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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
G01R31/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019171258
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021047139
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】小峰 幸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-163956(JP,A)
【文献】特開2012-058120(JP,A)
【文献】特開2007-087112(JP,A)
【文献】特開平04-093721(JP,A)
【文献】特開2010-271269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/00-31/01、
31/24-31/25、
G01D 18/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能なモジュールを複数備えた機器を複数有する被試験器に対して前記被試験器毎に試験を実施する試験装置であって、
試験信号を出力して、前記被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、
前記測定器のいずれかと前記被試験器とを接続する切替部と、
前記複数の測定器からの測定結果を入力して解析する制御部とを備え、
前記制御部が、前記機器毎に行われた試験の結果として前記複数の測定器からの計測結果を入力し、前記計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、前記被試験器毎に交換前の試験結果と前記交換されたモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶するものであり、
前記制御部は、前記故障探求テーブルに従い故障のモジュールを探求し、当該探求によって故障のモジュールを特定できない場合に、前記モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールを推定することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
交換可能なモジュールを複数備えた機器を複数有する被試験器に対して前記被試験器毎に試験を実施する試験装置であって、
試験信号を出力して、前記被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、
前記測定器のいずれかと前記被試験器とを接続する切替部と、
前記複数の測定器からの測定結果を入力して解析する制御部とを備え、
前記制御部が、前記機器毎に行われた試験の結果として前記複数の測定器からの計測結果を入力し、前記計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、前記被試験器毎に交換前の試験結果と前記交換されたモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶するものであり、
前記制御部は、前記故障探求テーブルによる故障のモジュールの探求より、前記モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールの推定を優先して行うことを特徴とする試験装置。
【請求項3】
制御部は、モジュール交換情報テーブルに記憶されている試験結果を用いて故障探求テーブルを更新することを特徴とする請求項1又は2記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験器に対して試験を行う試験装置に係り、特に、故障部位の特定の精度を向上させることができる試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
例えば、航空機等に搭載される電子機器が故障すると、電子機器を構成する交換可能な複数のモジュールのうち、どのモジュールが故障したかが特定(要因解析)され、特定された故障モジュールの調整、修理又は交換が行われる。
そして、電子機器の機能試験を実施して試験結果が不良であると判定された場合には、作業者が自身の経験等に基づいて要因解析を行い、故障モジュールを推定していた。
【0003】
このような方法では、作業者の判断によって要因解析結果にばらつきが生じてしまう。
