(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】支持装置
(51)【国際特許分類】
E04B 9/20 20060101AFI20230407BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20230407BHJP
E04B 9/16 20060101ALI20230407BHJP
F24F 1/0047 20190101ALI20230407BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
E04B9/20 C
E04B9/00 K
E04B9/16 B
F24F1/0047
F16B37/04 K
(21)【出願番号】P 2019032338
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-155346(JP,U)
【文献】特開2017-146064(JP,A)
【文献】実開昭50-153715(JP,U)
【文献】特開2017-218835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
F24F 1/0047
F16B 37/04
F16M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置であって、
上面及び下面によって挟まれた内側に中空空間を有し、前記上面及び前記下面のうちの少なくとも一方の面に長手方向に沿って延びるスリットが形成された一対の上段フレーム材と、
上面及び下面によって挟まれた内側に中空空間を有し、前記上面及び前記下面のうちの少なくとも一方の面に長手方向に沿って延びるスリットが形成され、前記一対の上段フレーム材の下面側に配置される一対の下段フレーム材と、
前記一対の上段フレーム材と前記一対の下段フレーム材とを互いに直交させた状態で井桁状に連結する直交連結部材と、
前記天井構造から垂下する吊り部材を前記一対の上段フレーム材の上面に連結する吊り部材連結部材と、
前記一対の下段フレーム材の下面に装着され、前記天井吊り下げ物を吊り下げた状態で支持する支持部材と、
を備え、
前記上段フレーム材に形成された前記スリットに沿って前記吊り部材連結部材又は前記直交連結部材が前記上段フレーム材の長手方向へ相対移動するとき、前記吊り部材連結部材及び前記直交連結部材が互いに干渉することなく
互いの位置を超えて移動可能であり、前記吊り部材連結部材又は前記直交連結部材が前記上段フレーム材の長手方向端部近傍まで移動可能であり、
前記下段フレーム材に形成された前記スリットに沿って前記支持部材又は前記直交連結部材が前記下段フレーム材の長手方向へ相対移動するとき、前記支持部材及び前記直交連結部材が互いに干渉することなく
互いの位置を超えて移動可能であり、前記支持部材又は前記直交連結部材が前記下段フレーム材の長手方向端部近傍まで移動可能であることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
前記直交連結部材は、前記上段フレーム材における中空空間の下部領域を占有して前記上段フレーム材の下面に取り付けられ、
前記吊り部材連結部材は、前記上段フレーム材における中空空間の前記下部領域を除く領域を占有して前記吊り部材を前記上段フレーム材の上面に連結することを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記直交連結部材は、前記下段フレーム材における中空空間の上部領域を占有して前記下段フレーム材の上面に取り付けられ、
前記支持部材は、前記下段フレーム材における中空空間の前記上部領域を除く領域を占有して前記天井吊り下げ物を前記下段フレーム材の下面に連結することを特徴とする請求項1又は2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記上段フレーム材に形成される前記スリットは、前記上段フレーム材の下面に形成され、
前記直交連結部材は、前記上段フレーム材に形成された前記スリットに沿って前記上段フレーム材の長手方向へ移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の支持装置。
【請求項5】
前記一対の下段フレーム材を所定の間隔で相互に連結する連結バンド、
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の支持装置。
【請求項6】
前記下段フレーム材に形成される前記スリットは、前記下段フレーム材の下面に形成され、
前記支持部材は、前記下段フレーム材に形成された前記スリットに沿って前記下段フレーム材の長手方向へ移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の支持装置。
【請求項7】
前記下段フレーム材に装着される一対の前記支持部材を所定の間隔で相互に連結し、前記一対の支持部材のうちの一方の支持部材が前記下段フレーム材の長手方向へ移動するとき、他方の支持部材を同一方向へ移動させる連動部材、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の支持装置。
【請求項8】
前記直交連結部材は、前記一対の上段フレーム材の下面及び前記一対の下段フレーム材の上面に密着した状態に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置に関し、特に空気調和機などの天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態で支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機などの天井吊り下げ物を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置において、天井吊り下げ物を天井パネルの開口部に合わせるための位置調整を簡単にできるようにした装置が提案されている(例えば特許文献1)。この支持装置は、天井吊り下げ物を支持する支持ボルトを大径の装着孔に挿通し、支持ボルトの位置を装着孔の範囲内で水平方向に移動させることで位置調整を行うことができる構成である。
【0003】
しかしながら、上述した支持装置は、天井吊り下げ物の位置調整を行うことができる範囲が装着孔のサイズに依存しており、半径数cm程度の範囲に限られるため、位置調整を行う際の自由度が低い。そのため、従来の支持装置を用いる場合、天井スラブなどの天井構造に対して吊りボルトを取り付ける際には、吊りボルトの取り付け位置を設計上の正規の位置から数cm程度の範囲内に取り付けなければならない。
【0004】
ところが、建造物が新築される場合、空気調和機などの天井吊り下げ物の設置に関する設計が度々変更されることがある。例えば、天井吊り下げ物の設置方向が変更されたり、天井吊り下げ物のサイズが変更されたりすることがある。このような設計変更においては、天井吊り下げ物の設置位置が数cmを超える範囲で変更になることもある。そのような場合、初期の設計図面に基づいて天井構造に吊りボルトが取り付けられていると、上述した従来の支持装置を用いて適切な状態に天井吊り下げ物を設置することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来の支持装置は、天井吊り下げ物の位置調整を行うことができる範囲が狭いため、天井構造に吊りボルトを設置する際には、天井吊り下げ物のサイズや設置方向を考慮しつつ、天井吊り下げ物を適切な位置に調整できるように吊りボルトを設計上の正規の位置から数cmの範囲内に取り付けなければならず、作業効率が悪いという問題がある。
【0007】
特に、建造物が新築される場合は、初期の設計図面に基づいて予めデッキプレートにインサートが設置され、そのデッキプレートの上側に天井スラブが打設される。ところが、その後の設計変更によって天井吊り下げ物のサイズや設置方向が初期の設計図面から変更されると、デッキプレートに設置したインサートを利用して吊りボルトを取り付けることができなくなる。そのため、作業者は、最新の設計図面に基づいて天井構造にあと施工でアンカーを設置し、そのアンカーに対して吊りボルトを設置しなければならなくなり、作業効率が更に低下する。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、天井吊り下げ物の位置調整を行うことができる範囲を従来よりも広くすることにより、作業効率を改善することができる支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井吊り下げ物(100)を天井構造から吊り下げた状態に支持する支持装置(1)であって、上面及び下面によって挟まれた内側に中空空間(25)を有し、前記上面及び前記下面のうちの少なくとも一方の面に長手方向に沿って延びるスリット(26)が形成された一対の上段フレーム材(11,12)と、上面及び下面によって挟まれた内側に中空空間(25)を有し、前記上面及び前記下面のうちの少なくとも一方の面に長手方向に沿って延びるスリット(26)が形成され、前記一対の上段フレーム材(11,12)の下面側に配置される一対の下段フレーム材(13,14)と、前記一対の上段フレーム材(11,12)と前記一対の下段フレーム材(13,14)とを互いに直交させた状態で井桁状に連結する直交連結部材(15)と、前記天井構造から垂下する吊り部材(110)を前記一対の上段フレーム材(11,12)の上面に連結する吊り部材連結部材(16)と、前記一対の下段フレーム材(13,14)の下面に装着され、前記天井吊り下げ物(100)を吊り下げた状態で支持する支持部材(4)と、を備え、前記上段フレーム材(11,12)に形成された前記スリット(26)に沿って前記吊り部材連結部材(16)又は前記直交連結部材(15)が前記上段フレーム材(11,12)の長手方向へ相対移動するとき、前記吊り部材連結部材(16)及び前記直交連結部材(15)が互いに干渉することなく互いの位置を超えて移動可能であり、前記吊り部材連結部材(16)又は前記直交連結部材(15)が前記上段フレーム材(11,12)の長手方向端部近傍まで移動可能であり、前記下段フレーム材(13,14)に形成された前記スリット(26)に沿って前記支持部材(4)又は前記直交連結部材(15)が前記下段フレーム材(13,14)の長手方向へ相対移動するとき、前記支持部材(4)及び前記直交連結部材(15)が互いに干渉することなく互いの位置を超えて移動可能であり、前記支持部材(4)又は前記直交連結部材(15)が前記下段フレーム材(13,14)の長手方向端部近傍まで移動可能であることを特徴とする構成である。
