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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】水電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/08 20060101AFI20230407BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20230407BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20230407BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230407BHJP
【FI】
C25B15/08 304
B01D19/00 H
C02F1/42 A
C25B9/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019196573
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070836
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】八巻 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕輔
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-127781(JP,A)
【文献】特開昭56-108889(JP,A)
【文献】特開平04-119903(JP,A)
【文献】特開平09-067689(JP,A)
【文献】特開平09-143779(JP,A)
【文献】特開2001-170640(JP,A)
【文献】特表2002-516755(JP,A)
【文献】特開2003-073872(JP,A)
【文献】特開2004-097854(JP,A)
【文献】特開2006-131957(JP,A)
【文献】実開平04-056758(JP,U)
【文献】登録実用新案第3209430(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0049379(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
C02F 1/42
C25B 1/00 - 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、
前記陰極において発生した水素と水とを分離する水素気液分離器と、
前記水素気液分離器によって分離された水に含まれる、少なくとも水素を含む気体を除去する除去装置と、
前記除去装置を透過した水を貯水する貯水タンクと、
を備え
前記除去装置は、
表面側に供給された水を透過させつつ、該表面で前記気体を捕捉するフィルタと、
前記フィルタを収容するハウジングと、
前記フィルタによって捕捉された前記気体を前記ハウジングの内部から排出する機構と、を備え、
前記水が前記フィルタを透過する方向と、前記フィルタによって捕捉された前記気体が排出される方向とが、交差していることを特徴とする水電解装置。
【請求項2】
高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、
前記水電解槽にて電解される純水を蓄える貯水タンクと、
前記貯水タンクの上流に配置され、該貯水タンクへ供給される水に含まれるイオン成分をイオン交換して前記純水とするイオン交換樹脂と、
前記イオン交換樹脂の上流に配置され、該イオン交換樹脂へ供給される水に含まれる、少なくとも酸素を含む気体を除去する除去装置と、
を備え
前記除去装置は、
表面側に供給された水を透過させつつ、該表面で前記気体を捕捉するフィルタと、
前記フィルタを収容するハウジングと、
前記フィルタによって捕捉された前記気体を前記ハウジングの内部から排出する機構と、を備え、
前記水が前記フィルタを透過する方向と、前記フィルタによって捕捉された前記気体が排出される方向とが、交差していることを特徴とする水電解装置。
【請求項3】
前記フィルタは、前記気体を捕捉すると共に、前記水に含まれる固形物を捕捉することを特徴とする請求項1または2に記載の水電解装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記固形物として前記水に含まれるカーボン粉末を捕捉することを特徴とする請求項に記載の水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電解して水素と酸素とを発生させる水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然エネルギーを一次エネルギーとする水素の製造技術が開発されており、その1つに、固体高分子型水電解装置が知られている(特許文献1)。この種の水電解装置では、水電解槽の陰極にて発生した水素と水とを分離する水素気液分離器から放出される水素ブロー水(分離水)は貯水タンクに戻され、水素の製造に再利用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-173788号公報(2002年6月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固体高分子型水電解装置の運転中は、水素気液分離器が加圧されている。そのため、水素気液分離器から貯水タンクへ供給される水素ブロー水には水素が溶存している。対して、貯水タンクの圧力は低いため、貯水タンクの内部で水素ブロー水に溶存する水素が気化して水素ガスが発生する。そのため、安全上、水素ブロー水の水素対策が必要となる。
