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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】断熱耐震パネル及び断熱耐震壁施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20230407BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
E04B2/56 645A
E04B1/76 500F
E04B1/76 500H
E04B1/76 400C
E04B2/56 641G
E04B2/56 605A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022165602
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2022-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507168351
【氏名又は名称】笠原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 勇一
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138109(JP,A)
【文献】特開平10-244609(JP,A)
【文献】特開2006-052590(JP,A)
【文献】実開平02-027326(JP,U)
【文献】実開平05-083111(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2296040(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70
E04B 1/62-1/99
E04C 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物において、隣り合って相互に対向する対向面及び該対向面に隣接して該建築物の外側に面する外側面を有する2つのの間を閉塞して該建築物の外側と側とを隔てるために使用される断熱耐震パネルであって、
左右の両端部が前記2つのにそれぞれ固定される矩形状の構造用面材と、
前記構造用面材の前記内側の面に固定され、左右の両端面が前記2つのにそれぞれ固定される断熱パネルとを備え、
前記断熱パネルは、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材とを張り合わせて構成され、
前記断熱耐震パネルは、前記2つの柱の間にホールダウン金物、柱頭柱足用金物、コンセントボックス、スイッチボックス等の壁内配置物が設けられる場合に、該2つの柱の間に壁を形成するために用いられるものであり、
前記断熱パネルは、その前記成形断熱材が、前記ボード状断熱材の前記建築物における内側に配置され、かつ前記壁内配置物との干渉を避ける目的で該成形断熱材が存在しない不在範囲を有することを特徴とする断熱耐震パネル。
【請求項2】
前記断熱パネルは、左右両端面が前記2つのにそれぞれ直接固定されるものであり、前記構造用面材の左右両端部は、前記断熱パネルの左右両端縁よりも左右方向外方に位置し、前記2つのの前記外面に固定されるものであることを特徴とする請求項1に記載の断熱耐震パネル。
【請求項3】
前記断熱パネルは、上下両端面が前記建築物の土台、胴差又は軒桁に固定されるものであり、
前記構造用面材は、上下両端部が前記断熱パネルの上下両端面よりも上下方向外側にそれぞれ位置し、該上下両端部が前記建築物の土台、胴差又は軒桁における該建築物の外側に面する面に固定されるものであることを特徴とする請求項に記載の断熱耐震パネル。
【請求項4】
前記断熱パネルは、
前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材の下端面に固定されて、該断熱パネルの下端面を構成する下端板と、
前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材の上端面に固定されて、該断熱パネルの上端面を構成する上端板と、
下端面が前記下端板の中央部に固定され、上端面が前記上端板の中央部に固定されて前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材を左右に分割しつつこれらの間の対向する端面に固定される間柱とを備えることを特徴とする請求項1に記載の断熱耐震パネル。
