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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】回転式圧縮機、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20230407BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230407BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20230407BHJP
   F25B 31/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
F04C29/00 T
F04B39/00 106D
F04B39/00 106E
F04B49/06 341C
F25B31/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019052585
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153293
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】知念 武士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徹
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-003963(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065706(WO,A1)
【文献】特開2011-089636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04C 23/00-29/12
F04B 49/00-51/00
F25B 31/02
F04C 18/356
H02K 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられる圧縮機構と、
前記密閉容器内に設けられる電動機と、
前記電動機の回転駆動力を前記圧縮機構へ伝達する回転軸と、
ホルダーを介して前記密閉容器に固定される検知器固定子と、前記回転軸に固定される検知器回転子と、を有し、前記回転軸の回転角を検出する回転角検知器と、を備え、
前記電動機は、前記密閉容器に固定される電動機固定子と、前記回転軸に回転一体の電動機回転子と、を備え、
前記検知器固定子と前記検知器回転子との間の最小隙間量は、前記電動機固定子と前記電動機回転子との間の最小隙間量以上であり、
前記電動機の前記圧縮機構に近い側の端部から前記圧縮機構から遠い側の端部へ冷媒ガスを通過させる第一冷媒通路と、
前記回転角検知器の前記電動機に近い側の端部から前記電動機から遠い側の端部へ冷媒ガスを通過させる第二冷媒通路と、を有し、
前記第二冷媒通路の通路断面積は、前記第一冷媒通路の通路断面積以上である回転式圧縮機。
【請求項2】
密閉容器は円筒形状の胴部と、前記胴部の両端部に設けられた鏡板と、を有し、
前記電動機の電動機固定子と前記回転角検知器との間の第一距離は、前記密閉容器の前記鏡板のうち前記回転角検知器に近い方の前記鏡板の頂部と前記回転角検知器との間の第二距離よりも短い請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記電動機の電動機回転子の外径は、前記回転角検知器の検知器回転子の外径と実質的に同じ、または前記回転角検知器の検知器固定子の外径以上である請求項1または2に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記ホルダーは、内周面に前記回転角検知器の検知器固定子を保持する環状の保持部と、前記保持部の外周から放射状に突出して前記密閉容器の内面に固定される複数の脚部と、を備える請求項1からのいずれか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載される回転式圧縮機と、
放熱器と、
膨張装置と、
吸熱器と、
前回転式記圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式圧縮機、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の固定子、回転子に、回転角検出器(Resolver、レゾルバー)の固定子、回転子をそれぞれ設置し、この回転角検出器で検出された回転子の位置情報に基づいて駆動を制御する圧縮機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-003963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密閉容器内には、回転角検出器と、冷媒の圧縮機構と、圧縮機構を駆動させる電動機と、が設けられている。密閉容器の鏡板には、圧縮機構で圧縮された冷媒を密閉容器外へ吐出させる吐出管が設けられている。
【0005】