【0010】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する支持装置(1)において、前記直交連結部材(15)は、前記上段フレーム材(11,12)における中空空間(25)の下部領域(R2)を占有して前記上段フレーム材(11,12)の下面に取り付けられ、前記吊り部材連結部材(16)は、前記上段フレーム材(11,12)における中空空間(25)の前記下部領域(R2)を除く領域(R1)を占有して前記吊り部材(110)を前記上段フレーム材(11,12)の上面に連結することを特徴とする構成である。
【0011】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する支持装置(1)において、前記直交連結部材(15)は、前記下段フレーム材(13,14)における中空空間(25)の上部領域(R3)を占有して前記下段フレーム材(13,14)の上面に取り付けられ、前記支持部材(4)は、前記下段フレーム材(13,14)における中空空間(25)の前記上部領域(R3)を除く領域(R4)を占有して前記天井吊り下げ物(100)を前記下段フレーム材(13,14)の下面に連結することを特徴とする構成である。
【0012】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する支持装置(1)において、前記上段フレーム材(11,12)に形成される前記スリット(26)は、前記上段フレーム材(11,12)の下面に形成され、前記直交連結部材(15)は、前記上段フレーム材(11,12)に形成された前記スリット(26)に沿って前記上段フレーム材(11,12)の長手方向へ移動することを特徴とする構成である。
【0013】
第5に、本発明は、上記第4の構成を有する支持装置(1)において、前記一対の下段フレーム材(13,14)を所定の間隔で相互に連結する連結バンド(8)を更に備えることを特徴とする構成である。
【0014】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの構成を有する支持装置(1)において、前記下段フレーム材(13,14)に形成される前記スリット(26)は、前記下段フレーム材(13,14)の下面に形成され、前記支持部材(4)は、前記下段フレーム材(13,14)に形成された前記スリット(26)に沿って前記下段フレーム材(13,14)の長手方向へ移動することを特徴とする構成である。
【0015】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する支持装置(1)において、前記下段フレーム材(13,14)に装着される一対の前記支持部材(4,4)を所定の間隔で相互に連結し、前記一対の支持部材(4,4)のうちの一方の支持部材(4)が前記下段フレーム材の長手方向へ移動するとき、他方の支持部材(4)を同一方向へ移動させる連動部材(7)を更に備えることを特徴とする構成である。
第8に、本発明は、上記第1乃至第7のいずれかの構成を有する支持装置(1)において、前記直交連結部材は、前記一対の上段フレーム材の下面及び前記一対の下段フレーム材の上面に密着した状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、天井吊り下げ物の位置調整を行うことができる範囲を従来よりも広くすることにより、作業効率を改善することができるようになる。また、例えば建造物が新築される場合において天井構造に設置される天井吊り下げ物のサイズや設置方向が初期の設計から変更されたとしても、初期の設計に基づいて設置された吊りボルトなどの吊り部材を利用して天井吊り下げ物を適切な位置に設置することが可能であり、あと施工で行われるアンカーの設置作業の頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における支持装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の支持装置が天井吊り下げ物を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。
【
図3】上段フレーム材及び下段フレーム材の構成例を示す図である。
【
図4】上段フレーム材に設けられる連結部を示す図である。
【
図5】下段フレーム材に対する支持部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図6】直交連結部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図7】上段フレーム材と下段フレーム材とを直交連結部材が連結した状態の断面構造を示す図である。
【
図8】連結バンド及び連動部材の取り付け態様を例示する図である。
【
図9】第1本実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のY方向の移動範囲を示す図である。
【
図10】第1実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のX方向の移動範囲を示す図である。
【
図11】支持装置による天井吊り下げ物の位置調整可能な範囲を示す図である。
【
図12】第2実施形態の支持装置が天井吊り下げ物を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。
【
図13】下段フレーム材に対する支持部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図14】直交連結部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図15】第2実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のY方向の移動範囲を示す図である。
【
図16】第2実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のX方向の移動範囲を示す図である。
【
図17】第3実施形態の支持装置が天井吊り下げ物を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。
【
図18】上段フレーム材に対する吊り部材連結部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図19】第3実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のY方向の移動範囲を示す図である。
【
図20】第3実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のX方向の移動範囲を示す図である。
【
図21】第4実施形態の支持装置が天井吊り下げ物を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。
【
図22】直交連結部材の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図23】第4実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のY方向の移動範囲を示す図である。
【
図24】第4実施形態の支持装置を使用した場合の天井吊り下げ物のX方向の移動範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である支持装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、支持装置1が天井吊り下げ物100を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。この支持装置1は、空気調和機や照明器具、ダクト、各種配管などの様々な天井吊り下げ物100を天井スラブなどの天井構造から吊り下げた状態で支持する装置である。本実施形態では、天井吊り下げ物100の一例として、天井設置タイプの空気調和機101を例示する。尚、
図1及び
図2に示すXYZ三次元直交座標系は、他の図に示すXYZ三次元直交座標系と共通する座標系である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、支持装置1は、Y方向に沿って配置される一対の上段フレーム材11,12と、X方向に沿って配置される一対の下段フレーム材13,14とが井桁状に組み付けられて構成される矩形枠体2を有している。支持装置1は、その矩形枠体2の上段フレーム材11,12に対して吊りボルトなどの複数の吊り部材110が連結され、天井構造に取り付けられる。また、支持装置1は、下段フレーム材13,14に対して支持部材4が取り付けられ、その支持部材4を介して天井吊り下げ物100を吊り下げた状態で支持する。
【0021】
矩形枠体2は、一対の上段フレーム材11,12と、一対の上段フレーム材11,12の下面側に配置される一対の下段フレーム材13,14と、それら一対の上段フレーム材11,12と一対の下段フレーム材13,14の4つの交点に配置される直交連結部材15とを備えて構成される。直交連結部材15は、一対の上段フレーム材11,12と一対の下段フレーム材13,14とを互いに直交させた状態で井桁状に連結する部材である。本実施形態の支持装置1は、直交連結部材15が上段フレーム材11,12の長手方向(Y方向)に沿って移動可能である。そのため、矩形枠体2における4つの交点の位置を、Y方向に変位させることができる。
【0022】
図3は、上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14の構成例を示す図である。上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14は、例えばリップ溝形鋼又はレースウェイなどの鋼材によって構成される。
図3(a)に示すように、フレーム材11,12,13,14は、矩形状の断面を構成する4つの壁面21,22,23,24を有し、それら4つの壁面21,22,23,24の内側に中空空間25を有している。例えばフレーム材11,12,13,14は、
図3(b)に示すように長方形の断面形状となっている。その長方形の断面形状において長辺を成す壁面21,22が上下方向に配置される。そしてフレーム材11,12,13,14は、長辺を成す2つの壁面21,22のうちの一方の壁面21に形成されるスリット26を有している。このスリット26は、壁面21の幅方法中央部においてフレーム材11,12,13,14の長手方向に沿って一方の端部から他方の端部まで形成されている。そのため、フレーム材11,12,13,14を構成する4つの壁面21,22,23,24のうちの1つの壁面21は、中央のスリット26によって左右2つの壁部21a,21bに分断された構造となっている。そして本実施形態の支持装置1は、上段フレーム材11,12においてスリット26が形成されている壁面21を下面に向けて設置すると共に、下段フレーム材13,14においてもスリット26が形成されている壁面21を下面に向けて設置することによって矩形枠体2が形成されている。すなわち、本実施形態の矩形枠体2は、上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14の双方においてスリット26が形成されている壁面21が下面となり、スリット26が形成されていない壁面22が上面となる。
