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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】位置検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230407BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20230407BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G01S5/14
G08G1/005
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018144086
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020645
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆史
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186375(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113265(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/058302(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027557(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G01S 5/14
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元計測装置で得られた3次元形状から物体の物体形状を抽出し、前記物体形状と前記物体の位置とを取得する物体形状抽出部と、
前記物体のうち、特定の対象物体を識別するための対象物体識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記対象物体の位置を推定した位置推定情報を出力する位置推定部と、
前記物体形状抽出部が取得した前記物体の位置と、前記位置推定情報と、を用いて、前記対象物体識別情報と、前記物体形状と、を対応付ける識別情報対応付部と、
を備えることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
前記位置推定情報は、
複数の発信機の各々から発信される電波の受信強度により推定される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置推定情報は、
前記対象物体に備えられた無線装置に設けられた磁気センサによる地磁気の測定値から推定される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記対象物体に搭載されたモーションセンサが設けられ、
前記位置推定情報は、
前記モーションセンサが検出した前記対象物体の移動距離及び移動方向の各々から推定される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記識別情報対応付部は、
前記位置推定情報から求めた前記対象物体の速度ベクトルと、前記物体形状抽出部の出力から求めた前記物体の速度ベクトルと、の相関に基づき、前記物体形状と、前記対象物体識別情報と、を対応付ける
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記識別情報対応付部は、
前記物体に対応付けられた前記対象物体識別情報の履歴に基づき、前記物体形状と、前記対象物体識別情報と、を対応付ける
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内における対象物体の位置検出を行う位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内などにおいて、対象物体の位置を検出する方法は、各種検討されている。例えば、ビーコン、無線タグ、WiFi(ワイファイ)電波、地磁気、IMES(Indoor MEssaging System)、PHS(Personal Handy-phone System)等の通信端末を用いた位置推定技術や、この組合わせでの構成が多い(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上述した検出技術は、対象物体に設けられた通信端末が受信する電波強度などを用いた位置の推定を行なう技術であり、推定で求めた位置であるが故に、正確な対象物体の位置を検出することはできない。
