(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】4気筒式ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20230407BHJP
F04B 45/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
F04B43/02 L
F04B45/04 H
(21)【出願番号】P 2019027607
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000181767
【氏名又は名称】柴田科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池戸 勇二
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188983(JP,A)
【文献】実開平06-028280(JP,U)
【文献】特開2004-124894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037443(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00743452(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4組のポンプ室を有するポンプ本体と、該4組のポンプ室を所定の位相差で拡張及び収縮させる駆動機構とを備える4気筒式ダイヤフラムポンプであって、
前記ポンプ本体は、
同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられた第1のダイヤフラムと、
同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられ、該平面が前記第1のダイヤフラムの前記平面に対して平
行に位置するよう配された第2のダイヤフラムと
を備え、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各ダイヤフラム部は、それぞれ異なるポンプ室の一部を構成しており、
前記駆動機構は、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの
各平面に対して平行に延びる回転軸を有する駆動源と、
前記第1のダイヤフラムに対応して設けられた第1の揺動体と、
前記第2のダイヤフラムに対応して設けられた第2の揺動体と
を備え、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムにおける前記2つのダイヤフラム部は、それぞれ、前記回転軸を境として、該回転軸と直交する方向に離間して配されており、
前記第1の揺動体及び前記第2の揺動体は、それぞれ、前記回転軸に対して偏心して取り付けられた偏心部と、該偏心部にベアリングを介して取り付けられた取付部と、該取付部から一方のダイヤフラム部に亘って延びる第1腕部と、該取付部から他方のダイヤフラム部に亘って延びる第2腕部とを備え、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムは、前記回転軸を介して互いに平行となるよう対向して配置されており、
前記第1の揺動体の前記偏心部及び前記第2の揺動体の前記偏心部は、互いに同一の方向に偏心している
ことを特徴とする4気筒式ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
4組のポンプ室を有するポンプ本体と、該4組のポンプ室を所定の位相差で拡張及び収縮させる駆動機構とを備える4気筒式ダイヤフラムポンプであって、
前記ポンプ本体は、
同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられた第1のダイヤフラムと、
同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられ、該平面が前記第1のダイヤフラムの前記平面に対して同一平面上に位置するよう配された第2のダイヤフラムと
を備え、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各ダイヤフラム部は、それぞれ異なるポンプ室の一部を構成しており、
前記駆動機構は、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各平面に対して平行に延びる回転軸を有する駆動源と、
前記第1のダイヤフラムに対応して設けられた第1の揺動体と、
前記第2のダイヤフラムに対応して設けられた第2の揺動体と
を備え、
前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムにおける前記2つのダイヤフラム部は、それぞれ、前記回転軸を境として、該回転軸と直交する方向に離間して配されており、
前記第1の揺動体及び前記第2の揺動体は、それぞれ、前記回転軸に対して偏心して取り付けられた偏心部と、該偏心部にベアリングを介して取り付けられた取付部と、該取付部から一方のダイヤフラム部に亘って延びる第1腕部と、該取付部から他方のダイヤフラム部に亘って延びる第2腕部とを備え
、
前記第1の揺動体
の前記偏心部及び前記第2の揺動体
の前記偏心部は、互いに
反対の方向に偏心している
ことを特徴とす
る4気筒式ダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
前記第1のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第1のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離よりも小さく、