【請求項5】
建築物において、隣り合って相互に対向する対向面及び該対向面に隣接して該建築物の外側又は床下側に面する外側面を有する2つの構造物の間を閉塞して該建築物の外側又は床下側と内側又は床上側とを隔てるために使用される断熱耐震パネルであって、
左右の両端部が前記2つの構造物にそれぞれ固定される矩形状の構造用面材と、
前記構造用面材の前記内側又は床下側の面に固定され、左右の両端面が前記2つの構造物にそれぞれ固定される断熱パネルとを備え、
前記断熱パネルは、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材とを張り合わせて構成され、
前記断熱パネルは、左右の端部が枠材で構成され、左右の両端面が前記2つの構造物の前記対向面に対してそれぞれ該枠材を介して固定され、前記成形断熱材又は前記ボード状断熱材のうち、前記構造用面材と反対側に位置するものの左右の両端部が、それぞれ該左右の枠材にかけて該構造用面材側に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記構造用面材は、左右の両端面が前記2つの構造物の前記対向面に固定されるものであることを特徴とする断熱耐震パネル。
【請求項6】
前記2つの構造物は、前記対向面及び前記外側面を有する2つの柱であり、
前記断熱パネルは、上下の端部も枠材で構成され
記断熱パネル及び前記構造用面材の上下両端面は、前記建築物の土台、胴差又は軒桁における相互に対向する面に固定されるものであり、
前記成形断熱材又は前記ボード状断熱材のうち、前記構造用面材と反対側に位置するものの上下の両端部も、それぞれ上下の前記枠材にかけて該構造用面材側に向かって傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項に記載の断熱耐震パネル。
【請求項7】
前記断熱耐震パネルは、前記2つの柱の間にホールダウン金物、柱頭柱足用金物、コンセントボックス、スイッチボックス等の壁内配置物が設けられる場合に、該2つの柱の間に壁を形成するために用いられる断熱耐震パネルであって、
前記断熱パネルは、その前記成形断熱材が、前記ボード状断熱材の前記建築物における内側に配置され、かつ前記壁内配置物との干渉を避ける目的で該成形断熱材が存在しない不在範囲を有することを特徴とする請求項6に記載の断熱耐震パネル。
【請求項8】
前記成形断熱材は、炭素粒子を含有し、かつ製品密度が8~30kg/mの範囲内のものであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱耐震パネル。
【請求項9】
請求項の断熱耐震パネルを、建築物における隣り合う2つの柱の間でかつ土台と胴差の間又は胴差と軒桁との間に、該断熱耐震パネルの成形断熱材が存在しない不在範囲に該建築物における壁内配置物が位置するように固定するパネル固定工程と、
前記パネル固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲に硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填する吹付充填工程とを備えることを特徴とする断熱耐震壁施工方法。
【請求項10】
請求項の断熱耐震パネルを、建築物における隣り合う2つの柱の間でかつ土台と胴差の間又は胴差と軒桁との間に、該断熱耐震パネルの成形断熱材が存在しない不在範囲に該建築物における壁内配置物が位置するように固定するパネル固定工程と、
前記パネル固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲における前記壁内配置物と干渉しない位置に、前記成形断熱材と同様の材質を有する保温蓋板を固定する蓋板固定工程と、