【0023】
尚、スリット26によって分断される壁部21a,21bは、必ずしも壁面22に平行であるものに限られず、例えば
図3(b)に示すように中空空間25に向けて傾斜したものであっても構わない。
【0024】
図1及び
図2に戻り、支持装置1は、上段フレーム材11,12の上面側所定位置に天井構造から垂下する吊りボルトなどの吊り部材110を連結する連結部3を有している。すなわち、上段フレーム材11の上面において、長手方向中心から+Y方向及び-Y方向に所定距離となる2箇所の位置に連結部3が設けられている。同様に、上段フレーム材12の上面において、長手方向中心から+Y方向及び-Y方向に所定距離となる2箇所の位置に連結部3が設けられる。これら4箇所の連結部3には、吊り部材連結部材16が取り付けられる。この吊り部材連結部材16に対して吊り部材110が連結されることにより、上段フレーム材11,12の上面側4箇所の連結部3に対して吊り部材110が連結される。
【0025】
図4は、上段フレーム材11,12に設けられる連結部3を示す図である。
図4(a)に示すように、上段フレーム材11,12の連結部3は、上段フレーム材11,12の上面(壁面22)に形成される孔27と、その孔27に装着される吊り部材連結部材16とを備えて構成される。吊り部材連結部材16は、吊り部材110を連結して保持する連結保持金具30と、ボルト34と、ナット35とを備えている。連結保持金具30は、例えば孔27と同径の孔32が形成された長方形状の金属平板の一端に吊り部材110を保持するためにU字状に切り欠いた保持部31を有し、他端に下方に折り曲げられた係止部33を有する。係止部33は、上段フレーム材11,12の側面と係合することにより、連結保持金具30の回転を防止して連結保持金具30の姿勢を安定化させる機能を有している。また、ボルト34の雄螺子部分の直径は、吊り部材110の直径と略同径であり、上段フレーム材11,12に形成されているスリット26の幅よりも小さい直径である。
【0026】
そして連結保持金具30の孔32が上段フレーム材11,12の上面に形成された孔27と一致するように上段フレーム材11,12の上面に配置された状態で、ボルト34が上段フレーム材11,12の下面側から孔27,32に挿通され、上段フレーム材11,12の上面側に突出するボルト34の先端部に対してナット35が装着されることにより、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の上面に取り付けられる。
【0027】
図4(b)は、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の上面に取り付けられた状態の断面構造を示している。
図4(b)に示すように、吊り部材連結部材16は、上段フレーム材11,12の上側の領域に取り付けられる。特に、上段フレーム材11,12の内側にはボルト34のボルト頭部34aが配置され、このボルト頭部34aは、上段フレーム材11,12の中空空間25を上部領域R1と下部領域R2とに二分割したときに上部領域R1に収まるように取り付けられる。本実施形態では、上部領域R1及び下部領域R2は、上段フレーム材11,12の内側の中空空間25を上下に二等分した領域となっている。ただし、上部領域R1と下部領域R2とは、必ずしも中空空間25を二等分した領域には限られず、一方が他方よりも大きい領域であっても構わない。このように吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の中空空間25において上部領域R1に取り付けられることで、中空空間25の下部領域R2が空き領域となる。
【0028】
上記のような吊り部材連結部材16において、連結保持金具30の保持部31を挟み込むようにして吊り部材110に2つのナットを締着させることにより、吊り部材110が吊り部材連結部材16に固定される。
【0029】
本実施形態では、吊り部材連結部材16が連結保持金具30を介して吊り部材110を矩形枠体2に固定する場合を例示するが、矩形枠体2に対する吊り部材110の取り付け態様はこれに限られるものではない。例えば、吊り部材110の下端部を孔27に挿通し、その下端部にナットを締着することにより、吊り部材110を矩形枠体2に連結するようにしても良い。この場合、上段フレーム材11,12の上面側にもナットを締着することが好ましい。このような取り付け態様では、上段フレーム材11,12の上面を挟んで吊り部材110に装着される一対のナットによって吊り部材連結部材16が構成される。このような取り付け態様においても、吊り部材110に装着されるナットは、上段フレーム材11,12における中空空間25の上部領域R1に取り付けられ、下部領域R2を空き領域とすることができる。
【0030】
再び
図1及び
図2に戻り、支持装置1は、さらに、下段フレーム材13,14の下面側に天井吊り下げ物100を支持する支持部材4が取り付けられる。例えば、下段フレーム材13には、所定の間隔で一対の支持部材4,4が取り付けており、下段フレーム材14にも、所定の間隔で一対の支持部材4,4が取り付けられている。これらの支持部材4は、支持ボルト17と、ナット18とを備え、支持ボルト17が下段フレーム材13,14の下面から下方へ延びるように取り付けられる。支持ボルト17は、吊り部材110と略同径の雄螺子部材であり、下段フレーム材13,14に形成されているスリット26の幅よりも小さい直径である。そして支持ボルト17は、下段フレーム材13,14のスリット26に差し込まれた状態で下段フレーム材13,14に支持される。ナット18は、例えば軸方向の長さが一般的なナットよりも長いロングナットである。このナット18は、支持ボルト17を下段フレーム材13,14の下面に固定するためのものである。
【0031】
図5は、下段フレーム材13,14に対する支持部材4の取り付け態様の一例を示す図である。支持部材4は、上述した支持ボルト17及びナット18の他に、矩形平板状の角ナット19を有している。角ナット19は、その中央に支持ボルト17と螺合する雌螺子孔19aを有する。
図5(a)に示すように、ナット18は、予め支持ボルト17の上部に装着される。このとき、ナット18は、その上端部から、支持ボルト17の上端部分を所定長さ以上突出させた状態に装着される。そしてナット18から上方に突出した状態となる支持ボルト17の上端部分に角ナット19が装着される。角ナット19は、その幅寸法が下段フレーム材13,14の上述した壁部23,24の間隔よりも小さく、中空空間25の内側に収容可能である。そのため、
図5(b)に示すように、角ナット19は、支持ボルト17の上端部分に装着された状態で下段フレーム材13,14の内側に収容される。このとき、支持ボルト17は、スリット26に挿通された状態となる。
【0032】
支持部材4の角ナット19が下段フレーム材13,14の中空空間25に挿入されると、
図5(c)に示すように、角ナット19の周縁部がスリット26によって分断された2つの壁部21a,21bと係合し、支持ボルト17を吊り下げた状態で支持する。また、角ナット19は、下段フレーム材13,14の内側に収容されると、その周縁部が壁部23,24と干渉するため、軸周りに回動しない状態となる。尚、ナット18の直径は、下段フレーム材13,14に形成されているスリット26の幅よりも大きい直径である。
【0033】
このような支持部材4は、
図5(c)に示すように、下段フレーム材13,14の下側の領域に取り付けられる。すなわち、下段フレーム材13,14の内側には支持ボルト17の上端部分と螺合した状態の角ナット19が配置されており、その角ナット19は、下段フレーム材13,14の中空空間25を上部領域R3と下部領域R4とに二分割したときに下部領域R4に収まるように取り付けられる。本実施形態では、上部領域R3及び下部領域R4は、下段フレーム材13,14の内側の中空空間25を上下に二等分した領域となっている。ただし、上部領域R3と下部領域R4とは、必ずしも中空空間25を二等分した領域には限られず、一方が他方よりも大きい領域であっても構わない。このように支持部材4が下段フレーム材13,14の中空空間25において下部領域R4に取り付けられることで、中空空間25の上部領域R3が空き領域となる。
【0034】
角ナット19が下段フレーム材13,14の内側に収容されたとき、下段フレーム材13,14の下面に相当する壁部21a,21bとナット18の上端部との間に隙間Dを形成しておくことにより、支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向に沿ってスライド移動させることができる。そして支持部材4の位置が決まれば、ナット18を下段フレーム材13,14の下面に対して締め付けることにより、支持部材4を下段フレーム材13,14に固定することができる。
【0035】
下段フレーム材13,14に取り付けられる支持部材4は、支持ボルト17の下段近傍位置に天井吊り下げ物100が取り付けられ、天井吊り下げ物100を吊り下げた状態で支持する。例えば、天井吊り下げ物100が空気調和機101である場合、空気調和機101の四隅の側面には吊り部材110などを取り付けるための取付片102が設けられている。支持部材4は、支持ボルト17の下端部をその取付片102に固定することにより、天井吊り下げ物100を支持する状態となる。
【0036】
次に、上段フレーム材11,12と下段フレーム材13,14とを連結する直交連結部材15について説明する。
図6は、直交連結部材15の取り付け態様の一例を示す図である。尚、
図6では、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを直交させた状態に連結する直交連結部材15を例示している。この直交連結部材15は、下段フレーム材14の上面に固定されるベースプレート40と、上段フレーム材12の中空空間25に収容した状態に配置されるスライドプレート45と、ボルト51,53,55と、ナット52,54,56とを備える構成である。
【0037】
下段フレーム材14の上面において直交連結部材15を取り付ける位置には、ボルト53,55を挿通するための2つの孔28a,28bが所定間隔で形成される。これらの孔28a,28bは、下段フレーム材14の長手方向に沿ってX方向に形成される。