そこで、従来、複数のモジュールを備えた機器の試験において、複数の試験結果の良否の組み合わせに基づいて故障モジュールを特定する試験装置が提案されている。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2010-271269号公報「試験装置」(特許文献1)、特開2011-163956号公報「試験装置」(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1には、試験装置において、故障確率算出部が、被試験器を構成する複数のモジュールに対応する試験項目に関する故障率割合を取得し、取得した各モジュールの故障率割合と判定結果情報とに基づいて複数のモジュールの故障率を算出し、故障モジュール特定部が、判断基準格納部から判断基準情報を取得し、判断基準情報と判定結果情報とに基づいて故障したモジュールを特定することが示されている。
【0006】
特許文献2には、試験装置において、試験対象に対して複数の試験を順次行い、予め定められた複数の試験の組み合わせの第1の結果と試験対象に対して行われた複数の試験の組み合わせの第1の結果とを比較し、比較結果に基づいて試験を選択することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-271269号公報
【文献】特開2011-163956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の試験装置では、被試験器に対して実施した試験項目及び試験結果から故障部位を特定するのみで、故障部位が特定された場合に、故障モジュールを良品モジュールに交換し、当該良品モジュールについて再試験を行って、その結果を利用して故障部位を特定する精度を向上させるものとはなっていないという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献1,2には、故障部位を特定することは記載されているが、故障モジュールを交換後に良品モジュールの試験結果から故障部位の特定の精度を向上させる構成についての記載がない。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、試験実施により故障部位が特定された後に、故障モジュールを良品モジュールに交換した後に再度試験を実施し、その結果を利用して故障部位の特定精度を向上させる試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、交換可能なモジュールを複数備えた機器を複数有する被試験器に対して被試験器毎に試験を実施する試験装置であって、試験信号を出力して、被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを接続する切替部と、複数の測定器からの測定結果を入力して解析する制御部とを備え、制御部が、機器毎に行われた試験の結果として複数の測定器からの計測結果を入力し、計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報当該試験結果を被試験器毎のモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶するものであり、更に、制御部が、故障探求テーブルに従い故障のモジュールを探求し、当該探求によって故障のモジュールを特定できない場合に、モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールを推定することを特徴とする。
【0013】
本発明は、交換可能なモジュールを複数備えた機器を複数有する被試験器に対して被試験器毎に試験を実施する試験装置であって、試験信号を出力して、被試験器からの出力を計測する複数の測定器と、測定器のいずれかと被試験器とを接続する切替部と、複数の測定器からの測定結果を入力して解析する制御部とを備え、制御部が、機器毎に行われた試験の結果として複数の測定器からの計測結果を入力し、計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報当該試験結果を被試験器毎のモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶するものであり、更に、制御部が、故障探求テーブルによる故障のモジュールの探求より、モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールの推定を優先して行うことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記試験装置において、制御部が、モジュール交換情報テーブルに記憶されている試験結果を用いて故障探求テーブルを更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制御部が、機器毎に行われた試験の結果として複数の測定器からの計測結果を入力し、計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶し、更に、制御部が、故障探求テーブルに従い故障のモジュールを探求し、当該探求によって故障のモジュールを特定できない場合に、モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールを推定する試験装置としているので、故障要因の推定の精度を向上させることができる効果がある。
