(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ハイドロリックユニットの支持構造
(51)【国際特許分類】
B60T 8/34 20060101AFI20230407BHJP
B60T 17/02 20060101ALI20230407BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20230407BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20230407BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20230407BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B60T8/34
B60T17/02
B60T17/00 C
B60T15/36 Z
F16F1/36 Y
F02M35/10 301M
(21)【出願番号】P 2019054786
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】小島 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 徳泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広志
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 博征
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131505(JP,A)
【文献】特開平10-148234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
B60T 15/00 - 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御する制御装置及び車体挙動を検出するセンサが設けられるハイドロリックユニットの支持構造であって、
前記ハイドロリックユニットと車体との間に設けられるとともに内部に形成された空間部を負圧で吸引することにより前記ハイドロリックユニットを前記車体側へ牽引する牽引部材と、
エンジンにより駆動され前記牽引部材の前記空間部を負圧で吸引するとともに前記エンジンの出力軸回転速度の増加に応じて前記負圧が大きくなる負圧ポンプと
を備え
、
前記負圧ポンプの負圧が所定値よりも小さい領域では前記空間部を大気と連通させるとともに、前記負圧ポンプの負圧が前記所定値よりも大きい領域では前記空間部を前記負圧ポンプと連通させる切替バルブを有すること
を特徴とするハイドロリックユニットの支持構造。
【請求項2】
前記ハイドロリックユニットと前記車体との間に前記牽引部材と並列に設けられた弾性体を有すること
を特徴とする請求項
1に記載のハイドロリックユニットの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のブレーキ液圧制御に用いられるハイドロリックユニットを車体に取り付ける支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の自動車においては、例えばオーバーステア挙動、アンダーステア挙動の発生時に、旋回内外輪の制動力差を発生させて挙動を抑制する方向のヨーモーメントを発生させる挙動安定化制御や、制動時のブレーキロックを防止するアンチロックブレーキ制御のため、ブレーキ液圧を制御するハイドロリックユニットが設けられる。
ハイドロリックユニットは、電動モータで駆動されブレーキフルードを加圧するポンプや、各車輪のホイルシリンダ液圧を個別に制御する加圧弁、保持弁、減圧弁等の電磁弁などを有する。
また、このようなハイドロリックユニットには、各種制御に用いるため、加速度センサやヨーレートセンサ等の車体挙動を検出するセンサが設けられる場合がある。
【0003】
上述したハイドロリックユニットは、ブレーキ液圧を上昇、下降させる際に、ポンプや電磁弁から振動や騒音が発生する場合がある。
通常、ハイドロリックユニットは、作動時の振動の車体への伝達を抑制するため、例えばゴム等の弾性体を介して車体に取り付けられている。
