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特許7257892距離判定システム、距離判定装置、距離判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】距離判定システム、距離判定装置、距離判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 11/06 20060101AFI20230407BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20230407BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
G01S11/06
B60R25/24
E05B49/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019116271
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021001835
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136894(JP,A)
【文献】特開2014-125740(JP,A)
【文献】特開2011-257162(JP,A)
【文献】特開2019-184468(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117054(WO,A1)
【文献】特開2018-021385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
G01S 11/00-11/10
E05B 49/00-49/04
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1軸または2軸の送信アンテナと、
1軸または2軸の受信アンテナと、
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方の傾きを検出する傾斜センサと、
前記受信アンテナが受信する受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とを用いて、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定するように構成された制御装置とを備え
前記制御装置は、前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とに加えて、方位検出機能によって導出される、前記送信アンテナから出力される電波に対する前記受信アンテナの角度を用いて、前記アンテナ間距離を判定する、距離判定システム。
【請求項2】
前記傾斜センサは、前記送信アンテナの傾きを検出し、
前記送信アンテナは、前記傾斜センサの検出結果を含む電波を出力し、
前記制御装置は、前記受信アンテナが受信する受信電波の強度と前記受信電波に含まれる前記傾斜センサの検出結果とを用いて、前記アンテナ間距離を判定する、請求項1に記載の距離判定システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記受信電波の強度がしきい強度よりも大きい場合に前記アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定し、
前記制御装置は、前記傾斜センサの検出結果を用いて前記受信電波の強度を補正する処理、または、前記傾斜センサの検出結果を用いて前記しきい強度を設定する処理を行なう、請求項1または2に記載の距離判定システム。
【請求項4】
前記受信アンテナおよび前記制御装置は、車両に搭載され、
前記送信アンテナおよび前記傾斜センサは、前記車両のユーザによって携帯可能な携帯機に搭載され、
前記車両は、乗降用ドアをロックするロック状態と、前記乗降用ドアをロックしないアンロック状態とのいずれかの状態に切替可能なドアロック装置を備え、
前記制御装置は、
前記アンテナ間距離が前記しきい距離よりも小さいと判定された場合に前記ドアロック装置を前記アンロック状態にすることを許容し、
前記アンテナ間距離が前記しきい距離よりも小さいと判定されない場合に前記ドアロック装置を前記アンロック状態にすることを許容しない、請求項3に記載の距離判定システム。
【請求項5】
前記車両は、前記車両の傾きを検出する車両傾斜センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とに加えて、前記車両傾斜センサの検出結果を用いて、前記アンテナ間距離を判定する、請求項4に記載の距離判定システム。
【請求項6】
1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定する距離判定装置であって、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方の傾きは傾斜センサによって検出されるように構成され、
前記距離判定装置は、
前記受信アンテナが受信する受信電波を示す信号と前記傾斜センサの検出結果を示す信号とが入力される入力部と、
前記入力部に接続される演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とを用いて前記アンテナ間距離を判定し、