また、本発明によれば、制御部が、機器毎に行われた試験の結果として複数の測定器からの計測結果を入力し、計測結果に基づいて故障を探求する故障探求テーブルに従い故障のモジュールを特定し、当該特定された故障のモジュールに対して交換された良品のモジュールが組み込まれた被試験器について再試験し、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報当該試験結果を被試験器毎のモジュールの情報を記憶するモジュール交換情報テーブルに記憶し、更に、制御部が、故障探求テーブルによる故障のモジュールの探求より、モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールの推定を優先して行う試験装置としているので、故障要因の推定の精度を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本試験装置の概略構成図である。
図2】故障部位判定例を説明する故障探求テーブルの概略図である。
図3】本試験装置での試験処理フローを示す図である。
図4】被試験器毎のモジュール情報テーブルを示す図である。
図5】整備情報ファイルの内容を示す図である。
図6】モジュール交換情報テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る試験装置(本試験装置)は、交換可能なモジュールを複数備えた機器を1つ又は複数有する複数の被試験器に対して、機器毎に試験を実施する試験装置であって、複数の被試験器について複数の計測を含む試験を実施して、個々の計測結果を取得すると、当該計測結果に基づいて故障要因を分析して、故障モジュールを特定し、故障モジュールに対して交換された良品モジュールが組み込まれた被試験器について再試験を行い、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報をモジュール交換情報テーブルに記憶し、更に、モジュール交換情報テーブルの内容に基づいて故障探求テーブルを更新するものであり、故障要因の推定の精度を向上させることができるものである。
【0018】
[本試験装置の構成:図1
本試験装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本試験装置の概略構成図である。
[試験装置1]
図1に示すように、本試験装置(試験装置1)は、被試験器2とネットワーク等により接続され、各種の試験を実施するものである。
試験装置1は、試験コントローラ20と、各種の計測を行うn台の測定器10-1,10-2,…~10-n(測定器10と記載することもある)と、切替部30とを備えている。
【0019】
[測定器10]
測定器10-1,10-2,…~10-nは、試験コントローラ20の指示に従って、切替部30を介して試験信号を被試験器2に出力し、被試験器2からの出力信号を受信して計測し、計測結果を試験コントローラ20に出力する。
切替部30は、試験コントローラ20と切替部制御ラインによって接続され、試験コントローラ20からの切替制御信号に従って、被試験器2に接続する測定器10を切り替える。
【0020】
[試験コントローラ20]
試験コントローラ20は、試験全体の制御を行うコンピュータであり、基本的に、処理を行う制御部と、処理プログラムやデータを記憶する記憶部と、ネットワーク等に接続するインタフェース部とを備えている。
【0021】
また、試験コントローラ20は、表示部及び入力部を備えている。尚、試験コントローラ20は、請求項に記載した「制御部」に相当している。
後述する実施の形態で説明する各種の処理は、試験コントローラ20内の制御部が、記憶部に記憶された処理プログラムを起動することによって実行されるものである。
【0022】
試験コントローラ20は、ネットワーク等を介して測定器10、切替部30、及び被試験器2と接続されている。
また、試験コントローラ20は、試験結果を蓄積するデータベース(図示せず)に接続され、データベース(DB)へのデータの書き込み/読み出しを行う。
【0023】
[被試験器2]
被試験器2は、たとえば航空機等に搭載される電子機器であって、試験装置1によって実行される試験の対象となる機器である。
また、被試験器2は、1つ又は複数の機器を備え、更に各機器は、交換可能な複数のモジュールを備えている。
【0024】
被試験器2は、ネットワーク等を介して試験コントローラ20に接続し、試験に必要な情報の送受信を行う。
例えば、試験コントローラ20は、被試験器2に各種の試験条件を設定し、被試験器2は、応答を送信する。
【0025】
そして、本試験装置の特徴として、試験コントローラ20は、多くの被試験器2について実施された試験で得られた試験ログに基づいて、複数の被試験器2の試験結果を一覧表示として表示部に出力又は帳票出力するものである。
【0026】