弾性体を用いたハイドロリックユニットの支持構造に関する従来技術として、例えば特許文献1には、ハイドロリックユニットを、弾性構造体を介して車体に取り付けるとともに、モータや電磁弁を所定のパターンで作動させた場合に検出される振動パターンに基づいて、弾性構造体の状態を診断することが記載されている。
また、弾性部材を用いた車両用マウント構造に関する従来技術として、例えば特許文献2には、エンジンの吸気管負圧に応じてエンジンマウントの振動伝達特性を変化させることが記載されている。
また、特許文献3には、磁場の強弱に応じて弾性率が変化する磁気粘弾性エラストマを有するマウント構造を用いて車両のサブフレームの支持剛性を可変とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-152996号公報
【文献】特開2003-343637号公報
【文献】特開2015-120399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ハイドロリックユニットは、作動時に振動、騒音を発生するが、近年車両の防振性、静粛性が向上し、パワートレーンや、タイヤ、サスペンション等から車室に伝達する振動、騒音が低下したことにより、ハイドロリックユニットに起因する振動、騒音が問題となりやすい傾向にある。
特に、先行車追従車速制御(アダプティブクルーズコントロール)や、各種運転支援、自動運転機能の普及により、エンジン、足回り等からの振動、騒音が低くなる低速状態や停車状態でハイドロリックユニットを作動させる機会が増加しており、ハイドロリックユニット起因の車体振動をさらに抑制することが求められている。
【0006】
ハイドロリックユニットから車体への振動伝達を抑制するためには、ハイドロリックユニットの車体に対する支持剛性を低くして振動絶縁を図ることが好ましい。
しかし、単純に支持剛性を低下させた場合、走行時に車体に対するハイドロリックユニットの動揺が発生し、ハイドロリックユニットに設けられたセンサ類の検出精度が悪化することが懸念される。
これに対し、引用文献2に記載されたエンジンマウントのように、ハイドロリックユニットを支持する弾性体の圧力を可変とすることも考えられるが、引用文献2のようにエンジンの吸気管負圧を駆動源とした場合、負圧が小さくなる高速、高負荷時に支持剛性を向上することはできない。
また、引用文献3のような磁気粘弾性体を利用した可変剛性マウントも公知であるが、この場合磁気粘弾性体に電磁力を与えるための駆動回路や制御装置が必要となって装置構成が複雑化してしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、簡単な構成により車体挙動の検出精度を確保するとともに低速時の車体振動を抑制したハイドロリックユニットの支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御する制御装置及び車体挙動を検出するセンサが設けられるハイドロリックユニットの支持構造であって、前記ハイドロリックユニットと車体との間に設けられるとともに内部に形成された空間部を負圧で吸引することにより前記ハイドロリックユニットを前記車体側へ牽引する牽引部材と、エンジンにより駆動され前記牽引部材の前記空間部を負圧で吸引するとともに前記エンジンの出力軸回転速度の増加に応じて前記負圧が大きくなる負圧ポンプとを備え、前記負圧ポンプの負圧が所定値よりも小さい領域では前記空間部を大気と連通させるとともに、前記負圧ポンプの負圧が前記所定値よりも大きい領域では前記空間部を前記負圧ポンプと連通させる切替バルブを有することを特徴とするハイドロリックユニットの支持構造である。
これによれば、車両が比較的高速で走行する場合には、エンジンの出力軸回転速度(エンジン回転数)が高くなるため、負圧ポンプが生成する負圧が大きく(絶対圧が低く)なる。
この状態で負圧ポンプが牽引部材の空間部を負圧で吸引することにより、ハイドロリックユニットが車体側に牽引されて拘束力が高まり、ハイドロリックユニットの車体に対する支持剛性が向上する。このため、ハイドロリックユニットの動揺に起因するセンサの検
出精度悪化を防止することができる。
一方、車両が比較的低速で走行する場合や、停車中においては、負圧ポンプが生成する負圧が小さくなるため、牽引部材の牽引力が小さくなってハイドロリックユニットの支持剛性が低下する。このため、ハイドロリックユニットの作動により発生する振動の車体への伝達を抑制し、車室内の乗員が感じる振動や騒音を低減することができる。
