(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】養鶏用飼料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/37 20160101AFI20230407BHJP
A23K 50/75 20160101ALI20230407BHJP
【FI】
A23K10/37
A23K50/75
(21)【出願番号】P 2018239229
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2017248880
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503193568
【氏名又は名称】JA東日本くみあい飼料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515220144
【氏名又は名称】有限会社都路ファーム
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】平位 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓二
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-323518(JP,A)
【文献】特開2014-140337(JP,A)
【文献】特開平04-016151(JP,A)
【文献】特公昭58-036944(JP,B1)
【文献】特開平09-098725(JP,A)
【文献】特開平08-308509(JP,A)
【文献】特開2005-348725(JP,A)
【文献】特開2008-061627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0047946(US,A1)
【文献】前田恵助、山本里美、小林千洋、石井浩子、上田雅彦、築野卓夫、入江正和,採卵鶏へのライストリエノール飼料添加が生産性、鶏卵中のコレステロールとビタミンE濃度ならびに過酸化脂質の生成に与える影響,日本畜産学会報,2007年,78巻2号,179-187頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米油精製時の副産物であるリン脂質を主成分とする米ガム物質を取得するとともに、米油精製時の副産物である粗脂肪酸を主成分とする液体状のダーク油を取得して、前記米ガム物質に前記ダーク油を加え噴霧器による噴霧が可能な粘度の米由来植物性ガム物質とし、
前記米由来植物性ガム物質を40℃~50℃に保持する工程と、
前記米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料を秤量する工程と、
秤量した飼料用原材料を混合する工程と、
前記飼料用原材料を混合しながら2wt%~4wt%の前記米由来植物性ガム物質を前記噴霧器により散布して混合する工程と、を有することを特徴とする養鶏用飼料の製造方法。
【請求項2】
米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料に動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しないことで、前記米由来植物性ガム物質が無配合の試料で飼育した鶏卵よりも味覚認識装置における塩味センサの先味、及び、旨味センサの先味が高く、旨味センサの後味が低い、味の濃さ旨味がともに深く濃厚でありながら旨味の余韻が少なく、すっきりとした味わいの鶏卵を生産させることを特徴とする請求項1記載の養鶏用飼料の製造方法。
【請求項3】
米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料に魚粉を1.5wt%~2.5wt%配合し、前記米由来植物性ガム物質が無配合の試料で飼育した鶏卵よりも味覚認識装置における塩味センサの先味、及び、旨味センサの先味が高く、旨味センサの後味が同等の、味の濃さ旨味がともに深く濃厚でありながら旨味が持続する鶏卵を生産させることを特徴とする請求項1記載の養鶏用飼料の製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴ある食味の鶏卵を得るための養鶏用飼料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農畜産物のブランド化、差別化が進み、鶏卵に対しても食味や栄養価に特徴を有する商品の開発が行われている。このような鶏卵の食味や栄養価の特徴付けには、採卵鶏に与える養鶏用飼料の成分により行うのが一般的である。ここで、例えば下記[特許文献1]には、米油、糖蜜、魚粉を配合し、特に生食時(卵かけご飯)における食味の向上に特化した養鶏用飼料に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、養鶏用飼料の研究開発は現在も継続して行われており、新たな材料を配合した特徴ある養鶏用飼料が製品化されている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、特徴的な食味を有する鶏卵を得るための養鶏用飼料の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)米油精製時の副産物であるリン脂質を主成分とする米ガム物質を取得するとともに、米油精製時の副産物である粗脂肪酸を主成分とする液体状のダーク油を取得して、前記米ガム物質に前記ダーク油を加え噴霧器による噴霧が可能な粘度の米由来植物性ガム物質とし、