具体的には、試験コントローラ20は、被試験器2を構成する複数の機器ごとに試験ログとして得られるCSVデータを取得して良否を判定し、異常がある場合には、その原因を分析して、故障の可能性が高いモジュールを推定する。
【0027】
そして、故障の可能性が高いと推定されたモジュール(故障モジュール)について、良品モジュールに交換された場合に、試験コントローラ20は、良品モジュールが組み込まれた被試験器2について再試験を行い、再試験の結果データを記憶し、その結果データに基づいて故障探究の方法を修正するものである。故障探究の方法の修正については後述する。
【0028】
[故障部位判定例:図2
本試験装置における故障部位判定例について図2を参照しながら説明する。図2は、故障部位判定例を説明する故障探求テーブルの概略図である。
図2に示す故障探求テーブルは、試験結果を記憶するDBに格納され、被試験器Aの性能試験の試験項目として試験A~Eがあり、その試験結果の「良」「否」の組合せパターンにより、モジュール1~4の故障部位の特定を行うためのデータテーブルである。図2では、行を数字で列をアルファベットで表している。
図2の故障探求テーブルは、以下説明するように、故障部位(故障モジュール)を特定するために使用されるもので、試験結果の積み重ねによって予め定められている。
【0029】
本試験装置では、故障モジュールを特定する処理として、試験実行の結果により、試験A~Eについて「良」又は「否」を求め、その「良」又は「否」の組合せに該当する組合せパターンを図2の上側部分(第6行まで)で特定する。組合せパターンは、「組合せ1」~「組合せ6」を示している。各試験の良否に対する組合せパターンは、試験実績等によって予め定められている。
【0030】
更に、図2の下側部分(第7~13行)で、各組合せパターンに対応するモジュール毎の良品(0)又は故障(1,2)が定義されている。ここで、故障における「1」「2」の数字は、故障の可能性の高い順位(故障推定順位)を示している。具体的な故障推定順位については後述する。
【0031】
そして、図2の上側部分で特定された組合せパターンについて、図2の下側部分で対応する組合せパターンから各モジュールの状態を探索(参照)し、順位「1」のモジュールを故障モジュールとして特定する。
【0032】
更に、当該故障モジュールを良品のモジュールに交換して被試験器2に組み込んで試験を行った結果、「良」とはならず、同じ組合せパターンとなった場合に、次は順位「2」のモジュールを故障モジュールとして特定する。
【0033】
つまり、試験で不良項目があった場合には、図2の故障探求テーブルにより、当該試験結果に該当する試験結果の組合せパターンを参照し、一致する組合せパターンに従って故障部位(故障モジュール)を特定している。
【0034】
試験結果が、例えば、図2に示すように、試験A,B,D,Eで「良」で、試験Cで「否」であるとすると、「組合せ4」のパターンとなり(図2の上側部分参照)、組合せ4では、モジュール3が「1」(故障推定順位1位)であるので、モジュール3を故障と特定する。
尚、図2で「2」は、故障推定順位2位であり、「0」は、故障の可能性がないことを示している。
【0035】
そして、特定された故障部位のモジュールを交換し、モジュールが交換された被試験器について再度試験を行い、試験結果が全て良好「良」であれば、被試験器は良好として、試験コントローラ20の記憶部に記憶し、使用可能とする。
更に、以下に説明する本試験装置の特徴部分の処理を行う。
【0036】
[本試験装置の特徴的な処理の概要]
本試験装置の特徴的な処理の概要は、試験結果に不良があって故障と判定した故障モジュールを交換して再試験を行えば、その試験結果は通常良好になり、モジュールの交換が適正であったことになる。その場合、不良となった試験結果と実際に交換したモジュールの情報とを保存することになる。
【0037】
しかしながら、故障モジュールを交換して再試験をしても、その試験結果が不良の場合には、別のモジュールが故障している可能性があり、再度、図2の故障探求テーブルを参照して故障推定順位に従い、別のモジュールと交換作業を行うことになる。
【0038】
そして、故障推定順位に従っても、故障モジュールを特定できない場合には、これまでの故障モジュールの情報及び試験・再試験の結果の情報を後述するモジュール交換情報テーブルに記憶しておき、当該モジュール交換情報テーブルから故障モジュールを特定する処理を行う。このモジュール交換情報テーブルも試験結果を記憶するDBに格納されている。具体的な故障モジュールを特定する処理は後述する。
【0039】
また、本試験装置では、モジュール交換情報テーブルの内容を用いて故障探求テーブルを更新して、故障探求の方法を変更するものであり、故障要因の推定の精度を向上させるものである。故障探求テーブルの具体的な更新についても後述する。
尚、故障探求テーブル、モジュール交換情報テーブルを試験コントローラ20の記憶部に格納するようにしてもよい。
【0040】
[本試験装置での試験フロー:図3