前記演算装置は、前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とに加えて、方位検出機能によって導出される、前記送信アンテナから出力される電波に対する前記受信アンテナの角度を用いて、前記アンテナ間距離を判定する、距離判定装置。
【請求項7】
1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定する距離判定方法であって、前記送信アンテナおよび前記受信アンテナの少なくとも一方の傾きは傾斜センサによって検出されるように構成され、
前記距離判定方法は、
前記受信アンテナが受信する受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とを特定するステップと、
特定された前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とを用いて前記アンテナ間距離を判定するステップとを含み、
前記アンテナ間距離を判定するステップは、前記受信電波の強度と前記傾斜センサの検出結果とに加えて、方位検出機能によって導出される、前記送信アンテナから出力される電波に対する前記受信アンテナの角度を用いて、前記アンテナ間距離を判定する、距離判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-249759号公報(特許文献1)には、電波を出力する送信アンテナを備える電子キーと、受信アンテナおよび制御装置を備える車両とを含むシステムが開示されている。制御装置は、電子キーを所持するユーザが車両に近づいて、車両側の受信アンテナで受信される受信電力(受信電波の強度)が閾値を超えると、電子キーと車両との間の距離がしきい距離未満になったと判定して、乗降用ドアをアンロック状態(解錠状態)にすることを許容する。また、ユーザが車両から遠ざかり、受信電力が閾値以下になると、電子キーと車両との間の距離がしきい距離以上であると判定して、乗降用ドアをアンロック状態にすることを許容しないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-249759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された制御装置においては、上述のように、電子キーと車両との間の距離がしきい距離未満になったか否かを、受信電力(受信電波の強度)に基づいて判定している。
【0005】
しかしながら、電子キー側の送信アンテナが1軸または2軸のアンテナであり、かつ車両側の受信アンテナが1軸または2軸のアンテナである場合、たとえ電子キーと車両との間の距離が同じであっても、送信アンテナから出力された送信電波の偏波面と受信アンテナの基準面(受信感度が最適となる平面)とのずれによって受信電波の強度が大きく変動し得る。そのため、受信電波の強度のみに基づいて電子キーと車両との間の距離を判定すると、判定精度が低下してしまうことが懸念される。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離を、受信アンテナが受電する受信電波の強度を用いて精度よく判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による距離判定システムは、1軸または2軸の送信アンテナと、1軸または2軸の受信アンテナと、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方の傾きを検出する傾斜センサと、受信アンテナが受信する受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とを用いて、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定するように構成された制御装置とを備える。
【0008】
上記の距離判定システムによれば、受信電波の強度に加えて、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方の傾きを検出する傾斜センサの検出結果を用いて、アンテナ間距離が判定される。そのため、たとえば傾斜センサの検出結果を用いて、受信アンテナの基準面に対する受信電波の偏波面のずれ度合いを特定し、そのずれ度合いに応じて、受信電波の強度に対応する距離を補正することができる。その結果、アンテナ間距離を受信電波の強度を用いて精度よく判定することができる。
【0009】
本開示による距離判定装置は、1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定する距離判定装置である。送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方の傾きは傾斜センサによって検出されるように構成される。距離判定装置は、受信アンテナが受信する受信電波を示す信号と傾斜センサの検出結果を示す信号とが入力される入力部と、入力部に接続される演算装置とを備える。演算装置は、受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とを用いてアンテナ間距離を判定する。
【0010】
