(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】光照射装置、およびこれを備える露光装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20230407BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/13 101
(21)【出願番号】P 2022141322
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2021041003の分割
【原出願日】2021-03-15
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2020089242
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 健一
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017952(JP,A)
【文献】特開2013-084000(JP,A)
【文献】特開2018-063831(JP,A)
【文献】特開2018-101042(JP,A)
【文献】中国実用新案第205229668(CN,U)
【文献】中国実用新案第209014871(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0204751(US,A1)
【文献】特開2013-228533(JP,A)
【文献】特開2006-323060(JP,A)
【文献】特開2016-153920(JP,A)
【文献】特開2017-072768(JP,A)
【文献】特開2011-076033(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108803150(CN,A)
【文献】国際公開第2015/040664(WO,A1)
【文献】特開2005-109025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/1339
G03F 7/20-7/24
H01L 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを有する光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光をワークに照射する偏光素子と備えており、
前記LEDに入力する電力を変化させることによって前記ワークまたは露光面への光の照度や積算光量が調整され、
前記光源は、複数の前記LEDが配置された複数のLEDモジュールを備えており、
複数の前記光源が前記ワークの移動方向に沿って並べられており、
前記ワークの移動方向に沿って一直線上に並んだ、互いに異なる前記光源に配置されている複数の前記LEDモジュール
で構成されたグループが複数形成されており、
前記各グループに配置された複数の前記LEDに入力する電力は、
前記グループごとに互いに異なる駆動電源によって調整されることを特徴とする
光照射装置。
【請求項2】
前記ワークまたは前記露光面の照度を測定する計測器をさらに備えており、
前記計測器で測定された前記ワークまたは前記露光面の照度や積算光量の値から前記ワークまたは前記露光面における光のムラを算出し、前記ムラに対応する位置にある前記LEDに入力する電力を変化させて前記ムラが解消されることを特徴とする
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記偏光素子は、前記光源から照射される光の照射方向に長い形状であることを特徴とする
請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記偏光素子は、複数のワイヤーグリッドで構成されており、
前記各ワイヤーグリッドは、台形状に形成されており、
前記光源から照射される光の照射方向に直交する方向に一つの台形の下辺と隣り合う台形の上辺が直線状に並ぶことを特徴とする
請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記偏光素子の数は、前記光源の数よりも少ないことを特徴とする