前記第2のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第2のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離よりも小さい
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の4気筒式ダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
前記第1のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第1のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離の1/2であり、
前記第2のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第2のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離の1/2である
ことを特徴とする請求項3に記載の4気筒式ダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4つのポンプ室を有する4気筒式ダイヤフラムポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ室の一部を形成するダイヤフラムの往復動と、ポンプ室の流入側及び流出側にそれぞれ設けられる逆止弁との相互作用によって、一方向のみに流体を流動させるよう構成されたダイヤフラムポンプが広く知られている(特許文献1)。
【0003】
ダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムの往復動の一方のみを逆止弁によって取り出す構造であるため、流体の流動に脈動が含まれる。このため、特許文献1のダイヤフラムポンプのような、単一のポンプ室によって流体を流動させる単気筒式ダイヤフラムポンプでは、流体の脈動によって流量精度が低下すると共に、動作音が大きいという問題がある。
【0004】
近年、このような脈動の影響を軽減させることが可能なダイヤフラムポンプとして、複数のポンプ室を有する多気筒式ダイヤフラムポンプが知られている。例えば、特許文献2には、駆動モータの回転軸に偏心して取り付けられた偏心軸と、偏心軸の周方向に沿って90°の間隔をおいて取り付けられた4つのダイヤフラム部と、各ダイヤフラム部との間においてポンプ室を形成すると共に、各ポンプ室から吐出された流体を合流させて排出させるよう構成されたベース(マニホールドやハウジング等)とを備える4気筒式ダイヤフラムポンプが開示されている。
【0005】
このような特許文献2の4気筒式ダイヤフラムポンプによれば、4つのダイヤフラム部を90°の位相差で駆動させ、4つのポンプ室から流出される流体の位相をずらすことが可能となり、このような位相のずれた流体を合流させて互いの脈動を打消し合わせることにより、流体の脈動を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平08-270569号公報
【文献】欧州特許第0743452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の4気筒式ダイヤフラムポンプは、単気筒式ダイヤフラムポンプや2気筒式ダイヤフラムポンプと比較して、部品点数が多く、大型であるという問題がある。また、従来の4気筒式ダイヤフラムポンプは、回転軸の周囲4面に向けて4つのダイヤフラム部が配されているため、ベースに対し、回転軸の周囲4面と上下面もあわせて6面からの加工が必要となり、プラスチックやダイカスト等の型を用いた部品生産手段を用いて量産することが困難であるという問題がある。さらに、従来の4気筒式ダイヤフラムポンプは、各構成部品の組立も6面から行う必要があり、組立工数が多く、作業負担が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化することが可能で、かつ、簡易な構造とすることが可能な4気筒式ダイヤフラムポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る4気筒式ダイヤフラムポンプは、4組のポンプ室を有するポンプ本体と、該4組のポンプ室を所定の位相差で拡張及び収縮させる駆動機構とを備える4気筒式ダイヤフラムポンプであって、前記ポンプ本体は、同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられた第1のダイヤフラムと、同一平面上に2つのダイヤフラム部が設けられ、該平面が前記第1のダイヤフラムの前記平面に対して平行又は同一平面上に位置するよう配された第2のダイヤフラムとを備え、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各ダイヤフラム部は、それぞれ異なるポンプ室の一部を構成しており、前記駆動機構は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各ダイヤフラム部を、所定の位相差でそれぞれ対応するポンプ室に対して進退させるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、前記駆動機構は、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムの各平面に対して平行に延びる回転軸を有する駆動源と、前記第1のダイヤフラムに対応して設けられた第1の揺動体と、前記第2のダイヤフラムに対応して設けられた第2の揺動体とを備え、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムにおける前記2つのダイヤフラム部は、それぞれ、前記回転軸を境として、該回転軸と直交する方向に離間して配されており、前記第1の揺動体及び前記第2の揺動体は、それぞれ、前記回転軸に対して偏心して取り付けられた偏心部と、該偏心部にベアリングを介して取り付けられた取付部と、該取付部から一方のダイヤフラム部に亘って延びる第1腕部と、該取付部から他方のダイヤフラム部に亘って延びる第2腕部とを備え、前記回転軸の回転に伴って揺動し、一方のダイヤフラム部と他方のダイヤフラム部とを所定の位相差で進退させるよう構成されており、前記第1の揺動体及び前記第2の揺動体は、互いに所定の位相差で揺動するよう前記回転軸に取り付けられることが好ましい。