【0005】
この水素ブロー水の水素対策として、例えば、以下の方法が考えられる。希釈用空気を貯水タンク上部に導入し水素ガスを希釈する方法、または、水素気液分離器と同様に、水素ブロー水から、水素ブロー水に含まれる水素ガスを、気体と液体の比重差を利用し、重力により気液分離して水素ガスを大気へ放出する方法である。
【0006】
しかしながら、水素ガスを希釈用空気で希釈する場合、水素ガスを安全な濃度とするためには、膨大な量の希釈用空気を供給する装置が別途必要となる。
【0007】
また、水素気液分離器と同様に水素ブロー水から、水素ブロー水に含まれる水素ガスを、気体と液体の比重差を利用し、重力により気液分離する場合、水素ブロー水に含まれる水素ガスが微細気泡であるため、水素ブロー水の流速を遅くする必要性がある。水素ブロー水の水量は、発生する水素量に比例するため、大型の固体高分子型水電解装置では水素ブロー水の配管径を非常に大きくすることが必要となる。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みなされたものであって、水電解装置の大型化を伴わずに液体中に含まれる気体を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水電解装置は、高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、前記陰極において発生した水素と水とを分離する水素気液分離器と、前記水素気液分離器によって分離された水に含まれる、少なくとも水素を含む気体を除去する除去装置と、前記除去装置を透過した水を貯水する貯水タンクと、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水電解装置は、高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、前記水電解槽にて電解される純水を蓄える貯水タンクと、前記貯水タンクの上流に配置され、該貯水タンクへ供給される水に含まれるイオン成分をイオン交換して前記純水とするイオン交換樹脂と、前記イオン交換樹脂の上流に配置され、該イオン交換樹脂へ供給される水に含まれる、少なくとも酸素を含む気体を除去する除去装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、水電解装置の大型化を伴わずに液体中に含まれる気体を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る水電解装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示されるフィルタ装置の周辺構成を示す模式図である。
図3図2に示されるフィルタ装置本体の構成例を示す図であり、L1はフィルタ装置本体の正面図を示し、L2はフィルタ装置本体の断面図を示す。
図4】前記フィルタ装置本体が備えるフィルタの機能を説明する模式図である。
図5図2に示される空気抜き弁の構成例を示す縦断面図である。
図6】前記フィルタ装置本体の変形例の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図5に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(水電解装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る水電解装置100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、水電解装置100は、水電解槽10と、直流電源11と、水素気液分離器12と、酸素気液分離器13と、貯水タンク15と、フィルタ装置(除去装置)30とを含む。
【0015】
水電解槽10は、高分子電解質膜を用いて水を電解(電気分解)し、陽極に酸素、陰極に水素(気体)を発生させる。水電解槽10には直流電源11が接続される。水の電解に必要な電力は直流電源11から水電解槽10へ供給される。
【0016】
水電解槽10の陰極において発生した水素は、電解されずに残った水と共に気液混合水の状態で、水電解槽10から水素気液分離器12へ供給される。また、水電解槽10の陽極において発生した酸素(気体)は、電解されずに残った水と共に気液混合水の状態で、水電解槽10から酸素気液分離器13へ供給される。