前記米由来植物性ガム物質を40℃~50℃に保持する工程と、
前記米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料を秤量する工程(秤量工程:S100)と、
秤量した飼料用原材料を混合する工程(混合工程:S102)と、
前記飼料用原材料を混合しながら2wt%~4wt%の前記米由来植物性ガム物質を前記噴霧器により散布して混合する工程(米由来植物性ガム物質添加工程:S104)と、を有することを特徴とする養鶏用飼料の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料に動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しないことで、前記米由来植物性ガム物質が無配合の試料で飼育した鶏卵よりも味覚認識装置における塩味センサの先味、及び、旨味センサの先味が高く、旨味センサの後味が低い、味の濃さ旨味がともに深く濃厚でありながら旨味の余韻が少なく、すっきりとした味わいの鶏卵を生産させることを特徴とする上記(1)記載の養鶏用飼料の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料に魚粉を1.5wt%~2.5wt%配合し、前記米由来植物性ガム物質が無配合の試料で飼育した鶏卵よりも味覚認識装置における塩味センサの先味、及び、旨味センサの先味が高く、旨味センサの後味が同等の、味の濃さ旨味がともに深く濃厚でありながら旨味が持続する鶏卵を生産させることを特徴とする上記(1)記載の養鶏用飼料の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法による養鶏用飼料を用いて採卵鶏を飼育することで、味の濃さ、旨味が濃厚な鶏卵を生産することができる。特に、動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しない構成では味の濃さ、旨味が濃厚でありながら後味を引かないさっぱりした食味の鶏卵を生産することができる。また、動物性蛋白質材料を配合した構成では後味にも旨味が持続した鶏卵を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】米由来植物性ガム物質及び主な植物油のオレイン酸とリノール酸の比率を示すグラフである。
【
図2】本発明に係る養鶏用飼料の製造方法の工程フローチャートである。
【
図4】米由来植物性ガム物質の配合量と味覚評価の結果を示すグラフである。
【
図5】動物性蛋白質材料の配合量と味覚評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る養鶏用飼料の製造方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。先ず、本発明の製造方法による養鶏用飼料は、米由来植物性ガム物質を飼料用原材料の一つとして含有する物である。ここで、本発明に用いる米由来植物性ガム物質に関して説明する。本発明に用いる米由来植物性ガム物質は米油製造時の副産物であり、米油の精製時に除去されるリン脂質(米ガム物質)を主成分とするものである。尚、米ガム物質は基本的にペースト状であり材料混合時の分散性が悪い。このため、同様に米油の精製時の副産物で粗脂肪酸を主成分とする液体状のダーク油をこの米ガム物質に加え、所定の粘度の液状としたものを米由来植物性ガム物質として用いる。このように、本発明に用いる米由来植物性ガム物質は、基本的に米油の精製時に除去される副産物で構成されるため、不純物や夾雑物を含み、これらが鶏卵の食味に好ましい影響を与えるものと推測される。尚、ダーク油の配合量は米ガム物質の粘度等に応じて適宜変化する。また、米由来植物性ガム物質は、噴霧器である液体添加手段を用いて米由来植物性ガム物質を他の飼料用原材料に混合するため、それらの装置が使用な可能な粘度とする。
【0010】
ここで、米由来植物性ガム物質、米油、及び飼料用原材料として一般的な油の脂肪酸組成の比率を高速液体クロマトグラフ法を用いて測定した結果を表1に示す。また、米由来植物性ガム物質、米油、及び主な植物油のオレイン酸とリノール酸の比率を
図1に示す。
【表1】
【0011】
表1、