請求項1から4のいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光照射装置を備える露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶パネルを製造する際の露光用に用いられる光照射装置、およびこれを備える露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶をTN方式の表示パネルとして使用する際、2枚のガラス基板の間に液晶を封入してこれらガラス板の内面に形成された透明電極に電圧を印加しただけでは正常も動作しない。これは液晶分子がバラバラの状態にあるからである。
【0003】
液晶に正常なTN方式の動作をさせるためには、液晶分子を一定方向に配向させるとともに、液晶分子の立ち上がり方向を一定にする必要がある。具体的には、ガラス基板に対して3°程度傾く方向に液晶分子を配向させており、この傾きの角度はプレチルト角と呼ばれている。
【0004】
そして、液晶の配向性能をもつ一対のガラス基板のうち、一方のガラス基板をX方向に配向するように配置し、対面する他方のガラス基板をX方向と直交するY方向に配置する。(TN方式)
【0005】
このように、液晶パネルの製造には液晶配向処理が必要であり、従前より、ガラス基板の表面を物理的に擦るラビング処理が行われてきた(例えば、特許文献1)。このラビング処理とは、ガラス基板上に形成された有機高分子膜を毛足の長い布等で所定の方向に擦ることにより、液晶分子を一定方向に配向させることのできる膜を形成する処理方法である。
【0006】
ラビング処理が普及して、応答速度が速いTN方式が一般的になったことにより、液晶パネルが安定した性能で安価に量産できるようになってパソコン等のOA機器用の表示モニターやゲーム機用のモニターとして液晶モニターが普及した経緯がある。
【0007】
しかし、ラビング方式には、均一性に乏しいこと、TFTの静電破壊が生じる可能性があること、さらに、ラビング時に生じる粉末ごみが付着するといった信頼性に係わる問題があった。
【0008】
加えて、ラビング方式で達成できるプレチルト角は、上述のように水平配向液晶モードを代表するTN方式においては3°程度であり、低電圧駆動で、高速応答に対応した液晶モードの表示パネルを構成するためには難があった。
【0009】
このようなラビング方式の問題に対応するため、現在では、光配向処理を実施できる露光機が提案されており、この露光機には、光源としてロングアークの水銀灯での使用が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ロングアークの水銀灯を用いた露光機にも問題があると考えられる。一般に、露光材料には特定の波長帯域の光に反応するように感光特性が設定されているところ、水銀灯からの光の分光特性を見ると、当該光は多くの水銀線の輝線で構成されていることがわかる。
【0012】
このため、水銀灯を露光用の光源とした場合、露光材料の感光特性から外れた波長の光が多くなることから、当該感光波長帯域を外れた波長の光によって露光材料を過露光させてしまうおそれがあると考えられる。
【0013】
もちろん、感光特性から外れた波長の光線(短波側および長波側)を選択波長反射膜によってカットすることも可能であるが、狭帯域のカットフィルター(バンドパスフィルタ)が必要となり、かつ、高い精度が要求されることから、結果として装置のコストアップにつながってしまう。
【0014】
また、ロングアークの水銀灯から放射される光は広範囲に拡散するので、光配向処理を実施するために重要な水銀灯からの光の照射角の制御が難しく、例えばルーバー等で余分な光を遮る手法も検討されているが、この場合、水銀灯から放射される光の利用効率が低下するという別の問題がある。
【0015】
さらに、コリメートされた(平行化された)光をガラス基板に対して斜めに照射する方法もあるが、この手法は光学系が複雑になることから装置が大型で高価になるという問題があると考えられる。
【0016】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構成で光配向処理を実施できる露光装置用の光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一局面によれば、
複数のLEDを有する光源と、
前記光源からの光を受け、透過させた前記光をワークに照射する偏光素子と備えており、
前記LEDに入力する電力を変化させることによって前記ワークまたは露光面への光の照度や積算光量が調整され、
前記光源は、複数の前記LEDが配置された複数のLEDモジュールを備えており、
複数の前記光源が前記ワークの移動方向に沿って並べられており、
前記ワークの移動方向に沿って一直線上に並んだ、互いに異なる前記光源に配置されている複数の前記LEDモジュールで構成されたグループが複数形成されており、