本開示による距離判定方法は、1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定する距離判定方法である。送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方の傾きは傾斜センサによって検出されるように構成される。距離判定方法は、受信アンテナが受信する受信電波から受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とを特定するステップと、特定された受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とを用いてアンテナ間距離を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、1軸または2軸の送信アンテナと1軸または2軸の受信アンテナとの間の距離を、受信アンテナが受電する受信電波の強度を用いて精度よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スマートエントリシステムの全体構成の一例を模式的に示す図である。
図2】送信アンテナから出力される送信電波の偏波面と受信アンテナの基準面とが一致する場合の送信アンテナおよび受信アンテナの姿勢を模式的に示す図である。
図3】送信アンテナから出力される送信電波の偏波面と受信アンテナの基準面とが一致しない場合の送信アンテナおよび受信アンテナの姿勢を模式的に示す図である。
図4】演算装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図5】演算装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図6】演算装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0014】
図1は、本実施の形態による距離判定システムを含むスマートエントリシステム1の全体構成の一例を模式的に示す図である。このスマートエントリシステム1は、車両Vと、携帯機(送信機)10とを含む。以下では、鉛直方向を「Z方向」、鉛直方向と垂直であって車両Vの前方から後方に向かう方向を「X方向」、Z方向およびX方向と垂直な方向を「Y方向」と定義する。
【0015】
携帯機10は、車両Vのユーザによって携帯(所持)される端末(電子キー)である。携帯機10は、送信アンテナ12と、送信回路14と、制御装置16と、傾斜センサ18とを備える。
【0016】
送信アンテナ12は、直線偏波の電波を出力する1軸アンテナである。本実施の形態による送信アンテナ12は、回路基板の表面に導線となる金属層をループ状にパターニングすることで形成される、長方形状のパターンアンテナである。送信アンテナ12から出力される電波の電界の振動方向は、送信アンテナ12の長方形状の長手方向Dtとなる。すなわち、送信アンテナ12から出力される送信電波の偏波面は、送信アンテナ12の長手方向Dtが含まれる平面である。
【0017】
なお、送信アンテナ12は、必ずしもパターンアンテナであることに限定されない。たとえば、送信アンテナ12は、2本の導線を直線状に配置することによって形成されるダイポールアンテナであってもよいし、導線を環状に巻き付けることによって形成されるコイルアンテナであってもよい。
【0018】
傾斜センサ18は、携帯機10の傾き(送信アンテナ12の長手方向Dtの鉛直方向に対する傾き)を傾斜角Atとして検出し、検出結果を示す信号を制御装置16に出力する。本実施の形態による傾斜センサ18は、重力加速度を計測することによって傾斜角Atを検出する、いわゆる加速度センサである。なお、傾斜センサ18の種類は、加速度センサに限定されるものではなく、回転角速度を測定することによって傾斜角Atを検出するジャイロセンサであってもよい。
【0019】
制御装置16は、携帯機10を識別するための携帯機ID情報が記憶されたメモリ(図示せず)を含む。なお、携帯機10は車両V側から車両周囲に送信されるウェイク信号(リクエスト信号)を受信するための受信回路(図示せず)を備えており、制御装置16は車両V側からウェイク信号を受信する毎に起動する。なお、携帯機10が車両V側からウェイク信号を受信するアンテナは、送信アンテナ12を共用してもよいし、送信アンテナ12とは別に受信専用の1軸または2軸のアンテナを設けるようにしてもよい。
【0020】
制御装置16は、車両V側からの起動信号によって起動すると、メモリに記憶された携帯機ID情報および傾斜センサ18の検出結果(傾斜角At)を含む電波を送信アンテナ12から出力させるための指令信号を送信回路14に出力する。
【0021】
送信回路14は、水晶振動子あるいはトランジスタなどを含んで構成され、制御装置16からの指令信号に基づく発振信号を送信アンテナ12に出力する。これにより、携帯機ID情報と傾斜センサ18の検出結果(傾斜角At)とを含む電波が、ウェイク信号に対するレスポンス信号として、送信アンテナ12から車両Vに出力される。
【0022】
車両Vは、受信機20と、制御装置30と、傾斜センサ50と、ドアロック装置40とを備える。受信機20は、受信アンテナ22と、受信回路24とを備える。また、車両Vは、車両周囲に向けてウェイク信号(リクエスト信号)を一定期間毎に送信するための送信回路(図示せず)を備えている。携帯機10は、上述のように、車両Vからのウェイク信号(リクエスト信号)を受信する毎に上述のレスポンス信号を出力する。なお、車両Vが車両周囲に向けてウェイク信号(リクエスト信号)を送信するアンテナは、受信アンテナ22を共用してもよいし、受信アンテナ22とは別に送信専用の1軸または2軸のアンテナを設けるようにしてもよい。