電動機は、圧縮機構と回転角検出器との間に配置されている。回転角検出器は、電動機と吐出管との間に配置されている。つまり、圧縮機構と吐出管との間には、電動機と回転角検出器とが配置されている。換言すると、回転角検出器は、圧縮機構から密閉容器内に吐出されて吐出管へ至る冷媒の流通経路の途中に配置されている。そのため、回転角検出器は、密閉容器内のガス冷媒の流通経路における圧力損失を増加させる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、密閉容器に回転角検出器を収容して圧縮機の駆動を安定的に制御でき、かつ回転角検出器による圧力損失への影響を抑制可能な回転式圧縮機、および冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る回転式圧縮機は、密閉容器と、前記密閉容器内に設けられる圧縮機構と、前記密閉容器内に設けられる電動機と、前記電動機の回転駆動力を前記圧縮機構へ伝達する回転軸と、ホルダーを介して前記密閉容器に固定される検知器固定子と、前記回転軸に固定される検知器回転子と、を有し、前記回転軸の回転角を検出する回転角検知器と、を備え、前記電動機は、前記密閉容器に固定される電動機固定子と、前記回転軸に回転一体の電動機回転子と、を備え、前記検知器固定子と前記検知器回転子との間の最小隙間量は、前記電動機固定子と前記電動機回転子との間の最小隙間量以上であり、前記電動機の前記圧縮機構に近い側の端部から前記圧縮機構から遠い側の端部へ冷媒ガスを通過させる第一冷媒通路と、前記回転角検知器の前記電動機に近い側の端部から前記電動機から遠い側の端部へ冷媒ガスを通過させる第二冷媒通路と、を有し、前記第二冷媒通路の通路断面積は、前記第一冷媒通路の通路断面積以上である。
【0008】
さらに、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記回転式圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器と、前記回転式圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および回転式圧縮機の概略的な図。
図2】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の断面図。
図3】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の断面図。
図4】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の断面図。
図5】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との断面図。
図6】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との平面図。
図7】本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との他の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る回転式圧縮機、および冷凍サイクル装置の実施形態について図1から図7を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および回転式圧縮機の概略的な図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、密閉型の回転式圧縮機2(以下、単に「圧縮機2」と言う。)と、放熱器3と、膨張装置5と、吸熱器6と、アキュームレーター7と、冷媒配管8と、を備えている。冷媒配管8は、圧縮機2と放熱器3と膨張装置5と吸熱器6とアキュームレーター7とを順次に接続して冷媒を流通させる。
【0013】
圧縮機2は、冷媒配管8を通じて吸熱器6を通過した冷媒を吸い込み、圧縮し、冷媒配管8を通じて高温高圧の冷媒を放熱器3へ吐き出す。
【0014】
圧縮機2は、縦置きされる円筒状の密閉容器11と、密閉容器11内の上半部に配置される電動機12と、密閉容器11内の下半部に配置される圧縮機構部13と、電動機12の回転駆動力を圧縮機構部13へ伝達する回転軸15と、回転軸15を回転自在に支持する主軸受16と、主軸受16と協働して回転軸15を回転自在に支持する副軸受17と、を備えている。
【0015】
密閉容器11は、上下方向に延びる円筒形状の胴部11aと、胴部の上端部を塞ぐ鏡板11bと、胴部の下端部を塞ぐ鏡板11cと、を備えている。
【0016】
密閉容器11の上側の鏡板11bには、冷媒の吐出用の吐出管8aが接続されている。吐出管8aは冷媒配管8に繋がれている。また、密閉容器11の上側の鏡板11bには、電力供給用の密封端子部18が設けられている。
【0017】
電動機12は、圧縮機構部13を回転させる駆動力を発生させる。電動機12は、例えばDCブラシレスモーターである。電動機12は、密閉容器11の内壁に固定される筒状の第一固定子21(電動機固定子)と、第一固定子21の内側に配置され、かつ回転軸15に回転一体に固定される第一回転子22(電動機回転子)と、第一固定子21から引き出されて密封端子部18に接続される複数の口出線23と、を備えている。
【0018】
第一回転子22は、磁石収容孔(図示省略)を有する回転子鉄心25と、磁石収容孔に収容される永久磁石と、を備えている。第一回転子22は、第一固定子21に対して回転可能であり、かつ回転軸15に支持されている。第一回転子22および回転軸15の回転中心線Cは、実質的に第一固定子21の中心線Pに一致している。
【0019】
複数の口出線23は、密封端子部18を通じて第一固定子21に電力を供給する配線であり、いわゆるリード線である。口出線23は、電動機12の種類に応じて複数配線される。
