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  • 特許-異常又は状態の診断機構及び診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】異常又は状態の診断機構及び診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230407BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230407BHJP
   F16K 49/00 20060101ALI20230407BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
H04Q9/00 311K
F16K49/00 B
H04B3/54
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018215080
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020086546
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000228419
【氏名又は名称】日本ギア工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】澤口 大介
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-203999(JP,A)
【文献】特開2008-071142(JP,A)
【文献】特開2005-134357(JP,A)
【文献】特開平11-318033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
F16K 37/00-51/02
H04B 1/76- 3/44
H04B 3/50- 3/60
H04B 7/00- 7/015
H03J 9/00- 9/06
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動弁用のアクチュエータ内にスペースヒータを有し、
スペースヒータと電源間の電線上において、
分岐がなく、
電源側とヒータ側にそれぞれ電力線通信用モデムが設けられており、
両モデム間の電力線通信を介して異常又は状態診断情報が伝達されることを特徴とする診断機構。
【請求項2】
スペースヒータ側のモデムが、スペースヒータを含む機器のカバー内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の診断機構。
【請求項3】
前記カバー内に制御装置を備えることによりモデム側で診断可能であることを特徴とする請求項2に記載の診断機構。
【請求項4】
診断用のセンサが、ヒータ側のモデムに接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の診断機構。
【請求項5】
監視装置が、電源側モデムと有線又は無線により接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の診断機構。
【請求項6】
請求項1から5の診断機構を使用し、
センサからの情報をモデム間の電力線通信により取得して診断を行うことを特徴とする診断方法。
【請求項7】
常時通信されていることを特徴とする請求項6に記載の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常又は状態の診断機構及び診断方法に関する。より具体的には、アクチュエータ及びアクチュエータが駆動する装置の常時診断を可能にする診断機構及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モーター(電動機)を使用したアクチュエータで駆動する電動弁は、減速機構を介して大きなトルクを得ることができるため、大型の弁の作動に適しており、発電所など大型プラントにおいて広く使用されている。このような大型プラント等において弁の作動の異常が生じると大事故に繋がる可能性があることから、当該電動弁及びアクチュエータの異常や状態の診断が必要になる。しかし、例えば原子力発電所などの施設では、現場にて異常又は状態診断を行うことに危険性があるため、遠隔で診断を行うことが好ましい。
【0003】
このため、従来より遠隔診断のための各種の診断方法等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、異常又は状態の判断に過大な時間を要すると、プラント稼働の効率性に問題が生じるために、判断には効率性が要求される。さらに、診断に正確性が欠ければ、事故の原因となる。さらに、安全性に問題があれば作業者における危険性を生じる。さらに、診断装置自体の効率性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-134357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、少ない物理的要素で安全かつ遠隔診断を可能にしつつ、アクチュエータ及びアクチュエータが駆動する装置の常時診断も可能にする診断機構及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の診断機構は、
アクチュエータ内にスペースヒータを有し、
スペースヒータと電源間の電線上において、
電源側とヒータ側にそれぞれ電力線通信用モデムが設けられており、
両モデム間の電力線通信を介して異常又は状態診断情報が伝達されることからなる。
【0007】
また、スペースヒータ側のモデムが、スペースヒータを含む機器のカバー内に収納されていることが好適である。
また、当該カバー内に制御装置を備えることによりモデム側で診断可能であることが好適である。
また、診断用のセンサが、ヒータ側のモデムに接続されていることが好適である。
