(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】毛様体神経栄養因子受容体リガンド結合剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20230407BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230407BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230407BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230407BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20230407BHJP
C07K 14/79 20060101ALI20230407BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230407BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230407BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230407BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230407BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230407BHJP
A61K 47/62 20170101ALI20230407BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230407BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230407BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20230407BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20230407BHJP
G01N 33/574 20060101ALN20230407BHJP
G01N 33/566 20060101ALN20230407BHJP
G01N 33/53 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
A61K38/17
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C07K16/18
C07K14/76
C07K14/79
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N15/62 Z
A61K47/68
A61K47/62
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
G01N33/574 A
G01N33/566
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2019529901
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(86)【国際出願番号】 US2017064883
(87)【国際公開番号】W WO2018106790
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウ
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、 ジェニファー アール.
(72)【発明者】
【氏名】スウィート、 エリック アレハンドロ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2003年,Vol.278, No.26,pp.23285-23294
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2008年,Vol.283, No.44,pp.30341-30350
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1996年,Vol.271, No.42,pp.26049-26056
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2004年,Vol.279, No.42,pp.43961-43970
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00
C07K 14/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)に特異的に結合する可溶性CNTFRポリペプチドと、
医薬的に許容される担体と、
を含む、医薬組成物であって、
前記可溶性CNTFRポリペプチドが、
野生型CNTFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子受容体(LIFR)に対する前記可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異を含み、その突然変異は配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置177、178、もしくはその両方に存在し、
および/または、
野生型CNTFRポリペプチドと比較して、CLCF1に対する前記可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を増加させる突然変異を含み、その突然変異は配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置110、174、237、287、もしくはそれらの任意の組み合わせに存在する、
医薬組成物。
【請求項2】
前記可溶性CNTFRポリペプチドが、野生型CNTFRポリペプチドと比較して、糖タンパク質130(gp130)に対する前記可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異をさらに含
み、gp130に対する結合親和性を低下させる前記突然変異が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置268、269、またはその両方に存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記可溶性CNTFRポリペプチドが、異種ポリペプチドと融合している、請求項1
または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記異種ポリペプチドが、Fcドメインである、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有する個体に治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法における使用のための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記細胞増殖性疾患が、がんである、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記がんが、肺癌である、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
CLCF1に特異的に結合する可溶性CNTFRポリペプチドであって、
野生型CNTFRポリペプチドと比較して、LIFRに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異を含み、その突然変異は配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置177、178、もしくはその両方に存在し、
および/または、
野生型CNTFRポリペプチドと比較して、CLCF1に対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を増加させる突然変異を含み、その突然変異は配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置110、174、237、287、もしくはそれらの任意の組み合わせに存在する、
可溶性CNTFRポリペプチド。
【請求項12】
前記可溶性CNTFRポリペプチドが、gp130に対する結合親和性を低下させる突然変異をさらに含み、その突然変異が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対するアミノ酸位置で位置268、269、またはその両方に存在する、請求項
11に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【請求項13】
前記可溶性CNTFRポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせと融合している、請求項11または
12に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【請求項14】
請求項
11~13のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項15】
請求項
14に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項16】
請求項
14に記載の核酸、または請求項
15に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/430,757号、および2017年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/481,027号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
毛様体神経栄養因子(CNTF:ciliary neurotrophic factor)は、ニワトリ毛様体ニューロンの生存因子として同定され、構造的に関連する造血および神経新生サイトカインのインターロイキン(IL)-6ファミリー(IL-6、IL-11、カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン-1(CT-1))に属する。CNTFおよびIL-6型サイトカインに対する細胞応答は、130kDaの膜貫通糖タンパク質であるgp130を含む、異なる複数ユニットの受容体複合体によって誘発される。CNTFは、シグナル伝達に関与しないGPIアンカー型CNTF受容体(CNTFR)に1:1の化学量論で最初に結合する。膜結合型または可溶性CNTFRへのCNTFの結合は、細胞内シグナル伝達カスケードを誘発するシグナル伝達性β受容体gp130およびLIF受容体(LIFR)のヘテロ二量体を誘導する。
【0003】
がんは、それ自体が腫瘍形成プロセスの結果として変化する微小環境内で発生し進行する。がん細胞と接触している間質細胞は、腫瘍細胞へのシグナル伝達によって直接的に、または腫瘍進行を促進するために他の間質成分を動員することによって間接的に作用し得る増殖因子およびサイトカインを分泌する。このプロセスの重要な側面は、がん関連線維芽細胞(CAF:cancer-associated fibroblast)の増殖である。CAFは、異なる腫瘍および組織において別個の特徴を有する間質細胞の多様な集団である。
【0004】
CAFは、腫瘍細胞の増殖を刺激する可溶性因子の分泌によって、インビボでがん細胞(例えば、肺癌細胞)の増殖を支持する。そのような可溶性因子の1つは、カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)である。間質内の細胞によって産生されたCLCF1は、このタンパク質の受容体(CNTFR)を発現している腫瘍細胞によって増殖シグナルとして受け取られる。例えば、機能的研究により、非小細胞肺癌(NSCLC)の増殖促進におけるCLCF1-CNTFRシグナル伝達の役割が明らかにされている。
【発明の概要】
【0005】
毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)のリガンドに特異的に結合する薬剤が提供される。ある特定の態様において、本開示の薬剤は、可溶性CNTFRポリペプチドである。可溶性CNTFRポリペプチドは、1つ以上のリガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する変化させた(例えば、低下させた)結合親和性、1以上のCNTFRリガンドに対する変化させた(例えば、増加させた)結合親和性、またはそれらの任意の組み合わせを有し得る。本開示の薬剤を含む組成物、ならびに薬剤を使用する方法(例えば、細胞増殖性疾患を治療するため)およびCNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定する方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態による、下流CNTFRシグナル伝達経路を阻害するための戦略を概略的に示す。この実施形態において、CNTFRのリガンドに特異的に結合する薬剤は可溶性CNTFR「デコイ受容体」であり、CLCF1が膜結合CNTFRと相互作用するのを阻害し、JAK STAT経路およびMAPK/ERK経路等のCLCF1-CNTFR媒介シグナル伝達経路の活性化を防止する。
【
図2】組換えCLCF1がSTAT3を活性化することを実証するデータを提供する。パネルA:NSCLC細胞株A549において、Tyr705におけるp-STAT3のレベルが処理の15分後および30分後に検出された。パネルB:CNTFR発現によって正規化した後、p-STAT3シグナルの強度を定量化した。パネルC:H23およびH358等の他のNSCLC細胞株においてSTAT3の活性化が検出された。
【
図3】A549およびH23細胞の生存に対するCLCF1処理の影響を実証するデータを示す。無血清条件で24時間飢餓状態にした後、無血清培地中のCLCF1で細胞を72時間処理した。CLCF1は、A549(パネルA)およびH23(パネルB)細胞の生存率を濃度依存的に増加させた。
【
図4】CNTFRの酵母表面ディスプレイ。パネルA:CNTFRは、酵母表面タンパク質Aga2pへの融合物として提示された。提示されたタンパク質は、発現レベルを測定することを可能にするC末端c-mycタグを含有する。パネルB:20nMのCLCF1で処理した場合、CNTFRを発現する酵母集団がCLCF1結合についてのシグナルを増加させたことを示すフローサイトメトリー散布図。
【
図5】酵母に提示されたCNTFRは、CLCF1の存在下でβ受容体に結合する。抗cMyc抗体のみ(パネルA)、LIFR-Fc(パネルB)、CLCF1およびLIFR-Fc(パネルC)、ならびにCLCF1、LIFR-Fc、およびgp130-HIS(パネルD)とともにインキュベートした、CNTFRを提示する酵母を示す散布図。蛍光標識した二次抗体を用いて、フローサイトメトリーにより種々の成分の結合を検出した。パネルE:パネルB、C、およびDのプロットの重ね合わせ。
【
図6】酵母に提示されたCNTFR-CLCF1は、LIFRなしでgp130に結合することができる。抗cMyc抗体のみ(パネルA)、gp130-Fc(パネルB)、CLCF1およびgp130-Fc(パネルC)、ならびにCLCF1、gp130-Fc、およびLIFR-HIS(パネルD)とともにインキュベートした、CNTFRを提示する酵母を示す散布図。蛍光標識した二次抗体を用いて、フローサイトメトリーにより種々の成分の結合を検出した。パネルE:パネルB、C、およびDのプロットの重ね合わせ。
【
図7】CLCF1に対してランダムに突然変異を誘発させたCNTFRライブラリーの3ラウンドの選別後に中間的な親和性集団から単離した変異体を示す。
【
図8】CLCF1に対してランダムに突然変異を誘発させたCNTFRライブラリーの3ラウンドの選別後に最高の親和性集団から単離した変異体を示す。
【
図9】CLCF1に対してシャッフルしたCNTFRライブラリーの3ラウンドの選別後に最高の親和性集団から単離した変異体を示す。
【
図10】親和性成熟CNTFR変異体の特徴付け。パネルA:親和性成熟スクリーンから単離されたCNTFR構築物を発現する酵母へのCLCF1の結合。パネルB:酵母に提示されたCNTFR構築物の見かけのKd値。パネルC:酵母に提示された野生型CNTFRおよび変異体4のCNTF結合。パネルD:hCLCF1に加えてmCLCF1に結合した変異体4。
【
図11】T268AおよびD269Aの突然変異を含有するCNTFR変異体はCLCF1およびLIFRに結合するが、gp130には結合しない。CLCF1(パネルA)、gp130-Fc(パネルB)、およびLIFR-Fc(パネルC)へのCNTFR T268A D269A構築物結合シグナル。