【0017】
水素気液分離器12は、水電解槽10から供給される水素を含んだ気液混合水を、水素と水とに気液分離する。気液分離後の水素(水素ガス)は、水分を多く含んだ湿潤水素である。そのため、気液分離後の水素は、図示しない除湿装置などへ供給されて水分が除去される。一方、気液分離後の水は水素ブロー水(分離水、液体)として、水電解装置100の水素ライン19を通って貯水タンク15へ供給される。
【0018】
水素ライン19は、水素気液分離器12から貯水タンク15へ水素ブロー水を供給する。水素ライン19には、上流側から電動弁20およびフィルタ装置30が配置される。この水素ライン19は、フィルタ装置30の下流側の分岐点で分岐した水素排気ライン19aを含む。この水素排気ライン19aには、逆止弁(逆流防止機構)70が配置される。
【0019】
電動弁(圧力調整機構)20は、貯水タンク15側の圧力と水素気液分離器12の圧力差を利用し、弁開度を調整することで水素ライン19を流れる水素ブロー水の流量を調整する。また、電動弁20は、弁開度を調整することで、水素ライン19を流れる水素ブロー水を減圧し、貯水タンク15側の圧力を水素気液分離器12側の圧力よりも減少させる。
【0020】
ここで、水電解槽10の運転中、水素気液分離器12は加圧されている。そのため、水素気液分離器12から分離された水素ブロー水は圧力が高く、高圧の水素ブロー水には水素が溶存する。したがって、水素気液分離器12によって放出された水素ブロー水には水素が含まれる。水素ライン19を流れる水素ブロー水が電動弁20によって減圧されることにより、溶存していた水素が水素ブロー水中で微細気泡状となる。
【0021】
フィルタ装置30は、液体中に含まれる気体を除去する除去装置である。本実施形態では、フィルタ装置30は、水素ブロー水に含まれる水素を除去する。フィルタ装置30は、水素ブロー水から水素を除去するフィルタ41を備えるフィルタ装置本体40と、フィルタ41によって除去された水素を排出するガス抜き弁(排出機構)50とを含む。なお、フィルタ装置30の詳細は後述する。
【0022】
酸素気液分離器13は、水電解槽10から供給される酸素を含んだ気液混合水を、酸素と水とに気液分離する。気液分離後の酸素(酸素ガス)は例えば大気へ放出される。一方、気液分離後の水は、酸素側循環水として、水電解装置100の酸素側循環ライン17を通って水電解槽10へ供給される。酸素側循環ライン17は、酸素気液分離器13から水電解槽10へ酸素側循環水を供給する。酸素側循環ライン17には、酸素気液分離器13から水電解槽10へ酸素側循環水を送り出すポンプ14が配置される。
【0023】
貯水タンク15は、水電解槽10で電解される水を貯水する。貯水タンク15には、純水が供給される。また、貯水タンク15には、フィルタ41を透過した水素ブロー水が供給される。貯水タンク15に貯水された水は、水電解装置100の水供給ライン18を通って酸素気液分離器13へ供給される。水供給ライン18は、貯水タンク15から酸素気液分離器13へ水を供給する。水供給ライン18には、貯水タンク15から酸素気液分離器13へ水を送り出すポンプ16が配置される。貯水タンク15から酸素気液分離器13へ供給された水は、酸素側循環ライン17を通って、水電解槽10へ供給される。
【0024】
(フィルタ装置の詳細)
図2は、図1に示されるフィルタ装置30の周辺構成を示す模式図である。図2は、図1の一点破線枠囲み内の構成を示す。図2に示すように、フィルタ装置30は、水素ライン19の水平配管に配置される。具体的には、フィルタ装置30は、貯水タンク15の液面Lよりも高い位置に設置された水素ライン19の水平配管に配置される。これにより、フィルタ41の設置高さが、貯水タンク15の液面Lよりも高くなっている。
【0025】
フィルタ装置30の上流側には電動弁20が配置され、下流側にはT型に分岐するチーズ管(気液分離機構)60が配置される。チーズ管60において、水素ライン19から水素排気ライン19aが分岐する。
【0026】
フィルタ装置30は、水素ライン19を流れる水素ブロー水に含まれる水素を除去する。本実施形態では、フィルタ装置30は、電動弁20によって微細気泡状となった水素ブロー水に含まれる水素を除去する。フィルタ装置30は、フィルタ41および該フィルタ41を収容するハウジング42を含むフィルタ装置本体40と、該フィルタ装置本体に接続されたガス抜き弁50とを備える。
【0027】
図3は、図2に示されるフィルタ装置本体40の構成例を示す図であり、図3のL1はフィルタ装置本体40の正面図を示し、図3のL2はフィルタ装置本体40の断面図を示す。図3に示すように、フィルタ装置本体40が備えるフィルタ41およびハウジング42は、何れも円筒状である。フィルタ41の中心軸とハウジング42の中心軸とが略一致するように、カートリッジ式のフィルタ41がハウジング42に収容される。
【0028】
ハウジング42は、フィルタ41を収容する筐体である。ハウジング42は、フィルタ41を収容する一端が開口した胴部42aと、胴部42aの開口を塞ぐように着脱可能に取り付けられる蓋部42bとを含む。蓋部42bには、導入口43と、排出口44と、弁接続口(排出機構)45とが配置される。