【0038】
ベースプレート40は、例えば平面視略正方形状の金属板であり、概ねその半分の領域が下段フレーム材14の上面に接するように配置され、残りの半分の領域が下段フレーム材14の上面からY方向へはみ出した状態に配置される。このベースプレート40には、ボルト51,53,55を挿通するための3つの孔41,42,43が形成される。これら3つの孔41,42,43のうち、孔42,43はボルト53,55を挿通するための孔であり、下段フレーム材14の上面に形成された2つの孔28a,28bと同じ間隔に形成される。また、孔41は、ボルト51を挿通するための孔であり、孔42からY方向に所定間隔の位置に形成される。つまり、孔41,42の中心を結び線と、孔42,43の中心を結ぶ線は、互いに直交する。尚、孔41,42の距離と、孔42,43の距離とを等しい距離としても良い。
【0039】
スライドプレート45は、例えば平面視長方形状の金属板であり、短辺の長さが上段フレーム材12の中空空間25の幅よりも短く形成される。このスライドプレート45には、ボルト51,53を挿通するための2つの孔46,47が形成される。これらの2つの孔46,47の距離は、ベースプレート40に形成される孔41,42の距離と等しくなるように形成される。
【0040】
そしてベースプレート40の孔42,43を下段フレーム材14の孔28a,28bに合致させた状態で下段フレーム材14の下側からボルト53,55を孔28a,28bに挿通し、さらにベースプレート40の孔42,43に挿通する。孔43から上方に突出するボルト55の先端にはナット56を装着する。これに対し、孔42から上方に突出するボルト53の先端には、さらにスライドプレート45の孔47を挿通し、スライドプレート45の上方に突出する部分にナット54を装着する。また、ボルト51は、スライドプレート45の上側から、スライドプレート45の孔46及びベースプレート40の孔41に挿通し、その先端に対してナット52を装着する。このとき、少なくともナット52,54は、各ボルト51,53に対してきつく締め付けるのではなく、遊びのある緩い状態で各ボルト51,53に装着する。ただし、ボルト55に装着されるナット56は、予めきつく締め付けておいても良い。これにより、ベースプレート40は、下段フレーム材14の上面に対して連結された状態となる。
【0041】
スライドプレート45に取り付けられるボルト51,53とナット52,54とが遊びのある緩い状態に装着されることにより、スライドプレート45は、ベースプレート40との間に一定の間隔を保持することができる。そのため、スライドプレート45のみを上段フレーム材12の端部から内側の中空空間25へ差し込むことができる。このとき、ボルト51,53が上段フレーム材12のスリット26の隙間を通るので、スライドプレート45は、ボルト51,53とナット52,54とが連結された状態で上段フレーム材12の内側へ進入することができる。またボルト51,53とナット52,54の締結状態が緩いため、スライドプレート45は、上段フレーム材12のスリット26に沿ってY方向へ自由に移動可能な状態となる。このようにして直交連結部材15は、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを直交させた状態に連結する。そしてボルト51とナット52とが緩く締結されているとき、直交連結部材15は、上段フレーム材12の長手方向に沿って相対的に移動可能な状態となる。
【0042】
図7は、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを直交連結部材15が連結した状態の断面構造を示す図である。
図7に示すように、上段フレーム材12の中空空間25には、スライドプレート45とナット54とが配置される。尚、
図7では、図示を省略しているが、ボルト51のボルト頭部も上段フレーム材12の中空空間25に配置される。そしてスライドプレート45、ナット54及びボルト51のボルト頭部は、上段フレーム材12の中空空間25において上部領域R1を除く下部領域R2に収まるように配置される。したがって、直交連結部材15が上段フレーム材12の長手方向(Y方向)に沿って移動するとき、直交連結部材15は、上部領域R1に取り付けられている吊り部材連結部材16と干渉することがなく、吊り部材連結部材16の取り付け位置を通過して移動することができる。つまり、直交連結部材15は、上段フレーム材12の長手方向に沿って相対的に移動するとき、上段フレーム材12における吊り部材110の連結位置を通過することができるため、Y方向に広い範囲で移動することができるのである。
【0043】
また
図7に示すように、下段フレーム材14の中空空間25には、ボルト53及びボルト55のボルト頭部が配置される。そしてボルト53及びボルト55のボルト頭部は、下段フレーム材14の中空空間25において下部領域R4を除く上部領域R3に収まるように配置される。したがって、支持部材4が下段フレーム材14の長手方向(X方向)に移動するとき、支持部材4の角ナット19及び支持ボルト17の上端部がボルト53及びボルト55のボルト頭部と干渉することがなく、支持部材4は、直交連結部材15の取り付け位置を通過して移動することができる。つまり、支持部材4、下段フレーム材14の長手方向に沿って相対的に移動するとき、下段フレーム材14における直交連結部材15の設置位置を通過することができるため、X方向に広い範囲で移動することができるのである。
【0044】
上記においては、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを連結する直交連結部材15を例示したが、他の位置に設けられる直交連結部材15についても上記と同様である。
【0045】
したがって、本実施形態の支持装置1は、
図2に示すように、支持部材4が天井吊り下げ物100を支持した状態において、下段フレーム材13,14を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置をY方向に沿って広い範囲で調整することができる。そして上段フレーム材11,12に対する下段フレーム材13,14の位置が決まれば、電動工具などを用いて上述したナット52を締め付けることにより、ベースプレート40とスライドプレート45との間に上段フレーム材11,12の下面(壁部21a,21b)が挟着し、下段フレーム材13,14を上段フレーム材11,12に対して固定することができる。
【0046】
また、本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100を支持している支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向に沿って移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置をX方向に沿って広い範囲で調整することができる。そして下段フレーム材13,14に対する支持部材4の位置が決まれば、ナット18を下段フレーム材13,14の下面に対して締め付けることにより、ナット18と角ナット19との間に下段フレーム材13,14の下面(壁部21a,21b)が挟着し、支持部材4を下段フレーム材13,14に対して固定することができる。
【0047】
ところで、下段フレーム材13,14を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って移動させるとき、一対の下段フレーム材13,14を同時に移動させることが好ましい。そのため、本実施形態の支持装置1は、一対の下段フレーム材13,14を所定の間隔で相互に連結する連結バンド8を備えている。また、支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向に沿って移動させるときにも、各下段フレーム材13,14に設けられている一対の支持部材4を同時に移動させることが好ましい。そのため、本実施形態の支持装置1は、各下段フレーム材13,14に装着される一対の支持部材4を所定の間隔で相互に連結して一対の支持部材4を連動させる連動部材7を備えている。このような連動部材7は、2つの下段フレーム材13,14のそれぞれに対して設けられる。
【0048】
図8は、連結バンド8及び連動部材7の取り付け態様を例示する図である。連結バンド8は、例えば天井吊り下げ物100のY方向の寸法に応じた長さを有する金属製のバンドである。この連結バンド8は、両端部にL字状に折り曲げられた係止部を有し、その係止部を一対の下段フレーム材13,14の側面に係合させるように取り付けられる。例えば、連結バンド8は、一対の下段フレーム材13,14の中央に配置され、ビス9などを用いて下段フレーム材13,14の上面に固定される。これにより、一対の下段フレーム材13,14は、一体構造となり、一方のフレーム材がY方向に沿って移動すると、それに連動して他方のフレーム材もY方向に沿って移動するようになる。したがって、作業者は、天井吊り下げ物100のY方向の位置を調整する際、2つの下段フレーム材13,14を同時に移動させる必要がなく、一方の下段フレーム材13又は14を移動させるだけで2つの下段フレーム材13,14を同時に移動させることができるようになり、作業効率が向上する。
【0049】
また、連動部材7は、例えば天井吊り下げ物100のX方向の寸法に応じた長さを有する金属製の部材である。この連動部材7は、その両端部に、支持ボルト17の外周面と係合するU字状の係合部を有している。連動部材7は、そのU字状の係合部を、下段フレーム材13,14の下面とナット18との隙間の支持ボルト17に差し込むことによって装着される。尚、連動部材7には、必要に応じて、下段フレーム材13,14の下面とナット18との隙間から離脱しないようにするための離脱防止機構を設けても良い。連動部材7の両端部において係合部が支持ボルト17の外周面と係合した状態になると、各下段フレーム材13,14に取り付けられている一対の支持部材4は、X方向へ移動する際に互いに連動するようになる。すなわち、一対の支持部材4のうち、一方の支持部材4がX方向に沿って移動すると、それに連動して他方の支持部材4もX方向に沿って移動するようになる。したがって、作業者は、天井吊り下げ物100のX方向の位置を調整する際、4つの支持部材4を同時に移動させる必要がなく、各下段フレーム材13,14に設けられている一方の支持部材4をX方向へ移動させるだけで4つの支持部材4を同時に移動させることができるようになり、作業効率が向上する。
【0050】
図9は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のY方向の移動範囲を示す図である。