【0020】
回転軸15は、電動機12と圧縮機構部13とを連結している。回転軸15は、電動機12が発生させる回転駆動力を圧縮機構部13に伝達する。
【0021】
回転軸15の中間部分15aは、電動機12と圧縮機構部13とを繋ぎ、主軸受16によって回転可能に支持されている。回転軸15の下端部分15bは、副軸受17によって回転可能に支持されている。主軸受16および副軸受17は、圧縮機構部13の一部でもある。換言すると、回転軸15は、圧縮機構部13を貫通している。
【0022】
また、回転軸15は、主軸受16に支持される中間部分15aと副軸受17に支持される下端部分15bとの間に、偏心部26を備えている。偏心部26は、回転軸15の回転中心線に不一致な中心を有する円盤、あるいは円柱である。
【0023】
圧縮機構部13は、冷媒、つまり単一冷媒または混合冷媒を圧縮することができる。電動機12が回転軸15を回転駆動することによって、圧縮機構部13は、冷媒配管8からガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、かつ密閉容器11内に吐出する。
【0024】
圧縮機構部13は、円形のシリンダー室31を有するシリンダー32と、シリンダー室31内に配置される環状のローラー33と、ローラー33の外周面に接して往復動し、シリンダー室31内を吸込室と圧縮室とに仕切るブレード37と、を備えている。
【0025】
シリンダー32は、密閉容器11に複数箇所で溶接、例えばスポット溶接によって固定されている。
【0026】
シリンダー室31は、シリンダー32の内側の空間であって、主軸受16および副軸受17によって閉鎖されている。シリンダー室31は、回転軸15の偏心部26を収容している。
【0027】
主軸受16は、ボルトなどの締結部材34によってシリンダー32に固定されている。主軸受16には、シリンダー室31内で圧縮された冷媒を吐出する吐出弁機構(図示省略)と、吐出弁機構に覆い被さる吐出マフラー35と、が設けられている。吐出弁機構は、圧縮機構部13の圧縮作用にともないシリンダー室31内の圧力と吐出マフラー35内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポートを開放して、圧縮された冷媒を吐出マフラー35内に吐出する。吐出マフラー35は、吐出マフラー35の内外を繋ぐ吐出孔(図示省略)を有している。吐出マフラー35内に吐出された圧縮冷媒は、吐出孔を通じて密閉容器11内へ吐出される。
【0028】
副軸受17は、ボルトなどの締結部材36によってシリンダー32に固定されている。
【0029】
ローラー33は、偏心部26の周面に嵌合されている。ローラー33は、シリンダー室31内に収容されている。ローラー33の外周面は、シリンダー室31の内周面に線接触している。ローラー33は、回転軸15の回転にともなって、その外周面をシリンダー室31の内周面に線接触させながら偏心運動する。
【0030】
なお、ローラー33とシリンダー32との接触は直接的な接触ではなく、潤滑油39の油膜(図示省略)を介在させた間接的なものであるが、説明の便宜のために、これら油膜を介した接触を単に「接触」と表現する。ローラー33と偏心部26との間、ローラー33と主軸受16との間、およびローラー33と副軸受17との間も同じである。
【0031】
吸込管7aは、密閉容器11を貫いて、シリンダー32のシリンダー室31に接続されている。シリンダー32には、吸込管7aに繋がってシリンダー室31に到達する吸込孔(図示省略)が設けられている。
【0032】
圧縮機構部13は、密閉容器11に収容され、密閉容器11の下部に配置されている。密閉容器11の下部は潤滑油39で満たされている。そして、圧縮機構部13の大部分は、密閉容器11内の潤滑油39中に浸されている。
【0033】
また、圧縮機2は、回転軸15の回転角を検出する回転角検知器41と、回転角検知器41を密閉容器11内に支持するホルダー42と、を備えている。
【0034】
回転角検知器41は、回転軸15の上端部分15cに設けられている。電動機12の第一固定子21と回転角検知器41との間の第一距離L1は、密閉容器11の一対の鏡板11b、11cのうち回転角検知器41に近い方の鏡板11b、つまり上側の鏡板11bの頂部と回転角検知器41との間の第二距離L2よりも短い。
【0035】
回転角検知器41は、回転軸15の回転角、ひいては電動機12の第一回転子22の回転角、圧縮機構部13の偏心部26の回転角、ローラー33の回転角を検出する。回転角検知器41は、いわゆるインナーローター型レゾルバー(Resolver)である。回転角検知器41は、回転軸15の回転角を連続的に検出するものであっても良いし、回転軸15の回転角を部分的に検出し、この結果から回転角を推定するものであっても良い。
【0036】
回転角検知器41は、ホルダー42を介して密閉容器11の内壁に固定される環状の第二固定子45(検知器固定子)と、第二固定子45の内側に配置され、かつ回転軸15に回転一体に固定される第二回転子46(検知器回転子)と、を備えている。
【0037】
第二回転子46は、回転軸15の上端部分15cに固定されている。したがって、第二回転子46、電動機12の第一回転子22、および回転軸15の偏心部26は、回転軸15を介して一体化されている。
【0038】
第二固定子45はコイル(図示省略)を備えている。
【0039】