次に、本試験装置における試験処理について図3を参照しながら説明する。図3は、本試験装置での試験処理フローを示す図である。
本試験装置では、図3に示すように、試験コントローラ20が、機能性能試験を実施し(S1)、試験結果に不良の試験項目があるか否かを判定する(S2)。尚、以下に説明する試験結果は、後述する被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに記憶する。
【0041】
不良の試験項目があった場合(YESの場合)に、試験結果を記憶する(S3)。処理S3では、各試験に対する良否の結果を記憶することに加えて、図2の故障探求テーブルを参照して故障部位(故障モジュール)を判定して、その判定結果も記憶する。そして、故障推定順位に従い判定した故障モジュールを予備モジュールと交換する(S4)。
【0042】
そして、機能性能試験(再試験)を実施する(S1)。
続いて、判定処理S2で不良の試験項目があるか否かを判定し、不良であれば(YESの場合)、再度、処理S3で試験結果を保存し、処理S4で故障推定順位に従い予備モジュールと交換する。
【0043】
交換用の予備モジュールの候補は、図2のテーブルを用いて特定されるものである。例えば、図2で組合せパターンが4である場合に、モジュール3が故障推定順位1位となる。よって、モジュール3を故障モジュールとして良品の予備モジュールと交換し、予備モジュールを組み込んだ被試験器について再試験を行う。
【0044】
そして、故障で良品の予備モジュールに交換して、再試験で不良となると、モジュール3ではなく、それ以外のモジュールに不良の原因があることになる。再試験の結果で組合せパターンを探索し、探索した組合せパターンに従って別の故障モジュールを特定し、予備モジュールと交換を行う。
【0045】
但し、モジュールを交換して、再試験を行っても同じ不良の試験結果となることがある。具体的には、図2の組合せ4でモジュール3を交換しても、再試験の結果、同じ組合せ4に該当する例である。
組合せ5,6であれば、故障推定順位2位のモジュールが故障探求テーブルに規定されているので、2位のモジュールとの交換を行えばよいが、2位のモジュールが規定されていない場合には、故障探求テーブルによって交換する予備モジュールを特定できない。
【0046】
この場合、後述するモジュール交換情報テーブルに記憶されたモジュール交換の試験結果の情報、履歴情報等(試験履歴情報)を試験コントローラ20が参照し、故障候補のモジュールを推定する。
例えば、モジュール交換の試験結果パターンから、これまで不良になった試験と交換されたモジュールとの相関関係(相関性/関連性)を算出し、今回のモジュール交換後の試験で、不良になった試験と相関性が高いモジュールを故障候補のモジュールとして推定する。
【0047】
そして、判定処理S2で不良の試験項目がなくなれば(NOの場合)、モジュール交換後の再試験であるか否かを判定する(S5)。
モジュール交換後の再試験でなければ(NOの場合)、試験結果を被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに記憶して(S6)、処理を終了する。
【0048】
また、判定処理S5で、モジュール交換後の再試験である場合(YESの場合)、モジュール交換を判定した結果と交換モジュールの情報を被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに設定する(S7)。更に、試験結果も被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに保存(今回の結果、故障判定した結果、交換モジュールの情報を記憶)し(S8)、処理を終了する。
【0049】
図3の試験フローによって被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに記憶された情報は、故障推定順位に従っても故障モジュールを判別できない場合に、故障候補のモジュールを推定するために参考とする情報になるものである。詳細は後述する。
【0050】
[被試験器毎のモジュール情報:図4
被試験器毎のモジュール情報について図4を参照しながら説明する。図4は、被試験器毎のモジュール情報テーブルを示す図である。
被試験器毎のモジュール情報テーブルは、図4に示すように、被試験器毎に構成モジュールを記憶し、更に構成モジュールはモジュール管理番号毎に、使用被試験器の情報、状態、そして整備情報ファイルを記憶している。
【0051】
ここで、使用被試験器の情報は、当該モジュールが現在使用されている被試験器の情報である。使用被試験器の情報が空欄となっているのは、交換可能な予備のモジュール又は修理中のモジュールである。修理中であれば、状態にその旨設定される。
また、整備情報ファイルは、被試験器名称とモジュール管理番号をインデックスとした当該モジュールの履歴情報となっている。以下、整備情報ファイルの内容を説明する。
【0052】
[整備情報ファイルの内容:図5