前記蓋板固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲における前記保温蓋板が固定された部分以外の残りの部分に、硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填する残存部充填工程とを備えることを特徴とする断熱耐震壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱かつ耐震性能を有する壁を現場で容易に形成するのを可能にする断熱耐震パネル及び断熱耐震壁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物において、隣り合って相互に対向する側面を有する断面が矩形状の2つの柱の間を閉塞して該建築物の外側と内側とを隔てる断熱壁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の断熱壁は、屋外側に繊維系断熱材を配置し、これに重ねて屋内側に合成樹脂発泡板を配置して構成される。合成樹脂発泡板としては、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、エチレン酢酸ビニル共重合物系、アイオノマー等の合成樹脂あるいはその混合物発泡体が用いられる。繊維系断熱材としては、ガラス繊維、ロックウール等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭62-26482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の断熱壁によれば、建築物の耐震強度を強化するためには、現場において、柱間に筋交いを設ける必要がある。また、現場において、合成樹脂発泡板及び繊維系断熱材を切断・加工して施工する必要もある。
【0006】
また、2030年度までにスタンダードになっていく断熱等級5(ZEHレベル)の断熱基準を達成できる断熱耐震壁を容易に形成することができるような施工法を確立する必要もある。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、断熱かつ耐震性能を有する壁を現場で容易に形成するのを可能にする断熱耐震パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の断熱耐震パネルは、
建築物において、隣り合って相互に対向する対向面及び該対向面に隣接して該建築物の外側に面する外側面を有する2つのの間を閉塞して該建築物の外側と側とを隔てるために使用される断熱耐震パネルであって、
左右の両端部が前記2つのにそれぞれ固定される矩形状の構造用面材と、
前記構造用面材の前記内側の面に固定され、左右の両端面が前記2つのにそれぞれ固定される断熱パネルとを備え、
前記断熱パネルは、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材とを張り合わせて構成され、
前記断熱耐震パネルは、前記2つの柱の間にホールダウン金物、柱頭柱足用金物、コンセントボックス、スイッチボックス等の壁内配置物が設けられる場合に、該2つの柱の間に壁を形成するために用いられるものであり、
前記断熱パネルは、その前記成形断熱材が、前記ボード状断熱材の前記建築物における内側に配置され、かつ前記壁内配置物との干渉を避ける目的で該成形断熱材が存在しない不在範囲を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、断熱耐震パネルを工場で作成しておくことにより、現場においてはこの断熱耐震パネルを、2つの柱の間に固定するだけで、容易に、断熱と耐震性能を有する壁を形成することができる。
【0010】
しかも、断熱パネルが上述の成形断熱材とボード状断熱材とを張り合わせて構成されるので、左右の両端面が固定される2つのの対向面の幅内の厚さにおいて、十分な断熱効果を発揮することができる。
【0011】
例えば、通常の木造2階建ての柱の幅内の厚さにおいて、2030年度までにスタンダードになっていく断熱等級5(ZEHレベル)や、さらには断熱等級6、7の断熱基準を達成できる断熱耐震パネルを容易に構成することができる。
また、上記の不在範囲を有する断熱耐震パネルを工場で作成しておくことにより、現場においてはこの断熱耐震パネルを、壁内配置物の位置に成形断熱材の不在範囲を合わせつつ、各柱間に固定するだけで、壁内配置物と干渉することなく、容易に、断熱と耐震性能を有する壁を形成することができる。
【0012】
(2)前記断熱パネルは、左右両端面が前記2つのにそれぞれ直接固定されるものであり、前記構造用面材の左右両端部は、前記断熱パネルの左右両端縁よりも左右方向外方に位置し、前記2つのの前記外面に固定されるものであってもよい。
【0013】
これによれば、構造用面材の左右両端部は、断熱パネルの左右両端縁よりも左右方向外方に位置するので、現場において、構造用面材の左右両端部を2つのの外側面に固定することにより、断熱耐震パネルを2つのに対して容易に固定することができる。