【
図12】LIFRに結合しないCNTFR変異体のライブラリースクリーニング。高親和性CLCF1結合剤について最初のスクリーニングを実施した後、低いLIFR-Fcシグナルを有する集団を単離した(パネルA)。これに続いて、CLCF1結合剤について別のスクリーニング(パネルC)、および非LIFR結合剤についてのスクリーニングを行った。パネルD:6ラウンドの選別後、スクリーニングされたライブラリーは、減少したLIFR結合を示す一方で、未変化のCLCF1結合を有していた。Aの上部パネル、Bの下部パネル、およびCの下部パネルのゲートは、各選別ラウンドで単離された集団を表す。
【
図13】LIFRに結合しないCNTFR変異体の特徴付け。パネルA:LIFRに対するネガティブ選別(ネガティブ選別)を用いたライブラリースクリーニング手法から単離された変異体は、2つのコンセンサス変異、Y177HおよびK178Nを有していた。パネルB:これらの2つの突然変異は、組み合わせた場合にLIFR結合親和性の低下に対する相加効果を示す。V4=
図10の変異体4。
【
図14】可溶性eCNTFR構築物の特徴付け。パネルA:可溶性発現させたeCNTFR-HISおよびeCNTFR-Fcは、wtCNTFRタンパク質と比較して有意に改善されたCLCF1への結合を示した。パネルB:可溶性eCNTFR構築物は、可溶性gp130およびLIFRへの最小限の結合を示した(各条件につき、左から右へ、wtCNTFR-HIS、wtCNTFR-Fc、eCNTFR-HIS、eCNTFR-Fc)。
【
図15】eCNTFR-Fcが細胞のシグナル伝達および生存に与える影響。パネルA:A549非小細胞肺癌細胞を10nMのCNTFR-Fc変異体で20分間処理し、ウエスタンブロットを行ってpSTAT3を検出した。eCNTFR-Fc処理は、A549細胞(パネルB)およびH23細胞(パネルC)におけるCLCF1の生存促進効果を阻害した。パネルBおよびCでは、各濃度につき、CLCF1の結果は左側に、CLCF1+eCNTFR-Fcの結果は右側に示される。
【
図16】eCNTFR-FcによるCLCF1の隔離は、A549異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する。パネルA:1mg/kg体重の投与後48時間にわたるCLCF1の隔離およびeCNTFR-Fcのクリアランス。パネルB:A549NSCLC細胞の異種移植片モデルにおける腫瘍量。マウスをPBS、1mg/kg体重のeCNTFR-Fc、または10mg/kg体重のeCNTFR-Fcで週2回(矢印)、17日間処理した(丸:PBS、四角:1mg/kgのeCNTFR-Fc、三角:10mg/kgのeCNTFR-Fc)。パネルC:時間0から正規化された個々の腫瘍サイズのウォーターフォールプロット。
【
図17】eCNTFR-Fcは、H23異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する。パネルA:H23NSCLC細胞の異種移植片モデルにおける腫瘍量。マウスを、PBS(丸)、10mg/kg体重のwtCNTFR-Fc(四角)またはeCNTFR-Fc(三角)を用いて週3回、39日間にわたって処理した。パネルB:個々の腫瘍のウォーターフォールプロット
【
図18】パネルAおよびBは、操作されたCLCF1トラップ(eCNTFR)における特異性の増加およびインビトロでの有効性を実証するデータを示す。eCNTFR-Fc+mCLCF1(丸)、wtCNTFR-Fc+CNTF(三角)、wtCNTFR-Fc+mCLCF1(菱形)、およびeCNTFR-Fc+CNTFが示される。STAT3リン酸化の阻害を用いて阻害効果を実証した。
【
図19】パネルA~Iは、eCNTFRのインビボ効果を示すデータを提供する。パネルA:NOD/SCID/ガンママウスにおける10mg/kgのeCNTFR-Fcの腹腔内(ip)投与後の血液クリアランスおよびCLCF1の隔離。注射後に血清試料を回収し、捕捉剤としてeCNTFR-Fcを用いたELISAにより未結合CLCF1を測定した。ビヒクルで処理したマウスを用いてベースラインCLCF1レベルを決定した。血中のeCNTFR-Fcレベルは、捕捉剤として抗Fc抗体を用いたELISAにより定量化した。パネルB:A549異種移植片の腫瘍体積定量化[PBSを除くn=8の腫瘍(最終時点でn=6の腫瘍)、1回の実験]。二元配置分散分析を用いて*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。データは、平均±SEMとして表される。パネルC:最終時点の腫瘍体積の定量化(A549異種移植片の最終時点)。ひげは、最大値および最小値を特定し、箱は、75パーセンタイルおよび25パーセンタイルを示し、線は、中央値を示す。一元配置分散分析を用いて*p<0.05、**p<0.01。パネルD:A549異種移植片についてベースラインからの腫瘍パーセント変化を示すウォーターフォールプロット。パネルE:患者由来異種移植片(PDTX)モデルの腫瘍体積の定量化。二元配置分散分析を用いて**P<0.01、****P<0.0001。データは、平均±SEMとして表される。パネルF:PDTXモデルの最終時点の腫瘍体積の定量化。ひげは、最大値および最小値を特定し、箱は、75パーセンタイルおよび25パーセンタイルを示し、線は、中央値を示す。対応のないスチューデントの両側t検定を用いて**P<0.01。パネルG:PDTXモデルについてベースラインからの腫瘍パーセント変化を示すウォーターフォールプロット。パネルH:PDTX腫瘍の代表的な画像。スケールバー、1cm。パネルI:ホスホヒストンH3(PH3)およびトランケーションカスパーゼ3(CC3)の代表的なH&E染色およびIHC。スケールバー、50μm。PH3およびCC3陽性病巣の定量化(右パネル)。一元配置分散分析を用いて*P<0.05、****P<0.0001。データは、平均±SEMとして表される。
【
図20】パネルA~Dは、CLCF1およびCNTFRが非小細胞肺癌(NSCLC)において発現されることを実証するデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)のリガンドに特異的に結合する薬剤が提供される。ある特定の態様において、本開示の薬剤は、可溶性CNTFRポリペプチドである。可溶性CNTFRポリペプチドは、1つ以上のリガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する変化させた(例えば、低下させた)結合親和性、1以上のCNTFRリガンドに対する変化させた(例えば、増加させた)結合親和性、またはそれらの任意の組み合わせを有し得る。本開示の薬剤を含む組成物、ならびに薬剤を使用する方法(例えば、細胞増殖性疾患を治療するため)およびCNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定する方法もまた提供される。
【0008】
本開示の薬剤、組成物、および方法をより詳細に説明する前に、薬剤、組成物、および方法は、記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、当然のことながら異なり得るということを理解されたい。また、薬剤、組成物、および方法の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定的であることは意図されないことも理解されたい。
【0009】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈上そうではないと明確に指示されない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその記載される範囲内の任意の他の記載値または介在値が、薬剤、組成物、および方法に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲内に含まれてもよく、また、記載される範囲内の任意の具体的に除外された限界に従って、薬剤、組成物、および方法内に包含される。記載される範囲が限度の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除く範囲もまた、薬剤、組成物、および方法に含まれる。
【0010】
特定の範囲は、数値の前に用語「約」が付された状態で本明細書に提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数字、およびその用語が先行する数字に近接または近似する数字に逐語的支持を提供するために本明細書において使用される。数が特定の列挙された数に近いかほぼ等しいかを決定するにあたり、近似または近似の列挙されていない数は、それが提示されている文脈において具体的に列挙された数と実質的に等価な数であり得る。
【0011】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、薬剤、組成物、および方法が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または均等な任意の薬剤、組成物、および方法もまた、薬剤、組成物、および方法の実施または試験において使用され得るが、代表的な例示的薬剤、組成物、および方法を次に記載する。
【0012】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示かつ記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためであり、提供される公開日は、実際の公開日とは異なる可能性があり、独立して確認する必要があり得るため、本発明の薬剤、組成物、および方法は、そのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。請求項は任意の要素を排除するように作成されてもよいことにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図している。
【0014】
明確性のために別々の実施形態の文脈中に記載されている薬剤、組成物、および方法のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることも理解されたい。逆に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈中に記載されている薬剤、組成物、および方法の種々の特徴は、別々に、または任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、本明細書において、このような組み合わせが実施可能なプロセスおよび/または組成物を内包する程度まで、まさに各々およびすべての組み合わせが個別かつ明示的に開示されているかのように開示される。さらに、そのような変数を記載している実施形態に列挙されているすべてのサブコンビネーションも、本発明の複合体、組成物および方法によって具体的に包含され、そのような各サブコンビネーションが個々におよび明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0015】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証された個々の実施形態のそれぞれは、本方法の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、または組み合わせられ得る個別の要素および特徴を有する。任意の記載された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能な他の順序で実施することができる。
【0016】
CNTFRリガンド結合剤
上記に要約したように、本開示の態様は、毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)のリガンドに特異的に結合する薬剤を含む。CNTFR(CNTF受容体サブユニットαとも称される)は、1型サイトカイン受容体ファミリーの一員である。CNTFRは、毛様体神経栄養因子(CNTF)ならびにカルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)およびニューロポエチン(NP)等の他のリガンドの三成分受容体のリガンド特異的成分である。CNTFRへのリガンドの結合は、受容体の膜貫通成分であるgp130および白血病抑制因子受容体(LIFR)を動員し、シグナル伝達を促進する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)のリガンドに特異的に結合する薬剤」は、1つ以上のCNTFRリガンド(例えば、1つ以上のCLCF1、CNTFR、および/またはNP)に対して結合親和性を示す薬剤であり、約10-5M以下、約10-6M以下、約10-7M以下、約10-8M以下、または約10-9M、10-10M、10-11M、もしくは10-12M以下のKDを有する。そのような親和性は、従来技術を用いて、例えば、平衡透析によって、表面プラズモン共鳴(SPR)技術の使用によって(例えば、BIAcore2000機器、製造業者によって概説される一般的な手順を用いる)、ラジオイムノアッセイによって、または後述の実施例に記載されるもしくは当業者に既知の別の方法によって、容易に測定され得る。
【0018】
本開示の薬剤は、アプタマー、抗体等を含むが、これらに限定されない、CNTFRリガンドに特異的に結合する任意の好適な種類の薬剤であり得る。ある特定の態様において、薬剤は、可溶性CNTFRポリペプチドである。
【0019】
次に、本開示のCNTFRリガンド結合剤の非限定的な実施形態を詳細に記載する。
【0020】
可溶性CNTFRポリペプチド
上記に要約したように、ある特定の態様において、CNTFRのリガンドに特異的に結合する薬剤は、可溶性CNTFRポリペプチドである。「可溶性CNTFRポリペプチド」とは、細胞膜に組み込まれていないCNTFRポリペプチドを意味する。野生型ヒトCNTFRアミノ酸配列(UniProtKB-P26992)を下の表1に提供する。
【表1】
【0021】
ある特定の実施形態によれば、可溶性CNTFRポリペプチドは、溶解性を付与する1つ以上の突然変異を有するポリペプチドのおかげで細胞膜に組み込まれない。本開示を通して使用されるように、「突然変異(単数)」または「突然変異(複数)」は、関連ポリペプチド、例えば、本開示のCNTFRポリペプチドにおける、1つ以上のアミノ酸置換、1つ以上のアミノ酸欠失(例えば、トランケーション)、1つ以上のアミノ酸挿入、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0022】
溶解性を付与する1つ以上の突然変異は、CNTFRポリペプチドの任意の好適な領域(複数可)に位置し得る。ある特定の態様において、可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメイン内に、溶解性を付与する1つ以上の突然変異を含む。このドメインは、タンパク質を細胞膜に固定するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)で翻訳後修飾される脂質化部位(S342)を含有する。CNTFRを細胞膜に固定する野生型ヒトCNTFRドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸343~372からなると定義することができる(表1において下線で示される)。ある特定の条件下で、CNTFRのこの部分は、細胞膜からCNTFRを放出するように酵素的に修飾される。いくつかの実施形態によれば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、GPIによる翻訳後修飾を妨げる置換突然変異をS342に含み、それによって溶解性を付与する。野生型ヒトCNTFRはまた、配列番号1のアミノ酸1~22からなるシグナルペプチドを含む(表1において下線で示される)。
【0023】
ある特定の実施形態によれば、CNTFRを細胞膜に固定するCNTFRドメインは、CNTFRポリペプチドが細胞膜に固定される能力を喪失させる1つ以上のアミノ酸置換を含み、それによって溶解性を付与する。代替的に、またはさらに、可溶性CNTFRポリペプチドは、CNTFRポリペプチドが細胞膜に固定される能力を喪失させるトランケーション(例えば、CNTFRを細胞膜に固定するCNTFRドメイン内に)を含んでもよく、それによって溶解性を付与する。ある特定の態様において、可溶性CNTFRポリペプチドは、CNTFRを細胞膜に固定するCNTFRドメインを欠いている。例えば、可溶性CNTFRポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸343~372を欠いていてもよい。
【0024】