図1より、動物性油脂、パーム油、菜種油はオレイン酸がリノール酸の約3倍(菜種油)~約12倍(牛脂)であり、トウモロコシ油、大豆油はオレイン酸がリノール酸の約半分であるのに対し、米油はオレイン酸が42.60%、リノール酸が35.00%で双方の比率が55:45と、ほぼ半々であることが判る。また、米由来植物性ガム物質はオレイン酸が40.25%、リノール酸が36.73%で、
図1に示すように、オレイン酸とリノール酸との比率が52:48と、米油よりもさらに近い値となっている。このように、米由来植物性ガム物質は米油よりもオレイン酸とリノール酸との比率が同等であり、これが鶏卵の食味に好ましい影響を与えるものと推測される。
【0012】
次に、本発明に係る養鶏用飼料の製造方法に関して
図2を用いて説明を行う。先ず、米由来植物性ガム物質を40℃~50℃で保持する(S200)。次に、米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料を予め設定された分量秤量する(秤量工程:S100)。次に、これら秤量した飼料用原材料を周知の混合機に投入し混合する(混合工程:S102)。次に、40℃~50℃で保持していた米由来植物性ガム物質を液体添加手段に投入する。次に、飼料用原材料を混合しながら予め設定された量の米由来植物性ガム物質を散布して混合する(米由来植物性ガム物質添加工程:S104)。次に、混合機から養鶏用飼料を取り出し、本発明に係る養鶏用飼料が完成する(S106)。
【実施例1】
【0013】
所定の飼料用原材料を表2の[実施例1]に示す比率で混合し本発明に係る養鶏用飼料とした。尚、この養鶏用飼料は一般的な養鶏用飼料に配合されている動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料(魚粉)を配合せず、替わりに米由来植物性ガム物質を2.5wt%配合して含有させ、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を採卵鶏(バブコック)に100g/日/羽の量で4週間定量給餌した。そして、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例2】
【0014】
所定の飼料用原材料を表2の[実施例2]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例1]の養鶏用飼料に動物性蛋白質材料(魚粉)を4wt%配合して含有させ、他の原材料の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【0015】
[比較例1]
表2の[比較例1]に示す一般的な養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。尚、[比較例1]の養鶏用飼料は米由来植物性ガム物質を配合せず、一般的な動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料(魚粉)を配合したものである。
【表2】
【0016】
次に、[実施例1]、[実施例2]、[比較例1]の卵黄5個を純水にて5倍に希釈した後、フードプロセッサにて30秒攪拌し、味覚認識装置(TS5000Z:株式会社インテリジェントセンサテクノロジー製)を使用して味覚評価を行った。尚、特定の味覚評価項目に関しては、味覚センサを評価試料に浸漬した時の値を先味とし、その味覚センサを粗洗いした後、基準液に浸漬したときの残留物の測定値を後味とした。そして、この味覚評価のうち、Cl
-などの陰イオン、酸性苦味(イソα酸、ピクリン酸、ニガヨモギ抽出物、ヒキオコシ抽出物、陰イオン界面活性剤等)に応答し、低濃度ではコク、雑味、隠し味等の食味と関連する苦味雑味/食センサの先味を「コク」の値とした。また、この苦味雑味/食センサの後味を「コクの余韻」の値とした。また、H
+、旨味物質(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等)に応答し、旨味と関連する旨味センサの先味を「旨味」の値とした。また、この旨味センサの後味を「旨味の余韻」の値とした。さらに、Cl
-、SO
4
2-等の陰イオン(NaCl、CaCl
2、KBr等)に応答し、食塩のような無機塩類の味に関連する塩味センサの先味を「味の濃さ」の値とした。この結果を
図3に示す。尚、
図3(a)は「旨味」を横軸とし、「味の濃さ」を縦軸として図示したものである。また、
図3(b)は「旨味」を横軸とし、「旨味の余韻」を縦軸として図示したものである。また、図中の“○”が従来の[比較例1]の養鶏用飼料で飼育した鶏卵の卵黄の値を示し、“●”が本発明の[実施例1]の養鶏用飼料で飼育した鶏卵の卵黄の値を示し、“▲”が本発明の[実施例2]の養鶏用飼料で飼育した鶏卵の卵黄の値を示す。また、
図3(a)、(b)の味覚評価の値は[比較例1]の値を“0”としたときの相対値で表した。尚、これら味覚評価の値は「推定値」と呼ばれ、味の違いに人間が認識できる差異があるか否かを判断する値である。この推定値で「1」以上の差異がある場合に、大多数の人が味の違いを認識できる濃度差20%相当の値であるとされる。
【0017】