【0014】
(3)この場合、前記断熱パネルは、上下両端面が前記建築物の土台、胴差又は軒桁に固定されるものであり、前記構造用面材は、上下両端部が前記断熱パネルの上下両端面よりも上下方向外側にそれぞれ位置し、該上下両端部が前記建築物の土台、胴差又は軒桁における該建築物の外側に面する面に固定されるものであってもよい。
【0015】
これによれば、断熱耐震パネルを工場で作成しておくことにより、一般的な二階建ての木造建築物の建築現場において、この断熱耐震パネルを、各柱間に固定し、さらに土台及び胴差、又は胴差及び軒桁に固定するだけで、容易に、断熱と耐震性能を有する大壁を形成することができる。
【0016】
(4)前記断熱パネルは、
前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材の下端面に固定されて、該断熱パネルの下端面を構成する下端板と、
前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材の上端面に固定されて、該断熱パネルの上端面を構成する上端板と、
下端面が前記下端板の中央部に固定され、上端面が前記上端板の中央部に固定されて前記成形断熱材及び前記ボード状断熱材を左右に分割しつつこれらの間の対向する端面に固定される間柱とを備えてもよい。
【0017】
これによれば、適切な大きさと適切な強度を有する取り扱いが容易な断熱耐震パネルを提供することができる。
【0018】
(5)本発明の断熱耐震パネルは、
建築物において、隣り合って相互に対向する対向面及び該対向面に隣接して該建築物の外側又は床下側に面する外側面を有する2つの構造物の間を閉塞して該建築物の外側又は床下側と内側又は床上側とを隔てるために使用される断熱耐震パネルであって、
左右の両端部が前記2つの構造物にそれぞれ固定される矩形状の構造用面材と、
前記構造用面材の前記内側又は床下側の面に固定され、左右の両端面が前記2つの構造物にそれぞれ固定される断熱パネルとを備え、
前記断熱パネルは、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材とを張り合わせて構成され、
前記断熱パネルは、左右の端部が枠材で構成され、左右の両端面が前記2つの構造物の前記対向面に対してそれぞれ該枠材を介して固定され、前記成形断熱材又は前記ボード状断熱材のうち、前記構造用面材と反対側に位置するものの左右の両端部が、それぞれ該左右の枠材にかけて該構造用面材側に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記構造用面材は、左右の両端面が前記2つの構造物の前記対向面に固定されるものであることを特徴とする。
【0019】
これによれば、構造用面材と反対側に位置する成形断熱材又はボード状断熱材の左右の両端部が、枠材にかけて傾斜する傾斜面を有するので、現場において断熱耐震パネルを2つの構造物間に固定する際に、左右の枠材を2つの構造物の対向面にそれぞれ固定するための釘打ちスペースを確保することができる。
【0020】
(6)この場合、前記2つの構造物は、前記対向面及び前記外側面を有する2つの柱であり、
前記断熱パネルは、上下の端部も枠材で構成され
記断熱パネル及び前記構造用面材の上下両端面は、前記建築物の土台、胴差又は軒桁における相互に対向する面に固定されるものであり、
前記成形断熱材又は前記ボード状断熱材のうち、前記構造用面材と反対側に位置するものの上下の両端部も、それぞれ上下の前記枠材にかけて該構造用面材側に向かって傾斜する傾斜面を有してもよい。
【0021】
これによれば、構造用面材と反対側(室内側)に位置する成形断熱材又はボード状断熱材の上下左右の両端部が、枠材にかけて傾斜する傾斜面を有するので、現場において断熱耐震パネルを2つの柱に固定する際に、上下左右の枠材を2つの柱の対向面及び建築物の土台、胴差又は軒桁にそれぞれ固定するための釘打ちスペースを確保することができる。したがって、2つの柱間に真壁を容易に形成することができる。
【0022】
(7)この場合、前記断熱耐震パネルは、前記2つの柱の間にホールダウン金物、柱頭柱足用金物、コンセントボックス、スイッチボックス等の壁内配置物が設けられる場合に、該2つの柱の間に壁を形成するために用いられる断熱耐震パネルであって、
前記断熱パネルは、その前記成形断熱材が、前記ボード状断熱材の前記建築物における内側に配置され、かつ前記壁内配置物との干渉を避ける目的で該成形断熱材が存在しない不在範囲を有してもよい。