溶解性を付与する1つ以上の突然変異を任意選択的に含むことに加えて、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、ポリペプチドに1つ以上の他の望ましい特性を付与する1つ以上の突然変異を含み得る。対象とする他の望ましい特性として、CNTFRリガンドに対する変化させた(例えば、より高い)結合親和性、1つ以上の他のCNTFRリガンドと比較して対象とする特定のCNTFRリガンドに対する変化させた(例えば、より高い)特異性、野生型CNTF受容体、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する受容体またはその成熟型と比較して、リガンド-CNTFR複合体サブユニット(例えば、gp130、LIFR等)に対する変化させた(例えば、低下させた)結合親和性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「より高い結合親和性」または「増加させた結合親和性」とは、可溶性CNTFRポリペプチドが、野生型CNTF受容体と比較して、分子(例えば、CLCF1等のCNTFRリガンド)に対してより密接な結合(より低いKD値によって示されるように)を示すことを意味する。「より低い結合親和性」または「低下させた結合親和性」とは、可溶性CNTFRポリペプチドが、野生型CNTF受容体と比較して、分子(例えば、LIFR、gp130、またはその両方等のリガンド-CNTFR複合体サブユニット)に対してあまり密接ではない結合(より高いKD値によって示されるように)を示すことを意味する。
【0026】
CNTFRリガンド結合剤(例えば、可溶性CNTFRポリペプチド)の、対象とする分子、例えばCNTFRリガンド、LIFR、gp130等のリガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する結合親和性を測定するための方法が利用可能である。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore(商標)2000機器を使用する)、KinExA(登録商標)動的排除アッセイ(Sapidyne Instruments)、バイオレイヤー干渉法(BLI)技術(例えば、ForteBio Octet(登録商標))、または他の類似のアッセイ/技術が、CNTFRリガンド結合剤が所望の結合親和性を示すかどうかを決定するために用いられ得る。本開示の文脈において結合親和性を測定するための好適な手法は、例えば、Hunter,S.A.and Cochran,J.R.(2016)Methods Enzymol.580:21-44に記載されているものを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、直接結合アッセイにおいて、フルオロフォアもしくは放射性同位体に結合させたCNTFRポリペプチド、または標識抗体による検出のためのN末端もしくはC末端エピトープタグを含有するCNTFRポリペプチドを用いて平衡結合定数(KD)を測定することができる。標識またはタグが実行可能でないまたは所望されない場合、競合結合アッセイを使用して、標識競合物の最大シグナルの50%が検出可能な非標識CNTFRポリペプチドの量である最大半量阻害濃度(IC50)を決定することができる。次いで、測定されたIC50値からKD値を計算することができる。
【0028】
上記に要約したように、ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTF受容体、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する受容体またはその成熟型と比較して、リガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を変化させる(例えば、低下させる)1つ以上の突然変異を含む。「リガンド-CNTFR複合体サブユニット」とは、CNTFRがリガンドに結合すると野生型CNTFRと会合するタンパク質を意味する。リガンド-CNTFR複合体サブユニットの非限定的な例には、白血病抑制因子受容体(LIFR)および糖タンパク質130(gp130)が含まれる。ある特定の態様において、1つ以上の突然変異は、LIFR、gp130、またはその両方に対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる。そのような1つ以上の突然変異は、例えば、CNTFR媒介シグナル伝達を減少させることが望ましい場合(例えば、細胞増殖を減少させるため)、可溶性CNTFRポリペプチドがリガンドに結合した際にアゴニストとして作用するのを妨げることができる。
【0029】
ある特定の実施形態によれば、可溶性CNTFRポリペプチドがリガンド-CNTFR複合体サブユニットに対して低下した結合親和性を示す場合、可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性は、10nMのCLCF1の存在下で100nM以上のKD値を有する。
【0030】
ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、LIFRに対して低下した結合親和性を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドと比較して、アミノ酸位置177、178、またはその両方に突然変異(例えば、アミノ酸置換)を含む。177位の例示的な突然変異はY177Hである。177位の別の例示的な突然変異はY177Aである。178位の例示的な突然変異はK178Nである。178位の別の例示的な突然変異はK178Aである。後述の実施例の項に示されるように、本発明者らは、そのような突然変異がCNTFRシグナル伝達の阻害剤である可溶性CNTFRポリペプチドをもたらす一方で、リガンド-CNTFR複合体サブユニットに対して未変化の親和性を有する可溶性CNTFRポリペプチドは、結合時に、例えばLIFRおよびgp130を動員するその能力によってアゴニストとして作用することを明らかにした。ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、突然変異Y177HおよびK178N、または突然変異Y177AおよびK178A、または突然変異Y177HおよびK178A、または突然変異Y177AおよびK178Nを含む。
【0031】
ある特定の実施形態によれば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、gp130に対して低下した結合親和性を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドと比較して、アミノ酸位置268、269、またはその両方に突然変異(例えば、アミノ酸置換)を含む。268位の例示的な突然変異はT268Aである。269位の例示的な突然変異はD269Aである。ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、突然変異T268AおよびD269Aを含む。
【0032】
上記に要約したように、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTF受容体、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する受容体またはその成熟型と比較して、対象とするCNTFRリガンド(例えば、CLCF1、NP、CNTF、または別の対象とするCNTFRリガンド)に対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性および/または特異性を変化させる(例えば、増加させる)1つ以上の突然変異を含み得る。ある特定の実施形態によれば、可溶性CNTFRポリペプチドがCNTFRリガンドに対して増加した結合親和性を示す場合、リガンドに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性は10nM以下のKD値を有する。
【0033】
ある特定の実施形態によれば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、CLCF1に対する結合親和性および/または特異性を増加させる1つ以上の突然変異を含む。ある特定の態様において、そのような可溶性CNTFRポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドと比較して、アミノ酸位置110、174、237、287、またはそれらの任意の組み合わせに突然変異(例えば、アミノ酸置換)を含む。110位の例示的な突然変異はR110Qである。174位の例示的な突然変異はT174Pである。237位の例示的な突然変異はS237Fである。237位の別の例示的な突然変異はS237Yである。287位の例示的な突然変異はI287Fである。ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、突然変異R110Q、T174P、S237F/S237Y、およびI287Fのうちの1つまたはそれらの任意の組み合わせ(例えば、すべて)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドと比較して、アミノ酸位置110、174、177、178、237、268、269、287、またはそれらの任意の組み合わせに突然変異(例えば、アミノ酸置換)を含む。
【0035】
ある特定の態様において、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、突然変異R110Q、T174P、Y177H/Y177A、K178N/K178A、S237F/S237Y、T268A、D269A、およびI287Fのうちの1つまたはそれらの任意の組み合わせ(例えば、すべて)を含む。
【0036】
本開示の一実施形態による可溶性CNTFRポリペプチドは、下の表2に記載のアミノ酸配列(配列番号2)を含む。表2において、突然変異は太字/下線で示される。この例では、可溶性CNTFRポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する野生型CNTF受容体と比較して、アミノ酸343~372のC末端トランケーションを含む。ある特定の態様において、そのような可溶性CNTFRポリペプチドはシグナルペプチドを含まない(表2において下線で示される)。
【表2】
【0037】
本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、後述の実験の項に示されるCNTFRポリペプチドのいずれか、ならびに
図7、
図8および
図9のいずれかを含む(またはそれに対応する)。
【0038】
ある特定の実施形態によれば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸23~342に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、もしくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列、またはそれらの断片、例えば、250~319アミノ酸、250~260アミノ酸、260~270アミノ酸、270~280アミノ酸、280~290アミノ酸、290~300アミノ酸、300~310アミノ酸、もしくは310~319アミノ酸の長さを有する断片を含む。可溶性であることに加えて、そのようなCNTFRポリペプチドは、1つ以上のリガンド-CNTFR複合体サブユニット(例えば、LIFR、gp130、またはその両方)に対する低下した結合親和性、CNTFRリガンド(例えば、CLCF1)に対する増加した結合親和性/特異性、CNTFRリガンド(例えば、CNTF、NP等)に対する低下した結合親和性、およびそれらの任意の組み合わせ等の1つ以上の所望の特徴を含み得る。
【0039】
抗体
ある特定の態様において、CNTFRのリガンドに特異的に結合する薬剤は抗体である。「抗体(単数)」、「抗体(複数)」および「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソタイプの抗体または免疫グロブリン、全抗体(例えば、重鎖および軽鎖ポリペプチドの2つの二量体で構成される四量体で構成される抗体)、一本鎖抗体、Fab、Fab’、Fv、scFv、およびダイアボディを含むが、これらに限定されないCNTFRリガンド(例えば、CLCF1、NPおよび/またはCNTF)への特異的結合を保持する抗体の断片(例えば、全抗体または一本鎖抗体の断片)、キメラ抗体、ならびにヒト化抗体、例えば、ヒト化全抗体またはヒト化抗体断片を含む。
【0040】
「Fab」断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されているという点でFab’断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保有するFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片の他の化学的結合もまた既知である。
【0041】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それによってsFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能となる。
【0042】
ある特定の態様において、CNTFRのリガンドに特異的に結合する抗体は、CNTFまたはNP1と比較して優先的にCLCF1に特異的に結合する。ある特定の実施形態によれば、CNTFRのリガンドに特異的に結合する抗体は、CLCF1には特異的に結合するが、CNTFまたはNP1には結合しない。
【0043】
CNTFRリガンド結合剤の設計/開発および製造
1つ以上の所望の機能性を有する追加のCNTFRリガンド結合剤を設計/開発する方法もまた、本開示によって提供される。CNTFRリガンド結合剤が開発される様式は様々であり得る。合理的なコンビナトリアル手法が、新規特性、例えば、1つ以上のリガンド-CNTFR複合体サブユニット(例えば、LIFR、gp130、またはその両方)に対する低下した結合親和性、CNTFRリガンド(例えば、CLCF1)に対する増加した結合親和性および/または特性、CNTFRリガンド(例えば、CNTF、NP等)に対する低下した結合親和性、ならびにそれらの任意の組み合わせを有するCNTFRリガンド結合剤を設計するために用いられ得る。例えば、可溶性CNTFRポリペプチドまたは抗体を開発するために、CNTFRポリペプチドまたは抗体のライブラリーを作成し、例えば、細菌ディスプレイ、ファージディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、蛍光活性化細胞選別(FACS)、および/または他の好適なスクリーニング方法によってスクリーニングしてもよい。
【0044】
酵母表面ディスプレイは、新規の分子認識特性、増加した標的結合親和性、適切な折り畳み、および改善された安定性を有するタンパク質を設計するために使用されてきた強力なコンビナトリアル技術である。このプラットフォームでは、所望の生化学的および生物物理学的特性を有する変異体を単離するために、タンパク質変異体のライブラリーがハイスループット様式で製造およびスクリーニングされる。後述の実施例の項に示されるように、本発明者らは、酵母表面ディスプレイを用いて、望ましい様式でCLCF1、LIFRおよびgp130に対する結合親和性を変化させたCNTFRポリペプチドを設計することに成功した。酵母表面ディスプレイは、真核生物分泌経路、シャペロンの補助による折り畳み、および効率的なジスルフィド結合形成の品質管理機構から利益を得る。
【0045】
対象とする望ましい特性を有する可溶性CNTFRポリペプチドを開発するための1つの例示的な手法は、2つのジスルフィド結合によって酵母細胞壁タンパク質Aga1pに連結された酵母接合型凝集素タンパク質Aga2pにCNTFRポリペプチドを遺伝子的に融合することを含む。このAga2p融合構築物、および染色体に組み込まれたAga1p発現カセットは、ガラクトース誘導性プロモーター等の好適なプロモーターの制御下で発現させることができる。蛍光標識された一次または二次抗体を用いたフローサイトメトリーによって細胞表面発現レベルを測定するために、N末端またはC末端のエピトープタグを含めることができる。この構築物は、CNTFRポリペプチド(または操作される他のタンパク質)のN末端がAga2に融合された、最も広く使用されているディスプレイフォーマットを表しているが、酵母表面ディスプレイプラスミドのいくつかの代替変形例が記載されており、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドを開発するために用いられ得る。ファージディスプレイまたはmRNAディスプレイで使用されるパニングに基づく方法に勝る、このスクリーニングプラットフォームの利点の1つは、2色FACSを用いて、特定の標的に対する結合親和性がわずか2倍程異なるクローンを定量的に識別できることである。