【0023】
受信アンテナ22は、携帯機10から出力された送信電波(レスポンス信号)を受信するための1軸アンテナである。本実施の形態による受信アンテナ22は、送信アンテナ12と同様、長方形状のパターンアンテナである。なお、受信アンテナ22は、必ずしもパターンアンテナであることに限定されず、ダイポールアンテナであってもよいし、コイルアンテナであってもよい。
【0024】
受信アンテナ22は、受信感度が最適となる基準面を有している。受信アンテナ22の基準面は、受信アンテナ22の長手方向Drが含まれる平面である。受信アンテナ22が受信する受信電波(すなわち送信アンテナ12が出力する送信電波)の偏波面が受信アンテナ22の基準面に一致する場合に、受信アンテナ22の受信感度が最適となる。受信アンテナ22が受信した受信電波(レスポンス信号)は、受信回路24を介して制御装置30に出力される。
【0025】
本実施の形態においては、受信アンテナ22の長手方向DrがX方向(車両Vの前後方向)に沿って配置されているものとする。したがって、本実施の形態においては、車両Vが平坦な路面に停車している場合、受信アンテナ22の基準面は、ほぼ水平な面(鉛直方向に対して垂直な平面)となる。本実施の形態においては、車両Vが平坦な路面に停車しており、受信アンテナ22の基準面が水平となる場合(すなわち傾斜角Arが90°となる場合)を想定するものとする。また、本実施の形態においては、携帯機10および車両VをZ方向から見た場合に、送信アンテナ12の長手方向Dtと受信アンテナ22の長手方向Drとが互いに平行となる場合(すなわち送信電波の進行方向が受信アンテナ22の長手方向Drに対して垂直となる場合)を想定するものとする。
【0026】
ドアロック装置40は、車両Vの乗降用ドアをロック状態(施錠状態)とアンロック状態(解錠状態)とのどちらかの状態に切替えるように構成される。
【0027】
制御装置30は、入力部31,32と、出力部33と、記憶部34と、演算装置35とを備える。入力部31は、受信機20が受信する受信電波(レスポンス信号)を示す信号が入力される入力ポートである。入力部32は、傾斜センサ50の検出結果(傾斜角Ar)を示す信号が入力される入力ポートである。出力部33は、ドアロック装置40に対する指令信号をドアロック装置40に出力するための出力ポートである。
【0028】
記憶部34は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の記憶素子で構成され、演算装置35の演算に用いられる携帯機ID情報およびプログラムなどを格納する。
【0029】
演算装置35は、入力部31,32、出力部33および記憶部34に接続される。演算装置35は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される。
【0030】
演算装置35は、受信機20から入力部31に入力される受信電波(レスポンス信号)に基づいて、ドアロック装置40をアンロック状態にすることを許容するか否かを判定する処理を行なう。具体的には、演算装置35は、レスポンス信号に含まれる携帯機ID情報と記憶部34に記憶される携帯機ID情報とを照合し、双方の携帯機IDが一致するか否かを判定する。また、演算装置35は、受信アンテナ22の受信電力(受信電波の強度)に基づいて携帯機10の送信アンテナ12と車両Vの受信アンテナ22との間の距離(以下「アンテナ間距離」ともいう)がしきい距離よりも小さいか否かを判定する処理を行なう。
【0031】
そして、双方の携帯機IDが一致し、かつアンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定される場合、演算装置35は、ドアロック装置40をアンロック状態にすることを許容する。アンロック状態にすることが許容された状態でユーザが車両Vのドアハンドルに触れたことが検出されると、演算装置35は、ドアロック装置40をアンロック状態にする。なお、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定された時点で、演算装置35がドアロック装置40をアンロック状態にするようにしてもよい。
【0032】
一方、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定されない場合、演算装置35は、ドアロック装置40をアンロック状態にすることを許容しない。この際、ドアロック装置40がアンロック状態である場合には、演算装置35がドアロック装置40をロック状態に切り替えるようにしてもよい。
【0033】
なお、演算装置35の処理は、ソフトウェア処理、すなわち、記憶部34に格納されたプログラムが演算装置35により読み出されることにより行なわれる。なお、演算装置35の処理は、ソフトウェア処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理してもよい。
【0034】
<アンテナ間距離の判定>