【0003】
また、上述した検出技術は、通信端末とともに移動する対象物体の位置の推定が行えるが、その対象物体の正確な大きさを把握することはできない。
さらに、対象物体の位置の推定しか行えないため、通信端末を携帯した作業員が自身のみで移動しているか、あるいは作業員が大きな荷物を台車で運搬しているかなど、対象物体の大きさを検出することが全くできない。
【0004】
このため、例えば、上述した対象物体の検出技術を建物内のナビゲーションに用いる場合、移動する対象物体の大きさが全く判らないため、通過できる大きさに制限がある箇所をナビゲーションの経路から外す処理ができない。
この結果、ナビゲーションが可能な対象物体の大きさが制限され、建物内における荷物の搬入に用いることができない。
【0005】
一方、位置検出としては、自動車の自動運転技術に対応し、カメラや3次元計測装置を用いて、mm単位の高い精度で、自車両の周囲に存在する対象物体の位置検出を行なう検出技術がある。この位置検出方法によれば、車両の周囲に存在する対象物体の位置の検出とともに、対象物体の3次元形状も取得することができ、建物内を移動するロボットのナビゲーションなどにも適用させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-214834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したカメラや3次元計測装置を用いた位置検出技術は、対象物体の属性を示す識別情報を、特許文献1の技術のように検出することはできない。
特許文献1の位置検出技術は、携帯端末が位置を推定するための情報(例えば、ビーコンの受信電波強度など)と自身の識別情報とをシステム側に通知することにより、この識別情報に基づき自身の位置の推定結果を得ている。
したがって、システム側としては、対象物体の位置と、この対象物体の識別情報との対応を容易に取得することができる。
【0008】
一方、カメラや3次元計測装置を用いた位置検出技術は、撮像画像や計測情報などから対象物体の3次元空間における位置及び3次元形状を求める。
このため、上記位置検出技術は、対象物体の位置を求めるための情報を、対象物体から何ら通知を受けることなく対象物体の位置を求めているため、対象物体の識別情報を取得するものではない。
【0009】
したがって、位置の検出及び3次元形状が求められても、識別情報が取得できないので、対象物体の識別を行なうことはできない。
すなわち、対象物体の識別情報が取得できないため、3次元形状の対象物が移動している位置を正確に求めても、その対象物体が何であるかの属性情報を得ることができず、また、ナビゲーション等において推定した位置を通知する通知先も判らない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、対象物体の正確な位置及び3次元形状を得て、この3次元形状を対象物体として識別するための識別情報を容易に対応付けることができる位置検出システム及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の位置検出システムは、3次元計測装置で得られた3次元形状から物体の物体形状を抽出し、前記物体形状と前記物体の位置とを取得する物体形状抽出部と、前記物体のうち、特定の対象物体を識別するための対象物体識別情報を取得する識別情報取得部と、前記対象物体の位置を推定した位置推定情報を出力する位置推定部と、前記物体形状抽出部が取得した前記物体の位置と、前記位置推定情報と、を用いて、前記対象物体識別情報と、前記物体形状と、を対応付ける識別情報対応付部と、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、対象物体の正確な位置及び3次元形状を得て、この3次元形状を対象物体として識別するための識別情報を容易に対応付けることができる位置検出システム及び位置検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による位置検出システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図2】対象物体の対象物体形状及び対象物体識別情報の抽出を説明する図である。
図3】対応付データベース136に記憶されているテーブルの構成例を示す図である。
図4】対象物体形状と対象物体識別情報との対応付けの処理を示す概念図である。