【0046】
CNTFRをDNAレベルで選択的に突然変異させるための例示的な手法は、エラープローンPCRであり、これは、プルーフリーディング(すなわち、エキソヌクレアーゼ)活性を有しないポリメラーゼの使用、ヌクレオシド類似体の三リン酸誘導体の混合物の使用、様々な比率のdNTPの使用、様々な濃度のマグネシウムまたはマンガンの濃度等を含む、任意の数の変化させた反応条件によって突然変異を誘発するために使用することができる。代替的に、例えば、オーバーラップエクステンションPCRを用いたオリゴヌクレオチドアセンブリによって、縮重コドンを導入することができる。次いで、酵母における相同組換えのために酵母ディスプレイベクターと十分に重複する隣接プライマーを用いて遺伝物質が増幅され得る。これらの方法により、比較的低コストおよび少ない労力でCNTFRライブラリーを作製することが可能になる。ライブラリー組成に対する明確な制御を可能にする合成ライブラリーおよび最新の方法が開発されている。
【0047】
ある特定の態様において、ディスプレイライブラリー(例えば、酵母ディスプレイライブラリー)が、FACSによって対象とする標的(例えば、CLCF1等の対象とするCNTFRリガンド)への結合についてスクリーニングされる。一方の蛍光標識をc-mycエピトープタグを検出するために使用することができ、他方の蛍光標識を対象とする結合標的に対するCNTFRポリペプチドの相互作用を測定するために使用することができる、2色FACSが用いられてもよい。単一細胞分解能で2つの蛍光体の励起および発光特性を測定するために、異なる機器レーザーおよび/またはフィルターセットを使用することができる。これにより、結合によって酵母の発現レベルを正規化することが可能になる。すなわち、低い酵母発現を示すが大量の標的に結合するCNTFRポリペプチドを、高レベルで発現されるが標的に弱く結合するCNTFRポリペプチドと区別することができる。したがって、結合対発現の二次元フローサイトメトリープロットでは、対角線上に標的抗原に結合する酵母細胞の集団が現れる。高親和性結合剤は、ライブラリー選別ゲートを用いて単離することができる。代替的に、最初の選別ラウンドにおいて、全長タンパク質を発現しない望ましくないクローンのライブラリーを除去することが有用であり得る。
【0048】
対象とするCNTFRポリペプチドをコードするクローンについてのCNTFRライブラリーの濃縮後、酵母プラスミドを回収して配列決定する。高い選別ストリンジェンシー下で、さらなるラウンドのFACSを実施することができる。次いで、個々の酵母に提示されたCNTFRクローンの結合親和性または動的解離速度を測定することができる。
【0049】
一旦、対象とするCNTFRポリペプチドが表面ディスプレイ(例えば、酵母表面ディスプレイ)によって同定されると、好適な方法を用いて操作されたCNTFRポリペプチドを製造することができる。ある特定の実施形態によれば、CNTFRポリペプチドは固相ペプチド合成によって製造される。CNTFRポリペプチド配列は、自動合成装置で固相ペプチド化学を用いて合成することができる。例えば、標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)ベースの固相ペプチド化学が用いられてもよい。固相合成の後に、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による精製が行われてもよい。
【0050】
ある特定の態様において、可溶性CNTFRポリペプチドは、組換えDNA手法を用いて製造される。様々な宿主細胞型において、組換え法を用いてCNTFRポリペプチド等のタンパク質を製造するための戦略が開発されてきた。例えば、機能的な可溶性CNTFRポリペプチドは、E.coliのペリプラズム空間における折り畳みを促進し、また有用な精製ハンドルとしての役割を果たすバルナーゼを遺伝子融合パートナーとして用いて製造されてもよい。ある特定の実施形態によれば、操作された可溶性CNTFRポリペプチドは、酵母(例えば、酵母菌株Pichia pastorisまたはSaccharomyces cerevesiae)または哺乳動物細胞(例えば、ヒト胎児由来腎臓細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞)において発現される。発現構築物は、1つ以上のタグ(例えば、金属キレートクロマトグラフィー(Ni-NTA)による精製のためのC末端ヘキサヒスタジンタグ)をコードしてもよい。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、凝集物、誤って折り畳まれた多量体等を除去することができる。
【0051】
本開示の態様は、本開示のCNTFRリガンド結合剤をコードする核酸を含む。すなわち、本明細書に記載のCNTFRリガンド結合剤(例えば、本明細書に記載の任意の可溶性CNTFRポリペプチド、抗体等)のいずれかをコードする核酸が提供される。ある特定の態様において、そのような核酸は発現ベクター中に存在する。発現ベクターは、薬剤(例えば、可溶性CNTFRポリペプチド)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、プロモーターは、薬剤を発現するために選択された宿主細胞の種類に基づいて選択される。好適な発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAの不可欠な部分として宿主生物内で複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にするための選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、ネオマイシン耐性等)を含む。
【0052】
本明細書に記載のCNTFRリガンド結合剤(例えば、本明細書に記載の任意の可溶性CNTFRポリペプチド、抗体等)のいずれかをコードする核酸を含む宿主細胞、ならびにそれを含む任意の発現ベクターもまた提供される。E.coliは、本開示のCNTFRリガンド結合剤をコードする核酸をクローニングするために使用することができる原核生物宿主細胞の一例である。使用に好適な他の微生物宿主には、枯草菌等の桿菌、およびサルモネラ菌、セラチア、および種々のシュードモナス種等の他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿主において、発現ベクターを作製することもでき、それは典型的には、宿主細胞と適合性のある発現制御配列(例えば複製起点)を含有するであろう。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージ由来のプロモーター系等の、任意の数の様々な周知のプロモーターが存在するであろう。プロモーターは、典型的には、任意選択的にオペレーター配列を用いて発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了するためのリボソーム結合部位配列等を有するであろう。
【0053】
酵母等の他の微生物もまた、発現に有用である。酵母類(例えば、S.cerevisiae)およびピキアは、必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製起点、終結配列等を有する好適なベクターを含む好適な酵母宿主細胞の例である。典型的なプロモーターには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の解糖系酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素からのプロモーターが含まれる。
【0054】
微生物に加えて、哺乳動物細胞(例えば、インビトロ細胞培養で増殖させた哺乳動物細胞)もまた、本開示のCNTFRリガンド結合剤を発現および産生するために使用され得る。好適な哺乳動物宿主細胞には、ヒト細胞系、非ヒト霊長類細胞系、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞系等が含まれる。好適な哺乳動物細胞系として、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー等の発現制御配列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列等の必要なプロセシング情報部位を含み得る。好適な発現制御配列の例は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。
【0055】
一旦(化学的にまたは組換え的に)合成されると、CNTFRリガンド結合剤は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製、ゲル電気泳動等を含む、当該技術分野で既知の標準的な手順に従って精製され得る。主題のCNTFRリガンド結合剤は実質的に純粋であり得、例えば、少なくとも約80%~85%純粋、少なくとも約85%~90%純粋、少なくとも約90%~95%純粋、もしくは98%~99%、またはそれ以上純粋であり得、例えば、細胞片、CNTFRリガンド結合剤以外の高分子等の混入質を含まない。
【0056】
融合タンパク質およびコンジュゲート
ある特定の態様において、異種部分と安定に会合した(例えば、融合した、結合した、または他の方法で付着した)CNTFRリガンド結合剤(例えば、本明細書に記載の可溶性CNTFRポリペプチドまたは抗体のいずれか)が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドCNTFRリガンド結合剤(例えば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドまたは抗体のいずれか)が異種ポリペプチドと融合している融合タンパク質が提供される。対象とする異種ポリペプチドとして、Fcドメイン(例えば、ヒトまたはマウスのFcドメイン)、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様において、異種ポリペプチドは、CNTFRリガンド結合剤がそれを必要とする個体に投与されたときに、異種ポリペプチドと融合していない同じCNTFRリガンド結合剤と比較して、CNTFRリガンド結合剤の安定性および/または血清半減期を増加させる。ある特定の態様において、ヒトFcドメイン(例えば、全長ヒトFcドメインまたはその断片)と融合した本開示の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかを含む融合タンパク質が提供される。ある特定の実施形態によれば、そのような融合タンパク質は、例えば、本開示の方法に従ってそれを必要とする個体(例えば、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有する個体)に投与する際に使用される。本開示の任意の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかと融合され得るヒトFcドメインの非限定的な例は、下の表3に記載される配列(配列番号3)を有するヒトIgG1Fcドメインまたはその断片である。
【表3】
【0058】
ある特定の実施形態によれば、本開示のCNTFRリガンド結合剤を部分(moiety)に結合させたコンジュゲートが提供される。対象とする部分(moiety)として、ポリエチレングリコール(PEG)、抗がん剤、検出可能な標識、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
対象とする抗がん剤は、細胞増殖を阻害するおよび/またはがん細胞を死滅させる薬剤を含む。そのような薬剤は、様々であり得、細胞分裂阻害剤および細胞傷害性剤(例えば、標的細胞に内在化されることを伴ってまたは伴わずに標的細胞組織を死滅させることができる薬剤)を含み得る。ある特定の態様において、治療薬は、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、およびビンカアルカロイドから選択される細胞傷害性剤である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、CPT-11(SN-38)、トポテカン、ドキソルビシン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、メイタンシン、メイタンシンDM1、メイタンシンDM4、DM-1、アウリスタチンEもしくはアウリスタチンFのような、アウリスタチンもしくは他のドラスタチン誘導体、AEB(AEB-071)、AEVB(5-ベンゾイルバレリン酸-AEエステル)、AEFP(抗体-エンドスタチン融合タンパク質)、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、エレウテロビン、ネットロプシン、またはこれらの任意の組み合わせである。ある特定の実施形態によれば、薬剤は、HTI-286等のヘミアステリンおよびヘミアステリン類似体(例えば、参照によりそれらの全開示が本明細書に組み込まれる米国特許第7,579,323号、WO2004/026293号、および米国特許第8,129,407号を参照)、アブリン、ブルシン、シクトキシン、ジフテリア毒素、バトラコトキシン、ボツリヌス毒素、志賀毒素、内毒素、シュードモナス外毒素、シュードモナス内毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、炭疽毒素、コレラ毒素、ファルカニントキシン、フモニシンB1、フモニシンB2、α毒素、モーロトキシン、アジトキシン、カリブドトキシン、マーガトキシン、スロトキシン、スキラトキシン、ヘフトキシン、カルシセプチン、タイカトキシン、カルシクルジン、ゲルダナマイシン、ゲロニン、ロトストラリン、オクラトキシンA、パツリン、リシン、ストリキニーネ、トリコテシン、ゼアラレノン、およびテトラドラキシンから選択されるタンパク質毒素である。用いることができる酵素的に活性な毒素およびその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボン草阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンが含まれる。
【0060】
検出可能な標識は、対象とする用途(例えば、インビトロおよび/またはインビボ研究および/または臨床用途)において検出され得る標識を含む。対象とする検出可能な標識は、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光タンパク質、常磁性原子等を含む。ある特定の態様において、CNTFRリガンド結合剤は、検出可能な標識の特異的結合パートナーに結合される(例えば、アビジン/ストレプトアビジンを含む検出可能なラベルを介して検出が起こり得るようにビオチンに結合される)。
【0061】
ある特定の実施形態によれば、薬剤は、近赤外(NIR)光学イメージング、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)/CTイメージング、陽電子放射断層撮影(PET)、核磁気共鳴(NMR)分光法等のインビボイメージングで使用される標識剤であるそのような用途に使用される標識剤として、蛍光標識、放射性同位元素等が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様において、標識剤は、2つ以上のイメージング手法を用いてインビボイメージングを可能にするマルチモーダルインビボイメージング剤である(例えば、Thorp-Greenwood and Coogan(2011)Dalton Trans.40:6129-6143を参照)。
【0062】
ある特定の態様において、標識剤は近赤外(NIR)イメージング用途に使用されるインビボイメージング剤であり、該剤は、Kodak X-SIGHT dye、Pz247、DyLight750および800Fluors、Cy5.5および7Fluors、Alexa Fluor680および750Dyes、IRDye680および800CW Fluorsから選択される。ある特定の実施形態によれば、標識剤は、SPECTイメージング用途に使用されるインビボイメージング剤であり、該剤は、99mTc、111In、123In、201Tl、および133Xeから選択される。ある特定の態様において、標識剤は、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング用途に使用されるインビボイメージング剤であり、該剤は、11C、13N、15O、18F、64Cu、62Cu、124I、76Br、82Rb、および68Gaから選択される。
【0063】