本実施の形態による制御装置30は、上述のように、受信アンテナ22の受信電力(受信電波の強度)に基づいて、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいか否かを判定する。
【0035】
しかしながら、携帯機10の送信アンテナ12は1軸アンテナであり、かつ車両V側の受信アンテナ22が1軸のアンテナである。この場合、たとえ実際のアンテナ間距離が同じであっても、送信アンテナ12から出力される送信電波の偏波面と受信アンテナ22の基準面とのずれによって、受信電波の強度が大きく変動し得る。そのため、仮に、受信電波の強度のみに基づいてアンテナ間距離を判定すると、判定精度が低下してしまうことが懸念される。
【0036】
図2は、送信アンテナ12から出力される送信電波の偏波面と受信アンテナ22の基準面とが一致する場合の送信アンテナ12および受信アンテナ22の姿勢を模式的に示す図である。図3は、送信アンテナ12から出力される送信電波の偏波面と受信アンテナ22の基準面とが一致しない場合の送信アンテナ12および受信アンテナ22の姿勢を模式的に示す図である。なお、本実施の形態においては、上述のように、車両Vが平坦な路面に停車しており、受信アンテナ22の基準面が水平となる場合を想定している。すなわち、受信アンテナ22の長手方向Drの鉛直方向に対する傾き(以下「傾斜角Ar」ともいう)が90°となる場合を想定している。
【0037】
図2に示すように、携帯機10の傾斜角At(送信アンテナ12の長手方向Dtの鉛直方向に対する傾き)が90°である場合には、送信電波の偏波面は水平となり受信アンテナ22の基準面と一致する。この場合、受信アンテナ22の受信感度が最適となる。
【0038】
一方、携帯機10の傾斜角Atが90°でない場合(たとえば図3に示すように携帯機10の傾斜角Atが0°から90°までの間の値になる場合)、送信電波の偏波面が水平ではなくなり受信アンテナ22の基準面からずれてしまう。この場合、受信アンテナ22の基準面に対する送信電波の偏波面のずれ角(以下、単に「偏波面のずれ角θ」ともいう)が大きいほど、受信アンテナ22の受信感度が低下して、受信電波の強度は低下してしまう。なお、本実施の形態において、携帯機10の傾斜角Atは0°から180°までの範囲に含まれる値であるものとする。この場合、偏波面のずれ角θは、θ=|At-90|で表わされる。したがって、偏波面のずれ角θの最小値は0°であり、最大値は90°である。
【0039】
そのため、たとえ実際のアンテナ間距離が同じであっても、図2に示す偏波面一致時の受信電波の強度よりも図3に示す偏波面不一致時の受信電波の強度のほうが小さくなり、アンテナ間距離がより大きいと誤判定されてしまうことが懸念される。
【0040】
そこで、本実施の形態によるスマートエントリシステム1においては、携帯機10が、携帯機10の傾斜角At(傾斜センサ18の検出結果)を含むレスポンス信号を出力するように構成される。そして、車両Vの演算装置35は、受信機20が受信したレスポンス信号の強度に加えて、レスポンス信号に含まれる携帯機10の傾斜角Atを用いて、アンテナ間距離を判定する。
【0041】
図4は、車両Vの演算装置35が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する毎(たとえば所定周期毎)に繰り返し実行される。
【0042】
演算装置35は、携帯機10からのレスポンス信号が受信機20によって受信されたか否かを判定する(ステップS10)。レスポンス信号が受信されていない場合(ステップS10においてNO)、演算装置35は、以降の処理をスキップしてリターンへと処理を移す。
【0043】
レスポンス信号が受信された場合(ステップS10においてYES)、演算装置35は、携帯機IDの照合を行なう(ステップS12)。具体的には、演算装置35は、レスポンス信号に含まれる携帯機IDが、記憶部34に記憶されている携帯機IDと一致するか否かを判定する。
【0044】
携帯機IDが一致する場合(ステップS12においてYES)、演算装置35は、レスポンス信号の強度(受信アンテナ22の受信電力、以下「受信強度P」ともいう)、および、レスポンス信号に含まれる携帯機10の傾斜角Atを特定する(ステップS20)。
【0045】
次いで、演算装置35は、ステップS20で特定された携帯機10の傾斜角Atに基づいて、ステップS20で特定された受信強度Pを補正する(ステップS30)。この処理は、偏波面のずれ角θが大きいほど実際の受信強度Pが低下することに鑑み、偏波面のずれ角θに応じて実際の受信強度Pを偏波面一致時の受信強度に換算するための処理である。したがって、演算装置35は、携帯機10の傾斜角Atを用いて特定される偏波面のずれ角θが大きいほど受信強度Pが大きい値となるように、受信強度Pを補正する。
【0046】
たとえば、演算装置35は、携帯機10の傾斜角Atを用いて偏波面のずれ角θを特定し、偏波面のずれ角θに応じた補正係数αを算出する。この際、演算装置35は、偏波面のずれ角θが0°(最小値)である場合に補正係数αを1とし、ずれ角θが大きいほど補正係数αを1よりも大きい値にする。そして、演算装置35は、ステップS20で特定された実際の受信強度Pに補正係数αを乗算した値を、補正後の受信強度Pとして算出する。なお、受信強度Pを補正する手法は、上記の手法に限定されない。たとえば、携帯機10の傾斜角Atを用いて特定されるずれ角θに応じた受信強度の補正成分ΔPを算出し、実際の受信強度Pに補正成分ΔPを加算した値を補正後の受信強度Pとして算出するようにしてもよい。