図5】本発明の一実施形態による位置検出システムの対象物体形状に対する対象物体識別情報の対応付処理の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による位置検出システムを説明する。図1は、本発明の一実施形態による位置検出システムの構成例を示す概略ブロック図である。位置検出システム1は、3次元計測装置11、発信装置12及び位置検出サーバ13の各々を備えている。本実施形態においては、屋内施設における計測範囲毎に、3次元計測装置11及び発信装置12の各々が複数台備えられている。3次元計測装置11及び位置検出サーバ13の各々は、例えば、建物内のLAN(Local Area Network)などのネットワーク100を介してデータの送受信を行なう。また、発信装置12は、ネットワーク100に接続されても良い。
本実施形態の以下の説明において、例えば、3次元計測装置11としてLRS(Laser Range Scanner)を用い、発信装置12としてビーコン発信機を用いた説明を行なう。しかしながら、後述するように、ビーコン発信機を用いずに対象物体の位置を推定する構成としても良い。また、本実施形態においては、建物の屋内を例として説明するが、建物の建っている敷地内の半屋外空間、例えば、外廊下、渡り廊下、開放廊下、車寄せ、デッキ、テラス、バルコニー、縁側、外廊下、車寄せ及びデッキなどにおいて利用する構成としても良い。
【0015】
3次元計測装置11は、レーザをスキャンし、計測範囲(レーザ光の届く範囲)における空間の3次元形状を計測し、計測結果を点群データとして位置検出サーバ13に対し、ネットワーク100を介して出力する。
発信装置12は、屋内の壁や天井などに配置されており、自身の識別情報である発信装置識別情報を含むビーコン信号を、予め設定された所定の時間間隔の周期的において、所定の電波強度により発信する。
【0016】
位置検出サーバ13は、データ入出力部131、対象物体形状抽出部132、識別情報取得部133、対象物体位置推定部134、識別情報形状対応部135、対応付データベース136、3次元空間データ記憶部137及び識別情報データベース138の各々を備えている。
データ入出力部131は、3次元計測装置11から所定時間毎に順次供給される計測3次元形状データから、この3次元計測装置11が配置されている計測範囲を示す計測範囲情報を抽出する。そして、データ入出力部131は、計測3次元形状データと、この計測3次元形状データを取得した時間を示すタイムスタンプと、計測3次元形状計測データの範囲情報とを対応付けて、3次元空間データ記憶部137に書き込んで記憶させる。
【0017】
また、データ入出力部131は、対象物体が携帯する、或いは対象物体に搭載された無線装置から供給される(通知される)、この無線装置の位置を推定位置として推定するための位置推定情報を、データを取得した時間を示すタイムスタンプと対応付け、3次元空間データ記憶部137に書き込んで記憶させる。データ入出力部131は、計測3次元形状データに同期させて位置推定情報を入力する。ここで、位置推定情報は、無線装置の識別情報と、発信装置12が発信したビーコン信号を上記無線装置が受信した際の電波強度と、このビーコン信号を発信した発信装置12を識別する発信装置識別情報とである。
【0018】
対象物体形状抽出部132は、計測3次元形状データから、計測範囲内における対象物体の3次元形状である対象物体形状を抽出する。ここで、対象物体形状抽出部132は、3次元空間データ記憶部137に記憶されている、3次元計測装置の組合せから選択される測定範囲の背景3次元形状データを選択して読み出し、計測3次元形状データに対して、背景3次元形状データによる背景差分処理を行ない、対象物体形状を抽出する。ここで、背景3次元形状データは、対象物体が存在していない状態において、計測3次元形状データを取得し、この計測3次元形状データを建物の設計における3D-CAD(three dimensions-computer assisted design)のデータによりキャリブレーションした測定範囲毎の屋内の3次元形状である。また、背景3次元形状データは、計測範囲における、例えば室内あるいは廊下などの3次元空間の閉空間毎に設定されている。また、計測範囲としては、屋内の閉空間のみではなく、すでに述べた半閉空間(上記半屋外空間)も対象としても良い。
【0019】