本開示の複合体に使用されるリンカーとしては、エステルリンカー、アミドリンカー、マレイミドまたはマレイミドベースのリンカー、バリン-シトルリンリンカー、ヒドラゾンリンカー、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB)リンカー、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)リンカー、ビニルスルホンベースのリンカー、テトラエチレングリコールなどだが、これらに限定されない、ポリエチレングリコール(PEG)を含むリンカー、プロパン酸を含むリンカー、カプロレイン酸を含むリンカー、およびその任意の組み合わせを含むリンカーが挙げられる。
【0064】
リンカーを介して対象とする部分(moiety)にCNTFRリガンド結合剤を連結するための多数の戦略が利用可能である。例えば、対象とする部分(moiety)は、リンカーを薬物に共有結合させることによって誘導体化することができ、リンカーはCNTFRリガンド結合剤上の「化学的ハンドル」と反応することができる官能基を有する。リンカー上の官能基は様々であり得、CNTFRリガンド結合剤上の化学的ハンドルとの適合性に基づいて選択され得る。一実施形態によれば、CNTFRリガンド結合剤上の化学的ハンドルは、化学的ハンドルを有する非天然アミノ酸をCNTFRリガンド結合剤に組み込むことによって提供される。そのような非天然アミノ酸は、例えば化学合成または組換え手法を介して(例えば、宿主細胞における翻訳中に非天然アミノ酸を組み込むために好適な直交アミノアシルtRNAシンテターゼ-tRNA対を使用して)CNTFRリガンド結合剤に組み込むことができる。
【0065】
CNTFRリガンド結合剤中に存在する非天然アミノ酸の官能基は、アジド、アルキン、アルケン、アミノオキシ、ヒドラジン、アルデヒド、ニトロン、ニトリルオキシド、シクロプロペン、ノルボルネン、イソシアニド、アリールハライド、ボロン酸、または他の好適な官能基であってもよく、リンカー上の官能基は、非天然アミノ酸の官能基と反応するように選択される(逆もまた同様である)。
【0066】
組成物
本開示のCNTFRリガンド結合剤を含む組成物もまた提供される。組成物は、本明細書に記載の任意の可溶性CNTFRポリペプチドおよび抗体を含む、本明細書に記載のCNTFRリガンド結合剤のいずれかを含み得る。
【0067】
ある特定の態様において、組成物は、液体媒体中に存在する本開示のCNTFRリガンド結合剤を含む。液体媒体は、水、緩衝溶液等の水性液体媒体であってもよい。1つ以上の添加剤、例えば、塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4)、緩衝剤(トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)等)、プロテアーゼ阻害剤、グリセロール等が、そのような組成物中に存在してもよい。
【0068】
医薬組成物もまた提供される。医薬組成物は、本開示のCNTFRリガンド結合剤のいずれか(例えば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドおよび抗体のいずれか)、および医薬的に許容される担体を含む。医薬組成物は、一般に、治療有効量のCNTFRリガンド結合剤を含む。「治療有効量」とは、所望の結果をもたらすのに十分な投与量、例えば、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有する個体における細胞増殖の減少等の有益なまたは所望の治療(予防を含む)結果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0069】
本開示のCNTFRリガンド結合剤は、治療的投与のために様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、CNTFRリガンド結合剤は、適切な医薬的に許容される賦形剤または希釈剤との組み合わせによって、医薬組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾル剤等の固体、半固体、液体、またはガス状形態の製剤に製剤化することができる。
【0070】
個体への投与に好適な(例えば、ヒト投与に好適な)本開示のCNTFRリガンド結合剤の製剤は、概して無菌であり、検出可能な発熱物質、または選択された投与経路による個体への投与が禁忌である他の混入物をさらに含んでいない状態であり得る。
【0071】
医薬剤形において、CNTFRリガンド結合剤は、単独で、または他の医薬的に活性な化合物との適切な会合において、および組み合わせにおいて投与することができる。以下の方法および賦形剤は単なる例であり、決して限定するものではない。
【0072】
経口製剤の場合、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン等の従来の添加剤、結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン等の結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム等の崩壊剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を用いて、また必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香味剤を用いて、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を作成するために、CNTFRリガンド結合剤を単独でまたは適切な添加剤と組み合わせて使用することができる。
【0073】
CNTFRリガンド結合剤は、植物油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高次脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコール等の水性溶媒もしくは非水性溶媒にそれらを溶解、懸濁または乳化することによって、また必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および防腐剤等の従来の添加剤を用いて、注射用製剤に製剤化することができる。
【0074】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体形態であってもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌溶液で再構成されるべきである。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、一定量の純水(典型的には、凍結乾燥中に除去された体積と当量である)を加え戻すことであるが、非経口投与用の医薬組成物の製造に抗菌剤を含む溶液が使用されてもよい。
【0075】
CNTFRリガンド結合剤の水性製剤は、例えば、約4.0~約7.0、もしくは約5.0~約6.0の範囲、または代替的に約5.5のpHで、pH緩衝液中で調製することができる。この範囲内のpHに好適である緩衝液の例には、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液濃度は、例えば、緩衝液および製剤の所望の張性に応じて、約1mM~約100mM、または約5mM~約50mMであり得る。
【0076】
使用方法
本開示のCNTFRリガンド結合剤および組成物を使用する方法もまた提供される。ある特定の実施形態によれば、治療有効量の本開示のCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含み、リガンドへの薬剤の結合はCNTFRへのリガンドの結合を阻害する、方法が提供される。ある特定の態様において、それを必要とする個体は、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有し、投与することは細胞増殖性疾患を治療するのに有効である。ある特定の態様において、細胞増殖性疾患はがんである。
【0077】
例えば、いくつかの実施形態において、本開示のCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物は、該CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物が有効量で投与されたときに、宿主におけるがん細胞(複数可)の増殖、転移および/または浸潤を阻害する。「がん細胞」とは、例えば、異常な細胞増殖、異常な細胞増殖、密度依存性の増殖阻害の損失、足場非依存性の増殖能力、免疫無防備状態の非ヒト動物モデルにおける腫瘍増殖および/もしくは発達、ならびに/または細胞形質転換の任意の適切な指標を促進することができる能力のうちの1つ以上によって特徴付けることができる、新生物細胞表現型を示す細胞を意味する。本明細書において「がん細胞」は、「腫瘍細胞」、「悪性細胞」または「がん性細胞」と互換的に使用され得、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発腫瘍、転移性腫瘍などのがん細胞を包含する。
【0078】
本開示の方法を用いて治療することができるがんとして、固形腫瘍、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、および本開示のCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を用いて治療され得る任意の他の種類のがんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
CNTFRリガンド結合剤は、単独で(例えば、単剤療法において)または1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)投与され得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、CNTFRリガンド結合剤(またはそれを含む医薬組成物)の有効量は、単独で(例えば、単独療法において)または1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)1回以上の用量で投与されたときに、個体における細胞増殖性障害(例えば、がん)の症状を、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を用いた治療が存在しない個体の症状と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上低減するのに有効な量である。
【0081】
ある特定の態様において、本開示の方法は、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物が有効量で投与されたときに、個体におけるがん細胞の増殖、転移および/または浸潤を阻害する。
【0082】
CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物は、インビボおよびエクスビボ法、ならびに全身および局所投与経路を含む、薬物送達に好適な任意の利用可能な方法および経路を用いて個体に投与される。従来のおよび医薬的に許容される投与経路としては、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、眼内、静脈内、動脈内、経鼻、経口、および他の経腸および非経口投与経路が含まれる。投与経路は、必要に応じて組み合わされてもよいか、またはCNTFRリガンド結合剤および/もしくは所望の効果に応じて調節されてもよい。CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物は、単回投与または複数回投与で投与することができる。いくつかの実施形態において、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物は静脈内投与される。いくつかの実施形態において、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物は、例えば、全身送達(例えば、静脈内注入)のために、または局所部位に、注射によって投与される。
【0083】
様々な個体が本方法に従って治療可能である。一般に、そのような対象は「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳類綱内の生物を説明するために広く使用されるいくつかの実施形態において、個体はヒトである。
【0084】
「治療すること」または「治療」とは、個体の細胞増殖性疾患(例えば、がん)に関連する症状の少なくとも改善を意味し、改善は、あるパラメータ、例えば、治療される細胞増殖性疾患に関連する症状の程度における少なくとも軽減を指すために広義で使用される。したがって、治療はまた、個体が細胞増殖性疾患、または少なくとも細胞増殖性疾患を特徴付ける症状にそれ以上苦しむことがないように、病的状態または少なくともそれに関連する症状が完全に抑制された、例えば、発生するのを防止された、または停止された、例えば、中止された状況も含む。
【0085】
投薬は、治療される疾患状態の重症度および応答性に依存する。最適な投薬スケジュールは、患者の体内における薬物蓄積の測定値から計算することができる。投与する医師は、最適な投薬量、投薬方法および反復率を決定することができる。最適な投与量は、個々のCNTFRリガンド結合剤の相対効力に応じて様々であり得、一般にインビトロおよびインビボ動物モデル等において有効であることが分かっているEC50に基づいて推定され得る。一般に、投与量は体重1kg当たり0.01μg~100gであり、1日、1週間、1ヶ月、または1年に1回以上投与され得る。治療する医師は、測定された滞留時間、および体液または組織中の薬物の濃度に基づいて、投与の繰り返し率を推定することができる。治療が成功した後、疾患状態の再発を防止するために対象に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物が、体重1kg当たり0.01μg~100gの範囲の維持用量で、1日1回以上、数ヶ月に1回、6ヶ月に1回、毎年1回、または任意の他の好適な頻度で投与される。
【0086】
本開示の治療方法は、単一の種類のCNTFRリガンド結合剤を対象に投与することを含んでもよいか、または異なるCNTFRリガンド結合剤のカクテルを投与することによって2種類以上のCNTFRリガンド結合剤を対象に投与することを含んでもよく、CNTFRリガンド結合剤は、例えば、異なるCNTFRリガンドに結合するように操作される。
【0087】
いくつかの実施形態において、この方法は、CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を投与する前に、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することを含む。CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することは、様々な手法およびそれらの組み合わせを用いて実施され得る。ある特定の態様において、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRリガンドの存在量に基づく。CNTFRリガンドは、CNTF、CLCF1、NP等、およびそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは以上であり得る。ある特定の態様において、試料は、がん関連線維芽細胞(正常肺線維芽細胞(NLF)等のCAF)を含み、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することは、CAFにおけるCLCF1発現のレベルに基づく。いくつかの実施形態において、CNTFRリガンドの存在量は、CNTFRリガンド捕捉剤として可溶性CNTFRポリペプチド、例えば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかを使用して定量化される。例えば、CNTFRリガンド捕捉剤として使用される可溶性CNTFRポリペプチドは、本明細書に記載の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかであり得る。
【0088】
ある特定の実施形態によれば、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRの存在量および/またはCNTFR-gp130-LIFR三成分受容体複合体の存在量に基づく。ある特定の態様において、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRシグナル伝達のレベルに基づく。CNTFRシグナル伝達のレベルは、1つ以上のCNTFRシグナル伝達経路分子のリン酸化状態に基づき得る。例えば、本発明者らは、CLCF1へのCNTFRの結合がJak-STATおよびRas-Raf-MEK-ERKシグナル伝達経路の活性化をもたらすことを明らかにした。したがって、Jak、STAT、Ras、Raf、MEK、ERK等のいずれか、またはそれらの任意の組み合わせの存在量、活性、リン酸化状態等を評価して、個体における異常なCNTFRシグナル伝達を測定することができる。