【0011】
本発明に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、前記第1のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第1のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離よりも小さく、前記第2のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第2のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離よりも小さいことが好ましい。
【0012】
この場合において、前記第1のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第1のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離の1/2であり、前記第2のダイヤフラムの前記平面と直交する方向における、該平面と前記ベアリングの中心との間の距離は、該第2のダイヤフラムの前記2つのダイヤフラム部の図心間距離の1/2であることが更に好ましい。
【0013】
本発明に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムは、前記回転軸を介して互いに平行となるよう対向して配置されており、前記第1の揺動体の前記偏心部及び前記第2の揺動体の前記偏心部は、互いに同一の方向に偏心している構成とすることができる。
【0014】
本発明に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、前記第1のダイヤフラム及び前記第2のダイヤフラムは、各平面が同一平面上に位置するよう配置されており、前記第1の揺動体の前記偏心部及び前記第2の揺動体の前記偏心部は、互いに反対の方向に偏心している構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化することが可能で、かつ、簡易な構造とすることが可能な4気筒式ダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプの分解図である。
【
図3】
図1のA-A´線に沿った概略断面図である。
【
図4】
図1のB-B´線に沿った概略断面図である。
【
図5】揺動体の寸法及び動作を説明するための模式図である。
【
図6】揺動体の寸法と脈流(リップル率)の大きさとの関係を示す図である。
【
図7】各ポンプ室の動作を時系列に沿って並べた動作工程図であり、
図7(a)は、図中右上のポンプ室が収縮された状態を示しており、
図7(b)は、
図7(a)の状態から回転軸が90°回転し、図中左上のポンプ室が収縮された状態を示しており、
図7(c)は、
図7(b)の状態から回転軸が90°回転し、図中左下のポンプ室が収縮された状態を示しており、
図7(d)は、
図7(c)の状態から回転軸が90°回転し、図中右下のポンプ室が収縮された状態を示している。
【
図8】同一流量における気筒数と脈流との関係を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプの概略構成を示す図であり、
図9(a)は、駆動源の回転軸と平行な方向に沿った断面を一部省略して示す図であり、
図9(b)は、駆動源の回転軸と直交する方向に沿った断面を一部省略して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1について、説明する。第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1は、概略的には、上下に2組ずつポンプ室12a,12b、12c,12dが配置され、これら計4組のポンプ室12a~12dから位相をずらして流体を流出させると共にこれらの流体を合流させることで、排気ポート22から排出する流体の脈動を抑えるよう構成された4相4気筒式ダイヤフラムポンプである。
【0019】
具体的には、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1は、
図1及び
図2に示すように、上下に2組ずつ、計4組のポンプ室12a~12dを有するポンプ本体10と、該4組のポンプ室12a~12dを所定の位相差で拡張及び収縮させる駆動機構60とを備えている。
【0020】
ポンプ本体10は、
図1及び
図2に示すように、吸気ポート21及び排気ポート22を有するベース部材20と、ベース部材20の上面側及び下面側にそれぞれ積層された上下一対のパッキン部材29A,29B、上下一対の弁座部材(第1の弁座部材30A,第2の弁座部材30B)、上下一対のダイヤフラム(第1のダイヤフラム40A,第2のダイヤフラム40B)及び上下一対のヘッド部材(第1のヘッド部材50A,第2のヘッド部材50B)とを備えている。
【0021】
また、駆動機構60は、
図2~