【0029】
導入口43および排出口44は、蓋部42bの上部側面に、ハウジング42の中心軸に対して略垂直な位置に互いに対向して配置される。導入口43は、上流側の水素ライン19に接続され、水素ブロー水をハウジング42の内部へ導入する。排出口44は、下流側の水素ライン19に接続され、フィルタ41を透過した水素ブロー水をハウジング42の外部へ排出する。弁接続口45は、蓋部42bの上面に配置される。この弁接続口45には、後述するガス抜き弁50が接続される。
【0030】
フィルタ41は、水素ブロー水を濾過して、水素ブロー水に含まれる水素を除去する。フィルタ41は水素ブロー水(液体)が流入する表面で微細水素気泡(気体)を捕捉する。フィルタ41としては、水素ブロー水に含まれる微細水素気泡をその表面で捕捉する表面濾過型のフィルタが好適に用いられる。円筒状のフィルタ41は、表面41a側(外周面側)がフィルタ41の1次側となり、内面41b側(内周面側または中心軸側)がフィルタ41の2次側となる。
【0031】
図4は、フィルタ41の機能を説明する模式図である。図4に示すように、水素ブロー水は、フィルタ41の表面41a側に供給される(供給工程)。表面41a側に供給された水素ブロー水は、フィルタ41の表面41aからフィルタ41の内面41bへフィルタ41を透過する。水素ブロー水がフィルタ41を透過する際、水素ブロー水に含まれる微細水素気泡H-1がフィルタ41の表面41aで捕捉される(捕捉工程)。フィルタ41の表面41aで捕捉された微細水素気泡H-1は、該表面41aで結合して大きくなり水素気泡H-2となる。これにより、水素気泡H-2の浮力が増加し、フィルタ41の表面41aに沿って水素気泡H-2が浮上する。浮上した水素気泡H-2は、弁接続口45を通ってガス抜き弁50へ流入する。つまり、フィルタ41によって捕捉された微細水素気泡H-1は、水素気泡H-2となりフィルタ41を収容するハウジング42の内部から排出される(排出工程)。
【0032】
また、水素ブロー水がフィルタ41を透過(通過)する透過方向D1と、フィルタ41によって捕捉された微細水素気泡H-1が排出される排出方向(フィルタ41によって捕捉された微細水素気泡H-1の移動方向)D2とは交差(クロスフロー)している。
【0033】
より詳しくは、ハウジング42は、導入口43および排出口44が鉛直上側になるように、水素ライン19の水平配管に取り付けられる(図3参照)。そのため、円筒状のフィルタ41の中心軸が鉛直方向と略平行になるように、フィルタ41が水素ライン19に配置される。言い換えると、フィルタ41の表面41aが略鉛直方向に延伸するように、フィルタ41が水素ライン19に配置される。これにより、図4に示すように、フィルタ41の表面41aで捕捉された微細水素気泡H-1は、鉛直方向上側に向かって移動する。その結果、水素ブロー水がフィルタ41を透過する透過方向D1と、フィルタ41によって捕捉された微細水素気泡H-1が排出される排出方向D2とは、略直交する。
【0034】
なお、フィルタ41の配置は前記に限らない。フィルタ41の表面41aが水平方向に対して角度を有するように、フィルタ41が水素ライン19に配置されていればよい。
【0035】
このように、透過方向D1と排出方向D2とが交差していることにより、例えば透過方向D1と排出方向D2とが交差していない構成(透過方向D1と排出方向D2とが略平行な構成)に比べてフィルタ41によって処理可能な水素ブロー水の流量が多くなる。これにより、水素ライン19を流れる多量の水素ブロー水をフィルタ装置30によって処理することが可能となり、フィルタ装置30を水電解装置100に好適に組み込むことができる。
【0036】
また、フィルタ41は、水電解槽10で発生するカーボン粉末Cなどの水素ブロー水に含まれる異物(固形物)を表面41aで捕捉する。つまり、フィルタ41は、水素ブロー水に含まれる水素(微細水素気泡H-1)と異物(カーボン粉末C)とを同時に除去することができる。
【0037】
カーボン粉末Cは、水電解装置100内の機器の閉塞等を引き起こすほか、最終的には、水電解槽10の陽極側で酸化されて炭酸ガスとなり、水電解装置100内の循環水の劣化に繋がる。そのため、カーボン粉末Cをフィルタ41で除去することができれば、水電解装置100内の機器の閉塞、および水電解装置100内の循環水の劣化を防ぐことができる。
【0038】
フィルタ41としては、0.2μm以上10μm以下の孔径を有するものであることが好ましく、フィルタ41の孔径が1μ程度であることがより好ましい。また、フィルタ41は、ポリプロピレン製であることが好ましい。このようなフィルタ41によれば、水素ブロー水に含まれる微細水素気泡を表面41aで好適に捕捉し、結合させることができる。
【0039】
また、フィルタ41としては、特にプリーツフィルタが好適である。フィルタ41として濾過面積の大きいプリーツフィルタを用いることにより、水素ブロー水に含まれる微細水素気泡および異物を表面41aで効率的に捕捉することができる。また、円筒状のプリーツフィルタを用いることにより、フィルタ装置30を小型化することができる。