電動機12が作動して第一回転子22が回転すると、第二回転子46も回転する。この第二回転子46の回転により、第二固定子45に位相差を有する電圧が誘起される。
【0040】
圧縮機2の駆動回路(図示省略)は、第二固定子45から出力される誘起電圧波形を取得し、第二回転子46の回転角を演算する。圧縮機の駆動回路は、第二回転子46の回転角、すなわち電動機12の第一回転子22の回転角に基づいて、電動機12を制御し、電動機12により駆動される圧縮機2の回転を制御する。
【0041】
次いで、電動機12について説明する。
【0042】
図2は、図1のII-II線における、本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の断面図である。
【0043】
図1に加えて図2に示すように、本実施形態に係る圧縮機2は、密閉容器11と電動機12との隙間51および電動機12の内部の隙間52を含んで、電動機12の圧縮機構部13に近い側の端部(つまり下端部)から圧縮機構部13から遠い側の端部(つまり上端部)へ冷媒ガスを通過させる第一冷媒通路53を有している。
【0044】
第一冷媒通路53は、密閉容器11と第一固定子21との隙間51、第一固定子21と第一回転子22との隙間52、第一固定子21のスロット内の巻線間の隙間54、および第一回転子22に設けられる貫通孔55を含んでいる。これら隙間51、隙間52、隙間54、および第一回転子22の貫通孔55は、実質的に一様な形状(通路断面積)で電動機12の下端部から電動機12の上端部へ貫通している。
【0045】
次いで、回転角検知器41について説明する。
【0046】
図3は、図1のIII-III線における、本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の断面図である。
【0047】
図3に示すように、本実施形態に係る圧縮機2の回転角検知器41は、第二固定子45と第二回転子46との間に隙間61を有している。
【0048】
第二固定子45は、周方向に等間隔に配置されるとともに、径方向の内側、すなわち第二回転子46に向かって突出する複数のティース62を備えている。それぞれのティース62には巻線63が巻き付けられている。
【0049】
第二回転子46は、回転軸15の回転にともなって第二固定子45との間にギャップパーミアンスの変化を生じさせる形状、つまり、径方向外側へ突出する極65と、径方向内側へ窪む窪み部位66と、を有している。本実施形態の第二回転子46は、径方向外側へ向かって突出する複数の、例えば3つの突出部、つまり3つの極65を有している。複数の極65は、周方向へ実質的に等間隔に離れ、放射状に配置されている。
【0050】
電動機12の第一回転子22の極数は、回転角検知器41の第二回転子46の極65の数量、つまり第二回転子46の径方向外側へ向かって突出する突出部の数と同数であること、または極65の整数倍であることが好ましい。
【0051】
そして、第一回転子22の磁極中心位置と回転角検知器41の第二回転子46の極65の周方向位置とは、実質的に一致していることが好ましい。
【0052】
なお、第一回転子22の磁極中心位置は、一般的には第一回転子22の回転中心線Cに対する極の中心角の二等分線に一致する。6極の第一回転子22では、中心角60度毎に配置される極の、周方向における中央を通る。4極の第一回転子22では、中心角90度毎に配置される極の、周方向における中央を通る。第一回転子22の極は、複数の永久磁石で構成されていても良い。
【0053】
第二回転子46の極65の周方向位置とは、第二回転子46の回転中心線(第一回転子22の回転中心線Cに相当する)から最も遠い箇所、つまり最突出位置である。
【0054】
換言すると、回転軸15の軸方向に見ると、第一回転子22の回転中心線Cに対する極の中心角の二等分線は、第二回転子46の最突出位置を通る。
【0055】
また、第二回転子46の極65の数量は、圧縮機構部13のシリンダー室31の数量と同数である、またはシリンダー室31の数量の整数倍であることが好ましい。
【0056】
そして、偏心部26の偏心方向と回転角検知器41の第二回転子46の極65の周方向位置とは、実質的に一致していることが好ましい。
【0057】
ホルダー42は、内周面71aに回転角検知器41の第二固定子45を保持する環状の保持部71と、保持部71の外周から放射状に突出して密閉容器11の内面11dに固定される複数の脚部72と、を備えている。
【0058】
脚部72は、例えば3つ設けられている。脚部72は、保持部71の周囲に等間隔に設けられて、径方向外側へ向かって延びている。
【0059】
したがって、密閉容器11とホルダー42との間には、隙間75が設けられている。
【0060】
つまり、圧縮機2は、密閉容器11とホルダー42との隙間75および回転角検知器41の内部の隙間61を含んで、回転角検知器41の電動機12に近い側の端部(つまり下端部)から電動機12から遠い側の端部(つまり上端部)へ冷媒ガスを通過させる第二冷媒通路77を有している。
【0061】
隙間75は、実質的に一様な形状(通路断面積)でホルダー42の下端部からホルダー42の上端部へ貫通している。隙間61は、実質的に一様な形状(通路断面積)で回転角検知器41の下端部から回転角検知器41の上端部へ貫通している。
【0062】
そして、第二冷媒通路77の通路断面積は、第一冷媒通路53の通路断面積以上である。換言すると、圧縮機構部13から遠く、密閉容器11の吐出管8aに近い第二冷媒通路77の通路断面積は、圧縮機構部13に近く、密閉容器11の吐出管8aから遠い第一冷媒通路53の通路断面積以上である。