図4に示すように、回転軸62を有する駆動モータ(駆動源)61と、該回転軸62に偏心して取り付けられ、該回転軸62の回転に伴って揺動運動を繰り返し行うよう構成された第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bとを備えている。
【0022】
なお、本明細書において、「上下方向」又は「高さ方向」とは、ベース部材20に対する弁座部材30A,30B、ダイヤフラム40A,40B及びヘッド部材50A,50Bの積層方向(
図1及び
図2中の方向Z)をいうものとし、「水平方向」とは、該上下方向に直交する方向をいうものとする。また、本明細書において、「幅方向」とは、水平方向のうち、駆動モータ61の回転軸62と直交する方向(
図1及び
図2中の方向X)をいい、「奥行き方向」とは、水平方向のうち、駆動モータ61の回転軸62が延びる方向(
図1及び
図2中の方向Y)をいうものとする。
【0023】
ポンプ本体10において、パッキン部材29A,29B、弁座部材30A,30B、ダイヤフラム40A,40B及びヘッド部材50A,50Bは、ベース部材20を中心として、パッキン部材29A,29B→弁座部材30A,30B→ダイヤフラム40A,40B→ヘッド部材50A,50Bの順で積層されており、ネジ等の締結手段を用いて互いに締結されることで、互いに一体化されている。ポンプ本体10は、このように各部材が一体化された状態において、
図1に示すように、幅方向の寸法>奥行き方向の寸法>高さ方向の寸法となる扁平矩形状の外形形状を有している。また、ポンプ本体10は、ベース部材20の高さ方向の中心を境として、上下対称の内部構造を有している。以下、ポンプ本体10の各構成部材について、詳述する。
【0024】
ベース部材20は、合成樹脂等からなる扁平矩形状の部材であり、
図2~
図4に示すように、奥行き方向前方側の面に設けられた吸気ポート21及び排気ポート22と、これら吸気ポート21及び排気ポート22の間に設けられ、駆動モータ61が取り付けられる取付凹部24と、第1及び第2の揺動体64A,64Bが収容される収容部26とを備えている。取付凹部24は、ベース部材20の奥行き方向前方側の面に形成された凹部であり、収容部26は、ベース部材20の上面から下面に亘って貫通した貫通孔である。取付凹部24と収容部26との間には、後述する偏心部65A,65Bが固定された駆動モータ61の回転軸62を挿通させるための貫通孔25が形成されている。
【0025】
また、ベース部材20には、
図2に示すように、収容部26よりも奥行き方向後方側に、吸気ポート21から流入された流体を各ポンプ室12a~12dに向けて流動させる吸気側合流空間28aと、各ポンプ室12a~12dから吐出された流体を合流させて排気ポート22から排出させる排気側合流空間28bとが上下対称かつ互字状に形成されている。吸気側合流空間28aは、吸気ポート21と各ポンプ室12a~12dの吸気口とを連通させるよう構成され、排気側合流空間28bは、各ポンプ室12a~12dの排気口と排気ポート22とを連通させるよう構成されている。
【0026】
第1の弁座部材30A及び第2の弁座部材30Bは、合成樹脂等からなる矩形板状の部材であり、共通の金型により成形可能な同一の部材に、後述する吸気弁36及び排気弁38が互いに面対称となるよう配置されることで形成されている。これら第1の弁座部材30A及び第2の弁座部材30Bは、駆動モータ61の回転軸62を介して(境として)互いに平行となるよう対向して配置されている。各弁座部材30A,30Bは、
図2~
図4に示すように、ベース部材20の収容部26と整合する位置に、ダイヤフラム40A,40Bの後述するダイヤフラム部42a,42bの可動空間を提供するための一対の凹部32a,32bと、該一対の凹部32a,32bに亘って形成された横長の挿通孔34とが形成されている。凹部32a,32bは、ダイヤフラム部42a,42bの外形よりも大きい形状を有する凹部であり、挿通孔34は、駆動機構60の第1及び第2の揺動体64A,64Bの後述する各腕部68,69が挿通可能な貫通孔である。
【0027】
また、第1の弁座部材30A及び第2の弁座部材30Bには、
図2~
図4に示すように、ベース部材20の吸気側合流空間28a及び排気側合流空間28bと整合する位置に、各ポンプ室12a~12dに対応した吸気弁36及び排気弁38が交互に設けられている。吸気弁36は、ベース部材20の吸気側合流空間28aから各ポンプ室12a~12dに向かう方向の流体の流動を許容可能で、かつ、その逆方向の流動を阻止可能な逆止弁であり、排気弁38は、各ポンプ室12a~12dからベース部材20の排気側合流空間28bに向かう方向の流体の流動を許容可能で、かつ、その逆方向の流動を阻止可能な逆止弁である。吸気弁36及び排気弁38の周囲は、ベース部材20と各弁座部材30A,30Bとの間に配されたパッキン部材29A,29Bによってシールされている。パッキン部材29A,29Bには、2つの吸気弁36及び2つの排気弁38と整合する位置に、流体を通過させるための開口がそれぞれ形成されている。なお、図示の例では、吸気弁36及び排気弁38として傘状の逆止弁を例示しているが、これに限定されるものではなく、種々の逆止弁を採用可能である。
【0028】
第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bは、ゴム等の柔軟性を有する材料からなる同一の薄板状シール部材であり、互いに面対称となるよう対向して配置されている。各ダイヤフラム40A,40Bは、
図2~