次に、整備情報ファイルの内容について図5を参照しながら説明する。図5は、整備情報ファイルの内容を示す図である。
図5では、整備情報ファイル「被試験器A-1-002」の例が示されており、これは、被試験器Aにおけるモジュール管理番号「1-002」の履歴情報であり、具体的には、2018/10/12に新規受け入れられ、被試験器A001で使用されていたが、2019/01/22に試験NGにより交換修理中と履歴情報が記憶されている。修理中であるので、図4のテーブルでは、状態が「修理中」となっている。
尚、当該履歴情報には、モジュール交換時の試験履歴情報が含まれる。
【0053】
[モジュール交換情報テーブル:図6
次に、再試験で結果が良好になった際のモジュール交換の情報を記憶するモジュール交換情報テーブルについて図6を参照しながら説明する。図6は、モジュール交換情報テーブルを示す図である。
モジュール交換情報テーブルは、図6に示すように、被試験機器名毎に、交換モジュールの情報、試験結果パターン、そして回数を記憶している。
試験結果パターンは、試験A~Eごとの良否判定のパターンであり、回数は、そのパターンの発生回数となる。
【0054】
再試験により全ての結果が良好になった場合には、図3の処理S3で保存した結果をモジュール交換情報テーブルに保存する。
モジュール交換情報テーブルに保存する際には、交換モジュールと試験結果パターンが一致するものが既にあれば、回数を+1し、一致するものがない場合には、新たにデータを追加する。
【0055】
モジュール交換情報テーブルの情報は、同じ試験結果パターンでも交換モジュールが異なる場合があるときは、回数が多い方を故障モジュールとして特定する。
モジュール交換情報テーブルは、モジュール交換により結果が良好になった試験情報のみを格納するテーブルで、故障探求テーブルの精度向上を図り、故障探求テーブルに該当しない情報を格納するためのテーブルである。
故障探求テーブルとは異なり、交換実績に基づいて作成されるテーブルである。
【0056】
[故障候補モジュールの推定]
図6に示すように、被試験器毎のモジュール交換情報テーブルに、試験結果を含めたモジュールの交換履歴情報を整備情報ファイルとして記憶し、故障モジュールを交換して再試験を行っても試験結果が不良となった場合に、図2の故障探索テーブルに基づいて故障推定順位によりモジュール交換を行って再試験を行い、故障推定順位に従っても再試験で不良になった場合には、整備情報ファイルを参照してモジュールの試験履歴情報から故障候補のモジュールを正確に抽出(推定)して交換できるものである。
【0057】
また、本試験装置において、試験コントローラ20が、故障探求テーブルによる故障のモジュールの探求よりも優先して、モジュール交換情報テーブルを参照して故障候補のモジュールの推定を行うようにしてもよい。交換実績のある交換モジュールを推定(提示)できるものである。
【0058】
[故障探求テーブルの更新]
更に、故障推定順位にない故障結果の組合せパターンと組合せパターンに対応する故障モジュールの情報を整備情報ファイルから取得して、故障探求テーブルに追加若しくは変更等の更新を行えば、更に故障モジュールを精度よく判別できるようになる。
【0059】
具体的には、被試験器毎のモジュール交換情報テーブルの試験結果パターンに、被試験器毎の各試験の結果について良好(OK)又は不良(NG)の情報が履歴として記憶されているので、故障探求テーブルに定義されていない試験結果の組合せパターンを生成し、それを故障探求テーブルに追加し、当該組合せパターンに対応する各モジュールの良・不良の値をまた故障探求テーブルに追加する。
このようにして、故障探求テーブルを更新することで、故障モジュールの特定を容易にし、故障要因の推定精度を向上させるものである。
【0060】
[実施の形態の効果]
本試験装置によれば、交換可能なモジュールを複数備えた機器を1つ又は複数有する複数の被試験器2に対して、機器毎に試験を実施する試験装置1であり、複数の被試験器2について複数の計測を含む試験を実施して、個々の計測結果を取得すると、当該計測結果に基づいて故障要因を分析して、故障モジュールを特定し、故障モジュールに対して交換された良品モジュールが組み込まれた被試験器2について再試験を行い、当該再試験の結果が良好となった場合に、被試験器2毎に交換前の試験結果と交換されたモジュールの情報をモジュール交換情報テーブルに記憶し、更に、モジュール交換情報テーブルの内容に基づいて故障探求テーブルを更新するものであり、故障要因の推定の精度を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、試験実施により故障部位が特定された後に、故障モジュールを良品モジュールに交換した後に再度試験を実施し、その結果を利用して故障部位の特定精度を向上させる試験装置に好適である。
【符号の説明】
【0062】
1…試験装置、 2…被試験器(被試験装置)、 10…測定器、 20…試験コントローラ、 30…切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6