【0040】
ガス抜き弁50は、フィルタ41によって捕捉された気体をハウジング42の内部から排出する。図5は、図2に示されるガス抜き弁50の構成例を示す縦断面図である。図5に示すように、ガス抜き弁50は、弁体51と、フロート52と、ハウジング接続口(排出機構)53と、排出口54と、を備える。
【0041】
ガス抜き弁50は、フィルタ装置本体40のハウジング42の上部に接続される。具体的には、ガス抜き弁50のハウジング接続口53とハウジング42の弁接続口45とを介して、ガス抜き弁50がハウジング42の蓋部42bに接続される。
【0042】
ガス抜き弁50には、フィルタ41の表面41aで捕捉されて水素気泡H-2となった水素を含む水素ブロー水がハウジング接続口53を介して流入する。水素気泡H-2がガス抜き弁50の内部に溜まるにつれて、水素ブロー水の液面が低くなりフロート52が下降する。このフロート52の下降と連動して弁体51が開状態となり、ガス抜き弁50の内部に溜また水素気泡H-2が水素ガスとして排出口54から排出される。一方、水素が排出されると、ガス抜き弁50の内部の水素ブロー水の液面が高くなりフロート52が上昇する。このフロート52の上昇と連動して弁体51が閉状態となり、排出口54からの水素ガスの排出が停止する。
【0043】
ガス抜き弁50の排出口54は、水素排気ライン19aに接続される(図2参照)。具体的には、排出口54は、チーズ管60と逆止弁70との間の水素排気ライン19aに接続される。チーズ管60において、フィルタ41を透過した水素ブロー水に残存する水素、すなわち、フィルタ41によって除去しきれなかった水素が水素ガスとなって水素排気ライン19aへ流入する。排出口54から排出された水素ガスは、チーズ管60から水素排気ライン19aへ流入した水素ガスと共に、水素排気ライン19aを通って排気される。
【0044】
このようなガス抜き弁50を用いることで、フィルタ41によって水素ブロー水から除去された水素をフィルタ装置本体40から適宜排出することができる。そのため、フィルタ41の表面41aが水素で詰まるエアロック現象による有効濾過過面積の減少、およびフィルタ41の圧損増加を防ぐことができる。
【0045】
なお、ガス抜き弁50は、フィルタ41を収容するハウジング42から水素を排出可能な位置に配置されていればよい。ガス抜き弁50は、例えばハウジング42の内部に配置されていてもよい。
【0046】
(水電解装置の効果)
以上のように、水電解装置100は、水素気液分離器12と貯水タンク15との間に配置されたフィルタ装置30を備え、このフィルタ装置30によって水素ブロー水に含まれる水素を除去する。そのため、従来のように装置の大型化を伴わずに、水素ブロー水から水素を除去することが可能な水電解装置100を実現することができる。
【0047】
(変形例)
図6は、図3に示されるフィルタ装置本体40の変形例を示す断面図である。図6に示すフィルタ装置本体40Aのように、フィルタ41は、両端が開口した筒状でなくてもよい。例えば、フィルタ41は一端が(下端)が閉じられた形状であってもよい。この場合、フィルタ41は、ハウジング42の底部に接していなくてもよい。このような構成であっても、フィルタ装置本体40と同様の効果を奏する。
【0048】
また、水電解装置100では、フィルタ41によって水素ブロー水から除去された水素は、ガス抜き弁50によって排出される。したがって、水電解装置100によれば、フィルタ装置本体40のハウジング42の内部に水素が滞留せず、水素ブロー水に含まれる水素をフィルタ装置30によって連続して除去することができる。
【0049】
なお、前述した実施形態は一例にすぎず、本発明に係るフィルタ装置30は、水に含まれる水素以外の気体の除去にも適用可能である。例えば、フィルタ装置30は、液体中の酸素、窒素、アルゴンなど成分の除去に適用することができる。
【0050】
例えば、水電解装置に配置されるイオン交換樹脂は、貯水タンク15の上流に配置され、液体中のイオン成分をイオン交換して純水とするものである。具体的には、イオン交換樹脂は、水(市水)をイオン交換して、処理した水(純水)を貯水タンク15へ供給(補給)する。または、イオン交換樹脂は、水電解装置100を循環する循環水の一部をイオン交換して、処理した水(純水)を貯水タンク15へ供給する。イオン交換において、処理対象の液体中に酸素が含まれている場合、以下のような問題が生じ得る。
【0051】
(1)イオン交換樹脂と液体との接触効率が低下し、イオン交換効率が低下する。
【0052】
(2)イオン交換樹脂、特に陰イオン交換樹脂は、イオン交換を行う官能基が化学的に安定でなく、酸化されやすい。そのため、イオン交換樹脂を酸化されやすい環境下に置くと、基材の高分子部分が酸化分解され、イオン交換樹脂が劣化する。
【0053】