【0008】
また、監視装置が、電源側モデムと有線又は無線により接続されていること
好適である。
また、アクチュエータは電動弁用のアクチュエータであることが好適である。
【0009】
さらに、本発明の診断法法は、上記の診断機構を使用し、
センサからの情報をモデム間の電力線通信により取得して、好ましくは常時診断を行うことからなる。
【0010】
本発明では、アクチュエータに設けられるスペースヒータを利用するものである。スペースヒータは、電子機器等が結露や高湿度によって故障や損傷することを防ぐために、カバーなどで仕切られた所定の空間内の絶対湿度を一定のまま空気温度を上昇させ、相対湿度を下げることにより結露等を防止するものである。抵抗熱等を使用して温度上昇を起こすために、スペースヒータには電線により電力が供給される。そして、このスペースヒータは、常時結露を防ぐ観点から弁の動作と無関係に常時電力が供給され得るものである。
【0011】
さらに、スペースヒータと電源間に、電源側とヒータ側にそれぞれ電力線通信用モデム(親機,子機)を設け、モデム間の電力線通信を介して、センサからの情報を獲得して診断を行うこととしたものである。
【0012】
電力線通信は、交流電力(50/60Hz)を供給する目的で使用されている電力線に、高周波搬送波信号を重畳させ、通信回線としても利用する技術である。本発明では、センサから取得される情報信号を電源・スペースヒータ間の電力線にモデムを介して重層して伝送し、監視機器にて取得された情報を監視する。
【0013】
当該構成によれば、各センサを直接スペースヒータ側モデムと接続し、必要な情報を常時取得して診断を行うことができる。したがって、実質的にアクチュエータ内で各センサとの配線を完結することができ、配線距離も短距離化し、使用空間的に有利になり、かつ新たな配線を必要とせずに常時診断を可能にするものである。センサにより検知する対象は電流、電圧、開度、トルク、温度、振動等、公知の対象と変わるところはなく、全ての対象に適用することが可能である。なお、センサとモデムとの接続は、通常有線が想定されるが、無線接続を廃する趣旨ではない。
【0014】
本発明においては、スペースヒータ側のモデム(子機)は、安全性及び効率性観点からスペースヒータを備えるカバー内に設置されることが好ましい。カバー内にはトルクスイッチやリミットスイッチなど、各種の機器が設けられているが、これらを収納するカバー内に設けることで、使用スペースの有利性と、結露防止された空間の有効利用とを兼ねることができる。さらに、スペースヒータのモデム側に、診断制御装置を別途又は内装して搭載していることで、センサから取得された情報を、スペースヒータ側で診断することも可能である。
【0015】
電源側のモデムとは、有線又は無線により、ディスプレイ等の表示手段を備えた監視機器が設けられ、各センサからの取得情報や診断結果を確認することができる。電源側のモデム(親機)側でも、診断制御装置を介してセンサから取得された情報を診断することが可能である。したがって、本発明は親機にて診断を行う場合、子機にて診断を行う場合、両者にて診断を行う場合のいずれにも対応することができる。また、得られた情報の診断処理は従来の診断方法を採用することができるため、汎用性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】スペースヒータの利用形態を示す図である。
図2】本発明の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、スペースヒータの利用形態を示す図であり、図2は本発明の構成を示す概念図である。
【0018】
スペースヒータ1は、リミットスイッチ2、トルクスイッチ3、開度指示計4など、各種の機器が収納されたカバー5内に設けられた抵抗機器であり、電力線6(図2のみ図示)により電力が供給されて加熱される。その結果、カバー5内の温度が上昇し、相対湿度が低下して結露等を防止している。ただし、上記は一例であり、モータやその他の機器が内蔵されていても良い。スペースヒータ1は、モータ7や他の機器と異なり、電動弁8の作動・非作動にかかわらず、結露防止と常時監視とを可能にするため、電力が常時供給されている。一方、モータ7にも電源9間に電力線10が設けられているが、こちらは作動時又は所望時に電力が供給される。
【0019】
本発明では、スペースヒータ1と、電源9間に設けられた電力線6において、カバー5内にスペースヒータ側の電力線通信モデム11が設けられており、各種センサ12からの通信ケーブル13がモデム11に接続されている。モデム11は、各種センサ12からの情報を電力線に重層して伝送する。さらに、モデム11内にCPU,メモリ等の制御装置を内蔵し、各種センサ12からの情報に基づき、子機側でも診断を行うことを可能にしても良い。なお、モデム11とセンサ12間に制御装置を設けて診断しても良い。
【0020】
電源9側には、電力線通信モデム14が設けられており、モデム11から伝送された情報を取得することができる。さらに、モデム14内にCPU,メモリ等の制御装置を内蔵し、各種センサ12からの情報に基づき、親機側で診断を行うことを可能にしても良い。さらに、表示装置等を備えた監視装置15が有線又は無線によりモデム14に接続されており、電動弁8から遠隔にて監視することが可能である。
【0021】
本発明の以上の構成によれば、少ない物理的要素で安全かつ遠隔診断を可能にし、省スペースでありながら常時異常又は状態診断を常時かつ安全に行うことができる。さらに、電動弁だけでなく、アクチュエータにより駆動される他の機器においても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 スペースヒータ
2 リミットスイッチ
3 トルクスイッチ
4 開度指示計
5 カバー
6 電力線
7 モータ
8 電動弁
9 電源
10 電力線
11 モデム
12 センサ
13 通信ケーブル
14 モデム
15 監視装置
図1
図2