すなわち、対象物体形状抽出部132は、計測3次元形状データと、背景3次元形状データとを比較し、背景3次元形状データにおける3次元形状と類似する3次元形状を抽出し、この類似した3次元形状を計測3次元形状データから除去する。これにより、対象物体形状抽出部132は、計測範囲内の屋内における対象物体の3次元形状を対象物体形状として、位置を対象物体形状位置として抽出する。そして、対象物体形状抽出部132は、抽出した対象物体形状に対して識別情報(対象物体形状識別情報)を付与し、この対象物体形状を抽出した計測3次元形状データのタイムスタンプ、対象物体形状位置及び寸法情報の各々を対応付データベース136に対して書き込んで記憶させる。
識別情報取得部133は、無線装置が通知する位置推定情報から、対象物体が携帯(あるいは備えられた)する無線装置の識別情報を抽出し、この位置推定情報を入力した際のタイムスタンプに対応付けて、対象物体識別情報とする。
【0020】
対象物体位置推定部134は、位置推定情報から発信装置識別情報と、この発信装置識別情報に対応した電波強度とから、屋内における無線装置の位置を推定し、対象物体推定位置情報とする。ここで、対象物体位置推定部134は、3次元空間データ記憶部137に記憶されている発信装置識別情報の各々と、それぞれの発信装置の発信するビーコン信号の電波強度とに対応付けられた位置情報を示す位置推定テーブルを参照し、位置推定情報の発信装置識別情報とその電波強度とに対応する位置情報を抽出することで、対象物体が携帯する無線装置の位置、すなわち対象物体推定位置の推定を行なう。そして、対象物体位置推定部134は、識別情報取得部133が抽出した対象物体識別情報に対応付けて、タイムスタンプとともに、対象物体推定位置を対応付データベース136に対して書き込んで記憶させる。
【0021】
図2は、対象物体の対象物体形状及び対象物体識別情報の抽出を説明する図である。図2(a)は、計測3次元形状データ及び位置推定情報の取得を説明する概念図である。図2(a)においては、屋内における所定の計測範囲である部屋500内部に、3次元計測装置11_1から11_3の各々と、ビーコンの発信装置12_1から12_4の各々とが配置されている。対象物体である歩行者550及び551の各々は、それぞれ無線装置540、541それぞれを携帯している。また、対象物体であるテーブル(机)の対象物体形状553には、無線装置543が備えられている。3次元計測装置11_1から11_3の各々は、部屋500内部の3次元形状をそれぞれ計測3次元形状データとして取得し、取得した計測3次元形状データを位置検出サーバ13に対して出力する。無線装置540、541及び543の各々は、発信装置12_1から12_4それぞれから受信したビーコン信号の電波強度及び発信装置識別情報を、自身の識別情報(対象物体識別情報)とともに位置検出サーバ13に対して出力する。
【0022】
図2(b)は、計測3次元形状データから対象物体形状を抽出する処理を説明する図である。対象物体形状抽出部132は、計測3次元形状データに付与された3次元計測装置を識別する識別情報を抽出し、この識別情報に対応する背景3次元形状データを3次元空間データ記憶部137から読み出す(処理F1)。
そして、対象物体形状抽出部132は、3次元計測装置11_1から11_3の各々からの計測3次元形状データを合成し、対象物体形状を抽出する計測3次元形状データを生成する(処理F2)。
対象物体形状抽出部132は、計測3次元形状データにおける3次元形状から、背景3次元形状データにおける3次元形状を除去する背景差分処理を行なう(処理F3)。
対象物体形状抽出部132は、処理F3における除去の結果、差分の3次元形状601、602を、計測3次元形状データから抽出された対象物体形状とする(処理F4)。
【0023】
図3は、対応付データベース136に記憶されているテーブルの構成例を示す図である。図3(a)は対象物体形状テーブルの構成例を示し、対象物体形状識別情報毎に設けられている。図3(a)において、対象物体形状テーブルには、レコード毎に、タイムスタンプ、対象物体形状位置及び寸法情報の各々の欄が設けられている。タイムスタンプは、対象物体形状位置を求めた計測3次元形状データが入力された時刻を示している。対象物体形状位置は、屋内における座標系での対象物体形状の存在する座標位置を示している。寸法情報は、対象物体の大きさ、例えば、対象物体形状を囲む最小の立方体の高さ、幅及び奥行の各々の寸法を示す。また、対象物体形状位置は、例えば、対象物体形状を囲む立方体の中心(あるいは重心)の位置である。
【0024】
図3(b)は対象物体推定位置テーブルの構成例を示し、対象物体識別情報毎に設けられている。図3(b)において、対象物体推定位置テーブルには、レコード毎に、タイムスタンプ及び対象物体推定位置情報の各々の欄が設けられている。タイムスタンプは、図3(a)の対象物体形状テーブルに同期しており、対象物体推定位置情報を求めた位置推定情報が入力された時刻を示している。対象物体推定位置情報は、無線装置が受信したビーコン信号の電波強度から推定した対象物体の位置を示している。
