には、電流が流れる。この現象は、以下のメカニズムによって説明される。
【0134】
本実施の形態に係る3次元網形状造形体10Bは、弾性変形する弾性体である。そのため、構造体100Bは、力Pの向きに従って弾性変形し、その結果、複数の空間30Bの形状が変形する。すなわち複数の空間30Bの体積が小さくなるように、複数の空間30Bの形状が変形する。
【0135】
複数の物体40Bは、複数の空間30Bの変形に伴い、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bにおける位置が変化する。すなわち、複数の物体40Bは、複数の空間30Bの変形に伴い、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bの内部を移動する。複数の物体40Bが移動した結果、複数の物体40Bのそれぞれが互いに接触する。また、複数の物体40Bは、接点51及び接点52とも接触している。上述のように、実施の形態に係る複数の物体40Bの表面は、高い電気伝導率を示す銅により覆われているため、電気伝導のための経路が発生する。つまり、互いに一対となる接点51と接点52との間の電気抵抗値は非常に低く、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れる。すなわち、構造体100Bを有する構造物300Bは、圧力センサーとして利用可能である。
【0136】
なお、さらに、力Pが取り除かれると、3次元網形状造形体10Bが弾性変形し、構造物300Bは、
図6の(a)に示される複数の物体40Bのそれぞれが互いに接触していない状態へと戻る。すなわち、力Pの有無によって、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れるか否かを制御できる。このため、構造物300Bは、スイッチング素子としても利用可能である。
【0137】
以上まとめると、本実施の形態に係る構造物300Bは、構造体100Bを備える。
【0138】
これにより、構造物300Bは、複数の物体40Bが移動することで、構造体100Bが有する新規な機能を発揮することができる。
【0139】
また、構造物300Bは、複数の物体40Bが移動することで、構造体100Bが有する光学特性、電気伝導特性、熱伝導特性、又は、流体抵抗特性のうち1つ以上の特性を制御する。本実施の形態において、構造物300Bは、構造体100Bが有する電気伝導特性を制御する。すなわち、本実施の形態に係る構造体100Bが有する新規な機能とは、構造体100Bの電気伝導特性を制御する機能である。
【0140】
これにより、構造物300Bは、電流が流れることをセンシングするセンサーとして利用することができる。また、構造物300Bは、スイッチング素子としても利用可能である。一方で、構造物300Bは、制御する特性を変更することで、上記のセンサー及びスイッチング素子とは異なる用途に利用することができる。
【0141】
また、本実施の形態に係る構造物300Bは、電子機器である。
【0142】
これにより、構造物300Bは、他の装置へ組み込むことが容易な電気的な機器として利用することができる。
【0143】
また、本実施の形態に係る3次元網形状造形体10Bは、弾性変形する弾性体である。
【0144】
これにより、3次元網形状造形体10Bに力Pが与えられることで、3次元網形状造形体10Bの形状が変化し、複数の物体40Bを移動させることが容易になる。
【0145】
また、上述のように本実施の形態に係る構造体100Bは、複数の物体40Bの移動を抑制する隔壁32Bを備え、隔壁32Bは、複数の空間30Bを構成する境界面に設けられる。
【0146】
さらに、本実施の形態に係る構造体100Bにおいては、境界面の一部は、3次元網形状造形体10Bの最も外側の面である最外面の一部であり、隔壁32Bは、最外面のうち1つ以上の面全体に設けられる。
【0147】
これにより、複数の物体40Bが複数の空間30Bのうち2つ以上の空間30Bに亘って移動することを抑制する。さらに、従って、複数の物体40Bは、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bの内部に留まることができる。さらに、複数の物体40Bが3次元網形状造形体10Bの外部に漏出することを抑制することができる。また、本実施の形態で示されるように、3次元網形状造形体10Bが弾性体である場合、構造体100Bが隔壁32Bを備えることで、力Pによる構造体100Bの破壊を抑制することができる。
【0148】
(実施の形態3の変形例)
ここで、実施の形態3の変形例について説明する。なお、本変形例においては、実施の形態3と共通の構成要素については、その詳細な説明を省略する。
【0149】
実施の形態3において、複数の物体40Bの直径は、立方体形状である複数の空間30Bの一辺よりも小さい構成を示したが、これに限らない。本変形例においては、複数の物体40Bの直径は、立方体形状である複数の空間30Bの一辺よりも大きい。
【0150】
すなわち、本変形例においては、複数の空間30Bのうち異なる空間30Bのそれぞれに存在する複数の物体40Bどうしは、接触している。つまりは、構造物300Bに、外部から押圧する力Pが与えられない場合においても、複数の物体40Bのそれぞれは、予め、互いに接触し、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れる。