図9(a)は、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に+Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて+Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させる際には、
図9(a)に示すように、下段フレーム材13を上段フレーム材11,12の+Y方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0051】
また、
図9(b)は、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に-Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて-Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させる際には、
図9(b)に示すように、下段フレーム材14を上段フレーム材11,12の-Y方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0052】
図10は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のX方向の移動範囲を示す図である。
図10(a)は、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、下段フレーム材13,14に対して支持部材4を+X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+X方向へ移動させることができる。このとき、支持部材4は、下段フレーム材13,14において直交連結部材15が配置されている位置を超えて+X方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+X方向に移動させる際には、
図10(a)に示すように、支持部材4を下段フレーム材13,14の+X方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0053】
また、
図10(b)は、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、下段フレーム材13,14に対して支持部材4を-X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-X方向へ移動させることができる。このとき、支持部材4は、下段フレーム材13,14において直交連結部材15が配置されている位置を超えて-X方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-X方向に移動させる際には、
図10(b)に示すように、支持部材4を下段フレーム材13,14の-X方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0054】
図11は、本実施形態の支持装置1による天井吊り下げ物100の位置調整可能な範囲を示す図である。
図11では、天井吊り下げ物100の設置可能位置200を斜線領域で示している。上述したように、本実施形態の支持装置1は、上段フレーム材11,12に形成されたスリット26に沿って直交連結部材15を上段フレーム材11,12の長手方向へ相対移動させるとき、吊り部材連結部材16及び直交連結部材15が互いに干渉することなく、直交連結部材15を上段フレーム材11,12の長手方向端部近傍まで移動させることが可能であり、また、下段フレーム材13,14に形成されたスリット26に沿って支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向へ相対移動させるとき、支持部材4及び直交連結部材15が互いに干渉することなく、支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向端部近傍まで移動させることが可能である。そのため、
図11に示すように、天井吊り下げ物100の設置可能位置200は、支持装置1のXY平面内における占有面積と略同等である。つまり、本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100の可動範囲が従来よりも大きいため、天井吊り下げ物100を簡単且つ効率的に位置調整することが可能であり、従来よりも作業効率を向上させることができるという利点がある。
【0055】
また、本実施形態の支持装置1は、吊り部材連結部材16を取り付けるために上段フレーム材11,12に設ける孔27の位置を調整することにより、吊り部材連結部材16の設置間隔を変更することが可能である。また支持装置1は、直交連結部材15を取り付けるために下段フレーム材13,14に設ける孔28a,28bの位置を調整することにより、一対の上段フレーム材11,12の設置間隔を変更することが可能である。そのため、本実施形態の支持装置1は、天井構造に対する吊り部材110の取り付け位置が数cm以上ずれていたとしても、その吊り部材110を利用して天井吊り下げ物100を適切な位置に吊り下げた状態で支持することができる。
【0056】
さらに本実施形態の支持装置1は、一対の下段フレーム材13,14の設置間隔及び各下段フレーム材13,14の下面側に装着される一対の支持部材4の設置間隔を、天井吊り下げ物100のサイズや設置方向に応じて適宜調整することも可能である。
【0057】
したがって、例えば建造物が新築される場合において、天井吊り下げ物100のサイズや設置方向が初期の設計図面から変更になったとしても、初期の設計図面に基づいてデッキプレートに設置されたインサートに取り付けられる吊りボルトなどの吊り部材110を利用して支持装置1を設置することが可能であり、しかも支持装置1が天井吊り下げ物100を設計変更後の適切な位置で支持することができるようになる。それ故、作業者にとっては、最新の設計図面に基づいて天井構造にあと施工でアンカーを設置する作業などを行う必要がなくなり、効率的に作業を進めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、直交連結部材15が上段フレーム材11,12における中空空間25の下部領域R2を占有して上段フレーム材11,12の下面に取り付けられ、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12における中空空間25の下部領域R2を除く上部領域R1を占有して吊り部材110を上段フレーム材11,12の上面に連結するように配置される。そのため、直交連結部材15が上段フレーム材11,12の長手方向に移動するときには、吊り部材連結部材16と干渉せずに、直交連結部材15を広い範囲で移動させることができるのである。
【0059】
また、本実施形態では、直交連結部材15が下段フレーム材13,14における中空空間25の上部領域R3を占有して下段フレーム材13,14の上面に取り付けられ、支持部材4が下段フレーム材13,14における中空空間25の上部領域R3を除く下部領域R4を占有して天井吊り下げ物100を下段フレーム材13,14の下面に連結するように配置される。そのため、支持部材4が下段フレーム材13,14の長手方向に移動するときには、直交連結部材15と干渉せずに、支持部材4を広い範囲で移動させることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14の双方がスリット26の形成されている面を下面にして構成される支持装置1について説明した。これに対して、本実施形態では、上段フレーム材11,12がスリット26の形成されている面を下面にして設置され、下段フレーム材13,14がスリット26の形成されている面を上面にして設置される支持装置1の一形態について説明する。
【0061】
図12は、第2実施形態の支持装置1が天井吊り下げ物100を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。この支持装置1における矩形枠体2は、上段フレーム材11,12がスリット26の形成された面を下面にして設置されると共に、下段フレーム材13,14がスリット26の形成された面を上面にして設置され、それら上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14が直交連結部材15によって連結されることで構成される。そして本実施形態の支持装置1は、直交連結部材15が上段フレーム材11,12の長手方向に沿って相対的に移動可能であると共に、下段フレーム材13,14の長手方向に沿って相対的に移動可能である。このように直交連結部材15がX方向及びY方向の2方向に対して相対移動することにより、支持装置1は、天井吊り下げ物100の位置を調整できるようになっている。
【0062】
図13は、本実施形態において下段フレーム材13,14に対する支持部材4の取り付け態様を示す図である。本実施形態では、支持部材4が下段フレーム材13,14の下面(スリット26の形成されていない面)に固定される。この支持部材4は、
図13(a)に示すように、支持ボルト17と、ナット18と、角ワッシャー57と、ナット58とを備えている。支持ボルト17及びナット18は、第1実施形態で説明したものと同様である。角ワッシャー57は、矩形平板状のワッシャーであり、その中央に支持ボルト17を挿通する孔57aを有する。ナット58は、支持ボルト17の上端部に装着されるナットである。また本実施形態では、
図13(a)に示すように、下段フレーム材13,14の下面(壁面22)に、支持ボルト17を挿通する孔28が形成される。
【0063】
図13(a)に示すように、ナット18が予め支持ボルト17の上部に装着される。このとき、ナット18は、その上端部から、支持ボルト17の上端部分を所定長さ以上突出させた状態に装着される。そしてナット18から上方に突出した状態となる支持ボルト17の上端部分を下段フレーム材13,14の孔28に挿通し、下段フレーム材13,14の内側で支持ボルト17の上端部分に角ワッシャー57を装着した後、支持ボルト17に対してナット58を装着する。そしてナット58及びナット18を締め付けることにより、支持部材4が下段フレーム材13,14に対して固定される。
【0064】
図13(b)は、支持部材4が取り付けられた下段フレーム材13,14の断面構造を示す図である。
図13(b)に示すように、支持部材4が下段フレーム材13,14に取り付けられると、角ワッシャー57、ナット58及び支持ボルト17の上端部は、下段フレーム材13,14の中空空間25を上部領域R3と下部領域R4とに二分割したときに下部領域R4に収まる状態となり、中空空間25の上部領域R3が空き領域となる。
【0065】