【0063】
また、第二固定子45と第二回転子46との間の最小隙間量GminR(図1)は、第一固定子21と第一回転子22との間の最小隙間量GminM(図2)以上である。
【0064】
なお、図2における第一固定子21と第一回転子22との間の最小隙間量GminMの図示位置、および図3における第二固定子45と第二回転子46との間の最小隙間量GminRの図示位置は、一例であって、それぞれの最小隙間量を定める箇所は、他の位置であっても良い。
【0065】
さらに、電動機12の第一回転子22の最大外径DR1は、回転角検知器41の第二回転子46の最大外径DR2と実質的に同じ、または回転角検知器41の第二固定子45の最大外径DS2以上に設定される。なお、電動機12の第一回転子22の最大外径DR1は、回転角検知器41の第二固定子45の最大外径DS2以上に設定される場合には、ホルダー42の保持部71の最大外径よりも大きいことが好ましい。
【0066】
図4は、図3の実施形態に、さらに押え板82を設けたものである。
【0067】
なお、図4では、回転角検知器41の第二固定子45を簡略化して示し、第二回転子46が省略されている。
【0068】
図4に示すように、本実施形態に係る圧縮機2のホルダー42は、回転角検知器41の第二固定子45を収容する凹部81(ザグリ部)を有している。凹部81は、環状の保持部71に同心の円形の窪みであって、保持部71に設けられている。凹部81は、密閉容器11の上方へ向かって解放されている。換言すると、凹部81は、密閉容器11の上側の鏡板11bへ向かって解放されている。
【0069】
保持部71には、環状の押え板82がネジ83により取り付けられている。押え板82は、ホルダー42の凹部81に配置された回転角検知器41の第二固定子45が凹部81から抜け出ることを防ぐ。押え板82は、第二固定子45と第二回転子46との間の隙間61に覆い被さらないことが好ましい。第二固定子45と第二回転子46との間の隙間61は、押え板82に邪魔されることなく、密閉容器11の上下方向へ抜けている。
【0070】
図5は、本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との断面図である。
【0071】
図6は、本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との平面図である。
【0072】
図5および図6に示すように、本実施形態に係る圧縮機2の第二回転子46は、回転軸15の上端部分15cに固定されている。回転軸15は、その軸方向における第二回転子46の挿入位置を定める位置決め段部85と、その周方向(つまり第二回転子46の回転方向)における位置決め凸部86と、を有している。第二回転子46は、回転軸15の上端部分15cを挿入可能であって、位置決め段部85で挿入深さを定められる孔87と、孔87の内周面に設けられて回転軸15の位置決凸部86が嵌め込まれる位置決め凹部88と、を備えている。
【0073】
第二回転子46は、焼嵌めによって回転軸15の上端部分15cに結合されている。
【0074】
図7は、本発明の実施形態に係る回転式圧縮機の回転軸と第二回転子との他の例の断面図である。
【0075】
図7に示すように、本実施形態に係る圧縮機2は、回転軸15の上端部分15cに挿入された第二回転子46を回転軸15の位置決段部85に押さえ付ける押え板91と、押え板91を回転軸15の頂部に固定する締結部材92、例えばネジと、を備えていても良い。
【0076】
第二回転子46は、回転軸15の頂部に締め込まれた締結部材92から押え板91を介して作用する力によって回転軸15の上端部分15cに結合されている。
【0077】
図5および図7のいずれであっても、第二回転子46は、回転軸15への第二回転子46の挿入深さを位置決段部85によって定められ、かつ凹凸(位置決凸部86、位置決凹部88、図5)や、第二回転子46を位置決段部85に押さえ付ける部材(押え板91、締結部材92、図7)によって回転軸15の回転方向(周方向)の位置を定められている。
【0078】
そして、第二回転子46は、圧縮機構部13によって圧縮され密閉容器11内に吐出されるガス冷媒に混じっている潤滑油を分離する油分離ディスクとしても機能する。つまり、圧縮機2は、油分離ディスクとしても機能する第二回転子46を有する回転角検知器41を備えている。そのため、圧縮機2は、独立の機能を有する油分離ディスクを必要としない。単独の機能を有する油分離ディスクを廃することが可能であれば、回転軸15の全長(軸長)が短縮化される。そのため、回転軸15の軸振動が抑制されたり、部品点数の削減によって圧縮機2の信頼性が向上したり、圧縮機2の費用が低減されたりする。
【0079】
このように本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、電動機12の上下方向(回転軸15に沿う方向、軸方向)へ冷媒ガスを通過させる第一冷媒通路53の通路断面積以上の通路断面積を有して、回転角検知器41の上下方向(回転軸15に沿う方向、軸方向)へ冷媒ガスを通過させる第二冷媒通路77を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、回転角検知器41から得られる回転角情報を電動機12の運転制御にフィードバックし、電動機12への電流量と、給電のタイミングを最適化して、電動機12を高効率に運転できる。また、電動機12の運転制御の最適化は、電動機12が誘起する振動を低減する。換言すると、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、高性能化、低振動化、低騒音化を図ることができる。