【0151】
また、本変形例においては、力Pの向きは、構造物300Bを引き延ばす方向に発生する。すなわち、力Pの向きは、構造物300Bの上面(z軸正方向側面)に対してz軸正方向と構造物300Bの下面(z軸負方向側面)に対してz軸負方向に向かう方向である。
【0152】
本変形例においては、構造物300Bに力Pが与えられると、構造体100Bは、力Pの向きに従って弾性変形し、その結果、複数の空間30Bの形状が変形する。すなわち複数の空間30Bの体積が大きくなるように、複数の空間30Bの形状が変形する。
【0153】
複数の物体40Bは、複数の空間30Bの変形に伴い、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bにおける位置が変化する。すなわち、複数の物体40Bは、複数の空間30Bの変形に伴い、複数の空間30Bのうち1つの空間30Bの内部を移動する。複数の物体40Bが移動した結果、複数の物体40Bのそれぞれが互いに接触しなくなる。そのため、互いに一対となる接点51と接点52との間の電気抵抗値は非常に高く、互いに一対となる接点51と接点52との間に電流が流れることはない。すなわち、本変形例に係る構造体100Bを有する構造物300Bは、圧力センサーとして利用可能である。
【0154】
以上まとめると、本変形例に係る構造物300Bにおいて、複数の空間30Bのうち異なる空間30Bのそれぞれに存在する複数の物体40Bどうしは、接触している。
【0155】
これにより、複数の物体40Bが移動することで、複数の物体40Bどうしが接触するか否かを制御することが可能となるため、構造体100Bが有する新規な機能を発揮することができる。
【0156】
(その他)
以上、本発明に係る構造体、システム及び構造物について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0157】
実施の形態においては、複数の網線は、線の太さがより太い複数の主網線と、線の太さがより細い複数の副網線とを含むが、これに限らない。複数の網線のすべては、同じ線の太さであってもよく、すなわち、主網線と副網線とは、同一の線であってもよい。複数の網線の断面形状は、どのような形状であってもよい。例えば、複数の網線の断面形状は、円形状又は多角形状であってもよい。さらに、複数の網線の断面形状は、円形状又は多角形状に突起が設けられた形状(例えば星形形状又は歯車形状など)であってもよい。特に、突起が設けられた形状である場合、複数の物体の移動を抑制することが容易になる。
【0158】
また、実施の形態においては、複数の網線が含む複数の主網線及び複数の副網線は、x軸、y軸又はz軸方向に延びる線であったが、これに限らない。例えば、複数の主網線及び複数の副網線は、x軸、y軸及びz軸方向のいずれの方向とも平行でない線であってもよい。すなわち、複数の主網線及び複数の副網線は、任意の方向に延びる線であってもよい。
【0159】
なお、実施の形態1及び2においては、3次元網形状造形体が高い剛性を示す構成を示したが、これに限らない。例えば、実施の形態1における3次元網形状造形体は、実施の形態3と同じく、弾性変形する弾性体であってもよい。さらに、実施の形態1における3次元網形状造形体は、3次元網形状造形体の一部分が高い剛性を示し、3次元網形状造形体のその他の一部分が弾性体であってもよい。つまり、3次元網形状造形体が有する複数の網線の一部分が高い剛性を示し、複数の網線のその他の一部分が弾性体であってもよい。このような、剛性が高い一部分と弾性体である一部分とを組み合わせた3次元網形状造形体である場合、実施の形態1に示す磁場が発生すると、構造体は、弾性体である部分だけを弾性変形させる機能を発揮することができる。
【0160】
また、実施の形態においては、境界面及び最外面は、平面だが、曲面であってもよい。
【0161】
実施の形態1及び2においては、エネルギー供給装置は、電磁石を含む装置であって、磁場を発生させたが、これに限らない。エネルギー供給装置は、熱エネルギー、光エネルギー、化学エネルギー又は力学的エネルギーなどを発生させてもよく、これらを組み合わせて発生させてもよい。
【0162】
また、実施の形態1及び2においては、複数の物体は、エネルギー供給装置が発生させるエネルギーを与えられることで移動したが、これに限らない。例えば、構造体を水平に対して傾けることで、複数の物体が重力に従って移動してもよい。
【0163】
なお、実施の形態1、2及び3においては、複数の物体は、鉄又は銅が用いられたがこれに限らない。複数の物体は、当該複数の物体を移動させるエネルギーによって選択されてもよい。
【0164】
また、複数の物体のそれぞれは、異なる材料により構成されてもよい。つまり、例えば、複数の物体のうち1つの物体は、第1材料を含み、当該1つの物体とは異なる1つの物体は、第1材料とは異なる第2材料を含んでもよい。具体的には、複数の物体のうち1つの物体は、実施の形態1と同じく、鉄を含み、当該1つの物体とは異なる1つの物体は、コバルトを含んでもよい。
【0165】
実施の形態2において、光吸収率が高い材料の種類は、光Lが含む波長によって、選択される。例えば、光Lが赤外光である場合、光吸収率が高い材料は、赤外光を吸収する材料から選択される。また、例えば、光Lが紫外光である場合、光吸収率が高い材料は、紫外光を吸収する材料から選択される。