【0023】
これによれば、上記の不在範囲を有する断熱耐震パネルを工場で作成しておくことにより、現場においてはこの断熱耐震パネルを、壁内配置物の位置に成形断熱材の不在範囲を合わせつつ、各柱間並びに土台及び胴差間又は胴差及び軒桁間に固定するだけで、壁内配置物と干渉することなく、容易に、断熱と耐震性能を有する壁を形成することができる。
【0024】
(8)本発明において、前記成形断熱材は、炭素粒子を含有し、かつ製品密度が8~30kg/m3の範囲内のものであってもよい。これによれば、成形が容易で断熱性が高く、かつ軽量で取り扱いが容易な断熱耐震パネルを提供することができる。
【0025】
(9)本発明の断熱耐震壁施工方法では、上述の断熱パネルの成形断熱材が、ボード状断熱材の内側に配置され、かつ壁内配置物との干渉を避ける目的で該成形断熱材が存在しない不在範囲が生じるように成形される断熱耐震パネルが用いられる。
【0026】
すなわち、本発明の断熱耐震壁施工方法は、この断熱耐震パネルを、建築物における隣り合う2つの柱の間でかつ土台と胴差の間又は胴差と軒桁との間に、該断熱耐震パネルの成形断熱材が存在しない不在範囲に該建築物における壁内配置物が位置するように固定するパネル固定工程と、
前記パネル固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲に硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填する吹付充填工程とを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の断熱耐震壁施工方法によれば、工場で、上述の成形断熱材が存在しない不在範囲が生じるように成形された断熱耐震パネルを製造しておくことにより、現場では、この断熱耐震パネルをパネル固定工程に従って柱間に取り付け、吹付充填工程で硬質ウレタン断熱材を成形断熱材が存在しない不在範囲に吹き付けるだけで、断熱と耐震性能を有する壁を、壁内配置物と干渉することなく形成することができる。
【0028】
(10)本発明の別の断熱耐震壁施工方法では、
上記方法と同様の断熱耐震パネルを、建築物における隣り合う2つの柱の間でかつ土台と胴差の間又は胴差と軒桁との間に、該断熱耐震パネルの成形断熱材が存在しない不在範囲に該建築物における壁内配置物が位置するように固定するパネル固定工程と、
前記パネル固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲における前記壁内配置物と干渉しない位置に、前記成形断熱材と同様の材質を有する保温蓋板を固定する蓋板固定工程と、
前記蓋板固定工程の後、前記成形断熱材が存在しない不在範囲における前記保温蓋板が固定された部分以外の残りの部分に、硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填する残存部充填工程とを備える。
【0029】
これによれば、工場で、上述の成形断熱材が存在しない不在範囲が生じるように成形された断熱耐震パネルを製造しておくことにより、現場では、この断熱耐震パネルをパネル固定工程に従って柱間に取り付け、蓋板固定工程に従って保温蓋板を固定し、残存部充填工程で残りの部分に硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填するだけで、容易に、断熱と耐震性能を有する壁を、壁内配置物との干渉を生じることなく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る断熱耐震パネルを建築物の内側から見た様子を示す平面図であり、(b)はその断面図であり、(c)はそのC-C線断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る断熱耐震パネルを示す斜視図である。
図3図2の断熱耐震パネルの断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る断熱耐震パネルを用いて断熱耐震壁を形成する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1(a)~(c)は、本発明の一実施形態に係る断熱耐震パネルを示す。図1に示すように、この断熱耐震パネル1は、通常の2階建ての木造建築物において、隣り合って相互に対向する対向面2及び該対向面2に隣接して該建築物の外側に面する外側面3を有する2つの構造物としての柱4の間を閉塞して該建築物の外側と内側を隔てる大壁を形成するために使用される。