前記各グループに配置された複数の前記LEDに入力する電力は、前記グループごとに互いに異なる駆動電源によって調整されることを特徴とする
光照射装置が提供される。
【0018】
好適には、
前記ワークまたは前記露光面の照度を測定する計測器をさらに備えており、
前記計測器で測定された前記ワークまたは前記露光面の照度や積算光量の値から前記ワークまたは前記露光面における光のムラを算出し、前記ムラに対応する位置にある前記LEDに入力する電力を変化させて前記ムラが解消される。
【0019】
好適には、
前記偏光素子は、前記光源から照射される光の照射方向に長い形状である。
【0020】
好適には、
前記偏光素子は、複数のワイヤーグリッドで構成されており、
前記各ワイヤーグリッドは、台形状に形成されており、
前記光源から照射される光の照射方向に直交する方向に一つの台形の下辺と隣り合う台形の上辺が直線状に並んでいる。
【0021】
好適には、
前記偏光素子の数は、前記光源の数よりも少ない。
【0022】
本発明の他の局面によれば、
上述した光照射装置を備える露光装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光照射装置によれば、複数のLEDの光軸をワークに対して第1の角度だけ傾け、各LEDから放射される光の配向角の半分に相当する第2の角度をこの第1の角度よりも小さく設定することにより、各LEDから放射された光のすべてがLEDからワークに向かう垂線よりもLEDの光軸側に向かう。
【0024】
これにより、簡便な構成で実効的な照射角を有する光の量が多い光配向処理を実施できる露光装置用の光照射装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明が適用された光照射装置10を示す図である。
【
図2】複数のLEDモジュール100で構成された光源12を備える光照射装置10示す正面図である。
【
図3】角度調節機構110を備える光照射装置10を示す斜視図である。
【
図4】角度調節機構110を備える光照射装置10を示す側面図である。
【
図5】幅方向位置調節機構120を備える光照射装置10示す正面図である。
【
図6】鋸歯状のLEDベース130を備える光源12を示す斜視図である。
【
図7】鋸歯状のLEDベース130を備える光源12を示す側面図である。
【
図8】全体角度調節機構152を備える光照射装置10を示す斜視図である。
【
図9】全体角度調節機構152を備える光照射装置10を示す側面図である。
【
図10】変形例1に係る光照射装置10を示す正面図である。
【
図11】変形例1に係る光照射装置10を示す側面図である。
【
図12】変形例2に係る光照射装置10を示す正面図である。
【
図13】変形例2に係る光照射装置10を示す側面図である。
【
図14】変形例3に係る光照射装置10を示す斜視図である。
【
図15】変形例3に係る別の光照射装置10を示す側面図である。
【
図16】変形例8に係る光照射装置10を示す側面図である。
【
図17】変形例9に係る偏光素子14を示す平面図である。
【
図18】変形例10に係る偏光素子14を示す平面図である。
【
図19】変形例11に係る光照射装置10を示す平面図である。
【
図20】変形例11に係る光照射装置10を示す斜視図である。
【
図21】変形例11に係る光照射装置10を示す平面図である。
【
図22】変形例11に係る駆動電源180の例を示す図である。
【
図24】変形例11に係る、LED群Y,Zと露光面Aにおける計測器190との位置関係を示す図である。
【
図25】変形例11に関し、LED群Y,Zからの光が露光面Aを照射する範囲を示す図である。
【
図26】変形例11に関し、LED群Y,Z,Vからの光が露光面Aを照射する範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(光照射装置10の構成)
本発明が適用された実施形態に係る光照射装置10について以下に説明する。光照射装置10は、主に液晶パネルを製造する際の露光の為に露光装置に組み込まれて用いられる。この光照射装置10は、
図1に示すように、大略、光源12と、偏光素子14とを備えている。
【0027】
光源12は、ワーク(露光対象物)Xが載置される露光面Aに向けて露光用光Lを照射する部材であり、本実施形態では複数のLED16が使用されている。これらLED16は露光面A上を一定方向に移動していくワークXに対して走査するように露光用光Lを照射していくので、当該光源12はワークXの移動方向に直交する方向に複数のLED16を略直列に配置することによって形成されている。もちろん、ワークXに対して光照射装置10が移動して露光用光Lを照射してもよし、ワークXおよび光照射装置10の両方が移動してもよい。