ここで、
図3(a)から、米由来植物性ガム物質を含有する[実施例1][実施例2]で得られた鶏卵は、卵黄の味の濃さ、旨味の値がともに従来の[比較例1]のものよりも概ね「1」以上大きいことが判る。このことから、養鶏用飼料に米由来植物性ガム物質を配合し含有させることで、従来の鶏卵よりも味の濃さ、旨味がともに深い濃厚な味わいの鶏卵を得られることが判る。次に、
図3(b)から、動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しない[実施例1]の鶏卵は旨味の余韻が従来の[比較例1]よりも約0.45小さい値(-0.45)を示した。このことから、米由来植物性ガム物質を配合し動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しない[実施例1]の鶏卵は従来の[比較例1]の鶏卵よりも旨味の余韻が少なく、すっきりとした味わいであることが判る。また、これに動物性蛋白質材料を加えると、
図3(b)の[実施例2]の結果に示すように、旨味の余韻(後味のさっぱり感)は従来の鶏卵と同等となり、旨味が持続することが判る。
【実施例3】
【0018】
次に、所定の飼料用原材料を表3の[実施例3]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料(魚粉)を配合せず、替わりに米由来植物性ガム物質を2.0wt%配合して含有させ、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例4】
【0019】
所定の飼料用原材料を表3の[実施例4]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例3]の米由来植物性ガム物質の配合量を2.5wt%とし、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例5】
【0020】
所定の飼料用原材料を表3の[実施例5]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例3]の米由来植物性ガム物質の配合量を3.0wt%とし、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例6】
【0021】
所定の飼料用原材料を表3の[実施例6]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例3]の米由来植物性ガム物質の配合量を3.3wt%とし、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例7】
【0022】
所定の飼料用原材料を表3の[実施例7]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例3]の米由来植物性ガム物質の配合量を3.5wt%とし、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例8】
【0023】
所定の飼料用原材料を表3の[実施例8]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例3]の米由来植物性ガム物質の配合量を4.0wt%とし、他の原材料比率に若干の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【表3】
【0024】
そして、これら[実施例3]~[実施例8]及び[比較例1]で得た鶏卵の卵黄に対し[実施例1]と同様にして味覚認識装置による味覚評価を行った。その結果を
図4に示す。ここで、
図4の横軸は米由来植物性ガム物質の配合量(wt%)であり、縦軸は味覚認識装置によるコクの味覚結果である。
【0025】
図4から、米由来植物性ガム物質の配合量2.0wt%~4.0wt%の卵黄は従来の卵黄と比較してコクの味覚結果が概ね0.4~1.0と高い結果を示した。このことからも、養鶏用飼料に米由来植物性ガム物質を配合することで、従来の鶏卵よりも濃厚な味わいの鶏卵を得られることが判る。また、
図4から、米由来植物性ガム物質の配合量は1.0wt%に満たないと鶏卵の食味への影響が少ないものと考えられ、よって米由来植物性ガム物質の配合量は養鶏用飼料全体の1.0wt%以上とすることが好ましい。ただし、米由来植物性ガム物質の配合量が10wt%を越えると養鶏用飼料中の液体成分が過剰となる他、採卵鶏の飼育に好適な栄養組成を逸脱する可能性が有る。よって、米由来植物性ガム物質の配合量は2wt%~4wt%とする。
【実施例9】
【0026】
次に、所定の飼料用原材料を表4の[実施例9]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例6]の養鶏用飼料(米由来植物性ガム物質3.3wt%)に動物性蛋白質材料(魚粉)を1.5wt%配合して含有させ、他の原材料の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例10】