図4に示すように、弁座部材30A,30Bの一対の凹部32a,32bと整合する位置に、一対のダイヤフラム部42a,42bが設けられている。具体的には、第1のダイヤフラム40Aは、同一平面上に2つのダイヤフラム部42a,42bが設けられており、また、第2のダイヤフラム40Bは、同一平面上に2つのダイヤフラム部42a,42bが設けられ、該平面が第1のダイヤフラム40Aの平面に対して平行となるよう配されている。これら第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bにおける2つのダイヤフラム部42a,42bは、それぞれ、駆動モータ61の回転軸62を境として、該回転軸62と直交する方向(幅方向X)に離間して配されている。
【0029】
各ダイヤフラム部42a,42bは、
図2~
図4に示すように、ヘッド部材50A,50Bの後述するポンプ室形成凹部52a,52bとの間においてポンプ室12a~12dを形成可能に構成されている。この場合において、第1のダイヤフラム40Aの一方のダイヤフラム部42a及び他方のダイヤフラム部42bと、第2のダイヤフラム40Bの一方のダイヤフラム部42a及び他方のダイヤフラム部42bとは、それぞれ異なるポンプ室12a~12dの一部を構成している。
【0030】
各ダイヤフラム部42a,42bは、ポンプ室12a~12dに対して進退(上下動)する部位である円状の作動面44と、作動面44の周囲を囲むように設けられ、弾性変形することにより作動面44の進退移動を許容する可撓性を有する可撓エッジ46とを有している。作動面44は、駆動機構60の揺動体64A,64Bと連結されており、揺動体64A,64Bの揺動に伴ってポンプ室12a~12dに対して進退するよう構成されている。
【0031】
また、各ダイヤフラム40A,40Bには、
図2~
図4に示すように、各弁座部材30A,30Bに設けられた2つの吸気弁36及び2つの排気弁38と整合する位置に、流体を通過させるための開口49がそれぞれ形成されている。各ダイヤフラム40A,40Bにおいて、一対のダイヤフラム部42a,42b及び4つの開口49以外の領域は、弁座部材30A,30Bとヘッド部材50A,50Bとによって挟持される水平な固定部48を構成している。
【0032】
第1のダイヤフラム40Aの固定部48と、第2のダイヤフラム40Bの固定部48とは、
図3及び
図4に示すように、これらダイヤフラム40A,40Bが弁座部材30A,30Bとヘッド部材50A,50Bとによってそれぞれ挟持された状態において互いに平行であり、この平行状態は、各ダイヤフラム部42a,42bの作動中においても維持される。また、各固定部48は、弁座部材30A,30B及びヘッド部材50A,50Bに密接した際にシール面となるよう構成されている。
【0033】
以上の構成を有する第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bは、駆動モータ61の回転軸62を介して(境として)互いに平行となるよう対向して配置されている。第1のダイヤフラム40Aの固定部48と第2のダイヤフラム40Bの固定部48との間隔Hは、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、各ダイヤフラム40A,40Bにおける一方のダイヤフラム部42aの図心45と他方のダイヤフラム部42bの図心45との間の距離(図心間距離P)と略等しくなるよう(H≒Pの関係となるよう)設定されることが好ましい。なお、第1実施形態では、各ダイヤフラム40A,40Bが円形であるため、図心間距離Pは、2つのダイヤフラム部42a,42bの中心間距離となる。
【0034】
第1のヘッド部材50A及び第2のヘッド部材50Bは、
図2~
図4に示すように、合成樹脂等からなる同一の矩形板状部材であり、駆動モータ61の回転軸62を介して(境として)互いに平行となるよう対向して配置されている。各ヘッド部材50A,50Bは、ダイヤフラム40A,40Bの一対のダイヤフラム部42a,42bと整合する位置に、一対のポンプ室形成凹部52a,52bが設けられている。各ポンプ室形成凹部52a,52bは、各ダイヤフラム部42a,42bと略同じ大きさ及び外形形状を有する凹部であり、各ダイヤフラム部42a,42bとの間においてポンプ室12a~12dを形成可能に構成されている。なお、第1実施形態において、各ポンプ室形成凹部52a,52bは、凹部底面が平行面であるが、これに限定されず、各ダイヤフラム部42a,42bの上死点時の傾きに合わせて傾斜面とする構成としても良い。このような構成とすることで、死容積を減少させることが可能となる。
【0035】
また、各ヘッド部材50A,50Bには、
図2~
図4に示すように、ポンプ室形成凹部52a,52b毎に、パッキン部材29A,29Bの開口、弁座部材30A,30Bの吸気弁36及びダイヤフラム40A,40Bの開口49を介して吸気側合流空間28aから各ポンプ室12a~12d内に流体を流入させ、ダイヤフラム40A,40Bの開口49、弁座部材30A,30Bの排気弁38及びパッキン部材29A,29Bの開口を介して各ポンプ室12a~12dから排気側合流空間28bに流体を流出させるための連通溝54が形成されている。
【0036】
駆動機構60の駆動モータ61は、その回転軸62がベース部材20の貫通孔25を介して第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bの各平面(固定部48)に対して平行に延びるよう、ベース部材20の取付凹部24に取り付けられている。駆動モータ61は、種々の公知の駆動モータを採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0037】
第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bは、所謂ヨークであり、
図2~
図4に示すように、第1の揺動体64Aが第1のダイヤフラム40Aに対応して設けられており、第2の揺動体64Bが第2のダイヤフラム40Bに対応して設けられている。各揺動体64A,64Bは、
図2~