【0028】
また、光源12を構成する各LED16は、これらLED16の光軸CLがワークXに対して第1の角度θ1(つまり、入射角θ1)を有するように、ワークXに対して(つまり、露光面Aに対して)傾けて配置されている。角度成分のバラツキが少ない光を斜めから照射して作成した配向膜を液晶パネルに使用することにより、安定したプレチルト角と配向状態とを出現させることが可能となり、任意の配向モードの液晶パネルが実現できる。
【0029】
なお、
図2に示すように、複数のLED16をひとつのLEDモジュール100にまとめて、複数のLEDモジュール100を例えば一方向に並べて配置することにより、光源12を構成してもよい。
【0030】
また、
図3および
図4に示すように、偏光素子14に対する光源12全体の照射角度を調節することのできる角度調節機構110を設けてもよい。例示された角度調節機構110は、光源12を構成する複数のLEDモジュール100が並べられた方向に沿って延びる回動軸112を有しており、この回動軸112を回動させることによって、偏光素子14に対する光源12全体の照射角度を調節できるようになっている。
【0031】
また、
図5に示すように、複数のLEDモジュール100が並べられた方向に光源12の偏光素子14に対する位置を調節できる幅方向位置調節機構120を設けてもよい。これにより、各LEDモジュール100から放射される光の照度ムラが低減するように調節することができる。
【0032】
また、個々のLEDモジュール100を偏光素子14に対して所定の角度で配置するのではなく、
図6および
図7に示すように、断面が鋸歯状のLEDベース130を用意し、偏光素子14に対して所定の角度を有している、各歯に対応する傾斜面132にそれぞれLED16を配置してもよい。
【0033】
図1に戻り、各LED16から放射される光Lの配光角の半分である第2の角度θ2は、上述した第1の角度θ1よりも小さくなるように設定されている。
【0034】
偏光素子14は、光源12から照射された光のうち一方向に振動する光成分のみを透過して偏光する素子であり、本実施形態では、ワイヤーグリッド偏光素子が使用されている。ワイヤーグリッド偏光素子は、透明基板(ガラス基板)の一方の表面にワイヤーグリッドを形成したものである。本実施形態では、ワイヤーグリッドの形成面18は、偏光素子14における光源12側の面であってもよいし、光源12とは反対側の面であってもよい。また、偏光素子14はワークX(露光面A)に対して平行となるように配設されるのが好適である。
【0035】
この偏光素子14の変形例としては、
図4に示したように、光源12に近い側から順に、光学フィルター30、偏光素子14、カバー部材40を配置して、これら光学フィルター30、偏光素子14、およびカバー部材40で偏光素子群150を構成してもよい。
【0036】
光学フィルター30は、光源12と偏光素子14との間に配設されており、光源12から放射された光Lのうち所定の波長以上の光Lを選択的に透過する部材であって、表面に波長選択膜が形成されている。また、光学フィルター30は、偏光素子14と同様、ワークX(露光面A)に対して平行となるように配設されるのが好適である。なお、光学フィルター30としては、以下に説明する条件を満たすものであれば、所定の波長以上の光を透過するロングパスフィルタや、所定の波長範囲の光を透過し、それよりも長波長および短波長の光を遮断するバンドパスフィルタを使用することができる。さらに、光学フィルター30は、偏光素子14の光源12側とは反対側に配設してもよい。
【0037】
カバー部材40は、光源12からの光Lを透過する例えばガラス製の板材であり、偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18に対向する位置において、ワークXと略平行に配設されている。つまり、図示するように偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18が光源12側とは反対側に形成されている場合、カバー部材40も偏光素子14における光源12側とは反対側に配設される。逆に、偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18が光源12側に形成されている場合(図示せず)、カバー部材40も偏光素子14における光源12側に配設される。
【0038】
なお、カバー部材40の表面(両面とも)には、反射防止膜等の反射防止処理をしなくてもよいが、一方または両方の表面に反射防止膜等の反射防止処理を行うのが好適である。
【0039】