【0025】
図3(c)は識別情報形状対応テーブルの構成例を示し、対象物体形状識別情報毎に設けられている。図3(a)において、識別情報形状対応テーブルには、レコード毎に、タイムスタンプ、対象物体形状位置、寸法情報及び対象物体識別情報の各々の欄が設けられている。タイムスタンプは、対象物体形状位置を求めた計測3次元形状データが入力された時刻である。対象物体形状位置は、屋内における座標系での対象物体形状の存在する座標位置を示している。寸法情報は、対象物体の大きさ、例えば、対象物体形状を囲む最小の立方体の高さ、幅及び奥行の各々の寸法を示している。また、対象物体形状位置は、例えば、対象物体形状を囲む上記立方体の中心の位置である。
【0026】
図1に戻り、識別情報形状対応部135は、対象物体形状と対象物体識別情報との対応付けの処理を行なう。ここで、対応付けの処理を行なう対応付範囲が予め設定されており、対象物体推定位置情報の示す位置を中心とした対応付範囲内に対象物体形状が一つあるいは複数あるかにより、識別情報形状対応部135による対応付処理は異なる。すなわち、識別情報形状対応部135は、対象物体推定位置情報を中心とした対応付範囲内に対象物体形状が一つの場合、この対象物体形状と、対象物体推定位置情報に対応する対象物体識別情報とを対応付ける。
【0027】
一方、推定位置情報の示す位置を中心とした対応付範囲内に対象物体形状が複数存在する場合、識別情報形状対応部135は、対応付データベース136における対象物体形状テーブルを参照し、対象物体形状の移動方向及び移動速度の各々(速度ベクトル)を求める。また、同様に、識別情報形状対応部135は、対応付データベース136における対象物体推定位置テーブルを参照し、対象物体識別情報の示す無線装置の移動方向及び移動速度の各々を求める。そして、識別情報形状対応部135は、対象物体形状毎に、この対象物体形状の移動方向及び移動速度と、無線装置それぞれの移動方向及び移動速度との相関を取り、高い相関を有する対象物体形状と無線装置とが同一の対象物体であるとし、この対象物体形状に対して、無線装置の対象物体識別情報とを対応付ける。
【0028】
図4は、対象物体形状と対象物体識別情報との対応付けの処理を示す概念図である。図4(a)は、対応付範囲内に対象物体形状が複数存在する場合における識別情報形状対応部135の対応付の処理を示す図である。ここで、歩行者550及び551の各々は、それぞれ無線装置540、541を携帯して移動している。無線装置540の対象物体推定位置情報は位置310を示しており、位置310を中心とした対応付範囲内310Aに対象物体形状として歩行者550、551が含まれている。同様に、無線装置541の対象物体推定位置情報は位置311を示しており、位置311を中心とした対応付範囲内311Aに対象物体形状として歩行者550、551が含まれている。ここで示す様に、無線装置540及び541の各々のビーコン信号の受信電波の強度により位置の推定を行った場合、推定される対象物体推定位置情報は、無線装置540、541それぞれの実際の位置とは大きく異なってしまう。この場合、識別情報形状対応部135は、推定位置情報を中心とした対応付範囲内に対象物体形状が複数存在することを検出する(処理F10)。
【0029】
このため、識別情報形状対応部135は、歩行者550の対象物体形状と、位置310及び311の各々との移動方向、移動速度それぞれの相関を求める。また、識別情報形状対応部135は、歩行者551の対象物体形状と、位置310及び311の各々との移動方向、移動速度それぞれの相関を求める。これにより、識別情報形状対応部135は、上述した相関の値が高い歩行者550の対象物体形状に位置310に対応する対象物体識別情報を対応付け、歩行者551の対象物体形状に位置311に対応する対象物体識別情報を対応付ける(処理F11)。
【0030】
図4(b)は、対象物体形状を分割及び統合した際における対象物体形状と対象物体識別情報との対応付処理を説明する概念図である。
対象物体形状抽出部132が対象物体形状561及び562の各々を検出した場合を説明する。
・ケース#1.対象物体形状561の示す対象物体が無線装置を備えており、対象物体形状562の示す対象物体が無線装置を備えていない場合。