【0032】
断熱耐震パネル1は、左右の両端部が2つの柱4にそれぞれ固定される矩形状の構造用面材5と、構造用面材5の内側の面に固定され、左右の両端面が2つの柱にそれぞれ直接固定される断熱パネル6とを備える。断熱パネル6は、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材7と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材8とを張り合わせて構成される。
【0033】
本実施形態では、成形断熱材7は、ボード状断熱材8の内側に配置される。また、成形断熱材7は、炭素粒子を含有し、かつ製品密度が8~30kg/m3の範囲内のものである。
【0034】
また、断熱パネル6は、成形断熱材7及びボード状断熱材8の下端面に固定されて、断熱パネル6の下端面を構成する下端板9と、成形断熱材7及びボード状断熱材8の上端面に固定されて、断熱パネル6の上端面を構成する上端板10と、上端面が上端板10の中央部に固定され、下端面が下端板9の中央部に固定される間柱11とを備える。
【0035】
間柱11は、成形断熱材7及びボード状断熱材8を左右に分割しつつこれらの間の対向する端面に固定される。下端板9、上端板10、及び間柱11の建築物外側の端面は、構造用面材5に固定される。断熱パネル6は、左右両端面が2つの柱4の対向面2に固定され、上下両端面が、建築物の土台又は胴差12及び胴差又は軒桁13に固定されるものである。
【0036】
構造用面材5は、左右両端部及び上下両端部が断熱パネル6の左右両端面及び上下両端面よりも左右方向外側及び上下方向外側にそれぞれ位置し、該左右両端部が2つの柱4の外側面3に固定され、該上下両端部が建築物の土台又は胴差12及び胴差又は軒桁13における建築物の外側に面する面に固定されるものである。
【0037】
断熱耐震パネル1を用いて2階建ての木造建築物に大壁を形成する際には、予め工場において断熱耐震パネル1が製造される。そして、現場において、1階の大壁を形成する場合には、該断熱耐震パネル1の断熱パネル6の左右両端面が、1階の隣り合う2つの柱4の対向面2に固定される。
【0038】
また、構造用面材5の左右両端部が、該2つの柱4の外側面に固定される。また、断熱パネル6の上下両端面が、土台12及び胴差13の相互に対向する面に固定される。さらに、構造用面材5の上下両端部が、土台12及び胴差13の外側の面に固定される。これにより、1階の大壁の形成が完成する。
【0039】
一方、2階の大壁を形成する場合には、該断熱耐震パネル1の断熱パネル6の左右両端面が、2階の隣り合う2つの柱4の対向面2に固定される。また、構造用面材5の左右両端部が、該2つの柱4の外側面に固定される。
【0040】
また、断熱パネル6の上下両端面が、胴差12及び軒桁13の相互に対向する面に固定される。さらに、構造用面材5の上下両端部が、該胴差12及び軒桁13の外側の面に固定される。これにより、2階の大壁の形成が完成する。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、断熱耐震パネル1を工場で作成しておくことにより、現場においてはこの断熱耐震パネルを、2つの柱4間及び、土台又は胴差12及び胴差又は軒桁13間に固定するだけで、容易に、断熱と耐震性能を有する大壁を形成することができる。
【0042】
しかも、断熱パネル6が上述の成形断熱材7とボード状断熱材8とを張り合わせて構成されるので、断熱パネル6の左右の両端面が固定される2つの柱4の対向面の幅内の厚さにおいて、十分な断熱効果を発揮することができる。
【0043】
例えば、通常の木造2階建ての柱4の幅内の厚さにおいて、2030年度までにスタンダードになっていく断熱等級5(ZEHレベル)や、さらには断熱等級6、7の断熱基準を達成できる断熱耐震パネル1を容易に構成することができる。
【0044】
図2は、本発明の第2実施形態に係る断熱耐震パネルを内側から見た様子を示す斜視図であり、図3は、この断熱耐震パネルの図1(c)と同様の部分を示す断面図である。図2図3に示すように、この断熱耐震パネル1bは、通常の2階建ての木造建築物において、隣り合って相互に対向する対向面2及び該対向面2に隣接して該建築物の外側に面する外側面3を有する2つの柱4の間を閉塞して該建築物の外側と内側を隔てる真壁を形成するために使用される。