【0047】
次いで、演算装置35は、ステップS30において算出された補正後の受信強度Pがしきい強度Pthを超えているか否かを判定する(ステップS40)。この処理は、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいか否かを判定するための処理である。なお、しきい強度Pthは、しきい距離に対応する受信強度として、記憶部34に予め記憶されている。
【0048】
補正後の受信強度Pがしきい強度Pthを超えている場合(ステップS40においてYES)、演算装置35は、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定して、ドアロック装置40をアンロック状態にすることを許容する(ステップS50)。
【0049】
一方、補正後の受信強度Pがしきい強度Pthを超えていない場合(ステップS40においてNO)、演算装置35は、アンテナ間距離がしきい距離よりも大きいと判定して、ドアロック装置40をアンロック状態にすることを許容しない(ステップS60)。
【0050】
以上のように、本実施の形態によるスマートエントリシステム1においては、携帯機10が、携帯機10の傾斜角Atを含むレスポンス信号を出力するように構成される。そして、車両Vの演算装置35は、受信機20が受信したレスポンス信号の強度に加えて、レスポンス信号に含まれる携帯機10の傾斜角Atを用いて、アンテナ間距離を判定する。具体的には、演算装置35は、携帯機10の傾斜角Atを用いて特定される偏波面のすれ角θが大きいほど受信強度Pが大きい値となるように受信強度Pを補正し、補正後の受信強度Pに基づいてアンテナ間距離を判定する。その結果、アンテナ間距離を受信強度Pを用いて精度よく判定することができる。
【0051】
<変形例>
上述の実施の形態は、たとえば以下のように変更することもできる。
【0052】
(1) 上述の図4のステップS30においては、携帯機10の傾斜角Atに基づいて受信強度Pを補正していた。しかしながら、傾斜角Atに基づいて受信強度Pを補正するのではなく、傾斜角Atに基づいて、受信強度Pと比較される「しきい強度Pth」を設定するようにしてもよい。
【0053】
図5は、本変形例による演算装置35が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する毎(たとえば所定周期毎)に繰り返し実行される。図5は上述の図4のステップS30,S40をそれぞれステップS30A,S40Aに変更したものである。その他のステップ(図4に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については既に説明したため詳細な説明は繰り返さない。
【0054】
演算装置35は、ステップS20で特定された携帯機10の傾斜角Atに基づいて、しきい強度Pthを設定する(ステップS30A)。この処理は、偏波面のずれ角θが大きいほど受信感度が低下することに鑑み、受信強度Pと比較されるしきい強度Pthを偏波面のずれ角θに応じて低下させるための処理である。たとえば、演算装置35は、携帯機10の傾斜角Atを用いて偏波面のずれ角θを特定し、偏波面のずれ角θが所定角よりも小さい場合はしきい強度Pthを第1強度に設定し、偏波面のずれ角θが所定角よりも大きい場合はしきい強度Pthを第1強度よりも小さい第2強度に設定する。なお、しきい強度Pthを設定する手法は、上記の手法に限定されない。たとえば、偏波面のずれ角θとしきい強度Pthとの対応関係を規定したマップを記憶部34に予め記憶しておき、このマップを参照して、ステップS20で特定された偏波面のずれ角θに対応するしきい強度Pthを設定するようにしてもよい。
【0055】
次いで、演算装置35は、ステップS20で特定された受信強度PがステップS30Aで設定されたしきい強度Pthを超えているか否かを判定する(ステップS40A)。
【0056】
以上のように、携帯機10の傾斜角Atに基づいて受信強度Pと比較される「しきい強度Pth」を設定するようにしてもよい。このように変形しても、アンテナ間距離を受信強度Pを用いて精度よく判定することができる。
【0057】
(2) 上述の実施の形態においては、車両Vが平坦な路面に停車しており、受信アンテナ22の基準面が水平となる場合(すなわち傾斜角Arが90°となる場合)を想定していた。
【0058】
しかしながら、たとえば車両Vが坂道に停車している場合など、受信アンテナ22の基準面が水平とならずにY方向の軸回りに傾斜する場合(すなわち傾斜角Arが90°とならない場合)も想定される。この点に鑑み、受信強度Pおよび携帯機10の傾斜角Atに加えて、車両Vの傾斜センサ50(図1参照)の検出結果を用いて、アンテナ間距離を判定するようにしてもよい。
【0059】
車両Vの傾斜センサ50は、傾斜角Ar(受信アンテナ22の長手方向Drの鉛直方向に対する傾き)を車両Vの傾きとして検出し、検出結果を示す信号を制御装置30に出力する。傾斜センサ50は、重力加速度を計測することによって傾斜角Arを検出する、いわゆる加速度センサである。なお、傾斜センサ50の種類は、加速度センサに限定されるものではなく、たとえばジャイロセンサであってもよい。
【0060】