図4に示すように、回転軸62に対して偏心して取り付けられた偏心部65A,65Bと、該偏心部65A,65Bにベアリング67を介して取り付けられた取付部66と、該取付部66から一方のダイヤフラム部42aに亘って延びる第1腕部68と、該取付部66から他方のダイヤフラム部42bに亘って延びる第2腕部69とを備えている。
【0038】
各偏心部65A,65Bは、
図2~
図4に示すように、回転軸62の中心軸から径方向に所定量偏心した円筒状に形成された偏心軸であり、図示しないビス等により駆動モータ61の回転軸62に相対回転不能かつ軸方向に移動不能に固着されている。第1実施形態において、第1の揺動体64Aの偏心部65Aと、第2の揺動体64Bの偏心部65Bとは、一体的に形成されており、互いに同一の方向に偏心していると共に、その偏心量も同一である。なお、これら偏心部65A,65Bは、別々の独立した部材としても良い。偏心部65A,65Bは、このような偏心構造を有することにより、駆動モータ61による回転運動を揺動体64A,64Bの揺動運動、更にはダイヤフラム部42a,42bの作動面44の進退移動に変換するよう構成されている。
【0039】
取付部66は、
図2~
図4に示すように、ベアリング67を嵌め込み可能な円形状の開口を有しており、ベアリング67を介して、偏心部65A,65Bに相対回転可能かつ軸方向に移動不能に固着されている。各取付部66は、第1腕部68及び第2腕部69よりも肉薄に形成されており、第1の揺動体64Aの取付部66と第2の揺動体64Bの取付部66とを組み合わせた際に、第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bの各第1腕部68,68と、第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bの各第2腕部69,69とが、それぞれ鉛直方向に沿って整列するよう構成されている。
【0040】
第1腕部68は、
図2~
図4に示すように、ダイヤフラム40A,40Bの一方のダイヤフラム部42aの図心(中心)45にねじ等の締結手段(図示せず)で固定されており、第2腕部69は、ダイヤフラム40A,40Bの他方のダイヤフラム部42bの図心(中心)45にねじ等の締結手段(図示せず)で固定されている。なお、第1腕部68及び第2腕部69の固定位置は、ダイヤフラム部42a,42bの作動面44の範囲内であれば、図心(中心)45でなくても良い。また、ダイヤフラム部42a,42bの作動面44と第1腕部68及び第2腕部69とが図中のX方向及びZ方向に相対的に動けない構造であれば、例えば回転可能な固定法や、傾きが許容される固定法としも良い。
【0041】
第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bは、第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bの各平面(固定部48)と直交する方向における、第1のダイヤフラム40Aの平面とベアリング67の中心Cとの間の距離が、同方向における第2のダイヤフラム40Bの平面とベアリング67の中心Cとの間の距離と等しくなるよう構成されている。また、各揺動体64A,64Bは、
図5(a)に示すように、上記平面とベアリング67の中心Cとの間の距離が、2つのダイヤフラム部42a,42bの図心間距離Pよりも小さくなるよう構成されており、好適には、該図心間距離Pの半分(P/2)となるよう構成されている。
【0042】
第1実施形態に係る第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bによれば、このように上記平面とベアリング67の中心Cとの間の距離を上記図心間距離Pの半分(P/2)に設定することにより、4組のポンプ室12a~12dを精度良く90°の位相差で拡張及び収縮させることが可能となるため、
図6に示すように、リップル率(脈流)を最小限に抑えることが可能となる。ただし、
図6から明らかなとおり、上記平面とベアリング67の中心Cとの間の距離が上記図心間距離Pの半分(P/2)ではない場合(例えば±60%ずれた場合)であっても、2相ポンプよりは脈流を大きく減少させることが可能である。
【0043】
ここで、第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bの動作について、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明する。一般に、ダイヤフラム40A,40Bの可撓エッジ46は、作動面44が上下動可能なように比較的薄肉で作られているため、曲げモーメントによる図中のZ方向(作動面44の上下動方向)の剛性は低い。一方、図中のX方向(幅方向)の剛性はせん断力によるため、薄くても比較的剛性が高く維持される。そして、これらZ方向及びX方向の剛性の比は、寸法により20倍から100倍とすることも容易である。このため、可撓エッジ46の形状を適切な形状とすることで、少なくとも実用的な範囲内においては、揺動体64A,64Bの下端部(取付部66)をXZ面内で動かしても、作動面44のZ方向の移動と傾きが許容されるのみで、作動面44がX方向に動くことはない。
【0044】
また、揺動体64A,64Bの下端部(取付部66)を偏心量eの偏心部65A,65Bで回転駆動したとき、その変位は、Z方向成分とX方向成分に分けられる。Z方向成分は、そのままZ方向変位となる。一方、X方向成分は、上述のとおり、ダイヤフラム40A,40BのX方向の剛性により平行移動ができず、ダイヤフラム40A,40Bの可撓エッジ46の面内で、一方の作動面44の図心(中心)45と他方の作動面44の図心(中心)45との間の中間点を支点とする傾きに変換され、さらにこの傾きによって上記寸法関係の場合そのままZ方向の変位に変換される。これにより、