(3)イオン交換樹脂は、通常、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とを適切な量で混合した混床の樹脂として使用される。陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とは比重が異なるため、イオン交換樹脂をイオン交換樹脂筒で用いる場合、処理対象の液体をダウンフローでイオン交換樹脂筒に通水することが一般的である。処理対象の液体をダウンフローでイオン交換樹脂筒に通水する際、液体中に酸素などの気泡があると、当該筒内で気相と液相に分かれてしまい、効率よくイオン交換を行えない。
【0054】
そこで、例えばイオン交換樹脂の上流に本発明に係る除去装置を配置し、イオン交換前に処理対象の液体を除去装置に透過させる。これにより、液体中の酸素が除去された液体がイオン交換樹脂へ供給されるため、前述したような問題を回避することができる。
【0055】
また、本発明に係る除去装置は、酸素以外の除去にも適用可能であり、水電解装置以外の除去装置としても適用可能である。
【0056】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る水電解装置は、高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、前記陰極において発生した水素と水とを分離する水素気液分離器と、前記水素気液分離器によって分離された水に含まれる、少なくとも水素を含む気体を除去する除去装置(フィルタ装置30)と、前記除去装置を透過した水を貯水する貯水タンクと、を備えることを特徴とする。
【0057】
前記構成では、水素気液分離器によって分離された水(水素ブロー水)は、フィルタ装置によって水素が除去された後、貯水タンクへ供給される。従って、前記構成によれば、従来のように水電解装置の大型化を伴わずに、液体中に含まれる気体(水素)を除去することができる。
【0058】
本発明の態様2に係る水電解装置は、高分子電解質膜を用いて水を電解し、陰極に水素を発生させる水電解槽と、前記水電解槽にて電解される純水を蓄える貯水タンクと、前記貯水タンクの上流に配置され、該貯水タンクへ供給される水に含まれるイオン成分をイオン交換して前記純水とするイオン交換樹脂と、前記イオン交換樹脂の上流に配置され、該イオン交換樹脂へ供給される水に含まれる、少なくとも酸素を含む気体を除去する除去装置(フィルタ装置30)と、を備えることを特徴とする。
【0059】
前記構成では、イオン交換樹脂へ供給される水は、フィルタ装置によって酸素が除去された後、イオン交換樹脂へ供給される。従って、前記構成によれば、従来のように水電解装置の大型化を伴わずに、液体中に含まれる気体(酸素)を除去することができる。
【0060】
本発明の態様3に係る水電解装置では、前記除去装置は、表面側に供給された水を透過させつつ、該表面で前記気体を捕捉するフィルタと、前記フィルタを収容するハウジングと、前記フィルタによって捕捉された前記気体を前記ハウジングの内部から排出する機構(弁接続口45、ガス抜き弁50)と、を備え、前記水が前記フィルタを透過する方向(透過方向D1)と、前記フィルタによって捕捉された前記気体が排出される方向(排出方向D2)とが、交差していてもよい。
【0061】
前記構成では、フィルタの表面で捕捉された気体は、排出機構によってハウジングの内部から排出される。したがって、前記構成によれば、ハウジングの内部に気体が滞留せず、水に含まれる気体を連続して除去することができる。
【0062】
また、前記構成では、水がフィルタを透過する方向とフィルタによって捕捉された気体が排出される方向とが交差している。そのため、フィルタによって処理可能な水の流量が多くなる。したがって、前記構成によれば、多量の水を処理する水電解装置に除去装置を好適に組み込むことができる。
【0063】
本発明の態様4に係る水電解装置では、前記フィルタは、前記気体を捕捉すると共に、前記水に含まれる固形物を捕捉してもよい。
【0064】
前記構成によれば、フィルタによって水に含まれる固形物を捕捉するため、水電解装置内の機器の閉塞、および水電解装置内の循環水の劣化を防ぐことができる。
【0065】
本発明の態様5に係る水電解装置では、前記固形物は、カーボン粉末であってもよい。
【0066】
水電解装置で処理される水に含まれる固形物のうち、特にカーボン粉末が水電解装置内の機器の閉塞、および水電解装置内の循環水の劣化の要因となる。したがって、前記構成によれば、水電解装置内の機器の閉塞、および水電解装置内の循環水の劣化を効果的に防ぐことができる。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10 水電解槽
12 水素気液分離器
15 貯水タンク
30 フィルタ装置(除去装置)
41 フィルタ
41a 表面
42 ハウジング
45 弁接続口(排出機構)
50 ガス抜き弁(排出機構)
53 ハウジング接続口(排出機構)
100 水電解装置
C カーボン粉末
D1 透過方向(透過する方向)
D2 排出方向(排出される方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6