図6は、本変形例による演算装置35が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する毎(たとえば所定周期毎)に繰り返し実行される。図6に示すフローチャートは、上述の図4のステップS30をステップS30Bに変更し、ステップS20とステップS30Bとの間にステップS22を追加したものである。その他のステップ(図4に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については既に説明したため詳細な説明は繰り返さない。
【0061】
演算装置35は、傾斜センサ50の検出結果である車両Vの傾斜角Arを取得する(ステップS22)。
【0062】
次いで、演算装置35は、ステップS20において特定された携帯機10の傾斜角At、およびステップS22において取得された車両Vの傾斜角Arに基づいて、ステップS20において特定された受信強度Pを補正する(ステップS30B)。たとえば、演算装置35は、携帯機10の傾斜角Atおよび車両Vの傾斜角Arを用いて偏波面のずれ角θをθ=|At-Ar|として算出する。なお、|At-Ar|が90°を超える場合には、偏波面のずれ角θをθ=|At-Ar|-90°として算出すればよい。これにより、携帯機10の傾斜角Atに加えて、車両Vの傾斜角Arを考慮して、偏波面のずれ角θを精度よく特定することができる。そして、演算装置35は、算出された偏波面のずれ角θが大きいほど受信強度Pが大きい値となるように、受信強度Pを補正する。なお、受信強度Pを補正する具体的な手法は、上述の実施の形態と同様の手法を採用することができる。
【0063】
次いで、演算装置35は、ステップS30Bにおいて算出された補正後の受信強度Pがしきい強度Pthを超えているか否かを判定する(ステップS40)。
【0064】
以上のように、受信強度Pおよび携帯機10の傾斜角Atに加えて、車両Vの傾斜角Arを考慮して、アンテナ間距離を判定するようにしてもよい。このように変形することによって、アンテナ間距離を受信強度Pを用いてより精度よく判定することができる。
【0065】
(3) 上述の実施の形態においては、携帯機10の傾斜角Atに基づいて補正された受信強度Pがしきい強度Pthよりも大きいか否かを判定することによって、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいか否かを判定している。
【0066】
しかしながら、たとえば、受信強度Pおよび携帯機10の傾斜角Atに基づいて、アンテナ間距離そのものを算出するようにしてもよい。たとえば、受信強度Pおよび傾斜角Atとアンテナ間距離との対応関係を実験等によって予め求めて記憶部34にマップとして記憶しておき、このマップを参照して、受信強度Pおよび傾斜角Atに対応するアンテナ間距離を算出するようにしてもよい。
【0067】
(4) 上述の実施の形態においては、携帯機10および車両VをZ方向から見た場合に、送信アンテナ12の長手方向Dtと受信アンテナ22の長手方向Drとが互いに平行となる場合(すなわち送信電波の進行方向が受信アンテナ22の長手方向Drに対して垂直となる場合)を想定していた。
【0068】
しかしながら、実際には、携帯機10の姿勢によっては、送信アンテナ12の長手方向Dtと受信アンテナ22の長手方向Drとが互いに平行とはならない場合も想定される。この場合、送信電波の進行方向が受信アンテナ22の長手方向Drに対して垂直とはならず、受信アンテナ22の受信感度が低下してしまうことが懸念される。
【0069】
この点を考慮し、たとえば、携帯機10および車両Vの双方が方位検出機能(コンパス機能)を搭載する場合には、双方の方位検出機能による検出結果を用いて受信アンテナ22の長手方向Drに対する送信電波の進行方向のずれ角を推定し、偏波面のずれ角θに加えて、送信電波の進行方向のずれ角を用いて、受信強度Pの補正あるいはしきい強度Pthの設定を行なうようにしてもよい。これにより、アンテナ間距離の判定精度をより高めることが可能である。
【0070】
(5) 上述の実施の形態においては、1軸の送信アンテナ12と1軸の受信アンテナ22との組合せに本開示による距離判定システムを適用する場合について説明した。しかしながら、本開示による距離判定システムは、1軸の送信アンテナと2軸の受信アンテナとの組合せ、2軸の送信アンテナと1軸の受信アンテナとの組合せ、2軸の送信アンテナと2軸の受信アンテナとの組合せ、にも適用可能である。なお、2軸の送信アンテナとは、たとえば、図1のX方向を長手方向とする長方形状のパターンアンテナに加えて、図1のY方向またはZ方向を長手方向とする長方形状のパターンアンテナを備える送信アンテナである。また、2軸の受信アンテナとは、たとえば、図1のX方向を長手方向とする長方形状のパターンアンテナに加えて、図1のY方向またはZ方向を長手方向とする長方形状のパターンアンテナを備える受信アンテナである。
【0071】
(6) 上述の実施の形態においては、車両V側の制御装置30が、携帯機10からのレスポンス信号の受信強度を測定してアンテナ間距離を判定する例について説明した。しかしながら、受信強度を測定する主体、およびアンテナ間距離を判定する主体は、車両V側の制御装置30に限定されない。
【0072】