また、カバー部材40と偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18との間の空間Sは密閉するのが好適である。例えば、カバー部材40および偏光素子14の周縁を保持する保持枠42を設け、当該保持枠42でカバー部材40と偏光素子14におけるワイヤーグリッドの形成面18との間の空間Sを密閉することが考えられる。
【0040】
なお、上述した「密閉」とは、当該空間Sにシロキサン化合物等の微小固形物が侵入しない程度の意味であり、完全な意味での「密閉」は必要ない。
【0041】
また、偏光素子14にはいわゆる「反射タイプ」のワイヤーグリッドを用いるのが好適である。「反射タイプ」であれば、光源12からの光Lによってワイヤーグリッドが加熱され、密閉された空間の温度が不所望に上昇することによってワイヤーグリッドの形成面18等を損傷させる可能性が低いからである。
【0042】
さらに、密閉された空間Sを冷却することを目的として、カバー部材40、偏光素子14、あるいは保持枠42といった当該空間Sを構成する部材を強制空冷または水冷といった方法によって冷却してもよい。
【0043】
なお、ワークX(露光面A)や光源12に対する偏光素子群150全体の照射角度を調節することのできる偏光素子群角度調節機構を設けてもよい。この偏光素子群角度調節機構は、光学フィルター30、偏光素子14、およびカバー部材40をひとまとめにして角度調節するものであってもよいし、光学フィルター30、偏光素子14、およびカバー部材40をそれぞれ個別に角度調節するものであってもよい。
【0044】
さらに言えば、
図8および
図9に示すように、上述した光源12の角度調節機構110と、偏光素子群角度調節機構とをひとまとめにして、ワークX(露光面A)に対して光源12および偏光素子群150をまとめて角度調節できる全体角度調節機構152としてもよい。例示された全体角度調節機構152は、光源12を構成する複数のLEDモジュール100が並べられた方向およびこれと同じく偏光素子群150が延びる方向に沿って延びる全体回動軸154を有しており、この全体回動軸154を回動させることによって、ワークX(露光面A)に対する光源12および偏光素子群150全体の照射角度を調節できるようになっている。
【0045】
また、偏光素子群150が延びる方向(複数のLEDモジュール100が並べられた方向)に当該偏光素子群150の位置を調節する偏光素子群幅方向位置調節機構を設けてもよい。
【0046】
また、光源12の幅方向位置調節機構120と、上述した偏光素子群幅方向位置調節機構とをひとまとめにして、偏光素子群150が延びる方向(複数のLEDモジュール100が並べられた方向)に光源12および偏光素子群150の位置を調節する全体幅方向位置調節機構を設けてもよい。
【0047】
(本実施形態に係る光照射装置10の効果)
本実施形態に係る光照射装置10によれば、複数のLED16の光軸CLをワークXに対して第1の角度θ1だけ傾け、各LED16から放射される光Lの配向角の半分に相当する第2の角度θ2をこの第1の角度θ1よりも小さく設定することにより、各LED16から放射された光LのすべてがLED16からワークXに向かう垂線よりもLED16の光軸CL側に向かうようになる。
【0048】
これにより、簡便な構成で実効的な照射角を有する光の量が多い光配向処理を実施できる露光装置用の光照射装置10を提供することができる。
【0049】
(変形例1)
図10および
図11に示すように、光源12および偏光素子群150の幅方向両端に反射鏡160を配設してもよい。これにより、ワークX(露光面A)における、光照射装置10の幅方向両端部の照度低下を防止することができる。
【0050】
(変形例2)
また、
図12および
図13に示すように、光源12が延びる方向(幅方向)に対して略直交する方向に照射される光Lの一部であって偏光素子群150に入らない光Lを反射させる、光源12および偏光素子群150の幅方向に延びる幅方向反射鏡164を配設してもよい。
【0051】
さらに、変形例1に係る反射鏡160と、変形例2に係る幅方向反射鏡164とを両方とも備える光照射装置10としてもよい。
【0052】
(変形例3)
図14に示すように、上述した光照射装置10を複数セット配置することにより、光源ユニット170を構成してもよい。
【0053】
また、光源ユニット170を構成した際、各光照射装置10の角度調節をそれぞれ単独で行うことができるようにするのが好適である。さらに言えば、各光照射装置10に含まれる各LEDモジュール100や各偏光素子群150についても、それぞれ単独で角度調節を行うことができるようにするのが好適である。