処理F21:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561及び562の各々を検出した場合、対象物体形状561、562それぞれに対して対象物体形状識別情報を付与して管理する。識別情報形状対応部135は、対象物体形状561に対して対象物体識別情報を対応付けるが、一方、対象物体形状561には対象物体識別情報を対応付けない。
【0031】
処理F22:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561及び562の各々が一体となったことを検出した場合、対象物体識別情報が付与されている対象物体形状561の対象物体形状識別情報により管理する。そして、対象物体形状抽出部132は、対応付データベース136の対象物体形状テーブルにおける寸法情報を、対象物体形状561の寸法から、対象物体形状561及び562が合体した対象物体形状の寸法に変更する。
【0032】
処理F23:識別情報形状対応部135は、所定の時間が経過すると、対象物体形状561及び562の各々が一体された3次元形状を、対象物体形状561とする。このとき、識別情報形状対応部135は、対象物体形状561と合体した3次元形状が対象物体形状562であることを履歴として、対応付データベース136に記憶して残す。そして、対象物体形状抽出部132は、上述した所定の時間が経過した後、この時点のタイムスタンプ以降、対象物体形状テーブルにおける対象物体形状562のデータの更新を行なわない。
【0033】
処理F24:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561が2つの3次元形状に分離したことを検出した場合、履歴を参照することにより対象物体形状561が対象物体形状562と分離したことを検出する。そして、対象物体形状抽出部132は、この時点のタイムスタンプ以降、対象物体形状テーブルにおける対象物体形状562のデータの更新を再開する。識別情報形状対応部135は、対象物体形状561から分離した3次元形状が対象物体形状562であることを履歴として、対応付データベース136に記憶して残す。
【0034】
・ケース#2.対象物体形状561及び562の各々の示す対象物体が無線装置を備えている場合。
処理F21:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561及び562の各々を検出した場合、対象物体形状561、562それぞれに対して対象物体形状識別情報を付与して管理する。識別情報形状対応部135は、対象物体形状561及び562の各々に対して対象物体識別情報の対応付けを行なう。
【0035】
処理F22:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561及び562の各々が一体となったことを検出した場合、いずれか一方の3次元形状識別情報により管理する。例えば、対象物体形状抽出部132は、寸法が大きい方(すなわち体積が大きい方)の対象物体形状の対象物体形状識別情報により管理する。そして、対象物体形状抽出部132は、対応付データベース136の対象物体形状テーブルにおける寸法情報を、対象物体形状561の寸法から、対象物体形状561及び562が合体して一体化した3次元形状の寸法に変更する。
【0036】
処理F23:識別情報形状対応部135は、所定の時間が経過すると、対象物体形状561及び562の各々が一体された3次元形状を、対象物体形状561とする。また、識別情報形状対応部135は、識別情報形状対応テーブルにおける対象物体識別情報の欄に、それぞれの対象物体識別情報を書き込む。このとき、識別情報形状対応部135は、対象物体形状561と合体した3次元形状が対象物体形状562であることを履歴として、対応付データベース136に記憶して残す。そして、対象物体形状抽出部132は、上述した所定の時間が経過した後、この時点のタイムスタンプ以降、対象物体形状テーブルにおける対象物体形状562のデータの更新を行なわない。
【0037】
処理F24:対象物体形状抽出部132は、対象物体形状561が2つの3次元形状に分離したことを検出した場合、履歴を参照して、対象物体形状561が対象物体形状562と分離したことを検出する。そして、対象物体形状抽出部132は、この時点のタイムスタンプ以降、対象物体形状テーブルの対象物体形状562のデータの更新を再開する。識別情報形状対応部135は、対象物体形状561から分離した3次元形状が対象物体形状562であることを示す履歴を、対応付データベース136に記憶して残す。
【0038】
上述した処理については、例えば、荷物の搬入を行なう際、処理F21において、作業者が台車に荷物を搭載して運ぶとき、台車を操る作業者が対象物体形状561で、台車に乗せる荷物が対象物体形状562とした場合が考えられる。この場合、対象物体形状抽出部132は、台車を操る作業者と、台車に乗せる荷物との各々を3次元形状として検出し、それぞれに対象物体形状識別情報を付与して管理する。