たとえば、受信強度の測定およびアンテナ間距離の判定を、携帯機10側の制御装置16が行なうようにしてもよい。具体的には、たとえば、車両V側のアンテナ(受信アンテナ22あるいは受信アンテナ22とは別の送信専用のアンテナ)から送信されたウェイク信号を携帯機10側のアンテナ(送信アンテナ12あるいは送信アンテナ12とは別の受信専用のアンテナ)で受信した強度を携帯機10側の制御装置16が測定し、測定された強度と傾斜センサ18の検出結果とに基づいて携帯機10側の制御装置16がアンテナ間距離を判定し、その判定結果をレスポンス信号に乗せて携帯機10から車両Vに出力するようにしてもよい。なお、アンテナ間距離が所定値を超えると判定された場合には、携帯機10が車両Vにレスポンス信号を返信しないようにしてもよい。
【0073】
また、受信強度の測定を携帯機10側で行ない、アンテナ間距離の判定を車両V側で行なうようにしてもよい。具体的には、たとえば、車両Vから送信されたウェイク信号を携帯機10で受信した強度を携帯機10の制御装置16が測定し、その測定結果を傾斜センサ18の検出結果とともにレスポンス信号に乗せて携帯機10から車両Vに出力するようにしてもよい。そして、携帯機10からのレスポンス信号を受信した車両Vの制御装置30が、レスポンス信号に含まれる受信強度の測定結果と傾斜センサ18の検出結果とに基づいてアンテナ間距離を判定するようにしてもよい。
【0074】
また、上述した複数の変形例に示す形態は、技術的に矛盾が生じない範囲で適宜組合せることも可能である。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0076】
以上に説明した複数の例示的な形態は、以下の態様の具体例である。
一態様における距離判定システムは、1軸または2軸の送信アンテナと、1軸または2軸の受信アンテナと、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方の傾きを検出する傾斜センサと、受信アンテナが受信する受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とを用いて、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離であるアンテナ間距離を判定するように構成された制御装置とを備える。
【0077】
この場合において、傾斜センサは、送信アンテナの傾きを検出し、送信アンテナは、傾斜センサの検出結果を含む電波を出力する態様であってもよい。制御装置は、受信アンテナが受信する受信電波の強度と受信電波に含まれる傾斜センサの検出結果とを用いて、アンテナ間距離を判定する態様であってもよい。
【0078】
また、制御装置は、受信電波の強度がしきい強度よりも大きい場合にアンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定する態様であってもよい。制御装置は、傾斜センサの検出結果を用いて受信電波の強度を補正する処理、または、傾斜センサの検出結果を用いてしきい強度を設定する処理を行なう態様であってもよい。
【0079】
上記の態様によれば、受信電波の強度に加えて、送信アンテナの傾きを検出する傾斜センサの検出結果を用いて、アンテナ間距離が判定される。そのため、たとえば傾斜センサの検出結果を用いて、受信アンテナの基準面に対する受信電波の偏波面のずれ度合いを特定し、そのずれ度合いに応じて、受信電波の強度に対応する距離を補正することができる。その結果、アンテナ間距離を受信電波の強度を用いて精度よく判定することができる。
【0080】
また、受信アンテナおよび制御装置は、車両に搭載されてもよい。送信アンテナおよび傾斜センサは、車両のユーザによって携帯可能な携帯機に搭載されてもよい。車両は、乗降用ドアをロックするロック状態と、乗降用ドアをロックしないアンロック状態とのいずれかの状態に切替可能なドアロック装置を備えてもよい。制御装置は、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定された場合にドアロック装置をアンロック状態にすることを許容し、アンテナ間距離がしきい距離よりも小さいと判定されない場合にドアロック装置をアンロック状態にすることを許容しない態様であってもよい。
【0081】
上記の態様によれば、精度よく判定されたアンテナ間距離としきい距離との比較結果に基づいて、車両のドアロック装置をアンロック状態にすることを許容するか否かを判定することができる。
【0082】
また、車両は、車両の傾きを検出する車両傾斜センサをさらに備えてもよい。制御装置は、受信電波の強度と傾斜センサの検出結果とに加えて、車両傾斜センサの検出結果を用いて、アンテナ間距離を判定する態様であってもよい。
【0083】
上記の態様によれば、受信電波の強度および送信アンテナの傾きに加えて、受信アンテナが搭載される車両の傾きを考慮して、アンテナ間距離を判定することができる。これにより、アンテナ間距離を受信電波の強度を用いてより精度よく判定することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 スマートエントリシステム、10 携帯機、12 送信アンテナ、14 送信回路、16,30 制御装置、18,50 傾斜センサ、20 受信機、22 受信アンテナ、24 受信回路、31,32 入力部、33 出力部、34 記憶部、35 演算装置、40 ドアロック装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6