【0054】
また、複数のLEDモジュール100で構成された光源12の数よりも少ない数の偏光素子群150で光源ユニット170を構成してもよい。例えば、
図15に示す光源ユニット170では、光源12が5つ用いられているのに対して、偏光素子群150は1つだけ用いられている。このように光源12の数よりも少ない数の偏光素子群150で光源ユニット170を構成することで、光源12と偏光素子群150とが一対一(光源12の数と偏光素子群150の数とが同じ)である場合に生じるおそれのある、光源12から照射された光Lのケラレを回避できる点で好適である。
【0055】
(変形例4)
ワークX(露光面A)の照度を測定する計測器で測定された当該ワークX(露光面A)の照度や積算光量が所定の規定値から外れた場合に、各LED16に入力する電力を変化させることによって、当該照度や積算光量を調整するのが好適である。
【0056】
(変形例5)
ワークX(露光面A)の照度を測定する計測器で測定された当該ワークX(露光面A)の照度や積算光量の値からワークX(露光面A)における光Lのムラを算出し、発生した当該ムラに対応する位置にあるLED16に入力する電力を変化させることによって、当該ムラを解消するのが好適である。
【0057】
また、ワークX(露光面A)における照度のムラや積算光量のムラが、偏光素子群150同士の境目、または、偏光素子群150の各構成要素(偏光素子14、光学フィルター30、カバー部材40)の境目で発生した場合、その境目に対応する位置にあるLED16に入力する電力を変化させることによって、当該ムラを解消するのが好適である。
【0058】
(変形例6)
ワークXあるいは少なくとも光源12を一定方向に移動させて当該ワークXを露光する場合において、積算光量のムラが当該移動方向において発生する場合、移動中において対応するLED16に入力する電力を変化させることによって当該光量ムラを解消するのが好適である。
【0059】
(変形例7)
上述した照度や積算光量を、各LED16を連続点灯あるいは連続消灯することによって調整してもよい。
【0060】
あるいは、上述した照度や積算光量を、各LED16の点灯および消灯を繰り返し行うことによって調整してもよい。
【0061】
(変形例8)
偏光素子群150を構成する(ワイヤーグリッド)偏光素子14の形状を、
図16に示すように、各光源12から照射される光Lの照射方向に長い形状とするのが好適である。
【0062】
(変形例9)
また、偏光素子14を構成するワイヤーグリッドの形状として、
図17に示すように、円盤状のウエハー上にワイヤーグリッドを形成し、長方形に切断し、各光源12から照射される光Lの照射方向に直交する方向(各LEDモジュール100が並ぶ方向)にこれら長方形が3つ並ぶようにしてもよい。
【0063】
(変形例10)
また、偏光素子14を構成するワイヤーグリッドの形状として、
図18に示すように、ワイヤーグリッドを略台形に形成し、各光源12から照射される光Lの照射方向に直交する方向(各LEDモジュール100が並ぶ方向)に一つの略台形の下辺と隣り合う略台形の上辺が略直線状に並ぶように配置してもよい。このほうに、ワイヤーグリッドを略台形に形成して配置することにより、変形例9の場合に比べて、各光源12から照射される光Lの照射方向の照度ムラあるいは積算光量ムラの範囲が広くなるものの、その分、ムラの程度が小さくなることから調整がしやすくなり好適である。
【0064】
(変形例11)
また、
図2に示した光源12を、
図19および
図20に示すように、ワークXの移動方向に沿って複数(変形例11では3つ)並べるようにしてもよい。この場合、各光源12におけるそれぞれひとつのLEDモジュール100がワークXの移動方向に沿った一直線上に並ぶように配置されている(
図19中の一点鎖線で囲まれたLEDモジュール100)。以下、このように一直線上に並んだ、互いに異なる光源12に配置されている複数のLEDモジュール100を「同一グループのLEDモジュール100」という。なお、同一グループの各LEDモジュール100は 、同一平面上にあってもよいし、同一平面上になくてもよい。
【0065】
さらに、
図21に示すように、同一グループのLEDモジュール100にそれぞれ供給される電力をひとつの駆動電源180から供給する。これにより、ひとつの駆動電源180によって、同一グループのLEDモジュール100から放射される光量を調整することができる。なお、
図21では、同一グループの各LEDモジュール100に対してひとつの駆動電源180から並列に電力が供給される例を示しているが、これに変えて、同一グループの各LEDモジュール100に対してひとつの駆動電源180から直列に電力を供給してもよい。