【0089】
同定することは、任意の好適な手法を用いて定量化されるリガンド、CNTFR分子、CNTFR-gp130-LIFR三成分受容体複合体等に基づいてもよい。ある特定の実施形態によれば、同定することはイムノアッセイに基づく。ELISA、フローサイトメトリーアッセイ、組織切片試料に対する免疫組織化学、組織切片試料に対する免疫蛍光、ウエスタン分析等を含む様々な好適なイムノアッセイフォーマットが利用可能である。
【0090】
いくつかの実施形態において、同定することは核酸配列決定に基づく。例えば、対象とするタンパク質をコードするmRNAに対応する配列決定リードの数は、そのタンパク質の発現レベルを決定するために使用され得る。ある特定の態様において、配列決定は、Illumina(登録商標)(例えば、HiSeq(商標)、MiSeq(商標)、および/またはGenome Analyzer(商標)配列決定システム)、Ion Torrent(商標)(例えば、Ion PGM(商標)および/またはIon Proton(商標)配列決定システム)、Pacific Biosciences(例えば、PACBIO RS II配列決定システム)、Life Technologies(商標)(例えば、SOLiD配列決定システム)、Roche(例えば、454GS FLX+および/またはGS Junior配列決定システム)によって提供される配列決定プラットフォーム、または任意の他の対象とする配列決定プラットフォーム等の次世代配列決定システムを使用して行われる。組織または体液試料から核酸を単離するためのプロトコル、および所望の配列決定プラットフォームに適した配列決定アダプターを有する配列決定ライブラリーを調製するためのプロトコルが容易に利用可能である。
【0091】
いくつかの実施形態において、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することを含む方法は、個体から試料を得ることをさらに含む。
【0092】
CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することを含む方法もまた提供される。CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することは、様々な手法およびそれらの組み合わせを用いて実施され得る。ある特定の態様において、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRリガンドの存在量に基づく。CNTFRリガンドは、CNTF、CLCF1、NP等、およびそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは以上であり得る。ある特定の態様において、試料は、がん関連線維芽細胞(正常肺線維芽細胞(NLF)等のCAF)を含み、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することは、CAFにおけるCLCF1発現のレベルに基づく。いくつかの実施形態において、CNTFRリガンドの存在量は、CNTFRリガンド捕捉剤として可溶性CNTFRポリペプチド、例えば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかを使用して定量化される。例えば、CNTFRリガンド捕捉剤として使用される可溶性CNTFRポリペプチドは、本明細書に記載の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかであり得る。ある特定の実施形態によれば、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRの存在量および/またはCNTFR-gp130-LIFR三成分受容体複合体の存在量に基づく。ある特定の態様において、同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRシグナル伝達のレベルに基づく。CNTFRシグナル伝達のレベルは、1つ以上のCNTFRシグナル伝達経路分子のリン酸化状態に基づき得る。例えば、本発明者らは、CLCF1へのCNTFRの結合がJak-STATおよびRas-Raf-MEK-ERKシグナル伝達経路の活性化をもたらすことを明らかにした。したがって、Jak、STAT、Ras、Raf、MEK、ERKのいずれか、またはそれらの任意の組み合わせの存在量、活性、リン酸化状態等を評価して、個体における異常なCNTFRシグナル伝達を測定することができる。同定することは、イムノアッセイ、核酸配列決定等を用いる等の任意の好適な手法を用いて定量化されるリガンド、CNTFR分子、CNTFR-gp130-LIFR三成分受容体複合体等に基づいてもよい。いくつかの実施形態において、方法は、個体から試料を得ることをさらに含む。
【0093】
個体から得られる試料は、個体がCNTFRシグナル伝達に関連した細胞増殖性疾患を有するかどうかを決定するのに好適な任意の試料であり得る。ある特定の態様において、試料は、全血、血清、血漿等の流体試料である。いくつかの実施形態において、試料は組織試料である。対象とする組織試料として腫瘍生検試料等が挙げられるが、これに限定されない。
【0094】
キット
キットもまた、本開示によって提供される。ある特定の実施形態によれば、キットは、治療有効量の本明細書に記載のCNTFRリガンド結合剤のいずれか、または本明細書に記載の医薬組成物のいずれか、およびCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を、それを必要とする個体(例えば、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして同定された個体)に投与するための指示書を含む。ある特定の態様において、キットは、容器内に存在する、本開示のCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を含む。容器は、チューブ、バイアル等であり得る。ある特定の実施形態によれば、キットは、1、2またはそれ以上、3またはそれ以上、4またはそれ以上、5またはそれ以上等の単位用量等の1つ以上の単位用量で存在するCNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を含む。
【0095】
キットの成分は、別々の容器内に存在してもよく、または複数の成分が単一の容器内に存在してもよい。
【0096】
CNTFRリガンド結合剤または医薬組成物を個体に投与するための指示書は、好適な記録媒体に記録することができる。例えば、指示は、紙またはプラスチックなどの基材上に印刷することができる。したがって、指示は、添付文書としてキット内に、キットの容器またはその構成要素のラベル(すなわち、包装または副包装に関連)などに存在し得る。他の実施形態において、指示は、ポータブルフラッシュドライブ、DVD、CD-ROM、ディスケットなどの好適なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態において、実際の指示は、キットには存在しないが、例えばインターネットを介してリモートソースから指示を取得するための手段が提供される。この実施形態の一例は、指示を閲覧することができ、かつ/または指示をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。指示と同様に、指示を得るための手段は、好適な基材上に記録される。
【0097】
いくつかの実施形態において、CNTFRリガンド捕捉剤と、生物学的試料中に存在するCNTFRリガンドの存在量を定量化するために捕捉剤を使用するための指示書と、を含む、キットが提供される。CNTFRリガンドは、CNTF、CLCF1、NP等、およびそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは以上であり得る。いくつかの実施形態において、CNTFRリガンドの存在量は、CNTFRリガンド捕捉剤として可溶性CNTFRポリペプチド、例えば、本開示の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかを使用して定量化される。例えば、CNTFRリガンド捕捉剤として使用される可溶性CNTFRポリペプチドは、本明細書に記載の可溶性CNTFRポリペプチドのいずれかであり得る。
【0098】
以下の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
【実施例】
【0099】
序文
上皮細胞とその下にある間質との間の情報伝達は、重要であるが、あまり理解されていない有機体生物学の局面である。異常に調節されると、これらの相互作用が腫瘍形成性であることが分かり得る。がん関連線維芽細胞(CAF)は、腫瘍の増殖を促進および維持することが知られているが、その根底にある機構は完全には理解されていない。本発明者らは、CAFが、腫瘍細胞上の毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)と結合して腫瘍増殖を促進するサイトカインであるカルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)を分泌する、新規情報伝達機構を同定した。
【0100】
可溶性CNTFRポリペプチドは、CNTFRシグナル伝達を減少させるための治療薬として用いることができ、野生型CNTFRと比較してCLCF1に対してより高い結合親和性を有する可溶性CNTFRポリペプチドが望ましいという仮説を立てた。CLCF1に対してより高い結合親和性を有する可溶性CNTFRポリペプチドを操作するために、エラープローンPCRによってCNTFRに突然変異をランダムに導入した。得られたライブラリーは、サブセットがCLCF1への結合を保持している酵母細胞表面上の融合タンパク質として提示された(
図4、パネルAに概略的に示される)。
【0101】
実施例1-機能的CLCF1の組換え発現
CLCF1を細菌発現プラスミドpET28bにクローニングし、Rosetta-gami2(DE)3細胞に形質転換した。発現させると、組換えCLCF1が封入体に蓄積し、それを5mM DTTを含有する60%ddH2O、40%アセトニトリル、0.1%TFAに溶解した。逆相高速液体クロマトグラフィーを用いてCLCF1を精製した。ヒト非小細胞肺癌細胞株A549をCLCF1で処理すると、数分以内にTyr705におけるSTAT3のリン酸化が誘導された(
図2、パネルA)。STAT3の活性化はまた、他の2つの細胞株H23およびH358においても検出された(
図2、パネルB)。これらの結果は、CLCF1がSTAT3のTyr705のリン酸化の増加を引き起こすことを示している。
【0102】
実施例2-組換えCLCF1は細胞生存を増加させる
サイトカイン媒介STAT3活性化は、細胞をアポトーシスから保護することが示されている。CLCF1も細胞生存を増加させることができるかどうかを試験するために、24時間の血清飢餓後に、A549細胞をCLCF1で処理した。72時間のインキュベーション後、CLCF1は濃度依存的に細胞生存を増加させることが示された(
図3、パネルA)。H23細胞で試験した場合も同様に、より高いCLCF1濃度は生存の増加をもたらした(
図3、パネルB)。血清がアッセイに含まれた場合、CLCF1処理のそのような効果は見られなかったことから、その効果は、血清飢餓等のストレッサーによって誘発される条件においてより明白であることが示唆される。
【0103】
実施例3-酵母に提示されたCNTFRは組換え発現させたCLCF1に結合する
CNTFRの細胞外ドメインを酵母表面ディスプレイプラスミドpCTCON2にクローニングし、Saccharomyces cerevisiae株EBY100に形質転換した。このプラスミドは、酵母凝集素タンパク質Aga2pへの遺伝子連結を介して酵母細胞表面上でのCNTFRの発現を可能にする(
図4、パネルA)。CNTFRは、N末端赤血球凝集素(HA)およびC末端c-Mycタグによって隣接され、それにより抗体標識およびフローサイトメトリー検出による全長タンパク質の検出が可能になる。二次抗体を用いたフローサイトメトリーによって測定したところ、誘導した酵母は、50%の発現パーセンテージを示し、20nMのCLCFとともにインキュベートした場合、発現集団の大部分が組換え発現させたCLCF1と結合した(
図4、パネルB)。
【0104】
実施例4-酵母に提示されたCNTFRは、CLCF1、gp130、およびLIFRと三成分受容体複合体を形成する
前述のように、CNTFR-CLCF1複合体は、gp130およびLIFRに結合して三成分受容体複合体を形成する。したがって、完全に機能的なCNTFRは、CLCF1とともにインキュベートした場合に、2つのβサブユニットに結合すると予想される。LIFRおよびgp130の可溶性構築物を調製するために、細胞外ドメインを哺乳動物発現プラスミドAdd2にクローニングし、ヒト胎児由来腎臓(HEK)293懸濁細胞にトランスフェクトした。精製を容易にするために、構築物をHisタグとマウスIgG2aの融合物として調製した。ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを用いてHis標識構築物を精製し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いてFc融合構築物を精製した。酵母に提示されたCNTFRをLIFR-Fcとともにインキュベートしたときに結合シグナルは検出されなかったが、このことは、CLCF1がないと、CNTFRがβ受容体に結合して下流のシグナル伝達経路を活性化しないことから予想された(
図5、パネルAおよびB)。しかしながら、CLCF1を添加するとLIFR-Fc結合シグナル伝達が増加したことから、CLCF1の存在下で、CNTFRが実際にLIFRと相互作用することが示唆される(
図5、パネルC)。酵母に提示されたCNTFRをCLCF1およびgp130とともにインキュベートした場合、LIFR-Fc結合シグナルはさらに高く増加したことから、gp130がLIFRとCNTFRとの結合にさらに寄与することが示唆される(
図5、パネルDおよびE)。
【0105】
以前のいくつかの研究は、CNTFRとベータ受容体との相互作用が特定の順序で起こり得ることを示唆している。例えば、CNTFは、最初にCNTFRに結合し、次いでgp130を動員し、最後にLIFRと複合体を形成することが提案されている。上記の実験は、CLCF1が最初に結合する限り、LIFRへのCNTFRの結合がgp130の非存在下で起こり得ることを示す。さらに、CLCF1なしでは、gp130-Fcは酵母に提示されたCNTFRへの検出可能な結合を示さなかった(
図6、パネルAおよびB)。CLCF1を添加するとgp130-Fcシグナルが有意に増加したことから、gp130がLIFRなしでCNTFRに結合できることが示唆される(
図6、パネルC)。LIFRを添加すると、gp130結合シグナルがわずかに増加した。総合すると、
図6に示される一連の結合実験は、LIFRとgp130との間にCNTFR-CLCF1への相乗的または相加的結合が存在することを示唆している(
図6、パネルDおよびE)。
【0106】
実施例5-酵母表面ディスプレイを用いたCNTFRのCLCF1への親和性成熟
エラープローンPCRを用いてCNTFR(20~342)の細胞外ドメインに突然変異をランダムに導入するタンパク質工学戦略を設計した。得られたライブラリーは、推定約1×10
8個の形質転換体の多様性を有し、前述のように酵母細胞表面に融合タンパク質として提示された。平衡結合条件を用いてフローサイトメトリー選別(FACS)によってスクリーニングし、増加したCLCF1結合を示す変異体についてライブラリーを濃縮し、所与の量のc-Myc発現について正規化した選別の各連続ラウンドにおいてライブラリーとともにインキュベートしたCLCF1の濃度を減少させることにより、スクリーニングストリンジェンシーを付与した。FACSを用いた3ラウンドのスクリーニング後、異なるレベルのCLCF1結合シグナルを有する3つの酵母集団が観察された。最も高い2つのCLCF1結合集団においてコンセンサス変異が出現した:中間の親和性集団においてT174Pが観察された一方、最も高い親和性集団においてS237Fが観察された(
図7および
図8)。
【0107】
実施例6-高親和性CLCF1変異体を同定するためのシャッフルCNTFRライブラリーのスクリーニング
濃縮されたコンセンサス変異にもかかわらず、選別されたライブラリーは、依然として実質的な多様性を含んでいた。2つのより高い結合集団において見出された突然変異の相加的効果を試験するために、クローンをStaggered Extension Process(StEP)法を用いてシャッフルした。このライブラリーに増加したストリンジェンシーを課すために、平衡結合と速度論的解離速度スクリーンの組み合わせを使用した。3ラウンドのスクリーニング後、4つの突然変異(R110Q、T174P、S237F、およびI287F)の組み合わせが出現した(