次に、上段フレーム材11,12と下段フレーム材13,14とを連結する直交連結部材15について説明する。
図14は、本実施形態における直交連結部材15の取り付け態様の一例を示す図である。尚、
図14では、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを直交させた状態に連結する直交連結部材15を例示している。この直交連結部材15は、上段フレーム材12の下面側及び下段フレーム材14の上面側に取り付けられるベースプレート40と、上段フレーム材12の中空空間25に収容した状態に配置される第1スライドプレート45aと、下段フレーム材14の中空空間25に収容した状態に配置される第2スライドプレート45bと、ボルト51,53,55と、ナット52,54,56とを備える構成である。尚、ベースプレート40は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0066】
第1スライドプレート45aは、例えば平面視長方形状の金属板であり、短辺の長さが上段フレーム材12の中空空間25の幅よりも短く形成される。第1スライドプレート45には、ボルト51,53を挿通するための2つの孔46a,47aが形成される。これらの2つの孔46a,47aの距離は、ベースプレート40に形成される孔41,42の距離と等しくなるように形成される。
【0067】
第2スライドプレート45bは、例えば第1スライドプレート45aと同様に、平面視長方形状の金属板であり、短辺の長さが下段フレーム材14の中空空間25の幅よりも短く形成される。第2スライドプレート45には、ボルト53,55を挿通するための2つの孔46b,47bが形成される。これらの2つの孔46b,47bの距離は、ベースプレート40に形成される孔42,43の距離と等しくなるように形成される。
【0068】
第1スライドプレート45aは、ベースプレート40の上面側に配置されると共に、2つの孔46a,47aがベースプレート40の孔41,42に合致するように配置される。第2スライドプレート45bは、ベースプレート40の下面側に配置されると共に、2つの孔46b,47bがベースプレート40の孔42,43に合致するように配置される。そしてボルト51は、第1スライドプレート45aの上面側から、孔46a,41に挿通され、ベースプレート40の下面側に突出するボルト先端部にナット52が装着される。またボルト53は、第2スライドプレート45bの下面側から、孔46b,42,47aに挿通され、第1スライドプレート45aの上面側に突出するボルト先端部にナット54が装着される。さらにボルト55は、第2スライドプレート45bの下面側から、孔47b,43に挿通され、ベースプレート40の上面側に突出するボルト先端部にナット56が装着される。このとき、ボルト51,53,55とナット52,54,56は、互いにきつく締め付けるのではなく、遊びのある緩い状態で装着する。
【0069】
第1スライドプレート45a及び第2スライドプレート45bに取り付けられるボルト51,53,55とナット52,54,56とが遊びのある緩い状態に装着されることにより、第1スライドプレート45a及び第2スライドプレート45bは、それぞれベースプレート40との間に一定の間隔を保持することができる。そのため、第1スライドプレート45aを上段フレーム材12の端部から内側の中空空間25へ差し込むことができると共に、第2スライドプレート45bを下段フレーム材14の端部から内側の中空空間25へ差し込むことができる。その結果、直交連結部材15は、上段フレーム材12の長手方向に沿って相対的に移動可能であり、且つ、下段フレーム材14の長手方向に沿って相対的に移動可能な状態で、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを互いに直交させた状態に連結する。
【0070】
上記のように取り付けられる直交連結部材15の断面構造は、第1実施形態で説明したものと同様である。すなわち、上段フレーム材12の中空空間25には、第1スライドプレート45aとナット54とボルト51のボルト頭部とが配置される。そして第1スライドプレート45a、ナット54及びボルト51のボルト頭部は、上段フレーム材12の中空空間25において上部領域R1を除く下部領域R2に収まるように配置される。したがって、直交連結部材15が上段フレーム材12の長手方向(Y方向)に沿って移動するとき、直交連結部材15は、上部領域R1に取り付けられている吊り部材連結部材16と干渉することがなく、吊り部材連結部材16の取り付け位置を通過して移動することができる。つまり、直交連結部材15は、上段フレーム材12の長手方向に沿って相対的に移動するとき、上段フレーム材12における吊り部材110の連結位置を通過することができるため、Y方向に広い範囲で移動することができるのである。
【0071】
また、下段フレーム材14の中空空間25には、第2スライドプレート45bとボルト53,55のボルト頭部とが配置される。そして第2スライドプレート45b及びボルト53,55のボルト頭部は、下段フレーム材14の中空空間25において下部領域R4を除く上部領域R3に収まるように配置される。したがって、直交連結部材15が下段フレーム材14の長手方向(X方向)に沿って移動するとき、直交連結部材15は、下部領域R4に取り付けられている支持部材4と干渉することがなく、支持部材4の取り付け位置を通過して移動することができる。つまり、直交連結部材15は、下段フレーム材14の長手方向に沿って相対的に移動するとき、下段フレーム材14における支持部材4の固定位置を通過することができるため、X方向に広い範囲で移動することができるのである。
【0072】
上記においては、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを連結する直交連結部材15を例示したが、他の位置に設けられる直交連結部材15についても上記と同様である。
【0073】
したがって、本実施形態の支持装置1は、
図12に示すように、支持部材4が天井吊り下げ物100を支持した状態において、下段フレーム材13,14をX方向及びY方向にスライド移動させることが可能であり、天井吊り下げ物100の設置位置をX方向及びY方向の広い範囲で調整することができる。そして上段フレーム材11,12に対する下段フレーム材13,14の位置が決まれば、電動工具などを用いて上述したナット52,56を締め付けることにより、直交連結部材15を上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14に固定することができる。
【0074】
また、本実施形態においても、下段フレーム材13,14を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って移動させるときには、一対の下段フレーム材13,14を一体的に移動させるように構成することが好ましい。そのため、本実施形態の支持装置1は、第1実施形態で説明したように、一対の下段フレーム材13,14を所定の間隔で相互に連結する連結バンド8を備えている。この連結バンド8は、例えば、ビス9などを用いて下段フレーム材13,14の側面に固定される。これにより、一対の下段フレーム材13,14は、一体構造となり、一方のフレーム材がY方向に沿って移動すると、それに連動して他方のフレーム材もY方向に沿って移動するようになる。したがって、作業者は、天井吊り下げ物100のY方向の位置を調整する際、2つの下段フレーム材13,14を同時に移動させる必要がなく、一方の下段フレーム材13又は14を移動させるだけで2つの下段フレーム材13,14を同時に移動させることができるようになり、作業効率が向上する。
【0075】
図15は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のY方向の移動範囲を示す図である。
図15(a)は、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に+Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて+Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させる際には、
図15(a)に示すように、下段フレーム材13を上段フレーム材11,12の+Y方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0076】
また、
図15(b)は、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に-Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて-Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させる際には、
図15(b)に示すように、下段フレーム材14を上段フレーム材11,12の-Y方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0077】
図16は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のX方向の移動範囲を示す図である。
図16(a)は、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に+X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+X方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、下段フレーム材13,14において支持部材4が取り付けられている位置を超えて相対的に-X方向へ移動させることができる。そのため、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させる際には、
図16(a)に示すように、下段フレーム材13,14の-X方向側の端部が上段フレーム材12の側面と同じ位置となるまで移動させることができる。
【0078】
また、
図16(b)は、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に-X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-X方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、下段フレーム材13,14において支持部材4が取り付けられている位置を超えて相対的に+X方向へ移動させることができる。そのため、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させる際には、