【0027】
所定の飼料用原材料を表4の[実施例10]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例6]の養鶏用飼料(米由来植物性ガム物質3.3wt%)に動物性蛋白質材料(魚粉)を2.0wt%配合して含有させ、他の原材料の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【実施例11】
【0028】
所定の飼料用原材料を表4の[実施例11]に示す比率で混合した。尚、この養鶏用飼料は[実施例6]の養鶏用飼料(米由来植物性ガム物質3.3wt%)に動物性蛋白質材料(魚粉)を2.5wt%配合して含有させ、他の原材料の調整を行ったものである。次に、この養鶏用飼料を[実施例1]と同様の条件で採卵鶏に給餌し、これらの採卵鶏が産んだ鶏卵を取得した。
【表4】
【0029】
そして、これら[実施例9]~[実施例11]で得た鶏卵の卵黄に対し[実施例1]と同様にして味覚認識装置による味覚評価を行った。その結果を[実施例6]の結果、及び[実施例1]、[実施例2]の結果とともに、
図5(a)~(c)に示す。ここで、
図5(a)~(c)の横軸は動物性蛋白質材料(魚粉)の配合量(wt%)であり、
図5(a)の縦軸は味覚認識装置による味の濃さの味覚結果であり、
図5(b)の縦軸は味覚認識装置による旨味の味覚結果であり、
図5(c)の縦軸は味覚認識装置による旨味の余韻の味覚結果である。尚、
図5(a)、(b)では[実施例9]~[実施例11]を[実施例6]の結果を0とした相対値で示し、[実施例2]を[実施例1]の結果を0とした相対値で示している。また、
図5(c)では[実施例2]、[実施例9]~[実施例11]を[比較例1]の結果を0とした相対値で示している。
【0030】
図5(a)、(b)から、米由来植物性ガム物質を配合し且つ動物性蛋白質材料(魚粉)の配合量が1.5wt%~2.5wt%の卵黄は米由来植物性ガム物質のみを配合して得た卵黄([実施例6])と同等の味の濃さ及び旨味を有することがわかる。また、
図5(c)から、米由来植物性ガム物質及び動物性蛋白質材料(魚粉)を配合して得た卵黄は、[実施例10]の値が若干低いものの、従来の卵黄[比較例1]と比較して旨味の余韻の値がほぼ同等であり、このことからも、米由来植物性ガム物質を配合した養鶏用飼料に動物性蛋白質材料を加えることで、濃厚な味わいが持続することが判る。また、
図5から、動物性蛋白質材料の配合量による大きな傾向は特に認められず、よって動物性蛋白質材料の配合量は常識的な範囲として養鶏用飼料全体の1.5wt%~2.5wt%とする。尚、動物性蛋白質材料が10wt%を越えると採卵鶏の飼育に好適な栄養組成を逸脱する可能性が有る。
【0031】
次に、[実施例6]の鶏卵と[比較例1]’(比較例1の魚粉を配合しない物)の鶏卵とをそれぞれ10個、固ゆで卵とし、縦半分に切って男性25人、女性45人の合計70人に実食してもらい、どちらの卵を美味しいと感じるかの食味試験を行った。その結果、70人中41人(約60%)が[実施例6]のゆで卵の方が美味しいと回答した。また、[実施例6]のゆで卵に対し、「味が濃い、濃厚」、「香りが強い」、「粘り気がある、ねっとりとした舌触り」、「黄身の色が濃い、見た目が鮮やかで美味しそう」との感想を得た。
【0032】
これらのことから、米由来植物性ガム物質を配合し含有した本発明の製造方法による養鶏用飼料によって飼育され産出される鶏卵は、従来の鶏卵よりも、口に入れた直後の味の濃さ、旨味が濃厚であることが判る。特に、動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しない構成では、味の濃さ、旨味が濃厚でありながら後味を引かないさっぱりした食味を有する。また、動物性蛋白質材料を配合し含有する構成では、後味にも旨味が残った食味を有する。
【0033】
そして、動物性油脂材料及び動物性蛋白質材料を配合しない本発明の製造方法による養鶏用飼料で得られる鶏卵は、特に生食やスクランブルエッグ等の玉子本来の味が左右する料理において、後味を嫌う消費者にとって好ましい食味を提供することができる。また、ケーキ等の菓子類に用いる場合には、濃厚でありながら後味が残らず、他の材料の食味の邪魔をしない好ましい食味を提供することができる。また、動物性蛋白質材料を配合した本発明の製造方法による養鶏用飼料で得られる鶏卵は、旨味が後味にも持続するため、玉子本来の味わいを好む消費者にとって好ましい食味を提供することができる。また、玉子本来の味わいを強調したい料理において好ましい食味を提供することができる。
【0034】
尚、本例で示した養鶏用飼料の製造方法は一例であり、米由来植物性ガム物質以外の飼料用原材料の種類及び配合比、及び製造方法の各工程の手順、順番等はこれに限定されるものではなく、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
S100 秤量工程
S102 混合工程
S104 米由来植物性ガム物質添加工程