【0045】
断熱耐震パネル1bは、上下左右の端部が枠材14で構成され、構造用面材5bは、断熱パネル6bと同じ面積を有し、断熱パネル6b及び構造用面材5bの左右両端面が、2つの柱4の対向面2にそれぞれ固定される。断熱パネル6b及び構造用面材5bの上下両端面は、建築物の土台又は胴差12及び胴差又は軒桁13(図1参照)における相互に対向する面に固定される。
【0046】
成形断熱材7b又はボード状断熱材8bのうち、建築物の内側に位置するものの上下左右の両端部は、それぞれ上下左右の枠材14にかけて建築物における外側(枠材14側)に向かって傾斜する傾斜面15を有する。本実施形態では、成形断熱材7bがボード状断熱材8bの内側に位置し、傾斜面15を有する。
【0047】
断熱耐震パネル1bを用いて2階建ての木造建築物に大壁を形成する際には、予め工場において断熱耐震パネル1bが製造される。そして、現場において、1階の真壁を形成する場合には、該断熱耐震パネル1bの断熱パネル6b及び構造用面材5bの左右両端面が、1階の隣り合う2つの柱4の対向面2に固定される。
【0048】
このとき、断熱パネル6bの対向面2への固定は、断熱パネル6bの枠材14を対向面2に釘打ちすることにより行われるが、断熱パネル6bの左右両端部には傾斜面15により釘打ちスペースが確保されるので、釘打ちは支障なく行われる。また、断熱パネル6b及び構造用面材5bの上下両端面が、対応する枠材14を土台12及び胴差13の相互に対向する面に対して釘打ちすることにより固定される。この場合も、断熱パネル6bの上下両端部の傾斜面15により釘打ちスペースが確保されるので、釘打ちは支障なく行われる。これにより、1階の真壁が形成される。
【0049】
一方、2階の真壁を形成する場合には、該断熱耐震パネル1bの断熱パネル6b及び構造用面材5bの左右両端面が、2階の隣り合う2つの柱4の対向面2に固定される。この場合も同様に、断熱パネル6bの枠材14が、対向面2に対して支障なく釘打ちされ、固定される。また、断熱パネル6及び構造用面材5bの上下両端面が、対応する枠材14を胴差12及び軒桁13の相互に対向する面に対して支障なく釘打ちすることにより固定される。これにより、2階の真壁が形成される。
【0050】
以上のように、第2実施形態に係る断熱耐震パネル1bによれば、断熱耐震パネル1bを工場で作成しておくことにより、一般的な二階建ての木造建築物の建築現場において、この断熱耐震パネル1b及び構造用面材5bを、各柱4間に固定するとともに、土台又は胴差12、並びに胴差又は軒桁13に固定するだけで、容易に、断熱性と耐震性能を有する真壁を1階と2階に形成することができる。
【0051】
また、断熱パネル6bは上下左右の傾斜面15を有するので、断熱パネル6bの上下左右の枠材14を、両側の柱4の対向面2並びに土台又は胴差12、及び胴差又は軒桁13に対して、容易に釘打ちして断熱パネル6bを固定することができる。その他、第1実施形態の場合と同様の断熱性能に関する効果を得ることができる。
【0052】
図4は、本発明の第3実施形態に係る断熱耐震パネル1cを用いて、2つの柱4間に大壁を形成する様子を示す。図4に示すように、この断熱耐震パネル1cは、2つの柱4の外側面3と反対側の面に、断熱パネル6cの内側を覆う石膏ボード16(図1参照)が固定され、かつ該石膏ボード16の裏側には、ホールダウン金物、柱頭柱足用金物、コンセントボックス、スイッチボックス等の壁内配置物17が設けられる場合に、該2つの柱4の間に大壁を形成するために用いられる。
【0053】
断熱耐震パネル1cは、第1実施形態の断熱耐震パネル1において、成形断熱材7に代えて、壁内配置物17との干渉を避ける目的で成形断熱材が存在しない不在範囲18(斜線部分)を有する成形断熱材7cを採用したものとして製造される。
【0054】
不在範囲18(斜線部分)を有する成形断熱材7cは、ビーズ法ポリスチレンフォームで形成されるので、成形断熱材7cに対応する形状の成形型を用いて容易に成形される。したがって、不在範囲18の成形断熱材7cにおける位置や大きさ、形状は、壁内配置物17の位置や大きさ、形状応じて成形型を選択することにより、容易に設定される。
【0055】