さらに、このようなハイドロリックユニットの支持剛性の可変動作を、ブレーキブースタで利用される負圧を生成するため一般的な車両に設けられているエンジン駆動の負圧ポンプを用いて、例えば電子制御などを用いない機械的な構成により簡単に実現することができる。
【0008】
また、負圧ポンプが生成する負圧をパイロット圧として切替動作を行う切替バルブの設定により、ハイドロリックユニットの支持剛性を所定の運転条件において適切に切替えることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記ハイドロリックユニットと前記車体との間に前記牽引部材と並列に設けられた弾性体を有することを特徴とする請求項1に記載のハイドロリックユニットの支持構造である。
これによれば、牽引部材の空間部を負圧で吸引する際に、弾性体が圧縮荷重を受けることにより、ある程度の振動絶縁効果を確保しつつハイドロリックユニットの支持剛性を適度に高くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な構成により車体挙動の検出精度を確保するとともに低速時の車体振動を抑制したハイドロリックユニットの支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用したハイドロリックユニットの支持構造の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態のハイドロリックユニットの支持構造におけるエンジン回転数と三方切替弁のパイロット圧との相関を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用したハイドロリックユニットの支持構造の実施形態について説明する。
実施形態のハイドロリックユニットの支持構造は、例えば、エンジンを走行用動力源とする乗用車等の自動車に設けられる。
【0013】
図1は、実施形態のハイドロリックユニットの支持構造の構成を模式的に示す図である。
実施形態において、車両には、エンジン10、ブレーキブースタ20、バキュームポンプ30が設けられる。
また、ハイドロリックユニット40は、弾性体50、空気室60を介して車体Bに取り付けられている。
さらに、バキュームポンプ30と空気室60との間には、三方切替弁70が設けられている。
【0014】
エンジン10は、スロットルバルブを用いて吸気管圧力を変化させることにより出力調整を行うガソリンエンジンである。
エンジン10の吸気管であるインテークマニホールド内の圧力は、負荷(出力トルク)の低下に応じてスロットルバルブが絞られることにより、低下する(負圧が深くなる)傾向を有する。
【0015】
ブレーキブースタ20は、ドライバがブレーキ操作を行うブレーキペダル21と連動し、ブレーキ液圧を加圧する図示しないブレーキマスタシリンダに設けられている。
ブレーキブースタ20は、エンジン10の吸気管圧力(負圧)を利用して、ブレーキペダル21の操作力を倍力するマスタバッグを有する真空倍力装置である。
ブレーキブースタ20は、ブレーキブースタ20側から順次設けられる負圧ラインL1、L2を介して、エンジン10の図示しないインテークマニホールドと接続されている。
負圧ラインL1、L2の中間部には、エンジン10側からブレーキブースタ20側への逆流を防止する逆止弁(チェックバルブ)V1、V2がそれぞれ設けられている。
【0016】
バキュームポンプ30は、エンジン10の吸気管圧力が比較的高い(負圧が小さい)場合であっても、ブレーキブースタ20を正常に作動させるだけの負圧を確保するために設けられる負圧ポンプである。
バキュームポンプ30は、エンジン10の出力軸回転と連動して駆動され、エンジン10の出力軸回転速度向上に応じて、吸入ポートにおける負圧が大きくなる(絶対圧が低下する)特性を有する。
バキュームポンプ30の吸入ポートは、負圧ラインL3を介して、負圧ラインL1と負圧ラインL2との接続部にこれらと連通した状態で接続されている。
負圧ラインL3の中間部には、バキュームポンプ30側からブレーキブースタ20側への逆流を防止する逆止弁V3が設けられている。
【0017】
また、負圧ラインL3の中間部であって、逆止弁V3よりもブレーキブースタ20側の領域から分岐する負圧ラインL4は、後述する三方切替弁70にパイロット圧を伝達するため接続されている。
負圧ラインL4の中間部には、バキュームポンプ30側から三方切替弁70側への逆流を防止する逆止弁V4が設けられている。
【0018】