図9)。定性的酵母ディスプレイ結合試験は、これらの突然変異のそれぞれがCLCF1に対する結合親和性に寄与していることを示唆し、したがって4つすべての突然変異を含むクローン(変異体4)をさらなる実験のために選択した(
図10、パネルAおよびB)。興味深いことに、酵母はCNTFに結合した野生型CNTFRを提示したが、変異体4はCNTFに結合しなかったことから、定向進化の過程がCLCF1に対する特異性の増加をもたらしたことが示唆される(
図10、パネルC)。変異体4は、hCLCF1に加えて、依然としてmCLCF1にも結合した(
図10、パネルD)。
【0108】
実施例7-LIFRへの結合減少についての親和性成熟CNTFRのネガティブスクリーニング
CNTFRのアミノ酸残基268および269におけるアラニン置換が、CNTFRとβ受容体との相互作用を減少させることが以前に示された。T268AおよびD269Aが酵母細胞表面に提示されたCNTFRに導入されたとき、我々は、これらの突然変異がgp130に対する結合を減少させたが、LIFRへの有意な結合が残っていたことを見出した(
図11)。したがって、CNTFRをさらに操作してLIFRに対するその結合を減少させるために、エラープローンPCRを用いて別のランダム突然変異を
図10のパネルBの変異体4に導入した。結果として得られたライブラリーを再び酵母に提示させたが、今度は、CLCF1の存在下でLIFRに対する結合シグナルが減少した集団についてスクリーニングした。CLCF1に対する結合親和性を保持するために、CLCF1結合に対するポジティブ選択とLIFRに対するネガティブ選択とを交互に繰り返すことによってスクリーニングを行った(
図12)。6ラウンドの選別の後、2つのコンセンサス変異が出現した(Y177HおよびK178N)(
図13、パネルA)。これらの突然変異はLIFR結合の減少に相加的に寄与したため、両方の突然変異を有するクローン(eCNTFRと命名)を、さらなる特徴付けのために選択した。eCNTFRは、変異体4からの高親和性CLCF1結合を付与する4つの突然変異、およびLIFRへの結合を減少させる2つの新しい突然変異を含有する。
【0109】
実施例8-操作された可溶性CNTFRの特徴付け
eCNTFR変異体をAdd2哺乳動物発現ベクターにクローニングし、HEK293細胞にトランスフェクトして、HisタグおよびマウスIgG2a Fcに融合した可溶性構築物を生成した。野生型CNTFR(wtCNTFR)は、細胞培養液1リットル当たり8ミリグラムを産生し、eCNTFRは、1リットル当たり4ミリグラムを産生した。可溶性CNTFR構築物の結合親和性を測定するために、それらを最初にCLCF1とともに室温で4時間インキュベートした。次いで、抗his抗体または抗マウスFc抗体でコーティングしたマイクロタイタープレートを用いて複合体を捕捉した。ウサギ抗CLCF1一次抗体、続いてHRP標識抗ウサギ二次抗体を用いて、CLCF1と可溶性CNTFRとの結合相互作用を測定することができた。His標識およびFc融合eCNTFRの両方がCLCF1に対してピコモルの結合親和性を示した(
図14、パネルB)。対照的に、wtCNTFRについては、CLCF1結合親和性が弱すぎたため定量化できなかった。同じ手法を用いて、β受容体との結合相互作用を特徴付けた。これらの実験において、両方の受容体に結合したwtCNTFRとは異なり、eCNTFR-HisおよびeCNTFR-Fcは、gp130およびLIFRに対して検出可能な結合シグナルを示さなかった(
図13、パネルB)。これらの結果は、酵母に提示された構築物から観察された結果と一致していた。糸球体濾過を回避するために小タンパク質のサイズを大きくすると血清半減期が有意に増加し得るため、CLCF1阻害の下流効果を評価するために、マウスIgG2a Fcドメインに融合したeCNTFR-Fcを選択した。このFc融合物はまた、インビボでの半減期延長のためにFcRn媒介リサイクルから利益を得るであろう。
【0110】
例示的な可溶性CNTFRポリペプチド-Fc融合物(「eCNTFR-Fc」-配列番号4)のアミノ酸配列を下の表4に記載する。この例では、配列番号2の可溶性CNTFRポリペプチドが全長マウスFc領域(表4において下線で示される)に融合されている。
【表4】
【0111】
実施例9-eCNTFR-FcはヒトNSCLC細胞においてSTAT3活性化を阻害する
eCNTFR-Fcが効果的にCLCF1を中和し、STAT3リン酸化を阻害することができるかどうかを決定するために、我々は2つのヒトNSCLC細胞株、A549およびH23に対するその効果を試験した。可溶性CNTFR構築物の存在下および非存在下で細胞をCLCF1で刺激した。驚くべきことに、wtCNTFR-FcはSTAT3のリン酸化(Tyr705)を増加させたが、eCNTFR-Fcによる処理はSTAT3のリン酸化を効果的に減少させた(
図15、パネルA)。さらに、eCNTFR-Fcとのインキュベーションは、A549細胞およびH23細胞の両方において血清飢餓状態におけるCLCF1媒介細胞生存を阻害した(それぞれ
図15、パネルBおよびC)。
【0112】
実施例10-eCNTFR-Fcはマウス異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を減少させる
次いで、我々は、eCNTFR-FcがインビボでCLCF1を隔離して腫瘍増殖を減少させる能力を保持するかどうかを試験した。腫瘍を持たないマウスに1mg/kg体重のeCNTFR-Fcを単回投与し、捕捉剤としてeCNTFR-Fcを用いたELISAにより、異なる時点で血清中の未結合CLCF1の量を測定した。注射の6、12、24、36、および48時間後に血清試料を回収し分析した。血清CLCF1は注射されたeCNTFR-Fcによって急速に隔離されたが、48時間後にはCLCF1レベルが未処理のベースラインに近づいた(
図16、パネルA)。注射後6時間から開始して、測定されたeCNTFR-Fcレベルは約48時間の推定半減期で減少し、これは血清CLCF1の隔離と相関していた。
【0113】
eCNTFR-Fcがインビボで腫瘍増殖に影響を及ぼし得るかどうかを試験するために、非小細胞肺癌の2つの異なるモデルをeCNTFR-Fcで処理した。第1のモデルでは、各マウスの対向する2つの側腹部でA549細胞を皮下注射し、増殖させた。腫瘍サイズが約100mm
3に成長した後、マウスに10mg/kgもしくは1mg/kg体重または生理食塩水対照を週2回、4週間注射した。両方の濃度のeCNTFR-Fcによる処理は、生理食塩水対照と比較して処理の17日後に腫瘍増殖を有意に減少させた(
図16、パネルBおよびC)。
【0114】
H23細胞を用いた異種移植片モデルを用いて、別の実験を同様の様式で行った。今回は、10mg/kgでのeCNTFR-Fc処理をwtCNTFR-Fc処理および生理食塩水対照と比較し、注射頻度を週3回、39日間に増加させた。同様の結果が観察され、eCNTFR-Fcは試験終了時までに腫瘍体積を有意に減少させ、一方wtCNTFR-Fcは腫瘍サイズをわずかに増加させるように見えたが、これらの結果は統計的に有意ではなかった(
図17)。
【0115】
実施例11-操作されたCLCF1トラップ(eCNTFR)における特異性
CNTF(毛様体神経栄養因子)は、CNTFRのリガンド結合モチーフをCLCF1と共有するCNTFRの別のリガンドである。CNTF媒介シグナル伝達は神経細胞の生存にとって重要であり、傷害によって誘導される細胞保護効果を有し得るため、CNTFに勝るCLCF1へのeCNTFR-Fcの結合親和性は、CNTFを阻害することによる副作用を予防するのに有利であり得る。組換え生成されたCNTFに対するeCNTFR-Fcの結合親和性をELISAを用いて測定したとき、wtCNTFR-FcはCNTFに対して実質的な結合を示したが、eCNTFR-Fcは試験濃度においてCNTFに対するその親和性を失った。一方、eCNTFR-FcはマウスCLCF1(mCLCF1)に対して高い親和性を示したが、マウスCLCF1はヒト細胞においてSTAT3をリン酸化することができるため、これはインビボマウスモデル実験にとって非常に重要であり得る。データを
図18のパネルAに示す。
【0116】
eCNTFR-Fcが効果的にCLCF1を中和し、STAT3リン酸化を阻害することができるかどうかを決定するために、2つのヒトNSCLC細胞株、A549およびH23に対するその効果を試験した。可溶性CNTFR構築物の存在下および非存在下で細胞をCLCF1で刺激した。wtCNTFR-FcはSTAT3(Tyr705)のリン酸化を増加させたが、eCNTFR-Fcは両方の細胞株においてリン酸化を効果的に減少させた。データを
図18のパネルBに示す。
【0117】
実施例12-CLCF1隔離およびeCNTFR-Fcクリアランスの薬物動態
eCNTFR-FcがインビボでCLCF1を隔離する能力を保持するかどうかを試験するために、NOD/SCID/ガンママウスにおける10mg/kgのeCNTFR-Fcの腹腔内(ip)投与後の血液クリアランスおよびCLCF1隔離を定量化した。注射後に血清試料を回収し、捕捉剤としてeCNTFR-Fcを用いたELISAにより、未結合CLCF1(四角)を測定した。ビヒクルで処理したマウスを用いてベースラインCLCF1レベル(丸)を決定した。血中のeCNTFR-Fcレベルは、捕捉剤として抗Fc抗体を用いたELISAにより定量化した。血清CLCF1は注射されたeCNTFR-Fcによって急速に隔離されたが、72時間で、CLCF1レベルは未処理のベースラインに近づいた。(
図19、パネルA)。これらのデータは、eCNTFR-FcがマウスCLCF1に効果的に結合することを実証し、インビボでの有意な毒性はマウスにおいて観察できるはずであることを示唆するものである。
【0118】
実施例13-eCNTFR-Fcはインビボで腫瘍増殖を阻害する
インビボでeCNTFRの薬理学的効力を試験するために、NSCLC細胞株を免疫不全マウスに移植した。原発腫瘍を約100~150mm3のサイズまで成長させた。最初に、ビヒクル(PBS)、野生型CNTFR(wtCNTFR-Fc)、低用量(1mg/kg)のeCNTFR-Fc、および高用量(10mg/kg)のeCNTFR-Fcの4つの群のうちの1つにマウスを無作為化した(
図21、パネルB)。マウスに週2回、18日間腹腔内(ip)注射した。eCNTFR-Fcの投与は用量依存性の腫瘍阻害を示した(
図19、パネルB~D)。第2のNSCLC細胞株においても同等の効果が観察された。
【0119】
増加する証拠は、PDTXがヒト腫瘍生物学を忠実に再現し、治療に対する反応を予測することを示唆している。ヒトから外科的に切除された腫瘍のマウスへの直接移植によって得られたPDTXは、形態学的類似性を維持し、元の腫瘍の分子プロファイルを再現することが知られている。したがって、臨床的に関連する状況において我々の発見を検証するために、我々は、eCNTFR-Fcを試験するためのNSCLC PDTXモデルを生成した。1つのLUAD PDTXモデルは、腹腔内注射による週3回のeCNTFR-Fc処理により、3週間にわたって、または対照(PBS)マウスが罹患の徴候を示すときまで、有意な腫瘍増殖阻害を示した(
図19、パネルE~H)。
【0120】
各異種移植片モデルにおいて、eCNTFRに応答した増殖およびアポトーシスを、それぞれPH3およびCC3免疫染色によってアッセイした。eCNTFR-Fcで処理した後、増殖の有意な減少およびアポトーシスの増加が観察された(
図19、パネルI)。パネルIの左下および右下の棒グラフにおいて、PBS、WT CNTFR、eCNTFR(1mg/kg)、およびeCNTFR(10mg/kg)についての結果が左から右へ提供されている。総合すると、これらの結果は、腫瘍細胞におけるCLCF1誘導シグナル伝達の混乱が、eCNTFRを用いて効果的に達成され得ることを示唆している。
【0121】
実施例15-肺癌におけるCLCF1およびCNTFRの発現
がん関連線維芽細胞(CAF)はCLCF1を発現し、インビボでこのサイトカインの供給源であり得るが、本発明の試験によりNSCLC細胞系もCLCF1を分泌することが明らかされたことから、このサイトカインのパラ分泌シグナル伝達および自己分泌シグナル伝達の両方の存在が示唆される(
図20、パネルA)。CLCF1の受容体であるCNTFRもまた、試験したすべてのNSCLC細胞株および患者由来異種移植片(PDTX)モデルで発現されることが明らかになった(
図20、パネルBおよびC)。PDTXモデルにおいて、およびKrasG12D;P53f/f遺伝子操作マウスモデルに作製された腫瘍において、免疫組織化学によってCNTFRの発現が観察された(
図20、パネルD)。総合すると、これらの結果は、CLCF1-CNTFRシグナル伝達軸が肺腺癌において活性であり、それが発がんにおいて、特に発がん性Krasによって駆動される腫瘍において役割を有し得ることを示唆する。
【0122】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の項目によっても定義される。
1.毛様体神経栄養因子受容体(CNTFR)のリガンドに特異的に結合する薬剤と、
医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0123】
2.CNTFRのリガンドに特異的に結合する薬剤は、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)、ニューロポエチン(NP)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるリガンドに特異的に結合する、項目1に記載の医薬組成物。
【0124】
3.CNTFRのリガンドに特異的に結合する薬剤は、可溶性CNTFRポリペプチドである、項目1または項目2に記載の医薬組成物。
【0125】
4.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRポリペプチドと比較して、リガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異を含む、項目3に記載の医薬組成物。
【0126】
5.リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、糖タンパク質130(gp130)、白血病抑制因子受容体(LIFR)、またはその両方である、項目4に記載の医薬組成物。
【0127】
6.リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、LIFRである、項目5に記載の医薬組成物。
【0128】
7.LIFRに対する結合親和性を低下させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置177、178、またはその両方に存在する、項目6に記載の医薬組成物。
【0129】
8.リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、gp130である、項目5に記載の医薬組成物。
【0130】
9.gp130に対する結合親和性を低下させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置268、269、またはその両方に存在する、項目8に記載の医薬組成物。
【0131】
10.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメイン内に、溶解性を付与する突然変異を含む、項目3~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0132】
11.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメイン内にトランケーションを含む、項目10に記載の医薬組成物。
【0133】
12.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメインを欠いている、項目10に記載の医薬組成物。
【0134】
13.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRポリペプチドと比較して、CNTFRリガンドに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を増加させる突然変異を含む、項目3~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0135】
14.CNTFRリガンドは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)、ニューロポエチン(NP)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、項目13に記載の医薬組成物。
【0136】