そして、処理F22において、作業者が、台車に荷物を搭載することで、台車を操る作業者と、台車に搭載された荷物とが対象物体形状抽出部132より1つの3次元形状として検出される。また、処理F24において、作業者が、台車から荷物を下ろすことで、台車を操る作業者と、台車に搭載された荷物とが対象物体形状抽出部132より2つの3次元形状として検出される。
【0039】
また、図2(a)に示す対象物体形状553の場合、テーブル(什器)であるため、搬入して配置した後、移動させることは当分の間ない。このため、対象物体形状抽出部132は、対応付データベース136の対象物体形状テーブルにおいて、所定の時間を超えて、対象物体形状位置が移動しない場合、対象物体形状553を背景3次元形状データに合成させる処理を行なう。そして、対象物体形状抽出部132は、対象物体形状553を合成した新たな背景3次元形状データとして、3次元空間データ記憶部137に対して書き込んで記憶させる。これにより、対象物体形状553の抽出を行なう必要が無いため、対象物体形状抽出部132の負荷を低減させることができる。また、対象物体形状553を部屋から搬出した場合、計測3次元形状データと背景3次元形状データとの差分により、対象物体形状553が移動したことを検出することができる。
【0040】
図5は、本発明の一実施形態による位置検出システムの対象物体形状に対する対象物体識別情報の対応付処理の動作例を示すフローチャートである。
ステップS11:データ入出力部131は、3次元計測装置11から所定時間毎に順次供給される計測3次元形状データ及び位置推定情報の各々を計測情報として入力する。
ステップS12:対象物体形状抽出部132は、背景3次元形状データを用いた背景差分処理により、計測3次元形状データにおける対象物体形状の検出を行なう。
ステップS13:対象物体形状抽出部132は、計測3次元形状データから対象物体形状が抽出された場合、あるいは位置推定情報が入力された場合、処理をステップS14へ進め、一方、対象物体形状が抽出されず、かつ位置推定情報が入力されない場合、処理をステップS11へ戻す。
【0041】
ステップS14:対象物体形状抽出部132は、抽出された対象物体形状と、すでに対象物体形状テーブルに記載されている対象物体形状との同定の処理を行なう。
ステップS15:対象物体形状抽出部132は、同定の処理において、抽出された対象物体形状が対象物体形状テーブルに含まれているか否か、すなわち抽出された対象物体形状に対象物体形状識別情報が付与されているか否かの判定を行なう。
ステップS16:対象物体位置推定部134は、対象物体の無線装置から通知される位置推定情報により、無線装置の対象物体推定位置情報及び対象物体識別情報を求める。
ステップS17:対象物体形状抽出部132は、抽出された対象物体形状のなかで、対象物体形状識別情報が付与されていない対象物体形状に対して、対象物体形状識別情報を付与する。対象物体形状抽出部132は、対象物体形状の各々の追跡処理(速度ベクトル及び3次元形状の寸法などの相関を求めることによる同定処理)を行ない、新たに抽出された対象物体形状か、すでに抽出された対象物体形状であるかの判定を行なっている。
ステップS18:識別情報形状対応部135は、識別情報形状対応テーブルを参照して、抽出された対象物体形状に対象物体識別情報が対応付けられているか(対応付けが有るか)否かの判定を行なう。このとき、識別情報形状対応部135は、対応付けられている場合に処理をステップS19へ進め、一方、対応付けられていない場合に処理をステップS21へ進める。
【0042】
ステップS19:
識別情報形状対応部135は、複数の対象物体形状に同一の対象物体識別情報が対応付けられているか否か、あるいは対象物体形状の寸法が変化したか否かの判定を行なうとともに、また対象物体形状の移動方向及び移動速度の各々と、無線装置(対象物体)の移動方向及び移動速の各々の相関がそれぞれ予め設定した相関値以上であるか否かの判定を行なう。すなわち、識別情報形状対応部135は、対象物体形状の寸法、対象物体形状識別情報、対象物体識別情報の組合せなどが直前と同様であり、かつ対象物体形状と無線装置(対象物体)との移動方向及び移動速度に所定以上の相関があるか(正しい対応であるか)否かの判定を行なう。このとき、識別情報形状対応部135は、正しい対応である場合、対象物体形状に変化が無く、対象物体形状と対象物体識別情報との組合せに変化がなく、かつ対象物体形状と無線装置(対象物体)との移動方向及び移動速度に所定以上の相関があるため、処理をステップS20へ進める。一方、識別情報形状対応部135は、正しい対応でない場合、対象物体形状の合体による一体化あるいは分離、対象物体識別情報の対象物体形状間における移動があるか、対象物体形状と対象物体識別情報との組合せに変化があるか、対象物体形状と無線装置(対象物体)との組合せ自体が正しくないため、処理をステップS21へ進める。