図16(b)に示すように、下段フレーム材13,14の+X方向側の端部が上段フレーム材11の側面と同じ位置となるまで移動させることができる。
【0079】
したがって、本実施形態の支持装置1は、第1実施形態と同様に、天井吊り下げ物100の可動範囲が従来よりも大きいため、天井吊り下げ物100を簡単且つ効率的に位置調整することが可能であり、従来よりも作業効率を向上させることができるという利点がある。
【0080】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0081】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14の双方がスリット26の形成されている面を上面にして設置される支持装置1の一形態について説明する。
【0082】
図17は、第3実施形態の支持装置1が天井吊り下げ物100を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。この支持装置1における矩形枠体2は、上段フレーム材11,12がスリット26の形成された面を上面にして設置されると共に、下段フレーム材13,14がスリット26の形成された面を上面にして設置され、それら上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14が直交連結部材15によって連結されることで構成される。そして本実施形態の支持装置1は、直交連結部材15が下段フレーム材13,14の長手方向に沿って相対的に移動可能である。また、本実施形態の支持装置1は、吊り部材連結部材16を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って相対的に移動可能である。このような相対移動によって、本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100の位置をXY平面内で調整できるようになっている。
【0083】
図18は、本実施形態において上段フレーム材11,12に対する吊り部材連結部材16の取り付け態様を示す図である。本実施形態では、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の上面(スリット26の形成されている壁部21a,21b)に対してスライド可能に取り付けられる。
【0084】
図18(a)に示すように、上段フレーム材11,12に取り付けられる吊り部材連結部材16は、吊り部材110を連結して保持する連結保持金具30と、ボルト34と、角ワッシャー57と、ナット35とを備えている。角ワッシャー57には、ボルト34を挿通可能な孔57aが形成されている。そして連結保持金具30及びナット35が上段フレーム材11,12の上面側に配置され、角ワッシャー57とボルト34のボルト頭部とが上段フレーム材11,12の中空空間25に配置される。すなわち、ボルト34は、角ワッシャー57の下面側から孔57a,32に挿通され、連結保持金具30の上面から突出するボルト先端部にナット35が装着される。その状態で角ワッシャー57が上段フレーム材11,12の中空空間25に差し込まれることにより、吊り部材連結部材16は上段フレーム材11,12の上面側に設置される。
【0085】
図18(b)は、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の上面に取り付けられた状態の断面構造を示している。
図18(b)に示すように、吊り部材連結部材16は、上段フレーム材11,12の上側の領域に取り付けられる。特に、上段フレーム材11,12の内側には、ボルト34のボルト頭部34aが配置され、このボルト頭部34aは、上段フレーム材11,12の中空空間25の下部領域R2を除く上部領域R1に収まるように取り付けられる。このように吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の中空空間25において上部領域R1に取り付けられることで、中空空間25の下部領域R2が空き領域となる。
【0086】
尚、本実施形態において上段フレーム材11,12と下段フレーム材13,14とを直交した状態に連結する直交連結部材15は、第1実施形態で説明したものを上下反転させた状態で取り付けられる。また、本実施形態において下段フレーム材13,14に対する支持部材4の取り付け態様は、第2実施形態で説明したものと同様である。
【0087】
図19は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のY方向の移動範囲を示す図である。
図19(a)は、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、吊り部材連結部材16を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って相対的に移動させることが可能である。ただし、吊り部材連結部材16は、吊り部材110が連結されることにより、その位置が固定されている。そのため、本実施形態の支持装置1は、上段フレーム材11,12をY方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて+Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させる際には、
図19(a)に示すように、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の-Y方向側の端部近傍位置となるまで上段フレーム材11,12を+Y方向へ移動させることができる。
【0088】
また、
図19(b)は、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12を-Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて-Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させる際には、
図19(b)に示すように、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の+Y方向側の端部近傍位置となるまで上段フレーム材11,12を-Y方向へ移動させることができる。
【0089】
図20は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のX方向の移動範囲を示す図である。
図20(a)は、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に+X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+X方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、下段フレーム材13,14において支持部材4が取り付けられている位置を超えて相対的に-X方向へ移動させることができる。そのため、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させる際には、
図20(a)に示すように、下段フレーム材13,14の-X方向側の端部が上段フレーム材12の側面と同じ位置となるまで移動させることができる。
【0090】
また、
図20(b)は、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12に対して下段フレーム材13,14を相対的に-X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-X方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、下段フレーム材13,14において支持部材4が取り付けられている位置を超えて相対的に+X方向へ移動させることができる。そのため、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させる際には、
図20(b)に示すように、下段フレーム材13,14の+X方向側の端部が上段フレーム材11の側面と同じ位置となるまで移動させることができる。
【0091】
したがって、本実施形態の支持装置1は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、天井吊り下げ物100の可動範囲が従来よりも大きいため、天井吊り下げ物100を簡単且つ効率的に位置調整することが可能であり、従来よりも作業効率を向上させることができるという利点がある。
【0092】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0093】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、上段フレーム材11,12がスリット26の形成されている面を上面にして設置され、下段フレーム材13,14がスリット26の形成されている面を下面にして設置される支持装置1の一形態について説明する。
【0094】
図21は、第4実施形態の支持装置1が天井吊り下げ物100を吊り下げて支持する状態を示す斜視図である。この支持装置1における矩形枠体2は、上段フレーム材11,12がスリット26の形成された面を上面にして設置されると共に、下段フレーム材13,14がスリット26の形成された面を下面にして設置され、それら上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14が直交連結部材15によって連結されることで構成される。そして本実施形態の支持装置1では、支持部材4が下段フレーム材13,14の長手方向に沿って移動可能であり、また吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の長手方向に沿って相対的に移動可能である。このような相対移動によって、本実施形態の支持装置1は、天井吊り下げ物100の位置をXY平面内で調整できるようになっている。
【0095】
図22は、本実施形態の支持装置1における直交連結部材15の取り付け態様を示す図である。尚、
図22では、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを直交させた状態に連結する直交連結部材15を例示している。この直交連結部材15は、上段フレーム材12の上面及び下段フレーム材14の上面に固定されるベースプレート40と、ボルト51,53,55と、ナット52,54,56とを備える構成である。
【0096】