ハイドロリックユニット40は、上述したマスタシリンダによるドライバ操作に基づくブレーキフルード液圧の調節にオーバーライドして、液圧式サービスブレーキにおける各車輪のホイルシリンダ液圧を個別かつ自動的に制御する装置である。
ハイドロリックユニット40は、例えば、挙動安定化制御や、アンチロックブレーキ制御を行う。
挙動安定化制御は、車両にオーバーステア挙動、アンダーステア挙動が発生した際に、旋回内外輪の制動力差を発生させ、挙動を抑制する方向のヨーモーメントを発生させて挙動の安定化(収束)を図るものである。
アンチロックブレーキ制御は、急制動によりホイールロックが生じた場合に、当該車輪のブレーキフルード液圧を周期的に変動させて回転の回復を図るものである。
さらに、ハイドロリックユニット40は、例えば先行車追従車速制御(アダプティブクルーズコントロール)や、自動運転による車両の走行を行う際に、ドライバのブレーキペダル操作がない状態であっても制動力を発生させ、車両を減速、停止させる機能を有する。
ハイドロリックユニット40は、ブレーキフルードを加圧するモータポンプ、加圧弁、保持弁、減圧弁などの電磁弁などの液圧を制御する制御装置を備えている。
また、ハイドロリックユニット40には、車体に作用する前後方向、車幅方向の加速度をそれぞれ検出する加速度センサ、及び、車体のヨーレート(鉛直軸回りの回転速度)を検出するヨーレートセンサが設けられている。
【0019】
弾性体50は、ハイドロリックユニット40と車体B(例えば、フロントサイドフレーム等の比較的強固な構造部材)との間に介在する部材であって、例えばゴム等の防振効果を有する弾性材料によって形成されたマウント部材である。
弾性体50は、ハイドロリックユニット40をフローティング状態で支持しつつ、ハイドロリックユニット40と車体Bとの間の振動伝達を抑制するものである。
弾性体50は、空気室60が負圧により吸引されていない状態(牽引力を発生しない状態)においては、比較的低い支持剛性でハイドロリックユニット40を車体Bに対して支持している。
一方、空気室60が負圧で吸引された状態(牽引力を発生した状態)においては、牽引力に沿った方向の圧縮荷重を受け、予圧された状態となるため、ばね定数が増大し、ハイドロリックユニット40の支持剛性が向上する。
【0020】
空気室60は、例えばゴム等の弾性及び可撓性を有する材料によって、ベローズ筒状に形成された中空の部材である。
空気室60は、ハイドロリックユニット40と車体Bとの間に、弾性体50と並列に設けられている。
空気室60の内部には、無負荷状態(負圧吸引しない状態)での剛性を調整するため、図示しないスプリングが設けられている。
スプリングとして、例えば、ハイドロリックユニット40と車体Bとの間にわたして設けられた圧縮コイルばねを用いることができる。
【0021】
空気室60は、負圧ラインL5、L6を介して、バキュームポンプ30の吸入ポートに接続され、内部の空間部が負圧吸引可能なよう構成されている。
負圧ラインL5は、負圧ラインL3における逆止弁V3よりもバキュームポンプ30側の領域と、三方切替弁70とを接続している。
負圧ラインL6は、三方切替弁70と空気室60とを接続している。
空気室60は、後述する三方切替弁70を介してバキュームポンプ30が形成する負圧で吸引されることにより、ハイドロリックユニット40を車体Bに対して牽引し、弾性体50に圧縮力を与える機能を有する牽引部材である。
【0022】
三方切替弁70は、負圧ラインL3、L4を介して伝達されるバキュームポンプ30の吸入ポートの負圧をパイロット圧として、空気室60の内部の空間部がバキュームポンプ30によって負圧で吸引される吸引状態と、空気室60の空間部が大気と連通される大気開放状態とを切替えるものである。
三方切替弁70は、パイロット圧となる負圧が所定値よりも大きい(絶対圧が低い)状態では吸引状態となり、パイロット圧となる負圧が所定値よりも小さい(絶対圧が高い)状態では大気開放状態となる。
このような所定値(切替閾値)は、例えば、三方切替弁のスプリングのばね定数を変化させることにより、適宜変更することが可能である。
【0023】
図2は、実施形態のハイドロリックユニットの支持構造におけるエンジン回転数と三方切替弁のパイロット圧との相関を模式的に示す図である。
図2において、横軸はエンジン回転数(出力軸回転速度)を示し、右側が高回転側を示す。
縦軸は、三方切替弁のパイロット圧となる負圧の大きさ(深さ)を示し、上方側は負圧が大きい(絶対圧が低い)ことを示している。