図5(b)に示すダイヤフラム中心の高さZ1とZ2は、Z方向成分とX方向成分の和となるため、以下の式(1)及び式(2)が成り立ち、一方のダイヤフラム部42aと他方のダイヤフラム部42bとの進退動作に90°の位相差が生ずる。
Z1≒esinθ+ecosθ=√2esin(θ+45°)・・・(1)
Z2≒esinθ-ecosθ=√2esin(θ-45°)・・・(2)
【0045】
さらに、第1実施形態では、一方のダイヤフラム部42aと他方のダイヤフラム部42bとの進退動作に90°の位相差が生ずる第1の揺動体64Aに加え、これを180°反転させた第2の揺動体64Bを更に設けることにより、4つのダイヤフラム部42a,42bの作動面44の高さは相互に90°の位相差で上下動することになる。すなわち、4組のポンプ室12a~12dを精度良く90°の位相差で拡張及び収縮させることが可能となる。
【0046】
次に、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1の動作について、
図7を用いて説明する。なお、以下の説明では、第1のヘッド部材50Aの紙面右側のポンプ室形成凹部52aと第1のダイヤフラム40Aの紙面右側のダイヤフラム部42aとの間に形成されたポンプ室を「第1ポンプ室12a」といい、第1のヘッド部材50Aの紙面左側のポンプ室形成凹部52bと第1のダイヤフラム40Aの紙面左側のダイヤフラム部42bとの間に形成されたポンプ室を「第2ポンプ室12b」といい、第2のヘッド部材50Bの紙面左側のポンプ室形成凹部52bと第2のダイヤフラム40Bの紙面左側のダイヤフラム部42bとの間に形成されたポンプ室を「第3ポンプ室12c」といい、第2のヘッド部材50Bの紙面右側のポンプ室形成凹部52aと第2のダイヤフラム40Bの紙面右側のダイヤフラム部42aとの間に形成されたポンプ室を「第4ポンプ室12d」というものとする。
【0047】
第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1は、駆動モータ61の回転軸62を回転させることにより偏心部65A,65Bを回転させ、これにより各揺動体64A,64Bにおける第1腕部68と第2腕部69とを所定の位相差(第1実施形態では90°)で揺動させつつ、第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bを互いに所定の位相差(第1実施形態では180°)で揺動させる。これにより、第1のダイヤフラム40Aの一対のダイヤフラム部42a,42b及び第2のダイヤフラム40Bの一対のダイヤフラム部42a,42bという4つのダイヤフラム部が所定の位相差(第1実施形態では90°)でそれぞれ対応するポンプ室12a~12dに対して進退することとなり、
図7(a)~
図7(d)に示すように、4組のポンプ室12a~12dが90°の位相差で繰り返し拡張及び収縮される。そして、このような4組のポンプ室12a~12dの拡張及び収縮と吸気弁36及び排気弁38との相互作用(整流作用)によって、流体を押し出す動作及び吸い込む動作を交互に連続して行う。
【0048】
ここで、
図7(a)は、偏心部65A,65Bにおける偏心量が最も大きい部位が紙面右側に向けて水平となった状態を基準(0°)として、偏心部65A,65Bを反時計回りに45°回転させた状態を示している。この状態においては、第1ポンプ室12aが最も収縮され、第3ポンプ室12cが最も拡張されている。
図7(b)は、
図7(a)の状態から回転軸62を90°回転させた状態を示しており、この状態では、第2ポンプ室12bが最も収縮され、第4ポンプ室12dが最も拡張されている。
図7(c)は、
図7(b)の状態から回転軸62を90°回転させた状態を示しており、この状態では、第3ポンプ室12cが最も収縮され、第1ポンプ室12aが最も拡張されている。
図7(d)は、
図7(c)の状態から回転軸62を90°回転させた状態を示しており、この状態では、第4ポンプ室12dが最も収縮され、第2ポンプ室12bが最も拡張されている。その後、
図7(d)の状態から回転軸62を90°回転させると
図7(a)の状態に戻り、以降、
図7(a)~
図7(d)の状態を繰り返すこととなる。
【0049】
以上のとおり、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1では、4組のポンプ室12a~12dが90°の位相差で拡張及び収縮されるため、吸気側合流空間28aにて合流された吸気と、排気側合流空間28bで合流された排気とのいずれにおいても、単相(
図8(a)参照)又は2相(
図8(b)参照)の場合と比較して、4相が合成された脈動の少ない流れを得ることができる(
図8(c)参照)。これにより、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1によれば、単相又は2相の場合と比較して、脈流を低減させて流量を安定させることが可能となり、また、動作音が低減されるという利点を有する。
【0050】
特に、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1は、上述したとおり、第1のダイヤフラム40Aが、同一平面上に2つのダイヤフラム部42a,42bが設けられており、また、第2のダイヤフラム40Bが、同一平面上に2つのダイヤフラム部42a,42bが設けられ、該平面が第1のダイヤフラム40Aの平面に対して平行となるよう配されている。このような構成によれば、上下2面の構成でそれぞれが90°の位相差をもった4相4気筒を2相2気筒ポンプとほぼ同様な少ない部品点数で容易に実現することが可能となる。また、上下2面の構成であることから、ベース部材20等の構成部品は基本的に上下割可能な形状とすることができ、これにより、プラスチックやダイカスト等の量産手段に適合できるため、生産性が非常に高く、さらに組立性も良いという利点を有する。さらに、一対の揺動体(ヨーク)以外にロッカーアームや直線運動機構等の可動部品を一切必要としないことから、部品点数面及び信頼性の面で非常に優れ、さらに両ダイヤフラム部間の距離を極限まで接近させる配置が可能となるため、小型化が可能となる。