上段フレーム材12の下面において直交連結部材15を取り付ける位置には、ボルト51,53を挿通するための2つの孔28a,28bが所定間隔で形成される。また、下段フレーム材14の上面において直交連結部材15を取り付ける位置にも、ボルト53,55を挿通するための2つの孔28a,28bが所定間隔で形成される。ベースプレート40は、第1実施形態で説明したものと同様であり、ボルト51,53,55を挿通するための3つの孔41,42,43が形成される。
【0097】
そして上段フレーム材12の孔28a,28bをベースプレート40の孔41,42に合致させるようにして上段フレーム材12をベースプレート40の上面側に配置し、下段フレーム材14の孔28a,28bをベースプレート40の孔42,43に合致させるようにして下段フレーム材14をベースプレート40の下面側に配置する。その状態でボルト51が上段フレーム材12の上側から孔28b,41に挿通され、ベースプレート40の下面側に突出するボルト先端部にナット52が装着される。また、ボルト53は、下段フレーム材14の下側から孔28a,42,28aに挿通され、上段フレーム材12の内側に突出するボルト先端部にナット54が装着される。さらに、ボルト55は、下段フレーム材14の下側から孔28b,43に挿通され、ベースプレート40の上面側に突出するボルト先端部にナット56が装着される。このとき、ボルト51,53,55とナット52,54,56は、互いにきつく締め付けられた状態で固定される。すなわち、本実施形態の直交連結部材15は、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを予め固定した状態に設置される。
【0098】
上記のように取り付けられる直交連結部材15の断面構造は、第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと同様である。すなわち、上段フレーム材12の中空空間25には、ナット54とボルト51のボルト頭部とが配置される。そしてナット54及びボルト51のボルト頭部は、上段フレーム材12の中空空間25において上部領域R1を除く下部領域R2に収まるように配置される。したがって、吊り部材連結部材16が上段フレーム材12の長手方向(Y方向)に沿って相対的に移動するとき、直交連結部材15は、上部領域R1に取り付けられている吊り部材連結部材16と干渉することがない。
【0099】
また、下段フレーム材14の中空空間25には、ボルト53,55のボルト頭部が配置される。そしてボルト53,55のボルト頭部は、下段フレーム材14の中空空間25において下部領域R4を除く上部領域R3に収まるように配置される。したがって、支持部材4が下段フレーム材14の長手方向(X方向)に沿って移動するとき、直交連結部材15は、下部領域R4に取り付けられている支持部材4と干渉することがない。
【0100】
上記においては、上段フレーム材12と下段フレーム材14とを連結する直交連結部材15を例示したが、他の位置に設けられる直交連結部材15についても上記と同様である。
【0101】
したがって、本実施形態の支持装置1は、
図21に示すように、支持部材4が天井吊り下げ物100を支持した状態において、吊り部材連結部材16を上段フレーム材11,12の長手方向(Y方向)に沿って相対移動させることができると共に、支持部材4を下段フレーム材13,14の長手方向(X方向)に沿って相対移動させることができる。そして上段フレーム材11,12に対する吊り部材連結部材16の位置が決まれば、電動工具などを用いて上述したナット35を締め付けることにより、吊り部材連結部材16を上段フレーム材11,12に固定することができる。また、下段フレーム材13,14に対する支持部材4の位置が決まれば、ナット18を下段フレーム材13,14の下面に対して締め付けることにより、支持部材4を下段フレーム材13,14に固定することができる。
【0102】
図23は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のY方向の移動範囲を示す図である。
図23(a)は、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、吊り部材連結部材16を上段フレーム材11,12の長手方向に沿って相対的に移動させることが可能である。ただし、吊り部材連結部材16は、吊り部材110が連結されることにより、その位置が固定される。そのため、本実施形態の支持装置1は、上段フレーム材11,12をY方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて+Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+Y方向へ移動させる際には、
図23(a)に示すように、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の-Y方向側の端部近傍位置となるまで上段フレーム材11,12を+Y方向へ移動させることができる。
【0103】
また、
図23(b)は、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、上段フレーム材11,12を-Y方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-Y方向へ移動させることができる。このとき、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12において吊り部材110が連結されている位置を超えて-Y方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-Y方向へ移動させる際には、
図23(b)に示すように、吊り部材連結部材16が上段フレーム材11,12の+Y方向側の端部近傍位置となるまで上段フレーム材11,12を-Y方向へ移動させることができる。
【0104】
図24は、本実施形態の支持装置1を使用した場合の天井吊り下げ物100のX方向の移動範囲を示す図である。
図24(a)は、天井吊り下げ物100を+X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、下段フレーム材13,14に対して支持部材4を+X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を+X方向へ移動させることができる。このとき、支持部材4は、下段フレーム材13,14において直交連結部材15が配置されている位置を超えて+X方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を+X方向に移動させる際には、
図24(a)に示すように、支持部材4を下段フレーム材13,14の+X方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0105】
また、
図24(b)は、天井吊り下げ物100を-X方向へ移動させた状態を示している。支持装置1は、下段フレーム材13,14に対して支持部材4を-X方向へ移動させることにより、天井吊り下げ物100の設置位置を-X方向へ移動させることができる。このとき、支持部材4は、下段フレーム材13,14において直交連結部材15が配置されている位置を超えて-X方向へ移動することができる。そのため、天井吊り下げ物100を-X方向に移動させる際には、
図24(b)に示すように、支持部材4を下段フレーム材13,14の-X方向側の端部近傍位置まで移動させることができる。
【0106】
尚、本実施形態において、支持部材4をX方向に移動させる際には、第1実施形態で説明した連動部材7を装着し、4つの支持部材4を連動させるようにして位置調整を行うことが好ましい。
【0107】
このように本実施形態の支持装置1は、第1乃至第3実施形態と同様に、天井吊り下げ物100の可動範囲が従来よりも大きいため、天井吊り下げ物100を簡単且つ効率的に位置調整することが可能であり、従来よりも作業効率を向上させることができるという利点がある。
【0108】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1乃至第3実施形態と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0109】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られない。すなわち、本発明は、上記実施形態で説明した構成以外にも種々の変形例を適用することが可能である。
【0110】
例えば上述した各実施形態では、上段フレーム材11,12及び下段フレーム材13,14において上面及び下面のいずれか一方にスリット26が形成されている場合を例示した。しかし、これに限られるものではない。例えば、上段フレーム材11,12は、上面及び下面の双方にスリット26が形成されるものを用いても良い。この場合、吊り部材連結部材16は、上段フレーム材11,12の上面に形成されたスリット26に沿ってY方向に移動可能となり、且つ、直交連結部材15は、上段フレーム材11,12の下面に形成されたスリット26に沿ってY方向に移動可能となる。また、下段フレーム材13,14についても上面及び下面の双方にスリット26が形成されたものを用いても良い。この場合、直交連結部材15は、下段フレーム材13,14の上面に形成されたスリット26に沿ってX方向に移動可能となり、且つ、支持部材4は、下段フレーム材13,14の下面に形成されたスリット26に沿ってX方向に移動可能となる。
【0111】
また上記各実施形態において説明したボルトとナットの位置は相互に入れ替えても良い。例えば、吊り部材連結部材16を取り付けるときのボルト34とナット35の位置を相互に入れ替えても良いし、また、直交連結部材15を取り付けるときのボルト51,53、55とナット52,54,56の位置を相互に入れ替えても良い。
【0112】
また上記実施形態において吊り部材110が取り付けられる天井構造は、天井スラブには限られない。例えば、天井空間に対して架台や構造物が取り付けられる場合には、そのような架台や構造物に対して吊り部材110が取り付けられていても構わない。
【0113】
また上記実施形態では、吊り部材110の一例として、吊りボルトを例示した。しかし、吊り部材110は、必ずしも吊りボルトに限られるものではなく、吊りボルトなどの雄螺子部材とは異なる棒状体であっても構わない。例えば、吊り部材110は、H形鋼や溝形鋼、アングル鋼などの鋼材で構成される支柱状の部材であっても構わない。
【符号の説明】
【0114】
1…支持装置、2…矩形枠体、4…支持部材、7…連動部材、8…連結バンド、11,12…上段フレーム材、13,14…下段フレーム材、15…直交連結部材、16…吊り部材連結部材、25…中空空間、26…スリット、100…天井吊り下げ物、110…吊り部材。