【0166】
実施の形態2においては、構造体が有する光学特性の一つである光透過特性が制御される構成が示されたが、これに限らない。例えば、光反射特性又は光散乱特性が制御されてもよい。
【0167】
実施の形態3においては、構造体が有する電気伝導特性が制御される構成が示されたが、これに限らない。例えば、熱伝導特性が制御されてもよい。この場合、複数の物体が高い熱伝導性を示す材料を含んでもよい。高い熱伝導性を示す材料とは、例えば、金属材料などを用いることができる。これにより、複数の物体のそれぞれが互いに接触すると、熱伝導のための経路が発生する。
【0168】
構造体が有する特性のうち流体抵抗特性を制御する場合について説明する。流体とは、例えば、水である。このような場合は、例えば、開口部の形状が円形状であり、複数の物体の形状が球形状であり、かつ、複数の物体の直径が開口部の円形状の直径より大きい構成が用いられる。これにより、複数の物体が開口部を覆う場合は、流体は、開口部を通じて、複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動することができない。一方で、複数の物体が移動し、複数の物体が開口部を覆わない場合は、流体は、複数の空間のうち2つ以上の空間に亘って移動することができる。このように、複数の物体の移動により、複数の物体が開口部を覆うか否かを切替えることができるため、構造体が有する流体抵抗特性を制御することができる。
【0169】
なお、構造体は、複数の物体が複数の空間内を移動することで、音を発してもよい。複数の物体が移動した結果、複数の物体が複数の網線と接触することで、構造体が音を発してもよい。これにより、複数の物体が移動したことは、音によって認識される。
【0170】
また、実施の形態においては、3次元網形状造形体及び複数の網線は、ABS系樹脂材料又は熱可塑性ポリウレタン系樹脂材料により構成されたが、これに限らない。例えば、3次元網形状造形体及び複数の網線は、ナイロン系樹脂材料、PLA(Poly-LacticAcid)系樹脂材料、ポリカーボネート系樹脂材料、ポリカーボネート/ABSアロイ系樹脂材料、PPSF(PolyPhenylSulfone)/PPSU(PolyPhenylSulfone)系樹脂材料、ASA(acrylate-styrene-acrylonitrile)系樹脂材料、PEEK(PolyEtherEtherKetone)系樹脂材料、PEI(PolyEtherImide)系樹脂材料、エポキシ系樹脂材料、ポリプロピレン系樹脂材料、塩化ビニル系樹脂材料、テフロン(登録商標)系樹脂材料又はポリエチレンテレフタレート系樹脂材料などの材料により構成されてもよい。また、上記の材料に限られず、3次元網形状造形体及び複数の網線は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックなどの材料により構成されてもよい。構造体の用途によって、3次元網形状造形体及び複数の網線を構成する材料は、選択される。
【0171】
実施の形態1で示したように、3次元網形状造形体は、材料押出法により製造された。しかしながら、これに限らない。例えば、3次元網形状造形体は、液槽光重合法により製造することができる。
【0172】
液槽光重合法は、次の通りの手順である。3次元網形状造形体を構成する材料は、流動性を有する。3次元網形状造形体を構成する材料が、所望の3次元の製造対象となるように、所定の刺激に暴露されることで、3次元網形状造形体を構成する材料は、硬化された層となる。硬化された層が積層されることで、所望の3次元の製造対象を得る。例えば、3次元網形状造形体を構成する材料は、紫外線硬化樹脂を用いることができ、所定の刺激は、紫外線を用いることができる。
【0173】
また、実施の形態においては、複数の物体が3次元網形状造形体の製造途中で複数の空間に存在するように配置されることで、構造体は製造されたが、これに限らない。例えば、実施の形態3に示すように、3次元網形状造形体が弾性変形する弾性体である場合、複数の物体は、3次元網形状造形体の製造後に開口部の形状を弾性変形させることで、開口部から挿入されてもよい。さらに、複数の物体は、3次元網形状造形体と同じく3Dプリンタによって、材料押出法を用いて製造することができる。この場合、複数の物体及び3次元網形状造形体が同じ材料により構成される場合、同一材料のフィラメントを用いることができる。一方、複数の物体及び3次元網形状造形体が異なる材料により構成される場合、それぞれ異なる材料のフィラメントを用いることができる。また、複数の物体の製造には、3次元網形状造形体と同じく液槽光重合法、材料噴射法、結合剤噴射法又は粉末床溶融結合法などを用いることができる。
【0174】
なお、実施の形態1及び2においては、構造体は、載置台に載置されたが、これに限らない。構造体は、エネルギー供給装置から供給されるエネルギーを受け取ることができれば、どのような方法で設置されてもよい。また、システムは、載置台及び支持支柱を備えていなくてもよい。
【0175】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0176】
10 3次元網形状造形体
20 網線
30 空間
31 境界面
32B 隔壁
40 物体
100 構造体
200 エネルギー供給装置
300B 構造物
1000 システム