【0051】
また、気筒数を増やすことでダイヤフラム部42a,42bの個々の面積を反比例的に小さくすることが可能となるため、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1によれば、単相又は2相のポンプよりも小型化を図ることが可能となる。
【0052】
さらに、慣性衝突型の粉塵サンプリング等においては流速が一定であることが求められるため、単相又は2相のポンプでは正確なサンプリングを行うことが困難となるおそれがあるが、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1によれば、脈動の少ない流れを得ることが可能であるため、このような流速が一定であることが求められる目的にも使用することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0054】
[第2実施形態]
例えば、上述した第1実施形態では、第1のダイヤフラム40A及び第2のダイヤフラム40Bが回転軸62を介して互いに平行となるよう対向して配置され、第1の揺動体64Aの偏心部65A及び第2の揺動体64Bの偏心部65Bが互いに同一の方向に偏心するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば
図9に示す第2実施形態のように、第1のダイヤフラム40A´及び第2のダイヤフラム40B´が同一平面上に位置するよう配置され、第1の揺動体64Aの偏心部65A´及び第2の揺動体64Bの偏心部65B´が互いに反対の方向に偏心する構成とすることも可能である。なお、
図9では、説明に必要な構成のみを図示しており、例えばベース部材等の構成は図示を省略している。
【0055】
第2実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、駆動モータ61´は、
図9(a)に示すように、両端に回転軸62a´,62b´を有する両軸タイプのモータであり、紙面左側の回転軸62a´には第1の揺動体64Aの偏心部65A´が固定され、紙面右側の回転軸62b´には第2の揺動体64Bの偏心部65B´が固定されている。これら第1の揺動体64Aの偏心部65A´と第2の揺動体64Bの偏心部65B´とは、既述のとおり、相互に180度の位相差を持つよう反対の方向に固定されている。
【0056】
また、第1のダイヤフラム40A´及び第2のダイヤフラム40B´は、
図9(b)に示すように、紙面奥行き方向に並べて配置されており、これにより、合計4つのダイヤフラム部42a,42bが駆動モータ61´の上方に同一平面内に配置されている。第1の揺動体64A及び第2の揺動体64Bは、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、それぞれ第1腕部68及び第2腕部69が一対のダイヤフラム部42a,42bに固定され、取付部66がそれぞれ偏心部65A´,65B´にベアリング67を介して係合している。
【0057】
各ダイヤフラム部42a,42bは、弁座部材30´と共にポンプ室12´を形成するよう構成されている。弁座部材30´には、吸気弁36及び排気弁38が装着されており、4組のポンプ要素が構成されている。
【0058】
以上のとおり、第2実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプは、第1実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプ1と同様に、一対のダイヤフラム部42a,42bが相互に90°の位相差を有し、かつ、第1のダイヤフラム40A´及び第2のダイヤフラム40B´が全体的に180°の位相差を有するため、4組のポンプ要素がそれぞれ90°の位相差で作動する。そして、4組のポンプ要素における吸排気は、ヘッド部材50´内に設けられた図示しない吸気側合流空間及び排気側合流空間によりそれぞれ合成され、図示しない吸排気ポートに至り脈流の少ないポンプ出力が得られる。
【0059】
なお、第2実施形態に係る4気筒式ダイヤフラムポンプにおいて、
図9では、駆動モータ61´として両軸タイプのモータを使用し、第1のダイヤフラム40A´及び第2のダイヤフラム40B´を駆動モータ61´の両端に配置した例を図示したが、これに限定されず、例えば、駆動モータの回転軸を延長し、第1のダイヤフラム40A´及び第2のダイヤフラム40B´を駆動モータから見て一方向に並べて配置する構成とすることも可能である。
【0060】
また、上述した第1及び第2実施形態において、一対のダイヤフラム部42a,42bが一体に成形されているものとして説明したが、これに限定されず、個々に別々のダイヤフラムとしても良い。また、第2の実施形態においては、4つのダイヤフラム部42a,42bを一体とすることも可能である。
【0061】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
1 4気筒式ダイヤフラムポンプ、10 ポンプ本体、12a~12d,12´ ポンプ室、40A,40A´ 第1のダイヤフラム、40B,40B´ 第2のダイヤフラム、
42a,42b ダイヤフラム部、45 ダイヤフラム部の図心、60 駆動機構、61,61´ 駆動モータ(駆動源)、62,62a´,62b´ 回転軸、64A 第1の揺動体、64B 第2の揺動体、65A,65A´,65B,65B´ 偏心部、66 取付部、67 ベアリング、68 第1腕部、69 第2腕部、C ベアリングの中心、P 図心間距離