【0066】
ここで駆動電源180の変形例について説明すると、
図22(a)に示すように、ひとつの駆動電源180に対してひとつの調光信号を入力して、ひとつのグループのLEDモジュール100に電力を出力するようにしてもよいし、
図22(b)に示すように、ひとつの調光信号を入力して、複数のグループ(この例では2つ)のLEDモジュール100に対してそれぞれ電力を出力するようにしてもよい。さらに言えば、
図22(c)に示すように、駆動電源180に対して、複数(この例では2つ)の調光信号を入力して、複数のグループ(この例では2つ)のLEDモジュール100に対してそれぞれ電力を出力するようにしてもよい。
【0067】
さらに、この変形例に係る各LEDモジュール100では、
図23に示すように、一直線上に並べて配置された5つのLED16を1セットのLED群として、2セットのLED群が互いに平行に並ぶように配置されている。
【0068】
このように2セットのLED群Y,Zが配置されたLEDモジュール100を使用する場合に駆動電源180を介して各LED16から放射される光量を調整する方法について説明する。
【0069】
図24に示すように、露光面Aにおける、一方のLED群Yと他方のLED群Zとの中間位置に対応する位置に照度を計測する計測器190をセットする。これにより、一方のLED群Yから放射された光および他方のLED群Zから放射された光の量が計測器190で測定される。
【0070】
具体的には、露光面Aにセットされた計測器190がワークXの移動方向に移動しながら、同一グループのLEDモジュール100ごとに積算光量を測定する(スキャン測定)。ひとつのグループに係るLEDモジュール100からの光量の測定が完了すると、露光面Aにおける計測器190の位置を光源12の幅方向にずらして、隣のグループのLEDモジュール100からの光の積算光量を測定する。これを順に進めていくことで、すべてのグループの積算光量を測定する。もちろん、計測器190を移動させるのではなく、光照射装置10を計測器190に対して移動させてもよいし、双方を移動させてもよい。
【0071】
計測器190によって測定された光量に基づき、図示しない制御装置から、最適な光量となるように対応する駆動電源180に調光信号を入力する。この調光信号を受けた駆動電源180から対応するLEDモジュール100に出力される電力が調整され、最終的にLED群YおよびLED群Zから放射される光量が調整される。
【0072】
このように、駆動電源180による光量の調整は、LEDモジュール100単位で行われる。もちろん、これに限定するものではなく、LEDモジュール100単位ではなく、各LED群単位、さらには、各LED16単位で駆動電源180による光量の調整を行ってもよい。
【0073】
なお、
図25に示すように、異なるLED群Y,Zに属しており、互いに隣り合う位置にあるLED16のそれぞれ外端位置から露光面Aに対して鉛直下向きに延ばした仮想線(図中の一点鎖線)が露光面Aと交わる位置P1,P2間が両LED16からの光を受けることができるように、各LED16からの光の配光角や露光面AとLED16との距離を設定するのが好ましい。
【0074】
この例に従うと、
図26に示すように、1つのLEDモジュール100に3つのLED群Y,Z,Vを用いる場合は、両端に位置しているLED群YおよびLED群Vに属しているLED16のそれぞれ外端位置から露光面Aに対して鉛直下向きに延ばした仮想線(図中の一点鎖線)が露光面Aと交わる位置P1,P2間がすべての(この例であれば3つの)LED16からの光を受けることができるようにすることになる。LED群の数が1つ、あるいは4つ以上でも同様である。
【0075】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
10…光照射装置、12…光源、14…偏光素子、16…LED、18…ワイヤーグリッドの形成面
30…光学フィルター
40…カバー部材、42…保持枠
100…LEDモジュール
110…角度調節機構、112…回動軸
120…幅方向位置調節機構、130…LEDベース、132…傾斜面
150…偏光素子群、152…全体角度調節機構、154…全体回動軸
160…反射鏡、164…幅方向反射鏡
170…光源ユニット
180…駆動電源
190…計測器
X…ワーク(露光対象物)、A…露光面、L…露光用光、CL…(LED16の)光軸、θ1…第1の角度、θ2…第2の角度、S…(カバー部材40とワイヤーグリッドの形成面18との間の)空間、Y…一方のLED群、Z…他方のLED群、V…別のLED群