15.CNTFRリガンドは、CLCF1である、項目13に記載の医薬組成物。
【0137】
16.CLCF1に対する結合親和性を増加させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置110、174、237、287、またはそれらの任意の組み合わせに存在する、項目15に記載の医薬組成物。
【0138】
17.薬剤は、抗体である、項目1または項目2に記載の医薬組成物。
【0139】
18.薬剤は、異種ポリペプチドと融合したポリペプチドである、項目1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0140】
19.異種ポリペプチドは、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせである、項目18に記載の医薬組成物。
【0141】
20.異種ポリペプチドは、Fcドメインである、項目19に記載の医薬組成物。
【0142】
21.Fcドメインは、ヒトFcドメインである、項目20に記載の医薬組成物。
【0143】
22.薬剤は、部分(moiety)に結合している、項目1~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0144】
23.部分(moiety)は、ポリエチレングリコール(PEG)、抗がん剤、検出可能な標識、またはそれらの任意の組み合わせである、項目22に記載の医薬組成物。
【0145】
24.治療有効量の項目1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物または項目58~74のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチドを、それを必要としている個体に投与することを含み、リガンドへの薬剤の結合は、CNTFRへのリガンドの結合を阻害する、方法。
【0146】
25.前記それを必要とする個体は、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有し、前記投与することは、細胞増殖性疾患を治療するのに有効である、項目24に記載の方法。
【0147】
26.投与の前に、CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することをさらに含む、項目24または項目25に記載の方法。
【0148】
27.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRリガンドの存在量に基づく、項目26に記載の方法。
【0149】
28.前記存在量は、CNTF、CLCF1、NP、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるCNTFRリガンドのものである、項目27に記載の方法。
【0150】
29.CNTFRリガンドの存在量は、CNTFRリガンド捕捉剤として可溶性CNTFRポリペプチドを使用して定量化される、項目27または項目28に記載の方法。
【0151】
30.CNTFRリガンド捕捉剤として使用される可溶性CNTFRポリペプチドは、項目58~74のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチドである、項目29に記載の方法。
【0152】
31.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRの存在量に基づく、項目26に記載の方法。
【0153】
32.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRシグナル伝達のレベルに基づく、項目26に記載の方法。
【0154】
33.試料中のCNTFRシグナル伝達を定量化することは、1つ以上のCNTFRシグナル伝達経路分子のリン酸化状態を定量化することを含む、項目32に記載の方法。
【0155】
34.前記同定することは、イムノアッセイに基づく、項目27~33のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
35.前記同定することは、核酸配列決定に基づく、項目27~33のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
36.試料は、組織試料である、項目27~35のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
37.試料は、液体試料である、項目27~35のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
38.個体から試料を得ることをさらに含む、項目27~37のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
39.細胞増殖性疾患は、がんである、項目25~38項のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
40.がんは、肺癌である、項目39に記載の方法。
【0162】
41.肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、項目40に記載の方法。
【0163】
42.CNTFRシグナル伝達に関連する細胞増殖性疾患を有するとして個体を同定することを含む、方法。
【0164】
43.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRリガンドの存在量に基づく、項目42に記載の方法。
【0165】
44.前記存在量は、CNTF、CLCF1、NP、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるCNTFRリガンドのものである、項目43に記載の方法。
【0166】
45.CNTFRリガンドの存在量は、CNTFRリガンド捕捉剤として可溶性CNTFRポリペプチドを使用して定量化される、項目42または項目43に記載の方法。
【0167】
46.CNTFRリガンド捕捉剤として使用される可溶性CNTFRポリペプチドは、項目58~74節のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチドである、項目45に記載の方法。
【0168】
47.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRの存在量に基づく、項目42に記載の方法。
【0169】
48.前記同定することは、個体から得られた試料中のCNTFRシグナル伝達のレベルに基づく、項目42に記載の方法。
【0170】
49.試料中のCNTFRシグナル伝達のレベルは、1つ以上のCNTFRシグナル伝達経路分子のリン酸化状態に基づいて決定される、項目48に記載の方法。
【0171】
50.前記同定することは、イムノアッセイに基づく、項目42~49のいずれか一項に記載の方法。
【0172】
51.前記同定することは、核酸配列決定に基づく、項目42~49のいずれか一項に記載の方法。
【0173】
52.試料は、組織試料である、項目42~51のいずれか一項に記載の方法。
【0174】
53.試料は、液体試料である、項目42~51のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
54.個体から試料を得ることをさらに含む、項目43~53のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
55.細胞増殖性疾患は、がんである、項目42~54のいずれか一項に記載の方法。
【0177】
56.がんは、肺癌である、項目55に記載の方法。
【0178】
57.肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である、項目56に記載の方法。
【0179】
58.野生型CNTFRポリペプチドと比較して、リガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異、
野生型CNTFRポリペプチドと比較して、CNTFRリガンドに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を増加させる突然変異、または
その両方、を含む、可溶性CNTFRポリペプチド。
【0180】
59.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRポリペプチドと比較して、リガンド-CNTFR複合体サブユニットに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を低下させる突然変異を含み、リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、糖タンパク質130(gp130)、白血病抑制因子受容体(LIFR)、またはその両方である、項目58に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0181】
60.リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、LIFRである、項目59に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0182】
61.LIFRに対する結合親和性を低下させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置177、178、またはその両方に存在する、項目60に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0183】
62.リガンド-CNTFR複合体サブユニットは、gp130である、項目59に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0184】
63.gp130に対する結合親和性を低下させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置268、269、またはその両方に存在する、項目62に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0185】
64.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメイン内に、溶解性を付与する突然変異を含む、項目58~63項のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0186】
65.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメイン内にトランケーションを含む、項目64に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0187】
66.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRを細胞膜に固定するドメインを欠いている、項目64に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0188】
67.可溶性CNTFRポリペプチドは、野生型CNTFRポリペプチドと比較して、CNTFRリガンドに対する可溶性CNTFRポリペプチドの結合親和性を増加させる突然変異を含む、項目58~66のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0189】
68.CNTFRリガンドは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン様サイトカイン因子1(CLCF1)、ニューロポエチン(NP)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、項目67に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0190】
69.CNTFRリガンドは、CLCF1である、項目67に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0191】
70.CLCF1に対する結合親和性を増加させる突然変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドに対してアミノ酸位置110、174、237、287、またはそれらの任意の組み合わせに存在する、項目69に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0192】
71.可溶性CNTFRポリペプチドは、異種ポリペプチドと融合している、項目58~70のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0193】
72.異種ポリペプチドは、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせである、項目71に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0194】
73.異種ポリペプチドは、Fcドメインである、項目71に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0195】
74.Fcドメインは、ヒトFcドメインである、項目73に記載の可溶性CNTFRポリペプチド。
【0196】
75.項目58~74のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチドをコードする、核酸。
【0197】
76.項目75に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0198】
77.項目58~70のいずれか一項に記載の可溶性CNTFRポリペプチド、項目75に記載の核酸、項目76に記載の発現ベクター、またはそれらの任意の組み合わせを含む、宿主細胞。
【0199】
78.宿主細胞は、原核細胞である、項目77に記載の宿主細胞。
【0200】
79.宿主細胞は、真核細胞である、項目77に記載の宿主細胞。
【0201】
80.真核細胞は、哺乳動物細胞である、項目79に記載の宿主細胞。
【0202】
81.哺乳動物細胞は、ヒト細胞である、項目80に記載の宿主細胞。
【0203】
82.細胞表面ディスプレイタンパク質と融合したCNTFRポリペプチドをコードする、核酸。
【0204】
83.CNTFRポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するCNTFRポリペプチドと比較して1つ以上の突然変異を含む、項目82に記載の核酸。
【0205】
84.細胞表面ディスプレイタンパク質は、細菌表面ディスプレイタンパク質、ファージディスプレイタンパク質、および酵母ディスプレイタンパク質からなる群から選択される、項目83に記載の核酸。
【0206】
85.細胞表面ディスプレイタンパク質は、酵母ディスプレイタンパク質である、項目84に記載の核酸。
【0207】
86.酵母ディスプレイタンパク質は、Aga2pである、項目85に記載の核酸。
【0208】
87.項目82~86のいずれか一項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0209】
88.項目82~86のいずれか一項に記載の核酸、または項目87に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0210】
89.項目82~86のいずれか一項に記載の核酸、または項目87に記載の発現ベクターによってコードされる、CNTFRポリペプチド。
【0211】
このように、上記は、単に本開示の原理を説明しているに過ぎない。当業者であれば、たとえ本明細書に明示的に記載または図示されていなくても、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる種々の構成を考案することができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載されたすべての例および条件的文言は、主として本発明の原理および発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に記載された例および条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体的な例を記載する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。加えて、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たすいかなる開発要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
【配列表】