【0080】
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、圧縮機構部13から吐出されたガス冷媒が圧縮機2の吐出管8aへ達するまでの経路の圧力損失を低減できる。このような密閉容器11内の圧力損失の低減は、圧縮機2の高性能化に寄与する。
【0081】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2では、回転角検知器41の第二固定子45と第二回転子46との間の最小隙間量は、電動機12の第一固定子21と第一回転子22との間の最小隙間量以上である。換言すると、主軸受16および副軸受17によって支持されている回転軸15の自由端に近い、第二固定子45と第二回転子46との間の最小隙間量は、回転軸15の自由端からより遠い、第一固定子21と第一回転子22との間の最小隙間量以上である。そのため、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、圧縮機2の運転時の回転軸15の撓みに起因する、第二固定子45と第二回転子46との接触を防ぐことができる。つまり、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、回転角検知器41の搭載によって信頼性を低下させることがない。
【0082】
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2では、電動機12の第一回転子22の外径DR1は、回転角検知器41の第二回転子46の外径DR2と実質的に同じ、または回転角検知器41の第二固定子45の外径DS2以上である。ところで、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2では、製造工程において第一固定子21と第一回転子22との隙間にゲージを差し込んで隙間量を確認(検査)し、かつ第二固定子45と第二回転子46との隙間にゲージを差し込んで隙間量を確認(検査)する。その際に、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2では、回転角検知器41の第二回転子46と第二固定子45との隙間を通じて第一固定子21と第一回転子22との隙間にゲージを差し込んだり、回転角検知器41の第二固定子45と密閉容器11との隙間を通じて第一固定子21と第一回転子22との隙間にゲージを差し込んだりすることができる。そのため、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、単一のゲージで第一固定子21と第一回転子22との隙間、および第二固定子45と第二回転子46との隙間を一括して確認し、隙間管理を行うことができる。
【0083】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、内周面71aに回転角検知器41の第二固定子45を保持する環状の保持部71と、保持部71の外周から放射状に突出して密閉容器11の内面11dに固定される複数の脚部72と、を有するホルダー42を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1、および圧縮機2は、密閉容器11内に回転角検知器41を確実に保持して、圧縮機2の運転時の回転軸15の撓みに起因する、第二固定子45と第二回転子46との接触をより確実に防ぐことができる。
【0084】
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2によれば、密閉容器11に回転角検知器41を収容して圧縮機2の駆動を安定的に制御でき、かつ回転角検知器41による圧力損失への影響を抑制できる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…冷凍サイクル装置、2…回転式圧縮機、3…放熱器、5…膨張装置、6…吸熱器、7…アキュームレーター、7a…吸込管、8…冷媒配管、8a…吐出管、11…密閉容器、11a…胴部、11b…鏡板、11c…鏡板、11d…内面、12…電動機、13…圧縮機構部、15…回転軸、15a…中間部分、15b…下端部分、15c…上端部分、16…主軸受、17…副軸受、18…密封端子部、21…第一固定子、22…第一回転子、23…口出線、25…回転子鉄心、26…偏心部、31…シリンダー室、32…シリンダー、33…ローラー、34…締結部材、35…吐出マフラー、36…締結部材、39…潤滑油、41…回転角検知器、42…ホルダー、45…第二固定子、46…第二回転子、51…密閉容器と電動機との隙間、52…電動機の内部の隙間、53…第一冷媒通路、55…貫通孔、61…第二固定子と第二回転子との隙間、62…ティース、63…巻線、65…極、66…窪み部位、71…保持部、71a…内周面、72…脚部、75…密閉容器とホルダーとの隙間、77…第二冷媒通路、81…凹部、82…第二固定子の押え板、85…位置決段部、86…位置決凸部、87…第二回転子の孔、88…位置決凹部、91…第二回転子の押え板、92…締結部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7