【0043】
ステップS20:
識別情報形状対応部135は、タイムスタンプに対応して、対応付データベース136の対象物体形状テーブルを参照し、識別情報形状対応テーブルにおける対象物体形状位置の更新を行ない、処理をステップS11に戻す。
ステップS21:
図4において説明した処理が対象物体形状抽出部132により行なわれるため、識別情報形状対応部135は、対応付データベース136における対象物体形状テーブルを参照し、識別情報形状対応テーブルにおける対象物体形状位置、寸法情報及び対象物体識別情報の各々の変更を行なう。
【0044】
上述したように、本実施形態によれば、対象物体の正確な位置及び3次元形状の寸法を得て、かつこの3次元形状を対象物体として識別するための対象物体識別情報を対象物体が携帯する無線装置から得て、この対象物体識別情報を3次元形状である対象物体形状に対応付けるため、対象物体の正確な位置、寸法及び対象物体識別情報を容易に求めることが可能となる。また、本実施形態によれば、識別情報データベース138に対象物体識別情報と対象物体の属性情報とが対応付けられた属性情報テーブルが設けられているため、対象物体の属性を得て、対象物体が荷物である場合に何であるか、対象物体が人間である場合に所属などの情報を得ることができ、荷物の搬送処理やセキュリティの管理などに用いることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、3次元計測装置としてLRSを例として説明したが、キャリブレーションされた複数の撮像装置により屋内を撮像し、異なる撮像位置及び撮像角度で撮像された複数の撮像データから3次元形状を復元し、計測3次元形状データとして用いても良い。
また、本実施形態においては、無線装置からの位置推定情報から対象物体識別情報を抽出しているが、例えば対象物体が荷物の場合など、対象物体の視認できる位置に対象物体識別情報が示された添付物を付加し、撮像装置によって対象物体識別情報を読み取る構成を用いても良い。この場合、LRSにより対象物体形状の位置及び寸法を計測し、撮像装置により対象物体の対象物体識別情報を読取り、対象物体形状に対象物体識別情報を対応付ける。他の構成として、異なる撮像位置及び撮像角度で撮像された複数の撮像データから3次元形状を復元した際、撮像データから対象物体識別情報を読み取って抽出し、対象物体形状に対象物体識別情報を対応付ける構成としても良い。
また、本実施形態においては、無線装置が受信するビーコンの電波強度により対象物体の位置推定を行なったが、対象物体に磁気センサを設け、この磁気センサが取得する地磁気のデータにより、3次元空間データ記憶部137に記憶された地磁気と建物における位置(座標位置)との対応テーブルから、対象物体の位置を推定する構成としても良い。
また、本実施形態においては、無線装置が受信するビーコンの電波強度により対象物体の位置推定を行なったが、対象物体にモーションセンサを搭載させ、モーションセンサが対象物体の動きを検出し、この検出結果を無線装置が自身の識別情報とともに位置検出サーバ13へ送信し、対象物体位置推定部134が、モーションセンサの検出結果である対象物体の移動距離及び移動方向の各々と、屋内地図とから、対象物体の移動した後の位置を推定する構成としても良い。
【0046】
また、図1における位置検出サーバ13の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、対象物体形状に対して対象物体識別情報を対応付ける処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0047】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
11…3次元計測装置 12…発信装置 13…位置検出サーバ 100…ネットワーク 131…データ入出力部 132…対象物体形状抽出部 133…識別情報取得部 134…対象物体位置推定部 135…識別情報形状対応部 136…対応付データベース 137…3次元空間データ記憶部 138…識別情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5