図2に示すように、負圧は、エンジン回転数が比較的低い領域では、その増加に応じて大きくなり、それよりもエンジン回転数が高い領域では、ほぼ一定値に収束する。
【0024】
パイロット圧となる負圧がエンジン回転数に応じて変化する領域において、所定の圧力を三方切替弁70の切替圧力として設定すると、このときのエンジン回転数よりも低速側の領域では、大気開放状態となって空気室60がハイドロリックユニット40を牽引しない状態となり、ハイドロリックユニット40の支持剛性は低下する。
一方、パイロット圧が切替圧力となるときのエンジン回転数よりも高速側の領域では、吸引状態となって空気室60がハイドロリックユニット40を牽引した状態となり、ハイドロリックユニット40の支持剛性は向上する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)エンジン10の回転数が比較的高く、バキュームポンプ30が生成する負圧が大きい状態では、バキュームポンプ30が空気室60の空間部を負圧で吸引することにより、ハイドロリックユニット40が車体B側に牽引されて拘束力が高まり、ハイドロリックユニット40の車体Bに対する支持剛性が向上する。このため、ハイドロリックユニット40の動揺に起因するセンサの検出精度悪化を防止することができる。
一方、エンジン10の回転数が比較的低く、バキュームポンプ30が生成する負圧が小さくなる低速走行時や停車時には、空気室60の牽引力が小さくなってハイドロリックユニット40の支持剛性が低下する。このため、ハイドロリックユニット40の作動により発生する振動の車体Bへの伝達を抑制し、車室内の乗員が感じる振動や騒音を低減することができる。
さらに、このようなハイドロリックユニット40の支持剛性の切替を、ブレーキブースタ20で利用される負圧を生成するため一般的な車両に設けられているエンジン駆動のバキュームポンプ30を用いて、例えば電子制御などを用いない機械的な構成により簡単に実現することができる。
(2)バキュームポンプ30が生成する負圧をパイロット圧として切替動作を行う三方切替弁70を設けることにより、そのばね定数などの設定によってハイドロリックユニット40の支持剛性を所定のエンジン回転数において適切に切替えることができる。
(3)ハイドロリックユニット40を空気室60と並列に設けた弾性部材50を介して車体Bに取り付けることにより、空気室60の空間部を負圧で吸引する際に、弾性体50が圧縮荷重を受けることにより、ある程度の振動絶縁効果を確保しつつハイドロリックユニット40の支持剛性を適度に高くすることができる。
【0026】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)ハイドロリックユニットの支持構造の具体的構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、実施形態においては、牽引部材である空気室を弾性体と別個に設けているが、弾性体の内部に負圧吸引可能な空間部を形成し、弾性体の一部が牽引部材を兼ねる構成としてもよい。
また、牽引部材として、可撓性を有する材料により形成された空気室に代えて、例えば負圧吸引によりハイドロリックユニットを牽引するよう配置されたエアシリンダ等の各種空気圧アクチュエータを用いることも可能である。
(2)実施形態においては、バキュームポンプの負圧をパイロット圧とする三方切替弁を用いて牽引部材である空気室の空間部とバキュームポンプとの連通、非連通を切替える構成としているが、これに限らず、バキュームポンプを空間部と常時連通させ、エンジン出力軸回転速度の向上に伴う負圧の増大に応じてハイドロリックユニットの支持剛性が連続的に向上する構成とすることも可能である。
(3)実施形態において、エンジンは一例としてスロットルバルブにより出力調整を行うガソリンエンジンであるが、エンジンはこれに限定されず、適宜変更することができる。
例えば、エンジンは、ディーゼルエンジンやその他の内燃機関であってもよい。
(4)実施形態においてハイドロリックユニットに設けられるセンサは一例であって、ハイドロリックセンサに加速度センサ、ヨーレートセンサ以外のセンサを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 エンジン 20 ブレーキブースタ
21 ブレーキペダル 30 バキュームポンプ
40 ハイドロリックユニット 50 弾性体
60 空気室 70 三方切替弁
L1~L6 負圧ライン V1~V4 逆止弁