断熱耐震パネル1cを用いて2つの柱4間に大壁を形成する際には、図4に示すように、2つの柱4の間で、かつ土台12と胴差13の間(1階に大壁を刑する場合)又は胴差12と軒桁13との間(2階に大壁を刑する場合)に、断熱耐震パネル1cの成形断熱材7cが存在しない不在範囲18(図4中の斜線部分)に壁内配置物17が位置するようにして、第1実施形態の場合と同様の方法で固定する(パネル固定工程)。
【0056】
次に、不在範囲18における壁内配置物17と干渉しない位置に、成形断熱材7cと同様の材質を有する保温蓋板19を固定する(蓋板固定工程)。次に、不在範囲18における保温蓋板19が固定された部分以外の残りの部分に、硬質ウレタン断熱材20を吹き付けて充填する(残存部充填工程)。これにより、大壁の形成が完了し、その後、この大壁の内側を覆う石膏ボード16(図1参照)が2つの柱4間に固定される。
【0057】
なお、保温蓋板19を固定する蓋板固定工程、及び残りの部分に硬質ウレタン断熱材を吹き付けて充填する残存部充填工程に代えて、不在範囲18全体に硬質ウレタン断熱材20を吹き付けて充填する吹付充填工程を行うようにしてもよい。
【0058】
以上のように、第3実施形態によれば、工場で、上述の成形断熱材が存在しない不在範囲18を有する断熱耐震パネル1cを製造しておくことにより、現場では、この断熱耐震パネル1cをパネル固定工程に従って柱4間に取り付け、蓋板固定工程及び残存部充填工程により、あるいは吹付充填工程により、不在範囲18を保温蓋板19や硬質ウレタン断熱材20でカバーすることができる。
【0059】
したがって、壁内配置物17が存在する2つの柱4間においても、断熱と耐震性能を有する第1実施形態の場合と同様の性能を有する大壁を形成することができる。なお、第2実施形態の断熱耐震パネル1bにおいて同様の不在範囲18を設けたものを用い、同様にして2つの柱4間に真壁を形成するようにしてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、断熱パネルは、左右両端面が柱以外の2つの構造物にそれぞれ直接固定され、構造用面材の左右両端部は、断熱パネルの左右両端縁よりも左右方向外方に位置し、2つの構造物における外側又は床上側(室内側)の面に固定されるものであってもよい。
【0061】
この場合、2つの構造物として、垂木を採用することにより、断熱耐震パネルを建築物の屋根の形成に使用することができる。また、2つの構造物として、大引きを採用することにより、建築物の床の形成に使用することもできる。
【0062】
また、断熱パネルは、左右の端部が枠材で構成され、左右の両端面が柱以外の2つの構造物の対向面に対してそれぞれ該枠材を介して固定され、成形断熱材又はボード状断熱材のうち、構造用面材と反対側に位置するものの左右の両端部が、それぞれ該左右の枠材にかけて該構造用面材側に向かって傾斜する傾斜面を有し、構造用面材は、左右の両端面が2つの構造物の相互に対向する対向面に固定されるものであってもよい。
【0063】
この場合、2つの構造物として、垂木を採用することにより、断熱耐震パネルを建築物の屋根の形成に使用することができる。また、2つの構造物として、大引きを採用することにより、建築物の床の形成に使用することもできる。また、断熱パネルが傾斜面を有するので、第2実施形態の場合と同様に、枠材を固定するための釘打ちスペースが得られる利点を有する。
【符号の説明】
【0064】
1、1b、1c…断熱耐震パネル、2…対向面、3…外側面、4…柱、5、5b…構造用面材、6、6b、6c…断熱パネル、7、7b、7c…成形断熱材、8、8b…ボード状断熱材、9、9c…下端板、10…上端板、11…間柱、12…土台又は胴差、13…胴差又は軒桁、14…枠材、15…傾斜面、16…石膏ボード、17…壁内配置物、18…不在範囲、19…保温蓋板、20…硬質ウレタン断熱材。
【要約】
【課題】断熱かつ耐震性能を有する壁を現場で容易に形成するのを可能にする断熱耐震パネルを提供する。
【解決手段】断熱耐震パネル1は、建築物において、相互に対向する対向面2及び対向面2に隣接する外側面3を有する2つの柱4の間を閉塞して該建築物の外側と内側とを隔てるために使用されるものであり、左右の両端部が2つの柱4にそれぞれ固定される矩形状の構造用面材5と、構造用面材5の内側の面に固定され、左右の両端面が2つの柱4にそれぞれ固定される断熱パネル6とを備える。断熱パネル6は、ビーズ法ポリスチレンフォームによる成形断熱材と、これよりも断熱性の高いボード状断熱材とを張り合わせて構成される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4